説明

フレーク状干渉色顔料およびその製造方法

【課題】外観に優れ、かつ、耐食性にも優れる塗膜の作製に好適なフレーク状干渉色顔料および塗料を提供するとともに、該フレーク状干渉色顔料を低コストで効率よく製造する方法および製造装置を提供する。
【解決手段】球状あるいは多面体形状の基材に溶剤で溶解可能な剥離用下地膜をあらかじめ成膜し、その後、前記基材を、真空容器内に備えられた自公転機能を有する網状容器に投入する。そして、該網状容器を自公転させながら、金属膜と酸化物膜からなる積層膜を前記基材上に形成し、形成された積層膜を溶剤を用いて前記基材から剥離させ、所定の大きさまで粉砕する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車部品や家電部品などの基材を光輝化する際に用いる、耐食性の高いフレーク状干渉色顔料およびその製造方法、ならびにフレーク状干渉色顔料を用いた干渉色塗料、ならびにフレーク状干渉色顔料製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品や家電部品などの基材を光輝化する手段として、湿式メッキ、真空蒸着およびメタリック塗装がある。特に、メタリック塗装は、手法が簡便であり、広く用いられている。例えば、自動車用塗装仕上げ、プラスチックの塗装仕上げ、印刷インキおよび樹脂組成物成形体などにおいては、メタリック塗装が多く採用されている。
【0003】
該メタリック塗装では、基材を光輝化するために、メタリック顔料が使用されているが、該メタリック顔料としては、主としてアルミニウムフレークを基体粒子とするものが使用されている。そして、メタリック塗装された部分にはアルミニウムを保護するクリアコートが塗布される。
【0004】
メタリック塗装で使用されるアルミニウムフレークは、一般的に、スタンプミル法、乾式ボールミル法または湿式ボールミル法などを用いて、機械的に金属アルミニウムを粉砕したり、金属アルミニウムを真空中で蒸発させる真空蒸着法を用いて、アルミニウム薄膜を成膜したりすることにより作製されている。
【0005】
上記メタリック顔料を含む塗料を用いて形成される塗膜においては、塗膜に含まれている鱗片状のメタリック顔料が外部からの入射光を反射し、該塗膜は、キラキラと輝く意匠性を呈する。また、光の反射は、塗膜の各色調と相まって、意匠性に優れた独特の外観を塗膜にもたらす。
【0006】
しかしながら、近年、消費者の嗜好の多様化に伴って、赤色、緑色、紫色などに着色した多様な色彩をもつ干渉色顔料も望まれるようになってきている。ここで、干渉色とは、白色光同士の干渉によって現れる複雑な色、あるいは、見る方向により色が変わる構造色とも呼ばれる色のことである。
【0007】
上記干渉色を呈する塗膜は、干渉色顔料を透明な樹脂等に混ぜた塗料を塗装することで得られる。干渉色顔料は、顔料表面で反射する光を強調して色を出しているため、干渉色顔料を用いた塗膜は、無機顔料や有機顔料を用いた塗膜と比べ、非常に鮮やかな光沢をもっている。また、干渉色顔料を用いた塗膜は、塗膜表面を見る角度により色が変わる。したがって、干渉色顔料は、自動車の表面塗装や化粧品のように、意匠性が求められ、付加価値の高い製品分野への展開が考えられる。
【0008】
また、塗装面を見る角度により色が変わる特性は、コピーすることができないので、有価証券や紙幣の偽造防止用としての用途も考えられる。
【0009】
上記用途の中でも、とりわけ自動車用部品や家電製品の用途向けには、ユーザーから要求される色彩の種類が多く、またコスト的な要求も非常に厳しく、課題となっている。さらに、塗膜には、耐食性および耐薬品性も要求される。
【0010】
アルミニウムフレークは本来、無彩色であり、銀白色光沢を呈する顔料であるため、そのまま用いたのでは色彩についてのユーザーの要望を満足させることができない。そこで、アルミニウムをはじめとする種々の材料を用いることで、上記ユーザーの要望に対応し、さらに塗膜の耐食性および耐薬品性を向上させる試みがなされており、種々の干渉色顔料が提案されてきている。
【0011】
しかしながら、干渉色顔料自体の耐食性および耐薬品性は低く、この点についてはあまり大きな効果が得られていない。
【0012】
例えば、特許文献1には、鱗片状着色金属顔料(Am)と、異なる色調の1色以上の鱗片状着色金属顔料(An)とを含有するカラーフリップフロップ性メタリック塗料が記載されている。具体的には、鱗片状アルミニウムフレークの表面に、さまざまな色の着色顔料を付着させたものを組み合わせたものである。
【0013】
しかし、金属材料の材質がアルミニウムであるため、塗膜の耐食性および耐薬品性に問題がある。そのため、ホイールなどの隅や縦面など、保護膜が塗布しにくい個所では、アルミニウムフレークが溶解する可能性が高い。また、アルミニウムフレークを使用するため、白っぽく高級感のない外観を克服できない。さらには、アルミニウムフレークの混合比率の調整方法によっては、光輝感が低下する。
【0014】
特許文献2には、ニッケルを主成分とする金属フレークの表面に干渉性酸化皮膜を形成した金属フレーク顔料が記載されている。この金属フレークはニッケルを主成分とするため、耐食性はあるが、アトマイズニッケル粉を7時間も磨砕し、さらに酸化皮膜を得る工程を経る必要があり、製造の手間、コストの点で問題がある。
【0015】
特許文献3には、コバルトを元素として含む無水酸化物膜を備えた着色金属顔料が開示されている。しかし、原料となるコバルトは高価な材料である。また複雑な工程で無水酸化物膜、金属膜を成膜する必要がある。そのため、製造コストに課題がある。
【0016】
特許文献4には、基板に、高屈折率誘電体膜と低屈折率誘電体膜との交互層を繰り返し単位として積層形成し、フレーク状干渉色顔料を製造する方法および製造装置が開示されている。この製造装置を図3に示す。
【0017】
かかる製造装置は、真空室31内に、各誘電体膜材料およびカーボン薄膜からなる剥離用下地膜のそれぞれの蒸発源のるつぼ33〜35と、各蒸発源に対向配置される回転基板32とを備え、各蒸発源と回転基板32との間に、可動シャッタ41〜43が設けられている。
【0018】
上記製造方法で得られる干渉色顔料の特性は優れているが、得られる干渉色顔料の量は、基板の表面積と成膜回数に依存する。このため、多種多量に交互多層膜が必要な場合は、装置を増やすか、あるいは、成膜回数を増やすしかなくコストと生産性に課題がある。
【0019】
また、交互多層膜成膜後の後工程で基板、剥離用下地膜および交互多層膜を分離する際、剥離用下地膜と交互多層膜を完全に分離することが難しく、分離後に粉砕して得られるフレーク状干渉色顔料に剥離用下地膜のカーボン残渣が混入し、塗装後の塗膜の外観に影響することも懸念される。
【0020】
非特許文献1には、特許文献4で開示された製造方法の改善例が示されている。具体的には、基板と交互多層膜との剥離方法の改善を目的として、剥離用下地膜と交互多層膜を積層した基板を加熱処理し、剥離用下地膜のカーボン薄膜をCOあるいはCO2とすることで交互多層膜を分離し、該交互多層膜を粉砕してフレーク状干渉色顔料を製造する。
【0021】
しかし、この方法も特許文献4と同じく、剥離用下地膜と交互多層膜を完全に分離することが難しく、分離後に粉砕して得られるフレーク状干渉色顔料に該剥離用下地膜のカーボン残渣が混入し、塗装後の塗膜の外観に影響することが懸念される。加えて、環境に対する影響(CO2排出量)においても課題がある。
【0022】
また、非特許文献1には、該交互多層膜の製造方法の一例としてPETフイルム基板に積層膜剥離用のポリビニルアルコール(PVA)を薄く塗布し、乾燥後にデジタルスパッタリング機で巻き取りながら連続成膜する方法も提案されている。
【0023】
しかし、該連続成膜方法で量産対応するには、装置の大型化が必要であり、これに伴う製造コストの上昇に課題がある。
【0024】
【特許文献1】特開平7−292294号公報
【0025】
【特許文献2】特開2004−292758号公報
【0026】
【特許文献3】特開2003−292825号公報
【0027】
【特許文献4】特開2003−344647号公報
【0028】
【非特許文献1】ULVAC TECHNICAL JOURNAL No.61 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、外観に優れ、かつ、耐食性にも優れる塗膜の作製に好適なフレーク状干渉色顔料および塗料を提供するとともに、該フレーク状干渉色顔料を低コストで効率よく製造する方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明に係るフレーク状干渉色顔料は、表面粗さ(Rz)が80nm以下であり、溶剤で溶解可能な剥離用下地膜があらかじめ形成された球状あるいは多面体形状の基材上に、金属膜と酸化物膜とからなる積層膜を形成した後、該積層膜を前記基材から剥離することにより得られ、前記金属膜の厚さが20nm以上200nm以下であり、前記金属膜と前記酸化物膜の合計の厚さが80nm以上2000nm以下であることを特徴とする。
【0031】
前記金属膜は、ニッケル、チタン、クロム、錫およびこれらの合金から選ばれる少なくとも一つからなることが好ましく、前記酸化物膜は、SiO2、TiO2、ITOから選ばれる少なくとも一つからなることが好ましい。
