説明

ブタの臨床症状の緩和のためのPCV2免疫原性組成物の使用

【課題】本発明は、様々な臨床徴候(疾患)の治療を目的とする、ブタシルコウイルス2型(PCV2)抗原を含む免疫原性組成物の使用に関する。
【解決手段】ブタシクロウイルス2型抗原をブタに投与することを含む、PCV2感染に付随する臨床症状の重篤度を軽減又は緩和し、動物のブタシルコウイルス総保持量を減少し、及び/又はブタシクロウイルス感染の免疫抑制作用をブタで軽減する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な臨床徴候(疾患)を治療するためにブタのシルコウイルス2型(PCV2)抗原を含む免疫原性組成物を使用することに関する。好ましくは、これら臨床徴候はPCV2感染に付随する。より具体的には、本発明は、PCV2感染に付随する臨床症状を緩和するか、又はその重篤度を低下させる免疫応答の提供に有効な免疫学的組成物に関する。好ましくは、前記免疫学的組成物は組換えにより生成されたPCV2抗原を含む。より好ましくは、前記PCV2抗原は、PCV2ゲノムのオープンリーディングフレーム(ORF)の1つによってコードされる組換え生成タンパク質である。さらに好ましくは、前記抗原はPCV2 ORF2タンパク質である。もっとも具体的には、本発明は、免疫学的組成物を投与されたブタでPCV2感染に付随する臨床症状の治療に有効な前記免疫学的組成物に関し、ここで前記組成物はPCV2のORF2によって発現されるタンパク質を含む。本発明の別の特徴は、本明細書で提供する組成物のいずれかを医薬として、好ましくは獣医薬として、より好ましくはワクチンとして使用することに関する。さらに本発明はまた、本明細書に記載の組成物のいずれかを、PCV2感染に付随する臨床症状を緩和させるか又はその重篤度を低下させる医薬の製造のために使用すること関する。好ましくは、前記医薬はPCV2感染、より好ましくはブタにおけるPCV2感染の予防用である。本発明のさらに別の特徴は、様々な臨床徴候の治療を目的とする免疫原性組成物を含む医薬の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブタシルコウイルス2型(PCV2)は、小さな(直径17−22nm)正二十面体のエンベロープをもたないDNAウイルスであり、一本鎖の環状ゲノムを含む。PCV2は、ブタシルコウイルス1型(PCV1)と約80%の配列同一性を共有する。しかしながら、PCV1(一般的に非病毒性である)とは対照的に、PCV2に感染したブタは、一般的に離乳後多器官系消耗症候群(PMWS)と称される症状を示す。PMWSは、臨床的には、るい痩、皮膚の蒼白、活力減退(unthriftiness)、呼吸窮迫、下痢、黄疸(icterus及びjaundice)を特徴とする。いくらかの罹患ブタでは、全ての症状の合併が明白であるが、一方、他のブタはこれら症状の1つ又は2つを有するのみである。剖検時には、顕微鏡的及び肉眼的病巣がまた多数の組織及び器官に出現し、類リンパ系器官が病巣の好発部位である。PCV2核酸又は抗原の量と顕微鏡的類リンパ系病巣の重篤度との間に強い相関性が観察された。PCV2感染ブタの死亡率は80%に達することがある。PMWSに加えて、PCV2は、仮性狂犬病、ブタ生殖器及び呼吸器系症候群(PRRS)、グラッサー病(Glasser's disease)、ストレプトコッカス性髄膜炎、サルモネラ症、離乳後大腸菌症、食餌性肝症、及び化膿性気管支肺炎を含む他のいくつかの感染を併発する。しかしながらこれまでの研究では、これらの臨床的症状のいずれが実際のところPCV2感染の直接的帰結であるのかは確認されていない。さらにまた、PCV2に対して活性を示す薬剤によってこれら臨床症状のいずれが効果的に軽減されうるかは未だ判明していない。
PCV2感染を治療する従来のアプローチには、DNA系ワクチン(例えば米国特許6,703,023号に記載されたようなもの)が含まれる。しかしながら、そのようなワクチンは、PCV2感染に対する防御免疫の付与、又はPCV2感染に付随する臨床症状の重篤度の軽減、緩和、又は前記の治癒には有効ではなかった。さらにまた、従来技術に記載されたワクチンはもっぱらブタのPCV2感染の予防にのみ重点を置くが、前記以外の医薬的使用は考慮していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許6,703,023号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、当分野で希求されることは、いくつかの臨床徴候の治療を目的とする免疫原性組成物である。さらに当分野で希求されることは、PCV2感染に対する防御免疫を付与するが、さらにまたPCV2感染に付随する現時点で存在する症状の治療にも用いることができる免疫原性組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の開示
