説明

フロントグリルの取り付け構造

【課題】フロントバンパを損傷させることなくフロントグリルをヘッドランプ側に取り付けることができ、しかも、バンパロアネットの剛性を低下させにくくすることができるフロントグリルの取り付け構造を提供する。
【解決手段】フロントグリル3に係合部7,8を設け、係合部7,8が上方から係合する被係合部9,10をヘッドランプ11側に設け、バンパロアネット2の裏側にヘッドランプ11側の被係合部9,10を配置し、係合部7,8が車両前方側Frから挿通し下降して被係合部9,10に係合するのを許す挿通孔13,14をバンパロアネット2に形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
バンパロアネットの車両前方側に位置するフロントグリルに係合部を設け、
前記係合部が上方から係合する被係合部をヘッドランプ側に設けてあるフロントグリルの取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントグリルに設けた係合部をヘッドランプ側に設けた被係合部に係合させる場合、車両前方側から係合させるとフロントグリルを車両後方側に組み付け移動させる際にフロントグリルがフロントバンパに当接し、フロントグリルのバリ等の突起でフロントバンパを傷つける等損傷させやすい。
これに対して特許文献1に開示されているように、フロントグリルの係合部をヘッドランプ側の被係合部に上方から係合させる手段によれば、フロントグリルをフロントバンパの意匠面に当接させにくくすることができて、上記の問題を解消することができる。
従来、フロントグリルの係合部をヘッドランプ側の被係合部に上方から係合させる構造では、フロントグリルの係合部の下降の邪魔になるバンパロアネットの上端部分を切り欠いて、係合部がバンパロアネットに干渉しないようにしてあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−213252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構造によれば、フロントグリルの係合部の下降の邪魔になるバンパロアネットの上端部分を切り欠いてあったために、バンパロアネットの剛性が弱くなるという問題があった。
本発明の目的は、フロントバンパを損傷させることなくフロントグリルをヘッドランプ側に容易に取り付けることができ、しかも、バンパロアネットの剛性を低下させにくくすることができるフロントグリルの取り付け構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
バンパロアネットの車両前方側に位置するフロントグリルに係合部を設け、
前記係合部が上方から係合する被係合部をヘッドランプ側に設けてあるフロントグリルの取り付け構造であって、
前記バンパロアネットの裏側に前記ヘッドランプ側の被係合部を配置し、
前記フロントグリルの係合部が車両前方側から挿通し下降して前記被係合部に係合するのを許す挿通孔を前記バンパロアネットに形成してある点にある。(請求項1)
【0006】
この構成により、車両前方側からフロントグリルの係合部をバンパロアネットの挿通孔に挿通させ下降させてヘッドランプ側の被係合部に係合させる。このようにしてフロントグリルをヘッドランプ側に取り付けるから、フロントグリルをフロントバンパから上方に離間させた状態で車両後方側に組み付け移動させることができて、フロントグリルでフロントバンパを損傷させにくくすることができる。そして、バンパロアネットにフロントグリルとの干渉を回避するための切り欠きを形成する必要がなくてバンパロアネットの剛性が低下することを抑制することができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記フロントグリルを車両前方側から前記バンパロアネット側に移動させるに伴って、前記係合部を前記被係合部側にガイドするガイド手段を設け、
前記ガイド手段を、前記フロントグリルの裏面から車両後方側に突出する被ガイド部と、前記バンパロアネットに形成した後ろ下がりのガイド面とで構成してあると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
