説明

フルフェイスホイール用片側フランジレスリムのディスク接合面切削方法とその装置

【課題】 生産性を向上させることができる、フルフェイスホイール用片側フランジレスリムのディスク接合面切削方法とその装置の提供。
【解決手段】 旋盤が前のn−1番目のワークを切削している間に、ロボットがつぎのn番目のワークを取りに行き、ロボットがn番目のワークをテールストックに搬送し、ロボットがn番目のワークをテールストックにセットし、ロボットはn番目のワークをアンクランプし、n−1番目のワークの切削後ロボットがヘッドストックから切削済ワークを搬出している間に、テールストックがヘッドストックに向かって前進して、n番目のワークをヘッドストックに移送してセットし、テールストックが後退して元位置に戻り、旋盤でn番目のワークを切削し、切削完了後、ロボットがヘッドストックにある切削済のn番目のワークを取りに行き、搬出する、フルフェイスホイール用片側フランジレスリムのディスク接合面の切削方法、およびその装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルフェイスホイール用片側フランジレスリムのディスク接合面切削方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車用フルフェイスホイールは、フルフェイスディスクの背面に片側フランジレスリムのフランジレス側端部を溶接接合したホイールである。片側フランジレスリムのフランジレス側端部のディスク背面に対向する面と、該面に形成される溶接開先面は、ディスクへの溶接接合前に、切削加工される(特開平08−183301号公報)。
従来、片側フランジレスリムのフランジレス側端部の切削は、ワーク(ディスクへの接合前の片側フランジレスリム)を手作業で旋盤に搬入、セットし、旋盤でワーク端部を切削し、切削済のワークを手作業で搬出して、行っている。
【特許文献1】特開平08−183301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来法による片側フランジレスリムのフランジレス側端部の切削にはつぎの問題がある。
(イ)ワークの旋盤への搬入・セット、切削、ワークの旋盤からの取り出しが直列に行われるため、生産性が低い。
(ロ)ワークの旋盤への搬入・セット、旋盤からの取り出しが手作業で行われ、重勤作業である。
【0004】
本発明の目的は、生産性を向上させることができ、かつ、作業員を重勤作業から解放することができる、フルフェイスホイール用片側フランジレスリムのディスク接合面切削方法とその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 旋盤が前のn−1番目のワークを切削している間に、(i) ロボットがつぎのn番目のワークをワーク搬入路に取りに行き、(ii)ロボットがn番目のワークをワーク搬入路からテールストックに搬送し、(iii) ロボットがn番目のワークをテールストックにセットし、ロボットはn番目のワークをアンクランプし、
n−1番目のワークの切削後ロボットがヘッドストックから切削済ワークを搬出している間に、(iv)テールストックがヘッドストックに向かって前進して、n番目のワークをヘッドストックに移送してヘッドストックにセットし、テールストックが後退して元位置に戻り、
旋盤でn番目のワークを切削し、(vi)旋盤がn番目のワークを切削完了後、ロボットがヘッドストックにある切削済のn番目のワークを取りに行き、ワーク搬出路に搬出する、工程を有するフルフェイスホイール用片側フランジレスリムのディスク接合面の切削方法。
(2) テールストック部に次ワークをセットしテールストックを前進させてワークをヘッドストックにセットする機構を設けた旋盤と、
切削前のワークを旋盤のテールストックに搬送し、切削後のワークを旋盤のヘッドストックから搬出するロボットと、
を備えたフルフェイスホイール用片側フランジレスリムのディスク接合面の切削装置。
【発明の効果】
【0006】
上記(1)のフルフェイスホイール用片側フランジレスリムのディスク接合面切削方法および(2)の装置によれば、
(イ)汎用ロボットが切削済のn−1番目のワークをヘッドストックからワーク搬出路に搬出している間に、テールストックが、テールストックに装着された未切削のn番目のワークを、ヘッドストックに搬送し該ヘッドストックにセットするので、テールストックによるヘッドストックへのn番目のワークの搬送・セットとロボットによるn−1番目のワーク搬出を並列に行うことができ、