【0032】
また、前記フレーク状干渉色顔料の大きさは、3μm以上40μm以下であることが好ましい。
【0033】
本発明に係る干渉色塗料は、前記フレーク状干渉色顔料を含む。
【0034】
本発明に係るフレーク状干渉色顔料の製造方法は、表面粗さ(Rz)が80nm以下である球状あるいは多面体形状の基材に剥離用下地膜を形成し、該剥離用下地膜の上に金属膜と酸化物膜からなる積層膜を形成し、溶剤により前記剥離用下地膜を溶解することにより、前記積層膜を前記基材から剥離し、所定の大きさまで粉砕することを特徴とする。
【0035】
前記基材を、真空容器内に備えられた自公転機能を有する網状容器に投入し、該網状容器を自公転させながら、前記積層膜を前記基材上に形成することが好ましい。また、前記基材として、ガラス、セラミック、プラスチック、金属から選ばれる少なくとも一つからなる基材を用いることが好ましい。
【0036】
本発明に係るフレーク状干渉色顔料の製造装置は、真空容器と、該真空容器全体を真空引きする真空ポンプと、自公転機能を有する網状容器と、金属および酸化物を蒸発させる蒸発機構部とを備え、前記網状容器は前記金属および前記酸化物を成膜させるための基材を投入できることを特徴とする。前記網状容器と前記蒸発機構部との間に、シャッタを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係るフレーク状干渉色顔料は、溶剤で溶解可能な剥離用下地膜をあらかじめ形成した球状あるいは多面体形状の基材上に形成され、かつ、前記基材の表面粗さ(Rz)が80nm以下であり、金属膜の厚さが20nm以上200nm以下であり、金属膜と酸化物膜の合計の厚さが80nm以上2000nm以下であるので、従来のフレーク状干渉色顔料と比較して、得られる塗膜の光輝性に優れている。
【0038】
また、前記金属膜として、ニッケル、チタン、クロム、錫およびそれらの合金から選ばれる少なくとも一つを選択することができ、また、前記酸化物膜として、SiO2、TiO2、ITOから選ばれる少なくとも一つを選択することができ、この場合、従来のフレーク状干渉色顔料と比較し、耐食性と耐薬品性に優れ、加えて原料も安価となる。
【0039】
本発明に係るフレーク状干渉色顔料の製造方法は、溶剤で溶解可能な剥離用下地膜をあらかじめ成膜した球状あるいは多面体形状の基材を撹拌しながら、金属膜と酸化物膜とからなる積層膜を形成した後、形成した積層膜を該基材から溶剤を用いて剥離して製造する方法なので、成膜後に容易に基材と干渉色膜を分離することが可能であり、従来のフレーク状干渉色顔料の製造方法と比較し、フイルムに成膜し剥離するという時間のかかる工程が減り、製造コストを低く抑えることが可能である。
【0040】
また、酸化物膜の成膜条件を変えて、酸化物膜の厚さを調製することで、干渉色の基調色を任意に調整することが可能である。加えて、球状あるいは多面体形状の基材を用いることで、従来の板状基材と比較し、一バッチあたりの成膜表面積を任意に調整することが可能であり、多様化する顧客のニーズに合わせて少量生産から大量生産まで効率よく適宜対応可能である。また、有害な薬品を使用せず、特別な廃液処理も不要なため、環境に優しく安全である。さらに、簡単な塗装法により表面処理ができるので、施工性にも優れている。
【0041】
本発明に係るフレーク状干渉色顔料の製造装置は、従来提案されている連続成膜装置等と比較して、簡便な構造であり、装置の大型化による製造コストの上昇を抑えることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明者は、前記課題を解決するため、鋭意研究を重ね、膜を形成する基材に球状あるいは多面体形状のものを用いることが有効であることを見出した。具体的には、溶剤で溶解可能な剥離用下地膜を球状あるいは多面体形状の基材に設けた後に、金属膜と酸化物膜を積層および剥離してフレーク状干渉色顔料を得ることで、塗膜を形成したときの特性に優れるフレーク状干渉色顔料を効率的に得ることができることを見出した。以下、本発明を詳細に説明する。
【0043】
1.基材
本発明のフレーク状干渉色顔料となる干渉色膜を成膜する基材の表面には、あらかじめ溶剤で剥離が可能な剥離用下地膜を成膜することが必要である。該剥離用下地膜の上に金属膜を形成し、後工程で該剥離用下地膜と金属膜とを分離させることから、該剥離用下地膜には、金属膜と容易に分離する特性が要求される。また、該剥離用下地膜は、金属膜と完全に分離せず、金属膜に付着したままでも、剥離後のフレーク状干渉色顔料の色彩に影響を与えさせないようにするため、可視光領域で透過率が高いことが好ましい。有機溶剤で剥離することが可能で、かつ、可視光領域で透明な剥離用下地膜を形成するのに好適な材料としては、硬化剤で反応させていないポリエステル樹脂もしくはアクリル樹脂等が挙げられる。
【0044】
剥離用下地膜の成膜は、網籠のような容器に基材を投入し、剥離用下地膜を形成する成分が1%程度に希釈された溶液中にそのまま浸し、引き上げた後、容器ごと基材を上下動させながら60℃から70℃で乾燥させることで、剥離用下地膜を得ることができる。
【0045】
剥離用下地膜の膜厚は、基材の凸凹を平坦化する程度の膜厚にすれば良く、80nmから150nmとすればよい。好ましくは90nmから110nmである。剥離用下地膜の膜厚が150nmを超えるとコスト面で好ましくない。なお、剥離用下地膜の膜厚は、引き上げ速度等により制御することが可能である。
【0046】
また、基材の表面粗さ(Rz)は、80nm以下であることが必要である。剥離用下地膜を成膜した後の基材の表面粗さ(Rz)は、フレーク状干渉色顔料の光輝感に影響を与えることがあるところ、基材の表面粗さ(Rz)が80nmを超えると、表面に形成する剥離用下地膜のみでは、基材表面の凸凹を平坦化することが困難となり、好ましくない。ここで、表面粗さ(Rz)とは、最大高さ粗さ(JIS−B0601:2001)である。
【0047】
基材の材質は、ガラス、セラミック、プラスチック、金属から適宜選べば良く、特に、比重が小さい基材を用いると、後述する網状容器内での基材の攪拌が活発になり、成膜効率が良くなり好ましい。
【0048】
基材の形状は、球状あるいは多面体形状であることが必要である。基材の形状を球状あるいは多面体形状とすることにより、得られるフレーク状干渉色顔料は平面に比べ表面積が増えるので、1回の成膜で得られるフレーク量が多くなる利点に加え、球状、多面体を用いて作製するので、成膜されたものは個々に微妙な膜厚の違いを生じ、全体的に深みや微妙な色合いができ、意匠的に新しい顔料が得られる。
【0049】
また、このような形状の基材を用いることで、従来の平板状基材と比較して、基材の表面積を任意に設定することが可能となる。したがって、一バッチあたりの成膜表面積の調整の自由度が大きくなるので、多様化する顧客のニーズに合わせて、少量生産から大量生産まで効率よく対応することが可能となる。多面体形状としては、略円錐形状、略角柱形状、略多角柱形状、略円柱形状等から適宜選べば良い。
【0050】
2.積層膜
本発明のフレーク状干渉色顔料の製造の際には、まず積層膜を製造する。該積層膜は、基材の剥離用下地膜の上に金属膜を積層し、該金属膜の上に酸化物膜を積層することにより得られる。その後、溶剤により剥離用下地膜を溶解させて、積層膜を基材より剥離させ、所定の大きさまで粉砕し、金属膜と酸化物膜とからなるフレーク状干渉色顔料を得る。
【0051】
2−1:金属膜
基材の剥離用下地膜あるいは酸化物膜に積層する金属膜の厚さは、20〜200nmであることが必要である。金属膜の厚さが20nm未満だと金属反射が低く、下地が透けてしまい、十分な光輝感が得られないおそれがある。一方、金属膜の厚さが200nmを超えると、塗装後の塗膜にひび割れ等が発生し、光輝感がなくなるおそれがある。
【0052】
上記金属膜は、耐食性があり、かつ、光輝性を有するものが好ましく、例えば、ニッケル、チタン、クロム、錫およびそれらの合金から選ばれる少なくとも一つである。
【0053】
2−2:酸化物膜
金属膜に積層する酸化物膜は、十分な光輝感を得るという観点から、可視光範囲で透過率が高いものが好ましく、かつ、フレーク状干渉色顔料の耐食性を高める上で、酸化物膜も、金属膜と同様に、耐食性に優れたものを用いることが好ましい。酸化物膜としては、例えば、SiO2、TiO2、ITOから選ばれる少なくとも一つからなることが好ましい。
【0054】
酸化物膜の厚さは、塗装後の塗膜に求められる干渉色の基調色(ここでは塗装膜を肉眼で垂直方向から見たときに主に見える色のことを指す)に対応する波長に応じた厚さとする。
【0055】
各色に対応する波長範囲は、一義的に決まるわけではなく、ある幅を持っており、可視光の領域において、例えば、青色の場合に対応する波長範囲は435nmから480nm、緑色の場合に対応する波長範囲は500nmから560nm、黄色の場合に対応する波長範囲は580nmから595nm、赤色の場合に対応する波長範囲は610nmから750nmである。
【0056】
従って、必要とする干渉色の基調色に対応する波長範囲に応じて、酸化物膜の厚さを定め、酸化物膜の厚さが定めた値となるように成膜条件を調整する。
【0057】
