説明

フレキシブルプリント回路基板用二軸配向ポリエステルフィルム

【課題】 回路を形成する面が高い平坦性を有し、熱寸法安定性、走行性に優れたフレキシブルプリント回路基板用二軸配向ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートからなる基材層の片面に塗布層が設けられた二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、
(1)フィルムの基材層面における十点平均粗さRzが2〜30nm
(2)フィルムの塗布層面における十点平均粗さRzが50〜150nm
(3)200℃×10分における熱収縮率がフィルムの長手方向および幅方向のいずれも1.5%以下
で表される特性を同時に満たすフレキシブルプリント回路基板用二軸配向ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレキシブルプリント回路基板用二軸配向ポリエステルフィルムに関する。さらに詳しくは、回路を形成する面が高平坦性を有し、熱寸法安定性、走行性に優れたフレキシブルプリント回路基板用二軸配向ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル回路は、可とう性を有する基板上に配置された電気回路であり、基板となるフィルムに金属箔を貼りあわせた後に、あるいはメッキ等を施した後にエッチングを行うことにより形成される。回路が形成された基板は、更に加熱処理、回路部品の実装等が施されて電気、電子機器の部品として実用に供される。
【0003】
従来、フレキシブル回路基板用フィルムとしては、回路との密着性、回路部品実装時のハンダ付けでの耐熱性等が良好であるとの理由からポリイミド(以下「PI」と略記することがある)フィルムが一般的に使用されている。一方、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略記することがある)フィルムは廉価であり、耐薬品性、絶縁性等が良好であるとの理由からフレキシブル回路基板用フィルムの一部で使用されている。
【0004】
近年、ノート型パーソナルコンピューター、携帯電話等の携帯可能な電気、電子機器の普及が急速に進み、また、これら携帯機器の小型化も盛んに行われている。しかしながら、小型化されても従来の機種が備えていた機能と同等あるいはそれ以上の機能を持たせる要求があり、これに伴い回路の小型化、高密度化が要求されるようになった。
【0005】
このような高度な技術が要求される一方で、最近の携帯機器の普及による低価格化競争が激しさを増しているが、フレキシブル回路基板用フィルムとして従来使用されてきたPIフィルムは価格が高く、これを使用している限り携帯機器の低価格化には限界がある。
【0006】
また、PIフィルムは高価である以外に、吸湿性が高く、吸湿時の寸法変化が大きいことから、加工時にフィルムの調湿を怠ると金属との接着力低下の原因となるため、フィルムの調湿が不可欠となり生産効率向上の障害となっている。さらに、ポリエステルにポリイミド等の異種素材を含有させるとフィルムのリサイクルが煩雑になる可能性がある。加えて、PIフィルムを製造する時に使用したPI樹脂溶解用の溶媒がフィルム内に残留していると回路基板の品質に問題が生じることがある。
【0007】
一方、PETフィルムはフレキシブル回路基板用フィルムとしては廉価であり低価格化には好適であるが、耐熱性の点で使途が限られてきた。例えば、メンブレンスイッチの加工工程での加熱処理ではフィルムの寸法変化が問題となり、回路部品実装でのハンダ付けは高温下で行われることからフィルムの表面平坦性が悪化することがあり、最近の高密度化した回路基板フィルムとしては使用に堪えないものとなる。
【0008】
また、回路部品実装時のハンダ付け技術の進歩により、最近のリフローハンダでは従来のフローハンダに比べてハンダ付け温度を低くすることが可能となっているが、PETフィルムでは依然として耐熱性が不足する。一方、PIフィルムではハンダ耐熱性が過剰品質となっているのが現状である。
【0009】
このような理由からPIフィルムに代わるプラスチックフィルムの探索が行われるようになり、耐熱性を有するプラスチックフィルムの中では比較的安価なポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムが注目されるようになった。
【0010】
ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムをフレキシブル回路基板用フィルムに用いることは、例えば特開昭62−93991号公報、特開平11−168267号公報、特開2001−191405号公報で提案されている。しかしながら、従来から提案されているポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムでは、走行性の観点からフィルム中に滑剤が含有されているため、最近の回路に望まれている高密度化、特にライン/スペースの間隔が25μm/25μm以下であるような微細回路を形成するには表面平坦性が不足し、回路部品実装工程でフィルムの凹部に接する金属薄層がエッチングされず、配線間の絶縁不良となってしまう等の問題が生じることがあった。一方滑剤を含有しないフィルムは、フィルム走行性が十分でないため生産性が低下し実用的ではなかった。
【0011】
また、プリント配線板において、基板となる高分子フィルムと回路とを貼り合わせる場合の接着性を高める目的で、アンカー効果と呼ばれる高分子フィルム表面に凹凸を付与する場合もある。フィルム表面に凹凸を付与するには、フィルム表面を粗化する工程が設けられ、粗化された表面はRz値換算で3〜5μm程度である。従って、該表面粗さを有する高分子フィルム上に金属薄層が形成された基板は凹凸の表面を有するため、形成される回路のライン/スペースの値が30/30μmを超える場合にはかかる表面粗さは問題とならないが、30/30μm以下、特に25/25μm以下の線幅の回路を形成する場合には配線間の絶縁不良が生じ重大な問題となる。なぜならばこの様な高密度の細線である回路線をエッチングする際、より基板表面の凹凸の影響をうけやすくなるためである。従って、ライン/スペースの値が25/25μm以下の回路を形成し得るフレキシブル回路基板に好適な高分子フィルムが求められているのが現状である。
【0012】
【特許文献1】特開昭62−93991号公報
【特許文献2】特開平11−168267号公報
【特許文献3】特開2001−191405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上述の従来技術の課題を解決するために、回路を形成する面が高い平坦性を有し、熱寸法安定性、走行性に優れたフレキシブルプリント回路基板用二軸配向ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、回路を形成する面が極めて高い平坦性を有し、200℃×10分における熱収縮率が特定範囲にあり、かつ塗布層面の表面の平均粗さが特定範囲にある二軸配向ポリエステルフィルムを用いることによって、該フィルムから形成されるFPC基板に、ライン/スペースの間隔が25μm/25μm以下であるファインピッチな回路を形成した際の電気抵抗特性に優れ、回路の高密度化に好適であることを見出し本発明に到達した。
【0015】
かくして本発明によれば、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートからなる基材層の片面に塗布層が設けられた二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、
(1)フィルムの基板層面における十点平均粗さRzが2〜30nm
