説明

フレールモア

【課題】通常の草刈作業ができるばかりでなく、振動発生を防止しつつ、精度良く茎葉処理作業ができるフレールモアを提供する。
【解決手段】フレールモアは、回転軸体21の爪被取付部22に対して着脱可能な第1刈爪26と、爪被取付部22に対して着脱可能で第1刈爪26よりも小さい第2刈爪27とを備える。フレールモアは、第1刈爪26と第2刈爪27との重さの差に応じた重さのバランスウエイト28を備える。草刈作業時には、爪被取付部22には第1刈爪26を取り付ける。茎葉処理作業時には、一の爪被取付部22には第1刈爪26を取り付け、他の爪被取付部22には第2刈爪27およびバランスウエイト28を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の草刈作業ができるばかりでなく、振動発生を防止しつつ、精度良く茎葉処理作業ができるフレールモアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばトラクタ等の走行車の後部に連結される機体と、機体に回転可能に設けられ複数の爪被取付部を有する水平状の回転軸体と、回転軸体の爪被取付部に取り付けられた回転径が同じ複数の刈爪とを備えた草刈作業機であるフレールモアが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−125432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来のフレールモアを用いて例えば収穫前における馬鈴薯等の茎葉処理作業を行うと、畝があるため、隣合う畝間の谷間に垂れ下がった茎葉をうまく処理できない。そこで、畝に合わせて回転径が異なる複数種の刈爪を用いることが考えられるが、この場合、重さのバランスが崩れ、回転軸体の回転時に振動が発生するおそれがある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、通常の草刈作業ができるばかりでなく、振動発生を防止しつつ、精度良く茎葉処理作業ができるフレールモアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載のフレールモアは、機体と、この機体に回転可能に設けられ、複数の爪被取付部を有する回転軸体と、前記爪被取付部に対して着脱可能な第1刈爪と、前記爪被取付部に対して着脱可能で、回転径が前記第1刈爪の回転径より小さい第2刈爪と、前記第1刈爪と前記第2刈爪との重さの差に応じた重さのバランスウエイトとを備え、草刈作業時には、前記回転軸体の爪被取付部には前記第1刈爪が取り付けられ、茎葉処理作業時には、前記回転軸体の一の爪被取付部には前記第1刈爪が取り付けられ、前記回転軸体の他の爪被取付部には前記第2刈爪およびバランスウエイトが取り付けられるものである。
【0006】
請求項2記載のフレールモアは、請求項1記載のフレールモアにおいて、爪被取付部、第2刈爪およびバランスウエイトは、いずれも挿通用孔を有し、前記爪被取付部の挿通用孔、前記第2刈爪の挿通用孔および前記バランスウエイトの挿通用孔に挿通されたボルトにナットが螺合されることにより、前記第2刈爪および前記バランスウエイトが前記爪被取付部に取り付けられるものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、回転軸体の爪被取付部に第1刈爪を取り付けた状態で、通常の草刈作業ができるばかりでなく、回転軸体の一の爪被取付部に第1刈爪を取り付け、回転軸体の他の爪被取付部に第2刈爪およびバランスウエイトを取り付けた状態で、振動発生を防止しつつ、精度良く茎葉処理作業ができる。
【0008】
請求項2に係る発明によれば、回転軸体の爪被取付部の挿通用孔、第2刈爪の挿通用孔およびバランスウエイトの挿通用孔に挿通されたボルトにナットを螺合することによって、第2刈爪およびバランスウエイトを爪被取付部に対して容易に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のフレールモアの一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0010】
図1において、1は草刈作業機であるフレールモアで、このフレールモア1は、通常の草刈作業(果樹園、牧場等での雑草や牧草の細断作業等)をする状態と、収穫前の馬鈴薯等の茎葉処理作業をする状態とに選択的に切換可能なものである。なお、図1は、後述する回転作業手段の刈爪等が省略された図である。
【0011】