酸化物膜の存在により、干渉色が得られる原理を説明する。
【0058】
ある物質がある光の波長を吸収し、その他の波長の光を反射する場合、反射された波長の光に基づく色が、その物質の色として見える。また、ある物質がある波長の光を強く反射する場合は、その反射光に基づく色に見える。さらに、ある物質が膜状に形成されている場合、表面で反射された光と裏面で反射された光がお互いに干渉し、強めあった波長の光(つまり、表面で反射した光と裏面で反射した光の位相が一致した場合のこと)に基づく色に見える。
【0059】
本発明のフレーク状干渉色顔料の色も、前記したメカニズムにより生じるが、本発明のフレーク状干渉色顔料は、特に、第3番目に挙げたメカニズムを活用したものである。
【0060】
本発明のフレーク状干渉色顔料の場合、光の干渉において、表面(酸化物膜の表面)で反射した光と、表面をそのまま透過し、酸化物膜の裏面(金属膜の表面)で反射する光がある。表面(酸化物膜の表面)を透過して酸化物膜の裏面(金属膜の表面)で反射した光は、表面で反射した光と比較してより長い光路長を経て酸化物膜の表面から放射される。2つの光は光路長に違いがあるため、お互いに干渉し、前述した第3番目に挙げたメカニズムに基づき、色が生じる。
【0061】
酸化物膜層への入射角を一定とした場合、空気中より入射した光が酸化物膜表面で反射した光と、そのまま酸化物膜層を通過し金属膜表面で反射し空気中に出た光のそれぞれの位相が、同位相のときは強まり、逆位相のときは弱くなる。
【0062】
この位相は、酸化物膜の厚さが一定ならば、強まる波長も一定になる。また、空気層から酸化物膜層へ入射する光の入射角度が変われば、スネル法則に従い酸化物膜を通過した光の光路長が変わるため、金属膜表面で反射した後、空気中に放射された光の位相が変わる。
【0063】
従って、塗装後の塗膜に求められる干渉色の基調色に対応する波長に応じた厚さの酸化物膜を金属膜の上に成膜すれば、その膜厚に応じた波長に基づく色を基調色としつつ、見る角度により各々の反射光の位相が変わり(つまり光路長が変わる)ことで干渉色を得ることができる。
【0064】
光の波長をλ、酸化物膜の厚さをd、酸化物膜層の屈折率をnとしたとき、下記数式1の関係を満たす場合、光が強め合って明るくなる。一方、下記数式2の関係を満たす場合は、光が弱め合って暗くなる。
【0065】
【数1】

【0066】
【数2】

【0067】
0次と1次には重なりがないので、どの波長の光も明るくない。1次と2次は重なりが少なく「Vivid」(鮮やかな)な色となり、3次、4次、・・・とその重なりが大きくなりにつれて、「Moderate」(ぼかしたような)な色となる。
【0068】
2−3:フレーク状干渉色顔料
本発明の干渉色顔料は、フレーク状として構成するが、その理由は、表面反射は重要な性能の1つであり、フレーク状であれば、その表面のうちに平面が占める割合が高いためである。
【0069】
成膜した金属膜と後記する酸化物膜の合計の厚さ、すなわち、フレーク状干渉色顔料の厚さは、前記したように80nm以上2000nm以下になるようにする。フレーク状干渉色顔料の厚さが、80nm未満だと、塗装後に下地が透けて見えてしまうおそれがあり、好ましくない。フレーク状干渉色顔料の厚さが、2000nmを超えると、フレーク状干渉色顔料の応力が大きくなり、フレーク状干渉色顔料にひびや割れが入る可能性が高くなり好ましくない。さらに塗装した際に、フレーク状干渉色顔料の厚さが厚いと、フレークが重なった場合に段差が大きくなり、乱反射を起こし緻密感が損なわれる。
【0070】
フレーク状干渉色顔料の大きさは、3〜40μmであることが好ましい。ここで、フレーク状干渉色顔料の大きさとは、該顔料の定方向径(顔料片に外接する長方形の縦、横の辺のうち長い方の辺の長さ)のことである。
【0071】
フレーク状干渉色顔料の大きさが3μm未満だと、反射面が小さくなり光輝感が損なわれる。フレーク状干渉色顔料の大きさが40μmを超えると、反射面が広がり、表面反射率は上がるが、フレーク状合金片同士の隙間が大きくなってしまい、下地が見えてしまうおそれがあり、好ましくない。
【0072】
なお、フレーク状耐食干渉色顔料の大きさが40μmを超えると、該フレーク状耐食干渉色顔料を用いた耐食干渉色塗料を、塗装ラインで用いた場合、塗装ラインのフィルタで捕獲され、目詰まりを起こす可能性があり好ましくない。該フレーク状耐食干渉色顔料を用いた耐食干渉色塗料は、平均粒径が10μm程度にして、透明塗料に混入させ塗布して使用することが好ましい。
【0073】
3.干渉色塗料
本発明の干渉色塗料は、前記フレーク状干渉色顔料と、希釈剤とを混合させて作製する。塗料組成物中の希釈剤100固形分質量部に対して、フレーク状干渉色顔料を5〜30質量部含有させることが好ましい。該希釈剤は、フレーク状干渉色顔料を分散するものであって、塗膜形成用樹脂と、必要に応じて架橋剤とから構成される。
【0074】
5質量部よりも少ないと、干渉色顔料の隠蔽性が低下し、干渉色感を発現する塗膜を得られないおそれがあり好ましくない。また30質量部を超えると、塗膜外観が悪くなるおそれがあり、好ましくない。より好ましくは、5〜15質量部である。
【0075】
該希釈剤を構成する塗膜形成用樹脂としては、例えば、(a)アクリル樹脂、(b)ポリエステル樹脂、(c)アルキド樹脂、(d)フッ素樹脂、(e)エポキシ樹脂、(f)ポリウレタン樹脂、(g)ポリエーテル樹脂等を挙げることができ、これらは、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。特に、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂が好ましい。
【0076】
(a)アクリル樹脂としては、アクリル系モノマーと他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を挙げることができる。共重合体に使用し得るアクリル系モノマーとしては、アクリル酸またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、フェニル、ベンジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル等のエステル化物類、アクリル酸またはメタクリル酸2−ヒドロキシエチルのカプロラクトンの開環付加物類、アクリル酸またはメタクリル酸グリシジル、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびN−メチロールアクリルアミド、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、イタコン酸、マレイン酸、酢酸ビニル等を挙げることができる。
【0077】
(b)ポリエステル樹脂としては、飽和ポリエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂を挙げることができ、例えば、多塩基酸と多価アルコールを加熱縮合して得られた縮合物を挙げることができる。多塩基酸としては、飽和多塩基酸および不飽和多塩基酸を挙げることができ、飽和多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク酸等を挙げることができ、不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等を挙げることができる。多価アルコールとしては、例えば、二価アルコール、三価アルコール等を挙げることができ、二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール等を挙げることができ、三価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。
【0078】
(c)アルキド樹脂としては、前記多塩基酸と多価アルコールに、さらに油脂および油脂脂肪酸(大豆油、アマニ油、ヤシ油、ステアリン酸等)、天然樹脂(ロジン、コハク等)等の変性剤を反応させて得られたアルキド樹脂を用いることができる。
【0079】
(d)フッ素樹脂としては、フッ化ビニリデン樹脂および四フッ化エチレン樹脂のいずれか、またはこれらの混合体、フルオロオレフィンとヒドロキシ基含有の重合性化合物、および、その他の共重合可能なビニル系化合物からなるモノマーを共重合させて得られる各種フッ素系共重合体からなる樹脂を挙げることができる。
【0080】
(e)エポキシ樹脂としては、ビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応によって得られる樹脂等を挙げることができる。ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールA、Fを挙げることができる。ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート828、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009を挙げることができる。
【0081】
