説明

フレキシブル時分割多重化において複数の情報信号を伝送する装置および方法

時分割多重化プロセス当りの次の伝送サイクルにおいて伝送される情報信号部分の正確なデータレート解析は、最初のうちは省略される。その代わりに、次のデータレートに対する高度に正確な推定値に基づいて、相対的待時間(δ‐T)に対する推定値が、現在の伝送サイクルにおいて、同じサービスの現在のタイムスライスから次のタイムスライスまで伝送される。次の伝送サイクルにおいて、個々の情報信号に対する推定されたデータレートから偏移することができる実際のデータレートをセットすることができ、その結果として、次の伝送サイクルに対する予測されたタイムスライス境界をシフトすることができる。しかしながら、タイムスライス境界における位置のシフトは、いくつかの境界条件に従う。次の伝送サイクルのいかなるタイムスライスも、そのシグナルされた推定開始時刻の前に始まることができない。一定のデータレートの場合には、推定されたタイムスライス構造と実際のタイムスライス構造は同一であり、この場合には、導入されたコンセプトはタイムスライスの利益と有効性を活用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、統計的多重化、特に、ディジタル映像放送システムにおいて例えば視聴覚コンテンツを伝送するために使用できるような統計的時分割多重化において、複数の情報信号を伝送するコンセプトに関する。
【背景技術】
【0002】
DVB‐Hシステム(DVB‐H:ディジタル映像放送携帯端末)において、いくつかのマルチメディアサービス、特にディジタル映像信号は、トランスポートストリームにおいて、準一定のビットレートまたはデータレートを有する通信路を介して時分割多重化で伝送することができる。各映像信号が固定のデータレートまたは符号化レートをアサインされている場合、符号化された情報信号によって、例えば、プログラム提供者は、時には高価である伝送容量と、重要なシーンに対して獲得することができる画像品質とのトレードオフを見いだすことを強いられる。この状況において、時折、データレートまたは圧縮レートは十分でなく、詳細においてリッチであるシーンは品質の毀損を被るかもしれない。他方、固定的にアサインされた符号化レートによって、アサインされた符号化レートが現在のシーンに必要な符号化レートを超過し、それ故、符号化レートまたはコストが浪費されることも起こるかもしれない。
【0003】
現在の画像コンテンツに依存して、ビデオエンコーダは、例えば、高品質のテレビ伝送を確実にするために、データレートおよび/または符号化レートの異なるレベルを必要とする。例えば、スポーツ放送は、その画像コンテンツが多くのモーションを含むので、むしろ静的な画像コンテンツを持つ、例えばトークショーまたはニュース放送よりも、通常は高いデータレートを必要とする。特に、高いデータレートは、詳細においてリッチで多くのモーションを含むシーンを伝送するために必要とされる。
【0004】
映像の符合化および/または圧縮法は、例えば、画像に対して、次の、例えばエントロピーベースの、予測の残差の圧縮によって動き補償されたまたは画像内部の予測を実行する、いわゆるハイブリッドエンコーダのような予測に基づいている。これは、画像内(イントラ)および/または画像間(インター)の類似性は、予測のために活用されることを意味する。前記予測は、画像内容に依存して、さまざまな成功の度合いに連動する。従って、残差信号は、予測の品質に依存して、より大きいかより小さい。より大きい残差信号は、符号化のためにより大きいビット数を必要とする。逆にいえば、動き補償の符合化も、サイド情報として、符合化のためのビットを必要とし、そのため、より複雑な予測は必ずしも改良された圧縮レートに結果としてならない。全体として、理想的な画像品質、またはレートと品質の理想的なトレードオフは、利用可能なさまざまなデータレートに対して、それ故にさまざまな圧縮レートに対して発見することができる。この利可能なレートと達成可能な画像品質の関係は、信号に依存する。従って、異なる圧縮レートまたはデータレートは、異なるシーンの符合化に対して同じ主観的画像品質を獲得するために必要である。
【0005】
プログラム数またはプログラム提供者数が大きければ大きいほど、すべてのプログラムが、符号化するために非常に高いデータレートを同時に必要とすることはありそうにない。特定の映像において、いくつかの情報信号が、トランスポートストリームにおいて一定な全体のデータレートを有する通信路を介して伝送される場合、データレートにおける前記差異は、個々のサービスにデータレートをアサインすることに活用することができる。
【0006】
このために、DVB‐Hネットワークの個々のデータレートは、いわゆる統計的多重化によって、動的に構成することができる。これは、符号化レートと画像品質の比率が最適になるようなデータレートを分配することを含む。この方法は、協調的であり、個々のサービスのデータレートの合計が、利用可能な全体のデータレートよりも常に小さいままであることを必要とする。各情報信号に固定のデータレートを割り当てる代わりに、統計的多重化は、伝送される画像素材のコンテンツを解析し、一定な全体のデータレートを有する通信路を介したトランスポートストリームにおける共有伝送に対する複数の情報信号に、予測属性に依存して、異なる個々のデータレートをアサインする。各映像に最大必要なデータレートをアサインする代わりに、知覚される画像品質を低減させることなく、映像当りの平均データレートを明らかに低減させて動作することが可能である。それ故、全体の品質の毀損は、このようにして低減することができる。
【0007】
DVB‐H受信機のような移動端末での映像または情報信号の受信は、明らかに、バッテリーが非常に短い時間内に消耗するという結果になってはならない。DVB‐Tシステム(DVB‐T:地上ディジタル映像放送)に対して、全てのデータストリームは、例えば、テレビ番組のようなデータストリームの中に含まれるいずれかのサービスになすことができるアクセスの前に、常に復号化されなければならない。DVB‐Hでは、ちょうど選択されたサービスまたはプログラムのデータを含むデータストリームの一部またはタイムスライスのみが受信される、いわゆるタイムスライス技術を用いる。DVB‐Hでは、それ故、異なるサービスの併合または多重化は純粋な時分割多重化において実行され、各サービスの情報信号は圧縮されたデータパケットまたはタイムスライスにおいて周期的に送られる。このように、個々のサービスは、連続的には発行されず、しかし時々のみ対応して高いデータレートで発行され、時には全く発行されない。いくつかのサービスの時分割多重化は、例えば、図7に示されるような、準一定のデータレートを有する連続データストリームをもたらす。
【0008】
図7は、一定の平均データレートBrを有する連続データストリーム700を示す。データストリーム700は、タイムスライス702に編成されたMPEG‐2互換(MPEG:動画専門家グループ)の基本データストリームから成るMPEGトランスポートストリームを表す。図7は、プログラム特有の情報およびメタデータ704(PSI/SI)がタイムスライス法の支配を受けるものでないことを明らかにしている。加えて、多くのDVB‐H多重化において、いずれにせよこのような固定された構成が用いられる場合であっても、固定された、例えば反復的である個々のサービスのタイムスライス702へのアサインも、固定された大きさまたはその継続時間も処方されない。情報信号を有するタイムスライス702の継続時間は、一般に、前記タイムスライスの中で伝送されるそれぞれのサービスの現在のデータパケットのサイズに依存する。例えば、映像信号が現在比較的高い符号化レートを必要とする場合、映像信号を伴うことができるタイムスライス702は、対応して長い継続時間を有する。
