説明

フロムフリー不動態化溶液

本発明はクロムフリー不動態化溶液に係り、前記クロムフリー不動態化溶液は、有効量の遷移金属を含むオキシ塩、無機酸、水を含む。前記遷移金属のオキシ塩は、チタンを含むオキシ塩、ジルコニウムを含むオキシ塩、ハフニウムを含むオキシ塩、バナジウムを含むオキシ塩、ニオブを含むオキシ塩、タンタルを含むオキシ塩、モリブデンを含むオキシ塩、タングステンを含むオキシ塩、マンガンを含むオキシ塩、テクネチウムを含むオキシ塩、レニウムを含むオキシ塩、からなる群から選択され、前記遷移金属を含むオキシ塩と無機酸との間の重量比は200〜400:1の範囲である。さらに前記クロムフリー不動態化溶液は一つ以上の錯化剤を含む。めっき層及び従来技術の不動態化溶液中に有毒な6価または3価クロムが存在する問題は本発明の不動態化溶液によって実質的に解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不動態化溶液に係り、より詳細にはクロムフリーの不動態化溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
電気めっき層または高温めっき層は、耐腐食性を向上させるため及び外観をよくするために不動態化されなくてはならない。現在、電気めっき層または高温めっき層の不動態化は、鉄鋼部品のめっき層の耐腐食性を大きく改良するため、一般的にクロム酸不動態化溶液を用いて単純な不動態化工程及び低コストで実施されている。しかしながら、クロム酸不動態化によって形成された不動膜またはクロム酸不動態化溶液廃棄物のどちらも6価クロムを含み、これは人間の健康及び環境保護に関して大変有害なものである。クロム酸不動態化溶液廃棄物は排出される前に処理されなくてはならないことが中国政府によって明確に定められている。例えば自動車、エレクトロニクス、家庭電化製品等の、国内外の多くの産業分野では、ある期限の後はめっき層に6価クロムが含まれることを禁止することを規定しており、いくつかの企業においては3価クロムでさえもめっき層に含まれることが禁止されている。結果として、クロム酸不動態化溶液が使用される必要がないクロムフリー不動態化法を提供するための多くの試みがなされてきた。
【0003】
クロムフリー不動態化溶液は、“Chrome−free passivating solution used for protecting galvanizing coat and its coating method”と題された中国特許出願第00114178号明細書で開示されている。前記クロムフリー不動態化溶液は、“インヒビターとして選択された無害な可溶性モリブデン酸塩及び無害な水溶性アクリル酸エステル溶液”によって調整される。不動態化溶液はクロムフリーであるが、従来のクロム酸不動態化溶液を置き換えるのは不可能である。不動態化溶液は、本当にめっき層を不動態化するよりはむしろ、表面樹脂層を形成するためにめっきされた部品の清浄な表面上に塗布されなくてはならないためである。上記用途の前記クロムフリー不動態化溶液のための従来のクロム酸不動態化装置を用いることは不可能であり、そのため装置への投資コストは増加する。さらに、めっきされた部品から表面樹脂層の塗膜片が容易に落ちて、その耐腐食性及び表面装飾効果を減少させる。今までのところ、クロム酸不動態化溶液と置き換え可能な真のクロムフリー不動態化溶液は存在していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、めっき層を不動態化する工程に用いられる従来のクロム酸不動態化溶液を置き換えることが可能な、6価クロム不動態化工程によって提供されるのと実質的に同等の耐腐食性を有するクロム酸フリー不動態化溶液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的を達成するために、本発明は以下の成分を含むクロムフリー不動態化溶液を提供する。
遷移金属を含む不動態化有効量のオキシ塩
無機酸

【0006】