フレールモア1は、図示しない走行車であるトラクタの後部の作業機昇降支持部(3点ヒッチ部)に連結される機体2と、この機体2に回転可能に設けられた回転作業手段3とを備えている。
【0012】
機体2は、トラクタの作業機昇降支持部に連結される3点連結部5を有している。3点連結部5は、トラクタの作業機昇降支持部の上部リンクにトップピン8を介して回動可能に連結されるトップマスト6および作業機昇降支持部の下部リンクにロワピン9を介して回動可能に連結される左右のロワアーム7等にて構成されている。
【0013】
また、機体2は軸支部10を有し、この軸支部10にて前後方向の入力軸11が回転可能に支持されている。入力軸11はトラクタのPTO軸にジョイントおよび伝動シャフト等を介して接続される。入力軸11には、この入力軸11からの動力を回転作業手段3側に伝達する動力伝達手段12が接続されている。動力伝達手段12は、伝動軸13、上下のプーリ14,15および両プーリ14,15に掛け渡された無端状の伝動ベルト16等にて構成されている。プーリ14,15および伝動ベルト16は、機体2の一端側に位置する伝動ケース部17内に収納配置されている。
【0014】
さらに、機体2は、回転作業手段3の上方部を覆う湾曲板状のカバー部18と、伝動ケース部17と離間対向し機体2の他端側に位置する鉛直状の支持板部19とを有している。
【0015】
一方、回転作業手段3は、例えば図2に示す状態(異なる回転径をもつ茎葉処理用爪配列)では収穫前の馬鈴薯等の茎葉処理作業をし、図5に示す状態(すべて同一の回転径をもつ通常草刈用爪配列)では通常の草刈作業をするものである。
【0016】
ここで、図2に示す状態の回転作業手段3について説明すると、この回転作業手段3は、図2ないし図4に示すように、機体2の伝動ケース部17の下部および支持板部19の下部間に回転可能に設けられ動力伝達手段12からの動力によって左右水平方向の回転中心軸線Xを中心として所定方向、例えばアップカット方向に回転する水平状の回転軸体21を有している。
【0017】
回転軸体21の円筒面状の外周面には、複数の爪被取付部22が螺旋を描くように突設されている。すなわち例えば爪被取付部22は、回転軸体21の外周面に、螺旋状に位置しかつ軸方向からみて90度間隔で位置するように放射状に突設されている。各爪被取付部22は、軸方向に互いに離間対向する対をなす対向板23にて構成されている。各対向板23には、円形状の挿通用孔24が板厚方向に貫通して形成されている。
【0018】
そして、回転軸体21の複数の一の爪被取付部22には第1刈爪(大刈爪)26が着脱可能に取り付けられ、回転軸体21の複数の他の爪被取付部22には第2刈爪(小刈爪)27および振動防止用のバランスウエイト28が着脱可能に取り付けられている。すなわち例えば畝aの上方に位置する爪被取付部22には回転径Bが第1刈爪26の回転径Aより小さく第1刈爪26よりも軽い第2刈爪27と、この第2刈爪27に対応するバランスウエイト28とが取り付けられ、それ以外の爪被取付部22には第1刈爪26が取り付けられている。
【0019】
各刈爪(フレール爪)26,27は、例えば断面ヘ字状をなす2枚の板刃部材31,32を有し、各板刃部材31,32には、長孔状の挿通用孔33,34が板厚方向に貫通して形成されている。
【0020】
第1刈爪26の回転径Aは、回転軸体21の回転時における回転中心軸線Xと第1刈爪26の先端との間の距離であり、第2刈爪27の回転径Bは、回転軸体21の回転時における回転中心軸線Xと第2刈爪27の先端との間の距離である。また、この実施の形態では、第2刈爪27は2枚の板刃部材32にて構成され、第1刈爪26は、2枚の板刃部材31とこの板刃部材31に連結されたシャックル等の連結部材51とにて構成されている。
【0021】
また、各第2刈爪27ごとに各第2刈爪27に対応して設けられ爪被取付部22に対して着脱可能なバランスウエイト28は、第1刈爪26と第2刈爪27との重さの差に応じた重さを有している。つまり、第2刈爪27とバランスウエイト28との重さの和は、第1刈爪26(2枚の板刃部材31および連結部材51)の重さと略同じである。そして、各バランスウエイト28は、例えばリング状の2つの錘部材41にて構成されたもので、各錘部材41には、円形状の挿通用孔42が貫通して形成されている。
【0022】
そして、回転軸体21の爪被取付部22の挿通用孔24、第2刈爪27の挿通用孔34およびバランスウエイト28の挿通用孔42に挿通されたボルト45にナット47が螺合されることにより、第2刈爪27およびバランスウエイト28がボルト45およびナット46を介して爪被取付部22に着脱可能に取り付けられている。