【0009】
図7に描かれた可変のタイムスライス構造によって、データストリーム700の受信機は、それに伝送されるタイムスライス702の正確な位置と構成を持っていなければならず、そのため、個々の放送サービスのシーケンシャルなデータフローはそこから再構成することができる。DVB‐Hに対して、いわゆるδ‐T法がこの目的に用いられる。それは、各タイムスライス702の中で、同じサービスの次のタイムスライスを受け取ることができるときに受信機に知らせる相対的待時間δ‐Tを伝送することを含む。システムは、数ミリ秒から最大約30秒の範囲内で、待時間をシグナルすることを許容する(図8参照)。
【0010】
受信機内で、着信するタイムスライス702は、バッファリングされ、引き続いて一定のレート(それぞれのサービスの平均のデータレートまたは符号化レートで)で読み出される。タイムスライス702の継続時間は、通常は数百ミリ秒の範囲内にあるが、δ‐Tによって、タイムスライス間の受信機のスイッチオフ時間は、多くの秒とすることができる(上記参照)。オン/オフ時間の比率に依存して、DVB‐Tと比較して、結果として90%以上の省電力とすることができる。このため、可能な限り効果的であるようにするため、タイムスライスは十分な数のサービスまたは情報信号を前提とする。
【0011】
DVB‐Hシステムにおいて、情報信号またはサービスは、インターネットプロトコル(IP)に基づいて伝送される。このアプローチは、他のネットワークとの単純な接続を可能とする。MPEG‐2トランスポートストリーム700は、物理的キャリアとして役立つ。トランスポートストリーム内へのIPデータの埋込は、既存の適応プロトコル、いわゆるマルチプロトコルカプセル化(MPE)を用いて遂行される。トランスポートストリーム700を無線通信路の干渉作用から保護するために、DVB‐Hは、IPデータがMPEによってカプセル化される前にIPデータストリームのレベルで適用されるエラー保護(MPE‐FEC)に用いることを付加的に含む。このメカニズムによって、受信電力は、特にモバイル受信に対する信頼性と、例えばマルチパス伝搬および結果として生じる受信ポイントでの破壊的な干渉によって起きるような強いパルス形の干渉に関して、一般的に改善される。
【0012】
MPE‐FECは、タイムスライスとMPEに非常に類似している。これらの3つの技術は、互いに直接調整され、一緒にいわゆるDVB‐Hコーデックを形成する。さまざまなソースからのIPデータストリームは、タイムスライス法によって個々の要素ストリームとして多重化される。エラー保護MPE‐FECは、各個々の要素ストリームに対して別々に計算され、加算される。この後、IPパケットをいわゆるマルチプロトコルカプセル化のセクションにカプセル化し、引き続きトランスポートストリームへ埋め込むことが続く。
【0013】
時間的挙動に関して、δ‐T法の不利益は、DVB‐Hサービスのデータレートまたは符号化レートがそれぞれのサービスの将来のタイムスライスに対してのみ変えることができるということである。個々のサービスのタイムスライスの距離に対応するアルゴリズムの遅延が結果として生ずる。一定レートのサービスのイベントにおいては、この不利益は関係しない。この場合に、サービスのペイロードデータは、直ちにカプセル化し、タイムスライスに結合することができる。
【0014】
これは、しかしながら、例えば統計的多重化におけるような可変のデータ/符合化レートを使用するサービスに対しては異なる。オフセットのシグナリングによって、このようなサービスは、アサインされたタイムスライスの反復レートに従って遅延されなければならない。現在の伝送サイクルのタイムスライスにおいて、次の伝送サイクルの対応するタイムスライスまでのそれぞれの相対的待時間δ‐Tを指示することができるように、次の伝送サイクルのタイムスライス構造、すなわちタイムスライス開始時刻および/またはタイムスライス継続時間は、理想的には既に認識されていなければならない。結局、サービスのデータレート要求条件は、1つのタイムスライスからその次のタイムスライスまで変化することができ、その結果として、次の伝送サイクルに対して、現在の伝送サイクルと比較して完全に異なるタイムスライス構造に結果としてなることができる。
【0015】
統計的多重化に対して、将来のデータレート要求条件または符号化レート要求条件、およびこのように次のタイムスライス構造を知るために、情報信号は予め既に解析されていなければならない。これは、相当な潜伏期に結果としてなる可能性がある。図9のタイムチャートは、この状況の図解図を示す。
【0016】
図9は、送信機サイド上のサービスのために着信する要素ストリーム900の処理の時間的シーケンスを示す。データストリーム900は、部分N−1、N、N+1に区分される。部分Nのデータは、タイムスライス902‐Nの中で伝送され、部分N+1のデータは、次のタイムスライス902‐(N+1)の中で伝送される。図9から分るように、データストリーム部分N+1に対するデータレート解析904‐(N+1)は、それぞれの時間的に前の部分のデータを有するタイムスライスが送信される時刻、すなわちタイムスライス902‐Nまでに完了されていなければならない。これは、既に上述したように、次のタイムスライス902‐(N+1)までの相対的待時間が、タイムスライス902‐Nにおいて集積されるという事実による。このように、部分Nに対するデータレート解析は、タイムスライス902‐(N−1)のタイムスライス開始時刻TN-1までに既に完了されていなければならず、部分N+1に対するデータレート解析は、タイムスライス902‐Nのタイムスライス開始時刻TNまでに既に完了されていなければならない。これは、要素ストリーム900のデータ部分N,N+1の到着と、対応する再生時刻またはタイムスライス開始時刻TNまたはTN+1の間の比較的長い潜伏期TLに結果としてなる。
【0017】
上述の長い潜伏期TLは、実際に統計的多重化の目標に相反する。
【0018】
したがって、本発明の目的は、データ入力と再生時刻の間の、先行技術と比較して低減された潜伏期を可能にするコンセプトを提供することである。提供されるコンセプトは、受信機のエネルギー効率を改善することも意図する。
【0019】
この目的は、請求項1の構成を有する装置と、請求項14に記載されたような方法によって達成することができる。
【0020】
本発明の発見は、上述された目的が、次の伝送サイクルにおいて伝送される情報信号部分の正確なデータレート解析または符号化レート解析が初期的に省略され、その代わりに、前記次のデータレートまたは符号化レートに対する高度に正確な推定値に基づいて、相対的待時間δ‐Tの推定値が現在の伝送サイクルのタイムスライスの中で伝送されることにおいて達成できることである。実際のデータレートまたは符号化レートは、しかしながら、個々の情報信号に対する推定データレートから偏移することができ、次の伝送サイクルにおいてセットすることができ、その結果として、次の伝送サイクルに対する予測タイムスライス境界をシフトすることができる。タイムスライス境界、言い換えればタイムスライス開始時刻の可能なシフトは、しかしながら、いくつかの境界条件に従う。次の伝送サイクルのいかなるタイムスライスも、そのシグナルされた推定開始時刻の前に開始しないことは、重要である。このように、一方では、受信機がそれに指定されたタイムスライスを見落とさないことを確実にすることができる。他方では、タイムスライス構造の非常に正確な推定によって、タイムスライスが以前にシグナルされたよりも時間においてかなり後のポイントに開始しないことを達成することができ、その結果として、受信機は万が一にもその受信時間を繰り越す必要がないので、受信電力を節約することができる。これは、主に比較的遅いレートでのみ可変の個々のサービスのデータレートまたは符合化レートに適用される。一定のデータレートに対して、推定されたタイムスライス構造と実際のタイムスライス構造は同一でさえあり、その結果、この場合には、導入されるコンセプトはタイムスライスの利益と有効性を十分に活用する。
