説明

ブスルファンイムノアッセイ

ブスルファンの新規な結合体、及びブスルファンの置換誘導体から誘導した新規なブスルファン免疫原、並びにこれらブスルファンが結合した免疫原によって発生させた抗体は、生物学的な流体中のブスルファンの定量及び追跡のためのイムノアッセイにおいて有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、化学療法中の、最適な薬物濃度を素早く測定するために、ヒトの生物学的な流体中の、ブスルファンの存在を決定し、及び/又はその量を定量するための免疫学的アッセイの分野に関連する。
【背景技術】
【0002】
癌とは、身体の一部における細胞が、制御不能な状態で成長し始めた場合の、共通した発育形質を持つ、一群の悪性腫瘍を説明するのに使用される用語である。多くの癌は、腫瘍として形成されるが、血液中にも現れ、これらが成長する他の組織を循環し得る。悪性の癌は、最も一般的には、外科手術、化学療法及び/又は放射線療法の組合せによって治療される。特定の癌を治療するのに使用される治療の型は、悪性癌の型及びそれが診断された際のその段階を包含する幾つかのファクタに依存する。
ブスルファン(Busulfan)は、一般的に使用されている細胞毒性薬剤であり、慢性骨髄性白血病の治療及び高用量の移植前治療のために使用される。この化学療法剤は、下式:
【化1】

を有する。
【0003】
この化合物は、粘膜炎、肝静脈閉塞性疾患及び骨髄抑制のような副作用を弱めることに関連している。身体内のブスルファンのレベルを追跡し、またその用量を調節することによって、患者のこれら副作用をより良好に抑制し、かつ制限することができる。
同時に、ブスルファンの用量と、治療効果に影響する、得られる血清中の薬物濃度との間に、しばしば大幅に変動する関係がある。ブスルファンの、個体内及び個体間の動的薬理学上の変動の度合いは10倍にも及ぶ可能性があり(Slatter等, Blood 89(8):pp3055-3060)、また以下に列挙するファクタを包含する多くのファクタによって影響される(Gurney等, J. Clin. Oncol., 1996, 14:pp2590-2611):器官の機能;遺伝的な調節;疾患状態;年齢;薬物-薬物相互作用;薬物の摂取時間;薬物の投与形式;及び投与に関連する技術。
【0004】
この変動性の結果として、種々の個体における同一薬物の等価な用量は、大幅に異なる臨床的結果をもたらす可能性がある(Hon等, Clinical Chemistry, 1998, 44:pp388-400)。同一用量のブスルファンの有効性は、個々の薬物クリアランス及び患者における最終的な血清薬物濃度に基いて、著しく変化する。治療薬物の取扱いは、経口及び静脈内投与両者における、患者のばらつきに関する見通しと共に、臨床医に与えられるであろう。治療薬物の取扱いに関連して、薬物の用量は、該患者に対して個別化することができ、また望ましからぬ副作用無しに、癌を効果的に治療する見込みは、より一層高くなるであろう(Nieto, Current Drug Metabolism, 2001, 2:pp53-66)。
その上、ブスルファンの治療薬物取扱いは、実際に処方された用量での、化学療法剤の投与におけるコンプライアンス及び有効な血清濃度レベルの達成を保証するための、優れた手段として機能するであろう。血清濃度における変動性は、生理的なファクタのみならず、投与技術における多様性に起因する可能性があることが分かっている。
ブスルファンの決りきった治療薬物取扱いでは、一般的な実験室用の機器に適した、簡単な自動化されたテストを利用できることが必要である。ブスルファンの現在のテストはガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリーに関与する(Slattery等, Bone Marrow Transplant 1995, 16:pp31-42)。GC/MSは労働集約的かつ高価である。簡単及び有効性という基準に最も相応しいテストはイムノアッセイである。薬物濃度の追跡に際して、最も効果的であるためには、抗体が、活性化合物に対して最も特異的であり、かつ非活性の阻止性代謝産物(blocking metabolite)、特にテトラメチレンスルホン、テトラヒドロチオフェン及びテトラヒドロチオフェン-3-オール-1,1-ジオキシド[テトラヒドロ-3-チオフェノール 1,1-ジオキシド]に対して極めて低い交叉反応性を示すか、乃至はこれに対して全く交叉反応性を示さないものである必要がある。
【発明の開示】
【0005】
本発明により、ブスルファンに対して、実質的選択的に反応性であって、ブスルファン代謝産物、特にテトラメチレンスルホン、テトラヒドロチオフェン及びテトラヒドロチオフェン-3-オール-1,1-ジオキシドに対する如何なる実質的な交叉反応性も示すこと無しに、ブスルファンに対して結合する、新規な一群の抗体を製造した。「選択的反応性」なる用語は、この抗体が、該ブスルファン分子とのみ反応し、阻止性ブスルファン代謝産物(テトラメチレンスルホン、テトラヒドロチオフェン及びテトラヒドロチオフェン-3-オール-1,1-ジオキシド[テトラヒドロ-3-チオフェノール 1,1-ジオキシド])とは実質的に反応しないことを意味する。
下式II-Aで表される化合物:
【0006】
【化2】

(式中、Aは低級アルキレンであり、X'は官能性結合基であり、Yは有機スペーサ基であり、Xはポリアミンポリマーと結合できる末端官能基であり、p及びzは0〜1なる範囲の独立の整数である)、
又は下式II-Bで表される化合物:
【0007】
【化3】