(2)フィルムの塗布層面における十点平均粗さRzが50〜150nm
(3)200℃×10分における熱収縮率がフィルムの長手方向および幅方向のいずれも1.5%以下
で表される特性を同時に満たすフレキシブルプリント回路基板用二軸配向ポリエステルフィルムによって達成される。また、本発明のフレキシブルプリント回路基板用二軸配向ポリエステルフィルムは、その好ましい態様として、30〜100℃における温度膨張係数(αt)が20ppm/℃以下であること、全光線透過率が85%以上、ヘイズが1.5%以下であること、塗布層に高分子バインダーと高分子バインダーの屈折率と同一な屈折率を有する微粒子とを含むことの少なくともいずれか1つを具備するものも包含する。
【0016】
また、本発明によれば、本発明のフレキシブルプリント回路基板用二軸配向ポリエステルフィルムが、基材層面にさらに銅箔または導電ペーストが積層されてなるフレキシブルプリント回路基板用銅張積層板、かかる銅張積層板からなるフレキシブルプリント回路基板を用いて形成された回路パターンに、85℃、85%RHの環境下でDC100Vを連続印加したときの該回路パターンの絶縁抵抗値が下記式(I)を満たすことを特徴とするフレキシブルプリント回路基板の少なくともいずれか1つを具備するものも包含する。
1000/R0≧0.7 ・・・(I)
(式中、R1000はDC100Vを1000時間連続印加後の絶縁抵抗値(単位:MΩ)を表わし、R0は絶縁抵抗初期値(単位:MΩ)を表わす。)
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、回路を形成する側のフィルム表面が極めて平滑であって、200℃×10分における熱収縮率が特定範囲にあり、かつ塗布層面の表面の平均粗さが特定範囲にある二軸配向ポリエステルフィルムから形成されるFPC基板に、ライン/スペースの間隔が25μm/25μm以下であるファインピッチな回路を形成した際の電気抵抗特性が優れることから、高密度FPC基板用フィルムとして有用であり、また該フィルムからなるフレキシブルプリント回路基板用銅張積層板およびフレキシブルプリント回路基板を提供することができ、その工業的価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
<ポリエステル>
本発明において、二軸配向ポリエステルフィルムの基材層を構成するポリエステルは、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートからなる。
【0019】
かかるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、主たるジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸が用いられ、主たるグリコール成分としてエチレングリコールが用いられる。ここで「主たる」とは、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの基材層を構成するポリマーにおいて、全繰返し単位の少なくとも90mol%、好ましくは少なくとも95mol%を意味する。
【0020】
本発明におけるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、単独でも他のポリエステルとの共重合体、2種以上のポリエステル混合体のいずれであってもかまわない。共重合体または混合体における他の成分は、繰返し構造単位の全モル数を基準として10モル%以下、さらに5モル%以下であることが好ましい。
【0021】
共重合体である場合、共重合体を構成する共重合成分として、分子内に2つのエステル形成性官能基を有する化合物を用いることができ、例えば、蓚酸、アジピン酸、フタル酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等の如きジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸の如きオキシカルボン酸、或いはトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、ポリエチレンオキシドグリコールの如き2価アルコールを好ましく用いることができる。
【0022】
これらの化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上を用いてもよい。またこれらの中で好ましくは酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、p−オキシ安息香酸であり、グリコール成分としてはトリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物である。
【0023】
また、本発明におけるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、例えば安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの一官能性化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基の一部または全部を封鎖したものであってよく、また極く少量の例えばグリセリン、ペンタエリスリトール等の如き三官能以上のエステル形成性化合物で実質的に線状のポリマーが得られる範囲内で共重合したものであってもよい。
【0024】
本発明におけるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、従来公知の方法、例えばジカルボン酸とグリコールの反応で直接低重合度ポリエステルを得る方法や、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとを従来公知のエステル交換触媒である、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、コバルトを含む化合物の一種または二種以上を用いて反応させた後、重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることができる。重合触媒としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンのようなアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウムで代表されるようなゲルマニウム化合物、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラフェニルチタネートまたはこれらの部分加水分解物、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルカリウム、チタントリスアセチルアセトネートのようなチタン化合物を用いることができる。
【0025】
エステル交換反応を経由して重合を行う場合は、重合反応前にエステル交換触媒を失活させる目的でトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、正リン酸等のリン化合物が通常は添加される。リン化合物の好ましい含有量は、リン元素としてのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート中の含有量が20〜100重量ppmである。リン化合物の含有量が20ppm未満では、エステル交換反応触媒が完全に失活せず熱安定性が悪く、機械強度が低下する場合がある。一方、リン化合物の含有量が100ppmを超えると熱安定性が悪く、機械強度が低下する場合がある。
【0026】
