説明

フロック加工物品用のトウ、フロック加工物品及びその使用

本発明は、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーベースマトリックス及び少なくとも1種の着色剤を含み且つ好ましくはさらに少なくとも1種の光及び/又は熱安定剤をも含む組成物を紡糸することによってそのフィラメントが得られた、フロック加工物品用の熱可塑性ポリマートウに関する。本発明はまた、前記組成物を紡糸することによってそのファイバーが得られたフロック加工物品にも関する。より特定的には、本発明は、良好な光及び/又は熱安定性を有する着色されたトウ及び着色されたフロック加工物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロック加工物品用の熱可塑性ポリマートウであって、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーベースマトリックス(即ち熱可塑性ポリマーをベースとするマトリックス)及び少なくとも1種の着色剤を含み且つ好ましくはさらに少なくとも1種の光及び/又は熱安定剤をも含む組成物を紡糸することによってそのフィラメントが得られた、前記熱可塑性ポリマートウに関する。本発明はまた、前記組成物を紡糸することによってそのファイバーが得られたフロック加工物品にも関する。より詳細には、本発明は、良好な光及び/又は熱安定性を有する着色されたトウ及び着色されたフロック加工物品に関する。
【背景技術】
【0002】
フロック加工物品は、特に衣類、家具又は自動車産業においてテキスタイル物品として用いることができる。これらは用途の分野に応じて様々な外観及び特性を有する。
【0003】
例えば自動車の分野においては、フロック加工物品は、装飾部品として、例えば座席カバー、ドアパネル、キャビネット(ebenisteries)、車内灯、後部棚、補助仕切り等として、用いることができる。これらはまた、機能性部品として、例えばボンネット下の音響(防音)部品、ウィンドウガイド等として、用いることもできる。
【0004】
一方、ポリアミド類はヤーン、ファイバー及びフィラメントの製造のために広く用いられている合成ポリマーである。これらのファイバー、ヤーン及びフィラメントは、テキスタイル表面、特に染色されたテキスタイル表面を製造するために用いられる。
【0005】
ポリアミド類は、紫外線、熱及び悪天候のような外的要素又は条件に曝された時に分解することがある。また、製造及び/又は造形の際に用いられる熱によって分解が起こることもある。この不安定性は特に分解、機械的特性の損失及び変色となって現れてくる。これらの問題は、ある種の用途、特に自動車の分野における用途にとって、重大なものになることがある。
【0006】
さらに、フロック加工物品は着色されるのが一般的であり、一般的に紡糸の後に染色工程が実施される。この染色工程は特に、トウに対して、フロック加工する前のチョップト(細断)ファイバーに対して又はフロック加工物品に対して、引き続いて実施することができる。紡糸した後に(例えばファイバーを染料浴中に浸漬することによって)染色を実施したこれらのフロック加工物品は、不適切な光及び熱安定性を有する。紫外線、熱及び悪天候のような外的要素又は条件に曝された時にフロック加工物品の色が変化してしまうのを防止することが特に望まれる。特に自動車分野においては、高いレベルの光安定性を要求する規格基準が広まってきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この点で、本発明は、第1の主題において、これらの欠点がないフロック加工物品用のトウを提供するものである。これは、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーベースマトリックス及び少なくとも1種の着色剤を含み且つ好ましくは少なくとも1種の光及び/又は熱安定剤をもまた含む組成物を紡糸することによって得られた複数の連続フィラメントから形成される熱可塑性ポリマートウである。
【0008】
第2の主題において、本発明は、フロック加工物品を製造するためにこのトウを使用することに関する。
【0009】
本発明はまた、第3の主題において、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーベースマトリックス及び少なくとも1種の着色剤を含む前記の通りの組成物を紡糸することによって得られたファイバーを含むフロック加工物品にも関する。最後に、本発明は、第4の主題において、乗物の室内上張りとして又は乗物の室内物品としてフロック加工物品を使用することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かくして、本発明は、第1の主題において、これらの欠点がないフロック加工物品用のトウに関する。これは、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーベースマトリックス及び少なくとも1種の着色剤を含み且つ好ましくは少なくとも1種の光及び/又は熱安定剤をもまた含む組成物を紡糸することによって得られた複数の連続フィラメントから形成された熱可塑性ポリマートウである。