(式中、A'は低級アルキレン又は低級アルケニレンであり、X'、Y、X、p及びzは上記の通り)、
又はこれらの混合物と、免疫原性ポリアミンポリマーとの結合体である、免疫原を使用することによって、ブスルファンに対して特異的であり、かつ、ブスルファンの阻止性代謝産物(テトラメチレンスルホン、テトラヒドロチオフェン及びテトラヒドロチオフェン-3-オール-1,1-ジオキシド)とは実質的に反応せず、或いはこれらには結合しない抗体を製造できることを見出した。ブスルファンと実質上選択的に反応し、かつテトラメチレンスルホン、テトラヒドロチオフェン及びテトラヒドロチオフェン-3-オール-1,1-ジオキシドとは交叉反応しない、これら抗体を提供することによって、ブスルファンにより治療すべき患者の流体サンプル中のブスルファンを特異的に検出かつ追跡することのできる、イムノアッセイを提供することが可能となる。同様に、このイムノアッセイ用の試薬及びキットも本発明の範囲内に入る。
【0008】
(発明の詳細な説明)
本発明によれば、新規な一群の抗体が提供され、これらの抗体は、ブスルファンと実質上選択的に反応し、かつ上述したブスルファン代謝産物とは実質的に反応もしくは交叉反応しない。これら上記式II-A及びII-Bのα-置換ブスルファン誘導体を免疫原として使用することによって、本発明の新規な一群の抗体が提供されることを見出した。これら抗体の使用を通して、血液、血漿又は他の体液サンプル中のブスルファンを検出し及び/又は定量するための、イムノアッセイ(このようなイムノアッセイで使用するための試薬及びキットをも包含する)を開発した。このイムノアッセイの使用によって、体液サンプル、好ましくは血液又は血漿サンプル中のブスルファンの存在及びその量を検出及び/又定量することが可能となる。このように、ブスルファンにより治療すべき患者を、その治療中に追跡することができ、またその治療を、該追跡結果に従って調節することができる。本発明によって、化学療法剤としてブスルファンで治療すべき癌患者の、治療薬物の管理を行う。
本発明のこのアッセイにおいて使用する試薬は、ポリマー担体と上記式II-A及びII-Bの化合物との結合体である。これら結合体は、本発明の抗体との結合に関して、該サンプル中に存在するブスルファンとの競合的結合相手である。従って、抗体に結合する結合体試薬の量は、該サンプル中のブスルファンの量に反比例するであろう。本発明によれば、このアッセイは、該抗体に結合しているか又は結合していない前記結合体検出し、かつその量を測定するための、いかなる公知の測定手段をも利用する。前記手段の使用によって、該結合又は未結合の結合体の量を決定することができる。一般的に、サンプル中のブスルファンの量は、該サンプル中のブスルファンによって生成された該結合又は未結合の結合体の上記測定量と、既知量のブスルファンを含むサンプルの標準又は検量線から決定された、該結合又は未結合の結合体の値とを相関付けることによって決定され、ここで、該既知量は、テストすべきサンプルについて予想される範囲内にある。検量線の作成に係るこれらの研究は、該サンプルについて使用したものと同一のイムノアッセイ手順を用いて決定される。
該結合体のみならず免疫原も上記式II-A及びII-Bの化合物から調製される。上記式II-A及びII-Bの化合物(式中、XはX'である)のポリアミンポリマーリガンド部分に、担体又は免疫原の結合体を連結する。担体又は免疫原のポリアミンポリマー上の1以上の活性部位に、これらリガンド部分を連結することができる。
【0009】
定義
本明細書の記載全体を通して、以下のような定義を理解しておくべきである:
この出願を通して使用する用語「Me」はメチル基を表す。用語「低級アルキレン」は、1〜6個の炭素原子を含む二価の飽和した直鎖又は分岐鎖炭化水素置換基を表す。用語「低級アルケニレン」は、2〜6個の炭素原子を含む二価の直鎖又は分岐鎖炭化水素基であって、かつ該炭化水素鎖中に不飽和二重結合を含む基を表す。
用語「免疫原」及び「免疫原性」とは、生物内で免疫反応を誘発し、生成し、又は発生させることのできる物質を意味する。
用語「結合体」とは、2つの部分を相互に結合することによって形成される、いかなる物質をも意味する。本発明による代表的な結合体は、上記式IIの化合物等の小分子と、担体又はポリアミンポリマー等の大きな分子、特にタンパク質とを一緒に結合することによって形成されるものを含む。該結合体において、該小分子は、該大分子上の1以上の活性部位において結合することができる。この「結合体」の用語は、「免疫原」の用語を含む。
【0010】
「ハプテン」とは、部分的な又は不完全な抗体である。これらはタンパクを含まない物質、多くの場合は低分子量の物質であり、これらは抗体形成を刺激することはできないが、抗体と反応する。後者は、ハプテンと高分子量の免疫原性担体とをカップリングし、次いでこのカップリング生成物、即ち免疫原を、ヒト又は動物対象に注入することにより生成される。本発明のハプテンはブスルファンである。
ここで使用する用語「スペーサ基」又は「スペーサ」とは、2種以上の、ハプテン、担体、免疫原、標識、又はトレーサ等といった、準構造体(substructures)を、CH2又は官能性結合基をもって結合する、化学的な構造体の一部を意味する。これらのスペーサ基は、本件特許出願の以下の記載において列挙されるであろう。スペーサ基の原子及び該スペーサ基内の連鎖の原子は、それ自体化学結合によって接続されている。中でも、好ましいスペーサは、直鎖又は分岐で、飽和又は不飽和の炭素鎖である。これらの炭素鎖は、鎖中又はその末端に1種以上のヘテロ原子を含むこともできる。「ヘテロ原子」なる用語は、酸素、窒素及び硫黄からなる群から選択される、炭素原子以外の原子を意味する。スペーサ基は、該鎖の一部として、あるいは該鎖中の1つの原子上の置換基として、環式又は芳香族基を含むこともできる。
【0011】
該スペーサ基内の原子数は、水素原子以外の原子を数えることによって決定される。1スペーサ基内の鎖における原子数は、結合されている準構造体間の最短の経路に沿って、水素以外の原子数を計数することによって決定される。標識又は担体又はポリアミンポリマーとハプテンとの結合体を合成するために、官能性結合基を使用して、ハプテン又はスペーサ基を活性化すること、例えばこれらに利用可能な官能部位を与えることができる。
ここで使用する用語「免疫原性担体」とは、ハプテンと結合できる免疫原性物質、一般的にはタンパク質を意味し、この場合には、ブスルファン又は前述したブスルファン誘導体であり、これらハプテン誘導体が、免疫応答を誘発し、またこれらハプテンと特異的に結合できる抗体の生産を誘発することを可能にする。該免疫原性担体及び該結合基は、本件特許出願の以下の記載において列挙されるであろう。該免疫原性担体物質としては、タンパク質、糖タンパク質、複合ポリアミノ-多糖類、粒子、及び外来物質として認識され、結果として宿主から免疫学的な応答を誘発する核酸が挙げられる。該ポリアミノ-多糖類は、その調製に関して公知の何れの手段を使用しても、多糖類から調製できる。
【0012】
また、様々な型のタンパク質を、ポリ(アミノ酸)免疫原性担体として使用することができる。これら型は、アルブミン、血清蛋白質、リポタンパク質等を含む。例示的なタンパク質としては、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、卵オボアルブミン、ウシチログロブリン(BTG)等が挙げられる。あるいはまた、合成ポリ(アミノ酸)を使用することもできる。
免疫原性担体は、またポリアミノ-多糖類をも含むことができ、これらは、単糖類の反復的な縮合によって構築された、高分子量のポリマーである。多糖類の例は、デンプン、グリコーゲン、セルロース、炭水化物ガム、例えばアラビアガム、寒天等である。該多糖類は、またポリアミノ酸残基及び/又は脂質残基をも包含する。
【0013】
該免疫原性担体は、単独のポリ(核酸)でも上記のポリ(アミノ酸)又は多糖類の一つと結合していてもよい。
該免疫原性担体は、また固体粒子を含むこともできる。該粒子は、一般的には少なくとも約0.02マイクロ(ミクロン)(μm)、かつ約100μm以下、及び通常は約0.05〜10μmなる範囲の径を持つものである。この粒子は、有機又は無機、また膨潤性又は非-膨潤性、多孔質又は非-多孔質であってよく、最適には水に近い密度、一般的には約0.7〜1.5g/mLなる範囲の密度を持ち、また透明、部分的に透明、又は不透明であり得る物質で構成することができる。これらの粒子は、生物学的な物質、例えば細胞及び微生物であり得、その非-限定的な例としては、例えば赤血球、白血球、リンパ球、ハイブリドーマ、連鎖球菌(Streptococcus)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(E. coli)及びウイルスを包含する。これらの粒子は、また有機及び無機ポリマー、リポソーム、ラテックス、リン脂質小胞、又はリポタンパク質によって構成されていてもよい。
【0014】
「ポリ(アミノ酸)」又は「ポリペプチド」とは、アミノ酸から形成されたポリアミドである。ポリ(アミノ酸)の分子量は、一般的に約2,000ダルトンを越え、また上限は無く、一般的には10,000,000ダルトン未満であり、及び通常は約600,000ダルトン以下の分子量を持つ。免疫原性の担体又は酵素が含まれるかに依存して、通常は様々の範囲となるであろう。
「ペプチド」とは、アミド(ペプチド)結合による2種以上のアミノ酸の連鎖によって形成されるいずれの化合物でもあり、通常はα-アミノ酸のポリマーであり、ここで各アミノ酸残基の該α-アミノ基(NH2末端基を除く)は、直鎖内の次の残基のα-カルボキシル基と結合している。ペプチド、ポリペプチド及びポリ(アミノ酸)等の用語は、ここではそのサイズに制限を設けること無しに、この種の化合物を意味する同義語として使用される。この種の最大の構成員は、タンパク質と呼ばれる。
「標識」、「検出体分子」又は「トレーサ」とは、検出可能なシグナルを生成する、あるいはその生成を誘発することのできるいずれかの分子である。該標識は、被検体、免疫原、抗体、又は他の分子、例えばレセプタ、あるいはレセプタと結合できる、リガンド、特にハプテン等の分子と、結合体を形成することができる。標識の非-限定的な例は、放射性同位元素、酵素、酵素フラグメント、酵素基質、酵素阻害剤、補酵素、触媒、発蛍光団、染料、化学発光体、発光体、又は増感剤;非-磁性又は磁性粒子、固体担体、リポソーム、リガンド、又はレセプタが挙げられる。
【0015】
該用語「抗体」とは、抗原に対する特異的なタンパク質の結合相手を意味し、また他の物質を除外して、抗原に対して特異的結合親和性を持つ、いかなる物質又は物質群でもある。上位概念の抗体とは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体及び抗体フラグメントを包含する。
該用語「誘導体」とは、1種以上の化学反応によって、親化合物から作られた化学的な化合物又は分子を意味する。
該用語「担体」とは、固体粒子及び/又は重合体ポリマー、例えば上述したような免疫原性ポリマーを意味する。該担体が固体粒子の場合、この固体粒子は、ポリアミンポリマーと結合し、該ポリマーで被覆され、あるいはまた他のやり方で該ポリマーに接着することができ、結果として前記式IIの化合物中の、末端官能基Xと結合するための1種以上の反応性部位を与えることができる。
【0016】
用語「試薬キット」又は「テストキット」とは、アッセイを実施するために使用する材料の集成体を意味する。これらの試薬は、これらの交叉反応性及び安定性に応じて、同一の又は別々の容器内に包装された組合せとして、及び液体又は凍結乾燥形状で与えることができる。このキット内に与えられる試薬の量及び割合は、特定の用途に対して最適の結果を与えるように選択することができる。本発明の特徴を利用する試薬キットは、ブスルファンに対して特異的な抗体を含む。このキットは、更に該被検体のリガンド及び検量及びコントロール物質を含むことができる。これらの試薬は、液体形状であってよく、あるいは凍結乾燥されていてもよい。
「検量及びコントロール物質」とは、測定すべき薬物の既知量を含む、いかなる標準又は基準物質をも意味する。薬物の濃度は、未知の検体について得られた結果と、該標準物質について得られた結果とを比較することにより計算される。これは、一般的には検量線を作成することによって行われる。
用語「生物学的サンプル」とは、生体又は以前生体であったもの由来の、いかなる量の物質をも含むが、これらに制限されない。このような生体は、ヒト、マウス、サル、ラット、ウサギ、ウマ、及びその他の動物を含むが、これらに制限されない。このような物質は、血液、血清、血漿、尿、細胞、器官、組織、骨、骨髄、リンパ液、リンパ節、髄液組織、軟骨細胞、髄液マクロファージ、内皮細胞、及び皮膚を含むが、これらに制限されない。
【0017】
〔試薬及び免疫原〕
イムノアッセイの構成において、抗体上の結合部位に対してサンプル中のブスルファンと競合するようにブスルファンの結合体を構成する。本発明のイムノアッセイにおいて、試薬は、上記式II-A及びII-Bの化合物のα-置換ブスルファン誘導体であり、その末端官能基XがX''に変換され、このX''は、X'と同様に官能性結合基であり、ポリアミンポリマーにリガンドを連結する。式II-A及びII-Bの化合物において、リンカースペーサは、この分子の-(X'-Y)2-部分を構成する。結合体及び免疫原の調製では、これらリンカーはX'と示され、スペーサは-Y-と示される。イムノアッセイ用の結合体及び免疫原を調製するのに使用される該公知のスペーサ-結合基の何れも、式II-A及びII-Bの化合物において使用することができる。このような公知のリンカー及びスペーサは、米国特許第5,501,987号及び同第5,101,015号に記載されている。
本発明の態様によれば、式II-A及びII-Bの化合物中のzは0でよい。従って、式II-A及びII-Bの化合物は、1つもスペーサ基を含む必要がなく、式II-A及びII-Bの化合物内の分子の残部に該Xが直接結合していてもよい。
好ましいスペーサ基には、前述したスペーサ基が含まれる。特に好ましいスペーサ基は、1〜10個の炭素原子を含むアルキレン若しくはアルケニレンのような基、又は下式で表される基:
【0018】
【化4】