なお、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素などの不活性気流中において更に固相重合を施してもよい。
【0027】
本発明におけるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの固有粘度は、o−クロロフェノール中、35℃において、0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜0.90dl/gであることが更に好ましい。固有粘度が0.40dl/g未満では工程切断が多発することがある。また固有粘度が0.9dl/gより高いと溶融粘度が高いため溶融押出しが困難であるうえ、重合時間が長く不経済である。
【0028】
本発明のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートには、本発明の目的を損なわない範囲内において、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、触媒を含有してもよい。
【0029】
<二軸配向ポリエステルフィルム>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、上述のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートからなる基材層の片面に塗布層が設けられた構成を有する。本発明のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートからなる基材層は、極めて高い表面平坦性を得るために実質的に不活性粒子を含まない。
【0030】
<塗布層>
本発明の塗布層は、高分子バインダー、微粒子および脂肪族ワックスを含有する。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、回路を形成する面、すなわち基材層の表面平坦性が極めて高いことから、基材層単体ではフィルム走行性に乏しいため、本発明における塗膜層はフィルム走行性能を有する必要がある。また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、全光線透過率およびヘイズで表される光学特性が良好であることが好ましく、高分子バインダー、微粒子および脂肪族ワックスは、それぞれ以下の構成であることが好ましい。
【0031】
該高分子バインダーと微粒子は同一の屈折率を有することが好ましい。ここで本発明における「同一」とは、実質的に同一の屈折率を指し、高分子バインダーと微粒子の屈折率差が0.04以下であることをいう。両者の屈折率差は、より好ましくは0.02以下、さらに好ましくは0.01以下、特に好ましくは0.005以下である。屈折率の差が上限を超えると高分子バインダーと微粒子の境界での屈折率の差により光が大きく散乱し、塗布層のヘイズが高くなり、二軸配向ポリエステルフィルムとしての透明性が悪くなることがある。
【0032】
本発明の塗布層に用いられる高分子バインダーは、基材層との良好な接着性を付与する観点から、ポリエステル樹脂およびオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂の混合体である。高分子バインダーは、水に可溶性または分散性のものが好ましいが、多少の有機溶剤を含有する水に可溶なものも好ましく用いることができる。
【0033】
本発明の塗布層の厚みは、0.01〜0.2μmであることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.1μmである。
【0034】
<高分子バインダー>
高分子バインダーを構成するポリエステル樹脂として、下記の多塩基酸成分とジオール成分から得られるポリエステルを用いることができる。かかる多価塩基成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を例示することができる。高分子バインダーを構成するポリエステル樹脂としては、2種以上の多価塩基酸成分を用いた共重合ポリエステルを用いることが好ましい。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン等や、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを例示することができる。
【0035】
高分子バインダーのポリエステル樹脂のガラス転移点は、好ましくは40〜100℃、更に好ましくは60〜80℃である。この範囲であれば、優れた接着性と優れた耐傷性を得ることができる。ガラス転移温度が下限未満であるとフィルム同士でブロッキングが発生しやすくなり、他方上限を超えると塗膜が硬くて脆くなり、耐傷性が悪化することがある。
【0036】
高分子バインダーの構成成分として用いられるオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂として、例えば以下に示すようなオキサゾリン基を有するモノマーと、ポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーからなるアクリル樹脂を用いることができる。
【0037】
オキサゾリン基を有するモノマーとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリンを例示することができ、1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的に入手しやすく好適である。オキサゾリン基を有するアクリル樹脂を用いることにより塗布層の凝集力が向上し、隣接する層との密着性がより強固になる。更に、フィルム製膜工程内の加工工程内の金属ロールに対する耐擦過性を付与することができる。
【0038】
ポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸のエステル結合部にポリアルキレンオキシドを付加させたものを挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖はポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシドを挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位は3〜100であることが好ましい。かかるポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂を用いることで、塗布層の高分子バインダーを形成するポリエステル樹脂とアクリル樹脂の相溶性が、ポリアルキレンオキシド連鎖を含有しないアクリル樹脂と較べて向上し、塗布層の透明性を向上させることができる。ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位が3未満であるとポリエステル樹脂とアクリル樹脂との相溶性が悪く塗布層の透明性が悪くなり、100を超えると塗布層の耐湿熱性が下がり、高湿度、高温下で隣接する層との密着性が悪化して好ましくない。
【0039】