【0021】
より一般的な条件において、情報信号そのもの、および/または、符号化レートと品質の比率、および/または、符号化レートとデータレートコストの比率のような、伝送サイクル毎のすべての情報信号に対して一定のままであるデータレート推定器の入力量によって、相対的待時間に対して決定される推定値は、実際の待時間にマッチし、その結果、そこから導き出される推定タイムスライス開始時刻と次の伝送サイクルの実際のタイムスライス開始時刻は正確に一致する。それ故、この場合には、受信機サイドで受信機を早くスイッチオンしすぎることによって電力が浪費されない。
【0022】
それぞれ、推定された符号化レートまたは実際の符号化レートとともに着信する情報信号部分の継続時間は、それぞれさまざまなタイムスライスの中で伝送される推定されたデータ量または実際のデータ量を同等にもたらす。このように、データ量を推定し、実際のデータ量を決定することを論じることもできる。
【0023】
伝送サイクルのさまざまなタイムスライス間のデータレートの再配分は、個々のデータレートのコストに依存するのと同様に、個々のサービスに対する現在実際に必要なデータレートに依存して遂行される。このコストは、演算パワーのような技術的コストであってもよく、金銭上のコストであってもよい。この依存は、さもないとあらゆるサービスが、それに対して可能な最大の利益を得るために、それぞれの推定の偏差において可能な限りそのタイムスライスを延長しようとするので、必要である。すなわち、実際には、データレートコストは、必要に応じてデータレートまたはタイムスライス長を減らすまたは増やす動機を形成するから、サービス提供者の無制限の協力を仮定することができない。再配分において、すべてのタイムスライスはおおよそ等しいこと、すなわち、各タイムスライスは、タイムスライス構造の中での位置に関係なく、再配分においてそれに利用できる可能性または自由度を有することに留意すべきである。
【0024】
本発明の実施形態は、現在および次の伝送サイクルにおける複数の現在および次のタイムスライスの中で、時分割多重化によって複数の情報信号を伝送する装置を提供する。発明の装置は、情報信号のそれぞれに対して、情報信号が現在のタイムスライスに追従するタイムスライスの中でおおかた符号化されるデータレートを推定するように構成された推定器を備え、次の伝送サイクルに対する推定されたタイムスライス構造を取得する。加えて、装置は、情報信号のそれぞれに対して、推定されたタイムスライス構造に基づいて、情報信号の次のタイムスライスの推定された開始時刻を示す相対的待時間を決定するように構成されたプロセッサを備える。現在の伝送サイクルにおいて、実際のデータレートは、データレート推定器によって推定されたデータレートから偏移することが可能であって、情報信号に対する実際のデータレートに基づいて、追従するタイムスライスのそれぞれに実際の開始時刻をアサインし、実際のタイムスライス構造を取得するように構成された、タイムスライス構造化器が提供される。タイムスライス構造化器は、それぞれ推定された開始時刻よりも大きいまたは等しくなる次のタイムスライスの実際の開始時刻を選択するように構成される。
【0025】
ゆっくりと変化できるだけのデータレートである場合、または推定されたデータレートと実際のデータレートが良くマッチする場合には、推定されたタイムスライス構造と実際のタイムスライス構造はほとんど同一である。一定のデータレートである場合、または推定されたデータレートと実際のデータレートが完全にマッチする場合は、推定されたタイムスライス構造と実際のタイムスライス構造は同一であり、その結果、受信機は最大の電力効率で動作することができる。すなわち、推定器が良ければ良いほど推定された値と実際の値の偏差は小さく、その結果、受信機はタイムスライスより前に、またはほんの少しだけ前にはスイッチオンされない。
【0026】
このように、本発明によって、シグナルされたδ‐Tの精度に依存する、受信機において必要な電力より大きな受信電力を浪費することなく、統計的多重化の利益をタイムスライスの利益およびδ‐T法の利益と結合することができる。
【0027】
本発明の有利な実施態様は、従属クレームの内容である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の実施形態は、次の添付図面を参照して以下でより詳細に説明される。
【図1】本発明の一実施形態による、フレキシブル時分割多重化において複数の情報信号を伝送する方法を示す。
【図2】本発明の一実施形態による、フレキシブル時分割多重化における複数の情報信号の概略図を示す。
【図3】本発明の一実施形態による、フレキシブル時分割多重化において複数の情報信号を伝送する装置のブロック図を示す。
【図4】タイムスライス開始時刻のシフトの概略図を示す。
【図5】本発明の一実施形態による、フレキシブル多重化システムの概略図を示す。
【図6】本発明の一実施形態による、フレキシブル多重化技法のタイミング図を示す。
【図7】DVB‐H多重化のアーキテクチャの一例を示す。
【図8】ヨーロッパ電気通信規格ETSI EN302304から取得されたδ‐Tシグナリングを示す。
【図9】従来の統計的多重化における、可変データレートによるサービスのタイムフローの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
最初に、本発明の基本的コンセプトは、図1および2に記載される。このために、図1は、統計的時分割多重化によって複数の情報信号を伝送する発明の方法100の概略フローチャートを示す。図1の方法100の個々の方法ステップは、次に図2によってより詳細に説明される。
【0030】
トランスポートストリーム200は、タイムスライスB[.](i=1,…,I)が、複数のサービス提供者Iによる時分割多重化において配置され、または伝送されると仮定される。タイムスライスBi[.]は、連続する伝送サイクル{…,Z[n−1],Z[n],Z[n+1],…}において配置される。
【0031】
図1に描かれた発明の方法100の第1ステップ102において、n番目の伝送サイクルのI個のタイムスライスBi[n](i=1,…,I)のそれぞれに対して、それぞれの情報信号(サービスiによる)が現在のタイムスライスBi[n]に追従する(n+1)番目の伝送サイクルのタイムスライスBi[n+1]の中で伝送されると期待されるデータレートri[n](i=1,…,I)が推定される。これが、次の伝送サイクルZ[n+1]に対する推定タイムスライス構造に結果としてなる。この推定タイムスライス構造は、次のタイムスライスBi[n+1](i=1,…,I)の推定タイムスライス継続時間および/またはタイムスライス開始時刻を含む。
【0032】