(式中、n及びoは、0〜6なる範囲の整数であり、またm及びvは1〜6なる範囲の整数である)であり、アルキレンが、特に好ましいスペーサ基である。
式II-A及びII-Bの化合物からの結合体の形成において、X'及びX''は、好ましくは-CH2-又はスペーサを、好ましくはポリマー担体上のアミン基に連結する官能基である。この基X''は、式II-A及びII-Bの化合物中の、担体又は免疫原を結合させるために使用されるポリアミンポリマー中のアミノ基に結合できる末端官能基Xの結果である。式IIの化合物中の官能基Xとして、アミンと反応できるいずれの末端官能基も利用できる。Xに好ましく包含されるこれら末端官能基は、下式で表されるものである:
【0019】
【化5】

式中、R3は、水素原子又はこれが結合している酸素原子と共に反応性エステルを形成し、またR4は、酸素又は硫黄原子である。基:-N=C=R4はイソシアネート又はイソチオシアネートであり得る。OR3によって形成される該活性エステルは、イミドエステル、例えばN-ヒドロキシスクシンアミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、及びp-ニトロフェニルエステルを含む。しかし、アミノ基と反応し得るいかなる活性エステルも使用することができる。
該カルボキシル基及び該活性エステル、すなわち下記式で表される基:
【0020】
【化6】

は、公知の手段によって、該担体又は免疫原性ポリマーとカップリングされる。タンパク質等の該ポリアミンポリマー上のアミン基は、該スペーサと該ポリマー、免疫原又は担体及び/又は本発明の結合体とを結合するアミド基を生成する。
本発明の免疫原及び結合体において、カルボキシル基含有ブスルファンハプテンと、該担体又は免疫原上の該ポリアミンポリマー上のアミノ基との間の化学的な結合は、当業者には公知の様々な方法を利用して確立することができる。アミド結合を形成することが好ましいことが多い。アミド結合は、まず該式IIの化合物中のブスルファンハプテンのカルボン酸部分を、該カルボキシ基を脱離基用試薬(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、p-ニトロフェノール等)と反応させることによって、活性化することにより生成される。ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド等の活性化試薬を使用することができる。次に、式IIのブスルファンハプテン中の、活性化形状にあるカルボキシル基を、該タンパク質担体を含有する緩衝された溶液と反応させる。
【0021】
式II-A及び/又はII-Bのブスルファン誘導体が一級又は二級アミノ基及びカルボキシル基を含む場合、該活性化の際、及びカップリング反応に際して、アミン保護基を使用して、該結合体がそれ自体と反応することを防止する必要がある。典型的には、該結合体上のアミンは、対応するN-トリフルオロアセトアミド、N-tert-ブチルオキシカルボニルウレタン(N-t-BOCウレタン)、N-カルボベンジルオキシウレタン又は同様な構造を形成することによって保護される。上記のように、一旦該免疫原性ポリマー又は担体とのカップリング反応が完了したら、該免疫原又は結合体の構造をその他の点では変化させることのない試薬を用いて、該アミン保護基を除去することができる。このような試薬及び方法は、当業者には公知であり、水性又は無水の弱酸又は強酸、水性又は無水の弱塩基又は強塩基、水素化物-含有試薬、例えば水素化ホウ素ナトリウム、又はシアノ水素化ホウ素ナトリウム及び接触水素化が挙げられる。ハプテン及び担体を結合化するための様々な方法は、米国特許第3,996,344号及び同第4,016,146号にも記載されている。これらを本発明の参考文献としてここに組入れる。
他方、上記式II-A又はII-Bの化合物において、Xがイソシアネート又はチオイソシアネート基である場合、ポリアミンポリマーの遊離アミンと反応させた場合、これらの基は、式II-A又はII-Bのリガンド部分において、X'又はX''が、下式で表される基:
【0022】
【化7】

である結合体又は免疫原を生成し、機能的に該ポリアミン担体又は該免疫原ポリペプチド上のアミノ基と結合する。X'又はX''がスペーサ基を形成する。
式II-A又はII-Bの化合物におけるXがアルデヒド基である場合、これらの化合物は、還元性のアミノ化によって、アミン結合を介して、該ポリアミンポリペプチド若しくは担体又は該スペーサ基のアミン基と結合することができる。還元性のアミノ化等によって、アミンとアルデヒドとを縮合する、いかなる公知法を利用してもこの結合を形成することができる。この場合、式II-A及びII-Bのリガンド部分のX'又はX''は、-CH2-になる。
式II-A及びII-Bの化合物は、下記式Vで表される化合物:
【0023】
【化8】

から、まず該式Vの化合物中の2つの一級アミン基を公知のアミノ保護基で保護することによって調製することができる。式Vの化合物を保護するとき、いかなる公知のアミノ保護基も使用できる。好ましいアミノ保護基は、Boc[三級ブトキシカルボニル]である。アミンを反応させてこれら保護アミン基を形成するいかなる公知の方法もこのプロセスで使用することができる。
この次工程では、式Vの化合物の保護されたアミンをホーナー(Horner)又はWittig(ウィッティッヒ)型反応によって、下記式VIで表わされる化合物:
【0024】
【化9】

(式中、A'及びpは上記の通りであり、かつR6は低級アルキルであり、X1はポリアミンポリマーと結合できる末端官能基である)と反応させて、下記式で表される化合物VII:
【0025】
【化10】

(式中、X1、A'及びpは上記の通りであり、かつR8はアミノ保護基である)を形成する。
リンカースペーサ基X'-Yを有する式II-A又はII-Bの化合物を製造することが望ましい場合、式VIIの化合物を下記式VIIIで表される化合物:
R10YX VIII
(式中、R10はハロ又はNH2であり、Xはポリアミンポリマーと反応できる末端官能基であり、かつYは上記の通り)と反応させる。
この場合、式VIIIの化合物中のX1が反応性の酸誘導体であるとき、公知のエステル保護基を形成することによってX1を保護する。式VII及びVIIIの化合物の反応が、下記式IXで表される化合物:

【0026】
【化11】

(式中、R8、A'、p、X'、Y、X及びzは上記の通り)を生成する。
式IXの化合物を生成するための式VII及びVIIIの化合物の反応は、式VIIの化合物中の官能基Xに応じて、前述したようなイソシアネート、イソチオシアネート、活性エステル、酸又はアルデヒド基をハロゲン化物又はアミンと縮合させるといったいずれの手段によっても行われる。
式II-Aの化合物を生成することが望ましい場合、式IXの化合物中の二重結合を公知の手段で水素化してそれらを飽和結合に還元する。これにより下記式Xで表される化合物が生成する:
【0027】
【化12】

(式中、A、z、p、X'、Y及びXは上記定義通りである)。
いずれの公知の水素化の方法を行っても式IXの化合物を式Xの化合物に変換することができる。一般的に、この反応は、炭素触媒上のパラジウムを利用して水素によって行われる。水素化によるこの還元は、保護されているジアミンの鎖への結合間の二重結合を還元するのみならず、置換基Y中のすべての二重結合を還元する。二重結合を有するスペーサY置換基を生成することが望ましい場合、式VIIの化合物をまず上述したような水素化で還元して下記式VII-Aで表される化合物:
【0028】
【化13】

(式中、R8、A、p及びX1は上記の通りである)を生成し、
かつ式VIIIの化合物と反応させて、Yが少なくとも1個の二重結合を含有する置換基である、式Xの化合物を得る。
この発明の次工程では、前記アミノ保護基を、このような基を除去するいずれのかの公知の手段によって、式IX又は式Xの化合物から除去して下記式XIで表される化合物:
【0029】
【化14】

