説明

フレンチトースト用調理液

【課題】低カロリーで脂質含量が少なく、牛乳アレルギーの人でも安心して美味しく食することができ、また大豆の含有する栄養成分に富むフレンチトースト用調理液を容易に得る。また過酷な加熱殺菌をすることなく、プレート式殺菌器やチューブ式殺菌器等の省エネルギータイプの温和な加熱殺菌装置により、微生物的に安全に加熱殺菌を行うことができるフレンチトースト用調理液を得る。
【解決手段】豆乳、調整豆乳、豆乳飲料及び大豆蛋白飲料等の豆乳類を4〜20(W/W)%含有し、またグラニュー糖、上白糖、ブトウ糖、果糖、蔗糖、乳糖等の糖類を4〜20(W/W)%含有してなるフレンチトースト用調理液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低カロリーで脂質含量が少なく、牛乳アレルギーの人でも安心して美味しく食することができ、また大豆の栄養成分を豊富に含有するフレンチトースト用調理液に関する。
なお、本発明では、%は断りのない限り(W/W)%を意味する。
【背景技術】
【0002】
フレンチトーストとは、牛乳、卵、砂糖などを混ぜた調理液に浸したパンを、フライパンで焼いた料理であり、メープルシロップ、ジャム、マーマレード、砂糖入りのシナモン等を添えて食する(非特許文献1参照)。
従来この調理液としては、(1)油脂中に紛乳、糖類及び乾燥卵黄を分散させたもの(特許文献1参照)、(2)乳原料、卵液及び乳蛋白質の凝集抑制成分(ペクチン及び/又は大豆多糖類)を含みpH4.5〜5.5に調整したもの(特許文献2参照)、(3)微細な澱粉粒を含み、融点が37℃以上の熱可逆性ゲル(キサンタンガムおよびローカストビーンガムなど)によってゲル化している水中油型乳化組成物(この組成物には油脂、乳製品および糖類が含まれる)(特許文献3参照)、および(4)牛乳、糖及び卵黄を含有し、該卵黄成分を固形分換算で2〜15%含有するもの(特許文献4参照)等が知られている。
このように、フレンチトーストの調理液は、乳製品を主体とするものか油脂を主体とするものに糖を混和したものであるため、全体的にカロリーが高く、また肥満を気にする人には向かない欠点を有していた。また牛乳アレルギーをもつ人には向かない欠点を有していた。
【0003】
【非特許文献1】改訂 調理用語辞典、(社)全国調理師養成施設協会編
【特許文献1】特開2003−180245号公報
【特許文献2】特開2004−8017号公報
【特許文献3】特開2004−81091号公報
【特許文献4】特開平11−215948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低カロリーで脂質含量が少なく、牛乳アレルギーの人でも安心して美味しく食することができる、また大豆の栄養成分を豊富に含有するフレンチトースト用調理液を容易に得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ついに本発明を完成した。
即ち本発明は、(1)豆乳類と糖類とを含有してなるフレンチトースト用調理液であり、また本発明は(2)豆乳類を4〜20(W/W)%、糖類を4〜20(W/W)%含有してなる前記記載のフレンチトースト用調理液であり、また本発明は(3)pHが4.0以上4.6未満である前記それぞれに記載のフレンチトースト用調理液である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のフレンチトースト用調理液によれば、低カロリーで脂質含量が0.5%以下の値を示し、牛乳アレルギーの人でも安心して美味しく食することができる、また大豆の栄養成分を豊富に含有するヘルシーなフレンチトースト用調理液を容易に得ることができる。また、本発明は、調理液のpHが4.6未満であるので過酷な加熱殺菌が不要となり、該調理液はプレート式殺菌器やチューブ式殺菌器等の省エネルギータイプの温和な加熱殺菌装置により、微生物的に安全に加熱殺菌を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のフレンチトースト用調理液の原料となる豆乳類は、日本農林規格(JAS)に規定する豆乳(大豆固形分が8%以上)、調整豆乳(同6%以上8%未満)、豆乳飲料(同4%以上6%未満)及び大豆たん白飲料(同1.8%以上)などが挙げられる。
豆乳類の使用量は、4〜20(W/W)%が好ましい。
すなわち、20%を越えると豆乳由来の風味が濃厚となるので好ましくない。反対に4%未満となると味が淡白となるので好ましくない。
【0008】
また糖類は、グラニュー糖、上白糖、粉糖、ブドウ糖、果糖、蔗糖、乳糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、異性化液糖及び蔗糖結合水飴等が挙げられる。
糖類の使用量は、4〜20(W/W)%が好ましい。
すなわち、20%を越えると甘味が濃厚となるので好ましくない。反対に4%未満となると風味が淡白となるので好ましくない。
【0009】
上記豆乳類と糖類の配合は以下の範囲が好ましい。
(調理液の配合)
豆乳類(g) 40〜200
糖類(g) 40〜200
水を加えて合計1000gに調整する。
上記水としては、水道水、天然水、活性炭処理水、イオン交換水等が挙げられる。