前記遷移金属を含むオキシ塩は、チタンを含むオキシ塩、ジルコニウムを含むオキシ塩、ハフニウムを含むオキシ塩、バナジウムを含むオキシ塩、ニオブを含むオキシ塩、タンタルを含むオキシ塩、モリブデンを含むオキシ塩、タングステンを含むオキシ塩、マンガンを含むオキシ塩、テクネチウムを含むオキシ塩、レニウムを含むオキシ塩、からなる群から選択され、前記遷移金属を含むオキシ塩と無機酸との重量比は200〜400:1の範囲である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
“遷移金属”という用語は、元素周期表においてIIIB族〜VIII族の化学元素を意味する。本発明における遷移金属は元素周期表におけるIVB族、VB族、VIB族及びVIIB族の化学元素を含む。好ましくは、前記遷移金属はマンガン、チタン、モリブデン、バナジウム及びジルコニウムである。
【0008】
本発明のオキシ塩は、オキシ酸及び金属カチオンまたはアンモニウムイオンの様々な錯陰イオンからなる塩化合物である。前記遷移金属を含むオキシ塩は、様々な遷移金属、及び、例えば過マンガン酸カリウム、モリブデン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウム、硫酸チタニル等の、好ましくはアルカリ塩、アンモニウム塩または前記遷移金属を含むチタン塩等の、様々なオキシ塩からなる塩化合物である。
【0009】
遷移金属を含むオキシ塩は、チタンを含むオキシ塩、マンガンを含むオキシ塩、モリブデンを含むオキシ塩、バナジウムを含むオキシ塩及びジルコニウムを含むオキシ塩からなる群から選択される少なくとも一つまたは二つのものである。すなわち、前記オキシ塩は本発明において独立に用いられてよいか、または前記二つのオキシ塩の混合物が本発明において用いられてよい。実際には、当業者は本発明において必要に応じて三つ以上の上記オキシ塩の混合物を用いてよい。関連して、上記二つの塩は不動態化溶液が調整される前に混合されてもよい。
【0010】
他の実施形態では、不動態化溶液は前もって混合されることなく直接調整されてよい。前記二つの方法で調整された不動態化溶液は同一のものである。
【0011】
好ましくは、二つの遷移金属を含むオキシ塩が用いられ、二つのオキシ塩の間の重量比は35〜45:1の範囲である。本発明の実施形態において、モリブデン酸アンモニウムと過マンガン酸カリウムとの間の重量比は35:1である。この実施形態では、モリブデン酸アンモニウムと過マンガン酸カリウムとの間の重量比は1:35であってもよい。
【0012】
クロム酸フリー不動態化溶液は、さらに一つまたはそれ以上のケイ酸塩、好ましくは、例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムまたはケイ酸アンモニウム等のアルカリケイ酸塩またはアンモニウムケイ酸塩を含む。クロム酸フリー不動態化溶液には一つ以上の遷移金属を含む塩及びケイ酸塩が配合される。好ましくは、遷移金属を含むオキシ塩とケイ酸塩との間の重量比は35〜45:1である。一つの実施形態では、モリブデン酸アンモニウムとケイ酸ナトリウムとは重量比45:1で混合される。
【0013】
従来技術では、クロム酸不動態化溶液が用いられていたので、不動態化によって形成された不動膜及びクロム酸不動態化溶液廃棄物の双方が人間の健康及び環境保護に関して大変有害である6価クロムを含む。めっき及び他の廃液の評価基準に従って、Cr6+、Cr3+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、S、As、CN、Hg、Bb、F、ベンゼン、ニトロベンゼン、フェニルアミン、有機リン、有機塩素、界面活性剤及び懸濁物質を含む廃液は排出前に処理されなくてはならない。本発明の遷移金属を含むオキシ塩は、上記リストには挙がっていない。結果的に、従来技術と比較すると、従来のめっき層及び不動態化溶液に有毒で有害な6価及び3価のクロムが含まれる問題が実質的に解決し、人間及び環境に対する6価及び3価クロムの害が排除される。
【0014】
本発明のクロム酸フリー不動態化溶液中において、金属を溶解させ不動態化プロセスを開始するために、無機酸はめっき層の表面を活性化してよい。結果として本発明では、めっき層表面の金属亜鉛と反応して亜鉛イオンへと酸化することが可能な、どのような無機物が用いられてよい。さらに、酸化反応を開始することが可能な他の酸化剤もまた、本発明の範囲に含まれるべきである。
【0015】