本発明は従来技術に固有の問題を克服し、当技術の現状に明確な進歩を提供する。本発明は、PCV2抗原を含む免疫原性組成物の医薬的使用を提供する。
一般的に、副作用又は注射部位反応は、本明細書で使用されるPCV2抗原免疫原性組成物のいずれについてもまったく認められなかった。したがって、本明細書で用いられる免疫原性組成物は、若いブタ、好ましくは15週齢未満、より好ましくは6週齢未満、さらに好ましくは3週齢未満、もっとも好ましくは2週齢未満のブタに投与されるときに安全であると思われる。また別には、本発明の免疫原性組成物の投与は、病毒性PCVへの暴露の少なくとも2週間以内、好ましくは少なくとも3週間以内に行われることが好ましい。さらに別の実施態様にしたがえば、本明細書に記載のいずれの医薬的使用に用いられる本明細書の免疫原性組成物も、3週齢以上、好ましくは2週齢以上、もっとも好ましくは15週齢を超えないブタに投与される。
予期しえなかったことであるが、下記に記載する免疫原性組成物の治療的使用は、ブタで種々の臨床症状の重篤度を緩和するために有効であることが見出された。特に、本発明の免疫原性組成物、特にPCV2 ORF2抗原を含む組成物の治療的使用は、PCV2感染ブタのリンパ節腫脹症、リンパ球減少(lymphoid depletion)及び/又は多核/巨大組織球の軽減又は緩和に有効であることが見出された。さらにまた、本明細書で提供する、PCV2抗原(好ましくはORF2抗原)を含む抗原性組成物の治療的使用は、総シルコウイルス保持量及びその免疫抑制的影響を軽減し、それによってより高レベルの総合的疾患抵抗性並びにPCV2関連疾患及び症状の発生の低下をもたらす。
【0006】
したがって、本発明のある特徴は、PCV2抗原、好ましくは組換えPCV2抗原、より好ましくは本明細書で提供するPCV2 ORF2タンパク質を含む免疫原性組成物を、ブタのリンパ節腫脹症、リンパ球減少及び/又は多核/巨大組織球の予防、緩和又は軽減用医薬を製造するための使用に関する。好ましくは、前記医薬は、ブタのPCV2感染に付随するリンパ節腫脹症、リンパ球減少及び/又は多核/巨大組織球の予防、緩和又は軽減に有効である。さらに好ましくは、前記医薬は、15週齢を超えない、より好ましくは6週齢を超えない、さらに好ましくは3週齢を超えない、もっとも好ましくは2週齢を超えないブタに投与されるとき、ブタのPCV2感染に付随するリンパ節腫脹症、リンパ球減少及び/又は多核/巨大組織球の予防、緩和又は軽減に有効である。また別には、本発明の免疫原性組成物の投与は、病毒性PCVへの暴露の少なくとも2週間以内、好ましくは少なくとも3週間以内に行われることが好ましい。
本発明の別の特徴は、本明細書で提供する免疫原性組成物をブタに投与することを含む、ブタのリンパ節腫脹症、リンパ球減少及び/又は多核/巨大組織球の治療のための方法に関し、前記免疫原性組成物は、PCV2抗原、好ましくは組換えPCV2抗原、より好ましくはPCV2 ORF2タンパク質を含む。さらに別の特徴では、本発明は、本明細書で提供する免疫原性組成物をブタに投与することを含む、ブタのPCV2感染に付随するリンパ節腫脹症、リンパ球減少及び/又は多核/巨大組織球を治療する方法に関し、前記免疫原性組成物は、PCV2抗原、好ましくは組換えPCV2抗原、より好ましくはPCV2 ORF2タンパク質を含む。好ましくは、前記治療は、前記免疫原性組成物を投与されたブタでリンパ節腫脹症、リンパ球減少及び/又は多核/巨大組織球の緩和、軽減、予防及び/又は治癒をもたらす。更なる特徴にしたがえば、前記治療方法はさらに、15週齢を超えない、より好ましくは6週齢を超えない、さらに好ましくは3週齢を超えない、もっとも好ましくは2週齢を超えないブタに前記免疫原性組成物を投与することを含む。また別には、本発明の免疫原性組成物の投与は、病毒性PCVへの暴露の少なくとも2週間以内、好ましくは少なくとも3週間以内に行われることが好ましい。
【0007】
PCV2抗原、好ましくは組換えPCV2抗原、もっとも好ましくは本明細書で提供するPCV2 ORF2タンパク質を含む免疫原性組成物の治療的使用は、罹患ブタで以下の症状の1つ又は多数と一緒にリンパ節腫脹症を軽減又は緩和することができる:(1)小葉間浮腫を伴う間質性肺炎、(2)皮膚蒼白又は黄疸、(3)斑状萎縮肝(mottled atrophic liver)、(4)胃潰瘍、(5)腎炎及び(6)生殖障害、例えば流産、死産、ミイラ化胎児など。