(式中、A、p、z、X'及びXは上記の通り)、又は下記式XIIで表される化合物:
【0030】
【化15】

(式中、A'、p、z及びXは上記の通り)を生成する。
これは、トリフルオロ酢酸による等の公知の酸性加水分解によって行うことができ、トリフルオロ酢酸による方法は、このようなアミノ保護基に特に適し、かつ該アミノ基はその酸付加アミノ塩に変換するだろう。メチルスルホニルクロリド(メシルクロリド)との反応によるメシル化(mesylation)によって、式XI及びXIIの化合物のこれらアミノ塩をそれぞれ式II-A及びII-Bの化合物に変換することができる。このやり方では、末端アミノ基上のメシル基が、式XI及びXIIの化合物中の2つの末端アミノ基のそれぞれのところに導入される。
【0031】
この反応の実施では、式IX、X、XI及びXIIの化合物において、遊離の反応性酸誘導体をエステル保護基で保護することが最良である。メシル化後の式II-A及びII-Bの化合物の形成において、該酸保護基を酸加水分解で除去することができる。
式II-A及びII-Bの化合物をポリアミン又はポリペプチドと反応させることによって、本発明の免疫原及び/又は結合体試薬に式II-A及びII-Bの化合物を変換することができる。該ポリアミン又はポリペプチドが免疫学的に活性であることを条件として、本発明の免疫原中の担体として、また免疫原性ポリマーとして同じポリペプチドを利用することができる。しかし、結合体を形成するためには、これらポリマーは、免疫原に必要な免疫反応を生じさせる必要はない。本発明によれば、式II-A及びII-Bの化合物中のXで表される種々な官能基を、ポリマー内に含まれるアミン基に官能基を結合する公知の手段によってポリマー物質に結合させることができる。好ましい態様によれば、式II-A及びII-Bの化合物中、Xはカルボン酸基である。
【0032】
〔抗体〕
本発明は、上記免疫原を利用して生成される、ブスルファンに対するモノクローナル抗体を含む、新規な抗体にも関連する。本発明によれば、本発明に従って作られたこれらの抗体が、ブスルファンと選択的に反応し、かつブスルファンのイムノアッセイを妨害するであろう代謝産物とは反応しないことを見出した。本発明の抗体の、これらテトラメチレンスルホン、テトラヒドロチオフェン及びテトラヒドロチオフェン-3-オール-1,1-ジオキシオド代謝産物と反応しないという能力は、ブスルファンのイムノアッセイの提供においてこれら抗体を特に有益にする。
本発明は、新規な抗体及びブスルファンに対するモノクローナル抗体に関連する。宿主動物を本発明の免疫原で免疫化(immunize)することによって、本発明の抗-血清を有利に製造することができる。適当な宿主動物はゲッ歯目の動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット等、あるいはより高等な動物、例えばヤギ、ヒツジ、ウマ等を包含する。初期用量、出血及びブースターショットは、動物において免疫応答を誘発するための、許容されるプロトコールに従って与えることができる。例えば、好ましい態様では、マウスは、6ヶ月の期間に渡り、i.p.経路による100ug免疫原/マウスなる初期用量、及びその後2回以上の、50〜100ug免疫原/マウスなるブースターショットを受けた。周期的な出血を通じて、該免疫化されたマウスの血液サンプルを、ブスルファンの結合に対する免疫応答の発現について、公知のイムノアッセイを利用して観察した。これらの方法は、所望の活性を持つ抗-血清を生成する宿主のスクリーニングのための便利な方法を与える。また、ブスルファンの代謝産物に対して本抗体をスクリーニングして、本抗体がこれら化合物には実質的に結合しないことを示した。
【0033】
モノクローナル抗体は、上記のスケジュールに従って、Balb/cマウスを免疫化し、引続き細胞融合の4日前から3日連続でi.p.又はi.v.経路で、100ugの免疫原を該マウスに注射することによって、有利に製造される。抗体分野において周知の他のプロトコールも当然使用することができる。ここに詳述した完全な免疫化プロトコールは、ブスルファンに対する抗体に関して、血清抗体応答のための最適のプロトコールを与えた。
【0034】
該宿主の、脾臓由来のBリンパ細胞、末梢血、リンパ節又は他の組織を、モノクローナル抗体産生細胞として使用することができる。最も好ましいものは、該脾臓から得られるBリンパ細胞である。本発明の所望のモノクローナル抗体を生成し得るハイブリドーマは、このようなBリンパ細胞と不死化細胞系を融合することによって得られ、この不死化細胞系は、該ハイブリッド細胞に、長期に渡る組織培養の安定性を付与する細胞系である。本発明の好ましい態様において、該不死化細胞は、リンパ芽球細胞又はそれ自体抗体産生細胞であるが、悪性細胞でもある、ミエローマ細胞等の形質細胞腫細胞であり得る。ブスルファンモノクローナル抗体を生産するネズミハイブリドーマは、マウスミエローマ細胞と、ブスルファン-タンパク質結合体に対して免疫化されたマウス由来の脾臓細胞とを融合することにより作られる。該ハイブリドーマ細胞由来の、該抗体を発現する遺伝子をクローニングし、次いで今や当分野において周知の組換え遺伝子法を用いて、マウス可変領域をヒトの定常領域に結合するか、あるいはヒトフレームワーク部を、ドナーマウス又はラットの免疫グロブリン由来の相補性決定部(CDR)と組み合わせることによって、キメラ及びヒト化モノクローナル抗体を製造することができる。増強された親和性を持つ抗体を与える、ネズミモノクローナル抗体のヒト化を行う改良された方法は、国際特許出願WO 92/11018に記載されている。
【0035】
一次抗体構造の一部のみを含むポリペプチドフラグメントを製造することができ、このフラグメントは、1種以上の免疫グロブリン活性を持つ。これらのポリペプチドフラグメントは、当分野において周知の方法による、完全な抗体のタンパク質分解式の開裂により、あるいは部位特異的変異誘発を利用して、該抗体遺伝子を含む発現ベクター内の所望の位置に、停止コドンを挿入して、Fabフラグメント又は(Fab')2フラグメントを生成することによって製造できる。単鎖抗体は、VL及びVH領域をDNAリンカーで結合することによって製造できる(Huston等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1988, 85:5879-5883及びBird等, Science, 1988, 242:423-426を参照のこと)。
本発明の抗体は、ブスルファンの阻止性代謝産物(テトラメチレンスルホン、テトラヒドロチオフェン及びテトラヒドロチオフェン-3-オール-1,1-ジオキシド)との如何なる実質的な交叉反応性も示すことなく、ブスルファンに対して選択的である。実質的な交叉反応性を示さないとは、本発明の抗体が、ブスルファンに関して、10%未満、好ましくは5%未満の、これら阻止性代謝産物との交叉反応性を持つことを意味する。
【0036】
〔イムノアッセイ〕
本発明によれば、患者サンプル中のブスルファンの定量用試薬として、上記式IIのこれら化合物又はその混合物の免疫原により生成された結合体及び抗体を使用できる。イムノアッセイによって、この定量を実施する。式IIの化合物から形成された試薬結合体が、本発明に従って生成された抗体上の結合部位について該サンプル中のブスルファンと競合する如何なるイムノアッセイを用いても患者サンプル中のブスルファンの存在を定量することができる。ブスルファンを含むと推測されるサンプル中のブスルファンについてこのようなアッセイを行うための方法は、(a)水性媒体サンプル、(b)本発明に従って生成された、ブスルファンに対する抗体及び(c)式IIの化合物又はその混合物から形成された結合体を混合する工程を含む。サンプルと抗体の該混合物に添加された既知量の結合体の、該特異的抗体への結合の阻害を測定することによって、該サンプル中のブスルファンの量を決定することができる。該未知サンプルによる、該既知量の結合体のこのような結合の阻害の結果を、ブスルファンの既知の標準溶液を利用して同じアッセイで得られた結果と比較する。未知サンプル中のブスルファンの量の決定においては、サンプル、式IIの化合物から形成された結合体及び抗体を如何なる順序で添加してもよい。
【0037】
様々な手段を利用して、該抗体と結合した式IIの化合物から形成された結合体の量を測定することができる。その方法の一つにおいて、該結合体の該抗体への結合は、発蛍光団を持つ結合体の回転速度を減少させる。この液状混合物中の発蛍光団を持つ結合体の回転速度の減少量は、例えば米国特許第4,269,511号及び同第4,420,568号に記載されているような、蛍光分極技術によって検出することができる。この場合、サンプルは液状サンプルであり、かつ抗体は、該サンプルと結合体を含有する水性媒体に可溶性である。
他方、抗体をナノ粒子上に被覆又は吸収させることができ、その結果これらの粒子が、該式IIの化合物から形成されたブスルファン結合体と反応した場合、これらのナノ粒子は凝集体を生成する。しかし、ナノ粒子上に被覆又は吸収された該抗体が、該サンプル中のブスルファンと反応する場合、該サンプル由来の、これらのナノ粒子と結合したブスルファンは、該抗体ナノ粒子の凝集を引起すことはない。この際の集合体又は凝集体の生成量は、吸光度によって、該アッセイ混合物中で測定できる。
他方、これらのアッセイは、該抗体又は該ブスルファン結合体の何れかを、固体支持体、例えばマイクロタイタープレート又は固体粒子を含む、いかなる他の公知の固体支持体に結合させることによって、実施することができる。このような固体粒子に抗体及びタンパク質を結合することは、当分野において周知である。このような結合を実施するために、いかなる公知方法も利用することができる。多くの場合において、測定を助けるため、該抗体と結合した、又は結合していない、上記式IIの化合物から形成された該結合体の量を検出する助けとして、該抗体、結合体又は固体粒子上に放射性標識又は酵素標識等の標識を配置することができる。他の適当な標識として、発色団、発蛍光団等が挙げられる。
【0038】
便宜的なこととして、本発明のアッセイ成分は、キット、即ちブスルファンに関するアッセイにおいて使用される、所定量の新規な試薬との包装された組合せとして与えることができる。これら試薬は、本発明の抗体、並びに上記式IIの化合物から形成された結合体を含む。
これら必要な試薬に加え、補助的な試薬等の添加剤を含めることができ、その例は安定剤、緩衝液等を包含する。これら様々な試薬の相対的な量は、このアッセイの感度を実質的に最適にする、該試薬の溶液中の濃度を与えるため、広範囲で変えることができる。試薬は、溶液として与えることができ、あるいは溶解した際に該アッセイを実施するのに適当な濃度の試薬溶液を与える賦形剤を含む、通常は凍結乾燥された、乾燥粉末として与えることができる。
【実施例】
【0039】
実施例では、Meはメチルを表す。実施例においては、以下のものを表すために、以下のような略号を使用する:
THF:テトラヒドロフラン
TEA:トリエチルアミン
TFA:トリフルオロ酢酸
EtOAc:酢酸エチル
NHS:N-ヒドロキシスクシンイミド
MeOH:メタノール
EDC:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩
TLC:薄層クロマトグラフィー
ANS:8-アニリノ-1-ナフタレンスルホン酸
i.p.:腹腔内
HRP:ホースラディッシュ-ペルオキシダーゼ
TMB:3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン
TRIS:トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩
BSA:ウシ血清アルブミン;
BTG:ウシチログロブリン
KLH:キーホールリンペットヘモシアニン;
PBS:リン酸緩衝塩水;
di:脱イオン水。
以下の実施例において、以下のスキーム1及びスキーム2は、調製した特定の化合物を示し、またこれら実施例においてはその番号で言及する。これらスキームは、以下の通りである:






















