説明

フロアパネル

【課題】その構造を簡単なものにすると共に、パネル基板と補強板部材との接着面が略全面にわたって隈無く均一に接着することができ、かつ接着に使用する接着剤が多量に無駄になるのを防止することができるフロアパネルを提供する。
【解決手段】板状のパネル基板22と、前記パネル基板22の裏面22aに接着される補強板部材24とを備えたフロアパネル20であって、前記パネル基板22の裏面22aの略全面にわたって溝部22bが形成された。
【効果】その構造を簡単なものにすると共に、パネル基板と補強板部材との接着面が略全面にわたって隈無く均一に接着することができ、かつ接着に使用する接着剤が多量に無駄になるのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーアクセスフロアを構成するフロアパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フロアパネルは、建築構造物のコンクリート素地の第1の床部分の上方に空間を隔てて第2の床部分を設けた、二重床構造を構成するフリーアクセスフロア構造において、その第2の床部分に用いられるものである。
【0003】
従来のフロアパネルには、例えば珪酸カルシウム製のパネル基板の裏面に接着剤を塗布した後に、そのパネル基板の裏面に補強用の金属板(補強板部材)を接着したものがあった(例えば、特許文献1参照)。その補強用の金属板は、周部が上方に屈曲されて、底が浅い略箱型に形成されていた。
【0004】
このような従来のフロアパネルによれば、補強用の金属板によりパネル基板の強度を向上させることができるため、パネル基板が所望の強度を確保することができるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平5−18429号公報
【特許文献2】特開昭62−294541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のフロアパネルにおいては、パネル基板の裏側に補強用の金属板がその面同士を接着させるようになっているために、それらの両面を接着剤によって、全面にわたって均一に接着させることが難しいという問題があった。
【0007】
すなわち、フロアパネルは大量生産を要求されるものであり、短時間で製作することが必要となるため、接着剤の塗布は例えば、接着する面の中央部に集中して供給された接着剤を上下の面で挟んで押圧して、この押圧力により接着剤を、接着する面の全面に押し拡げるようにして塗布されるなどの、手間がかからない簡単な方法にする必要があった。
【0008】
しかしながら、このような接着剤の塗布方法によっては、上記従来のフロアパネルは、接着する面の全面に上記押圧力で接着剤を押し拡げるようにして塗布されるため、パネル基板の裏面と補強用の金属板の接着面それぞれの全面にわたって、接着剤を隅部にまで隈無く行き渡らせることができないという問題があった。
【0009】
また、このような上記従来のフロアパネルにおいて、パネル基板の裏面と補強用の金属板の接着面の全面に隅部にまで接着剤を行き渡らせるには、接着剤の供給量を多くする必要があるために、接着剤が上下2つの面の間からはみ出して、多量の接着剤が無駄になるという問題もあった。
【0010】
一方、従来のフロアパネルとしては、上記フロアパネルとは別に、上面に突出する多数の逆L字状の喰込用突部が形成された金属板上にモルタル等を載置して、プレス機械に取付けた上下の型で挟んで加圧するプレス成形をすることにより、上記突部が形成された金属板とモルタル等を互いに一体化させてフロアパネルを製作するものがあった(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
このような金属板とモルタル等が一体化されることにより成形された従来のフロアパネルは、前記突起により金属板とモルタル等の密着度を向上させることができるようになってはいたが、金属板にはその喰込用突部を設ける必要があるため、その構造が複雑なものになるので、その製作コストが高くなるという問題があった。
【0012】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、その構造を簡単なものにすると共に、パネル基板と補強板部材との接着面が略全面にわたって隈無く均一に接着することができ、かつ接着に使用する接着剤が多量に無駄になるのを防止することができるフロアパネルを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明によるフロアパネルは、
板状のパネル基板と、前記パネル基板の裏面に接着される補強板部材とを備えたフロアパネルであって、
前記パネル基板の裏面の略全面にわたって溝部が形成されたことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明によるフロアパネルは、
前記溝部は、互いに直交する2方向それぞれの複数の直線に沿って凹んで形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明によるフロアパネルは、
前記補強板部材が、周部に立上り部が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