(ロ)汎用ロボットが、ヘッドストックにセットされた前のn−1番目のワークの切削中に、未切削の次のn番目のワークをワーク搬入路からテールストックまで搬入してテールストックにセットするので、n−1番目のワークの切削とn番目のワークのテールストックへの搬入・装着を並列に行うことができる。
(イ)、(ロ)の少なくとも一方の効果を有することにより、ワークの旋盤への搬入・装着、旋盤での切削、旋盤からの搬出を直列に行っていた従来に比べて、サイクルタイムが短縮し、生産性が向上する。これと同じサイクルタイムの短縮を得るためには、従来の通常旋盤に対し2台のロボットが必要であるが、本発明では1台のロボットとテールストックによるワークのヘッドストックへのセットとの組み合わせで済むため、2台のロボットを設ける場合に比べて設備費用の低減をはかることができる。
また、ワークの搬送は、ロボットによる搬送またはテールストックによる搬送のため、重筋作業から解放される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のフルフェイスホイール用片側フランジレスリムのディスク接合面切削装置を、図1〜図4を参照して、説明する。ホイールは、乗用車用ホイールである。
【0008】
本発明のフルフェイスホイール用片側フランジレスリムのディスク接合面切削装置1は、フルフェイスホイール用片側フランジレスリム2のフランジレス側端部のディスク接合面3(図4)を切削する装置であり、テールストック部13に設計変更を施した旋盤10と、ロボット20(これは、市販の6自由度ロボットでよい)を有するシステムである。このシステムは、従来のワーク搬入路30とワーク搬出路31と通常旋盤を備え手作業でワークを旋盤に搬入、搬出していたシステムに代わって用いられる。
【0009】
旋盤10は、ワーク2をクランプ・アンクランプするチャック12を有しワークを回転させるヘッドストック11と、ワーク2をクランプ・アンクランプするクランパー14および自身をヘッドストック11に前進・後退させるシリンダー15を有するテールストック13と、ヘッドストック11に保持されたワーク2を切削するバイトを搭載したキャリッジ16と、を備えている。旋盤10は、テールストック部13に次ワーク20をセットしテールストック13を前進させてワーク2をヘッドストック11にセットする機構を有する。
【0010】
ロボット20は、6自由度をもつ関節型汎用ロボット20で、1台の旋盤10に対して1台設けられる。ロボット20は、切削前のワーク2を旋盤10のテールストック13に搬送し、切削後のワーク2を旋盤のヘッドストック11から搬出する。21はロボット20のチャックである。
ロボット20は、ワーク搬入路30のワーク(フルフェイスホイール用片側フランジレスリム2)を取り出して旋盤10のテールストック13に搬送してテールストック13にセットし、切削済のワーク2をヘッドストック11からワーク搬出路31に搬出する装置である。
【0011】
本発明のフルフェイスホイール用片側フランジレスリムのディスク接合面切削方法は、上記装置を用いて、図2に示すように、つぎの手順で行われる。
ただし、つぎの手順において、n−1番目のワークの切削の次にn番目のワークが切削されるものとする。
【0012】
(i) 旋盤がn−1番目のワーク2を切削している間に、ロボット20がつぎのn番目のワーク2をワーク搬入路30に取りに行く。
(ii) 旋盤がn−1番目のワーク2を切削している間に、ロボット20がn番目のワーク2をワーク搬入路30からテールストック13に搬送する。
(iii) 旋盤がn−1番目のワーク2を切削している間に、テールストック13のクランパー14がn番目のワーク2をクランプし、ロボット20はn番目のワーク2をアンクランプする。
(iv) ロボット20がn−1番目の切削済のワーク2をヘッドストック11からワーク搬出路31に搬送している間に、テールストック13がヘッドストック11に向かって前進して、n番目のワーク2を、ヘッドストック11に移送し、ヘッドストック11のチャック12はn番目のワーク2を掴む。n番目のワーク2をアンクランプしたテールストック13は後退して元位置に戻る。
(v) 旋盤でn番目のワーク2を切削する。(n番目のワーク2を切削中にn+1番目の上記(i) 、(ii)、(iii) を行っている。)
(vi) 旋盤がn番目のワーク2を切削完了後、ロボット20はヘッドストック11にある切削済のn番目のワーク2を取りに行く。
