説明

フローセル

【課題】試料液体が流路以外の領域に侵入するのを確実に防いて、当該試料液体が流路内を円滑に流通することが可能なフローセルを提供する。
【解決手段】第1基板11と、第2基板12と、該第2基板12に形成された試料液体Sが導入される導入口12cと、第1基板11の上面及び第2基板12の下面の間に形成され導入口12cに一端側が接続されるとともに途中位置に金属薄膜20が設置された流路15とを備えるフローセル1において、流路1を、第1基板11の上面と前第2基板12の下面に形成された突条と微小間隙として形成し、該微小間隙の毛細管力によって試料液体を流通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象となる液体中の生体関連物質、環境汚染物質、健康影響物質等の化学物質が流通されて測定装置によって測定が行われる測定流路を備えたフローセルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
試料液体中の化学物質を測定する方法としては、例えば、分子選択性物質を予め固定化しておき、そこへ試料液体を流して、結合する分子を選択的に検出する光学的測定方法がある。この光学的測定方法の一種として、全反射光学系を用いる方法が知られており、この方法によれば、励起されるエバネッセント波をプローブ光として用い、表面近傍での結合を直接的かつ高感度に測定することができる。
このような全反射光学系の中では、全反射によって励起されたエバネッセント波が基板表面に形成された金属薄膜の表面の表面プラズモンに共鳴して吸収されるのを利用する表面プラズモン共鳴(SPR)測定法が特によく用いられている。
【0003】
表面プラズモン共鳴測定法により試料液体を測定するに際しては、基板上に微細な流路を形成し、その流路内に設置された金属膜上にプローブ分子を固定化した状態で、流路内に試料液体を通過させる。そして、この際のプローブ分子と試料液体中の測定対象物質の相互作用に基づいて、当該試料液体中に測定対象物質が含まれているか否かの測定が行われる(例えば特許文献1参照)。
【0004】
このような測定においては、上記のように基板上に流路を形成するとともに同じ基板の上に他の構成部品を設ける必要があるため作成が容易でない。また、例えば外部からの圧力で試料液体を移送する場合、流路を構成する基板以外にポンプや配管等の部品が別途必要となる。この結果、その配管等の移送経路のために試料液体の無駄が発生することになるので、試料液体の微量化には限界があった。
【0005】
これに対応すべく、微細加工技術により2つの基板の対向する面の間に、毛細管現象により試料液体を移送する流路やポンプとなる領域を形成する手法が提案されている(例えば、非特許文献1又は2参照)。この技術により作成された測定チップ(フローセル)は、試料液体が導入される導入口と、その試料液体を吸引する毛細管ポンプとが設けられており、導入口に試料液体が導入されると、この導入口から測定流路及びポンプへと順次試料液体が流出し、毛細管ポンプに試料液体が到達すると該毛細管ポンプに生じる毛細管現象により当該試料液体が吸引される。これにより、導入口に貯留された試料液体が毛細管ポンプの吸引力によって、測定流路を流通してポンプへと流れるようになっている。
【特許文献1】特開2002−214131号公報
【非特許文献1】Martin Zimmermann, Heinz Schmid, Patrick Hunziker and Emmanuel Delamarche, “Capillary pumps for autonomous capillary systems”, The Royal Society of Chemistry 2007, Lab Chip, 2007, 7, 119-125.First published as an Advance Article on the web 17th October 2006
【非特許文献2】Anal.Chem. 1998, 70, 4974-4984
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような測定チップは、通常、一方の基板の一面に流路を刻設するとともに当該一面に他方の基板を接合することによって構成されており、試料液体は2つの基板に閉塞された空間内を流路として流通する構成とされている。