フロントグリルを車両前方側からバンパロアネット側に移動させると、それに伴って、フロントグリルの被ガイド部が、バンパロアネットの後ろ下がりのガイド面にガイドされて、前記係合部が前記被係合部側にガイドされる。これにより、前記係合部を前記被係合部に正確に係合させやすくなって係合作業の作業性を向上させることができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記バンパロアネットに車両後方側に凹む凹部を形成するとともに前記凹部の上壁を後ろ下がりに傾斜させて前記上壁の壁面を前記ガイド面に構成してあると、ガイド面を簡単に形成することができて製作コストを低廉化することができる。(請求項3)
【0010】
本発明において、
前記被ガイド部に下方に突出する係合凸部を設け、
前記係合凸部を上方から挿入係合させる係合孔を前記凹部の下壁に形成してあると、フロントグリルのバンパロアネットに対する位置ずれを防止することができる。(請求項4)
【0011】
本発明において、
前記フロントグリルに車両後方側に突出する第2の係合部を設け、
前記第2の係合部が車両前方側から挿通し下降するのを許す第2の挿通孔を前記バンパロアネットに形成し、
前記第2の係合部が車両前方側から前記第2の挿通孔に挿通し下降して係合する第2の被係合部を前記バンパロアネットに形成し、
前記第2の被係合部に車両後方側から当接して前記フロントグリルの車両前方側への引き抜きを阻止する抜け止め部を前記第2の係合部の車両後方側の端部に膨出形成してあると、次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0012】
フロントグリルの第2の係合部が車両前方側からバンパロアネットの第2の挿通孔に挿通し下降してバンパロアネットの第2の被係合部に係合する。
組み付け状態のフロントグリルが車両前方側に引き抜かれようとした場合、第2の係合部の前記抜け止め部が第2の被係合部に車両後方側から当接してフロントグリルの車両前方側への引き抜きを阻止する。これにより、フロントグリルの盗難を防止することができる(請求項5)
【0013】
本発明において、
前記第2の挿通孔の下方のバンパロアネット部分を車両後方側に凹ませて第2の凹部を形成し、
前記第2の挿通孔に連なる被係合孔を前記第2の凹部の上壁と奥壁に形成して前記第2の被係合部を構成してあると、次の作用を奏することができる。(請求項6)
【0014】
フロントグリルの第2の係合部が車両前方側からバンパロアネットの第2の挿通孔に挿通し下降して、第2の凹部の上壁と奥壁に形成された被係合孔に係合する。
フロントグリルが車両前方側に引き抜かれようとした場合、車両後方側に向かって立ち上がる第2の凹部の側壁(周壁)で引き抜き力に抗することができ、引き抜き力に対する第2の被係合部の強度を強くすることができる。その結果、第2の被係合部を変形しにくくすることができて、フロントグリルの耐久性を向上させることができる。(請求項6)
【0015】
本発明において、
前記第2の凹部の側壁を車両前方側に向かって広がるテーパ壁に構成してあると、前記引き抜き力に対する第2の被係合部の強度をより強くすることができる。その結果、第2の被係合部を変形しにくくすることができて、フロントグリルの耐久性をより向上させることができる。(請求項7)
【0016】
本発明において、
前記被係合孔の車幅方向両側の奥壁部分に上側開放の切り欠き溝を形成して前記被係合孔の両側に爪部を形成し、
前記第2の係合部が両爪部の弾性力に抗しながら両爪部間に入り込んで前記被係合孔に係合するとともに両爪部に弾性係合すると、第2の係合部を被係合孔に確実に係合させることができて、フロントグリルのバンパロアネットに対する位置ずれを、より防止しやすくすることができる(請求項8)
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、
フロントバンパを損傷させることなくフロントグリルをヘッドランプ側に取り付けることができ、しかも、バンパロアネットの剛性を低下させにくくすることができるフロントグリルの取り付け構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】車体前部の分解斜視図