【0011】
フロック加工物品用のトウは当業者に知られている。これらは捩りなしで製造され、ゆるんだロープに似た形で束ねられてまとめられた連続フィラメントの太い束である。トウは、フィラメントを溶融紡糸し、これらのフィラメントを集めて延伸することによって得られるのが一般的である。このトウは、4〜800キロテックスの範囲の線密度を有するのが一般的である。このトウは一般的に、当業者に周知の細断技術を用いて、例えば裁断機やナイフホイールを用いて、短いファイバーに細断される。これらのトウを得るための方法は、当業者に周知である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に従う組成物は、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーベースマトリックス及び少なくとも1種の着色剤を含み且つ好ましくは少なくとも1種の光及び/又は熱安定剤をも含む。
【0013】
前記マトリックスの熱可塑性ポリマーは、例えばポリアミド、特にナイロン6,ナイロン6,6、又はそれらのブレンド若しくはコポリマー;ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレート);アクリル;ポリオレフィン(例えばポリプロピレン)、ビスコース;又はレーヨンから選択することができる。
【0014】
用語「着色剤」とは、基材に色を提供する化合物を意味するものとする。これは、有機又は無機顔料、染料又はそれらの混合物若しくは組合せ物であることができる。着色剤の色は白以外のものであるのが有利である。本発明のトウの色は黒以外のものであるのが好ましい。
【0015】
前記顔料又は染料が無機系のものである場合、これは酸化鉄のような金属酸化物であるのが有利である。無機顔料又は染料が金属化合物である場合、この金属はカドミウム以外のものであるのが好ましい。カドミウム化合物の例としては、硫化カドミウム(CdS)及びセレン化カドミウム(CdSe)を挙げることができる。さらにより一層好ましくは、無機顔料又は染料の金属は、鉛、カドミウム及びクロム(VI)以外のものである。その理由は、これらの金属は毒性が高い重金属だからである。
【0016】
前記顔料又は染料が有機系のものである場合、これはペリレン類、フタロシアニン誘導体、例えば銅フタロシアニン、インダントロン、ベンズイミダゾロン、キナクリドン、ペリノン及びアゾメチン誘導体から選択される顔料又は染料であるのが有利である。この有機顔料又は染料は、ペリレン類、フタロシアニン誘導体及びアゾメチン誘導体から選択されるのが好ましい。本発明の1つの特定実施形態に従えば、これらの顔料又は染料は、水溶性ではないものとする。
【0017】
前記着色剤は、当業者に周知の任意の方法に従って前記熱可塑性ポリマーマトリックスに添加される。この着色剤は、例えば、押出機のような混合装置を用いて溶融ポリマーに直接添加することもでき、また、マスターバッチによって添加することもできる。
【0018】
本発明に従う組成物は、組成物に対して0.005〜5重量%の範囲、好ましくは0.01〜3重量%の範囲の割合で着色剤を含むのが有利である。
【0019】
本発明に従う組成物は、少なくとも1種の光及び/又は熱安定剤を含むのが好ましい。
【0020】
これらの安定剤は当業者によく知られており、しばしばそれらの作用の態様に従って次のように分類される:慣用の酸化防止剤、レドックス酸化防止剤、有機又は無機紫外線安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、金属失活剤、ヒドロペルオキシド還元剤及び配位化合物。
【0021】
安定剤の例としては、少なくとも1個の立体障害アミン単位を有する光安定剤(立体障害アミン光安定剤又はHALS)を挙げることができる。かかる添加剤は、例えば国際公開WO2004/000921号パンフレット及びWO2005/040262号パンフレットに記載されている。これらの安定剤は、熱可塑性ポリマーをベースとするマトリックスの重合の際に導入してもよく、当業者に周知の任意の方法に従ってマトリックスとブレンドしてもよい。前記組成物は、該組成物の重量に対して0.1〜0.5重量%の範囲、好ましくは0.15〜0.5重量%の範囲の割合でこのタイプの安定剤を含むのが有利である。
【0022】
本発明の範囲内で好適な別のタイプの安定剤としては、立体障害フェノール系酸化防止剤を挙げることができる。かかる酸化防止剤は、例えば国際公開WO2004/000921号パンフレット及びWO02/053633号パンフレットに記載されている。前記組成物は、該組成物の重量に対して0.1〜0.3重量%の範囲の割合でこのタイプの安定剤を含むのが有利である。