本発明における無機酸は、硫酸、塩酸、硝酸、ホウ酸、リン酸、クロロスルホン酸、フッ酸及び氷酢酸からなる群から選択される一つ以上の無機酸である。好ましくは、前記無機酸は、硫酸、硝酸、塩酸の群から選択される二つの無機酸であり、前記二つの無機酸の間の重量比は7から10:1の範囲である。本発明の特定の実施形態においては、硫酸と硝酸または塩酸との間の重量比は7〜10:1である。この実施形態では、硫酸と、硝酸または塩酸との間の重量比は1:7〜10であってよい。
【0016】
遷移金属を含むオキシ塩と無機酸との間の重量比は、200〜400:1とするべきである。本発明において、遷移金属を含むオキシ塩と無機酸との間の重量比は、不動態化反応速度及び不動膜の外観に影響する。
【0017】
さらに、本発明のクロム酸フリー不動態化溶液は、一つ以上の錯化剤を含んでよい。本発明では、不動態化反応を促進するために不動態化溶液の金属イオンを安定化するため錯化剤が用いられた。例えば、有機酸がめっき層表面に溶解した亜鉛イオンと溶解可能な錯体を形成して、亜鉛イオンが水酸化物イオンと化合して表面に堆積した水酸化亜鉛を形成することを防止し、不動膜の形成を促進してよい。
【0018】
一つまたは複数の錯化剤は、一つ以上の有機酸、または有機酸及び無機酸の混合物であってよい。前記有機酸はクエン酸、酒石酸、ピロリン酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミンテトラメチルリン酸(EPTMP)、スルホンアミド酸(sulfonamic acid)、カルボキシ酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等を含むだけではなく、例えばヒドロキシエチリデンジホスホン酸塩(HEDP)、ヒドロキシ−プロピリデン−1,1−ジホスホン酸(HPDP)、2−ヒドロキシホスホノ酢酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ジエチリデントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPMP)、1−ヒドロキシ−2−(3−ピリジル)エタン−1,1−ジホスホン酸、2−ヒドロキシホスホノ酢酸(HPAA)、1−ヒドロキシブチリデン−1,1−ジホスホン酸(HBDP)、1−ヒドロキシ−エチリデン−1,1−ジホスホン酸(HDEP)、1−ヒドロキシ−ヒドロキシ−ジホスホン酸等のヒドロキシを含む有機リン酸も含む。過酸化物は過酸化水素、過酸化カリウム、過酸化ナトリウム等を含む。
【0019】
本発明の実施形態では、錯化剤は三つの有機酸の混合物であり、前記三つの有機酸の重量比は6:5:1である。他の実施形態では、錯化剤はピロリン酸、ニトリロ三酢酸及び過酸化ナトリウムの混合物であり、ピロリン酸:ニトリロ三酢酸:過酸化ナトリウムの重量比は6:5:1である。他の実施形態では、錯化剤はクエン酸、酒石酸、ピロリン酸の混合物であり、クエン酸:酒石酸:ピロリン酸の重量比は6:5:1である。
【0020】
迅速な膜形成(不動膜)率で不動態化反応をうまく進めるために、クロム酸フリー不動態化溶液のpH値は酸性となるべきである。好ましくは、クロム酸フリー不動態化溶液のpH値は1〜3の範囲である。
【0021】
処方を選別し最適化することによって、クロム酸フリー不動態化溶液1リットルあたり以下の成分を含むとき良好な不動態化の効果を有することが証明された。
処方:
成分 1リットル
遷移金属を含むオキシ塩 20〜35g
無機酸 0.05〜0.15g
水 残りの量
【0022】
処方において、遷移金属を含むオキシ塩は、遷移金属を含むオキシ塩とケイ酸塩との混合物で置き換えられてよい。
【0023】
処方には、18〜38gの錯化剤がさらに追加されてよい。
【0024】
本発明のクロム酸フリー不動態化溶液は従来技術によって調整されてよい。詳細な調整方法として従来のクロム酸不動態化溶液の調整方法を参照してよい。例えば、クロム酸フリー不動態化溶液を1リットル調整するために、本発明の実施形態で示された特定の比率で塩、錯化剤、及び酸化剤が混合され、pHが1−3の不動態化溶液が1リットル得られるように、得られた混合物に体積が1リットルになるまで水が加えられる。
【0025】