【図2】フロントグリルの右端部の裏側の斜視図
【図3】バンパロアネットの上部を前上方から見た図
【図4】フロントグリルの上側第1係合部と下側第1係合部をヘッドランプ側の上側第1被係合部と下側第1被係合部に係合させる前の状態を示す斜視図
【図5】フロントグリルの上側第1係合部と下側第1係合部をヘッドランプ側の上側第1被係合部と下側第1被係合部に係合させた状態を示す斜視図
【図6】第2係合部を被係合孔に係合させた状態を示す斜視図(1)
【図7】図6のA−A断面図
【図8】第2係合部を被係合孔に係合させる前の状態を斜視図
【図9】第2係合部を被係合孔に係合させた状態を示す斜視図(2)
【図10】ガイド手段のガイド作用を示す断面図
【図11】第2係合部を被係合孔に係合させた状態の縦断面図
【図12】フロントバンパの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態では、図1に示すように、自動車のフロントバンパ1(図12参照)にバンパロアネット2を車両後方側Rrから取り付け、フロントバンパ1の上方に突出するバンパロアネット2の上部の車両前方側Frに車幅方向に長いフロントグリル3を取り付けてある。つまり、フロントグリル3は、フロントバンパ1の上方でバンパロアネット2の上部部分の前方に配置されている。
バンパロアネット2は、フロントバンパ1の裏側(車両後方側)にクリップやビスを用いて取り付けられ、フロントバンパ1を補強する部材であるとともに、フロントバンパ1の空気取り入れ用の開口の装飾やフォグランプ類を固定保持する機能を有する部材である。本発明の実施の形態では、バンパロアネット2の下部は、フロントバンパ1の空気取り入れ用の開口を装飾し、ライセンスプレートの固定部を構成している。また、バンパロアネット2の上部は、ロントバンパ1の上方に突出しフロントグリル3とフロントバンパ1の間の空気取り入れ用の開口を装飾し、フロントグリル3の固定部の一部を構成している。
【0020】
[フロントグリル3の構造]
フロントグリル3はバンパロアネット2の車両前方側Frに位置する装飾用外装部品であり、図11に示すように、車両前方側Frが開放した箱形の第1ハウジング4と、第1ハウジング4の車両前方側Frのリフレクタ5と、リフレクタ5の車両前方側Frの透明樹脂製のカバー6とから成る。
【0021】
図1,図2に示すように、前記第1ハウジング4の上端部に車両後方側Rrに突出する複数の取り付けフランジ50を形成し、この取り付けフランジ50にクリップ挿通孔50Hを形成してある。そして、フロントグリル3をバンパロアネット2の上部に重ね合わせ、取り付けフランジ50をバンパロアネット2の上部にクリップで取り付けてある。
【0022】
[フロントグリル3とヘッドランプ11の取り付け部構造]
図2に示すように、前記第1ハウジング4の右端部の裏側に上側第1係合部7と下側第1係合部8(それぞれ係合部に相当)を設けてある。第1ハウジング4の右端部には車両後方側Rrに凹む凹部4A(図2,図11参照)が形成され、この凹部4Aの奥壁4A1から前記上側第1係合部7と下側第1係合部8と後述の被ガイド部26が車両後方側Rrに突出している。
【0023】
また、図3〜図5に示すように、フロントグリル3の上側第1係合部7が上方から係合する上側第1被係合部9(被係合部に相当)と、フロントグリル3の下側第1係合部8が上方から係合する下側第1被係合部10(被係合部に相当)を右側のヘッドランプ11の第2ハウジング12に設けてある。上側第1被係合部9と下側第1被係合部10は、ヘッドランプ11のハウジング12の車幅方向内側の面から車幅方向内側W1に張り出して、バンパロアネット2の右端部の裏側(車両後方側Rr)に位置している。
【0024】
そして、フロントグリル3を車両前方側Frからバンパロアネット2側に組み付け移動させる際に、フロントグリル3の上側第1係合部7とヘッドランプ11の上側第1被係合部9との間に位置するバンパロアネット2には、上側第1係合部7が車両前方側Frから挿通し下降して上側第1被係合部9に係合するのを許す上側第1挿通孔13(挿通孔に相当、図3参照)をバンパロアネット2の上部の右端部に形成してある。
