説明

フレームキャプチャ装置

【課題】広域イーサネット(登録商標)の中継ネットワーク内を流れるフレームのモニタに適したフレームキャプチャ装置を提供する。
【解決手段】広域イーサネットの中継ネットワーク内で受信したデータからフレームを検出するフレーム検出部と、検出されたフレームから転送用タグを抽出する抽出処理部と、抽出された転送用タグを表示装置に表示させる表示用データ処理部と、を備えたフレームキャプチャ装置。表示用データ処理部は、所定時間間隔で転送用タグを表示装置に表示させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを通過するフレームをキャプチャし、表示するフレームキャプチャ装置に関し、特に、広域イーサネット(登録商標)の中継ネットワーク内を流れるフレームのモニタに適したフレームキャプチャ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
企業向けのWAN(Wide Area Network)の代表的なサービスとして広域イーサネットが注目されている。広域イーサネットは、イーサネットフレームを転送するスイッチや通信回線を複数の企業等で共用するネットワークである。広域イーサネットは、IEEE802.1ad、IEEE802.1ahで標準化されている。
【0003】
図5は、広域イーサネットの一例を示す図であり、中継ネットワーク300をA社とB社とで共用する場合を例にしている。中継ネットワーク300は、収容スイッチ310と中継スイッチ320とを備えている。企業のLANから送られたイーサネットフレームは、その企業LANと接続している収容スイッチ310が受信する。
【0004】
図6(a)は、企業のLANから送られ、収容スイッチ310が受信するイーサネットフレームの構成を示す図である。ここでは、IEEE802.1adを例に説明する。本図に示すように、企業のLANから送られるイーサネットフレームは、宛先のMAC(Media Access Control)アドレスと、送信元のMACアドレスと、ユーザデータ本体であるDATAと、データ誤り検出訂正用のFCS(Frame Check Sequence)とに加え、VLANタグとしてカスタマVLANタグ(C−TAG)を含んでいる。カスタマVLANタグは、企業LAN内での識別情報であるカスタマVLAN識別子を有するタグである。
【0005】
収容スイッチ310は、受信したポート番号から、その企業に対応するサービスVLAN識別子を判定する。ここで、サービスVLAN識別子は、中継ネットワーク300の提供者が企業を識別し、論理的に分離するための識別子であり、あらかじめ定められている。そして、サービスVLAN識別子を含むサービスVLANタグを、VLANタグとしてイーサネットフレームに挿入し、中継ネットワーク300に転送する。図6(b)は、サービスVLANタグ(S−TAG)が挿入されたイーサネットフレームの構成を示している。
【0006】
イーサネットフレームは、中継スイッチ320を介して着信側の収容スイッチ310に到着する。着信側の収容スイッチ310は、受信したイーサネットフレーム内のサービスVLANタグに含まれるサービスVLAN識別子を参照後、イーサネットフレームからサービスVLANタグを除去し、対応するポートにだけ出力する。図6(c)は、サービスVLANタグが除去されたイーサネットフレームの構成を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−48456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ネットワークの開通試験や保守試験では、特定のフレームを通過させて試験を行なうが、この際に、エラーが発生したり、意図しないフレームを受信するときには、受信しているフレームの内容を知る必要がある。このような場合に、受信したフレームをキャプチャして表示するフレームキャプチャ装置が用いられる。
【0009】
従来のフレームキャプチャ装置では、ユーザの操作によりフレームのキャプチャを開始し、キャプチャが終了すると、受信したすべてのフレームをリスト表示する。そして、ユーザがフレームのリストを見て受信したフレームの内容を確認する。
【0010】
広域イーサネットの中継ネットワークにおける開通試験や保守試験にもフレームキャプチャ装置が用いられるが、従来のフレームキャプチャ装置は、詳細な解析用途を想定しているため、キャプチャの結果表示される項目が多く、中継ネットワーク内で重要な項目に注目するのには不向きである。さらに、受信したすべてのフレームを表示するため、表示フレーム数が多く、ユーザの負担が大きいのに加え、表示に時間がかかるといった問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、広域イーサネットの中継ネットワーク内を流れるフレームのモニタに適したフレームキャプチャ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明のフレームキャプチャ装置は、広域イーサネットの中継ネットワーク内で受信したデータからフレームを検出するフレーム検出部と、検出されたフレームから転送用タグを抽出する抽出処理部と、抽出された転送用タグを表示装置に表示させる表示用データ処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
ここで、前記表示用データ処理部は、所定時間間隔で前記転送用タグを前記表示装置に表示させることが望ましい。
【0014】