クロム酸フリー不動態化溶液はめっき層の不動態化のために用いられてよい。不動態化の操作条件は従来のクロム酸不動態化溶液で用いられたものと同じである。室温において、第1に、めっきする部品の表面を清浄にし、その後めっきする部品のめっき層を不動態化溶液に4−10秒浸し、すすぎ、乾燥し、焼成した後、淡青色及び深緑色の不動膜が徐々に形成される。
【0026】
めっきする部品を不動態化溶液に長時間(不動態化時間)浸すほど、めっきする部品の不動膜は厚くなる。しかし、不動膜が厚すぎると接着能が低くなり光沢が不十分になる。もしpH値がより高ければ、浸漬時間は相対的に長く持続可能である。一方で不動態化溶液の温度がより高ければ、浸漬時間は短くなるべきである。不動態化の間、不動態化溶液のpH値は連続的に上昇し、膜形成速度は結果的に低くなる。pH値が高いとき、pH値は不動態化溶液中に硝酸または硫酸を加えることによって調整されてもよい。とにかく、実際は、当業者は実施上の状況に応じて処理条件を調整してよい。
【0027】
モリブデン、マンガン及びチタンを含む塩、錯化剤、無機酸はめっき層と反応して多くの構造を有するクロム酸フリー不動態化膜の層を形成する。サンプルのバッチテストの後、前記不動態化処理技術は安定且つ実行可能なものである。耐腐食性の信頼性試験によって、それは関係する基準に完全に従うものである。
【0028】
めっき不動態化の塩水噴霧試験結果は、本発明に従って得られためっき層の耐腐食性が、従来の青白不動態化(blue−white passivating)技術によって得られためっき層よりも高く、カラー不動態化(color passivating)技術を用いて得られためっき層の耐腐食性と同等であることを示す。
【0029】
以下好ましい実施形態を通じて本発明の詳細が記述されるが、それは決して本発明を制限するものではない。
【0030】
[好ましい実施形態の詳細な記述]
特に示す場合を除いて、例中の全ての試験材料は市場で手に入れることが可能であり、硫酸、硝酸及び塩酸は希釈することなく濃酸である。
【0031】
[クロム酸フリー不動態化溶液の調製]
[例1]
過マンガン酸カリウム10g、クエン酸38g、硫酸0.15gをとり、これらの材料を水と混合してpH値が1−3の不動態化溶液を1リットル調製する。
【0032】
不動態化処理条件は従来のクロム酸不動態化技術における条件と同様である。室温で、めっき層は不動態化溶液に4−10秒浸され、すすがれ、乾燥され、焼成され、淡青色及び深緑色の不動膜を徐々に形成する。
【0033】
[例2]
硫酸チタニル20g、クエン酸38g、硫酸0.15gをとり、これらの材料を水と混合してpH値が1−3の不動態化溶液を1リットル調製する。
【0034】
不動態化処理は例1と同様である。
【0035】
[例3]
モリブデン酸アンモニウム20g、クエン酸38g、硫酸0.15gをとり、これらの材料を水と混合してpH値が1−3の不動態化溶液を1リットル調製する。
【0036】
不動態化処理は例1と同様である。
【0037】
[例4]
モリブデン酸アンモニウム3402.78g、過マンガン酸カリウム97.22g(すなわち、モリブデン酸アンモニウムと過マンガン酸カリウムとの間の重量比が35:1)、酒石酸1800g、塩酸5gをとり、これらの材料を水と混合してpH値が1−3の不動態化溶液を100リットル調製する。
【0038】
不動態化処理は例1と同様である。
【0039】
[例5]
モリブデン酸アンモニウム195.65g、ケイ酸ナトリウム4.35g(すなわち、モリブデン酸アンモニウムとケイ酸ナトリウムとの間の重量比が45:1)、ニリン酸38g、硝酸1.5gをとり、これらの材料を水と混合してpH値が1−3の不動態化溶液を10リットル調製する。
【0040】
不動態化処理は例1と同様である。
【0041】
[例6]
例1で記載された比率に従って作られた塩3000g、クエン酸1000g、酒石酸833g、ニリン酸167g(すなわち、クエン酸と酒石酸とニリン酸との間の重量比が6:5:1、錯化剤の全重量が2000g)、硝酸7gをとり、これらの材料を水と混合してpH値が1−3の不動態化溶液を100リットル調製する。
【0042】
不動態化処理は例1と同様である。
【0043】
[例7]