アクリル樹脂には、その他の共重合成分として例えば以下に例示されるモノマーを共重合することができる。即ち、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ基含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等のカルボキシ基またはその塩を有するモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)、N−アルコキシアクリルアミド、N−アルコキシメタクリルアミド、N,N−ジアルコキシアクリルアミド、N,N−ジアルコキシメタクリルアミド(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等)、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド等のアミド基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物のモノマー;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アルキルイタコン酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエンである。
【0040】
塗布層を形成する高分子バインダーが、ポリエステル樹脂とオキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂とから形成される場合、ポリエステル樹脂の高分子バインダー中の含有割合は5〜95重量%であることが好ましく、特に50〜90重量%であることが好ましい。また塗布層を形成するオキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂の高分子バインダー中の含有割合は5〜95重量%であることが好ましく、特に10〜50重量%であることが好ましい。ポリエステル樹脂が95重量%を超え、もしくはオキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂が5重量%未満になると塗布層の凝集力が低下し、隣接する層との密着性が不十分となる場合がある。また、アクリル樹脂が95重量%を超え、もしくはポリエステル樹脂が5重量%未満の場合も同様に隣接する層との密着性が低下する場合がある。
【0041】
また高分子バインダーの含有量は、塗布層の40〜99.4重量%の範囲が好ましい。40重量%未満であると塗膜の凝集力が低くなりポリエステルフィルムへの接着性が不十分となることがあり、99.4重量%を超えると十分な滑り性、耐傷つき性が得られない場合がある。
【0042】
本発明における塗布層の高分子バインダーは、屈折率が通常は1.50〜1.60の範囲である。
【0043】
<微粒子>
本発明における塗布層を構成する微粒子としては、シリカとチタニアの複合無機粒子を用いることが好ましい。このシリカとチタニアの複合無機粒子は、任意に屈折率の調整が可能で、屈折率を容易に調整することができる。高分子バインダーの屈折率は1.50〜1.60の範囲であるため、微粒子の屈折率も、高分子バインダーと同じく1.50〜1.60の範囲であることが好ましい。
【0044】
微粒子の平均粒子径は40〜120nmの範囲が好ましい。平均粒子径が120nmより大きいと粒子の落脱が発生しやすくなり、40nmよりも小さいと十分な滑性、耐傷性が得られない場合がある。微粒子の含有量は、塗布層の0.1〜10重量%の範囲であることが好ましい。0.1重量%未満であると十分な滑性、耐傷性が得られず、10重量%を超えると塗膜の凝集力が低くなり接着性が悪化することがある。
【0045】
<脂肪族ワックス>
塗布層には脂肪族ワックスを含有させることがフィルム表面の滑性を得られるので好ましく、含有量は好ましくは塗布層の0.5〜30重量%、さらに好ましくは1重量%〜10重量%である。この含有量が0.5重量%未満ではフィルム表面の滑性が得られないことがある。一方、30重量%を超えるとポリエステルフィルム基材層への密着性が不足する場合がある。脂肪族ワックスの具体例としては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、パームワックス、ロジン変性ワックス、オウリキュリーワックス、サトウキビワックス、エスパルトワックス、バークワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン、鯨ロウ、イボタロウ、セラックワックス等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス、フィッシャートロプッシュワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックスを挙げることができる。就中、隣接する層に対する易接着性と滑性が良好なことから、カルナバワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスが特に好ましい。これらは環境負荷の低減が可能であることおよび取扱のし易さから水分散体として用いることが好ましい。
【0046】
<添加剤>
塗布層は、滑性、耐傷性を更に向上させるために、透明性に影響を与えない程度に他の微粒子を含有してもよい。他の微粒子としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、ケイ酸ソーダ、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化錫、三酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデン等の無機微粒子やアクリル系架橋重合体、スチレン系架橋重合体、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂等の有機微粒子を挙げることができる。これらのうち、水不溶性の固体物質は、水分散液中で沈降するのを避けるため、比重が3を超えない微粒子を選ぶことが好ましい。
【0047】
<金属層>
本発明は、二軸配向ポリエステルフィルムの基材層面にさらに金属層を積層することができ、得られた金属層積層板をフレキシブルプリント回路基板用に用いることができる。該金属層としては、銅箔やアルミニウム箔などの金属箔または導電ペーストが挙げられる。かかる金属箔としては、圧延されて作成されたものや電解によって作成されたものなど一般的な方法で得られるものである。また、導電ペーストとは、高粘度の樹脂製インクに銀、銅、カーボンなどの導電性微粉末を含有させて導電性を付与させたものである。該金属箔または導電ペーストの中でも特に銅箔が好ましく、銅箔が二軸配向ポリエステルフィルムに積層された銅張積層板とすることにより、フレキシブルプリント回路基板を製造する際の工程の生産性を上げることができる。
【0048】
本発明における金属層の厚みは、5μm〜100μmであることが好ましい。
これら金属層の積層方法としては、接着剤を介する方法やポリエステルフィルム基材層の表層を溶融させ直接シールする方法などが挙げられる。接着剤については、特に言及するものではないが、耐熱性の観点から硬化性樹脂が好ましい。好適な硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイソシアネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂、脂環式オレフィン重合体などが挙げられる。
【0049】
また、接着剤には所望に応じてその他の成分を配合することができる。配合剤としては、紫外線吸収剤、軟質重合体、フィラー、熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、充填剤、硬化剤、難燃剤などが挙げられ、その配合割合は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
【0050】
また、本発明の金属層の積層方法は、メッキやスパッタリングなどによって接着剤を介することなく直接基材フィルムに金属箔を形成させる方法であっても構わない。
【0051】