【0025】
さらに、フロントグリル3を車両前方側Frからバンパロアネット2側に組み付け移動させる際に、フロントグリル3の下側第1係合部8とヘッドランプ11の下側第1被係合部10との間に位置するバンパロアネット2には、下側第1係合部8が車両前方側Frから挿通し下降して下側第1被係合部10に係合するのを許す下側第1挿通孔14(挿通孔に相当、図3参照)をバンパロアネット2の上部の右端部に形成してある。
【0026】
上側第1係合部7・下側第1係合部8はフロントグリル3の第1ハウジング4の左端部の裏側にも設けてあり、フロントグリル3の第1ハウジング4の右端部の上側第1係合部7・下側第1係合部8と左端部の上側第1係合部7・下側第1係合部8とは左右対称に位置している。
【0027】
上側第1被係合部9・下側第1被係合部10は左側のヘッドランプ11の第2ハウジング12にも設けてあり、右側のヘッドランプ11の第2ハウジング12の上側第1被係合部9・下側第1被係合部10と左側のヘッドランプ11の第2ハウジング12の上側第1被係合部9・下側第1被係合部10とは左右対称に位置している。
【0028】
上側第1挿通孔13・下側第1挿通孔14はバンパロアネット2の上部の左端部にも設けてあり、バンパロアネット2の右端部の上側第1挿通孔13・下側第1挿通孔14と左端部の上側第1挿通孔13・下側第1挿通孔14とは左右対称に位置している。
【0029】
[上側第1係合部7の構造]
図2,図4,図5に示すように、フロントグリル3の前記凹部4Aの奥壁4A1から車両後方側Rrに突出する平面視長方形板状の第1板部15が上側第1係合部7に設けられ、この第1板部15に後述する第2係合凸部22を受け入れる長方形状の第1係合孔16が上下方向に貫通形成されている。
【0030】
また、第1板部15の上面部に奥壁4A1の後面から車両後方側Rrに延びる第1補強リブ17が形成されている。第1補強リブ17は、第1板部15の車幅方向の両側部と両側部間から立ち上がり、車両前後方向で第1板部15の全長にわたって形成されている。第1補強リブ17の車両前方側Frの端部はフロントグリル3の第1ハウジング4の裏面(前記凹部4Aの奥壁4A1の後面)に接続している。
【0031】
前記両側部から立ち上がる一対の第1補強リブ17のうち、車幅方向内側W1(車両の左右中央側)の第1補強リブ17は、第1板部15の下方にも延設され、奥壁4A1の後面側をより下方にまで延設しているので車幅方向視で車両後方側Rrに窄まる三角形状に形成されて、他の第1補強リブ17よりも高さ寸法が高く(長く)設定されている。車幅方向で最も内側W1となる第1補強リブ17は、ヘッドランプ11から突出する上側第1被係合部9よりも車幅方向内側W1に位置するので、下方にまで延設することが可能となっている。なお、この第1補強リブ17とヘッドランプ11の上側第1被係合部9の先端を車幅方向で対向させてフロントグリル3の位置決めをすることも可能である。
【0032】
第1板部15の車幅方向の両側部間から立ち上がる第1補強リブ17の車両後方側Rrの補強リブ部分および、両側部間の第1補強リブ17の車両後方側Rrの補強リブ部分は第1係合孔16の周縁部に形成されたリブと連結されている。これにより、第1係合孔16を形成したことによる第1板部15の強度の低下を抑制して、第1板部15の強度・剛性を強くすることができる。
【0033】
[下側第1係合部8の構造]
下側第1係合部8は上側第1係合部7の下方に位置し、フロントグリル3の前記凹部4Aの奥壁4A1から車両後方側Rrに突出する平面視長方形板状の第2板部18が下側第1係合部8に設けられている。そして、第2板部18の下面から後述する係合溝24に挿入される断面四角形状の第1係合凸部19が下方に突出している。第1係合凸部19の下端部は車幅方向視で下窄まりのテーパ状に形成されている。
【0034】
また、第2板部18の上面部に奥壁4A1の後面から車両後方側Rrに延びる第2補強リブ20が形成されている。この第2補強リブ20は、第2板部18の車幅方向の両側部から立ち上がり、車両前後方向で第2板部18の全長にわたって形成されている。第2補強リブ20の車両前方側Frの端部は前記フロントグリル3の第1ハウジング4の裏面(前記凹部4Aの奥壁4A1の後面)に接続している。