スキーム1:
【0040】
【化16】


















【0041】
スキーム2:
【0042】
【化17】

【0043】
実施例1:ブスルファン誘導体[7]の調製(スキーム1)
8mLのクロロホルム中の1,4-ジアミノ-2-ブタノン二塩酸塩(0.193g、1.1ミリモル)とTEA(0.76mL、5当量)の懸濁液に、2mLのクロロホルム中のジ-tert-ブチルジカーボネート(0.48g、2当量)を滴加した。結果の混合物を3時間還流させ、室温に冷まし、50mLのクロロホルムで希釈し、1N HCl(2×15mL)、H2O(20mL)、飽和NaHCO3(25mL)、及び食塩水(30mL)で洗浄してから半時間硫酸ナトリウム上で乾燥させた。有機層を濃縮して生成物[1]を得た(黄色固体、収率95%)。生成物の構造をNMRで確認した。
15mLの乾燥THF中の[1](0.9g、3ミリモル)と4-ホスホノクロトン酸トリエチル(1.6mL、2.2当量)の溶液に水素化ナトリウム(0.26g、2.2当量)を少しずつ加えた。結果の混合物を室温で2時間撹拌した。TLCは、反応が完全には完了していないことを示した。溶媒を除去して得た残留物をEtOAc(80mL)に取り、H2O(2×40mL)、食塩水(40mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で半時間乾燥させた。有機層を濃縮して粗生成物[2](褐色油)を得、EtOAc/ヘキサン溶媒系を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(収率20%)。生成物の構造をNMRで確認した。
15mLのMeOH中の化合物[2](500mg、1.25ミリモル)の溶液を大気圧下、20%(w/w)のPd-C上で12時間水素化した。混合物を20mLのMeOHで希釈し、ろ紙を介してろ過し、濃縮して60%の収率で300mgの生成物[3]を得、構造をNMRで確認した。
1mLのクロロホルム中の化合物[3](300mg、0.75ミリモル)の懸濁液に4mLのトリフルオロ酢酸を加えた。結果の混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒と余分なTFAを除去して化合物[4]を褐色油として得、さらに精製せずに次工程反応で使用した(収率100%)。
氷-水浴内で撹拌しながら、10mLのクロロホルム中の化合物[4](0.32g、0.75ミリモル)、TEA(2.1mL、20当量)の懸濁液に、5mLのクロロホルム中の塩化メタンスルホニル(0.6mL、10当量)を滴加した。結果の混合物を室温に戻して室温で終夜撹拌した。溶媒を除去して粗生成物(褐色油)を得、EtOAc/ヘキサン溶媒系を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して化合物[5](140mg、収率52%)を得、構造をNMRで確認した。
メタノール/水(4:1、10ml)中のエチルエステルブスルファン誘導体[5](140mg、0.34ミリモル)と水酸化ナトリウム(110mg、7当量)の混合物を2時間還流させ、10mLのH2Oで希釈し、1N塩酸で酸性にしてpHを1とした。溶媒を除去して粗生成物を得、6mlのMeOHに溶解した。そのNaCl塩をろ別し、ろ液を濃縮して100%の収率で生成物[6]を得、構造をNMRで確認した。
3mlのDMSO中のブスルファン酸誘導体[6](120mg、0.36ミリモル)の溶液にEDC・HCl(209mg、3当量)、及びNHS(125mg、3当量)を加えた。反応混合物を窒素下、室温で終夜撹拌して化合物[7]を得た。この粗製反応混合物を実施例3、4及び5のタンパク質結合用に使用した。
【0044】
実施例2:ブスルファン誘導体[11]の調製(スキーム2)
1mLのクロロホルム中の実施例1の化合物[2](0.43g、1.08ミリモル)の懸濁液に4mLのトリフルオロ酢酸を加えた。結果の混合物を室温で半時間撹拌した。溶媒と余分のTFAを除去して化合物[8]を褐色油として得、構造をNMRで確認した。この物質をさらに精製せずに次の反応で使用した(収率100%)。
氷-水浴内で、10mLのクロロホルム中の化合物[8](0.43g、1ミリモル)とTEA(2.8mL、20当量)の懸濁液に、5mLのクロロホルム中の塩化メタンスルホニル(0.8mL、10当量)を滴加した。結果の混合物を室温に戻して室温で終夜撹拌した。溶媒を除去して粗生成物[9](褐色油)を得、EtOAc/ヘキサン溶媒系を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(収率30%)。構造をNMRで確認した。
メタノール/水(4:1、10ml)中のエチルエステル[9](160mg、0.45ミリモル)と水酸化ナトリウム(110mg、7当量)の混合物を2時間還流させ、10mLのH2Oで希釈し、1Nの塩酸で酸性にしてpHを1とした。溶媒を除去して粗生成物を得、6mlのMeOHに溶解した。該NaCl塩をろ別し、ろ液を濃縮して生成物[10]を得た(収率100%)。構造をNMRで確認した。
2mlのDMSO中のブスルファン酸誘導体[10](50mg、0.15ミリモル)の溶液にEDC・HCl(88mg、3当量)とNHS(52mg、3当量)を加えた。反応混合物を窒素下、室温で終夜撹拌して活性化NHSエステル[11]を得た。この粗製反応混合物を実施例6のタンパク質結合用に使用した。
【0045】
実施例3:ブスルファンBTG免疫原の調製
50mMのリン酸緩衝液(50mM、pH7.5)中の17mLのBTG(21.2mg/mL)に、実施例1で調製した0.625mLの活性化N-ヒドロキシスクシンイミドエステルブスルファン誘導体[7](DMSO中40mg/mL)を、氷浴内で溶液を撹拌しながら滴加した。結果の混合物を室温で終夜撹拌して、BTGをブスルファン誘導体[7]に結合させた。この免疫原性結合体を透析で精製し、以前に記載された手順に従って特徴づけした(Wu等, Bioconj. Chem., 1997, 8:pp385-390、Li等, Bioconj. Chem., 1997, 8:pp896-905、Salamone等,J. Forensic Sci. 1998, pp821-826)。
【0046】
実施例4:ブスルファンKLH免疫原の調製
50mMのリン酸緩衝液(50mM、pH7.5)中の24mLのKLH(20.8mg/mL)に、実施例1で調製した0.9mLの活性化N-ヒドロキシスクシンイミドエステルブスルファン誘導体[7](DMSO中40mg/mL)を、氷浴内で溶液を撹拌しながら滴加した。結果の混合物を室温で終夜撹拌してKLHをブスルファン誘導体[7]に結合させた。この免疫原性結合体を透析で精製し、以前に記載された手順に従って特徴づけした(Wu等, Bioconj. Chem., 1997, 8:pp385-390、Li等, Bioconj. Chem., 1997, 8:pp896-905、Salamone等,J. Forensic Sci. 1998,pp821-826)。
【0047】
実施例5:誘導体7とのブスルファン-BSA結合体の調製
リン酸緩衝液(50mM、pH7.5)中のBSA(50mg/mL)の溶液20mLに、実施例1で調製した0.9mLの活性化N-ヒドロキシスクシンイミドエステルブスルファン誘導体[7](DMSO中40mg/mL)を、氷浴内で溶液を撹拌しながら滴加した。混合物を室温で終夜撹拌して、活性化エステル[7]とBSAの結合体を生成した。この結合体を透析で精製し、以前に記載された手順に従って特徴づけした(Wu等, Bioconj. Chem., 1997, 8:pp385-390、Li等, Bioconj. Chem., 1997, 8:pp896-905、Salamone等,J. Forensic Sci. 1998,pp821-826)。
実施例6:誘導体11とのブスルファン-BSA結合体の調製
リン酸緩衝液(50mM、pH7.5)中のBSA(50mg/mL)の溶液20mLに、実施例2で調製した0.2mLの活性化N-ヒドロキシドスクシンイミドエステルブスルファン誘導体[11](DMSO中25mg/mL)を、氷浴内で溶液を撹拌しながら滴加した。混合物を室温で終夜撹拌して、活性化エステル[11]とBSAの結合体を生成した。この結合体を透析で精製し、以前に記載された手順に従って特徴づけした(Wu等, Bioconj. Chem., 1997, 8:pp385-390、Li等, Bioconj. Chem., 1997, 8:896-905、Salamone等,J. Forensic Sci. 1998,pp821-826)。
【0048】
実施例7:ブスルファン抗体の調製
完全フロイントアジュバント(Complete Freund's Adjuvant)に乳化させた、実施例3で調製したブスルファン-BTG免疫原又は実施例4で調製したブスルファン-KLH免疫原で、100μg/マウスにて、腹腔内注射で10匹のメスのBALB/cマウスを免疫化した。この初期注射の後に4週間に一度、これらマウスを、不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund's Adjuvant)中に乳化させた、同一の免疫原で、100μg/マウスにて、追加免疫化処理した。この追加免疫化の10日又は28日後に各マウスからのテストブリードを、眼窩ブリードによって得た。これらテストブリード由来の抗-血清は、実施例9、10a及び10bで評価されるブスルファン抗体を含んでいた。
【0049】
実施例8a:ブスルファン誘導体7-BSA結合体を用いたマイクロタイタープレート感作手順
ブスルファンの濃度を測定するためのELISA法は、タンパク質結合について最適化され、また1プレート当たり96ウエルを含む、ポリスチレンマイクロタイタープレート(ヌンクマキシソープ(Nunc MaxiSorp) C8又はF8イムノモジュール(Immunomodule))で行った。0.05M重炭酸ナトリウム溶液(pH=9.6)中、10μg/mLのブスルファン-BSA結合体300μLを添加し、室温にて3時間インキュベートすることによって、各ウエルをブスルファン-BSA結合体(実施例5におけるように調製)で被覆した。これらのウエルを、0.05M重炭酸ナトリウム溶液(pH=9.6)で洗浄し、次いで室温にて30分間、400μLの5%スクロース、0.2%のナトリウムカゼイネート溶液で阻止した。この後被覆(post-coat)溶液を除去した後、これらのプレートを37℃にて終夜乾燥させた。
【0050】
実施例8b:ブスルファン誘導体11-BSA結合体を用いたマイクロタイタープレート感作手順