【0033】

【0034】

【0035】
以下の段落において、発明のコンセプトを更に詳細に記載する前に、この明細書において使用される数学記号を初めに説明する。
I: DVB‐H多重化におけるサービスの数
{S1,S2,…,Si,…,SI}: DVB‐H多重化のサービスの量
{B[1],B[1],B[2],…,B[n],…}: DVB‐H多重化における全てのサービスのタイムスライスの時間的に線形なシーケンスの量
{Bi[1],Bi[2],…,Bi[n],…}: サービスSiに帰属する全てのタイムスライスの時間的に線形なシーケンスの量
r[n]: タイムスライスB[n]のシグナルされたレートの要求条件
eff[n]: タイムスライスB[n]の有効データレート
w[n]: タイムスライスB[n]の所望のレート
max: タイムスライスの開始に対する最大時間ジッタ
ΔT[n]: シグナルされた開始と比較したタイムスライスB[n]の開始の遅延
ΔTmax[n]: タイムスライスB[n]のシグナルされた開始と比較した最大限可能な遅延
Δt[n]: タイムスライスB[n]のタイムスライス長における時間的変化
f(i;n): タイムスライスBi[n]の線形なタイムスライス数を算出する

c: 伝送容量の秒当りのコスト
U[n]: タイムスライスB[n]の時の関連サービスに対するユーティリティ関数(支払い関数)
【0036】
次に、現在および次の伝送サイクルZ[n],Z[n+1]における複数の現在および次のタイムスライスBi[n],Bi[n+1](i=1,…,I)において、時分割多重化によって複数の情報信号301‐i(i=1,…,I)を伝送する装置300が、図3によって記述される。
【0037】
装置300は、情報信号301‐iのそれぞれに対して、現在タイムスライスBi[n]に追従するタイムスライスBi[n+1]における情報信号301‐iが、関連するエンコーダ304‐i(i=1,…,I)によっておそらく符号化されるデータレートr[f(i;n+1)]を推定し、次の伝送サイクルZ[n+1]に対する推定タイムスライス構造を取得するように構成された推定器または予測器302を備える。
【0038】