したがって、本発明のある特徴は、PCV2抗原、好ましくは組換えPCV2抗原、より好ましくは本明細書で提供するPCV2 ORF2タンパク質を含む免疫原性組成物を、ブタで以下の症状の1つ又は多数と一緒にリンパ節腫脹症を予防、緩和及び/又は軽減する医薬の製造のために使用することに関する:(1)小葉間浮腫を伴う間質性肺炎、(2)皮膚蒼白又は黄疸、(3)斑状萎縮肝、(4)胃潰瘍、(5)腎炎及び(6)生殖障害、例えば流産、死産、ミイラ化胎児など。好ましくは、前記医薬は、ブタでPCV2感染に付随する以下の症状の1つ又は多数と一緒にリンパ節腫脹症を予防、緩和及び/又は軽減するために有効である:(1)小葉間浮腫を伴う間質性肺炎、(2)皮膚蒼白又は黄疸、(3)斑状萎縮肝、(4)胃潰瘍、(5)腎炎及び(6)生殖障害、例えば流産、死産、ミイラ化胎児など。更なる特徴にしたがえば、前記医薬は、15週齢を超えない、より好ましくは6週齢を超えない、さらに好ましくは3週齢を超えない、もっとも好ましくは2週齢を超えないブタに投与されるとき、ブタで以下の症状の1つ又は多数と一緒にリンパ節腫脹症を予防、緩和及び/又は軽減するために有効である:(1)小葉間浮腫を伴う間質性肺炎、(2)皮膚蒼白又は黄疸、(3)斑状萎縮肝、(4)胃潰瘍、(5)腎炎及び(6)生殖障害、例えば流産、死産、ミイラ化胎児など。また別には、本発明の免疫原性組成物の投与は、病毒性PCVへの暴露の少なくとも2週間以内、好ましくは少なくとも3週間以内に行われることが好ましい。
【0008】
さらにまた、本発明は、ブタで以下の症状の1つ又は多数と一緒にリンパ節腫脹症を治療する方法にも関する:(1)小葉間浮腫を伴う間質性肺炎、(2)皮膚蒼白又は黄疸、(3)斑状萎縮肝、(4)胃潰瘍、(5)腎炎及び(6)生殖障害、例えば流産、死産、ミイラ化胎児など。前記方法は、PCV2抗原、好ましくは組換えPCV2抗原、もっとも好ましくは本明細書で提供するPCV2 ORF2タンパク質を含む免疫原性組成物をブタに投与することを含む。好ましくは、本発明はまた、ブタでPCV2感染に付随する以下の症状の1つ又は多数と一緒にリンパ節腫脹症を治療する方法に関する:(1)小葉間浮腫を伴う間質性肺炎、(2)皮膚蒼白又は黄疸、(3)斑状萎縮肝、(4)胃潰瘍、(5)腎炎及び(6)生殖障害、例えば流産、死産、ミイラ化胎児など。前記方法は、PCV2抗原、好ましくは組換えPCV2抗原、もっとも好ましくは本明細書で提供するPCV2 ORF2タンパク質を含む免疫原性組成物をブタに投与することを含む。好ましくは、前記治療は、ブタでリンパ節腫脹症及びPCV2感染に付随する以下の症状の1つ又は多数の緩和又は軽減をもたらす:(1)小葉間浮腫を伴う間質性肺炎、(2)皮膚蒼白又は黄疸、(3)斑状萎縮肝、(4)胃潰瘍、(5)腎炎及び(6)生殖障害、例えば流産、死産、ミイラ化胎児など。更なる特徴にしたがえば、前記治療方法はさらに、PCV2抗原、好ましくは組換えPCV2抗原、より好ましくは本明細書で提供するPCV2 ORF2タンパク質を含む免疫原性組成物を、15週齢を超えない、より好ましくは6週齢を超えない、さらに好ましくは3週齢を超えない、もっとも好ましくは2週齢を超えないブタに投与することを含む。また別には、本発明の免疫原性組成物の投与は、病毒性PCVへの暴露の少なくとも2週間以内、好ましくは少なくとも3週間以内に行われることが好ましい。
【0009】
さらに、PCV2抗原、好ましくは組換えPCV2抗原、より好ましくは本明細書で提供するPCV2 ORF2タンパク質を含む免疫原性組成物の治療的使用はまた、ピア(Pia)様病巣(ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)感染に付随することが一般的に知られている)(回腸炎)を軽減又は緩和することができることもまた突然見出された。
したがって、本発明のある特徴は、PCV2抗原、好ましくは組換えPCV2抗原、より好ましくは本明細書で提供するPCV2 ORF2タンパク質を含む免疫原性組成物を、ピア様病巣(ローソニア・イントラセルラリス感染に付随することが一般的に知られている)の予防、その重篤度の緩和、及び/又は前記の軽減を目的とする医薬の製造のために使用することに関する。更なる特徴にしたがえば、前記医薬は、15週齢を超えない、より好ましくは6週齢を超えない、さらに好ましくは3週齢を超えない、もっとも好ましくは2週齢を超えないブタに投与されるとき、ピア様病巣(ローソニア・イントラセルラリス感染に付随することが一般的に知られている)の予防、その重篤度の緩和、及び/又は前記の軽減のために有効である。また別には、本発明の免疫原性組成物の投与は、病毒性PCVへの暴露の少なくとも2週間以内、好ましくは少なくとも3週間以内に行われることが好ましい。