なお、豆乳類としては、大豆固形分濃度7(W/W)%のものを基準とした値である。したがって、濃度がこれよりも高い場合や少ない場合は、7(W/W)%に換算して豆乳類の使用量を加減する。
【0010】
本発明の調理液は、pH4.0以上4.6未満である必要がある。
このようにpHを調整すると、この調理液を卵と混合した際に卵蛋白質の凝集が起こらず、浸漬したパンに当該混合液が均一に浸透するので好ましい。
また、約120℃を超える過酷な加熱殺菌をする必要性が無くなり、したがってプレート式殺菌器やチューブ式殺菌器等によって、温和な加熱条件(例えば100〜110℃)にて加熱処理し、瓶、缶、または可撓性容器等の容器に熱充填することが可能となり、しかも温和な加熱殺菌処理をしても調理液は微生物的に安全な製品となるので好ましい。
【0011】
上記調理液のpH調整には、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、乳酸及びグルコン酸等の有機酸、並びに有機酸を含むレモン及びオレンジ等の果汁の酸味料、またはリン酸等の無機酸を用いることが好ましい。
【0012】
本発明により得られる調理液は、卵との攪拌混合が非常に容易で、しかもパンへの浸漬が容易であり、この調理液に浸したパンを、フライパンで焼くと容易にフレンチトーストを得ることができる。また、本発明の調理液は低カロリーで脂質含量が少なく、牛乳アレルギーの人でも安心して美味しく食することができ、また大豆の栄養成分を摂取することが可能となる。
【0013】
なお、本発明で得られる調理液と混和する卵は、例えば、鶏、うずら、あひる、鴨などの鳥類の卵を割卵した全卵が揚げられるが、最も一般的で入手しやすい鶏の卵が好ましい。
【0014】
調理液と卵との混和は、およそ1:1の重量比が好ましい。
そして、ボウルやバット等の容器中に上記混和物を入れ、これに食パン、フランスパン、イギリスパン、またはベーグルを適宜な大きさにカットしたものを浸漬して、上記パンに混和物を浸透させる。
【0015】
そして、該混和物が十分浸透したパンをバター等の脂質類を敷いたフライパン等で、キツネ色になるまで加熱して、フレンチトーストを調理する。
【0016】
以下実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【実施例1】
【0017】
(フレンチトースト用調理液の調製例)
攪拌機付き混合タンクに、下記配合の調整豆乳(大豆固形分7%)、グラニュー糖、乳酸及びバニラフレーバーを投入し、攪拌混合した。
次いで、該混合物をプレート式殺菌器で110℃、1分間の殺菌処理をして、130×170mmのアルミ平パウチに55gずつ充填包装して本発明の6種類のフレンチトースト用調味液(pHは、それぞれ約4.1であった)を得た。
(調理液の配合)
調整豆乳(g) 150
グラニュー糖(g) (10、20、40、100、200、又は400)
乳酸(g) 2.0
バニラフレーバー(ml)1.0
水を加えて全量1000gとする。
応用例1
【0018】
(フレンチトーストの調製例)
次に実施例1で製造した6種類の当該フレンチトースト用調理液(袋詰め)それぞれを開封し、その全量55gと割卵した鶏卵1個(約65g)を、直径20cmのボウル中でよく混ぜたものに、6枚切りの食パン(厚さ約2cm)の両面を合計3分間浸した。
そして、鶏卵と実施例1の調味液が浸透した食パンの両面を、バター10gを入れて熱したフライパンで、弱火から中火の火加減でキツネ色になるまで3分間焼いて、フレンチトーストを得た。
そして、焼き上がったフレンチトーストの香味を比較した。
その結果を表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
表1の結果から、フレンチトースト用調味液において、グラニュー糖の濃度は4〜20%が好ましいことが判る。
【実施例2】
【0021】
(フレンチトースト用調理液の調製例)
攪拌機付き混合タンクに、下記配合の調整豆乳(大豆固形分7%)、グラニュー糖、乳酸及びバニラフレーバーを投入し、攪拌混合した。
次いで、該混合物をプレート式殺菌器で110℃、1分間の殺菌処理をして、130×170mmのアルミ平パウチに55gずつ充填包装して本発明の7種類のフレンチトースト用調味液(pHは、それぞれ約4.1であった)を得た。
(調理液の配合)
調整豆乳(g)(10、20、40、100、200、400又は600)
グラニュー糖(g) 100
乳酸(g) 2.0
バニラフレーバー(ml)1.0
水を加えて全量1000gとする。
応用例2
【0022】
(フレンチトーストの調製例)
次に実施例2で製造した7種類の当該フレンチトースト用調理液(袋詰め)それぞれを開封し、その全量55gと割卵した鶏卵1個(約65g)を、直径20cmのボウル中でよく混ぜたものに、6枚切りの食パン(厚さ約2cm)の両面を合計3分間浸した。
そして、鶏卵と本発明の調理液が浸透した食パンの両面を、バター10gを入れて熱したフライパンで、弱火から中火の火加減でキツネ色になるまで3分間焼いて、フレンチトーストを得た。
そして、焼き上がったフレンチトーストの香味を比較した。
その結果を表2に示す。
【0023】
【表2】