【0023】
ボルト45は軸部45aと頭部45bとからなり、ボルト45の軸部45aは、爪被取付部22の両対向板23の挿通用孔24と、両対向板23間に位置する2つの錘部材41の挿通用孔42と、両対向板23間に位置する2つの板刃部材32の挿通用孔34とに挿通され、この挿通された軸部45aの先端側にナット46が螺合されている。こうして、第2刈爪27およびバランスウエイト28は、回転軸体21の爪被取付部22にボルト45およびナット46を介して取り付けられ、第2刈爪27はボルト45の軸部45aに対して軸部45aを中心として回動自在となっている。
【0024】
このため、図4に示すように、第2刈爪27は、回転軸体21の回転時には、遠心力に基づき、回転軸体21の径方向に沿った状態になる。回転軸体21が停止すると、第2刈爪27は、自重によってボルト45の軸部45aに対してこの軸部45aを中心として下方回動して垂れ下がった状態となる。なお、図3は回転軸体21の停止時の状態を示しているが、回転軸体21の上方の刈爪26,27については、回転時の状態として記載されている。
【0025】
なお、バランスウエイト28は、第2刈爪27と回転軸体21の爪被取付部22との間を埋めるスペーサの機能を兼ねている。
【0026】
また、回転軸体21の爪被取付部22の挿通用孔24および略U字の連結部材51の挿通用孔52に挿通されたボルト45にナット46が螺合されることにより、第1刈爪26がボルト45およびナット46を介して爪被取付部22に着脱可能に取り付けられている。
【0027】
つまり、このボルト45の軸部45aは、爪被取付部22の両対向板23の挿通用孔24と、中間部を板刃部材31の挿通用孔33に挿通し両対向板23間に位置する1つの連結部材51の挿通用孔52とに挿通され、この挿通された軸部45aの先端側にナット46が螺合されている。こうして、第1刈爪26は、回転軸体21の爪被取付部22にボルト45およびナット46を介して取り付けられ、第1刈爪26はボルト45の軸部45aに対して軸部45aを中心として回動自在となっている。このため、図4に示すように、第1刈爪26も、第2刈爪27と同様、回転軸体21の回転時には、遠心力に基づき、回転軸体21の径方向に沿った状態になる。回転軸体21が停止すると、第1刈爪26は、自重によってボルト45の軸部45aに対してこの軸部45aを中心として下方回動して垂れ下がった状態となる。
【0028】
次に、上記フレールモア1の作用等を説明する。
【0029】
例えば畝aに生育した馬鈴薯等の茎葉処理作業をする場合、図2に示すように、畝aの形状に合わせて、つまり圃場面の凸凹に対応するように、回転径が異なる2種の刈爪26,27を回転軸体21の爪被取付部22に取り付ける。すなわち、畝aの上方に位置する爪被取付部22には小さな方の第2刈爪27およびバランスウエイト28を取り付け、それ以外の爪被取付部22には大きな方の第1刈爪26を取り付ける。
【0030】
この状態で、トラクタの走行でフレールモア1を移動させつつ、トラクタから出力する動力で回転作業手段3の回転軸体21を高速に回転させると、第1刈爪26、第2刈爪27およびバランスウエイト28は、回転軸体21とともに回転中心軸線Xを中心として回転し、第1刈爪26および第2刈爪27によって馬鈴薯等の茎葉が細断処理される。
【0031】
この際、隣合う畝a間の谷間に垂れ下がった茎葉は、第1刈爪26によって細断処理される。また、回転作業手段3の重さのバランスが良好で、回転の不釣合いは生じず、作業に支障をきたす振動が発生することはない。
【0032】
また、その後、例えば果樹園等の地面に生育した雑草等の草刈作業をする場合、図5に示すように、第2刈爪27およびバランスウエイト28を回転軸体21の爪被取付部22から取り外し、その代わりに、第1刈爪26をその爪被取付部22に取り付けて、すべての爪被取付部22に回転径が同じ1種の刈爪26が装着された状態にする。
【0033】
この状態で、トラクタの走行でフレールモア1を移動させつつ、トラクタから出力する動力で回転作業手段3の回転軸体21を高速に回転させると、第1刈爪26は、回転軸体21とともに回転中心軸線Xを中心として回転し、第1刈爪26によって雑草等が細断処理される。この際、回転作業手段3の重さのバランスが良好で、作業に支障をきたす振動が発生することはない。
【0034】
このようにフレールモア1によれば、回転軸体21の爪被取付部22に第1刈爪26を取り付けた状態で、通常の草刈作業ができるばかりでなく、回転軸体21の一の爪被取付部22に第1刈爪26を取り付け、回転軸体21の他の爪被取付部22に第2刈爪27およびバランスウエイト28を取り付けた状態で、作業に支障をきたす振動発生を防止しつつ、精度良く茎葉処理作業ができる。