さらに、本発明はまた、ピア様病巣(ローソニア・イントラセルラリス感染に付随することが一般的に知られている)を治療する方法に関し、前記方法は、PCV2抗原、好ましくは組換えPCV2抗原、もっとも好ましくは本明細書で提供するPCV2 ORF2タンパク質を含む免疫原性組成物をブタに投与することを含む。好ましくは、前記治療は、ピア様病巣(ローソニア・イントラセルラリス感染に付随することが一般的に知られている)の緩和又は軽減をもたらす。更なる特徴にしたがえば、上記に記載の治療方法はさらに、PCV2抗原、好ましくは組換えPCV2抗原、より好ましくは本明細書で提供するPCV2 ORF2タンパク質を含む免疫原性組成物を、15週齢を超えない、より好ましくは6週齢を超えない、さらに好ましくは3週齢を超えない、もっとも好ましくは2週齢を超えないブタに投与することを含む。また別には、本発明の免疫原性組成物の投与は、病毒性PCVへの暴露の少なくとも2週間以内、好ましくは少なくとも3週間以内に行われることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】PCV2 ORF2組換えバキュロウイルスの好ましい構築を示す工程図である。
【図2a】本発明にしたがって用いられる組成物の製造の仕方を示す工程図である。
【図2b】本発明にしたがって用いられる組成物の製造の仕方を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
免疫原性組成物
本明細書で用いられる免疫原性組成物は、PCV2に対する免疫応答の誘発並びにPCV2感染に付随する臨床症状の予防、軽減及び/又はその重篤度の緩和に有効である。
別に規定されないかぎり、本明細書で用いられる全ての技術的及び学術的用語は、本発明が属する分野の業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。本明細書で用いられる“免疫原性組成物”という用語はPCV2抗原を含む任意の医薬組成物を指す。前記組成物は、PCV2感染に付随する疾患又は症状を対象者で予防又は治療するために用いることができる。好ましい免疫原性組成物は、PCV2に対する免疫応答を誘発、刺激又は強化することができる。したがって、前記用語は、下記に記載するサブユニット免疫原性組成物及び殺滅又は弱毒及び/又は不活化全PCV2を含む組成物の両方を包含する。
本明細書で用いられる“サブユニット免疫原性組成物”という用語は、PCV2由来抗原、又はPCV2由来抗原と同種の少なくとも1つの免疫原性ポリペプチド又は抗原を含むが、全ての抗原は含まない組成物を指す。そのような組成物は完全なPCV2を実質的に含まない。したがって、“サブユニット免疫原性組成物”は、PCV2又はその組換え類似体に由来する、少なくとも部分的に精製された又は分画された(好ましくは実質的に精製された)免疫原性ポリペプチドから製造される。サブユニット免疫原性組成物は、PCV2に由来する他の抗原又はポリペプチドを実質的に含まないか又は分画された形態にある、問題の1つの又は複数のサブユニット抗原を含むことができる。好ましい免疫原性サブユニット組成物は、下記に記載するPCV2 ORF2タンパク質を含む。
組成物又はワクチンに対する“免疫学的応答又は免疫応答”は、宿主における問題の組成物又はワクチンに対する細胞性及び/又は抗体介在性免疫応答の発生である。通常は、“免疫応答”には以下の作用の1つ以上が含まれる(ただしこれらに限定されない):問題の組成物又はワクチンに含まれる抗原に特異的に導かれる抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、及び/又は細胞傷害性T細胞、及び/又はyd T細胞の産生又は活性化。好ましくは、新たな感染に対する耐性が強化されるか、及び/又は疾患の重篤度が軽減されるように、宿主は治療的な又は防御的な免疫学的応答を示すであろう。そのような防御は、上記に記載したPCV2感染に付随する症状の数若しくは重篤度の軽減、又はそれら症状の1つ以上の欠如によって示されるであろう。
【0012】