ブスルファンの濃度を測定するためのELISA法は、タンパク質結合について最適化され、また1プレート当たり96ウエルを含む、ポリスチレンマイクロタイタープレート(ヌンクマキシソープ(Nunc MaxiSorp) C8又はF8イムノモジュール(Immunomodule))で行った。7.5μg/mL BSA、0.05M重炭酸ナトリウム溶液(pH=9.6)中、2.5μg/mLのブスルファン-BSA結合体300μLを添加し、室温にて3時間インキュベートすることによって、各ウエルをブスルファン-BSA結合体(実施例6におけるように調製)で被覆した。これらのウエルを、0.05M重炭酸ナトリウム溶液(pH=9.6)で洗浄し、次いで室温にて30分間、400μLの5%スクロース、0.2%のナトリウムカゼイネート溶液で阻止した。この後被覆(post-coat)溶液を除去した後、これらのプレートを37℃にて終夜乾燥させた。
【0051】
実施例9:抗体スクリーニング手順-力価
ブスルファン抗体(実施例7において製造)をスクリーニングするためのELISA法は、実施例8a及び8bに記載したように、ブスルファン-BSAによって感作したマイクロタイタープレートを用いて行った。この抗体スクリーニングアッセイは、該抗-血清含有ブスルファン抗体を、0.1%BSA及び0.01%チメロサールを含有するリン酸緩衝食塩水中に、1:100、1:1,000、1:10,000及び1:100,000倍に希釈することによって行った。ブスルファン-BSA感作したウェル(実施例8a及び8bで調製)の各ウェルに、100μLの希釈した抗体を加え、振とうしつつ室温で10分間インキュベートした。このインキュベーション中に抗体がウエル内でブスルファン-結合体と結合する。これらプレートのウエルを0.02M TRIS、0.9%NaCl、0.5%ツイーン(Tween)-80及び0.001%チメロサール(pH 7.8)で3回洗浄して、あらゆる未結合の抗体を除去した。該ウエル内の、ブスルファン-BSA結合体と結合したブスルファン抗体の量を決定するため、0.1%BSA、0.05%ANS、0.01%チメロサールを含むPBS中で所定の特異的活性に希釈された(約1/2400)100μLのヤギ抗-マウス抗体-HRP酵素結合体(ジャクソンイムノリサーチ(Jackson Immuno-research)社)を、各ウエルに添加したが、これは、ネズミの免疫グロブリンと特異的に結合することができ、また基質と共にインキュベートした場合には、着色された生成物を生成しうる。振とうしつつ室温で10分インキュベーション後(その間に二次-HRP結合体がウエル内でブスルファンと結合する)、プレートを再び3回洗浄して未結合の二次結合体を除去した。ウエル内に測定可能な色を発現させるため、洗浄した後に、100μLのTMB(TMBリキッドサブストレート、シグマ社)、HRPに対する基質を添加し、室温にて振とうしつつ10分間インキュベートする間に発色させた。発色のためのインキュベーション後、50μLの停止溶液(di H2O中にフッ化ナトリウムを溶解した1.5%溶液)を各ウエルに添加して、該発色を停止させ、また振とうして10秒後に、650nmにおける吸光度を測定した(モレキュラーデバイスズプレートリーダー(Molecular Devices Plate Reader))。ウエル中の抗体の量は、測定された吸光度に比例し、吸光度1.5をもたらす希釈率(力価)として表した。力価は、該測定された抗体の抗体希釈率の対数(x-軸)対650nmにおける吸光度(y-軸)のグラフを描写し、その力価を吸光度1.5に外挿することにより決定した。この力価は、実施例10a及び10bに記載の間接的競合マイクロタイタープレートアッセイにおいて使用した抗体の濃度(希釈率)を決定した。
【0052】
実施例10a:ブスルファン誘導体7-BSA感作プレートを用いた、IC50及び交叉反応性を決定するための間接的競合マイクロタイタープレートイムノアッセイ手順
実施例8aで記載した、ブスルファン誘導体7-BSAで感作したマイクロタイタープレートを用いて、ブスルファン濃度を測定するためのELISA法を行った。ブスルファン、テトラメチレンスルホン、テトラヒドロチオフェン及びテトラヒドロチオフェン-3-オール1,1-ジオキシドを、0.01〜10,000ng/mLなる濃度範囲に渡り、PBS又は0.1%BSA及び0.01%チメロサールを含有するPBSで10倍希釈した。このアッセイは、測定すべき被検体50μLを、50μLの、実施例9において測定した力価まで希釈した抗体(実施例7で製造)と共にインキュベートすることにより行った。10分間のインキュベーション(室温、振とうしながら)中に、ウエル内のブスルファン結合体と溶液中の被検体に対する抗体結合性の競合が見られる。このインキュベーション後、該プレートのウエルを0.02M TRIS、0.9%NaCl、0.5%ツイーン(Tween)-80及び0.001%チメロサール(pH 7.8)で3回洗浄して、いかなる未結合の物質も除去した。該ウエル内の、ブスルファン-BSA結合体と結合したブスルファン抗体の量を検出するため、0.1%BSA、0.05%ANS、0.01%チメロサールを含むPBS中に、所定の特異的活性に希釈した(約1/2000)100μLの二次抗体、すなわちヤギ抗-マウス抗-グロブリン抗体-HRP酵素結合体(ジャクソンイムノリサーチ)を各ウエルに添加した。この二次抗体はネズミの免疫グロブリンと特異的に結合することができ、また基質と共にインキュベートした場合には、着色された生成物を生成しうる。室温にて振とうしつつ10分間インキュベーション後(その間に該二次-HRP結合体は、該ウエル内のブスルファン抗体と結合する)、該プレートを再び3回洗浄して、未結合の二次結合体を除去した。該ウエル内に測定可能な色を発現させるため、洗浄した後に、100μLのTMB(TMBリキッドサブストレート、シグマ社)、HRPに対する基質を添加し、室温にて振とうしつつ10分間インキュベートする間に発色させた。発色のためのインキュベーション後、50μLの停止溶液(di H2O中にフッ化ナトリウムを溶解した1.5%溶液)を各ウエルに添加して、該発色を停止させ、また振とうして10秒後に、650nmにおける吸光度を測定した(モレキュラーデバイスズプレートリーダー)。ウエル中の抗体の量は、測定された吸光度に比例し、かつサンプル中のブスルファンの量に反比例した。被検体を含むウエル中の色の吸光度を、被検体を含まないウエルのそれと比較して、標準曲線を作成した。与えられた被検体に関するIC50値を、被検体を含まないウエルに関する吸光度の50%相当を阻害するに要する、該被検体の濃度として定義した。所定の被検体の交叉反応性は、百分率で表された、ブスルファンに関するIC50値対テトラメチレンスルホン、テトラヒドロチオフェン及びテトラヒドロチオフェン-3-オール-1,1-ジオキシドに関するIC50値の比として算出した。実施例3及び4の免疫原を用いて実施例7に従って製造した抗体について測定したところ、ブスルファンに対する、テトラメチレンスルホン、テトラヒドロチオフェン及びテトラヒドロチオフェン-3-オール-1,1-ジオキシドに関する%交叉反応性は、5%未満であった。結果は、以下の表1に示す通りである。
【0053】
実施例10b:ブスルファン誘導体11-BSA感作プレートを用いた、IC50及び交叉反応性を決定するための間接的競合マイクロタイタープレートイムノアッセイ手順
実施例8bで記載した、ブスルファン誘導体11-BSAで感作したマイクロタイタープレートを用いて、ブスルファン濃度を測定するためのELISA法を行った。ブスルファン、テトラメチレンスルホン、テトラヒドロチオフェン及びテトラヒドロチオフェン-3-オール1,1-ジオキシドを、0.01〜100,000ng/mLなる濃度範囲に渡り、PBS又は0.1%BSA及び0.01%チメロサールを含有するPBSで10倍希釈した。このアッセイは、測定すべき被検体50μLを、50μLの、実施例9において測定した力価まで希釈した抗体(実施例7で製造)と共にインキュベートすることにより行った。10分間のインキュベーション(室温、振とうしながら)中に、ウエル内のブスルファン結合体と溶液中の被検体に対する抗体結合性の競合が見られる。このインキュベーション後、該プレートのウエルを0.02M TRIS、0.9%NaCl、0.5%ツイーン(Tween)-80及び0.001%チメロサール(pH 7.8)で3回洗浄して、いかなる未結合の物質も除去した。該ウエル内の、ブスルファン-BSA結合体と結合したブスルファン抗体の量を検出するため、0.1%BSA、0.05%ANS、0.01%チメロサールを含むPBS中に、所定の特異的活性に希釈した(約1/2000)100μLの二次抗体、すなわちヤギ抗-マウス抗-グロブリン抗体-HRP酵素結合体(ジャクソンイムノリサーチ)を各ウエルに添加した。この二次抗体はネズミの免疫グロブリンと特異的に結合することができ、また基質と共にインキュベートした場合には、着色された生成物を生成しうる。室温にて振とうしつつ10分間インキュベーション後(その間に該二次-HRP結合体は、該ウエル内のブスルファン抗体と結合する)、該プレートを再び3回洗浄して、未結合の二次結合体を除去した。該ウエル内に測定可能な色を発現させるため、洗浄した後に、100μLのTMB(TMBリキッドサブストレート、シグマ社)、HRPに対する基質を添加し、室温にて振とうしつつ10分間インキュベートする間に発色させた。発色のためのインキュベーション後、50μLの停止溶液(di H2O中にフッ化ナトリウムを溶解した1.5%溶液)を各ウエルに添加して、該発色を停止させ、また振とうして10秒後に、650nmにおける吸光度を測定した(モレキュラーデバイスズプレートリーダー)。ウエル中の抗体の量は、測定された吸光度に比例し、かつサンプル中のブスルファンの量に反比例した。被検体を含むウエル中の色の吸光度を、被検体を含まないウエルのそれと比較して、標準曲線を作成した。与えられた被検体に関するIC50値を、被検体を含まないウエルに関する吸光度の50%相当を阻害するに要する、該被検体の濃度として定義した。所定の被検体の交叉反応性は、百分率で表された、ブスルファンに関するIC50値対テトラスルホン、テトラチオフェン及びテトラヒドロチオフェン-3-オール-1,1-ジオキシドに関するIC50値の比として算出した。実施例7において、実施例3及び4の免疫原を用いて製造した抗体について測定したところ、ブスルファンに対する、テトラメチレンスルホン、テトラヒドロチオフェン及びテトラヒドロチオフェン-3-オール-1,1-ジオキシドに関する%交叉反応性は、5%未満であった。結果は、以下の表1に示す通りである。


