フロアマット用クリップ
【課題】フロアマットを取外したり取付けたりする作業が簡単で、しかもフロアマットの使用状態においては留め孔がクリップの支柱から抜けるのを防止する。
【解決手段】フロアマット用クリップであって、フロアマットにおける車体の後方側に開けられた留め孔に挿通される支柱14が、車体の前方側に張り出してフロアマットにおける留め孔の周辺部位を上面側から受け止め可能な規制片16と、この規制片の反対側に位置し、フロアマットが車体の前方向へ引っ張られている使用状態において留め孔の周辺部位を上面側から係止可能な係止面20とを備えている。
【解決手段】フロアマット用クリップであって、フロアマットにおける車体の後方側に開けられた留め孔に挿通される支柱14が、車体の前方側に張り出してフロアマットにおける留め孔の周辺部位を上面側から受け止め可能な規制片16と、この規制片の反対側に位置し、フロアマットが車体の前方向へ引っ張られている使用状態において留め孔の周辺部位を上面側から係止可能な係止面20とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として運転席側のフロアマットをフロアに留めるためのフロアマット用クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクリップ(留め具)は、例えば特許文献1に開示されている技術が既に知られている。この技術では、車体のフロア側に取付けられてフロアマットの留め孔に挿通される支柱の先端に、車体の後方側に張り出した庇形状の規制片が形成されている。この規制片は、留め孔の周辺部位を受け止めて該留め孔が支柱から外れるのを規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−289273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のフロアマット用留め具においては、フロアマットが乗員の足によって車体の前方向へ引っ張られても、規制片によって支柱からフロアマットの留め孔が外れるのを防止できる反面、フロアマットをフロアから取外す際に該フロアマットを後側からめくり上げようとしても後方側に張り出している規制片に留め孔の周辺部位が引っ掛かって支柱から外しにくい。そのため、フロアマットを取外すには全体をフロアから浮かせるようにして留め孔を規制片に沿って通過させる必要があり、作業が繁雑である。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、フロアマットを取外したり取付けたりする作業が簡単で、しかもフロアマットの使用状態においては留め孔がクリップの支柱から抜けるのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、フロアマットを車体の後方側においてフロアに留めるためのフロアマット用クリップであって、フロアマットにおける車体の後方側に開けられた留め孔に挿通される支柱が、車体の前方側に張り出してフロアマットにおける留め孔の周辺部位を上面側から受け止め可能な規制片と、この規制片の反対側に位置し、フロアマットが車体の前方向へ引っ張られている使用状態において留め孔の周辺部位を上面側から係止可能な係止面とを備えている。
【0007】
この構成においては、例えばフロアマットをフロアから取外す際は、留め孔の周辺部位が支柱の係止面に引っ掛かることなく通過するようにフロアマットの後側を後方へ引きながら持ち上げた後、留め孔を規制片に沿って移動させればよく、この逆手順によって再びフロアマットをフロアに留めることができ、その作業が簡単になる。
しかも、使用状態でのフロアマットが乗員の足の力等を受けて車体の前方向へ引っ張られているときは、仮にフロアマットの後側が持ち上げられたとしても、支柱の係止面に留め孔の周辺部位が引っ掛かるとともに、規制片によって留め孔の周辺部位が受け止められ、クリップの支柱から留め孔が外れるのを防止することができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、支柱がその外周から外方へ突出してフロアマットにおける留め孔の周辺部位を上面側から受け止める複数の係止突部を備え、これらの係止突部は支柱の軸芯方向へ弾性によって変位することが可能に構成されている。
【0009】
これにより、支柱に対するフロアマットの浮き上がりを各係止突部で押えることができるとともに、各係止突部によってフロアマットの留め孔に支柱を挿通させたときの節度感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】フロアマット用クリップを車体の前方側から見た斜視図。