【0039】

【0040】
伝送サイクルZ[n+1]における情報信号301‐iがエンコーダ304‐i(i=1,…,I)によって実際に符号化される実際のデータレートreff[f(i;n+1)]は、以下に説明される、所望の、言い換えれば推奨されたデータレートrw[f(i;n+1)]およびさまざまな更なる境界条件から生ずる。
【0041】
実施形態によれば、プロセッサ306は、それ故、実際のデータレートreff[f(i;n)]は、前の伝送サイクルZ[n−1]において推定器302によって推定されたデータレートr[f(i;n)]から偏移することが可能であって、現在のタイムスライスに関連する情報信号301‐iに対する実際のデータレートreff[f(i;n)]に基づいて、現在タイムスライスBi[n]のそれぞれに、実際の開始時刻Ti[n]をアサインして、現在のタイムスライスに対する実際のタイムスライス構造を取得し、次の伝送サイクルZ[n+1]に対する推定されたタイムスライス構造と現在の伝送サイクルZ[n]に対する実際のタイムスライス構造に基づいて、情報信号のそれぞれに対する相対的待時間δ‐Ti[n]を決定するように構成される。実施形態によれば、プロセッサ308は、関連する情報信号301‐iの現在のタイムスライスBi[n]において決定された相対的待時間δ‐Ti[n]のそれぞれを組み込み、それらを、多重化されたタイムスライスBi[n](i=1,…,I)から生ずる多重信号に対して、リモート側の受信機に伝送するように更に構成される。δ‐T値が伝送される従来のシステムと比較して、次のサイクルZ[n+1]の対応する信号部分がまだ解析されていないので、これは、それ故、現在の伝送サイクルZ[n]においてまだ知られていない実際のδ‐T値に対する推定値に現在関係している。これは、タイムスライスの中の信号部分の入力とそれらの符号化されたバージョンの伝送との間のより短い潜伏期に結果としてなる。
【0042】
発明のコンセプトが、以前に推定されたタイムスライス開始時刻Ti[n+1]を、時間を遡ってシフトすることを可能にする場合であっても、後ほど説明されるように、受信機が電力効率のよい方法で作動することが可能であるのはほとんど偏差を有しない推定値T^i[n+1]のみであるので、δ‐T値、従って、開始時刻Ti[n+1](i=1,…,I)の推定が可能な限り正確であることは有益である。
【0043】

【0044】

【0045】
ここで、r[f(i;n)]は、(サイクルZ[n−1]において既に推定された)現在のタイムスライスBi[n]のシグナルされたデータレートを示し、r[f(i;n+1)]は、i番目のサービスSiの追従するタイムスライスの推定されたデータレートを示す。rw[f(i;n)]は、タイムスライスBi[n]に対する推奨されたデータレートであるが、reff[f(i;n)]は、タイムスライスBi[n]に対する最終的に割当られたまたは実際のデータレートである。補償係数α∈[0;1)は、誤差補償の程度を調整する。
【0046】
当業者は、式(1)によって記述された予測推定器302が単に例示的であり、おそらくは異なって実現することができることを容易に認識するであろう。予測器を実施するアルゴリズムは、専門文献により知られており、そのためここでは更に詳細には言及しない。既に何度か強調されたように、推定値r[f(i;n+1)(i=1,…,I)の品質は、受信機で達成することができる消費電力に対して決定的である。
【0047】
本発明の実施形態は、関係するタイムスライス開始時刻Ti[n]またはそれらの推定値がδ‐T法(δ‐Ti[n−1])によって受信機に既にシグナルされた場合であっても、原則として、特定の制限の中で個々のタイムスライスBi[n]のデータ量を変えることが可能なフレキシブル時分割多重化を実現する。発明のコンセプトは、タイムスライスBi[n]の、隣接した追従するタイムスライスBi+1[n]、Bi+2[n]、・・・への可能な延長に基づいている。発明のコンセプトは、特定の制限の中で個々のサービスまたは情報信号301‐iのデータレートの再配分を可能にする。
【0048】
タイムスライスの延長は、単純な実施例によって以下に説明される。考慮された伝送サイクルの中で互いに直接追従するサービスS2およびS3のタイムスライスは、それぞれ考慮される。前に、すなわち前の伝送サイクルにおいて、決定され、シグナルされたサービスS2のデータレートが、現在のタイムスライスに対してあまりに低く、同様に、S3のデータレートがあまりに高いことが判った場合、S2のタイムスライスの継続時間は特定量延長することができる。この場合、S2は所望のデータを伝送することができ、S3のデータレートは下位のレベルに低下する。しかしながら、S3に対して、これはS3のタイムスライスの開始が先にシグナルされたよりも後であるという不利益を伴う。この場合、サービスS3を期待している受信機は、あまりにも早く起動され、従って受電電力が無駄になる。
【0049】
更なる実施例において、S3のデータレートは結局変化しないと仮定される。S2に必要な付加的データレートは、この実施例において、代わりにS4によって提供される。S4のタイムスライスは、S3のタイムスライスに直ちに追従する。この場合、
・S2のタイムスライスは、延長することができ、
・S3のタイムスライスは、そのとき、延長された時間間隔によって全体においてシフトすることができ、
・S4のタイムスライスは、したがって短くすることができる。
【0050】
これらの例示的な状況は、図4に描かれている。この例において、また、データレートはうまく再配分することができる。Δt3とΔt4によって予定より遅れているタイムスライスの開始は、それぞれS3とS4の双方に対して生ずる。2つの異なるサービスの間のデータレートの交換に対して、すべての中間サービス(ここではS3)のタイムスライスが予定より遅れて再生されることは明らかである。
【0051】
以下の段落は、異なるタイムスライス間のデータレートの交換の基礎をなす条件の説明を提供する。
【0052】
このために、推定開始時刻がδ‐T法によって既に受信機にシグナルされた連続するタイムスライスB[1],…,B[n],…,の年代順配列が考慮される。各タイムスライスB[n]に対して、タイムスライス継続時間は、値Δt[n]によって変えられる。このように、タイムスライス継続時間は、値Δt[n]に変えられる。これは、次のようなタイムスライスB[n]の推定された開始時刻からの偏差に結果としてなる。

【0053】
更なる次の観測に対する境界条件として、タイムスライスB[n]がその推定されたまたはシグナルされた開始時刻の前に決して開始してはならないという事実は、結果として次のようになる。