<基材層面の表面荒さ>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、基材層面における十点平均粗さRzが2〜30nmである。基材層面における十点平均粗さRzは、3〜29nmであることがより好ましく、4〜28nmであることが特に好ましい。Rzが下限に満たないと、フィルムの滑り性が悪く、フィルムをロールに巻き取ったとき、空気溜りによる転写や折れシワが発生し平面性が損なわれる。一方、Rzが上限を超えるとライン/スペースの間隔が25μm/25μm以下であるような微細回路を形成する際、エッチングされるべき部分においてフィルム凹部の金属層がエッチングされずに微小な金属屑として島状に残り、長期に渡って電圧が印加された場合に、配線間の絶縁不良(マイグレーション)を引き起こす原因となる。
【0052】
上述の表面荒さを達成するには、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートからなる基材層が、1.0μm以上の粗大粒子を含む不活性粒子を含有しないことが必要であり0.50μm以上の不活性粒子を含有しないことがより好ましい。
【0053】
本発明における基材層面の表面粗さは、十点平均粗さRzが2〜30nmであり、かつ三次元表面粗さSRaは10nm以下であることが好ましい。該三次元表面荒さSRaはさらに好ましくは8nm以下、特に好ましくは5nm以下である。一方、三次元表面荒さSRaの下限は小さければ小さいほど好ましいが、好ましくは0nmである。ここで、十点平均粗さRzは粗大粒子の平均粒子径に起因するものであり、一方三次元表面粗さSRaは粗大粒子および不活性粒子の平均粒子径および個数に起因するものである。三次元表面粗さSRaをかかる範囲内にするには、1.0μm以上の粗大粒子を含む不活性粒子を含有しないことが好ましい。
【0054】
三次元表面粗さSRaは、非接触式3次元粗さ計(小坂研究所製の商品名「ET30HK」)を用い、波長780nmの半導体レーザーで測定長1mm、サンプリングピッチ2μm、カットオフ0.25mm、縦方向(フィルム連続製膜方向)拡大倍率10万倍、横方向(連続製膜方向と垂直方向)拡大倍率200倍、走査線数100本の測定条件によって測定される。
【0055】
<塗布層面の表面荒さ>
本発明の二軸配向フィルムは、塗布層面における十点平均粗さRzが50〜150nmである。塗布層面における十点平均粗さRzは、60〜140nmであることがより好ましい。Rzが下限に満たない場合、十分な易滑性が得られず巻取りが困難になり、またフィルムにしわが寄るため、フレキシブル回路に部分的にシワや凹凸が発生して平面性が悪化する。またRzが上限を超えると易滑性は優れているが透明性が低下し、また塗膜層中の微粒子が脱落する場合がある。なお本発明の塗膜層面の表面粗さは、塗膜層中の微粒子の平均粒子径および含有量によって達成されるものである。
【0056】
<熱収縮率>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、200℃×10分における熱収縮率がフィルムの長手方向および幅方向のいずれも1.5%以下である。また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、200℃×10分における熱収縮率の下限は、フィルムの長手方向および幅方向のいずれも−1.5%以上であることが好ましい。該熱収縮率は、さらに好ましくは−1.0〜1.0%、特に好ましくは−0.5〜0.5%である。本発明では特に断りがない限り、長手方向とはフィルムが連続製膜されるときの進行方向であり、フィルムの製膜方向、縦方向、MD方向と称することがある。また本発明では幅方向とはフィルム面内方向における長手方向に直交する方向であり、横方向またはTD方向と称することもある。200℃×10の熱収縮率が上記記載の範囲を超えると、金属層を貼りあわせた後のキュアリング時のフィルムの寸法変化や印刷後の乾燥処理でのフィルムの寸法変化が大きく、回路基板に反りが発生したり、また、回路部品実装時のハンダ付け後のフレキシブル回路に部分的にシワや凹凸が発生して平面性が悪化することがある。
【0057】
上述の熱収縮率を達成するためには、延伸倍率は低いほど良好であるものの一方で温度膨張係数が大きくなることから、延伸倍率は長手方向、幅方向ともに2.0〜5.0倍の範囲であることが好ましい。また延伸温度は120〜180℃であることが好ましい。熱固定温度は高いほど熱収縮率が良化するものの、高温過ぎるとフィルムの配向が緩み温度膨張係数が大きくなることから、170〜260℃であることが好ましい。さらに熱収縮率をより低減させる目的で熱処理弛緩処理を行うことが好ましく、160〜240℃の温度で行うことが好ましい。
【0058】
<温度膨張係数>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、30〜100℃の過程において温度膨張係数(αt)が、20ppm/℃以下であることが好ましい。本発明における温度膨張係数の下限は、好ましくは1ppm/℃である。また、本発明における温度膨張係数は、より好ましくは2〜19ppm/℃、更に好ましくは3〜18ppm/℃である。温度膨張係数が下限に満たない場合、あるいは上限を超える場合、FPC加工工程中にフィルムの熱変形が悪化し、FPC基板が反るなどの不具合が発生することがある。本発明における温度膨張係数は、熱機械分析装置(TMA)を用い、30℃から180℃まで10℃/分の昇温速度で測定して得られた温度寸法変化曲線において、30〜100℃の傾きより熱膨張係数を求めたものである。
【0059】
上述の温度膨張係数を達成するためには、温度膨張係数と熱収縮率双方を達成するために、延伸倍率は長手方向、幅方向ともに2.0〜5.0倍の範囲であることが好ましい。また延伸温度は120〜180℃であることが好ましい。熱固定温度は高いほど熱収縮率が良化するものの、高温過ぎるとフィルムの配向が緩み温度膨張係数が大きくなることから、170〜260℃であることが好ましい。
【0060】
<全光線透過率>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの全光線透過率は85%以上であることが好ましい。本発明における全光線透過率は、より好ましくは87%以上、特に好ましくは90%以上である。全光線透過率が下限に満たない場合、フィルムの透明性が悪くなりFPCの基板下部より、例えば発光ダイオードで照明し、基板上部に該照明を視認させるといった使用が困難となることがある。本発明の全光線透過率の範囲であれば、上限は高ければ高い程好ましいが、好ましくは100%未満である。かかる全光線透過率は、二軸配向ポリエステルフィルムの基材層中に不活性粒子を含まないこと、また塗布層中の高分子バインダーおよび微粒子を調整することによって達成される。
【0061】
<ヘイズ>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、ヘイズが1.5%以下であることが好ましい。本発明におけるヘイズは、より好ましくは1.0%以下、特に好ましくは0.5%以下である。ヘイズが上限を超えると透明性が悪くなりFPCの基板下部より、例えば発光ダイオードで照明し、基板上部に該照明を視認させるといった使用が困難となることがある。本発明のヘイズの範囲であれば、下限は小さければ小さい程好ましいが、好ましくは0%である。かかるヘイズは、二軸配向ポリエステルフィルムの基材層中に不活性粒子を含まないこと、また塗布層中の高分子バインダーおよび微粒子を調整することによって達成される。
【0062】
<吸水率>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの吸水率は、好ましくは1.0%以下であり、より好ましくは0.8%以下、更に好ましくは0.6以下である。吸水率が上限を超える場合、高湿度の環境下で使用すると、フィルムが吸湿しやすく絶縁性能が低下したり、あるいは回路の金属部分の腐蝕を引き起こす原因となることがある。