【図2】フロアマット用クリップを車体の後方側から見た斜視図。
【図3】フロアマット用クリップの正面図。
【図4】フロアマット用クリップの平面図。
【図5】フロアマット用クリップの断面図。
【図6】運転席側のフロアとフロアマット用クリップとを表した斜視図。
【図7】運転席側のフロアにフロアマットを留めた状態の斜視図。
【図8】フロアマット用クリップの使用状態を表した説明図。
【図9】図8の使用状態においてフロアマットに外力が加わった状態を表した説明図。
【図10】フロアマット用クリップの変更例を図1と対応させて表した斜視図。
【図11】図10のフロアマット用クリップの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
本実施の形態におけるフロアマット用のクリップ10は、樹脂材による一体成形品である。このクリップ10の構成は、図1〜図5で示すように一方向に長い平板状のベース12と、このベース12における一端寄りの上面に位置する支柱14と、同じくベース12の他端寄りの下面に位置する脚部26とに大別される。
【0012】
クリップ10は、図6で示す向きでフロア30に取付けられ、図7で示すようにフロアマット40をフロア30に留める。なお、図6及び図7は運転席側のフロア30が示されており、車体の前方側にアクセルやブレーキのペダル類52が位置し、車体の後方側にシート50が位置している。
図8及び図9で示すように、クリップ10はフロア30に敷かれたフロアマット40の留め孔42に脚部26を差し込むことでフロア30側に取付けられる。また、クリップ10の支柱14はフロアマット40の留め孔42に挿通させており、これによってフロアマット40がズレ動かないようにフロア30に留められる。
【0013】
クリップ10の支柱14は、ベース12の上面から上向きに突出した柱状をしている。この支柱14は、その上端部から斜め上向きの角度でペダル類52が位置する車体の前方側へ張り出した庇状の規制片16を備えているとともに、シート50が位置する車体の後方側へ規制片16よりも小さく張り出した膨出部18を備えている。規制片16の上面16aは、外方へ膨らんだ曲面であって膨出部18にまで連なっている。そして、膨出部18の下側面は、支柱14の外周面とほぼ直角の係止面20となっている。
【0014】
支柱14には、上下に長い一対の平行な溝24が図面の右側から切り込まれた格好でそれぞれ成形されている。これらの溝24により、支柱14の両側部は樹脂材の弾性によって軸芯方向へ撓むことができ、この両側部に外方へ突出した係止突起22がそれぞれ成形されている。すなわち、これらの係止突起22は外力を受けることにより、支柱14の両側部を撓ませて軸芯方向へ変位する。
両係止突起22は、それぞれの上下の中間部が最も突出し、その上下が斜面になっている。両係止突起22とベース12の上面までの寸法が、フロアマット40における留め孔42の周辺部の厚みよりも大きく設定され(図8)、かつ両係止突起22の最も突出した中間部を結ぶ直線距離がフロアマット40の留め孔42の内径よりも僅かに大きく設定されている。
【0015】
クリップ10の脚部26は、ベース12の下面から下向きに突出した一対の弾性片26aによって構成され、両弾性片26aの端部に外向きの爪26bがそれぞれ設けられている。この脚部26を前述のようにフロアカーペット36の取付け孔38に差し込むことにより、両弾性片26aを内方へ押し撓めながら両爪26bが取付け孔38を通過してフロアカーペット36の裏面に係止し、クリップ10がフロア30側に取付けられる。
クリップ10におけるベース12の下面には、先端の尖った二個の突起28が設けられている。ベース12は、フロアカーペット36の取付け孔38に対して脚部26の軸芯を支点に回転することができる。しかし、両突起28がフロアカーペット36に表面側から食い込むことにより、脚部26の軸芯を支点とするベース12の向きを決めることができる。
【0016】
フロアカーペット36は、図8及び図9で示すようにボデーパネル32の上面にスポンジ等のクッション材34を介在して敷かれている。フロアカーペット36には、前述のようにクリップ10の脚部26が差し込まれる取付け孔38が開けられ、この取付け孔38の縁部は補強金具38aで補強されている。
フロアマット40には、シート50が位置する車体の後方側において前述の留め孔42が開けられている。この留め孔42についても、その縁部が補強金具42aによって補強されている。
【0017】
既に説明したようにクリップ10は、その脚部26をフロアカーペット36の取付け孔38に差し込むことによってフロア30側に取付けられる。一方、フロアマット40は、その留め孔42にクリップ10の支柱14を挿通させることにより、フロア30に留められる。