例5で記載された比率に従って作られた塩3000g、クエン酸1000g、酒石酸833g、ニリン酸167g(すなわち、クエン酸と酒石酸とニリン酸との間の重量比が6:5:1、錯化剤の全重量が2000g)、硝酸7gをとり、これらの材料を水と混合してpH値が1−3の不動態化溶液を100リットル調製する。
【0044】
不動態化処理は例1と同様である。
【0045】
[例8]
塩3000g(例1と同じ)、クエン酸1000g、酒石酸833g、ニリン酸167g(すなわち、クエン酸と酒石酸とニリン酸との間の重量比が6:5:1、錯化剤の全重量が2000g)、塩酸7gをとり、これらの材料を水と混合してpH値が1−3の不動態化溶液を100リットル調製する。
【0046】
不動態化処理は例1と同様である。
【0047】
[例9]
塩3000g(例5と同じ)、クエン酸1000g、酒石酸833g、ニリン酸167g(すなわち、クエン酸と酒石酸とニリン酸との間の重量比が6:5:1、錯化剤の全重量が2000g)、塩酸7gをとり、これらの材料を水と混合してpH値が1−3の不動態化溶液を100リットル調製する。
【0048】
不動態化処理は例1と同様である。
【0049】
[例10]
塩2500g(例1と同じ)、ニリン酸1250g、ナトリウムトリグリコラメート(sodium triglycollamate)1042g、過酸化ナトリウム208g(すなわち、ニリン酸とナトリウムトリグリコラメートと過酸化ナトリウムとの間の重量比が6:5:1、錯化剤の全重量が2500g)、硝酸5gをとり、これらの材料を水と混合してpH値が1−3の不動態化溶液を100リットル調製する。
【0050】
不動態化処理は例1と同様である。
【0051】
[例11]
塩2500g(例1と同じ)、ニリン酸1250g、エチレンジアミン四メチルホスフィン酸1042g、過酸化ナトリウム208g(すなわち、クエン酸とホスフィンと過酸化ナトリウムとの間の重量比が6:5:1、錯化剤の全重量が2500g)、硫酸5gをとり、これらの材料を水と混合してpH値が1−3の不動態化溶液を100リットル調製する。
【0052】
不動態化処理は例1と同様である。
【0053】
[例12]
塩2500g(例5と同じ)、ニリン酸1250g、エチレンジアミン四メチルホスフィン酸1042g、過酸化ナトリウム208g(すなわち、クエン酸とホスフィンと過酸化ナトリウムとの間の重量比が6:5:1、錯化剤の全重量が2500g)、硝酸5gをとり、これらの材料を水と混合してpH値が1−3の不動態化溶液を100リットル調製する。
【0054】
不動態化処理は例1と同様である。
【0055】
[例13]
塩2500g(例5と同じ)、ニリン酸1250g、1−ヒドロキシエチリデンジホスホン酸塩1042g、酸化ナトリウム208g(すなわち、クエン酸とホスフィンと酸化ナトリウムとの間の重量比が6:5:1、錯化剤の全重量が2500g)、硝酸5gをとり、これらの材料を水と混合してpH値が1−3の不動態化溶液を100リットル調製する。
【0056】
不動態化処理は例1と同様である。
【0057】
[例14]
塩2500g(例5と同じ)、ニリン酸1250g、1−ヒドロキシエチリデンジホスホン酸塩1042g、酸化ナトリウム208g(すなわち、クエン酸とホスフィンと酸化ナトリウムとの間の重量比が6:5:1、錯化剤の全重量が2500g)、塩酸5gをとり、これらの材料を水と混合してpH値が1−3の不動態化溶液を100リットル調製する。
【0058】
不動態化処理は例1と同様である。
【0059】
[例15]
塩3000g(例6と同じ)、錯化剤2000g(例6と同じ)、硫酸0.625g、硝酸4.375g(すなわち、硫酸と硝酸との間の重量比が7:1)をとり、これらの材料を水と混合してpH値が1−3の不動態化溶液を100リットル調製する。
【0060】
不動態化処理は例1と同様である。
【0061】
[例16]
塩2500g(例9と同じ)、錯化剤2500g(例9と同じ)、硝酸4.55g、塩酸0.45g(すなわち、硝酸と塩酸との間の重量比が10:1)をとり、これらの材料を水と混合してpH値が1−3の不動態化溶液を100リットル調製する。
【0062】
不動態化処理は例1と同様である。
【0063】
[クロム酸フリー不動態化溶液の性能評価]
[例17]めっき不動態化の塩水噴霧試験