【0023】
他の安定剤は、リン系安定剤、例えばアルキル及び/又はアリール基で置換されたホスファイト(例えばトリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト);リン酸及び次亜リン酸等である。前記組成物は、該組成物の重量に対して0.01〜0.04重量%の範囲の割合でこのタイプの安定剤を含むのが有利である。
【0024】
また、特に国際公開WO2004/000921号パンフレットに記載された紫外線吸収剤を挙げることもできる。
【0025】
また、銅化合物のような無機又は有機塩も好適である。これらは一般的にアルカリ金属ハロゲン化物塩との組合せとして用いられる。このタイプの安定剤は、元素状銅として表わした濃度として5〜500ppm(ポリマー1kg当たりのmg数)の範囲の割合でマトリックス中に導入するのが有利である。
【0026】
また、マンガン化合物も安定剤として挙げることができる。これらのマンガン化合物は、マンガン塩、例えば無機及び/又は有機酸から得られたマンガン塩であることができる。
【0027】
このマンガン塩は、シュウ酸マンガン、乳酸マンガン、安息香酸マンガン、ステアリン酸マンガン、酢酸マンガン、次亜リン酸マンガン、珪酸マンガン、ピロリン酸マンガン及び塩化マンガンを含む群から選択されるのが好ましい。
【0028】
このタイプの安定剤は、元素状マンガンとして表わた濃度として5〜500ppm(ポリマー1kg当たりのmg数)の範囲の割合でマトリックス中に導入するのが有利である。
【0029】
前記安定剤は、立体障害フェノール系酸化防止剤、リン系安定剤、銅化合物及びマンガン化合物から選択されるのが有利である。
【0030】
前記安定剤は、当業者に周知の任意の方法に従って熱可塑性ポリマーマトリックスに添加される。該安定剤は、例えば熱可塑性ポリマーマトリックスの重合の際に導入することができる。また、該安定剤は、押出機のような混合装置中で溶融ポリマーに直接添加することもでき、また、マスターバッチによって添加することもできる。
【0031】
本発明に従う組成物は、艶消剤、マット化剤(mattifying agents)、例えば二酸化チタン及び/又は硫化亜鉛粒子、帯電防止挙動、親水性、しみ/汚れ防止効果、難燃性及び生物活性のような特性の変性剤、並びに(有機又は無機)充填剤のような非常に様々な添加剤を、単独で又はブレンドとして適宜に含むことができる。
【0032】
本発明に従うトウのフィラメントは、0.1〜100デシテックスの範囲の線密度を有することができる。前記フィラメントは、0.5〜60デシテックスの範囲、好ましくは0.5〜22デシテックスの範囲、より一層好ましくは0.5〜7デシテックスの範囲、さらにより一層好ましくは0.5〜4デシテックスの範囲の線密度を有するのが有利である。
【0033】
前記フィラメントは、様々な断面形状、例えば丸い形状や多葉形状を有することができる。これらはまた、中空フィラメントであることもできる。
【0034】
本発明はまた、第2の主題において、フロック加工物品を製造するために上記のトウを使用することにも関する。上で示したように、前記トウは当業者に周知の細断技術を用いて、例えば裁断機やナイフホイールを用いて、短いファイバーに細断される。次いでこれらのファイバーからフロック加工物品が製造される。得られたフロック加工物品は、非常に良好な光及び/又は熱安定性を有する。
【0035】
本発明はまた、第3の主題において、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーベースマトリックス及び少なくとも1種の着色剤を含む前記の通りの組成物を紡糸することによって得られたファイバーを含むフロック加工物品にも関する。このフロック加工物品は、ファイバーの重量に対して少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%の前記のようなファイバーを含むのが有利である。
【0036】
トウフィラメントの組成物に関して及びトウフィラメントに関して上に記載したことはすべて、フロック加工物品ファイバーの組成物及びフロック加工物品ファイバーにもそれぞれ同じように当てはまる。
【0037】
本発明のフロック加工物品は、二次元のフロック加工面であることができ、これらはシート、車内灯等のような二次元又は三次元物品用の上張りとして用いることができる。
【0038】
前記フロック加工物品はまた、車内灯、キャビネット、補助仕切り、手荷物棚、トランク、調節シール、ウィンドウガイド等のような三次元の物品であることもできる。これらは一般的に、三次元物品を直接フロック加工することによって製造される。
【0039】