【0035】
車幅方向で最も内側W1となる前記第2補強リブ20は、奥壁4A1の後面側をより上方にまで延設しているので車幅方向視で車両後方側Rrに窄まる三角形状に形成され、車幅方向内側W1の第2補強リブ20の高さ寸法が車幅方向外側W2の第2補強リブ20の高さ寸法よりも高く(長く)設定されている。
【0036】
[上側第1被係合部9の構造]
図3〜図5に示すように、上側第1被係合部9は、ヘッドランプ11の第2ハウジング12の側部から車幅方向内側W1に突出する支持壁部21と、この支持壁部21から上方に突出する断面四角形状の第2係合凸部22とから成る。支持壁部21は車両前後方向視で横に倒れたU字状(底部が車幅方向内側W1に位置するU字状)の板部と該板部の周縁に沿って形成され同じく横に倒れたU字状に屈曲した車両の前後方向に延びる周縁リブとで形成されている。前記第2係合凸部22は上側第1係合部7の第1係合孔16に下側から挿入係合する。
【0037】
[下側第1被係合部10の構造]
下側第1被係合部10は、ヘッドランプ11の第2ハウジング12の側部から車幅方向内側W1に突出する縦断面四角形状の係合本体部23に係合溝24を切り欠き形成して構成されている。係合溝24は車幅方向に長く形成され、係合本体部23を上下方向に貫通するとともに車幅方向内側W1に開口している。この係合溝24に下側第1係合部8の第1係合凸部19が上方から挿入係合する。
【0038】
[上側第1挿通孔13と下側第1挿通孔14の構造]
図3に示すように、バンパロアネット2の上側第1挿通孔13と下側第1挿通孔14はそれぞれ縦長の角形の貫通孔に形成されている。上側第1挿通孔13と下側第1挿通孔14の間には、リブが横断するように配置され、挿通孔によるバンパロアネット2の剛性の低下に対して剛性の向上が図られている。また、リブの配置によって組み付け時の上側第1係合部7または下側第1係合部8との当接によるバンパロアネット2の損傷を防止している。
【0039】
[ガイド手段25の構造]
図2〜図5,図10,図11に示すように、フロントグリル3を車両前方側Frからバンパロアネット2側に組み付け移動させるに伴って、上側第1係合部7を上側第1被係合部9側に、下側第1係合部8を下側第1被係合部10側にそれぞれガイドするガイド手段25を設けてある。そして、このガイド手段25を、フロントグリル3の第1ハウジング4の裏面(前記凹部4Aの奥壁4A1の後面)から車両後方側Rrに突出する被ガイド部26と、バンパロアネット2の上部に形成した後ろ下がりのガイド面27とで構成してある。
【0040】
[被ガイド部26の構造]
フロントグリル3の後ろ側に形成された被ガイド部26は下側第1係合部8の車幅方向内側W1に位置している。そして、フロントグリル3の前記凹部4Aの奥壁4A1から車両後方側Rrに突出する平面視長方形板状の第3板部28と、第3板部28の先端部の下面から下方に突出する縦筒状の第3係合凸部30と、第3板部28の上面部の車幅方向中間部から立ち上がり、前記ガイド面27に当接して下降案内(ガイド)される当接リブ31とが前記被ガイド部26に設けられている。
【0041】
当接リブ31は、車両前後方向で第3板部28の全長にわたって形成され、当接リブ31の車両前方側Frの端部はフロントグリル3の第1ハウジング4の裏面(前記凹部4Aの奥壁4A1の後面)に接続している。また、当接リブ31は車幅方向視で車両後方側Rrに窄まる台形状に形成されている。つまり、当接リブ31の上端の高さは、車両後方側Rrに行くほど低くなるように設定されている。そして、第3板部28の車幅方向内側W1の側部から第3補強リブ29が立ち上がっている。第3補強リブ29の高さ寸法は当接リブ31の高さ寸法よりも低く(短く)設定されている。
【0042】
[ガイド面27の構造]
図3,図11に示すように、バンパロアネット2の上部の右端部に車両後方側Rrに凹む縦長の第1凹部33(凹部に相当)を形成するとともに第1凹部33の上壁34を後ろ下がりに傾斜させて、上壁34の壁面(下方を向く壁面)を前記ガイド面27に構成してある。また、前記第3係合凸部30を上方から挿入係合させる係合孔45を第1凹部33の下壁35に形成してある。
【0043】