【0054】
上述のデータレートの再配分がゲーム理論で定義されたようなゲームであるとみなされる場合、各参加者に対する最適な戦略は、最大量によってそれらのタイムスライスを延長し、可能な限り高いデータレートに適応できるようにすることにあるので、最大利益を得るためにゲームの全ての参加者が協力しなければならないことは明らかである。この機能上のフレキシブルな多重化の前提条件として協働する義務を回避するために、次の制限ルールが、それ故、データレートの再配分に対して導入される。
【0055】
1.タイムスライスB[f(i;n)]がΔt[f(i;n)]]によって延長された場合、サービスSiが次のタイムスライスB[f(i;n+1)]の中で前記延長に対して補償することが可能でなければならない。すなわち、次のタイムスライスB[f(i;n+1)]のスケジュールされたタイムスライス継続時間は、Δt[f(i;n)]より長くなければならない。このために、タイムスライス構造化器308は、実施形態によれば、現在のタイムスライスB[f(i;n)]のそれぞれに、実際の開始時刻および前に推定されたデータレートr[f(i;n−1)]から偏移することができる実際のデータレートreff[f(i;n)]をアサインし、次のタイムスライスB[f(i;n+1)]の推定継続時間が差分継続時間Δt[f(i;n)]より長いときにのみ、現在のタイムスライスの継続時間を差分継続時間Δt[f(i;n)]によって変えるように構成される。
【0056】
2.現在タイムスライス長の実際の変化Δt[f(i;n)]、すなわち差分継続時間は、不等式(3)を観測しながら、次式によって決定される。

【0057】
この局面において、Δtw[f(i;n)]は、現在のタイムスライスB[f(i;n)]の所望の、言い換えれば推奨された差分継続時間を示す。現在のタイムスライスB[f(i;n)]に対する推奨されたデータレートrw[f(i;n)]に直接依存する推奨差分継続時間Δtw[f(i;n)]は、実施形態によれば、例えば、データレート単位当りの価格のようなデータレートコストから付加的に生ずる。このことは、以下において更に詳細に言及される。サービスSiのそれぞれ第1タイムスライスB[f(i;0)]に対する推奨差分継続時間Δtw[f(i;0)]はゼロ、すなわちΔtw[f(i;0)]=0とみなされる。式(4)を実現するために、タイムスライス構造化器308は、実施形態によれば、現在のタイムスライスに対する推奨データレートから生ずる差分継続時間Δtw[f(i;n)]と、前のタイムスライスに対して推奨されたデータレートから生ずる差分継続時間Δtw[f(i;n−1)]と、前の伝送フレームにおいて推定された開始時刻と比較した実際の開始時刻T[f(i;n)]の遅延ΔT[f(i;n)]との関数として、差分継続時間Δt[f(i;n)]を決定するように構成される。
【0058】
式(4)は、2つの連続するタイムスライスB[f(i;n−1)]とB[f(i;n)](またはB[f(i;n)]とB[f(i;n+1)])の間のデータレート交換を事実上記述する。前のタイムスライスB[f(i;n−1)]がΔtw[f(i;n−1)]によって既に延長された場合、この延長継続時間は、式(4)に従って、現在所望の差分継続時間Δtw[f(i;n)]から減算される。これは、前のタイムスライスB[f(i;n−1)]のデータレートの負債が、次のタイムスライスB[f(i;n)]において清算されるという作用に解釈することができる。それ故、前のタイムスライスが延長された場合(Δtw[f(i;n−1)]>0)、この延長時間は、式(4)に従って、現在のタイムスライスB[f(i;n)]の所望の延長Δtw[f(i;n)]から減算され、タイムスライス長の実際の変化Δt[f(i;n)]を取得する。タイムスライス長の実際の変化Δt[f(i;n)]は、もちろん負でもよく、それはタイムスライスB[f(i;n) ]の短縮に対応する。加えて、式(4)は、不等式(3)に違反しないように、現在のタイムスライスB[f(i;n)]が全体の遅延ΔT[f(i;n)]より以上に短縮されてはならない、すなわちΔt[f(i;n)]≧−ΔT[f(i;n)]であることを表す。タイムスライス構造化器308は、それ故、実施形態によれば、情報信号のタイムスロットB[f(i;n)]の差分継続時間Δt[f(i;n)]を、伝送サイクルの前のタイムスライスの負に集積された全体の遅延時間−ΔT[f(i;n+1)よりも長くなるように選択するように構成される。
【0059】
3.全てのnに対して知られているタイムスライスの開始の最大限可能な遅延ΔTmax[f(i;n)]は、各タイムスライスB[f(i;n)]に対して定義される。この最大限可能な遅延ΔTmax[f(i;n)]は、例えば、それぞれのサービスSiのジッタバッファの稼働率から決定することができる。このように、どのタイムスライスB[f(i;n)」も、ΔTmax[f(i;n)」によって許容される以上に遅延されてはならない。隣接するタイムスライスの知られたおよび推定されたシフトを考慮するとき、次のような更なる境界条件が実際の変化Δt[f(i;n)]に対して生ずる。

【0060】

【0061】

【0062】
4.max(Δtw[f(i;n−1)];0)<ΔT[f(i;n)]が適用される各タイムスライスB[f(i;n)]は、代わりに短縮、すなわちΔtw[f(i;n)]<0とすることもできる。ここで、不等式(3)は、再び境界条件として考慮されなければならず、最小限の所望の時間的変化Δtw[f(i;n)]は、式(4)への挿入によって生ずる。

【0063】
既に上述したように、式(7)は、タイムスライスB[f(i;n)]が前にシグナルされたまたは推定された開始時刻の前に開始できるようにタイムスライス長の変化Δt[f(i;n)]が選択されてはならないことを表す。式(7)によるΔtw,minは、このことを明確に表す。
【0064】
上記ルール1〜4は、次のことを意味する。
a)各タイムスライスB[f(i;n)]は、それらのジッタバッファによって、他のサービスによって補償することができるような多くのデータレートを、それ自身の将来のタイムスライスB[f(i;n+1)]から繰り越すことができる。
b)各タイムスライスの間に既に集積された遅延ΔT[n]は、他のサービスのタイムスライス長を短縮することによって、部分的にまたは完全に補償することができる。
【0065】
既に示されたように、タイムスライス長の所望の変化Δtw[f(i;n)]は、実施形態によれば、所望の、言い換えればエンコーダ304‐iによって推奨されたデータレートrw[f(i;n)]と、例えばデータレート単位当りの価格の形のデータレートコストの相互作用から生ずる。すなわち、実施形態によれば、タイムスライス構造化器308は、伝送サイクルの実際のデータレートreff[f(i;n)]のそれぞれを、現在伝送される情報信号301‐iとデータレートコストに依存してセットするように構成される。
【0066】
タイムスライス長における変化Δt[f(i;n)]には、支払い関数がアサインされる。タイムスライスBi[n]またはB[f(i;n)]を延長するサービスSiに対して、負の支払い関数が定義される。この負の支払いは、この延長Δt[f(i;n)]によってタイムスライスがシフトされた全てのサービスSj(j≠i)に等しい役割で(正に)支払われる。しかしながら、タイムスライスが短縮された場合(Δt[f(i;n)]<0)、ここで少ないビットを伝送するサービスはこのシフトの低減に対して支払い等価物を取得する。
【0067】