本明細書で用いられる“免疫原性”タンパク質若しくはポリペプチド又は“抗原”は、上記に記載の免疫学的応答を誘引するアミノ酸配列を指す。本明細書で用いられる“免疫原性”タンパク質又はポリペプチドには、任意のPCV2タンパク質、その類似体、又はその免疫原性フラグメントが含まれる。“免疫原性フラグメント”という用語は、1つ以上のエピトープを含み、したがって上記に記載の免疫学的応答を誘引するタンパク質のフラグメントを指す。そのようなフラグメントは、当分野で周知の任意のエピトープマッピング技術を用いて特定することができる。例えば以下の文献を参照されたい:Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, vol.66 (Glenn E. Morris, Ed., 1996) Humana Press, Totowa, New Jersey。例えば、直鎖状エピトープは、固相上で多数のペプチドを同時に合成し、前記ペプチドが前記固相になお結合している間に抗体と反応させることによって決定することができる。そのような技術は当分野で公知であり、さらに例えば以下の文献に記載されている:米国特許4,708,871号;Geysen et al. (1984) Proc Natl Acad Sci USA 81:3998-4002;Geysen et al. (1986) Molec Immunol 23:709-715。同様に、形状的エピトープも、アミノ酸の空間配座を例えばX-線結晶解析及び二次元核磁気共鳴により決定することによって容易に特定される。例えば上掲書(Epitope Mapping Protocol)を参照されたい。
合成抗原、例えばポリエピトープ、フランキングエピトープ及び他の組換え体又は合成により誘導された抗原もまた本定義内に含まれる。例えば以下を参照されたい:Bergmann et al. (1993) Eur J Immunol 23:2777-2781;Bergmann et al. (1996) J Immunol 157:3242-3249;A. Suhrbier (1997) Immunol and Cell Biol 75:402-408;Gardner et al. (1998) 12th World AIDS Conference, Geneva, Switzerland, June 28-July 3, 1998。
【0013】
本発明の好ましい実施態様では、PCV2感染の臨床徴候に対して免疫応答を誘発する、より好ましくは防御免疫を付与する免疫原性組成物が提供される。前記組成物は、もっとも好ましくは、その抗原性成分として、PCV2のORF2によって発現されるポリペプチド又はそのフラグメントを含む。前記組成物の製造のために、さらに本明細書で提供する方法において本明細書で用いられるPCV2 ORF2 DNA及びタンパク質は、PCV2単離株内で高度に保存されたドメインであり、したがっていずれのPCV2 ORF2も本明細書で用いられるPCV2 ORF2 DNA及び/又はポリペプチドの供給源として有効であろう。好ましいPCV2 ORF2タンパク質は配列番号:11のタンパク質である。好ましいPCV2 ORF2ポリペプチドは配列番号:5として本明細書で提供されるが、この配列の配列相同性は6−10%変動し、それでもなお免疫原性組成物として前記を有用にさせる抗原性の特徴を維持しえることは当業者には理解されよう。免疫原性組成物の抗原性の特徴は、例えば実施例4で提供するチャレンジ実験によって概算することができる。さらにまた、配列番号:3又は配列番号:4のポリヌクレオチド配列によってコードされるPCV2 ORF2タンパク質と比較した場合に、その防御免疫の少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは90%を改変抗原が付与するときには、改変抗原の抗原性の特徴はなお維持されてある。本明細書で用いられる“免疫原性組成物”は、PCV2 ORF2タンパク質に対して細胞性及び/又は抗体介在性免疫応答の“免疫学的応答”を宿主で誘引するPCV2 ORF2タンパク質を指す。好ましくは、この免疫原性組成物はPCV2に対して免疫応答を誘引するか又は強化し、それによってPCV2感染に対する防御免疫及びPCV2に付随する臨床症状の1つ以上、好ましくは全ての発生の軽減又は前記の重篤度の軽減又は前記の予防を付与することができる。
【0014】