本試験は、本発明によるクロム酸フリー不動態化とめっきクロム酸不動態化(カラー不動態化及び青白不動態化)との間の耐腐食性性能を比較することによって、本発明によるクロム酸フリー不動態化溶液の耐腐食性評価に使用される。
【0064】
サンプル調整:サンプル1〜3は例1のクロム酸フリー不動態化溶液の処方及び処理に従って調整される。サンプル4〜6は例5のクロム酸フリー不動態化溶液の処方及び処理に従って調整される。サンプル7〜10は従来の低クロム不動態化溶液の処方及び処理に従って調整され、サンプル7〜8はクロムカラー不動態化、及びサンプル9〜10はクロム青白不動態化である。
【0065】
試験は塩水噴霧試験法によってめっき層表面の耐腐食性を評価するために用いられる。塩水噴霧試験(GB6485−1986、破壊試験)は試験される製品の耐腐食性を反映できる。塩水噴霧試験を実施する時間が長いほど、試験される製品は良好な耐腐食性を有する。
【0066】
塩水噴霧試験の試験時間は48時間である。全てのサンプルは同じ試験条件下でテストされる。詳細な試験方法はGB6458−1986試験基準を参照する。試験結果はGB−12335−1990評価基準に従って評価された。
【0067】
結果は表1で説明される。結果は、本発明によるめっき層不動態化の耐腐食性は、従来の青白不動態化技術による耐腐食性と比較して良好であり、カラー不動態化技術を用いた耐腐食性と同等であることを示す。
【0068】
【表1】

【0069】
[産業上利用性]
従来技術と比較して、本発明は以下の利点を有する。
【0070】
1.従来技術と比較して、本発明は有毒の6価及び3価クロムが従来の製品のめっき層及び従来の不動態化溶液に存在するという問題を実質的に解決し、6価及び3価クロムの人間及び環境に対する害を取り除く。
【0071】
2.本発明は、電気めっき層及び高温めっき層の不動態化を完成するために、及び表面の樹脂層が容易に剥がれ落ちる問題を解決するために、6価及び3価クロムを含むクロム酸不動態化溶液を実際に置き換えることができる。
【0072】
3.本発明の不動態化めっき層の耐腐食性は、従来の青白不動態化技術を用いることによる耐腐食性よりも良好であり、カラー不動態化技術を用いることによる耐腐食性と同等である。
【0073】
4.本発明の不動態化溶液は、不動態化溶液の実用コストをより低くするように従来のクロム酸不動態化装置とともに用いることができる。例えば温度、不動態化処理時間のような処理条件は、従来のクロム酸不動態化と実質的に同様であり、スタッフ人員を個人的に訓練する多額のコストが抑えられる。結果的に、本発明は経済的な恩恵及び社会的な恩恵が大きい。
【0074】
前述の詳細な記述は本発明を制限するために使われるものではない。本発明の精神を逸脱しない範囲における、当業者による様々な変更及び修正が、添付されたクレームが表現する範囲における用語の広く一般的な意味によって示される最も広い範囲内で行われるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロムフリー不動態化溶液であって、前記クロムフリー不動態化溶液は以下の成分、
有効量の遷移金属を含むオキシ塩、
無機酸、
水、
を含み、
前記遷移金属を含むオキシ塩は、チタンを含むオキシ塩、ジルコニウムを含むオキシ塩、ハフニウムを含むオキシ塩、バナジウムを含むオキシ塩、ニオブを含むオキシ塩、タンタルを含むオキシ塩、モリブデンを含むオキシ塩、タングステンを含むオキシ塩、マンガンを含むオキシ塩、テクネチウムを含むオキシ塩、レニウムを含むオキシ塩、からなる群から選択され、
前記遷移金属を含むオキシ塩と無機酸との間の重量比は200〜400:1の範囲であることを特徴とする、クロムフリー不動態化溶液。
【請求項2】
前記クロムフリー不動態化溶液はさらに錯化剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載のクロムフリー不動態化溶液。
【請求項3】
前記遷移金属を含むオキシ塩は、チタンを含むオキシ塩、マンガンを含むオキシ塩、モリブデンを含むオキシ塩、ジルコニウムを含むオキシ塩、バナジウムを含むオキシ塩からなる群から選択された少なくとも一つまたは二つのオキシ塩であることを特徴とする、請求項1に記載のクロムフリー不動態化溶液。
【請求項4】