(f)ポリウレタン樹脂としては、アクリル、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等の各種ポリオール成分と、ポリイソシアネート化合物とによって得られるウレタン結合を有する樹脂を挙げることができる。前記ポリイソシアネート化合物としては、2、4−トリレンジイソシアネート(2、4−TDI)、2、6−トリレンジイソシアネート(2、6−TDI)、およびその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4、4’−ジイソシアネート(4、4’−MDI)、ジフェニルメタン−2、4’−ジイソシアネート(2、4’−MDI)、およびその混合物(MDI)、ナフタレン−1、5−ジイソシアネート(NDI)、3、3’−ジメチル−4、4’−ビフェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジシクロへキシルメタン・ジイソシアネート(水素化HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水素化キシリレンジイソシアネート(HXDI)等を挙げることができる。
【0082】
(g)ポリエーテル樹脂としては、エーテル結合を有する重合体または共重合体であり、ポリオキシエチレン系ポリエーテル、ポリオキシプロピレン系ポリエーテル、もしくはポリオキシブチレン系ポリエーテル、またはビスフェノールAもしくはビスフェノールFなどの芳香族ポリヒドロキシ化合物から誘導されるポリエーテル等の1分子当たりに少なくとも2個の水酸基を有するポリエーテル樹脂を挙げることができる。また、前記ポリエーテル樹脂とコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の多価カルボン酸類、あるいは、これらの酸無水物等の反応性誘導体とを反応させて得られるカルボキシル基含有ポリエーテル樹脂を挙げることができる。
【0083】
また、塗膜形成用樹脂には、硬化性を有するタイプとラッカータイプがあるが、通常、硬化性を有するタイプの塗膜形成用樹脂が使用される。硬化性を有するタイプの塗膜形成用樹脂の場合には、アミノ樹脂、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、アミン系、ポリアミド系、多価カルボン酸等の架橋剤と混合して用いられ、加熱または常温で硬化反応を進行させることができる。また、硬化性を有しないラッカータイプの塗膜形成用樹脂と、硬化性を有するタイプの塗膜形成用樹脂とを併用することも可能である。
【0084】
本発明において使用される該希釈剤が、架橋剤を含む場合、該塗膜形成用樹脂と該架橋剤との割合としては、固形分換算で該塗膜形成用樹脂が50〜90質量%、該架橋剤が10〜50質量%であればよく、好ましくは該塗膜形成用樹脂が60〜85質量%であり、該架橋剤が15〜40質量%である。
【0085】
該架橋剤が10質量%未満では(塗膜形成用樹脂が90質量%を超えると)、塗膜中の架橋が十分でなくなり、好ましくない。
【0086】
該架橋剤が50質量%を超えると(塗膜形成用樹脂が50質量%未満では)、塗料組成物の貯蔵安定性が低下するとともに硬化速度が大きくなるため、塗膜外観が悪くなり好ましくない。なお、該架橋剤としては、イソシアネート系、アミン系架橋剤等を好適に用いることができる。
【0087】
上記のようにして得られた干渉色塗料を、塗装スプレー等を用い試料に吹き付け塗装を行い、所定の条件で加熱乾燥を行う。加熱乾燥の方法は、塗装物の形状に応じて適宜選択して行う。その際、温度分布が大きいと乾燥ムラが出てしまうので、乾燥ムラの生じにくい、熱風乾燥機、対流式オーブンなどで行うことが好ましい。
【0088】
得られる塗膜の乾燥後の膜厚は、20〜100μmが好ましく、この範囲を外れると塗膜外観が低下するおそれがある。より好ましくは、30〜50μmである。
【0089】
4.フレーク状干渉色顔料製造装置
本発明のフレーク状干渉色顔料の製造装置の実施形態を図1および図2を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るフレーク状干渉色顔料を製造する装置の概略図であり、図2は、網状容器自公転部2を真横から見た側面図である。
【0090】
本発明の実施形態に係るフレーク状干渉色顔料の製造装置は、真空容器51全体を真空引きする真空ポンプ(図示せず)を備えた真空容器51内に、金属膜と酸化物膜を積層するための蒸発機構部52を備え、基材(図示せず)が投入される網状容器11を、蒸発機構部52に対向配置し、蒸発機構部52と網状容器11との間にシャッタ3を配置した構成をとる。
【0091】
真空室1の上部には、網状容器自公転部2があり、網状容器自公転部2内を複数の網状容器11が自公転する。網状容器11を公転させる外部回転装置部10は網状容器公転軸14に回転する動力を与える。網状容器公転軸14は連結部16に連結している。連結部16は網状容器支持板12に連結し、網状容器公転軸14からの動力を網状容器指示板12に伝達する。網状容器支持板12には網状容器11が複数連結されており、網状容器11が円周方向に等間隔で複数配置されている。網状容器11の両端部には、網状容器自転ギア13が網状容器指示板12よりも外側に備えられている。各々の網状容器自転ギア13には、網状容器自転用チェーン15が網状容器自転ギア13を自転させるべく掛けられている。網状容器自転用チェーン15は、網状容器自転用チェーン動力源(図示せず)から動力を受け、回転する。この回転により、網状容器自転ギア13は回転する動力を加えられ、自転する。
【0092】
網状容器自公転部2の下には網状容器自公転部2に対向して、シャッタ3が配置されている。シャッタ3の下には、回転るつぼ台4が配置されている。回転るつぼ台4の上には、電子銃5、金属膜原料7が入った金属膜原料用るつぼ6と、酸化物膜原料9が入った酸化物膜原料用るつぼ8とが配置される。
【0093】
なお、回転るつぼ台4は真空室1内に複数配置することが可能であり、それに応じて電子銃5、金属原料用るつぼ6、酸化物膜原料用るつぼ8も複数配置することが可能である。
【0094】
外部回転装置部10から動力を加えられ網状容器公転軸14が回転すると、各網状容器11は公転を始める。そして、網状容器自転チェーン15が連動して回転することで、各網状容器11は、自転を始める。
【0095】
電子銃5からの電子線が、金属原料用るつぼ6内の金属膜原料7および酸化物膜原料用るつぼ8内の酸化物膜原料9に照射され、金属膜原料7および酸化物膜原料9が蒸発し、網状容器11内の基材(図示せず)に堆積して成膜がなされる。成膜の際に、以上のように網状容器11を自公転させることで、網状容器11内の基材(図示せず)が撹拌され、効率よく成膜がなされる。公転周期および自転周期は、蒸発金属を完全に蒸発させ、基材に均一に成膜させる観点より、公転周期は50秒/周から60秒/周が好ましく、自転周期は4秒/周から7秒/周が好ましい。
【0096】
この製法によってできた干渉色フレーク顔料は、球状、多面体形状の基材を用いて作製するので、成膜されたものには個々に微妙な膜厚の違いが生じ、全体的に深みや微妙な色合いができ、意匠的に新しい顔料が得られる。
【0097】
また、膜が積層されているので、膜応力が高くなり、剥離したときに、すでに微粉になっており、従来のフレークより超音波等で粉砕する時間が大きく減少する。
【0098】
5.フレーク状干渉色顔料の製造方法
本発明のフレーク状干渉色顔料の製造では、まず、真空成膜法で、金属膜と酸化物膜とからなる積層膜を基材上に作製する。基材は、球状あるいは多面体形状であり、表面には溶剤で溶解可能な剥離用下地膜をあらかじめ成膜しておく。用いる製造装置は、真空容器全体を真空引きする真空ポンプと、基材を撹拌できる網状容器と、金属膜原料と酸化物膜原料を蒸発させ、金属膜と酸化物膜を積層するための蒸発機構とを備えた真空成膜装置である。
【0099】
前記基材を前記網状容器に入れ、自公転させながら、該基材上に金属膜と酸化物膜を積層した後、溶剤を用いて剥離用下地膜を溶解し、金属膜と酸化物膜とからなる積層膜を基材から剥離して製造する。
【0100】
金属膜と酸化物膜を積層するする方法は、真空プロセスを用いる真空成膜法を用いる。具体的には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などから適宜選べばよい。原料の製造コスト、製造装置の値段、成膜スピード等を考慮すると電子ビームを用いた真空蒸着法が好ましい。
【0101】
以下、フレーク状干渉色顔料の製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0102】
あらかじめ溶剤で剥離が可能な剥離用下地膜が形成された基材を、網状容器に入れ真空容器内に設置する。該網状容器の目開き寸法は、基材の最小寸法に対して、60%以上90%以下が望ましく、好ましくは80%から85%である。なお、網状容器の目開き寸法とは、JIS Z 8801−1:2000で規定されている縦と横の線が一定の間隔を保ち、1本ずつ交互に交わった織り方(平織)における前記一定間隔の寸法のことである。
【0103】
基材の最小寸法に対して網状容器の目開き寸法が60%未満だと、網に付着する成膜用の原料が多くなってしまい、基材に効率よく成膜することが難しくなる。一方、基材の最小寸法に対して網状容器の目開き寸法が90%を超えると、自公転させているうちに基材が網目の一部に詰まってしまい、効率よく成膜することが難しくなる。