【0063】
<フィルム厚み>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは12〜250μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは25〜200μm、特に好ましくは38〜150μmである。フィルムの厚みが下限に満たない場合、フィルムの絶縁性能が不足し、また回路基板用フィルムとして曲げ剛性が不足することがある。一方、フィルムの厚みが上限を超える場合、フィルムの耐屈曲性が不足し、外力を加えられた場合フィルムに割れが発生したり折れた状態のまま戻らなくなることがある。
【0064】
<絶縁抵抗値>
本発明は、二軸配向ポリエステルフィルムの基材層面にさらに銅箔または導電ペーストが積層された銅張積層板を用いてなるフレキシブルプリント回路基板も好ましい態様と包含する。かかるフレキシブルプリント回路基板は、ライン/スペースの間隔が25μm/25μm以下であるような微細な回路パターンが形成されることが好ましく、さらにライン/スペースの間隔が20μm/20μm以下であるような微細な回路パターンが形成されることが好ましい。本発明におけるフレキシブルプリント回路基板は、かかる微細な回路パターンを形成し、85℃、85%RHの環境下で直流電圧(DC)100Vを連続印加したときのフレキシブルプリント回路の絶縁抵抗値が下記式(I)を満たすことが好ましい。R1000/R0が0.7未満の場合、回路の長期電気特性が十分でなく、長期にわたる絶縁特性が求められるフレキシブルプリント回路基板として用いることができないことがある。
1000/R0≧0.7 ・・・(I)
(式中、R1000はDC100Vを1000時間連続印加後の絶縁抵抗値(単位:MΩ)を表わし、R0は絶縁抵抗初期値(単位:MΩ)を表わす。)
【0065】
なお、本発明の範囲のR1000/R0を達成するためには、二軸配向ポリエステルフィルムの基材層面における十点平均粗さRzが本発明の範囲内であることが必要である。基材層面が極めて平坦であることによって、ライン/スペースの間隔が25μm/25μm以下であるような微細な回路を形成しても、フィルム表面の凹凸が極めて小さいことから、積層された金属層のエッチングが連続的に形成され、配線間の絶縁不良(マイグレーション)の原因となるエッチング不良部、すなわちエッチングされずに残る金属屑が発生しないためである。
【0066】
<製膜方法>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、上述のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートをフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムをTg〜(Tg+60)℃で縦方向、横方向に倍率2.0〜5.0倍で2軸に延伸し、(Tm−100)〜(Tm―5)℃の温度で1〜100秒間熱固定することで所望のフィルムを得ることができる。延伸は一般に用いられる方法例えばロールによる方法やステンターを用いる方法で行うことができ、縦方向、横方向を同時に延伸してもよく、また縦方向、横方向に逐次延伸してもよい。塗布層は逐次延伸の場合、一方向に延伸した1軸配向フィルムに、水性塗液を塗布し、そのままもう一方向に延伸し熱固定する。塗工方法としてはロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレー法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組み合わせて用いることができる。ここで、Tgは、ポリマーのガラス転移温度、Tmはポリマーの融点を表わす。
【0067】
さらに弛緩処理を行う場合は、加熱処理をフィルムの(X−80)〜X℃の温度において行うことが効果的である。ここでXは熱固定温度のことを表す。弛緩処理の方法としては熱固定後ロールに巻き取るまでの間の、熱固定ゾーンの途中でフィルムの両端部を切り離しフィルムの供給速度に対して引き取り速度を減速させる方法、2つの速度の異なる搬送ロールの間においてIRヒーターで加熱する方法、加熱搬送ロール上にフィルムを搬送させ加熱搬送ロール後の搬送ロールの速度を減速させる方法、熱固定後熱風を吹き出すノズルの上にフィルムを搬送させながら、供給の速度よりも引き取りの速度を減速する方法、あるいは製膜機で巻き取った後、加熱搬送ロール上にフィルムを搬送させ搬送ロールの速度を減速する方法、あるいは加熱オーブン内やIRヒーターによる加熱ゾーンを搬送させながら加熱ゾーン後のロール速度を加熱ゾーン前のロール速度より減速する方法があり、いずれの方法を用いても良く、供給側の速度に対して引き取り側の速度の減速率を0.1〜10%にして弛緩処理を行うことが好ましい。
【0068】
特に本発明の塗布層は、微粒子を含有し、フィルム塗布層面側の十点平均粗さRzが本発明の範囲内にあることにより、フィル製造時の製膜性が良好になる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明における種々の物性値および特性は以下の如くして測定されたものであり且つ定義される。また、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部および重量%を意味する。
(1)フィルム厚み
得られた二軸配向ポリエステルフィルムについて、電子マイクロメータ(アンリツ(株)製の商品名「K−312A型」)を用いて針圧30gにて10点フィルム厚みを測定し、その平均値をフィルム厚みとした。
【0070】
(2)表面粗さ/十点平均粗さRz
原子間力顕微鏡(Digital Instruments社製の商品名「Nano Scope III AFM」のJスキャナー)を使用し、以下の条件で算出されるRzを測定した。
探針 単結合シリコンセンサー
走査モード タッピングモード
画素数 256×256データポイント
スキャン速度 2.0Hz
測定環境 室温、大気中
走査範囲 10μm×10μm
【0071】
(3)熱収縮率
得られた二軸配向ポリエステルフィルムサンプルに30cm間隔で標点をつけ、荷重をかけずに200℃の温度のオーブンで10分間熱処理を実施し、熱処理後の標点間隔を測定して、フィルム連続製膜方向(MD方向)と、製膜方向に垂直な方向(TD方向)において、下記式にて熱収縮率Rを算出した。
R(%)={(L1−L2)/L1}×100
ここで、L1は熱処理前標点間距離、L2は熱処理後標点間距離である。
【0072】
(4)吸水率
JIS K7209に準じて測定した。
【0073】
(5)温度膨張係数(αt)
セイコーインスツレメント(株)製TMA/SS 120Cにフィルムを試料幅3mm、チャック間15.05mmとしてセットし、荷重80g/mmの条件で、室温(30℃)から180℃(PETの場合は150℃)まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した。得られた温度寸法変化曲線において、30〜100℃の傾きより熱膨張係数を求めた。
【0074】
(6)全光線透過率、ヘイズ
得られた二軸配向ポリエステルフィルムを用い、JIS規格 K6714−1958に準じ、全光線透過率Tt(%)と散乱光透過率Td(%)を求め、ヘイズ((Td/Tt)×100)(%)を算出した。
【0075】
(7)電気絶縁性