図8の実線で示すようにクリップ10によってフロア30に留められているフロアマット40が、何らかの力を受けて浮き上がった場合、まずは留め孔42の周辺部位が支柱14の両係止突起22で受け止められる。さらに大きな力がフロアマット40に働いて図8の仮想線Aのように浮き上がっても、留め孔42の周辺部位が支柱14の規制片16に受け止められ、支柱14から留め孔42が外れることは防止される。
【0018】
これに対し、フロア30の清掃等を目的としてフロアマット40を取外す際は、図8の仮想線Bで示すようにフロアマット40における留め孔42の前側を指先で押え、後側を持ち上げる。これにより、留め孔42の周辺部位が係止面20に引っ掛かることなく通過し、かつ車体の前方側に張り出している規制片16の上面16aに沿って留め孔42が車体の前方へ移動して支柱14から留め孔42を外すことができる。そして、この逆手順によって留め孔42に支柱14を挿通させれば、再びフロアマット40をフロア30に留めることができる。
【0019】
また、使用状態でのフロアマット40は、ペダル類52を操作する運転者の足等による大きな力を受けて車体の前方側へ引っ張られることがある。この場合の様子を表した図9で明らかなように、フロアマット40の留め孔42の周辺部位が、車体の後方側においては支柱14の係止面20に引っ掛かり、車体の前方側においては規制片16によって受け止められる。すなわち、クリップ10における支柱14の規制片16と係止面20とが、恰も足のつま先と踵の働きで靴が脱げないように、支柱14から留め孔42が抜けて外れることが防止される。
【0020】
なお、クリップ10の支柱14からフロアマット40の留め孔42を外したり、支柱14を留め孔42に挿通させたりする際には、その都度、留め孔42が支柱14の両係止突起22を通過する。既に説明したように、両係止突起22の最も突出した中間部を結ぶ直線距離は留め孔42の内径よりも僅かに大きく設定されているので、留め孔42が通過するときの両係止突起22は支柱14の軸芯方向へ押し撓められ、留め孔42が通過し終えると元の状態に復帰する。したがって、特に支柱14を留め孔42に挿通させるときの節度感を得ることができる。また、支柱14を留め孔42に挿通させたこと、つまりフロアマット40が適正に留められたことを視覚によって容易に確認できる。
【0021】
前述のようにクリップ10は樹脂材による一体成形品であるため、成形金型の制作費用等も含めてコストを低減でき、かつ、全体に強固に仕上げることが可能であり、例えば支柱14が足で踏まれても破損することが少ない。さらに、クリップ10の全体形状がシンプルで、特に使用状態においてフロアマット40の上面に突出している支柱14(規制片16や係止突起22を含む)はデザイン性に優れている。
【0022】
図10および図11で示すクリップ10では、支柱14における一対の溝24に代えて車体の前後方向に貫通した一対の平行なスリット25が支柱14(規制片16の一部および膨出部18を含む)に成形されている。これらのスリット25により、支柱14の両側部が撓みやすくなるため、両係止突起22の成形位置を図1〜図5で示すクリップ10の場合よりも後方へずらせることができる。
【0023】
以上は本発明を実施するための最良の形態を図面に関連して説明したが、この実施の形態は本発明の趣旨から逸脱しない範囲で容易に変更または変形できるものである。
例えば図面で示すクリップ10では、支柱14と脚部26とが車体の前後方向にずれて配置されているが、フロア30の形状等によっては支柱14と脚部26とを同軸線上に配置することも可能である。また、クリップ10をフロア30に取付ける手段には、前述した構成の脚部26に代えてネジによる締結あるいは接着等が含まれる。
【符号の説明】
【0024】
10 クリップ
14 支柱
16 規制片
20 係止面
22 係止突起
30 フロア
40 フロアマット