図10に示すように、フロントグリル3を車両前方側Frからバンパロアネット2側に組み付け移動させると、それに伴って、当接リブ31が第1凹部33のガイド面27に当接して下降案内され、上側第1係合部7が下側第1被係合部9側に、下側第1係合部8が下側第1被係合部10側にそれぞれ案内される。これにより、上側第1係合部7を下側第1被係合部9に、下側第1係合部8を下側第1被係合部10に正確に係合させやすくなって、係合作業の作業性を向上させることができる。
また、第1凹部33の左右の壁が被ガイド部26の側部に当接することで、被ガイド部26の位置の規制をすることができ、バンパロアネット2に対するフロントグリル3の車幅方向の位置を規制することができる。そして、組み付け時、上側第1係合部7および下側第1係合部8が上側第1挿通孔13と下側第1挿通孔14に挿入される前に、被ガイド部26が第1凹部33に挿入される配置関係にしておくと、組み付け作業がより容易となる。なお、当然のことであるが、被ガイド部26とガイド面27(当接リブ31)が当接した状態で、上側第1係合部7および下側第1係合部8が上側第1挿通孔13の周縁と下側第1挿通孔14周縁と干渉しない様に各挿通孔の上方周縁部は設定されている。車両の左右方向に関しても同様の関係に設定されている。
【0044】
前記被ガイド部26はフロントグリル3の左端部にも設けてあり、フロントグリル3の右端部の被ガイド部26と左端部の被ガイド部26とは左右対称に位置している。また、前記第1凹部33はバンパロアネット2の上部の左端部にも設けてあり、バンパロアネット2の右端部の第1凹部33と左端部の第1凹部33とは左右対称に位置している。
そして、組み付け作業時、左右の被ガイド部26の先端が各第1凹部33の奥壁に当接して、フロントグリル3の姿勢が定まり、この状態で上側第1係合部7の第1係合孔16が上側第1被係合部9の第2係合凸部22の上方に位置するとともに、下側第1係合部8の第1係合凸部19が下側第1被係合部10の係合溝24の上方に位置する。そして、第3係合凸部30も係合孔45の上方に位置する。
【0045】
[第2係合部38とその周りの構造]
図2,図3,図6〜図9に示すように、フロントグリル3の第1ハウジング4の左右中央部に、車両後方側Rrに突出する第2係合部38(第2の係合部に相当)を設けてある。また、第2係合部38が車両前方側Frから挿通し下降するのを許す円形の第2挿通孔42(第2の挿通孔に相当)をバンパロアネット2の上部に形成し、第2係合部38が車両前方側Frから第2挿通孔42に挿通し下降して係合する第2被係合部41(第2の被係合部に相当)をバンパロアネット2の上部に形成してある。
【0046】
[第2係合部38の構造]
第2係合部38は、フロントグリル3の第1ハウジング4の裏面から車両後方側Rrに突出する平面視長方形状の本体部36を備えている。この本体部36が第2被係合部41の後述の被係合孔57に上方から係合する。
そして、第2被係合部41に車両後方側Rrから当接してフロントグリル3の車両前方側Frへの引き抜きを阻止する抜け止め部37を本体部36の車両後方側Rrの端部に径方向に膨出形成してある。つまり、膨出形成された抜け止め部37に対して、第2挿通孔42は大きく、被係合孔57は小さく設定されている。
前記抜け止め部37は車両後方側Rrに窄まる半円錐台形状(軸芯が車両前後方向に沿う円錐台の上半部が切除されて下側の1/2の円錐台部分のみから成る形状、図7参照)に形成されて下側に膨出している。
【0047】
これにより、図7に示すように、フロントグリル3に車両前方側Frに向かう力Fが加わった場合、第2係合部38の車両後方側Rrの端部に膨出形成した抜け止め部37が第2被係合部41に車両後方側Rrから当接してフロントグリル3の車両前方側Frへの引き抜きを阻止する。
【0048】
本体部36の上面部には車両後方側Rrに延びる車幅方向視三角形状の第4補強リブ40が形成されている。この第4補強リブ40は、本体部36の車幅方向中央部から立ち上がり、車両前後方向で本体部36の全長にわたって形成されている。第4補強リブ40の車両前方側Frの端部はフロントグリル3の第1ハウジング4の裏面に接続している。
【0049】
[第2被係合部41の構造]