また、前記表示用データ処理部は、前記表示装置に、前記フレームの構成の一部または全部を、前記転送用タグを強調した状態で表示させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、広域イーサネットの中継ネットワーク内を流れるフレームのモニタに適したフレームキャプチャ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係るフレームキャプチャ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の広域イーサネットを説明する図である。
【図3】本実施形態のフレームキャプチャ装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】VLANタグの表示形式の例について説明する図である。
【図5】従来の広域イーサネットを説明する図である。
【図6】イーサネットフレームの構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るフレームキャプチャ装置の構成を示すブロック図である。フレームキャプチャ装置100は、広域イーサネット等のネットワークの開通試験、保守試験等に用いられる測定装置であり、本図に示すように入力部110、フレーム検出部120、フレームデータメモリ130、特定ヘッダ抽出処理部140、表示用データ処理部160、表示部170、操作子180、ユーザインタフェース部190を備えている。
【0018】
フレーム検出部120、特定ヘッダ抽出処理部140、表示用データ処理部160、ユーザインタフェース部190の各処理部は、例えば、フレームキャプチャ装置100が備える図示しないCPUが、図示しないメモリに格納されたプログラムにしたがって動作を行なうことで構成することができる。
【0019】
入力部110は、ネットワークインタフェースを備えており、接続されたネットワークを流れるデータを入力する。フレーム検出部120は、入力されたデータから所定の規則にしたがってフレームを検出し、フレームデータメモリ130に格納する。ネットワークがイーサネットの場合、規定のビット列であるプリアンブルを検知することで、フレームの開始位置を検出することができる。また、ヘッダ情報を解析することで、フレームサイズを検出することができる。フレームデータメモリ130は、フレームを一時的に格納する記憶領域である。
【0020】
特定ヘッダ抽出処理部140は、フレームデータメモリ130に格納されたフレームから、特定のヘッダを抽出する。本実施例では、特定のヘッダとして転送用タグであるVALNタグを抽出する。VALNタグは、IEEE802.1ad、IEEE802.1ah等のフレーム定義にしたがって抽出することができる。すなわち、IEEE802.1adでは、サービスVLANタグとカスタマVLANタグとが定義され、IEEE802.1ahでは、中継VLANタグ(B−Tag)とサービスインスタンスタグ(I−Tag)とが定義され、それぞれの定義にしたがって抽出することができる。
【0021】
表示用データ処理部160は、特定ヘッダ抽出処理部140が抽出した特定ヘッダを表示部170に表示する。このとき、ユーザインタフェース部190が操作子180を介して受け付けたユーザからの指示にしたがった形式で表示を行なう。
【0022】
表示部170は、液晶表示装置等で構成することができ、表示用データ処理部160の指示にしたがってキャプチャ結果、メニュー画面等を表示する。操作子180は、スイッチ、ダイヤルノブ、タッチパネル等を用いて構成することができ、ユーザから各種操作を受け付け、ユーザインタフェース部190に通知する。
【0023】
本実施形態において、フレームキャプチャ装置100は、図2に示すように、中継ネットワーク300内の中継スイッチ320と収容スイッチ310との間に接続される。これは、収容スイッチ310でサービスVLANタグが除去される前のイーサネットフレームをキャプチャするためである。
【0024】
また、キャプチャする試験用フレームは、企業LANに接続されたフレーム送信装置200から送信することができる。フレーム送信装置200から送信された試験用イーサネットフレームは、収容スイッチ310でサービスVLANタグが付され、フレームキャプチャ装置100でキャプチャされる。なお、フレームキャプチャ装置100にフレーム送信機能を付加して、フレーム送信装置200に替えてフレームキャプチャ装置100を用いるようにしてもよい。
【0025】
上述のように、本実施形態のフレームキャプチャ装置100は、キャプチャしたイーサネットフレームのうち、転送用タグであるVALNタグを抽出して表示する。これは、中継ネットワーク300内の転送不具合等は、VLANタグに注目して確認することが有益だからである。
【0026】
本実施形態のフレームキャプチャ装置100は、中継ネットワーク300内における重要な情報であるVLANタグを抽出して表示するようにしているため、ユーザは、重要度の低い他の情報に紛れることなく、VLANタグを確認することができる。
【0027】
また、中継ネットワーク300内のキャプチャにおいては、フレームキャプチャ装置100を通過するすべてのフレームをキャプチャして表示する必要はない。これは、フレームキャプチャ装置100を通過するフレームのVALNタグに含まれる情報の種類が限られているからである。
【0028】
このため、所定間隔、例えば、1秒間隔でキャプチャを行なって、キャプチャ結果を表示することが望ましい。これにより、表示するフレーム数を削減することができ、ユーザの確認負担が軽減すると共に、表示のための処理時間を短縮することができる。
【0029】
ただし、連続してキャプチャしたフレームを、所定間隔、例えば、1秒間隔で抽出して表示するようにしてもよい。この場合も、表示するフレーム数を削減することができ、ユーザの確認負担が軽減すると共に、表示のための処理時間を短縮することができる。
【0030】
図3は、本実施形態のフレームキャプチャ装置100の動作を説明するフローチャートである。
【0031】