【0104】
該網状容器に入れる基材の量は、網状容器の容積に対し60%以下に相当する量を入れることが望ましい。基材を網目状容器の容積に対し60%以上入れると、網目状容器内での基材の撹拌に支障を来たし、効率良く金属膜および酸化物膜を積層することが難しくなる。
【0105】
剥離用下地膜が形成された基材を、網状容器に入れ真空容器内に設置した後、真空ポンプで真空容器内を所定の値(1×10-2Pa程度)まで真空引きする。そして、網状容器を自公転させて、基材を撹拌させながら金属膜と酸化物膜とを積層する。基材を撹拌しながら積層することで、短時間で効率よく成膜することが可能となる。また、網状容器の自転と公転の周期、および、金属膜原料と酸化物膜原料を蒸発させるための機構部の電流値等を調整することで、金属膜の厚さと酸化物膜の厚さをコントロールする。金属膜の厚さは、前記したように20nm以上200nm以下になるようにする。酸化物膜の厚さは、必要とされる基調色にあわせて定められた膜厚となるようにする。ただし、成膜した金属膜と酸化物膜の合計の厚さ、すなわち、フレーク状干渉色顔料の厚さは、前記したように80nm以上2000nm以下になるようにする。
【0106】
成膜が終了したら、真空容器内から取り外した網状容器から基材を取り出し有機溶剤に浸漬し、剥離用下地膜と干渉色膜を剥離する。剥離用下地膜を溶かすための有機溶剤としては、MEK(メチルエチルケトン)やアセトンなど剥離用下地膜が溶解するものであればよく、特に制限はない。
【0107】
金属膜と酸化物膜とからなる干渉色膜を基材から分離した後、超音波等を与え、前記した好ましい大きさである5〜40μmとなるように粉砕し、フレーク状干渉色顔料にする。
【実施例】
【0108】
以下に、本発明のフレーク状干渉色顔料の製造方法に関する実施例、比較例および従来例を示すが、本発明は、これら実施例にのみ限定されるものではない。
【0109】
(実施例1)
基材として、直径が5mmで、表面粗さ(Rz)が50nmのガラス球を用いた。剥離用下地膜には、ポリエステル塗料(藤倉化成製)1%溶液を用いた。該基材を、該剥離用下地膜に浸漬して取り出して、表面に約100nmの厚さの剥離用下地膜を形成した。
【0110】
次に、直径250mm、高さ1800mmの円筒状で、網目の目開きが4mmの網状容器に、剥離用下地膜を表面に形成した前記基材を、該網状容器の容積に対して60%となる量を入れた。同様に基材を入れた網状容器を10個用意した。
【0111】
次に、金属膜の原料として金属クロムを入れたルツボと、酸化物膜の原料としてSiO2を入れたルツボと、前記基材を入れた前記網状容器とを、神港精機株式会社製のAAAIH−W36200SBTイオンプレーティング装置に図1に示す構造となるように設置した。
【0112】
次に、真空室1の内部を1×10-2Paとなるまで真空引きをし、その後アルゴンガスを3×10-3Paになるまで導入した。その後、電子銃のビーム電流値を800mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、クロムを1分間剥離膜用下地膜上に成膜し、続いて、電子銃のビーム電流値を電流値600mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、SiO2を4分間クロム膜上に成膜した。
【0113】
以上のようにして作製した積層膜は、クロム膜の厚さが60nm、SiO2膜の厚さが853nmであった。成膜後の基材を肉眼観察すると、緑色を基調色とした干渉色であった。
【0114】
次に、網状容器から、基材を取り出し、MEK(メチルエチルケトン)の入った容器に入れ、剥離用下地膜を溶解させるとともに、該容器を超音波粉砕器(BRANSONIC社製 ModelB−320UJ)に入れ、剥離した積層膜を5分間粉砕し、フレーク状干渉色顔料を得た。得られたフレーク状干渉色顔料の大きさは25μmで、厚さは913nmであった。また、1バッチあたりに得られたフレーク状干渉色顔料は80gであった。
【0115】
次に、得られたフレーク状干渉色顔料10gを、希釈剤としての酢酸エチル20gに調合し、前記超音波器を用いて均等となるように混合し、さらにアクリル樹脂1gを添加して本実施例の干渉色塗料を得た。
【0116】
得られた塗料は、アルミニウム合金鋳物AC4C(Al−Si−Mg系)製の板材(50mm×100mm×厚さ3mm)に塗布したが、塗料を塗布する前に表面処理を行った。具体的には、クロム量80〜150g/m2の化成被膜を、クロメート処理で形成し、次に、表面を平滑にするため、該化成被膜の表面にアクリル粉体塗料を100μm塗布した後、熱風乾燥機(株式会社カトー社製、形式JMB23DP、加熱容量9kw)を用いて、150℃で1時間乾燥させた。さらに、アンダーコートとして、クリアーのポリエステル・メラミン樹脂をエアースプレーガンで30μm形成し、前記熱風乾燥機を用いて、140℃で30分間乾燥させた。
【0117】
その後、本実施例の干渉色性塗料を、前記板材の上にエアースプレー(アネスト岩田社製、W−101P型)で、1〜2μm塗布し、塗膜を形成した。該塗膜の上に、アクリル・メラミン樹脂のトップコートを前記エアースプレーガンで25μm形成し、前記熱風乾燥機を用いて、140℃で30分間乾燥させた。
【0118】
得られた塗膜の外観は、肉眼ではクラックや割れがなく、緑色を基調とした干渉色を示していた。該板材の塗装面の反射率を、分光光度計(日立製作所社製、U−4000)を用い、波長550(nm)の光で測定したところ、62%であった。
【0119】
次に、該板材を5%NaOH溶液に24時間浸漬したが、塗装面の溶解、外観の変化はなかった。
【0120】
(実施例2)
基材には実施例1と同じものを用いた。該基材の表面に、実施例1と同様の方法で、ポリエステル塗料を用いて剥離用下地膜を形成したところ、厚さ約100nmの塗膜が得られた。
【0121】
次に、実施例1と同じ形状および寸法で、目開き寸法が3mmの網状容器に、前記基材を該網状容器の容積に対して40%となる量を入れた。同様に基材を入れた網状容器は10個用意した。
【0122】
次に、金属膜の原料として金属ニッケルを入れたルツボと、酸化物膜の原料としてTiO2を入れたルツボと、前記基材を入れた前記網状容器とを、実施例1と同様に装置内に設置した。
【0123】
成膜の条件は、実施例1と同様に、真空引きをしてアルゴンガスを導入した後、電子銃のビーム電流値を600mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、TiO2を6分間剥離膜用下地膜上に成膜し、続いて、電子銃のビーム電流値を800mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、ニッケルを2分間TiO2膜上に成膜した。
【0124】
以上のようにして作製した積層膜は、ニッケル膜の厚さが20nm、TiO2膜の厚さが540nmであった。成膜後の基材を肉眼観察すると、金色を基調色とした干渉色であった。
【0125】
次に、網状容器から、基材を取り出し、実施例1と同様の方法でフレーク状顔料を得た。得られたフレーク状干渉色顔料の大きさは5μmで、厚さは560nmであった。また、1バッチ当たりに得られたフレーク状干渉色顔料は60gであった。
【0126】
次に、得られたフレーク状干渉色顔料10gを用いて、実施例1と同様にして干渉色塗料を得た。得られた干渉色塗料を、実施例1と同様の方法でアルミニウム合金鋳物に塗装した。
【0127】
得られた塗膜の外観は、肉眼ではクラックや割れがなく、金色を基調とした干渉色を示していた。該板材の塗装面の反射率を、実施例1と同じ分光光度計を用い、波長600nmの光で測定したところ、58%であった。
【0128】
次に、該板材を5%NaOH溶液に24時間浸漬したが、塗装面の溶解、外観の変化はなかった。
【0129】
(実施例3)
基材として、直径が5mm、高さが5mmで、表面粗さ(Rz)が60nmのセラミック製の円錐を用いた。該基材の表面に、アクリルラッカー塗料を用いた以外は実施例1と同様の方法で剥離用下地膜を形成したところ、厚さ約110nmの塗膜が得られた。
【0130】
次に、実施例1と同じ形状および寸法で、目開き寸法が4.5mmの網状容器に、前記基材を該網状容器の容積に対して30%となる量を入れた。同様に基材を入れた網状容器は10個用意した。
【0131】
次に、金属膜の原料として金属チタンを入れたルツボと、酸化物膜の原料としてITO(錫添加インジウム酸化物)を入れたルツボと、前記基材を入れた前記網状容器とを、実施例1と同様に装置内に設置した。
【0132】
成膜の条件は、実施例1と同様に、真空引きをしてアルゴンガスを導入した後、電子銃のビーム電流値を850mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、チタンを5分間剥離膜用下地膜上に成膜し、続いて、電子銃のビーム電流値を600mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、ITOを6分間チタン膜上に成膜した。
【0133】