ところが、このような構成の場合、2つの基板の接合面に間隙が生じると、当該間隙の毛細管力によって試料液体が接合面における流路以外の領域に流出してしまうという問題があった。また、毛細管力は間隙の幅が小さいほど大きくなるため、基板間の密着を完全にすることができない以上、ほんの僅かな間隙が生じれば試料液体は流路外に流出してしまう。
また、上記接合面における間隙をなくすために、一方の基板を軟質材料で形成し当該基板の弾性変形を利用することで基板同士を密着させる方法も考えられるが、これでは、材料選択上の制約を受けることになり生産性の低下を招いてしまう。
【0007】
この発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、試料液体が流路以外の領域に侵入するのを確実に防いて、当該試料液体が流路内を円滑に流通することが可能なフローセルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係るフローセルは、第1基板と、該第1基板の上に配設される第2基板と、該第2基板に形成された試料液体が導入される導入口と、前記第1基板の上面及び前記第2基板の下面の間に形成され、前記導入口に一端側が接続されるとともに途中位置に検出部が設置された流路とを備えるフローセルにおいて、該流路は、前記第1基板の上面と前記第2基板の下面とのいずれか一方の面に形成された突条と他方の面との間の微小間隙であって、該微小間隙の毛細管力によって前記試料液体が流通されることを特徴としている。。
【0009】
このような特徴のフローセルによれば、導入口に導入された試料液体は、一方の面の突条と他方の面との間の微小間隙の毛細管力によって該微小間隙が存在する箇所を流路として流通していく。
また、微小間隙とそれ以外の領域との間には急激な(階段上の)構造変化を設けることで、流路材料と液体の特性によって一義的に決定される液体の接触角も急激な変化が必要となる。その接触角の急激な変化は、液体の進行に対して抵抗として働き、液体が微小間隙から流出するのを防ぐことになり、外部へ流出することはない。
【0010】
また、本発明に係るフローセルにおいては、前記第1基板の上面と前記第2基板の下面との間に形成されるとともに前記流路の他端側が接続されたポンプ部が備えられ、該ポンプ部は、前記第1基板の上面と前記第2基板の下面とのいずれか一方の面から他方の面に向かって一段隆起したポンプ形成部を備え、該ポンプ形成部と前記他方の面との間の微小間隙による毛細管力によって、前記導入口から前記流路を経て到達した前記試料液体を吸引することを特徴としている。
【0011】
このような特徴のフローセルによれば、試料液体がポンプ部に至った時には、該ポンプ部が毛細管力によって吸引することにより試料液体を流路内において円滑に流通させることができる。
また、ポンプ部による毛細管力は上記流路と同様に、ポンプ形成部と第2基板の対向する面との間の微小間隙により生じる構成とされているため、当該ポンプ部に到達した試料液体が、ポンプ部以外の領域に流出するのを防ぐことができる。
【0012】
さらに、本発明に係るフローセルにおいては、前記ポンプ部における微小間隙が、該ポンプ部における前記流路との接続箇所から奥行き方向に離間するに従って漸次大きくなるものであってもよい。
【0013】
これによって、より多くの試料液体を保持することが可能となり、ポンプ部の容量を増大させることができる。
【0014】
さらにまた、本発明に係るフローセルにおいては、前記ポンプ形成部と前記他方の面とを接続する複数のピラーが設けられたものであってもよい。
ピラーによってポンプ部における表面積が増大し、これにともなって毛細管力が大きくなるため、より確実かつ円滑に流路の試料液体をポンプ部へと吸い上げることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るフローセルによれば、試料液体の流路を第1基板と第2基板との間の微小間隙として形成して当該微小間隙の毛細管力により試料液体が流通する構成とすることで、試料液体が流路以外の領域に流出するのを確実に防ぎ、試料液体を流路内を円滑に流通させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るフローセルの第1の実施形態について、図1から図6を用いて詳細に説明する。図1は第1の実施形態のフローセルの斜視図、図2は第1の実施形態のフローセルの内部構造を説明する平面図、図3は第1の実施形態のフローセルの分解斜視図、図4は図2のA−A断面図、図5は図4のC−C断面図、図6は図2のB−B断面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のフローセル1は、平面視矩形状の略板状をなす下部基板(第1基板)11と、該下部基板11上にその外径寸法を同一にして配設される上部基盤(第2基板)12とが積層されることによって形成されている。