ユーザインタフェース部190が操作子180を介して、ユーザからキャプチャ開始指示を受け付けると(S101)、入力部110がデータ入力を開始する(S102)。そして、フレーム検出部120が入力データからフレームを検出し、フレームデータメモリ130に一時的に格納する(S103)。ここでは、所定間隔、例えば、1秒おきにフレーム検出処理を行なうものとする。ただし、連続して検出処理を行なうようにしてもよい。
【0032】
次いで、特定ヘッダ抽出処理部140が、フレームデータメモリ130に格納されたフレームから転送用のヘッダであるVLANタグを抽出する(S104)。
【0033】
表示用データ処理部160は、抽出されたVLANタグを表示形式に加工し、表示部170に所定間隔で表示させる(S105)。VLANタグの表示形式は、ユーザインタフェース部190が操作子180を介して、ユーザから受け付けることができる。
【0034】
以上に示したフレーム抽出以降の処理を、キャプチャを終了するまで繰り返す(S106)。キャプチャの終了は、ユーザインタフェース部190が操作子180を介して、ユーザから終了指示を受け付けた場合、所定回数のキャプチャを行なった場合、キャプチャを所定時間行なった場合等とすることができる。
【0035】
図4(a)は、VLANタグの表示形式の一例を示す図である。本図の例では、イーサネットフレームのフレーム構造を表示し、VLANタグに対応する位置に、サービスタグ(S−TAG)およびカスタマタグ(C−TAG)の内容を表示している。このとき、イーサネットフレームのフレーム構造において、VLANタグを着色する等により強調表示することで、表示対象をユーザが認識しやすいようにしている。表示するイーサネットフレームのフレーム構造は一部であってもよい。
【0036】
本図の表示形式では、サービスタグ(S−TAG)およびカスタマタグ(C−TAG)の内容は、所定間隔、例えば、1秒間隔で更新されることになる。種類に限りがあるVLANタグの内容は、必ずしもすべてのフレームについて確認する必要はなく、所定間隔毎に表示すれば十分であり、これにより、ユーザの確認作業を容易化することができると共に、フレームキャプチャ装置100の表示処理負荷を軽減することができる。
【0037】
図4(b)は、VLANタグの表示形式の他の例を示す図である。本図の例では、イーサネットフレームのフレーム構造を表示し、VLANタグに対応する位置に、サービスタグ(S−TAG)およびカスタマタグ(C−TAG)の内容を時系列に表示する領域を設けている。
【0038】
過去のタグ内容はスクロール形式で参照できるようにしてもよいし、所定行数の表示領域として、古い情報から上書き更新するようにしてもよい。本図の例でも、イーサネットフレームのフレーム構造において、VLANタグを着色する等により強調表示することで、表示対象をユーザが認識しやすいようにしている。表示するイーサネットフレームのフレーム構造は一部であってもよい。
【0039】
本図の表示形式では、サービスタグ(S−TAG)およびカスタマタグ(C−TAG)の内容の取得履歴を確認することができる。本例でも、所定間隔毎に更新すれば十分であり、これにより、ユーザの確認作業を容易化することができると共に、フレームキャプチャ装置100の表示処理負荷を軽減することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、VLANタグの内容を表示するようにしていたが、他のヘッダ情報を表示するようにしてもよい。この場合、ユーザインタフェース部190が操作子180を介して、ユーザから表示させるヘッダ情報の指定を受け付けるようにすることができる。そして、指定されたヘッダ情報を記憶領域に格納しておき、特定ヘッダ抽出処理部140が、この領域を参照することで、指定されたヘッダ情報を抽出する。これにより、VLANのみならずMPLS等の他の伝送用プロトコルに対応することができるようになる。
【符号の説明】
【0041】
100…フレームキャプチャ装置
110…入力部
120…フレーム検出部
130…フレームデータメモリ
140…特定ヘッダ抽出処理部
160…表示用データ処理部
170…表示部
180…操作子
190…ユーザインタフェース部
200…フレーム送信装置
300…中継ネットワーク
310…収容スイッチ
320…中継スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広域イーサネット(登録商標)の中継ネットワーク内で受信したデータからフレームを検出するフレーム検出部と、
検出されたフレームから転送用タグを抽出する抽出処理部と、
抽出された転送用タグを表示装置に表示させる表示用データ処理部と、
を備えたことを特徴とするフレームキャプチャ装置。
【請求項2】
前記表示用データ処理部は、所定時間間隔で前記転送用タグを前記表示装置に表示させることを特徴とする請求項1に記載のフレームキャプチャ装置。
【請求項3】
前記表示用データ処理部は、前記表示装置に、前記フレームの構成の一部または全部を、前記転送用タグを強調した状態で表示させることを特徴とする請求項1または2に記載のフレームキャプチャ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−58891(P2013−58891A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195703(P2011−195703)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【出願人】(596157780)横河メータ&インスツルメンツ株式会社 (43)
【上記1名の代理人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
【Fターム(参考)】