フロック加工物品の製造方法はそれ自体周知である。本発明の範囲を何ら限定するものではないが、簡潔に言えば、これらの方法は一般的に、基材に接着剤を塗布し、非常に短いファイバーを吹付けることから成る。前記ファイバーは基材に好ましくはほぼ垂直方向に付着する。
【0040】
ファイバーの吹付は、支持体を振動させることによって若しくは静電手段によって、又はこれら2つの技術の組合せによって、実施することができる。静電吹付けに関しては、一般的に前記ファイバーを電気的に活性化して、静電場で方向付けされて吹付けられるようにする。前記ファイバーは、活性化処理によって活性化することができる。例として、大別して次の2つの類の活性化処理を挙げることができる:タンニンをベースとする処理及びコロイドシリカをベースとする処理。
【0041】
基材は、二次元又は三次元の面であることができる。
【0042】
フロック加工ファイバーを付着させるために用いることができる接着剤、基材へのそれらの塗布方法及び基材は当業者に周知であり、本発明を限定するものとはならない。基材のタイプの応じて、接着剤を塗布する前の処理が必要となる場合がある。前処理の例としては、プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理、下塗りによるコーティング等を挙げることができる。
【0043】
本発明に従ってファイバーをフロック加工する工程の際に、これらファイバーを混合する。これは、フロック加工面の最終的な均質外観に貢献する。
【0044】
本発明のフロック加工物品のファイバーは、0.1〜6mmの範囲の長さを有することができる。0.3〜4mmの長さを有するファイバーが好ましい。
【0045】
前記ファイバーは、平たくてもよく、捲縮していてももよい。これらファイバーは、二次元の縮れ及び/又は三次元の縮れを有することができる。ファイバーの二次元の縮れは、一般的に機械的捲縮によって得られる。
【0046】
また、材料、線密度、長さ及びテキスチャーが異なるファイバーの混合物を用いることもできる。
【0047】
本発明のフロック加工物品は、仕上げ操作に付すことができる。かかる操作は当業者に周知である。これら仕上げ操作は、例えば前記物品にサイズ剤又は化学剤を(例えばパジングによって)塗布して、しみ/汚れ防止特性、不透過性、帯電防止挙動、生物活性、難燃性等を与えるものであることができる。また、特殊な効果を与えるために前記物品をカレンダー掛け操作に付すこともできる。
【0048】
本発明のフロック加工物品は、良好な光及び/又は熱安定性を有する。従ってこれら物品は、光及び/又は熱に特に弱い乗物室内上張りの分野において用いることができる。
【0049】
かくして、本発明の第4の主題は、フロック加工面の場合には乗物室内上張りとして、三次元物品の場合には乗物室内物品として、前記のフロック加工物品を使用することに関する。
【0050】
用語「乗物」とは、陸、空又は海による任意の輸送手段を意味するものとする。乗物の例としては、自家用車、自動車、列車、営業車、実用車、全地形万能車、二輪自動車、重量物運搬車、公共輸送車(バス、地下鉄等)、飛行機、船等を挙げることができる。
【0051】
有利には、前記乗物は自動車である。本発明の範囲内で好適な自動車の室内上張り又は自動車の室内物品の例としては、座席カバー、ドアパネル、キャビネット、車内灯、後部棚、補助仕切り又は他の任意の装飾部品を挙げることができる。
【0052】
本発明の他の詳細や利点は、以下に単に指標として与えた実施例に鑑みてより一層明らかになるであろう。
【実施例】
【0053】
トウ及びファイバーの製造
【0054】
例1C(比較例)
【0055】
水86.71kg中の乾燥ナイロン塩(アジピン酸ヘキサメチレンジアンモニウム塩)92.56kg、カプロラクタム1380g、水中の32.3重量%ヘキサメチレンジアミン137g及び消泡剤6.5gを重合反応器中に添加することによって、ナイロン6,6の製造を実施した。
【0056】
このポリアミドは、標準的なナイロン6,6重合方法に従って製造した。
【0057】
加圧蒸留の段階の間に、20重量%二酸化チタン懸濁液6.1kgを添加した。
【0058】
得られたポリマーを棒の形状に注型し、冷まし、そしてこの棒状物を細断することによって粒体にした。
【0059】
得られたポリマーの前記粒体から測定した粘度指数は、132ml/gだった(ISO規格EN 307に従って)。
【0060】
電位差計によって測定したアミン末端基は51.6ミリ当量/kgだった。
【0061】
乾燥ナイロン6,6を押出し、20個の穴を有する紡糸口金を用いて285℃の押出温度において4200m/分で紡糸した。得られたフィラメントは、1.9デシテックス/ストランドの線密度及び丸い断面を有していた。
【0062】
次いでこのトウを細断して長さ0.9mmのファイバーにした。
【0063】
得られたファイバーを次いで乾燥させ、処理した。
【0064】
このファイバーを、当業者に周知の方法を用いて従来通りに染色した。