【0018】
このようなフローセル1には、図2に示すように、試料液体Sが導入される導入部13と、第1基板11と第2基板12との間に2つ形成されたポンプ部14、14と、当該ポンプ部14と導入部13とを接続する流路15とが設けられている。
この流路15は、詳しくは、一端が導入部13に接続されるとともに外部装置により測定光等が照射される測定流路16と、一端が測定流路16に接続されるとともに2つに分岐した他端がそれぞれポンプ部14、14に接続された接続流路17とから構成されている。
【0019】
第1基板11は、例えばBK7等の光学ガラスから成形され、板厚が1mm程度で一辺が16mm程度の平面視略矩形の形状をしている。また、第1基板11の上面(第1基板11における第2基板12に対向する面)11aには、金属薄膜20が設けられている。この金属薄膜20の材料としては例えばAu等が用いられ、第1基板11の上面11aに、蒸着、スパッタ、メッキ加工等が施されることによって形成されている。
なお、金属薄膜20は、上記測定流路16に対応する部分のみに形成するようにしてもよい。
【0020】
第2基板12は、0.5〜5mm程度の厚さを有するアクリル等の材料から形成され、第1基板11に対応した平面視矩形状をなしており、この第2基板12の一側寄りの略中央部には導入口12cが貫通形成されている。
図3に示すように、この第2基板12の下面(第1基板に対向する面)12aの外周縁部12bは第1基板11側に一段隆起しており、第1基板11及び第2基板12を接合した際には、この外周縁部12bが第1基板11の上面11aと密着するようになっている。なお、以下では第2基板12の下面12aと言う場合には、外周縁部12bの内側にあたる当該外周縁部12bよりも一段凹んだ平面を指すものとする。
【0021】
また、この第2基板12の下面12aにおける導入口12cの開口縁部には、当該第2基板12の下面12aが第1基板11側に一段隆起するようして形成された環状突条21が形成されている。なお、当該環状突条21と外周縁部12bとの上記下面12aを基準とした高さを比較した場合、環状突条21の方が外周縁部12bよりも僅かに低くなっており、その差は例えば約50μmとされている。
【0022】
そして、第2基板12の下面12aには、一端が上記環状突条21に接続して上記一側とは反端側の他側に向かって延びる直線突条22と、該直線突条22の他端に一端が接続されて複数の屈曲部を有しながらクランク状に蛇行して上記他側近傍にまで延びる蛇行突条23と、該蛇行突条23の他端に接続されて蛇行突条23の両側に向かって延びる接続突条24が形成されている。
これら直線突条22、蛇行突条23及接続突条24は上記下面12aを基準として環状段部21と同一の高さまでそれぞれ等しく第1基板11側に突出している。
【0023】
さらに、第2基板12の下面12aには、2つの接続突条24のそれぞれに接続するようにして、ポンプ形成部25が形成されている。このポンプ形成部25は、上記下面12aを基準として環状突条21と同一の高さまで一段隆起しており、直線突条22を対称軸とした左右対象に2つが配置されるとともに、上記直線突条22の延在方向を長手方向とした平面視長方形状に形成されている。また、このポンプ形成部25における上記一側には、第2基板12を略矩形状に貫通する空気孔26が形成されている。
【0024】
以上のようにして本実施形態の第2基板12においては、下面12aを基準として、環状突条21、直線突条22、蛇行突条23、接続突条24及びポンプ形成部25が第1基板11側に一段隆起し、外周縁部12bがさらに一段第1基板11側に隆起するように配置されている。
【0025】