以上のようにして作製した積層膜は、チタン膜の厚さが200nm、ITO膜の厚さが250nmであった。成膜後の基材を肉眼観察すると、赤色を基調色とした干渉色であった。
【0134】
次に、網状容器から、基材を取り出し、実施例1と同様の方法でフレーク状干渉色顔料を得た。該フレーク状顔料の大きさは40μmで、厚さは450nmであった。また、1バッチ当たりに得られたフレーク状干渉色顔料は50gであった。
【0135】
次に、得られたフレーク状干渉色顔料10gを用いて、実施例1と同様にして干渉色塗料を得た。得られた干渉色塗料を、実施例1と同様の方法でアルミニウム合金鋳物に塗装した。
【0136】
得られた塗膜の外観は、肉眼ではクラックや割れがなく、赤色を基調とした干渉色を示していた。該板材の塗装面の反射率を、実施例1と同じ分光光度計を用い、波長700nmの光で測定したところ、60%であった。
【0137】
次に、該板材を5%NaOH溶液に24時間浸漬したが、塗装面の溶解、外観の変化はなかった。
【0138】
(実施例4)
基材として、直径が5mm、高さが5mmで、表面粗さ(Rz)が80nmのSUS304製の円柱を用いた。該基材の表面に、実施例1と同様の方法で、ポリエステル塗料を用いて剥離用下地膜を形成したところ、厚さ約120nmの塗膜が得られた。
【0139】
次に、実施例1と同じ形状および寸法で、目開き寸法が2mmの網状容器に、前記基材を該網状容器の容積に対して50%となる量を入れた。同様に基材を入れた網状容器は10個用意した。
【0140】
次に、金属膜の原料として金属錫を入れたルツボと、酸化物膜の原料としてSiO2を入れたルツボと、前記基材を入れた前記網状容器とを、実施例1と同様に装置内に設置した。
【0141】
成膜の条件は、実施例1と同様に、真空引きをしてアルゴンガスを導入した後、電子銃のビーム電流値を200mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、錫を2分間剥離膜用下地膜上に成膜し、続いて、電子銃のビーム電流値を600mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、SiO2を7分間錫膜上に成膜した。
【0142】
以上のようにして作製した積層膜は、錫膜の厚さが20nm、SiO2膜の厚さが776nmであった。成膜後の基材を肉眼観察すると、青色を基調色とした干渉色であった。
【0143】
次に、網状容器から、基材を取り出し、実施例1と同様の方法でフレーク状干渉色顔料を得た。該フレーク状干渉色顔料の大きさは50μmで、厚さは796nmであった。また、1バッチ当たりに得られたフレーク状干渉色顔料は40gであった。
【0144】
次に、得られたフレーク状合金片10gを用いて、実施例1と同様にして干渉色塗料を得た。得られた干渉色塗料を、実施例1と同様の方法でアルミニウム合金鋳物AC4Cに塗装した。
【0145】
得られた塗膜の外観は、肉眼ではクラックや割れがなく、青色を基調とした干渉色を示していた。該板材の塗装面の反射率を、実施例1と同じ分光光度計を用い、波長500nmの光で測定したところ、63%であった。
【0146】
次に、該板材を5%NaOH溶液に24時間浸漬したが、塗装面の溶解、外観の変化はなかった。
【0147】
(実施例5)
基材には実施例1と同じものを用いた。該基材の表面に、実施例1と同様の方法で、ポリエステル塗料を用いて剥離用下地膜を形成したところ、厚さ約80nmの塗膜が得られた。
【0148】
次に、実施例1と同じ形状および寸法で、目開き寸法が4.8mmの網状容器に、前記基材を該網状容器の容積に対して60%となる量を入れた。同様に基材を入れた網状容器は10個用意した。
【0149】
次に、金属膜の原料としてクロムを入れたルツボと、酸化物膜の原料としてSiO2を入れたルツボと、前記基材を入れた前記網状容器とを、実施例1と同様に装置内に設置した。
【0150】
成膜の条件は、実施例1と同様に、真空引きをしてアルゴンガスを導入した後、電子銃のビーム電流値を750mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、クロムを2分間剥離膜用下地膜上に成膜し、続いて、電子銃のビーム電流値を600mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、SiO2を10分間クロム膜上に成膜した。
【0151】
以上のようにして作製した積層膜は、クロム膜の厚さが120nm、SiO2膜の厚さが932nmであった。成膜後の基材を肉眼観察すると、金色を基調色とした干渉色であった。
【0152】
次に、網状容器から、基材を取り出し、実施例1と同様の方法でフレーク状干渉色顔料を得た。得られたフレーク状顔料の大きさは3μmで、厚さは1052nmであった。また、1バッチ当たりに得られたフレーク状干渉色顔料は100gであった。
【0153】
次に、得られたフレーク状干渉色顔料10gを用いて、実施例1と同様にして干渉色塗料を得た。得られた干渉色塗料を、実施例1と同様の方法でアルミニウム合金鋳物に塗装した。
【0154】
得られた塗膜の外観は、肉眼ではクラックや割れがなく、金色を基調とした干渉色を示していた。該板材の塗装面の反射率を、実施例1と同じ分光光度計を用い、波長600nmの光で測定したところ、58%であった。
【0155】
次に、該鉄板を5%NaOH溶液に24時間浸漬したが、塗装面の溶解、外観の変化はなかった。
【0156】
(比較例1)
基材には、実施例1と同じもの(直径が5mmで、表面粗さ(Rz)が50nmのガラス球)を用いた。該基材の表面には、剥離用下地膜として厚さ50nmのカーボンをスパッタリング法により形成した。
【0157】
次に、実施例1と同じ形状および寸法で、目開き寸法が4mmの網状容器に、前記基材を該網状容器の容積に対して60%となる量を入れた。同様に基材を入れた網状容器は10個用意した。
【0158】
次に、金属膜の原料としてクロムを入れたルツボと、酸化物膜の原料としてSiO2を入れたルツボと、前記基材を入れた前記網状容器とを、実施例1と同様に装置内に設置した。
【0159】
成膜の条件は、実施例1と同様に、真空引きをしてアルゴンガスを導入した後、電子銃のビーム電流値を800mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、クロムを1分間剥離膜下地膜上に成膜し、続いて、電子銃のビーム電流値を600mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、SiO2を4分間クロム膜上に成膜した。
【0160】
以上のようにして作製した積層膜は、クロム膜の厚さが60nm、SiO2膜の厚さが853nmであった。成膜後の基材を肉眼観察すると、緑色を基調色とした干渉色であった。
【0161】
次に、網状容器から基材を取り出し、該基材を加熱炉に入れ、500℃で30秒、熱処理し、カーボン膜をCOあるいはCO2にして揮発させ、干渉色膜を基材から剥離した。
【0162】
次に、基板から剥離した干渉色膜をボールミルで粉砕し、大きさ25μm、厚さ913nmのフレーク状干渉色顔料を得た。得られたフレーク状干渉色顔料を肉眼観察した結果、カーボンの残渣が所々に見られた。
【0163】
カーボン残渣とフレーク状干渉色顔料とを40倍の実体顕微鏡下で選別した。その結果、1バッチ当たりに得られたフレーク状干渉色顔料は20gであった。
【0164】
次に、得られたフレーク状干渉色顔料10gを用いて、実施例1同様にして干渉色塗料を得た。得られた干渉色塗料を、実施例1と同様の方法でアルミニウム合金鋳物に塗装した。
【0165】
得られた塗膜の外観は、肉眼ではクラックや割れがなく、緑色を基調とした干渉色を示していたが、所々に選別し切れなかったカーボン残渣が黒点として見られた。該板材の塗装面の反射率を、実施例1と同じ分光光度計を用い、波長550nmの光で測定したところ、45%であった。
【0166】
次に、該板材を5%NaOH溶液に24時間浸漬したが、塗装面の溶解、外観の変化はなかった。
【0167】
(比較例2)
基材には、実施例1と同じもの(直径が5mmで、表面粗さ(Rz)が50nmのガラス球)を用いた。該基材の表面に、実施例1と同様の方法で、ポリエステル塗料を用いて剥離用下地膜を形成したところ、厚さ約100nmの塗膜が得られた。
【0168】
次に、実施例1と同じ形状および寸法で、目開き寸法が4mmの網状容器に、前記基材を該網状容器の容積に対して60%となる量を入れた。同様に基材を入れた網状容器は10個用意した。
【0169】
次に、金属膜の原料としてクロムを入れたルツボと、酸化物膜の原料としてSiO2を入れたるつぼと、前記基材を入れた前記網状容器とを、実施例1と同様に装置内に設置した。
【0170】
成膜の条件は、実施例1と同様に、真空引きをしてアルゴンガスを導入した後、電子銃のビーム電流値を800mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、クロムを4分間剥離用下地膜上に成膜し、続いて、電子銃のビーム電流値を600mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、SiO2を10分間クロム膜上に成膜した。