【0065】
前記ファイバーを水中に分散させた。1/30の重量希釈度の浴中で染色を実施した。
【0066】
前記ファイバーを、次の着色剤の混合物を用いて開放浴中で染色した:0.0079%のIRGALANE(登録商標)Bordeaux EL200%、0.0235%のIRGALANE(登録商標)Yellow 3RL KWL250%及び0.0913%のIRGALANE(登録商標)Grey GLN(百分率はファイバーの重量に対する重量で表わされる)。選択した着色剤は、自動車市場の仕様(紫外線及び温度耐性)に適合するために推奨され、用いられているものだった。得られた色はグレーだった。
【0067】
前記染料浴には、ファイバーの重量に対して1重量%、次いで2.2重量%の均染剤を添加した。これはCIBAFAST(登録商標)N2の品名でCiba社より販売されている製品である。
【0068】
次いでファイバーをすすぎ、乾燥させた。
【0069】
次いでこのファイバーを、タンニン及び硫酸アルミニウムをベースとする活性化処理に付した。
【0070】
例1
【0071】
水86.71kg中の乾燥ナイロン塩(アジピン酸ヘキサメチレンジアンモニウム塩)92.56kg、カプロラクタム1380g、水中の32.3重量%ヘキサメチレンジアミン137g、リン酸タイプのリン系酸触媒化合物、オリゴマー状HALSタイプの化合物及び消泡剤6.4gを重合反応器中に添加することによって、ナイロン6,6の製造を実施した。
【0072】
ポリマー中の最終リン濃度は、Pとして50ppm付近だった。HALSタイプの化合物の最終濃度は、ポリマーの重量に対して0.21重量%だった。
【0073】
このポリアミドは、標準的なナイロン6,6重合方法に従って製造した。
【0074】
加圧蒸留の段階の間に、20重量%二酸化チタン懸濁液6.1kgを添加した。
【0075】
得られたポリマーを棒の形状に注型し、冷まし、そしてこの棒状物を細断することによって粒体にした。
【0076】
得られたポリマーの前記粒体から測定した粘度指数は、128ml/gだった(ISO規格EN 307に従って)。
【0077】
電位差計によって測定したアミン末端基は56.5ミリ当量/kgだった。
【0078】
黒色顔料及び銅塩をナイロン6中のマスターバッチの形で導入した。
【0079】
押出機を用いて285℃の押出温度で前記マスターバッチ1重量%をPA6,6中に導入した。このブレンドを次いで20個の穴を有する紡糸口金を用いて4200m/分で溶融紡糸した。得られたフィラメントは、1.9デシテックス/ストランドの線密度及び丸い断面を有していた。得られた色はグレーだった。
【0080】
次いでこのトウを細断して長さ0.9mmのファイバーにした。
【0081】
次いでこのファイバーを、タンニン及び硫酸アルミニウムをベースとする活性化処理に付した。このファイバーの処理の際に、ファイバーの重量に対して2.2重量%の割合で、CIBAFAST(登録商標)N2の品名でCiba社より販売されている製品を導入した。
【0082】
例2C(比較例)
【0083】
水86.71kg中の乾燥ナイロン塩(アジピン酸ヘキサメチレンジアンモニウム塩)92.56kg、カプロラクタム1380g、水中の32.3重量%ヘキサメチレンジアミン137g、マンガン塩四水和物9g及び消泡剤6.5gを重合反応器中に添加することによって、ナイロン6,6の製造を実施した。
【0084】
このポリアミドは、標準的なナイロン6,6重合方法に従って製造した。
【0085】
加圧蒸留の段階の間に、20重量%二酸化チタン懸濁液6.06kgを添加した。
【0086】
得られたポリマーを棒の形状に注型し、冷まし、そしてこの棒状物を細断することによって粒体にした。
【0087】
得られたポリマーの前記粒体から測定した粘度指数は、129ml/gだった(ISO規格EN 307に従って)。
【0088】
電位差計によって測定したアミン末端基は55ミリ当量/kgだった。
【0089】
乾燥ナイロン6,6を押出し、20個の穴を有する紡糸口金を用いて285℃の押出温度において4200m/分で紡糸した。得られたフィラメントは、1.9デシテックス/ストランドの線密度及び丸い断面を有していた。
【0090】
次いでこのトウを細断して長さ0.9mmのファイバーにした。
【0091】
得られたファイバーを次いで乾燥させ、処理した。
【0092】
このファイバーを、当業者に周知の方法を用いて従来通りに染色した。
【0093】
前記ファイバーを水中に分散させた。1/30の重量希釈度の浴中で染色を実施した。
【0094】
前記ファイバーを、次の着色剤の混合物を用いて開放浴中で染色した:0.053%のLANASYN(登録商標)Yellow S2GL(Clariant社より販売)、及び0.016%のLANASYN(登録商標)Dark Brown SGL(Clariant社より販売)(百分率はファイバーの重量に対する重量で表わされる)。選択した着色剤は、自動車市場の仕様(紫外線及び温度耐性)に適合するために推奨され、用いられている金属含有着色剤だった。得られた色はベージュだった。