また、このような第2基板12は、例えば所定のパターンが形成された金型を用いた射出成形加工、レーザー加工、エンドミル等による切削加工等によって作成することができる。
【0026】
本実施形態におけるフローセル1は、それぞれ上述した第1基板11と第2基板12とを積層することによって形成される。
具体的には、第1基板11の上面11aに第2基板12の下面12aが対向するようにして積層させるとともに、第1基板11を上面側から押圧する。この際、第2基板12の外周縁部12bの表面に粘着剤、接着剤又は両面シール等を介在させておくことにより、第1基板11の上面11aと第2基板12の外周縁部12bとが接合されて、第1基板11と第2基板12とが固定一体化される。
【0027】
この際、第2基板12においては、環状突条21、直線突条22、蛇行突条23、接続突条24及びポンプ形成部25が外周縁部12bよりも僅かに凹んでいることから、当該環状段部21、直線突条22、蛇行突条23、接続突条24及びポンプ形成部25と第1基板11の上面11aとの間には微小間隙が形成される。この微小間隙の距離は、当該環状段部21、直線突条22、蛇行突条23、接続突条24及びポンプ形成部25との外周縁部12bとの高さ差によって決定され、本実施形態においては約50μmとされる。
本実施形態のフローセル1においては、このようにして形成された微小間隙が、それぞれ図2に示す導入部13、測定流路16、接続流路17及びポンプ部14とされて、試料液体Sを流通させるフローセル1が構成されている。
【0028】
なお、微小間隙を形成する構成としては、上記の他、例えば第2基板の外周縁部12bの高さを環状突条21、直線突条22等と略同一に形成するとともに外周縁部12bの表面に両面シール等を介在させて第1基板11と第2基板12とを接合し、この両面シールの厚みを利用して環状段部21、直線突条22等と第1基板11の上面11aとの間に微小間隙を形成したものであってもよい。この場合、両面シール等の厚みを適宜変更することによって微小間隙の距離を容易に調整することが可能となる。
【0029】
次に本実施の形態に係るフローセル1の動作について説明する。
導入口12cに試料液体Sが注入されると、当該試料液体Sは、第2基板12の環状突条21と第1基板11の上面11aとの微小間隙、即ち導入部13に毛細管現象により入り込む。すると、試料液体Sは同じく微小間隙である測定流路16、接続流路17の順に毛細管現象により進んでいく(図4参照)。
【0030】
この際、試料液体Sは、微小間隙の存在領域である測定流路16、接続流路17のみを流通しそれ以外の部分に流出することはない。即ち、例えば図5に示すように、微小間隙を形成する直線突条16と該直線突条16から一段凹んだ第2基板12の下面12aとの間には急激な構造変化があるため、試料液体Sが微小間隙外に流出しようとすると当該試料液体Sと第2基板12との接触角が大きく変化する。この場合、その接触角の急激な変化は、液体の進行に対して抵抗として作用するため、当該試料液体Sは微小間隙内に留められ当該微小間隙外の領域に流出することはない。従って、試料液体Sは微小間隙の形成領域である測定流路16、接続流路17のみを確実かつ円滑に流通していく。
【0031】
このようにして各流路15を経た試料液体Sはポンプ部14、14に流入する。このポンプ部14も微小間隙により形成されているので毛細管現象が発現し、当該ポンプ部14に至った試料液体Sがその内部を進行していく(図6参照)。また、上記と同じ作用により試料液体Sがポンプ部14の形成領域外に流出することなく内部に留められる。
そして、試料液体Sが空気孔26に到達すると、当該試料液体Sと第2基板12のポンプ形成部25との接触角が大きく変化し、これが液体の進行に対して抵抗として作用するため、試料液体Sの進行が停止される。これにより、ポンプ部14による試料液体Sの吸入動作は終了する。
【0032】
このようにして試料液体Sが流通されるフローセル1においては、試料液体Sが導入口12cに注入されてポンプ部14、14まで吸入される過程における測定流路16にて、表面プラズモン共鳴現象を利用した試料液体Sの測定が行われる。
表面プラズモン共鳴現象を利用した測定は、測定対象の検体が接触した金属(本実施形態においては金属薄膜20)の表面における、エバネッセント波と表面プラズモン波との共鳴を用いるものである。
【0033】