【0068】
いくつかのタイムスライス延長が重畳された場合、次の支払い関数がそこから生ずる。

【0069】
タイムスライスが延長されたサービスに対する(負の)支払い関数は、次のように式(8)から決定することができる。

【0070】
タイムスライスが短縮され(すなわち(Δt[n]<0)、現存する全体のシフトがこのように完全にまたは部分的に補償される場合、その費用で短縮がなされたサービスは、次のような補償に対する追加の支払いを受信する。

【0071】
このように、タイムスライス当りの全体の支払いは、結果として次のようになる。

【0072】
本発明の実施形態によれば、タイムスライス構造化器308は、それ故、実際のデータレートreff[f(i;n)」のそれぞれを、関連するタイムスライスの中で実際に伝送される情報信号301‐iと、データレートコストCに依存してセットするように構成される。情報信号301‐iのタイムスライスB[f(i;n)]が短縮されたとき(Δt[f(i;n)]<0)、情報信号301‐iのそれぞれは、データレートコストに依存する値u[f(i;n)]を組み入れることができ、情報信号301‐iのタイムスライスB[f(i;n)]が延長されたとき(Δt[f(i;n)]>0)、データレートコストに依存する値u[f(i;n)]は減算することができる。
【0073】
フレキシブル多重化において複数の情報信号301‐iを伝送する全体のシステムは、要約すると図5に示される。
【0074】
図5において、このシステムは、一例として3つのサービスに対して表されている。エンコーダ304‐iは、着信する情報信号301‐iに関する必要なステータスデータを予測器ブロック302‐iに伝送し、その結果、前に記述されたデータレート推定を実行することができる。このデータレート推定に基づいて、将来のδ‐T値が引き続いて算出される。それらは、DVB‐Hマルチプレクサ502によってビットストリームに統合され、引き続いて例えばDVB‐H端末に転送される。このために、エンコーダ304‐iは、タイムスライス構造化器308を介して、DVB‐Hタイムスライス分割化における短期間変更を実行することができる。ブロック308は、図5に描かれるように中央ユニットとして設計することができ、または分散化するように設計することもできる。すなわち、タイムスライス構造化器308は、個々のサービスプロバイダの間で分割されるかもしれず、しかしながら、その結果、各サービスプロバイダは、まだ実行されていないそれぞれの他のサービスの知られた過去のまたは推定された再構造化を考慮に入れながら、その関連するタイムスライスを(再)構成する(式(6)を参照)。このように、この場合には、少なくとも分散化された再構造化ユニットのリンキングが必要となる。いずれの場合においても、前に一例として記述されたような境界条件および仕様が再配分において観測される。
【0075】
各再配分は、個々のエンコーダ304‐iによって起動される。原則として、起動しているエンコーダは、タイムスライスの延長と短縮の間で選択することができる。上記定義された支払い関数u[.]の助けにより、エンコーダ304‐iは、タイムスライスの延長または短縮のコストおよび/または利益を決定することができる。このように、それ自身のデータレート要求条件を制御するために利用可能な評価ツールを有する。
【0076】
提案された本発明のコンセプトは、図9を参照して既に初めに記載された潜伏期、言い換えれば始終端遅延TLを、実際のデータレート分割を知っていなければならない瞬間が実際のペイロードデータの再生時間のより近くに来るように短縮する。この関係は、図6に示される。
【0077】
図6は、さまざまな情報信号部分N−1、N、N+1、N+2に分割された情報信号301‐iを示す。情報信号部分Nに関して、N番目の情報信号部分のデータレート解析602‐Nが完了した瞬間が、初めに記載された図9と比較して、N番目のタイムスライスの再生時間TNのより近くに移動したことを認識することができる。これは、データレート解析602‐(N+1)は、再生時間TNにおいて次の情報信号部分N+1に対して必要とされないが、その代わりに、タイムスライスNの中で伝送されるδ‐T値の推定102、104は、部分N+1に対して実行されるという事実による。この推定は、費用が高くなく、次の情報信号部分N+1を必要としないが、既に記載されたように、過去および現在の情報信号部分を用いて実行することができる(式(1)および(2))。
【0078】
最後に、本発明のコンセプトによって生成されたビットストリームは、規格に合致する端末(例えばDVB‐H端末)によって完全に透明性のある方法で処理することができることに留意すべきである。
【0079】
導入された本発明のコンセプトは、例えば、後述するようにデータレート取引システムにおいて使用することができる。このようなシステムでは、ネットワークの中での、特にDVB‐Hネットワークの中でのデータレートは、情報信号およびネットワークのサービス提供者の間で、市場と同様に取引システムを介して分配される。データレート獲得デバイスまたはソフトウェアエージェント、およびデータレート割当デバイスまたはデータレートエージェントを有する取引プラットフォームが、個々の情報信号提供者のデータレートを制御するために用いられる。取引プラットフォームにおける参加者は、ソフトウェアエージェントまたはデータレート獲得デバイスである。それらは、情報信号提供者に代わって、多重化のデータレートの取引を引き受け、このように、それらにアサインされた情報信号サービスに対する伝送容量を獲得する。
【0080】
本発明は、構成および方法を変化させることができるので、デバイスのそれぞれの構成または説明された手順に限定されないことに留意すべきである。ここで使用された用語は、単に特定の実施形態を記述することを意図したものであり、限定的に用いられるものではない。明細書および請求項の記載において、数量または不定冠詞が用いられる場合、それらは、全体の前後関係によって明らかに示されない限り、複数の要素にも関連し、その逆もまた同様である。
【0081】
DVB‐HがIPデータグラムの形のいかなるデータストリームも伝送するという理由からDVB‐Hネットワークが特に本発明のコンセプトに特に適しているとしても、本発明のコンセプトはDVB‐Hネットワークに限定されない。
【0082】
特に、本発明のコンセプトは、環境に応じて、ソフトウェアで実施することもできることに留意すべきである。実施は、フレキシブル多重化において複数の情報信号を伝送する対応する方法が実行されるように、プログラム可能なコンピュータシステムおよび/またはマイクロコントローラと協働することができる電子的に読み込み可能な制御信号を有するディジタル記憶媒体、特にDVD、CDまたはディスク上で行うことができる。通常、本発明は、このように、コンピュータプログラム製品がコンピュータおよび/またはマイクロコントローラ上で動作するとき、本発明の方法を実行する機械読み取り可能な媒体に記憶されたプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品においても成立する。
言い換えれば、本発明は、このように、コンピュータプログラムがコンピュータおよび/またはマイクロコントローラ上で動作するとき、方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムとして実現することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【請求項2】