【0171】
以上のようにして得られた積層膜は、クロム膜の厚さが210nm、SiO2膜の厚さが2160nmであった。成膜後の基材を肉眼観察すると、金色を基調色とした干渉色であった。
【0172】
次に、網状容器から、基材を取り出し、実施例1と同様の方法でフレーク状干渉色顔料を得た。該フレーク状干渉色顔料の大きさは5μmで、厚さは2370nmであった。また、1バッチ当たりに得られたフレーク状干渉色顔料は80gであった。
【0173】
次に、得られたフレーク状干渉色顔料10gを用いて、実施例1と同様にして干渉色塗料を得た。得られた干渉色塗料を、実施例1と同様の方法でアルミニウム合金鋳物に塗装した。
【0174】
得られた塗膜の外観は、金色を基調とした干渉色を示していたが、表面にざらつき感があり、所々にひび割れが見られた。該板材の塗装面の反射率を、実施例1と同じ分光光度計を用い、波長600nmの光で測定したところ、30%であった。
【0175】
次に、該板材を5%NaOH溶液に24時間浸漬したが、塗装面の溶解、外観の変化はなかった。
【0176】
(比較例3)
基材には、直径が5mmで、表面粗さ(Rz)が80nmのガラス球を用いた。該基材の表面に、実施例1と同様の方法で、ポリエステル塗料を用いて剥離用下地膜を形成したところ、厚さ約100nmの塗膜が得られた。
【0177】
次に、実施例1と同じ形状および寸法で、目開き寸法が4mmの網状容器に、前記基材を該網状容器の容積に対して60%となる量を入れた。同様に基材を入れた網状容器は10個用意した。
【0178】
次に、金属膜の原料として金属ニッケルを入れたルツボと、酸化物膜の原料としてITO(錫添加インジウム酸化物)をそれぞれ入れたルツボと、前記基材を入れた前記網状容器とを、実施例1と同様に装置内に設置した。
【0179】
成膜の条件は、実施例1と同様に、真空引きをしてアルゴンガスを導入した後、電子銃のビーム電流値を800mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、ニッケルを1分間剥離用下地膜上に成膜し、続いて、電子銃のビーム電流値を600mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、ITOを2分間ニッケル膜上に成膜した。
【0180】
以上のようにして作製した積層膜は、ニッケル膜の厚さが10nm、ITO膜の厚さが70nmであった。成膜後の基材を肉眼観察すると、赤色を基調色とした干渉色であった。
【0181】
次に、網状容器から、基材を取り出し、実施例1と同様の方法でフレーク状干渉色顔料を得た。該フレーク状顔料の大きさは25μmで、厚さは80nmであった。また、1バッチ当たりに得られたフレーク状干渉色顔料は50gであった。
【0182】
次に、得られたフレーク状干渉色顔料10gを用いて、実施例1と同様にして干渉色塗料を得た。得られた干渉色塗料を、実施例1と同様の方法でアルミニウム合金鋳物に塗装した。
【0183】
得られた塗膜の外観は、肉眼ではクラックや割れはなく、赤色を基調とした干渉色を示していたが、全体に光輝感がなく、一部下地の色がうっすらと透けて見えていた。該板材の塗装面反射率を、実施例1と同じ分光光度計を用い、波長700nmの光で測定したところ、30%であった。
【0184】
次に、該板材を5%NaOH溶液に24時間浸漬したが、塗装面の溶解、外観の変化はなかった。
【0185】
(比較例4)
基材には、直径が5mmで、表面粗さ(Rz)が100nmのガラス球を用いた。該基材の表面に、実施例1と同様の方法で、ポリエステル塗料を用いて剥離用下地膜を形成したところ、厚さ約100nmの塗膜が得られた。
【0186】
次に、実施例1と同じ形状および寸法で、目開き寸法が4mmの網状容器に、前記基材を該網状容器の容積に対して60%となる量を入れた。同様に基材を入れた網状容器は10個用意した。
【0187】
次に、金属膜の原料として金属クロムを入れたルツボと、酸化物膜の原料としてTiO2を入れたるつぼと、前記基材を入れた前記網状容器とを、実施例1と同様に装置内に設置した。
【0188】
成膜の条件は、実施例1と同様に、真空引きをしてアルゴンガスを導入した後、電子銃のビーム電流値を800mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、クロムを4分間剥離用下地膜上に成膜し、続いて、電子銃のビーム電流値を600mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、TiO2を6分間クロム膜上に成膜した。
【0189】
以上のようにして作製した積層膜は、クロム膜の厚さが210nm、TiO2膜の厚さが540nmであった。成膜後の基材を肉眼観察すると、金色を基調色とした干渉色であったが、光輝感が低かった。
【0190】
次に、該網状容器から、該基材を取り出し、実施例1と同様の方法でフレーク状干渉色顔料を得た。該フレーク状顔料の大きさは5μmで、厚さは750nmであった。また、1バッチ当たりに得られたフレーク状干渉色顔料は60gであった。
【0191】
次に、得られたフレーク状干渉色顔料10gを用いて、実施例1と同様にして干渉色塗料を得た。得られた干渉色塗料を、実施例1と同様の方法でアルミニウム合金鋳物に塗装した。
【0192】
得られた塗膜の外観は、肉眼ではクラックや割れはなく、金色を基調とした干渉色を示していたが、全体に光輝感が低かった。該板材の塗装面反射率を、実施例1と同じ分光光度計を用い、波長600nmの光で測定したところ、40%であった。
【0193】
次に、該板材を5%NaOH溶液に24時間浸漬したが、塗装面の溶解、外観の変化はなかった。
【0194】
(比較例5)
基材には、実施例1と同じもの(直径が5mmで、表面粗さ(Rz)が50nmのガラス球)を用いた。該基材の表面には剥離用下地膜を施さなかった。
【0195】
次に、実施例1と同じ形状および寸法で、目開き寸法が4mmの網状容器に、前記基材を該網状容器の容積に対して60%となる量を入れた。同様に基材を入れた網状容器は10個用意した。
【0196】
次に、金属膜の原料としてクロムを入れたルツボと、酸化物膜の原料としてSiO2を入れたルツボと、前記基材を入れた前記網状容器とを、実施例1と同様に装置内に設置した。
【0197】
成膜の条件は、実施例1と同様に、真空引きをしてアルゴンガスを導入した後、電子銃のビーム電流値を800mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、クロムを1分間基材上に成膜し、続いて、電子銃のビーム電流値を600mA、網状容器の公転周期を50秒/周、自転周期を5秒/周に設定し、SiO2を4分間クロム膜上に成膜した。
【0198】
以上のようにして作製した積層膜は、クロム膜の厚さが60nm、SiO2膜の厚さが853nmであった。成膜後の基材を肉眼観察すると、緑色を基調色とした干渉色であった。
【0199】
次に、網状容器から基材を取り出し、取り出した基材を、ガラス球ごとボールミルで粉砕し、粉砕後ガラスと干渉色膜を目視で分離した。目視では分離しきれないガラス球粉砕物とフレーク状干渉色顔料とを40倍の実体顕微鏡下で選別した。その結果、1バッチ当たりに得られたフレーク状干渉色顔料は20gであった。該フレーク状干渉色顔料は、大きさが5μmで、厚さが913nmであった。得られたフレーク状干渉色顔料を肉眼観察したところ、砕けたガラス球の残渣が所々に見られた。
【0200】
次に、得られたフレーク状干渉色顔料10gを用いて、実施例1同様にして干渉色塗料を得た。得られた干渉色塗料を、実施例1と同様の方法でアルミニウム合金鋳物に塗装した。
【0201】
得られた塗膜の外観は、肉眼ではクラックや割れがなく、緑色を基調とした干渉色を示していたが、所々に選別し切れなかったガラスが残渣として見られ、塗膜の表面には、残ったガラスに基づく凸凹が見られた。
【0202】
該板材の塗装面反射率を、実施例1と同じ分光光度計を用い、波長550nmの光で測定したところ、45%であった。
【0203】
次に、該板材を5%NaOH溶液に24時間浸漬したが、塗装面の溶解、外観の変化はなかった。
【0204】
実施例1〜5、比較例1〜5の結果を表1に示す。
【0205】
【表1】

【0206】
本発明の範囲内の実施例1〜5は、フレーク状干渉色顔料および塗膜のどちらも干渉色となり、また、塗膜の外観および耐食性も良好であった。さらに、1バッチ当たりの顔料の取れ量も、実施例は比較例よりも総じて多かった。1バッチ当たりの顔料の取れ量が多くなると、顔料を製造する回数を減らすことができ、コスト面でも有利となる。
【0207】
それに対し、比較例1は、剥離用下地膜として、溶剤で溶解可能なものではなく、カーボンを用いた。このため、残ったカーボンが塗膜内で黒点となり、塗膜の外観が不良となった。また、1バッチ当たりの顔料の取れ量も、20gと少なくなった。
【0208】
比較例2は、フレーク状干渉色顔料の厚さが2370nmであり、本発明の範囲の上限値である2000nmを上回っている。また、金属膜の厚さが210nmであり、本発明の範囲の上限値である200nmを上回っている。このため、塗膜表面にざらつき感があり、塗膜に所々ひび割れが見られ、塗膜の外観が不良となった。
