説明

フレキシブル基板のシールド構造

【課題】シールドテープによって複数の導電パターン領域のシールドを共用すると、各導体パターンの電磁波によるノイズが影響し合うことがある。このため、良好な電気的性能を維持しつつ、金型費を削減可能なフレキシブル基板のシールド構造を提供する。
【解決手段】複数の導電パターン12領域を備えたフレキシブル基板10をシールド部材14,14によりシールドするフレキシブル基板10のシールド構造であって、シールド部材14,14を空隙部15を介して少なくとも2つの導電パターン領域毎に分離して形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、例えばノートパソコン、携帯電話、デジタルカメラ、カーナビゲーション等、小型化が要求される各種民生用の電子機器において、フレキシブル基板に電磁波等に対するシールド部材を設けたフレキシブル基板のシールド構造の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコン、携帯電話、デジタルカメラ、カーナビゲーション等のような各種の民生用電子機器は、小型化、軽量化及び薄型化が要求されている。これと同時に、これらの電子機器から発生する電磁波ノイズによって起こる内部回路の誤動作や機器外への不要輻射を防止するため、フレキシブル基板を覆うための電磁波のシールドテープを設ける必要がある。
【0003】
図1はシールドテープにより覆われた従来のフレキシブルプリント基板の一例を示す平面図である。
【0004】
図1に示すように、従来のフレキシブルプリント基板(FPC)1〜3は、例えば3つの金型によりそれぞれ成形されるとともに、図示しない信号パターン及びグランドパターンからなる導電パターンが両面から絶縁フィルムを介してシールドテープ1a,2a,3aにより被覆されている。また、シールドテープによりグランド導体及び信号導体がシールドされたフレキシブルケーブルとしては、例えば特許文献1に開示されたものがある。
【特許文献1】実開平5−6541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記フレキシブルプリント基板1〜3は、それぞれの導電パターン領域において電磁波によるノイズが互いに影響することがないものの、3つの金型により成形するため、金型費が嵩むという問題がある。
【0006】
この問題を回避するために、従来では、プリント基板1〜3を一体化してシールドテープ1a,2a,3aを連続して形成し、3組とも同じグランドをとるシールドテープによりシールドしている。この場合は、金型費を削減することができるものの、単純に組み合せると、同じシールドテープによってシールドを共用することとなり、各導電パターンの電磁波によるノイズが影響し合い、電気的性能が低下するという問題が新たに発生する。
【0007】
本願は、上記の事情を考慮してなされたもので、その課題の一例としては、良好な電気的性能を維持しつつ、金型費を削減可能なフレキシブル基板のシールド構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載のフレキシブル基板のシールド構造は、複数の導電パターン領域を備えたフレキシブル基板をシールド部材によりシールドするフレキシブル基板のシールド構造であって、前記シールド部材を少なくとも2つの前記導電パターン領域毎に分離して形成したことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本願の最良の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、フレキシブル基板として例えばフレキシブルプリント基板(FPC)に対して本願を適用した場合の実施形態である。
【0010】
(第1実施形態)
図2は本願の第1実施形態を適用したフレキシブルプリント基板を示す平面図、図3は本願の第1実施形態を適用したフレキシブルプリント基板を示す断面図である。
【0011】
図2に示すように、フレキシブル基板としてのフレキシブルプリント基板10は、1つの金型により図1に示すフレキシブルプリント基板1〜3を組み合せた形状に成形され、それぞれの先端部に雄コネクタ11が取り付けられている。これらの雄コネクタ11は、図示しない他の基板の雌コネクタに装着されて電気的に接続される。
【0012】
また、フレキシブルプリント基板10は、図3に示すように信号パターン及びグランドパターンからなる導電パターン12が表裏両面からポリイミド樹脂等の絶縁層としての絶縁フィルム13,13を介して銀箔等の導電性シートからなりシールド部材としてのシールドテープ14,14により被覆されている。
【0013】
さらに、フレキシブルプリント基板10は、図2及び図3に示すように、シールドテープ14,14が導電パターン12毎に空隙部15を介して分離して形成されている。すなわち、空隙部15は、導電パターン12を含む導電パターン領域とともにシールドテープ14,14を分離する。このように導電パターン領域とともにシールドテープ14,14を分離するのは、例えば電源系、制御系等のように接続される回路の機能が異なることにより影響が出るような導電パターン領域を分離してシールドする場合である。つまり、本願における導電パターン領域とは、導電パターン12を少なくとも1本含み、接続される回路の機能が異なる導電パターン領域をいう。
【0014】
また、この空隙部15は、シールドテープ14,14を切り分け、所定幅を有する直線状に形成されている。この所定幅とは、フレキシブルプリント基板10を成形する際に金型により形成される最小寸法と、導電パターン12の電気的性能が低下しない最小寸法に基づいて設定されている。
【0015】
なお、本実施形態では、例えば絶縁フィルム13,13の1枚の厚さが0.08mm、これらの絶縁フィルム13,13に積層されるシールドテープ14,14の1枚の厚さが0.035mm、空隙部15の幅が1mmである。
【0016】
そして、フレキシブルプリント基板10は、図2に示すように、それぞれの隅角部にシールドテープ14,14同士の導通部21がスポット状に形成されている。また、フレキシブルプリント基板10には、図示しないグランドパターンとシールドテープ14,14との導通部22もスポット状に形成されている。