図6〜図9に示すように、第2挿通孔42の下方のバンパロアネット部分を車両後方側Rrに四角形状に凹ませて第2凹部56(第2の凹部に相当)を形成し、第2挿通孔42に連なる半円形状の被係合孔57を第2凹部56の上壁60と奥壁61に形成して第2被係合部41を構成してある。また、第2凹部56の側壁55を車両前方側Frに向かって広がるテーパ壁に構成してある(図7参照)。被係合孔57には第2係合部38の本体部36が係合する。
【0050】
上記の構造により、被係合孔57は第2挿通孔42よりも車両後方側Rrに位置した状態になっている。そして、図7に示すように、フロントグリル3が車両前方側Frに引き抜かれようとした場合、前記第2凹部56の側壁55で引き抜き力Fに抗することができる。
【0051】
第2凹部56の側壁55は車両後方側Rrに向かって立ち上がっており、しかも、第2凹部56の側壁55を車両前方側Frに向かって広がるテーパ壁に構成してあるから、引き抜き力Fに対する第2被係合部41の強度を強くすることができる。その結果、第2被係合部41を変形しにくくすることができて、フロントグリル3の耐久性を向上させることができる。
【0052】
また、前記被係合孔57の車幅方向両側の奥壁部分に上側開放の切り欠き溝58を形成して被係合孔57の両側に爪部43を形成し、第2係合部38の本体部36が両爪部43の弾性力に抗しながら両爪部43間に入り込んで被係合孔57に上方から係合するとともに、両爪部43に弾性係合するよう構成してある。爪部43の頂部は厚肉に設定されている。
これにより、第2係合部38を被係合孔57に確実に係合させることができて、フロントグリル3のバンパロアネット2に対する位置ずれを防止することができる。
【0053】
[フロントグリル3の組み付け手順]
(1) フロントグリル3の被ガイド部26をバンパロアネット2の第1凹部33に挿入するとともに、フロントグリル3の上側第1係合部7をバンパロアネット2の上側第1挿通孔13に挿入し、下側第1係合部8を下側第1挿通孔14に挿入し、第2係合部38を第2挿通孔42に挿入して、フロントグリル3を車両前方側Frからバンパロアネット2側に押し込む。
【0054】
フロントグリル3をバンパロアネット2側に押し込むと、図10に示すように、フロントグリル3の被ガイド部26の当接リブ31がバンパロアネット2の第1凹部33のガイド面27に下降案内(ガイド)され、フロントグリル3の上側第1係合部7と下側第1係合部8がヘッドランプ11側の上側第1被係合部9側と下側第1被係合部10側に各別にガイドされて、上側第1被係合部9と下側第1被係合部10の上方に各別に位置し、第2係合部38が第2被係合部41の上方に位置する。
【0055】
(2) フロントグリル3を下方に押し込む。
フロントグリル3を下方に押し込むと、前記上側第1係合部7が上側第1被係合部9に係合し、下側第1係合部8が下側第1被係合部10に係合し、第2係合部38が第2被係合部41に係合する。
すなわち、図4,図5に示すように、上側第1被係合部9の第2係合凸部22が上側第1係合部7の第1係合孔16に下側から挿入係合し、下側第1係合部8の第1係合凸部19が下側第1被係合部10の係合溝24に上方から挿入係合する。
さらに、図8,図9に示すように、第2係合部38の本体部36が両爪部43の弾性力に抗しながら両爪部43間に入り込んで被係合孔57に上方から係合するとともに両爪部43に弾性係合する。
また、図11に示すように、被ガイド部26の第3係合凸部30が第1凹部33の下壁35の係合孔45に上方から挿入係合し、フロントグリル3の取り付けフランジ50がバンパロアネット2の上部に車両前方側Frから重なる。この取り付けフランジ50をバンパロアネット2の上部にクリップで取り付ける。
【0056】
このようにしてフロントグリル3をヘッドランプ11側に取り付けるから、図10に示すように、フロントグリル3をフロントバンパ1の意匠面から上方に離間させた状態で車両前方側Frに移動させることができて、フロントグリル3でフロントバンパ1の意匠面を損傷させにくくすることができる。そして、バンパロアネット2にフロントグリル3との干渉を回避するための切り欠きを形成する必要がなくてバンパロアネット2の剛性の低下を抑制することができる。
【0057】