【0209】
比較例3は、金属膜の厚さが10nmであり、本発明の範囲の下限値である20nmを下回っている。このため、得られた塗膜は、全体に光輝感がなく、一部下地の色がうっすらと透けて見えており、塗膜の外観が不良となった。
【0210】
比較例4は、基材の表面粗さ(Rz)が100nmであり、本発明の範囲の上限値である80nmを上回っている。このため、得られる顔料の表面の平坦性が不十分になっていると考えられ、得られた塗膜は、全体に光輝感が低く、塗膜の外観が不良となった。
【0211】
比較例5は、剥離用下地膜を用いなかった。このため、基材として用いたガラス球が取りきれず、塗膜表面に凹凸が見られ、塗膜の外観が不良となった。
【0212】
なお、干渉色の基調色の調整は、金属膜と酸化物膜を成膜する際の電流値と成膜時間を変えることで、酸化物膜の厚さを変えることで、容易に変えることが可能であり、本発明に係る製造方法は、生産性に優れていることがわかる。
【0213】
(従来例1)
成膜基板として、150mm×1800mm×1mmの形状のアルミニウム平板を用いた。
【0214】
剥離用下地膜の形成のためのカーボンを入れたルツボと、高屈折率誘電体材料として五酸化タンタルを入れたルツボと、低屈折率材料として二酸化シリコンを入れたルツボと、前記アルミニウム平板とを、図3に示す構成の装置に配置し、10nmのカーボン層、100nmの二酸化シリコン層、80nmの五酸化タンタル層の順に成膜した。成膜時間は、トータル20分間であった。
【0215】
成膜終了後、アルミニウム平板を大気中に取り出し、肉眼観察すると、青色を基調色とした干渉色を示していた。
【0216】
次に、該アルミニウム基板を約20℃の水中に浸漬し、30分間超音波を照射して、カーボン薄膜と干渉色薄膜の分離を行った。分離後に干渉色薄膜を乾燥させ、肉眼で観察した結果、所々にカーボンの残渣が確認された。
【0217】
次に、得られた干渉色薄膜を超音波粉砕器(BRANSONIC社製 ModelB−320UJ)で5分間粉砕し、大きさ25μm、厚さ180nmのフレーク状干渉色顔料を得た。なお、1バッチ当たりに得られたフレーク状干渉色顔料は15gであった。
【0218】
次に、得られたフレーク状干渉色顔料10gを用いて、実施例1と同様にして干渉色塗料を得た。得られた干渉色塗料を、実施例1と同様の方法でアルミニウム合金鋳物AC4Cに塗装した。得られた塗膜の外観は、肉眼ではクラックや割れがなく、青色を基調とした干渉色を示していたが、所々にカーボンの残渣が黒点として存在していた。
【0219】
該板材の塗装面の反射率を、実施例1と同じ分光光度計を用い、波長500nmの光で測定したところ、63%であった。
【0220】
次に、該板材を5%NaOH溶液に24時間浸漬したが、塗装面の溶解、外観の変化はなかった。
【0221】
(従来例2)
成膜基板として、従来例1と同じ形状および寸法のアルミニウム平板を用いた。
【0222】
剥離用下地膜の形成のためのカーボンを入れたルツボと、高屈折率誘電体材料として二酸化チタンを入れたルツボと、低屈折率材料として二酸化シリコンを入れたルツボと、前記アルミニウム平板とを、図3に示す構成の装置に配置し、50nmのカーボン層、280nmの二酸化シリコン層、20nmの二酸化チタン層の順に成膜した。成膜時間は、トータル20分間であった。
【0223】
成膜終了後、アルミニウム平板を大気中に取り出し、肉眼観察すると、赤色を基調色とした干渉色であった。
【0224】
次に、該アルミニウム平板を加熱炉に入れ、500℃で、30秒、熱処理し、カーボンを一酸化炭素あるいは二酸化炭素にして揮発させ、干渉色薄膜をアルミニウム平板から剥離させた。
【0225】
次に、得られた干渉色薄膜をボールミルで粉砕し、大きさ25μm、厚さ300nmのフレーク状干渉色顔料を得た。なお、1バッチ当たりに得られたフレーク状干渉色顔料は18gであった。得られたフレーク状干渉色顔料を肉眼観察したところ、カーボンの残渣が確認された。
【0226】
次に、得られたフレーク状干渉色顔料10gを用いて、実施例1と同様にして干渉色塗料を得た。得られた干渉色塗料を、実施例1と同様の方法で、アルミニウム合金鋳物に塗装した。得られた塗膜の外観は肉眼ではクラックや割れがなく、赤色を基調とした干渉色を示していたが、所々にカーボンの残渣が黒点として存在していた。
【0227】
該板材の塗装面の反射率を、実施例1と同じ分光光度計を用い、波長700nmの光で測定したところ、60%であった。
【0228】
次に、該板材を5%NaOH溶液に24時間浸漬したが、塗装面の溶解、外観の変化はなかった。
【0229】
従来例1、2の結果を表2に示す。
【0230】
【表2】

【0231】
従来例1および2は、剥離用下地膜として、溶剤で溶解可能なものではなく、カーボンを用いた。このため、残ったカーボンが塗膜内で黒点となり、塗膜の外観が不良となった。また、1バッチ当たりの顔料の取れ量も、それぞれ15g、18gと少なくなった。
【産業上の利用可能性】
【0232】
本発明に係るフレーク状干渉色顔料を用いた塗料は、耐食性および光輝性に優れたものである。
【0233】
したがって、自動車部品や家電部品に好適なだけでなく、それら以外の用途、例えば、意匠性が求められる美術関連の分野等にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0234】
【図1】本発明の干渉色顔料を製造する装置の概略図
【図2】網状容器自公転部2を真横から見た側面図
【図3】従来の干渉色顔料を製造する装置の概略図
【符号の説明】
【0235】
1 真空室
2 網状容器自公転部
3 シャッタ
4 回転るつぼ台
5 電子銃
6 金属膜原料用るつぼ
7 金属膜原料
8 酸化物膜原料用るつぼ
9 酸化物膜原料
10 外部回転装置部
11 網状容器
12 網状容器支持板
13 網状容器自転ギア
14 網状容器公転軸
15 網状容器自転用チェーン
16 連結部
31 真空室
32 アルミ製円板状回転基板
33 るつぼ(酸化タンタル蒸発源)
34 るつぼ(酸化シリコン蒸発源)
35 るつぼ(カーボン蒸発源)
39 電子銃
40 透過窓
41〜43 可動シャッタ
44 装置外部の回転機構
45 回転軸
46 膜厚補正板
51 真空容器
52 蒸発機構部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面粗さ(Rz)が80nm以下であり、溶剤で溶解可能な剥離用下地膜があらかじめ形成された球状あるいは多面体形状の基材上に、金属膜と酸化物膜とからなる積層膜を形成した後、該積層膜を前記基材から剥離することにより得られ、前記金属膜の厚さが20nm以上200nm以下であり、前記金属膜と前記酸化物膜の合計の厚さが80nm以上2000nm以下であることを特徴とするフレーク状干渉色顔料。
【請求項2】
前記金属膜は、ニッケル、チタン、クロム、錫およびこれらの合金から選ばれる少なくとも一つからなることを特徴とする請求項1に記載のフレーク状干渉色顔料。
【請求項3】
前記酸化物膜は、SiO2、TiO2、ITOから選ばれる少なくとも一つからなることを特徴とする請求項1または2に記載のフレーク状干渉色顔料。
【請求項4】
前記フレーク状干渉色顔料の大きさが、3μm以上40μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフレーク状干渉色顔料。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のフレーク状干渉色顔料を含む干渉色塗料。
【請求項6】
表面粗さ(Rz)が80nm以下である球状あるいは多面体形状の基材に剥離用下地膜を形成し、該剥離用下地膜の上に金属膜と酸化物膜からなる積層膜を形成し、溶剤により前記剥離用下地膜を溶解することにより、前記積層膜を前記基材から剥離し、所定の大きさまで粉砕することを特徴とするフレーク状干渉色顔料の製造方法。
【請求項7】
前記基材を、真空容器内に備えられた自公転機能を有する網状容器に投入し、該網状容器を自公転させながら、前記積層膜を前記基材上に形成することを特徴とする請求項6に記載のフレーク状干渉色顔料の製造方法。
【請求項8】
前記基材として、ガラス、セラミック、プラスチック、金属から選ばれる少なくとも一つからなる基材を用いることを特徴とする請求項6または7に記載のフレーク状干渉色顔料の製造方法。
【請求項9】
真空容器と、該真空容器全体を真空引きする真空ポンプと、自公転機能を有する網状容器と、金属および酸化物を蒸発させる蒸発機構部とを備え、前記網状容器は前記金属および前記酸化物を成膜させるための基材を投入できることを特徴とするフレーク状干渉色顔料製造装置。
【請求項10】
前記網状容器と前記蒸発機構部との間に、シャッタを備えることを特徴とする請求項9に記載のフレーク状干渉色顔料製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−210818(P2007−210818A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30874(P2006−30874)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】