【0054】
表1:ブスルファン-KLH(実施例7)とプレート被覆ブスルファン-BSA結合体(実施例5、誘導体7及び実施例6、誘導体11)に対する抗体を用いた、競合イムノアッセイの交叉反応性


【0055】
上記表から分かるように、本発明の抗体は、ブスルファンの阻止性代謝産物と反応しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のブスルファンを検出するためのイムノアッセイであって、
ブスルファンと選択的に反応し、かつテトラメチレンスルホン、テトラヒドロチオフェン及びテトラヒドロチオフェン-3-オール-1,1-ジオキシドと実質的に交叉反応しない抗体と、下式:
【化1】

(式中、Aは低級アルキレンであり、X'は官能性結合基であり、Yは有機スペーサ基であり、Xはポリアミンポリマーと結合できる末端官能基であり、p及びzは0〜1なる範囲の独立の整数である)で表される化合物、
又は下式:
【化2】

(式中、A'は低級アルキレン又は低級アルケニレンであり、X'、Y、X及びzは上記の通り)で表される化合物、
又はこれらの混合物と担体の結合体とを含有するサンプルの混合物を供給し、
前記サンプル中の前記ブスルファン及び前記結合体を前記抗体と反応させ、かつその後に、前記混合物中の、前記抗体と結合しているか又は結合していない前記結合体の量を測定することによって、前記サンプル中のブスルファンの存在を決定できることを特徴とする前記イムノアッセイ。
【請求項2】
前記サンプルが、ヒトのサンプルである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記抗体が、下式:
【化3】

(式中、Aは低級アルキレンであり、X'は官能性結合基であり、Yは有機スペーサ基であり、Xはポリアミンポリマーと結合できる末端官能基であり、p及びzは0〜1なる範囲の独立の整数である)で表される化合物、
又は下式:
【化4】

(式中、A'は低級アルキレン又は低級アルケニレンであり、X'、Y、X、p及びzは上記の通り)で表される化合物、
又はこれらの混合物と結合した免疫原性ポリマーを含む免疫原から生成したものである、請求項2記載のイムノアッセイ。
【請求項4】
前記抗体又は結合体が固体支持体と結合している、請求項2記載のイムノアッセイ。
【請求項5】
前記固体支持体がマイクロタイタープレートである、請求項4記載のイムノアッセイ。
【請求項6】
前記固体支持体がナノ粒子である、請求項4記載のイムノアッセイ。
【請求項7】
前記化合物が、下式:
【化5】

(式中、A、X'、Y、X、p及びzは上記の通り)で表される化合物である、請求項1記載のイムノアッセイ。
【請求項8】
Xが、下式:
【化6】

で表される基であり、かつR3が水素原子であるか、又はこれが結合している酸素鎖と共に反応性エステルを形成している、請求項7記載のイムノアッセイ。
【請求項9】
Zが0であり、かつpが1である、請求項8記載のイムノアッセイ。
【請求項10】
Aが-(CH2)v-であり、かつvが1又は2である、請求項9記載のイムノアッセイ。
【請求項11】
vが2である、請求項10記載の免疫原。
【請求項12】
前記化合物が、下式:
【化7】

(式中、A'、X'、Y、X及びzは上記の通り)で表される化合物である、請求項1記載のイムノアッセイ。
【請求項13】
Xが、下式:
【化8】

で表される基であり、かつR3が水素原子であるか、又はこれが結合している酸素鎖と共に反応性エステルを形成している、請求項12記載のイムノアッセイ。
【請求項14】
Zが0であり、かつpが1である、請求項13記載のイムノアッセイ。
【請求項15】
A'が-CH=CH-である、請求項14記載のイムノアッセイ。
【請求項16】
ブスルファンと選択的に結合するが、テトラメチレンスルホン、テトラヒドロチオフェン及びテトラヒドロチオフェン-3-オール-1,1-ジオキシドとは実質的に結合しない抗体。
【請求項17】
前記抗体がマウス、ウサギ又はラット由来のものである、請求項16記載の抗体。
【請求項18】
前記抗体がモノクロナール抗体である、請求項16記載の抗体。
【請求項19】
前記抗体がモノクロナール抗体である、請求項17記載の抗体。
【請求項20】
前記抗体が、下式:
【化9】