42 留め孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として運転席側のフロアマットをフロアに留めるためのフロアマット用クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクリップ(留め具)は、例えば特許文献1に開示されている技術が既に知られている。この技術では、車体のフロア側に取付けられてフロアマットの留め孔に挿通される支柱の先端に、車体の後方側に張り出した庇形状の規制片が形成されている。この規制片は、留め孔の周辺部位を受け止めて該留め孔が支柱から外れるのを規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−289273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のフロアマット用留め具においては、フロアマットが乗員の足によって車体の前方向へ引っ張られても、規制片によって支柱からフロアマットの留め孔が外れるのを防止できる反面、フロアマットをフロアから取外す際に該フロアマットを後側からめくり上げようとしても後方側に張り出している規制片に留め孔の周辺部位が引っ掛かって支柱から外しにくい。そのため、フロアマットを取外すには全体をフロアから浮かせるようにして留め孔を規制片に沿って通過させる必要があり、作業が繁雑である。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、フロアマットを取外したり取付けたりする作業が簡単で、しかもフロアマットの使用状態においては留め孔がクリップの支柱から抜けるのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、フロアマットを車体の後方側においてフロアに留めるためのフロアマット用クリップであって、フロアマットにおける車体の後方側に開けられた留め孔に挿通される支柱が、車体の前方側に張り出してフロアマットにおける留め孔の周辺部位を上面側から受け止め可能な規制片と、この規制片の反対側に位置し、フロアマットが車体の前方向へ引っ張られている使用状態において留め孔の周辺部位を上面側から係止可能な係止面とを備えている。
【0007】
この構成においては、例えばフロアマットをフロアから取外す際は、留め孔の周辺部位が支柱の係止面に引っ掛かることなく通過するようにフロアマットの後側を後方へ引きながら持ち上げた後、留め孔を規制片に沿って移動させればよく、この逆手順によって再びフロアマットをフロアに留めることができ、その作業が簡単になる。
しかも、使用状態でのフロアマットが乗員の足の力等を受けて車体の前方向へ引っ張られているときは、仮にフロアマットの後側が持ち上げられたとしても、支柱の係止面に留め孔の周辺部位が引っ掛かるとともに、規制片によって留め孔の周辺部位が受け止められ、クリップの支柱から留め孔が外れるのを防止することができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、支柱がその外周から外方へ突出してフロアマットにおける留め孔の周辺部位を上面側から受け止める複数の係止突部を備え、これらの係止突部は支柱の軸芯方向へ弾性によって変位することが可能に構成されている。
【0009】
これにより、支柱に対するフロアマットの浮き上がりを各係止突部で押えることができるとともに、各係止突部によってフロアマットの留め孔に支柱を挿通させたときの節度感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】フロアマット用クリップを車体の前方側から見た斜視図。
【図2】フロアマット用クリップを車体の後方側から見た斜視図。
【図3】フロアマット用クリップの正面図。
【図4】フロアマット用クリップの平面図。
【図5】フロアマット用クリップの断面図。
【図6】運転席側のフロアとフロアマット用クリップとを表した斜視図。
【図7】運転席側のフロアにフロアマットを留めた状態の斜視図。
【図8】フロアマット用クリップの使用状態を表した説明図。
【図9】図8の使用状態においてフロアマットに外力が加わった状態を表した説明図。
【図10】フロアマット用クリップの変更例を図1と対応させて表した斜視図。
【図11】図10のフロアマット用クリップの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
本実施の形態におけるフロアマット用のクリップ10は、樹脂材による一体成形品である。このクリップ10の構成は、図1〜図5で示すように一方向に長い平板状のベース12と、このベース12における一端寄りの上面に位置する支柱14と、同じくベース12の他端寄りの下面に位置する脚部26とに大別される。
【0012】
クリップ10は、図6で示す向きでフロア30に取付けられ、図7で示すようにフロアマット40をフロア30に留める。なお、図6及び図7は運転席側のフロア30が示されており、車体の前方側にアクセルやブレーキのペダル類52が位置し、車体の後方側にシート50が位置している。
図8及び図9で示すように、クリップ10はフロア30に敷かれたフロアマット40の留め孔42に脚部26を差し込むことでフロア30側に取付けられる。また、クリップ10の支柱14はフロアマット40の留め孔42に挿通させており、これによってフロアマット40がズレ動かないようにフロア30に留められる。