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの基材層面に銅箔を積層し、図1に示すようにパターン長さ3が10mmである櫛形パターンよりなる回路パターンをエッチングにより作成し、85℃、85%RHの恒温恒湿機内に投入し24時間放置した。その後DC100Vの電圧をかけ、同環境下でDC100Vを連続印荷し、抵抗値を連続してモニタリングした。初期絶縁抵抗値をR0(単位:MΩ)1000時間後の絶縁抵抗値をR1000(単位:MΩ)としたときのR1000/R0値を算出し、下記の基準に従って評価した。なお、図1に示すパターン幅1、線間スペース2は共に25μmで測定を行った。
○:R1000/R0が0.7以上
△:R1000/R0が0.5以上0.7未満
×:R1000/R0が0.5未満
【0076】
(8)フィルム平面性
ポリエステルフィルムと汎用塩化ビニル系樹脂とを可塑剤からなる接着剤により貼り合わせて、温度160℃、圧力30kg/cm、時間30分の条件で圧着ロールを用いて圧着した。試料寸法を25cm×25cmとし、相対湿度85%、65℃の雰囲気下で100時間定盤上に置いた状態で4隅のカール状態を観測した。4隅の反り量(mm)の平均を測定した。下記の基準に従って評価を行った。○が合格である。
○:10mm未満の反り量
×:10mm以上の反り量
【0077】
(9)塗布層の厚み
フィルムの小片をエポキシ樹脂(リファインテック(株)製の商品名「エポマウント」)中に包埋し、Reichert−Jung社製Microtome2050を用いて包埋樹脂ごと50nm厚さにスライスし、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製「LEM−2000」)にて加速電圧100KV、倍率10万倍にて観察し、塗膜層の厚みを測定した。
【0078】
(10)平均粒子径
塗布層厚みの測定と同様の操作を行い、100個の粒子の粒子径を測定し、平均値を平均粒子径とした。
【0079】
(11)総合評価
以上の各評価結果を受けて、二軸配向ポリエステルフィルムの平面性、熱寸法安定性、吸水率についての結果を総合評価した。◎および○が合格である。
◎:非常に良好(上記の結果がすべて良好で特に優れた部分がある)
○:良好(上記の結果がすべて良好)
△:やや不良(上記の結果のいずれかにやや不満足な部分がある)
×:不良(上記の結果のいずれかに致命的な欠陥がある)
【0080】
[塗布層中の樹脂組成と各成分の配合比]
実施例で用いた塗布層の組成および配合比を表1に示す。ここで塗布層を構成する各成分は以下の物を用いた。
【0081】
【表1】

【0082】
ポリエステル樹脂:酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸63モル%/イソフタル酸32モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている(Tg=76℃、平均分子量12000)。なお、ポリエステルは、特開平06−116487号公報の実施例1に記載の方法に準じて下記の通り製造した。すなわち、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル42部、イソフタル酸ジメチル17部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール33部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0083】
アクリル樹脂:メチルメタクリレート30モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド30モル%で構成されている(Tg=50℃)。なお、アクリルは、特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記の通り製造した。すなわち、四つ口フラスコに、イオン交換水302部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、更にモノマー類である、メタクリル酸メチル23.3部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン22.6部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリル酸40.7部、アクリルアミド13.3部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるよう調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、撹拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が25%のアクリルの水分散体を得た。
【0084】
微粒子:シリカ及びチタニアの複合無機粒子(平均粒子径:100nm)を用いた。なお、微粒子は、特開平7−2520号公報の製造例及び実施例に記載の方法に準じて下記の通り製造した。撹拌羽根付きの内容積4リットルのガラス製反応容器にメタノール140g、イソプロパノール260g、およびアンモニア水(25重量%)100gを仕込み、反応液を調製し、反応液の温度を40℃に保持しつつ攪拌した。次に、3リットルの三角フラスコに、シリコンテトラメトキシド(Si(OMe)、コルコート(株)製の商品名「メチルシリケート39」)542gを仕込み、撹拌しながら、メタノール195gと0.1重量%塩酸水溶液(和光純薬工業(株)製の35%塩酸を1/1000に水で希釈)28gを加え、約10分間撹拌した。続いて、チタニウムテトライソプロポキシド(Ti(O−i−Pr)、日本曹達(株)製の商品名「A−1(TPT)」)300gをイソプロパノール634gで希釈した液を加え、透明な均一溶液(シリコンテトラアルコキシドとチタニウムテトラアルコキシドの共縮合物)を得た。上記均一溶液1699gとアンモニア水(25重量%)480gの各々を前記反応液中に、最初は滴下速度を小さくし、終盤にかけて徐々に速度を大きくして、2時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、得られた共加水分解物をろ過し、50℃で有機溶媒を乾燥させ、その後、水に分散化させ、濃度10重量%、屈折率1.56の微粒子を得た。
【0085】
ワックス:カルナバワックス(中京油脂株式会社製の商品名「セロゾール524」)を用いた。
【0086】
濡れ剤:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製の商品名「ナロアクティーN−70」)を用いた。
【0087】
[実施例1]
ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチル100部、およびエチレングリコール60部を、エステル交換触媒として酢酸マンガン四水塩0.03部を使用し、150℃から238℃に徐々に昇温させながら120分間エステル交換反応を行った。途中反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024部を添加し、エステル交換反応終了後、リン酸トリメチル(エチレングリコール中で135℃、5時間0.11〜0.16MPaの加圧下で加熱処理した溶液:リン酸トリメチル換算量で0.023部)を添加した。その後反応生成物を重合反応器に移し、290℃まで昇温し、27Pa以下の高真空下にて重縮合反応を行って、固有粘度が0.61dl/gの、実質的に粒子を含有しないポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを得た。
【0088】
このポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのペレットを170℃で6時間乾燥後、押出機ホッパーに供給し、溶融温度305℃で溶融し、平均目開きが17μmのステンレス鋼細線フィルターで濾過し、3mmのスリット状ダイを通して表面温度60℃の回転冷却ドラム上で押出し、急冷して未延伸フィルムを得た。このようにして得られた未延伸フィルムを120℃にて予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より900℃のIRヒーターにて加熱して縦方向に3.1倍に延伸した。この縦延伸後のフィルムの片面に上記の塗布層用の塗剤を乾燥後の塗膜厚みが0.1μmになるようにロールコーターで塗工した。
【0089】
続いてテンターに供給し、145℃にて横方向に.3.2倍に延伸した。得られた二軸配向フィルムを240℃の温度で40秒間熱固定し厚み50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。本実施例により基材層面の表面平坦性、寸法安定性、低吸水性、透明性、電気絶縁性(電気抵抗特性)に優れたフィルムを得ることができた。
【0090】
[実施例2]
実施例1で得られた二軸配向ポリエステルフィルムをロールに巻取った後、IRヒーターによる加熱ゾーンを用いて、処理温度220℃、弛緩率0.5%で弛緩処理を行い、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。本実施例により基材層面の表面平坦性、寸法安定性、低吸水性、透明性および電気絶縁性に優れたフィルムを得ることができた。中でも寸法安定性は特に優れていた。
【0091】
[比較例1]
実施例1で用いたポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートに平均粒子径0.35μmの球状シリカ粒子を0.1重量%練り込んだものを作成し、延伸倍率を縦方向に3.7倍、横方向に3.8倍延伸し、塗布層を設けなかったこと以外は実施例1と同様の方法にて二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。得られたフィルムは基材層に滑材が含まれているため基材層面の表面平坦性が劣り、電気絶縁性が不十分であった。また得られた二軸配向ポリエステルフィルムは不透明であった。
【0092】
[比較例2]
塗布層を設けなかった以外は実施例1と同様の方法によって2軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。得られたフィルムは、塗膜層を有していないためフィルム走行性が不十分であり、さらにフィルムしわが発生して電気絶縁性にも劣るものであった。
【0093】
[比較例3]
メチルテレフタレート96部、エチレングリコール58部、酢酸マンガン0.038部及び三酸化アンチモン0.041部を夫々反応器に仕込み、攪拌下内温が240℃になるまでメタノールを留出せしめながらエステル交換反応を行い、該エステル交換反応が終了したのちトリメチルホスフェート0.097部を添加した。引き続いて、反応生成物を昇温し、最終的に高真空下280℃の条件で重縮合を行って固有粘度([η])0.64のポリエチレンテレフタレートのチップを得た。
【0094】
次に、このポリエチレンテレフタレートのチップを170℃で3時間乾燥したのち、二軸押出機に供給し、280℃で溶融混練し、急冷固化してマスターチップを得た。
このポリエチレンテレフタレートのペレットを160℃で3時間乾燥後、押出機ホッパーに供給し、溶融温度295℃で溶融し、20℃に保持した冷却ドラム上で急冷固化せしめ未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを95℃で縦方向に3.5倍に延伸し、次いで縦延伸後のフィルムの片面に上記の塗布層用の塗剤を乾燥後の塗膜厚みが0.1μmになるように塗布し、110℃で横方向に3.8倍に延伸したのち、230℃で熱固定し、厚み100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。電気絶縁性に劣るのに加え、熱収縮率が大きく寸法安定性に欠けるフィルムであった。
【0095】
[比較例4]
東レ・デュポン製「カプトン;タイプH」の50μmフィルムを用いた。得られたフィルムの特性は表2の通りである。熱収縮率は非常に優れているが、表面平坦性、透明性に劣るのに加え、吸水率が高いため高湿度下の雰囲気ではフィルム平面性に劣るものであった。
【0096】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によって得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、表面平坦性、熱寸法安定性、走行性に優れ、フレキシブルプリント回路基板として用いた際の電気絶縁性が極めて良好で電気抵抗特性に優れることから回路パターンのファインピッチ化が可能となり、フレキシブルプリント回路基板用途に好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の電気絶縁性の評価に使用する回路パターンを例示した図である。
【符号の説明】
【0099】
1 パターン幅
2 線間スペース
3 パターン長さ
4 直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートからなる基材層の片面に塗布層が設けられた二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、
(1)フィルムの基材層面における十点平均粗さRzが2〜30nm
(2)フィルムの塗布層面における十点平均粗さRzが50〜150nm
(3)200℃×10分における熱収縮率がフィルムの長手方向および幅方向のいずれも1.5%以下
で表される特性を同時に満たすことを特徴とするフレキシブルプリント回路基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
30〜100℃における温度膨張係数(αt)が20ppm/℃以下である請求項1に記載のフレキシブルプリント回路基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
全光線透過率が85%以上、ヘイズが1.5%以下である請求項1または2に記載のフレキシブルプリント回路基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
塗布層に高分子バインダーと高分子バインダーの屈折率と同一な屈折率を有する微粒子とを含む請求項1〜3のいずれかに記載のフレキシブルプリント回路基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムが基材層面にさらに銅箔または導電ペーストが積層されてなることを特徴とするフレキシブルプリント回路基板用銅張積層板。
【請求項6】
請求項5に記載の銅張積層板からなるフレキシブルプリント回路基板を用いて形成された回路パターンに、85℃、85%RHの環境下でDC100Vを連続印加したときの該回路パターンの絶縁抵抗値が下記式(I)を満たすことを特徴とするフレキシブルプリント回路基板。
1000/R0≧0.7 ・・・(I)
(式中、R1000はDC100Vを1000時間連続印加後の絶縁抵抗値(単位:MΩ)を表わし、R0は絶縁抵抗初期値(単位:MΩ)を表わす。)

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−54239(P2006−54239A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233216(P2004−233216)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)