【0095】
前記染料浴には、ファイバーの重量に対して1重量%、次いで2.2重量%の均染剤を添加した。これはCIBAFAST(登録商標)N2の品名でCiba社より販売されている製品である。
【0096】
次いでファイバーをすすぎ、乾燥させた。
【0097】
次いでこのファイバーを、タンニン及び硫酸アルミニウムをベースとする活性化処理に付した。
【0098】
例2
【0099】
水86.71kg中の乾燥ナイロン塩(アジピン酸ヘキサメチレンジアンモニウム塩)92.56kg、カプロラクタム1380g、水中の32.3重量%ヘキサメチレンジアミン137g、マンガン塩四水和物9g、純粋な酢酸銅一水和物25.9g、ヨウ化カリウム64.7g及び消泡剤6.4gを重合反応器中に添加することによって、ナイロン6,6の製造を実施した。
【0100】
このポリアミドは、標準的なナイロン6,6重合方法に従って製造した。
【0101】
加圧蒸留の段階の間に、20重量%二酸化チタン懸濁液6.1kgを添加した。
【0102】
得られたポリマーを棒の形状に注型し、冷まし、そしてこの棒状物を細断することによって粒体にした。
【0103】
得られたポリマーの前記粒体から測定した粘度指数は、130ml/gだった(ISO規格EN 307に従って)。
【0104】
電位差計によって測定したアミン末端基は54.2ミリ当量/kgだった。
【0105】
黒色顔料、茶色顔料及び黄色顔料をマスターバッチ群の形で導入した。第1のマスターバッチはナイロン6中に黒色顔料を20重量%導入して成るものだった。第2のマスターバッチはナイロン6中に茶色顔料を50重量%導入して成るものだった。第3のマスターバッチはナイロン6中に黄色顔料を25重量%導入して成るものだった。
【0106】
押出機を用いて285℃の押出温度で第1のマスターバッチ0.08重量%、第2のマスターバッチ0.048重量%及び第3のマスターバッチ0.89重量%をPA6,6中に導入した。このブレンドを次いで20個の穴を有する紡糸口金を用いて4200m/分で溶融紡糸した。得られたフィラメントは、1.9デシテックス/ストランドの線密度及び丸い断面を有していた。得られた色はベージュだった。
【0107】
次いでこのトウを細断して長さ0.9mmのファイバーにした。
【0108】
次いでこのファイバーを、タンニン及び硫酸アルミニウムをベースとする活性化処理に付した。このファイバーの処理の際に、ファイバーの重量に対して2.2重量%の割合で、CIBAFAST(登録商標)の品名でCiba社より販売されている製品を導入した。
【0109】
フロック加工面の製造
【0110】
例1C、例1、例2C及び例2からのファイバーを次いで、接着剤TUBVINYL 235SL(CHT社から入手)+4重量%TUBASSIST FIX 102W(CHT社から入手)を塗布したポリアミド/綿織物(基材)上に厚さ0.20/100mmでフロック加工した。
【0111】
前記ファイバーは、標準的な方法を用いてフロック加工した。基材上のファイバーの密度は約70g/m2だった。
【0112】
フロック加工面を次いでオーブン中に入れて熱処理して、前記の接着剤を乾かして架橋させた。
【0113】
光安定性結果
【0114】
フロック加工面を次いで、300〜800nmの範囲で出力700W/m2の空冷キセノンアークランプを含み且つ窓ガラスフィルター及びホウケイ酸塩フィルターを備えたSuntest XLS+チャンバー内で露光した。チャンバー内におけるブラックパネル温度は99℃とした。
【0115】
240時間及び320時間の露光の後に、露光前後におけるフロック加工面の色の変化をグレースケールに従って測定した。
【0116】
【表1】

【0117】
これらの結果は、従来の方法によって染色されたファイバーから得られた製品と比較した時の着色されて安定化されたファイバーから得られた製品の明らかな改善を示している。
【0118】
トウ及びファイバーの製造
【0119】
例3C(比較例)
【0120】
標準的なナイロン6,6重合方法に従い、水の存在下でナイロン塩を重合させることによって、ナイロン6,6を製造した:カプロラクタム(ポリマーに対して1.7重量%)、マンガン塩四水和物(例2と同じ濃度)及び消泡剤溶液を添加した。
【0121】
得られたポリマーを棒の形状に注型し、冷まし、そしてこの棒状物を細断することによって粒体にした。
【0122】
得られたポリマーの前記粒体から測定した粘度指数は、130ml/gだった(ISO規格EN 307に従って)。
【0123】
電位差計によって測定したアミン末端基は53ミリモル/kgだった。
【0124】
乾燥ナイロン6,6を押出し、20個の穴を有する紡糸口金を用いて285℃の押出温度において4200m/分で紡糸した。得られたフィラメントは、1.9デシテックス/ストランドの線密度及び丸い断面を有していた。