この測定では、図11及び図12に示すように、光源101から出射された光を入射側レンズ102で集光してプリズム103に入射させ、プリズム103の上面部104に密着させているフローセル1の測定部として機能する金属薄膜20に照射する。この金属薄膜の表面に検体である試料液体Sが接触して配置され、集光されるとともにフローセル1の第1基板11を透過してきた光が金属薄膜20の裏面に照射される。
このようにして照射された光は、第1基板11と金属薄膜20との界面で反射し、いわゆるCCDイメージセンサ等の撮像素子よりなる光検出部106で光強度が測定され、上記共鳴が起こる角度で反射率が低くなる谷が観測される。
【0034】
このような測定では、金属薄膜20の表面(検出部側)に固定された抗体やDNA断片に、選択的に結合する検体の有無を検出するものであるが、検出部に試料液体を配置した状態では、対象となる検体と抗体とが反応したことによる変化と、検出部に異物が沈降して堆積した状態による変化との区別はない。これに対し、金属薄膜20上に試料液体が流れているようにすることで異物の沈降が抑制されるようになり、上述した反応による変化を選択的に検出して、測定を確実に行うことができるようになっている。
【0035】
以上のようにして、本実施形態のフローセル1においては、第1基板11と第2基板12との間の微小間隙を流路15及びポンプ部14として、これら微小間隙の毛細管力により試料液体Sの流通及び吸引を行うことにより、試料液体Sが流路15及びポンプ部14以外の領域に流出することを確実に防止することが可能となる。
【0036】
また、例えば、一方の基板の一面に流路を刻設するとともに当該一面に他方の基板を接合することによってフローセルを形成した場合、接合面に間隙が生じると当該間隙の毛細管力によって試料液体Sが接合面における流路以外の領域に侵入してしまう。従って、このような場合、両基板の密着を精密に行う必要があるため、生産工程が技術的に複雑になる他、密着が可能な材料を選定する必要があり、生産コストが増加してしまう。
ところが、本実施形態のフローセル1においては、間隙を意図的に形成して流路15として利用するため、両基板11、12の接触面の密着性が確実でなく当該接触面に多少の間隙が生じたとしても、流路15及びポンプ部14に影響を与えることはない。従って、製造を容易として生産コストを低下させることが可能となる。
【0037】
なお、このような第1の実施形態における変形例として、第2基板12におけるポンプ形成部25が、例えば図7に示すように、ポンプ部14における流路15との接続部から空気孔26に向かうにしたがって、第1基板11から離間する方向に傾斜しているものであってもよい。
これによって、ポンプ部14の奥に行くほど微小間隙が大きくなることから、より多くの試料液体Sのポンプ部14内に留めることが可能となり、ポンプ部14の容量を増大させることが可能となる。
【0038】
次に本発明の第2の実施形態に係るフローセル30について、図8及び図9を用いて説明する。図8は第2の実施形態のフローセルの内部構造を示す平面図、図9は図8におけるD−D断面図である。図8及び図9においては、第1の実施形態のフローセル1と同じ構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0039】
本実施形態のフローセル30は、ポンプ部31の構成について第1の実施形態のポンプ部14とは相違しており、ポンプ部31は、図8及び図9に示すように第1基板11と第2基板12とを接続する複数のピラー32が設けられている。
即ち、本実施形態においては、第2基板12のポンプ形成部25と第1基板11の上面11aとをフローセル30の厚さ方向に連結する略円柱状のピラー32が等間隔で複数配設されている。これによって、当該ピラー32がない場合に比べてポンプ部31の単位体積あたりの表面積が大きくなる。したがって、ピラー32間を通過する試料液体Sにはより大きな毛細管力が作用することになり、より円滑かつ確実に試料液体Sを吸引することが可能となる。
【0040】
また、この第2の実施形態のフローセル30の変形例として、第1の実施形態と同様、例えば図10に示すように、ポンプ形成部25が、ポンプ部31における流路15との接続部から空気孔26に向かうにしたがって、第1基板11から離間する方向に傾斜しているものであってもよい。これによって、ポンプ部31の試料液体Sの容量を増大させることができる。