【0013】
クリップ10の支柱14は、ベース12の上面から上向きに突出した柱状をしている。この支柱14は、その上端部から斜め上向きの角度でペダル類52が位置する車体の前方側へ張り出した庇状の規制片16を備えているとともに、シート50が位置する車体の後方側へ規制片16よりも小さく張り出した膨出部18を備えている。規制片16の上面16aは、外方へ膨らんだ曲面であって膨出部18にまで連なっている。そして、膨出部18の下側面は、支柱14の外周面とほぼ直角の係止面20となっている。
【0014】
支柱14には、上下に長い一対の平行な溝24が図面の右側から切り込まれた格好でそれぞれ成形されている。これらの溝24により、支柱14の両側部は樹脂材の弾性によって軸芯方向へ撓むことができ、この両側部に外方へ突出した係止突起22がそれぞれ成形されている。すなわち、これらの係止突起22は外力を受けることにより、支柱14の両側部を撓ませて軸芯方向へ変位する。
両係止突起22は、それぞれの上下の中間部が最も突出し、その上下が斜面になっている。両係止突起22とベース12の上面までの寸法が、フロアマット40における留め孔42の周辺部の厚みよりも大きく設定され(図8)、かつ両係止突起22の最も突出した中間部を結ぶ直線距離がフロアマット40の留め孔42の内径よりも僅かに大きく設定されている。
【0015】
クリップ10の脚部26は、ベース12の下面から下向きに突出した一対の弾性片26aによって構成され、両弾性片26aの端部に外向きの爪26bがそれぞれ設けられている。この脚部26を前述のようにフロアカーペット36の取付け孔38に差し込むことにより、両弾性片26aを内方へ押し撓めながら両爪26bが取付け孔38を通過してフロアカーペット36の裏面に係止し、クリップ10がフロア30側に取付けられる。
クリップ10におけるベース12の下面には、先端の尖った二個の突起28が設けられている。ベース12は、フロアカーペット36の取付け孔38に対して脚部26の軸芯を支点に回転することができる。しかし、両突起28がフロアカーペット36に表面側から食い込むことにより、脚部26の軸芯を支点とするベース12の向きを決めることができる。
【0016】
フロアカーペット36は、図8及び図9で示すようにボデーパネル32の上面にスポンジ等のクッション材34を介在して敷かれている。フロアカーペット36には、前述のようにクリップ10の脚部26が差し込まれる取付け孔38が開けられ、この取付け孔38の縁部は補強金具38aで補強されている。
フロアマット40には、シート50が位置する車体の後方側において前述の留め孔42が開けられている。この留め孔42についても、その縁部が補強金具42aによって補強されている。
【0017】
既に説明したようにクリップ10は、その脚部26をフロアカーペット36の取付け孔38に差し込むことによってフロア30側に取付けられる。一方、フロアマット40は、その留め孔42にクリップ10の支柱14を挿通させることにより、フロア30に留められる。
図8の実線で示すようにクリップ10によってフロア30に留められているフロアマット40が、何らかの力を受けて浮き上がった場合、まずは留め孔42の周辺部位が支柱14の両係止突起22で受け止められる。さらに大きな力がフロアマット40に働いて図8の仮想線Aのように浮き上がっても、留め孔42の周辺部位が支柱14の規制片16に受け止められ、支柱14から留め孔42が外れることは防止される。
【0018】
これに対し、フロア30の清掃等を目的としてフロアマット40を取外す際は、図8の仮想線Bで示すようにフロアマット40における留め孔42の前側を指先で押え、後側を持ち上げる。これにより、留め孔42の周辺部位が係止面20に引っ掛かることなく通過し、かつ車体の前方側に張り出している規制片16の上面16aに沿って留め孔42が車体の前方へ移動して支柱14から留め孔42を外すことができる。そして、この逆手順によって留め孔42に支柱14を挿通させれば、再びフロアマット40をフロア30に留めることができる。
【0019】
また、使用状態でのフロアマット40は、ペダル類52を操作する運転者の足等による大きな力を受けて車体の前方側へ引っ張られることがある。この場合の様子を表した図9で明らかなように、フロアマット40の留め孔42の周辺部位が、車体の後方側においては支柱14の係止面20に引っ掛かり、車体の前方側においては規制片16によって受け止められる。すなわち、クリップ10における支柱14の規制片16と係止面20とが、恰も足のつま先と踵の働きで靴が脱げないように、支柱14から留め孔42が抜けて外れることが防止される。