【請求項3】
前記プロセッサ(306)は、関連する情報信号(301‐i)の現在のタイムスライス(Bi[n])において、前記決定された相対的待時間(δ‐Ti[n])のそれぞれを統合し、それらを受信機に伝送するように構成された、請求項1または2に記載された装置。
【請求項4】
前記推定器(302)は、前記追従するタイムスライス(Bi[n+1])に対する情報信号(301‐i)のデータレート(reff[f(i;n+1)])を、少なくとも前記情報信号の前のおよび/または現在の実際のデータレート(reff[f(i;n−1)]);reff[f(i;n)])に基づいて推定するように構成された、先行する請求項のいずれかに記載された装置。
【請求項5】
前記推定器(302)は、前記追従するタイムスライス(Bi[n+1])に対する情報信号(301‐i)のデータレート(reff[f(i;n+1)])を、前記推定されたデータレート、前記実際のデータレートおよび前記次のタイムスライスに対して推奨された前記情報信号のデータレートに基づいて推定するように構成された、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記タイムスライス構造化器(308)は、前記現在のタイムスライス(B[f(i;n))])のそれぞれに、実際の開始時刻と、前に推定されたデータレート(reff[f(i;n−1)])から異なることができる実際のデータレート(reff[f(i;n)])をアサインし、前記次のタイムスライス(B[f(i;n+1)])の推定された継続時間が差分継続時間(Δt[f(i;n)])より大きいときにのみ、現在のタイムスライスの継続時間を前記差分継続時間(Δt[f(i;n)])によって変更するように構成された、先行する請求項のいずれかに記載された装置。
【請求項7】

【請求項8】
前記タイムスライス構造化器(308)は、前記次のタイムスライス(B[f(i;n+1)])のそれぞれに、前記情報信号(301‐i)の実際のデータレート(reff[f(i;n+1)])に従って差分継続時間(Δt[f(i;n+1)])をアサインし、いずれの場合においても、前記実際の開始時刻(T[f(i;n)])を取得し、前記アサインされた差分継続時間(Δt[f(i;n+1)])が、前記情報信号の、前記次のタイムスライスの推奨された差分継続時間(Δtw[f(i;n+1)])と、前記現在のタイムスライス(B[f(i;n)])の推奨された差分継続時間(Δtw[f(i;n)])とに依存するように構成された、先行する請求項のいずれかに記載された装置。
【請求項9】
前記タイムスライス構造化器(308)は、情報信号のタイムスライス(B[f(i;n)])の前記差分継続時間(Δt[f(i;n)])を、伝送サイクルの時間的に前のタイムスライスの負に集積された全体の遅延時間(−ΔT[f(i;n+1)])よりも大きくなるように選択するように構成された、請求項8に記載された装置。
【請求項10】
前記タイムスライス構造化器(308)は、情報信号のタイムスライス(B[f(i;n)])の前記差分継続時間(Δt[f(i;n)])を、前記情報信号に関係するジッタバッファのサイズに依存する前記タイムスライスの最大限可能な遅延時間(ΔTmax[f(i;n)])より小さくなるように選択するように構成された、請求項8または9に記載された装置。
【請求項11】
前記タイムスライス構造化器(308)は、前記次の伝送サイクルにおける前記実際のデータレート(reff[f(i;n+1)])のそれぞれを、それぞれ前記次の伝送サイクルにおいて伝送される前記情報信号と、データレートコストの関数としてセットするように構成された、先行する請求項のいずれかに記載された装置。
【請求項12】
前記タイムスライス構造化器(308)は、前記情報信号(301‐i)の前記タイムスライス(B[f(i;n)])が短縮されたとき、前記情報信号(301‐i)のそれぞれに、前記データレートコスト(c)に依存して値(u[.])を組み入れ、前記情報信号の前記タイムスライス(B[f(i;n)])が延長されたとき、前記データレートコストに依存して値(u[.])を減算するように構成された、請求項11に記載された装置。
【請求項13】
前記現在のおよび次のタイムスライスを備える前記現在のおよび次の伝送サイクルは、いずれの場合においてもDVB‐H伝送サイクルである、先行する請求項のいずれかに記載された装置。
【請求項14】

【請求項15】
コンピュータプログラムがコンピュータ上で動作するときに、コンピュータに請求項14に記載された方法を実行させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−521126(P2012−521126A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500200(P2012−500200)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053203
【国際公開番号】WO2010/105987
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(591037214)フラウンホッファー−ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ (259)
【出願人】(507239592)フリードリヒ−アレクサンダー−ウニベルジテート・エアランゲン−ニュルンベルク (7)
【Fターム(参考)】