【0125】
次いでこのトウを細断して長さ0.9mmのファイバーにした。
【0126】
得られたファイバーを次いで乾燥させ、処理した。
【0127】
このファイバーを、当業者に周知の方法を用いて従来通りに染色した。
【0128】
前記ファイバーを水中に分散させた。1/30の重量希釈度の浴中で染色を実施した。
【0129】
前記ファイバーを、次の染料を用いて開放浴中で染色した:3%のIRGALANE(登録商標)RBLN Black(Ciba社より販売)(百分率はファイバーの重量に対する重量で表わされる)。選択した染料は、自動車市場の仕様(紫外線及び温度耐性)に適合するために推奨され、用いられている金属含有着色剤だった。得られた色は黒だった。
【0130】
前記染料浴には、ファイバーの重量に対して1重量%、次いで2.2重量%の均染剤を添加した。これはCIBAFAST(登録商標)N2の品名でCiba社より販売されている製品である。
【0131】
次いでファイバーをすすぎ、乾燥させた。
【0132】
次いでこのファイバーを、タンニン及び硫酸アルミニウムをベースとする活性化処理に付した。
【0133】
例3A及び3B
【0134】
用いたポリマーは、例3Cのものと同じだった。
【0135】
黒色顔料をナイロン6中のマスターバッチの形で導入した。押出機を用いて285℃の押出温度で前記マスターバッチ4.8重量%をPA6,6中に導入した。このブレンドを次いで20個の穴を有する紡糸口金を用いて4200m/分で溶融紡糸した。得られたフィラメントは、1.9デシテックス/ストランドの線密度及び丸い断面を有していた。得られた色は黒だった。
【0136】
次いでこのトウを細断して長さ0.9mmのファイバーにした。
【0137】
例3Aでは、次いでこのファイバーを、タンニン及び硫酸アルミニウムをベースとする活性化処理に付した。このファイバーの処理の際に、ファイバーの重量に対して2.2重量%の割合で、CIBAFAST(登録商標)N2の品名でCiba社より販売されている製品を導入した。
【0138】
例3Bでは、次いでこのファイバーを、タンニン及び硫酸アルミニウムをベースとする活性化処理に付した。
【0139】
例4
【0140】
紡糸の際に、例3Cに合成を記載したナイロン6,6とポリマーDとを、例3Cのナイロン6,6対ポリマーDの重量割合を1/3対2/3として、ブレンドした。
【0141】
ポリマーDは、標準的なナイロン6,6重合方法に従い、水の存在下でナイロン塩を重合させることによって製造したナイロン6,6だった:カプロラクタム(ポリマーに対して1.7重量%)、マンガン塩四水和物(例2と同じ濃度)、二酸化チタン1.5重量%及び消泡剤溶液を添加した。
【0142】
黒色顔料をナイロン6中のマスターバッチの形で導入した。押出機を用いて285℃の押出温度で前記マスターバッチ1.4重量%をPA6,6中に導入した。このブレンドを次いで20個の穴を有する紡糸口金を用いて4200m/分で溶融紡糸した。得られたフィラメントは、1.9デシテックス/ストランドの線密度及び丸い断面を有していた。得られた色はグレーだった。
【0143】
例5
【0144】
紡糸の際に、例4に記載したポリマーを前記のように1/3:2/3の割合でブレンドした。
【0145】
黒色顔料をナイロン6中のマスターバッチの形で導入した。押出機を用いて285℃の押出温度で前記マスターバッチ1.4重量%をポリマーのブレンド中に導入した。
【0146】
また、多少のCuI/KIもナイロン6中のマスターバッチの形で導入した。このマスターバッチ0.51重量%を、押出機を用いてポリマーのブレンド中に導入した。このブレンドを次いで20個の穴を有する紡糸口金を用いて4200m/分で溶融紡糸した。
【0147】
得られたフィラメントは、1.9デシテックス/ストランドの線密度及び丸い断面を有していた。得られた色はグレーだった。
【0148】
フロック加工面の製造
【0149】
例3C、例3A及び例3Bからのファイバーを次いで、接着剤TUBVINYL 235SL(CHT社から入手)+4重量%TUBASSIST FIX 102W(CHT社から入手)を塗布したポリアミド/綿織物(基材)上に厚さ0.20/100mmでフロック加工した。
【0150】
前記ファイバーは、標準的な方法を用いてフロック加工した。基材上のファイバーの密度は約70g/m2だった。
【0151】
フロック加工面を次いでオーブン中に入れて熱処理して、前記の接着剤を乾かして架橋させた。
【0152】
光安定性結果
【0153】
ファイバー3C、3A及び3Bから得られたフロック加工面並びに例4及び5からのトウを次いで、300〜800nmの範囲で出力700W/m2の空冷キセノンアークランプを含み且つ窓ガラスフィルター及びホウケイ酸塩フィルターを備えたSuntest XLS+チャンバー内で露光した。チャンバー内におけるブラックパネル温度は99℃とした。