(3) 前記取り付けフランジ50をバンパロアネット2にクリップで取り付ける。
図3の符号2Aの二点鎖線で囲まれた部分はフードロックメンバに取り付けられるバンパロアネット2の範囲(バンパロアネット部分)を示している。
【符号の説明】
【0058】
2 バンパロアネット
3 フロントグリル
7 係合部(上側第1係合部)
8 係合部(下側第1係合部)
9 被係合部(上側第1被係合部)
10 被係合部(下側第1被係合部)
11 ヘッドランプ
13 挿通孔(上側第1挿通孔)
14 挿通孔(下側第1挿通孔)
25 ガイド手段
26 被ガイド部
27 ガイド面
30 係合凸部(第3係合凸部)
33 凹部(第1凹部)
34 凹部の上壁
35 凹部の下壁
37 抜け止め部
38 第2の係合部(第2係合部)
41 第2の被係合部(第2被係合部)
42 第2の挿通孔(第2挿通孔)
43 爪部
45 係合孔
56 第2の凹部(第2凹部)
60 第2の凹部の上壁
61 第2の凹部の奥壁
57 被係合孔
58 切り欠き溝
Fr 車両前方側
Rr 車両後方側


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンパロアネットの車両前方側に位置するフロントグリルに係合部を設け、
前記係合部が上方から係合する被係合部をヘッドランプ側に設けてあるフロントグリルの取り付け構造であって、
前記バンパロアネットの裏側に前記ヘッドランプ側の被係合部を配置し、
前記フロントグリルの係合部が車両前方側から挿通し下降して前記被係合部に係合するのを許す挿通孔を前記バンパロアネットに形成してあるフロントグリルの取り付け構造。
【請求項2】
前記フロントグリルを車両前方側から前記バンパロアネット側に移動させるに伴って、前記係合部を前記被係合部側にガイドするガイド手段を設け、
前記ガイド手段を、前記フロントグリルの裏面から車両後方側に突出する被ガイド部と、前記バンパロアネットに形成した後ろ下がりのガイド面とで構成してある請求項1記載のフロントグリルの取り付け構造。
【請求項3】
前記バンパロアネットに車両後方側に凹む凹部を形成するとともに前記凹部の上壁を後ろ下がりに傾斜させて前記上壁の壁面を前記ガイド面に構成してある請求項2記載のフロントグリルの取り付け構造。
【請求項4】
前記被ガイド部に下方に突出する係合凸部を設け、
前記係合凸部を上方から挿入係合させる係合孔を前記凹部の下壁に形成してある請求項3記載のフロントグリルの取り付け構造。
【請求項5】
前記フロントグリルに車両後方側に突出する第2の係合部を設け、
前記第2の係合部が車両前方側から挿通し下降するのを許す第2の挿通孔を前記バンパロアネットに形成し、
前記第2の係合部が車両前方側から前記第2の挿通孔に挿通し下降して係合する第2の被係合部を前記バンパロアネットに形成し、
前記第2の被係合部に車両後方側から当接して前記フロントグリルの車両前方側への引き抜きを阻止する抜け止め部を前記第2の係合部の車両後方側の端部に膨出形成してある請求項1〜4のいずれか一つに記載のフロントグリルの取り付け構造。
【請求項6】
前記第2の挿通孔の下方のバンパロアネット部分を車両後方側に凹ませて第2の凹部を形成し、
前記第2の挿通孔に連なる被係合孔を前記第2の凹部の上壁と奥壁に形成して前記第2の被係合部を構成してある請求項5記載のフロントグリルの取り付け構造。
【請求項7】
前記第2の凹部の側壁を車両前方側に向かって広がるテーパ壁に構成してある請求項6記載のフロントグリルの取り付け構造。
【請求項8】
前記被係合孔の車幅方向両側の奥壁部分に上側開放の切り欠き溝を形成して前記被係合孔の両側に爪部を形成し、
前記第2の係合部が両爪部の弾性力に抗しながら両爪部間に入り込んで前記被係合孔に係合するとともに両爪部に弾性係合する請求項6又は7記載のフロントグリルの取り付け構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−20533(P2011−20533A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166459(P2009−166459)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)