【0024】
表2の結果から、フレンチトースト用調理液において、調整豆乳の濃度は4〜20%が適していることが判る。
(比較例)
【0025】
(豆乳を用いた本発明の調理液と、乳製品を用いた比較例の調理液との比較)
(1)豆乳を用いた本発明の調理液の配合
調整豆乳(g) 150
グラニュー糖(g) 150
乳酸(g) 2.0
バニラフレーバー(ml) 1.0
水を加えて全量1000gとした。
(2)乳製品を用いた比較例の調理液の配合
加糖練乳(g) 150
加糖脱脂練乳(g) 150
生クリーム(g) 20
バニラフレーバー(ml) 1.0
ショ糖脂肪酸エステル(g) 0.5
水を加えて全量1000gとした。
(3)調理液の調製
攪拌機付き混合タンクに、上記(1)「豆乳を用いた本発明の調理液の配合」に基づき調整豆乳、グラニュー糖、乳酸及びバニラフレーバーを投入し、攪拌混合した。次いで、該混合物をプレート式殺菌器で110℃、1分間の殺菌処理をして、130×170mmのアルミ平パウチに55gずつ充填包装して本発明のフレンチトースト用調味液(pH4.3)を得た。
一方比較のため、上記(2)「乳製品を用いた比較例の調理液の配合」に基づき、加糖脱脂練乳、生クリーム、バニラフレーバー、ショ糖脂肪酸エステルを投入し、攪拌混合した。次いで、該混合物を130×170mmの耐熱性レトルトパウチ(アルミ平パウチ)に55gずつ充填包装し、次いでレトルト式殺菌機で121℃、20分間の加熱殺菌処理をし、比較例のフレンチトースト用調理液(ミルクベース)(pH6.6)を得た。
なお、当該ミルクベースは、本発明と同様に、フレンチトーストを調理する際に、鶏卵と混合してパンを浸漬する調理液となるものである。
次いで、上記で得られた本発明及び比較例の調理液について栄養成分を分析した。
その結果を表3に示す。
【0026】
【表3】

*比較例の脂質は、乳脂肪分
【0027】
上記の結果から、比較例のpH6.6を有する調理液は耐熱性のレトルトパウチの使用と、約120℃を超える過酷な加熱殺菌をする必要性があるが、本発明の調理液は、pH4.3であるので、その必要性は無くなり、したがってプレート式殺菌器やチューブ式殺菌器等によって、110℃の温和な加熱条件にて加熱殺菌し、瓶、缶、または可撓性容器等の容器に熱充填することが可能となることが判る。
また、表3の結果から、本発明の調理液は、比較例のそれと比較して、カロリーが約半分であり、脂質も1/6以下の0.3の値を示し、かなり少ないことが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆乳類と糖類とを含有してなるフレンチトースト用調理液。
【請求項2】
豆乳類を4〜20(W/W)%、糖類を4〜20(W/W)%含有してなる請求項1に記載のフレンチトースト用調理液。
【請求項3】
pHが4.0以上4.6未満である請求項1又は請求項2に記載のフレンチトースト用調理液。

【公開番号】特開2006−191870(P2006−191870A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7563(P2005−7563)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000104559)日本デルモンテ株式会社 (44)
【Fターム(参考)】