【0154】
240時間及び320時間の露光の後に、露光前後におけるフロック加工面の色の変化をグレースケールに従って測定した。
【0155】
【表2】

【0156】
これらの結果は、従来の方法によって染色されたファイバーから得られた製品と比較した時の着色されたファイバーから得られた製品についての明らかな改善を示した。
【0157】
Suntest露光の前後に、トウの真のテナシティを測定した。
【0158】
【表3】

【0159】
これらの結果は、着色されたファイバーから、特に着色されて安定化されたファイバーから得られたトウの良好な機械的特性を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の連続フィラメントから形成された熱可塑性ポリマートウであって、前記フィラメントが、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーベースマトリックス及び少なくとも1種の着色剤を含み且つ好ましくは少なくとも1種の光及び/又は熱安定剤をもまた含む組成物を紡糸することによって得られたものであることを特徴とする、前記熱可塑性ポリマートウ。
【請求項2】
前記着色剤が無機物であって金属酸化物であることを特徴とする、請求項1に記載のトウ。
【請求項3】
前記金属がカドミウム以外のものであることを特徴とする、請求項2に記載のトウ。
【請求項4】
前記金属がカドミウム、鉛及びクロム(VI)以外のものであることを特徴とする、請求項3に記載のトウ。
【請求項5】
前記着色剤が有機物であってペリレン類、フタロシアニン誘導体、インダントロン、ベンズイミダゾロン、キナクリドン、ペリノン及びアゾメチン誘導体から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のトウ。
【請求項6】
前記着色剤がペリレン類、フタロシアニン誘導体及びアゾメチン誘導体から選択されることを特徴とする、請求項5に記載のトウ。
【請求項7】
前記安定剤が立体障害フェノール系酸化防止剤、リン系安定剤、銅化合物及びマンガン化合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のトウ。
【請求項8】
前記マトリックスがポリアミドをベースとするものであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のトウ。
【請求項9】
前記ポリアミドがナイロン6,ナイロン6,6並びにそれらのブレンド及びコポリマーから選択されることを特徴とする、請求項8に記載のトウ。
【請求項10】
前記フィラメントが0.1〜100デシテックスの範囲の線密度を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のトウ。
【請求項11】
前記フィラメントが0.5〜60デシテックスの範囲の線密度を有することを特徴とする、請求項10に記載のトウ。
【請求項12】
フロック加工物品を製造するための請求項1〜11のいずれかに記載のトウの使用。
【請求項13】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマーベースマトリックス及び少なくとも1種の着色剤を含む請求項1〜9のいずれかに記載の組成物を紡糸することによって得られたファイバーを含むフロック加工物品。
【請求項14】
ファイバーの重量に対して少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%の割合で請求項7に記載のファイバーを含むことを特徴とする、請求項13に記載のフロック加工物品。
【請求項15】
前記ファイバーが0.1〜6mmの範囲の長さを有することを特徴とする、請求項13又は14に記載のフロック加工物品。
【請求項16】
乗物室内上張りとして又は乗物室内物品としての、請求項13〜15のいずれかに記載のフロック加工物品の使用。
【請求項17】
前記乗物が自動車であることを特徴とする、請求項16に記載の使用。

【公表番号】特表2009−526922(P2009−526922A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554750(P2008−554750)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051280
【国際公開番号】WO2007/093562
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508076598)ロディア オペレーションズ (98)
【氏名又は名称原語表記】RHODIA OPERATIONS
【住所又は居所原語表記】40 rue de la Haie Coq F−93306 Aubervilliers FRANCE
【Fターム(参考)】