(式中、Aは低級アルキレンであり、X'は官能性結合基であり、Yは有機スペーサ基であり、Xはポリアミンポリマーと結合できる末端官能基であり、p及びzは0〜1なる範囲の独立の整数である)で表される化合物、
及び下式:
【化10】

(式中、A'は低級アルキレン又は低級アルケニレンであり、X'、Y、X、p及びzは上記の通り)で表される化合物、
及びこれらの混合物から成る群より選択される化合物と、
ポリアミンポリマーとの免疫原から誘導したものである、請求項16記載の抗体。
【請求項21】
前記抗体がマウス、ウサギ又はラット由来のものである、請求項20記載の抗体。
【請求項22】
前記抗体がモノクロナール抗体である、請求項20記載の抗体。
【請求項23】
前記抗体がモノクロナール抗体である、請求項21記載の抗体。
【請求項24】
前記化合物が、下式:
【化11】

(式中、A、X'、Y、X、p及びzは上記の通り)で表される化合物である、請求項20記載の抗体。
【請求項25】
Xが、下式:
【化12】

で表される基であり、かつR3が水素原子であるか、又はこれが結合している酸素鎖と共に反応性エステルを形成している、請求項24記載の抗体。
【請求項26】
Zが0であり、かつpが1である、請求項25記載の抗体。
【請求項27】
Aが-(CH2)v-であり、かつvが1又は2である、請求項26記載の抗体。
【請求項28】
vが2である、請求項27記載の抗体。
【請求項29】
前記化合物が、下式:
【化13】

(式中、A'、X'、Y、X及びzは上記の通り)で表される化合物である、請求項20記載の抗体。
【請求項30】
Xが、下式:
【化14】

で表される基であり、かつR3が水素原子であるか、又はこれが結合している酸素鎖と共に反応性エステルを形成している、請求項29記載の抗体。
【請求項31】
下式:
【化15】

(式中、Aは低級アルキレンであり、X'は官能性結合基であり、Yは有機スペーサ基であり、Xはポリアミンポリマーと結合できる末端官能基であり、p及びzは0〜1なる範囲の独立の整数である)で表される化合物。
【請求項32】
Xが、下式:
【化16】

(式中、R3は水素原子であるか、又はこれが結合している酸素原子と共に反応性エステルを形成しており、かつR4は酸素又は硫黄原子である)で表される基である、請求項31記載の化合物。
【請求項33】
Xが、下式:
【化17】

で表される基であり、かつR3が水素原子である、請求項32記載の化合物。
【請求項34】
Xが、下式:
【化18】

で表される基であり、かつR3が反応性エステルを形成している、請求項33記載の化合物。
【請求項35】
形成されたエステルが、低級アルキルエステル、イミドエステル又はアミドエステルである、請求項34記載の化合物。
【請求項36】
Zが0であり、かつpが1である、請求項35記載の化合物。
【請求項37】
Aが-(CH2)v-であり、かつvが1又は2である、請求項36記載の化合物。
【請求項38】
vが2である、請求項37記載の化合物。
【請求項39】
下式:
【化19】

(式中、Aは低級アルキレン又は低級アルケニレンであり、X'は官能性結合基であり、Yは有機スペーサ基であり、Xはポリアミンポリマーと結合できる末端官能基であり、p及びzは0〜1なる範囲の独立の整数である)で表される化合物。
【請求項40】
Xが、下式:
【化20】

(式中、R3は水素原子であるか、又はこれが結合している酸素原子と共に反応性エステルを形成しており、かつR4は酸素又は硫黄原子である)で表される基である、請求項39記載の化合物。
【請求項41】
Xが、下式:
【化21】

で表される基であり、かつR3が水素原子である、請求項40記載の化合物。
【請求項42】
Xが、下式:
【化22】

で表される基であり、かつR3が反応性エステルを形成している、請求項40記載の化合物。
【請求項43】
前記形成されたエステルが、低級アルキルエステル、イミドエステル又はアミドエステルである、請求項42記載の化合物。
【請求項44】
Zが0であり、かつpが1である、請求項43記載の化合物。
【請求項45】
A'が-CH=CH-である、請求項44記載の化合物。
【請求項46】
下式II-A:
【化23】

(式中、Aは低級アルキレンであり、X'は官能性結合基であり、Yは有機スペーサ基であり、Xはポリアミンポリマーと結合できる末端官能基であり、p及びzは0〜1なる範囲の独立の整数である)で表される化合物、
又は下式:
【化24】

(式中、A'は低級アルキレン又は低級アルケニレンであり、X'、Y、X及びzは上記の通り)で表される化合物と担体との結合体。
【請求項47】
前記化合物が、下式:
【化25】

(式中、A、X'、Y、X、p及びzは上記の通り)で表される化合物である、請求項46記載の結合体。
【請求項48】
zが0である、請求項47記載の結合体。
【請求項49】
Xが、下式:
【化26】

(式中、R3は水素原子であるか、又はこれが結合している酸素原子と共に反応性エステルを形成しており、かつR4は酸素又は硫黄原子である)で表される基である、請求項48記載の結合体。
【請求項50】
前記担体が、下式:
【化27】

(式中、R4は酸素又は硫黄原子である)で表される基で連結されている1種以上のアミノ基を含む、請求項49記載の結合体。
【請求項51】
Aが-(CH2)v-であり、かつvが1〜3なる範囲の整数である、請求項50記載の結合体。
【請求項52】
vが2である、請求項51記載の結合体。
【請求項53】
前記化合物が、下式:
【化28】

(式中、A'、X'、Y、X及びzは上記の通り)で表される化合物である、請求項46記載の結合体。
【請求項54】
pが0である、請求項53記載の結合体。
【請求項55】
Xが、下式:
【化29】

(式中、R3は水素原子であるか、又はこれが結合している酸素原子と共に反応性エステルを形成しており、かつR4は酸素又は硫黄原子である)で表される基である、請求項54記載の結合体。
【請求項56】
Xが、下式:
【化30】

で表される基であり、かつR3が上記の通りである、請求項55記載の結合体。
【請求項57】
A'が-CH=CH-である、請求項56記載の結合体。
【請求項58】
下式:
【化31】

(式中、Aは低級アルキレンであり、X'は官能性結合基であり、Yは有機スペーサ基であり、Xはポリアミンポリマーと結合できる末端官能基であり、p及びzは0〜1なる範囲の独立の整数である)で表される化合物、
又は下式:
【化32】

(式中、A'は低級アルキレン又は低級アルケニレンであり、X'、Y、X及びzは上記の通り)で表される化合物と結合した免疫原性ポリアミンポリマーを含有する免疫原。
【請求項59】
前記免疫原性ポリマーが、下式:
【化33】

(式中、R4は酸素又は硫黄原子である)で表される基で連結されている1種以上のアミノ基を含む、請求項58記載の免疫原。
【請求項60】
前記化合物が、下式:
【化34】

(式中、A'、X'、Y、X及びzは上記の通り)で表される化合物である、請求項59記載の免疫原。
【請求項61】
pが0である、請求項60記載の免疫原。
【請求項62】
前記免疫原性ポリマーが、下式:
【化35】

(式中、R4は酸素又は硫黄原子である)で表される基で連結されている1種以上のアミノ基を含む、請求項61記載の免疫原。
【請求項63】
Aが-CH=CH-である、請求項62記載の免疫原。
【請求項64】
患者のサンプル中のブスルファンの存在を決定するためのキットであって、分離した容器内に試薬を含み、該試薬の一つが、担体と、下式:
【化36】

(式中、Aは低級アルキレンであり、X'は官能性結合基であり、Yは有機スペーサ基であり、Xはポリアミンポリマーと結合することのできる末端官能基であり、p及びzは0〜1なる範囲の独立の整数である)で表される化合物、
及び下式:
【化37】

(式中、A'は低級アルキル又は低級アルケニレンであり、X'、Y、X及びzは上記の通り)で表される化合物、
及びこれらの混合物から成る群より選択される化合物との結合体であり、かつ第二の容器が、ブスルファンと実質的選択的に反応性であるが、テトラメチレンスルホン、テトラヒドロチオフェン及びテトラヒドロチオフェン-3-オール-1,1-ジオキシドとは実質的に交叉反応性を示さない抗体を含むことを特徴とするキット。
【請求項65】
前記結合体が、前記第一の容器内に所定量で存在する、請求項64記載のキット。
【請求項66】
前記キットを用いて、前記サンプル中のブスルファンの量を決定する、請求項65記載のキット。

【公表番号】特表2008−513780(P2008−513780A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532431(P2007−532431)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/032789
【国際公開番号】WO2006/031912
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(507028181)サラダックス バイオメディカル インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】