【0017】
さらに、フレキシブルプリント基板10は、図2及び図3に示すように、空隙部15近傍のシールドテープ14,14に、シールドテープ14,14同士を導通させる導通部23が空隙部15に沿って複数(本実施形態では5個)スポット状に形成されている。
【0018】
ここで、絶縁フィルム13,13の導通部21,23が形成される部分は、導電パターン12と重ならないような位置に回避されているとともに、予めスポット状の開口部が形成されている。また、導通部21〜23は、シールドテープ14,14がスポット状に圧着して形成されている。
【0019】
このように本実施形態によれば、シールドテープ14,14が導電パターン12を含む導電パターン領域毎に空隙部15を介して分離して形成されていることにより、シールドテープ14,14が切り分けられるので、個別にシールドした場合と同様に良好な電気的性能を維持しつつ、金型費を削減することが可能になる。
【0020】
また、本実施形態によれば、空隙部15近傍のシールドテープ14,14に、シールドテープ14,14を導通させる導通部23が空隙部15に沿って複数スポット状に形成したことにより、シールド部分が袋状に形成されるため、各導電パターン12のノイズが影響し合うのを一段と確実に防止することができる。
【0021】
(第2実施形態)
図4は本願の第2実施形態を適用したフレキシブルプリント基板を示す平面図である。なお、前記第1実施形態と同一又は対応する部分には、同一の符号を用いて説明する。
【0022】
図4に示すように、本実施形態のフレキシブルプリント基板10Aは、空隙部15近傍のシールドテープ14,14に、シールドテープ14,14同士を導通させるための導通部25が空隙部15に沿って帯状に形成されている。
【0023】
また、空隙部15を介して導通部25に対向するシールドテープ14,14には、前記第1実施形態と同様にスポット状に形成された導通部23が複数(本実施形態でも5個)配置されている。
【0024】
このように本実施形態によれば、空隙部15近傍のシールドテープ14,14に、シールドテープ14,14同士を導通させる導通部25を空隙部15に沿って帯状に形成したことにより、前記第1実施形態と比較して導通面積が増加し、各導電パターン12のノイズが影響し合うのを一段と確実に防止することができ、高いシールド効果が得られることとなる。
【0025】
また、本実施形態によれば、空隙部15を介して導通部25に対向するシールドテープ14,14にもスポット状に形成された導通部23を複数配置したことにより、各導電パターン12のノイズが影響し合うのをさらに確実に防止することができ、極めて高いシールド効果が得られることとなる。
【0026】
ここで、本実施形態では、空隙部15を介して対向するシールドテープ14,14にそれぞれ導通部25、導通部23を配置したが、いずれか一方を配置した場合でも、導通部25、23の両方を配置しない場合に比べて電気的性能を改善することができる。
【0027】
なお、本願は、上記各実施形態に限定することなく、種々の変更が可能である。例えば上記各実施形態では、本願をフレキシブルプリント基板(FPC)に対して適用した例について説明したが、フレキシブルフラットケーブル(FFC)に対しても適用可能であり、要するにフレキシブル基板であれば如何なるものでも適用することができる。
【0028】
また、上記各実施形態では、3組のフレキシブルプリント基板を一つにまとめた例について説明したが、例えば一対のフレキシブルプリント基板でも電気的性能上シールドを分離させたいパターンが存在する場合についても適用することができる。
【0029】
さらに、上記各実施形態では、シールドテープ14,14を導電パターン12を含む導電パターン領域毎に空隙部15を介して2つに分離して形成するようにしたが、シールドテープをそれ以上の数に分離して形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】シールドテープにより覆われた従来のフレキシブルプリント基板の一例を示す平面図である。
【図2】本願の第1実施形態を適用したフレキシブルプリント基板を示す平面図である。
【図3】本願の第1実施形態を適用したフレキシブルプリント基板を示す断面図である。
【図4】本願の第2実施形態を適用したフレキシブルプリント基板を示す平面図である。
【符号の説明】
【0031】
10:フレキシブルプリント基板
10A:フレキシブルプリント基板
11:雄コネクタ
12:導電パターン
13:絶縁フィルム
14:シールドテープ
15:空隙部
21:導通部
22:導通部
23:導通部
25:導通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電パターン領域を備えたフレキシブル基板をシールド部材によりシールドするフレキシブル基板のシールド構造であって、
前記シールド部材を少なくとも2つの前記導電パターン領域毎に分離して形成したことを特徴とするフレキシブル基板のシールド構造。
【請求項2】
請求項1に記載のフレキシブル基板のシールド構造において、
前記シールド部材は、前記導電パターンの両面に絶縁層を介して積層され、前記シールド部材を分離する空隙部近傍の前記シールド部材の少なくとも一方に、前記両面に積層されるシールド部材を導通させる導通部を設けたことを特徴とするフレキシブル基板のシールド構造。
【請求項3】
請求項2に記載のフレキシブル基板のシールド構造において、
前記導通部は、前記空隙部に沿って複数スポット状に形成したことを特徴とするフレキシブル基板のシールド構造。
【請求項4】
請求項2に記載のフレキシブル基板のシールド構造において、
前記導通部は、前記空隙部に沿って帯状に形成したことを特徴とするフレキシブル基板のシールド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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