【0035】
また、茎葉処理作業をするにあたり、刈爪26,27の付け替えをする際に、回転軸体21の爪被取付部22の挿通用孔24、第2刈爪27の挿通用孔34およびバランスウエイト28の挿通用孔42にボルト45を挿通し、この挿通したボルト45にナット46を螺合するだけで、第2刈爪27およびバランスウエイト28を爪被取付部22に対してきわめて容易に取り付けることができる。
【0036】
なお、上記実施の形態では、第1刈爪26が2枚の板刃部材31と連結部材51とにて構成された場合について説明したが、例えば図6に示すように、シャックル等の連結部材51を用いずに、第1刈爪26を2枚の板刃部材31にて構成してもよく、またバランスウエイト28の錘部材41を爪被取付部22の両対向板23の内側ではなく対向板23の外側に位置させてもよい。なお、この図6に示すバランスウエイト28は、図3に示すものに比べて、連結部材51の重さ分だけ軽くなっている。
【0037】
また、上記実施の形態では、回転径が異なる2種の刈爪26,27について説明したが、3種以上でもよく、例えば図7および図8に示すように、回転径が異なる3種の刈爪26,27,27aを用いる構成でもよい。第3刈爪27aの回転径Cは、第1刈爪26の回転径Aより小さく、第2刈爪27の回転径Bより大きく、また第3刈爪27aの重さは、第1刈爪26より軽いが、第2刈爪27より重い。そして、第3刈爪27aに対応して設けられたバランスウエイト28aは、第1刈爪26と第3刈爪27aとの重さの差に応じた重さを有するものである。
【0038】
さらに、バランスウエイト28は、2つの錘部材41からなるものには限定されず、1つの錘部材や、3つ以上の錘部材からなるものでもよく、またボルト45に装着するものではなく、第2刈爪27に着脱可能に装着するもの等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態に係るフレールモアの正面図である。
【図2】同上フレールモアの回転作業手段の茎葉処理作業時の正面図である。
【図3】同上回転作業手段の正面図である。
【図4】同上回転作業手段の側面図である。
【図5】同上回転作業手段の草刈作業時の正面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態に係るフレールモアの要部正面図である。
【図7】本発明のさらに他の実施の形態の回転作業手段の正面図である。
【図8】同上回転作業手段の側面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 フレールモア
2 機体
21 回転軸体
22 爪被取付部
24,34,42 挿通用孔
26 第1刈爪
27 第2刈爪
28 バランスウエイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
この機体に回転可能に設けられ、複数の爪被取付部を有する回転軸体と、
前記爪被取付部に対して着脱可能な第1刈爪と、
前記爪被取付部に対して着脱可能で、回転径が前記第1刈爪の回転径より小さい第2刈爪と、
前記第1刈爪と前記第2刈爪との重さの差に応じた重さのバランスウエイトとを備え、
草刈作業時には、前記回転軸体の爪被取付部には前記第1刈爪が取り付けられ、
茎葉処理作業時には、前記回転軸体の一の爪被取付部には前記第1刈爪が取り付けられ、前記回転軸体の他の爪被取付部には前記第2刈爪およびバランスウエイトが取り付けられる
ことを特徴とするフレールモア。
【請求項2】
爪被取付部、第2刈爪およびバランスウエイトは、いずれも挿通用孔を有し、
前記爪被取付部の挿通用孔、前記第2刈爪の挿通用孔および前記バランスウエイトの挿通用孔に挿通されたボルトにナットが螺合されることにより、前記第2刈爪および前記バランスウエイトが前記爪被取付部に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1記載のフレールモア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−89660(P2009−89660A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263902(P2007−263902)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】