このような本発明のフロアパネルによれば、
板状のパネル基板と、前記パネル基板の裏面に接着される補強板部材とを備えたフロアパネルであって、
前記パネル基板の裏面の略全面にわたって溝部が形成されたことにより、
その構造を簡単なものにすると共に、パネル基板と補強板部材との接着面が略全面にわたって隈無く均一に接着することができ、かつ接着に使用する接着剤が多量に無駄になるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係るフロアパネル20のパネル基板22と補強板部材24を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示すパネル基板22の裏面を示す下面図である。
【図3】図1に示すフロアパネル20のパネル基板22と補強板部材24が接着された状態における側面拡大断面図である。
【図4】パネル基板22の製造方法を説明するための図であって、成形用下型26の内側底面26aの上に固まる前の半流動体のコンクリート30を載置した状態を示す側面断面図である。
【図5】やはりパネル基板22の製造方法を説明するための図であって、成形用下型26と成形用上型28を組合せ、かつその型内に固まる前の半流動体のコンクリート30が充填した状態を示す側面断面図である。
【図6】やはりパネル基板22の製造方法を説明するための図であって、成形用下型26と成形用上型28を分離させて、型内で半流動体のコンクリート30が固まって出来たパネル基板22を取出した状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るフロアパネルを実施するための形態について、図面に基づいて具体的に説明する。図1から図6は、本発明の一実施の形態に係るフロアパネル20について説明するために参照する図である。
【0019】
本発明の一実施の形態に係るフロアパネル20は、図1に示すように、略正方形の板状に形成されたパネル基板22と、そのパネル基板22の裏面に接着される補強用鉄板24(補強板部材)とにより構成されている。
【0020】
フロアパネル20のパネル基板22は、コンクリート製であり、図2及び図3に示すように、その裏面22aの中央部から外周部近傍までの略全面にわたって溝部22bが形成されている。
【0021】
この溝部22bは、パネル基板22の裏面22aにおいて、その一辺に平行方向の複数の条線に沿って凹んで形成された溝と、上記一辺に垂直方向の複数の条線に沿って凹んで形成された溝とが組み合わされて、縦横両方向に格子形状が並んで配置されるようになっている。
【0022】
図3に示すように、パネル基板22の高さ(厚さ)方向の上半分位の上方高さ部は、その水平方向の外形寸法が一定であり、その外形寸法は補強用鉄板24の外形寸法より大きく形成されている。
【0023】
そして、パネル基板22の高さ方向の下半分位の下方高さ部は、その水平方向の周部に、上方高さ部から裏面22aに近付くにつれて徐々にその水平方向の外形寸法が小さくなるような傾斜部22cを有する逆台形状に形成されている。
【0024】
次に、図4から図6は、フロアパネル20のパネル基板22の製造方法について説明するために参照する図である。
【0025】
図4に示すように、まず、半流動体のコンクリート30が成形用下型26の内側底面26a上に載置される。この成形用下型26の内側底面26aには、その面から上方に突き出した突起部26bが、上方から見て格子状に形成されている。
【0026】
図4に矢印で示すように、成形用上型28を上側から下降させて成形用下型26に対して押圧力を加えることにより、成形用下型26の内側底面26a上に載置された半流動体のコンクリート30が水平方向に押し拡げられて、図5に示すように、成形用下型26と成形用上型28の内側に形成された型の空間内部に隙間なく充填される。
【0027】
この型空間内部の半流動体のコンクリート30が十分固まったら、図6に示すように、成形用下型26と成形用上型28を分離させて、その内部から半流動体のコンクリート30が固まって出来たパネル基板22を取り出す。
【0028】
このようにして取り出したパネル基板22は、成形用下型26の内側底面26aの格子状の突起部26bにより、裏面22aに溝部22bが形成されるようになっているため、その裏面22aには、図2に示すような格子状の溝部22bが形成されている。
【0029】
次に、フロアパネル20の補強用鉄板24は、図1に示すように、略正方形の鉄板部24aと、この鉄板部24aの周部の四辺からそれぞれ垂直に立ち上がるように屈曲形成された立上り部24bとを有し、底が浅い略箱型に形成されている。
【0030】
そして、図3に示すように、その鉄板部24aの上にパネル基板22を載置させることができ、このとき立上り部24bの上端はパネル基板22の傾斜部22cに係合するようになっている。
【0031】
そして、図3に示すように、パネル基板22と補強用鉄板24とは、それらの裏面22aと、鉄板部24aの上面である内側底面24cとが接着剤を用いて接着されることにより、裏面22aと内側底面24cとが互いに固着されるようになっている。
【0032】