なお、ピラー32の形状は円柱状に限定されることはなく、多角形状のものやその他の形状のものであってもよい。
さらにまた、このピラー32の代わりに、もしくはピラー32とともに、第1基板11と第2基板12とを接続する複数の突条を設け、該突条によってポンプ部31内に複数の細い流路が集積して形成された構造をなすものであってもよい。
【0041】
以上、本発明の実施形態に係るフローセル1、30について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の設計変更も含まれる。
例えば、本実施形態においては2つのポンプ部14、31が形成されたものを示したが、これに限定されることはなく、単一又は3つ以上のポンプ部14、31を備えたものであってもよい。また、流路15についても、本実施形態の態様に限定されず、設計に応じて適宜形状を変更することも可能である。
即ち、本実施形態に係るフローセル1、30は、2つの基板11、12間に意図的に形成した微小間隙を流路15として用いることが本質であり、このような技術的内容が具現化されている以上、いかなる実施態様をも包含する。
【0042】
また、実施形態においては、特に表面プラズモン共鳴減少を利用した測定について説明したが、これに限定されず、他の光学的測定方法であっても試料液体Sをハンドリングするものであればいかなる用途へも応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1の実施形態のフローセルの斜視図
【図2】第1の実施形態のフローセルの内部構造を説明する平面図
【図3】第1の実施形態のフローセルの分解斜視図
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】図4のC−C断面図である。
【図6】図2のB−B断面図である。
【図7】第1の実施形態の変形例を説明する図である。
【図8】第2の実施形態の内部構造を説明する平面図である。
【図9】図8のD−D断面図である。
【図10】第2の実施形態の変形例を説明する図である。
【図11】SPR測定装置の構成例を示す構成図である。
【図12】図11におけるフローセルの拡大図である。
【符号の説明】
【0044】
1 フローセル
11 第1基板
12 第2基板
12c 導入口
15 流路
16 測定流路
17 接続流路
14 ポンプ部
22 直線突条(突条)
23 蛇行突条(突条)
24 接続突条(突条)
25 ポンプ形成部
20 金属薄膜(検出部)
30 フローセル
31 ポンプ部
32 ピラー
33 ポンプ形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
該第1基板の上に配設される第2基板と、
該第2基板に形成された試料液体が導入される導入口と、
前記第1基板の上面及び前記第2基板の下面の間に形成され、前記導入口に一端側が接続されるとともに途中位置に検出部が設置された流路とを備えるフローセルにおいて、
該流路は、前記第1基板の上面と前記第2基板の下面とのいずれか一方の面に形成された突条と他方の面との間の微小間隙であって、該微小間隙の毛細管力によって前記試料液体が流通されることを特徴とするフローセル。
【請求項2】
前記第1基板の上面と前記第2基板の下面との間に形成されるとともに前記流路の他端側が接続されたポンプ部が備えられ、
該ポンプ部は、前記第1基板の上面と前記第2基板の下面とのいずれか一方の面から他方の面に向かって一段隆起したポンプ形成部を備え、
該ポンプ形成部と前記他方の面との間の微小間隙による毛細管力によって、前記導入口から前記流路を経て到達した前記試料液体を吸引することを特徴とする請求項1に記載のフローセル。
【請求項3】
前記ポンプ部における微小間隙が、該ポンプ部における前記流路との接続箇所から離間する方向に向かうに従って漸次大きくなることを特徴とする請求項2に記載のフローセル。
【請求項4】
前記ポンプ形成部と前記他方の面とを接続する複数のピラーが設けられたことを特徴とする請求項2又は3に記載のフローセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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