(vii) ロボット20は、ヘッドストック11のチャック12が外したn番目のワーク2を受け取り、切削済のn番目のワーク2をヘッドストック11からワーク搬出路31上に搬送し取り出す。(ロボット20がn番目のワーク2をヘッドストック11からワーク搬出路31上に搬送している間に、テールストック13がヘッドストック11に向かって前進して、n+1番目のワーク2を、ヘッドストック11に移送してヘッドストック11にセットし、元に戻る。)
【0013】
これによって、(イ)n−1番目の切削済ワーク2のヘッドストック11からワーク搬出路31への搬出と、n番目のワーク2のテールストック13によるヘッドストック11への搬送、セットとを、並列に、時間的に重複させて、行うことができる。
また、(ロ)n−1番目のワーク2の切削(v)と、n番目のワーク2のワーク搬入路30からテールストック13への搬送とセットとを、並列に、時間的に重複させて、行うことができる。
(イ)、(ロ)の少なくとも何れか一方が実行されればよい。
【0014】
したがって、本発明の方法は、n−1番目のワークの(i) 〜(vii) の工程と、n番目のワークの(i) 〜(vii) の工程とを、直列に、時間的に重複させないで行う場合(図3、比較例)に比べて、サイクルタイムが短縮し、生産性が向上する。
これと同じサイクルタイムの短縮を得るためには、従来の通常旋盤に対し2台のロボットが必要であるが、本発明では1台のロボットとテールストックによるワークのヘッドストックへのセットとの組み合わせで済むため、2台のロボットを設ける場合に比べて設備費用の低減をはかることができる。
また、ワークの搬送は、ロボット20による搬送またはテールストック13による搬送のため、重筋作業から解放される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のフルフェイスホイール用片側フランジレスリムのディスク接合面切削装置の概略平面図である。
【図2】本発明のフルフェイスホイール用片側フランジレスリムのディスク接合面切削方法のタイムチャートである。
【図3】比較例(従来方法を1台のロボットで工程をシリーズで行う場合)のフルフェイスホイール用片側フランジレスリムのディスク接合面切削方法のタイムチャートである。
【図4】フルフェイスホイール用片側フランジレスリムとディスクとの概略断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 本発明のフルフェイスホイール用片側フランジレスリムのディスク接合面切削装置
2 ワーク
3 リムのフランジレス側端部のディスク接合面
10 旋盤
11 ヘッドストック
12 チャック
13 テールストック
14 クランパー
15 シリンダー
16 キャリッジ
20 ロボット
21 ロボットのチャック
30 ワーク搬入路
31 ワーク搬出路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋盤が前のn−1番目のワークを切削している間に、(i) ロボットがつぎのn番目のワークをワーク搬入路に取りに行き、(ii)ロボットがn番目のワークをワーク搬入路からテールストックに搬送し、(iii) ロボットがn番目のワークをテールストックにセットし、、ロボットはn番目のワークをアンクランプし、
n−1番目のワークの切削後ロボットがヘッドストックから切削済ワークを搬出している間に、(iv)テールストックがヘッドストックに向かって前進して、n番目のワークをヘッドストックに移送してヘッドストックにセットし、テールストックが後退して元位置に戻り、
旋盤でn番目のワークを切削し、(vi)旋盤がn番目のワークを切削完了後、ロボットがヘッドストックにある切削済のn番目のワークを取りに行き、ワーク搬出路に搬出する、工程を有するフルフェイスホイール用片側フランジレスリムのディスク接合面の切削方法。
【請求項2】
テールストック部に次ワークをセットしテールストックを前進させてワークをヘッドストックにセットする機構を設けた旋盤と、
切削前のワークを旋盤のテールストックに搬送し、切削後のワークを旋盤のヘッドストックから搬出するロボットと、
を備えたフルフェイスホイール用片側フランジレスリムのディスク接合面の切削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−123026(P2006−123026A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311454(P2004−311454)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】