上記裏面22aと上記内側底面24cとを接着するため、それらの間に接着剤を入れてそれらを重ね合わせるとき、パネル基板22の裏面22aに溝部22bが形成されているために、接着剤の一部はその溝部22bに入り込んで、そこに保持されるようになっている。
【0033】
また、この溝部22bに入り込んだ接着剤は、パネル基板22の裏面22aに略全面にわたって形成された溝部22b内を伝わって、後から続いてその溝部22bに入り込んできた接着剤に押されて移動することにより、その裏面22aの略全面に拡がって隅々にまで隈無く行渡ることができるようになっている。
【0034】
このため、パネル基板22の裏面22aと補強板部材24の内側底面24cとを全面にわたって均一に接着することができる。また、パネル基板22と補強用鉄板24の接着に使用する接着剤の一部が溝部22bに保持されるため、上下2つの接着面の間から接着剤がはみ出す量を低減できるので、接着剤が多量に無駄になるのを防止することができる。
【0035】
また、フロアパネル20の、補強板部材24は立上り部24bを有しているため、仮に上下2つの接着面の間から接着剤がはみ出したとしても、補強板部材24の内側底面24cから外側に、接着剤が著しく漏れ出すのを防ぐことができる。
【0036】
また、フロアパネル20の補強板部材24は立上り部24bを有しているため、上下2つの接着面の間からはみ出した接着剤は、パネル基板22の裏面22aから立上る外周面と補強板部材24の立上り部24bとの間を回り込んで、裏面22aと内側底面24cの外周縁部同士を固着できるようになっている。
【0037】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態に係るフロアパネル20によれば、前記従来のフロアパネルの後者のように、鉄板に突起を設ける必要がないので、その構造を簡単なものにすることができる。
【0038】
また、パネル基板22の裏面22aと補強板部材24の内側底面24cとが略全面にわたって隈無く均一に接着することができ、かつ裏面22aと内側底面24cの2つの面の間から接着剤が多量にはみ出して無駄になるのを防止することができる。
【0039】
なお、前記実施の形態に係るフロアパネル20におけるパネル基板22は、略正方形の板状に形成されるようになっていたが、例えば長方形の板状や、他の多角形の板状に形成されるようになっていてもよい。
【0040】
また、前記実施の形態におけるパネル基板22は、コンクリートを材料として形成されるようになっていたが、フロアパネル20に用いることが可能な材料であれば、珪酸カルシウム等の、他のどのような材料を用いて形成されるようになっていてもよい。
【0041】
また、前記実施の形態におけるパネル基板22の裏面22aに形成された溝22bは、パネル基板22の一辺に平行方向の複数の条線に沿って形成された溝と、その一辺に垂直方向の複数の条線に沿って形成された溝とが組み合わされて、縦横両方向に格子形状が並んで配置されるようになっていたが、これに限定されず、例えば、パネル基板22の裏面22aの対角線の一つに平行方向の複数の条線に沿って形成された溝と、その対角線の一つに垂直方向の複数の条線に沿って形成された溝とが組み合わされることにより、パネル基板22の各辺に対して斜め方向に格子形状が並んで配置されるようにしてもよい。
【0042】
また、接着剤を隅々まで行き渡らせることができるような溝であれば、格子状以外のどのような形状の条線に沿って溝を形成するようになっていてもよい。
【0043】
また、前記実施の形態におけるパネル基板22の溝部22bは、パネル基板22の材質や、パネル基板22と補強用鉄板24との接着に用いる接着剤の種類に応じて、その幅や深さ、本数等を適宜変更できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
20 フロアパネル
22 パネル基板
22a 裏面
22b 溝部
22c 傾斜部
24 補強用鉄板
24a 鉄板部
24b 立上り部
24c 内側底面
26 成形用下型
26a 内側底面
26b 突起部
28 成形用上型
30 半流動体のコンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のパネル基板と、前記パネル基板の裏面に接着される補強板部材とを備えたフロアパネルであって、
前記パネル基板の裏面の略全面にわたって溝部が形成されたことを特徴とするフロアパネル。
【請求項2】
前記溝部は、互いに直交する2方向それぞれの複数の直線に沿って凹んで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフロアパネル。
【請求項3】
前記補強板部材は、周部に立上り部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフロアパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−97532(P2012−97532A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248319(P2010−248319)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000233239)日立機材株式会社 (225)
【Fターム(参考)】