前記遷移金属を含むオキシ塩は二つの塩の混合物であり、前記二つの塩の重量比は35〜45:1の範囲であることを特徴とする、請求項3に記載のクロムフリー不動態化溶液。
【請求項5】
前記無機酸は硫酸、硝酸、塩酸から選択された一つ以上の無機酸であることを特徴とする、請求項1に記載のクロムフリー不動態化溶液。
【請求項6】
前記無機酸は硫酸、硝酸、塩酸からなる群から選択される二つの無機酸であり、前記二つの無機酸の重量比は7〜10:1である、請求項5に記載のクロムフリー不動態化溶液。
【請求項7】
前記クロムフリー不動態化溶液のpH値が1〜3であることを特徴とする、請求項1または2に記載のクロムフリー不動態化溶液。
【請求項8】
前記クロムフリー不動態化溶液がさらに一種以上のケイ酸塩を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のクロムフリー不動態化溶液。
【請求項9】
前記ケイ酸塩はケイ酸塩ナトリウム、ケイ酸塩カリウム、ケイ酸塩アンモニウムであることを特徴とする、請求項8に記載のクロムフリー不動態化溶液。
【請求項10】
前記遷移金属を含むオキシ塩と前記ケイ酸塩との間の重量比は35〜45:1であることを特徴とする、請求項8に記載のクロムフリー不動態化溶液。
【請求項11】
前記錯化剤が有機酸または過酸化物であることを特徴とする、請求項2に記載のクロムフリー不動態化溶液。
【請求項12】
前記有機酸はクエン酸、酒石酸、ピロリン酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミンテトラメチルリン酸(EPTMP)、スルホンアミド酸、カルボキシ酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸塩(HEDP)、2−ヒドロキシホスホノ酢酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ジエチリデントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPMP)、1−ヒドロキシ−2−(3−ピリジル)エタン−1,1−ジホスホン酸、ヒドロキシル−プロピリデン−1,1−ジホスホン酸(HPDP)、2−ヒドロキシホスホノ酢酸(HPAA)、1−ヒドロキシブチリデン−1,1−ジホスホン酸(HBDP)、1−ヒドロキシ−エチリデン−1,1−ジホスホン酸(HDEP)、1−ヒドロキシ−ヒドロキシ−ジホスホン酸からなる群から選択される一つ以上の有機酸であることを特徴とする、請求項2に記載のクロムフリー不動態化溶液。
【請求項13】
前記錯化剤は三つの有機酸の混合物であり、前記三つの有機酸の重量比は6:5:1であることを特徴とする、請求項12に記載のクロムフリー不動態化溶液。
【請求項14】
前記錯化剤は二つの有機酸と過酸化物の混合物であり、前記二つの有機酸と過酸化物との重量比は6:5:1であることを特徴とする、請求項12に記載のクロムフリー不動態化溶液。
【請求項15】
不動態化溶液1リットルが以下の成分を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のクロムフリー不動態化溶液。
遷移金属を含むオキシ塩 20〜35g
錯化剤 18〜38g
無機酸 0.05〜0.15g
水 残量
【請求項16】
前記遷移金属を含むオキシ塩が前記塩及びケイ酸塩の混合物で置き換えられたことを特徴とする、請求項15に記載のクロムフリー不動態化溶液。

【公表番号】特表2007−517982(P2007−517982A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548077(P2006−548077)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【国際出願番号】PCT/CN2005/000024
【国際公開番号】WO2005/068683
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(506194472)中國國際海運集装箱(集團)股▲フン▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】