【0020】
なお、クリップ10の支柱14からフロアマット40の留め孔42を外したり、支柱14を留め孔42に挿通させたりする際には、その都度、留め孔42が支柱14の両係止突起22を通過する。既に説明したように、両係止突起22の最も突出した中間部を結ぶ直線距離は留め孔42の内径よりも僅かに大きく設定されているので、留め孔42が通過するときの両係止突起22は支柱14の軸芯方向へ押し撓められ、留め孔42が通過し終えると元の状態に復帰する。したがって、特に支柱14を留め孔42に挿通させるときの節度感を得ることができる。また、支柱14を留め孔42に挿通させたこと、つまりフロアマット40が適正に留められたことを視覚によって容易に確認できる。
【0021】
前述のようにクリップ10は樹脂材による一体成形品であるため、成形金型の制作費用等も含めてコストを低減でき、かつ、全体に強固に仕上げることが可能であり、例えば支柱14が足で踏まれても破損することが少ない。さらに、クリップ10の全体形状がシンプルで、特に使用状態においてフロアマット40の上面に突出している支柱14(規制片16や係止突起22を含む)はデザイン性に優れている。
【0022】
図10および図11で示すクリップ10では、支柱14における一対の溝24に代えて車体の前後方向に貫通した一対の平行なスリット25が支柱14(規制片16の一部および膨出部18を含む)に成形されている。これらのスリット25により、支柱14の両側部が撓みやすくなるため、両係止突起22の成形位置を図1〜図5で示すクリップ10の場合よりも後方へずらせることができる。
【0023】
以上は本発明を実施するための最良の形態を図面に関連して説明したが、この実施の形態は本発明の趣旨から逸脱しない範囲で容易に変更または変形できるものである。
例えば図面で示すクリップ10では、支柱14と脚部26とが車体の前後方向にずれて配置されているが、フロア30の形状等によっては支柱14と脚部26とを同軸線上に配置することも可能である。また、クリップ10をフロア30に取付ける手段には、前述した構成の脚部26に代えてネジによる締結あるいは接着等が含まれる。
【符号の説明】
【0024】
10 クリップ
14 支柱
16 規制片
20 係止面
22 係止突起
30 フロア
40 フロアマット
42 留め孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアマットを車体の後方側においてフロアに留めるためのフロアマット用クリップであって、
フロアマットにおける車体の後方側に開けられた留め孔に挿通される支柱が、車体の前方側に張り出してフロアマットにおける留め孔の周辺部位を上面側から受け止め可能な規制片と、この規制片の反対側に位置し、フロアマットが車体の前方向へ引っ張られている使用状態において留め孔の周辺部位を上面側から係止可能な係止面とを備えているフロアマット用クリップ。
【請求項2】
請求項1に記載されたフロアマット用クリップであって、
支柱がその外周から外方へ突出してフロアマットにおける留め孔の周辺部位を上面側から受け止める複数の係止突部を備え、これらの係止突部は支柱の軸芯方向へ弾性によって変位することが可能に構成されているフロアマット用クリップ。
【請求項1】
フロアマットを車体の後方側においてフロアに留めるためのフロアマット用クリップであって、
フロアマットにおける車体の後方側に開けられた留め孔に挿通される支柱が、車体の前方側に張り出してフロアマットにおける留め孔の周辺部位を上面側から受け止め可能な規制片と、この規制片の反対側に位置し、フロアマットが車体の前方向へ引っ張られている使用状態において留め孔の周辺部位を上面側から係止可能な係止面とを備えているフロアマット用クリップ。
【請求項2】
請求項1に記載されたフロアマット用クリップであって、
支柱がその外周から外方へ突出してフロアマットにおける留め孔の周辺部位を上面側から受け止める複数の係止突部を備え、これらの係止突部は支柱の軸芯方向へ弾性によって変位することが可能に構成されているフロアマット用クリップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−121538(P2011−121538A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282589(P2009−282589)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】
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