いくつかの形態では、PCV2 ORF2タンパク質の免疫原性部分が前記組成物の抗原性成分として用いられる。本明細書で用いられる“免疫原性部分”は、それぞれPCV2 ORF2タンパク質及び/又はポリヌクレオチドの切端及び/又は置換形又はフラグメントを指す。好ましくは、そのような切端及び/又は置換形又はフラグメントは、完全長ORF2ポリペプチド由来の少なくとも6つの連続するアミノ酸を含むであろう。より好ましくは、前記切端若しくは置換形又はフラグメントは、完全長ORF2ポリペプチドに由来する少なくとも10、より好ましくは少なくとも15、さらに好ましくは少なくとも19の連続するアミノ酸を有するであろう。これに関して2つの好ましい配列は配列番号:9及び10として本明細書では提供される。そのような配列はより大きなフラグメント又は切端形の部分であってもよいこともまた理解されよう。
本明細書で用いられるさらに好ましいPCV2 ORF2ポリペプチドは、配列番号:3又は配列番号:4のヌクレオチド配列によってコードされる。しかしながら、この配列の配列相同性は6−20%変動し、それでもなお免疫原性組成物として前記を有用にさせる抗原性特徴を維持しえることは当業者には理解されよう。いくつかの形態では、このPCV2 ORF2ポリペプチドの切端若しくは置換形又はフラグメントは前記組成物の抗原性成分として用いられる。好ましくは、そのような切端若しくは置換形又はフラグメントは、完全長ORF2ヌクレオチド配列、例えば配列番号:3又は配列番号:4由来の少なくとも18の連続するヌクレオチドを含むであろう。より好ましくは、前記切端若しくは置換形又はフラグメントは、完全長ORF2ヌクレオチド配列、例えば配列番号:3又は配列番号:4の少なくとも30、より好ましくは少なくとも45、さらに好ましくは少なくとも57の連続するヌクレオチドを有するであろう。
【0015】
当分野で知られている“配列同一性”は、2つ以上のポリペプチド配列又は2つ以上のポリヌクレオチド配列、すなわち参照配列と前記参照配列と比較される或る配列との間の関係を指す。配列同一性は、最高度の配列類似性(前記配列の鎖間のマッチによって決定される)が得られるように配列を最適にアラインメントさせた後、前記或る配列を参照配列と比較することによって決定される。そのようなアラインメントの実施時には、配列同一性は位置毎に確認される。例えば配列は、個々の位置において、ヌクレオチド又はアミノ酸残基が当該位置において同一であるならば“同一”である。続いてそのような位置同一の総数を参照配列中のヌクレオチド又は残基の総数で割って%配列同一性が得られる。配列同一性は、以下(ただしこれらに限定されない)に記載されている方法を含む公知の方法によって容易に算出することができる:Computational Molecular Biology, A.N. Lask ed., Oxford University Press, New York (1988);Biocomputing: Informatics and Genome Projects, D.W. Smith ed., Academic Press, New York (1993);Computer Analysis of Sequence Data, Part I, A.M. Griffin and H.G. Griffin eds., Humana Press, New Jersey (1994);Sequence Analysis in Molecular Biology, von G. Heinge, Academic Press (1987);Sequence Analysis Primer, M. Gribskov and J. Devereux eds., M. Stockton Press, New York (1991);及びH. Carillo and D. Lipman, SIAM J Applied Math, 48:1073, 1988(前記の教示内容は参照により本明細書に含まれる)。配列同一性を決定する好ましい方法は、調査される配列間で最高のマッチが得られるように設計される。配列同一性を決定する方法は、或る配列間の配列同一性を決定する公開コンピュータープログラムで集大成されている。そのようなプログラムの例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):GCGプログラムパッケージ(J. Devereux et al. Nucleic Acids Research, 1984, 12(1):387)、BLASTP、BLASTN及びFASTA(S.F. Altschul et al., J Molec Biol 1990, 215:403-410)。BLASTXプログラムはNCBI及び他のソースから公開されている:BLAST Manual, S. Altschul et al. NCVI NLM NIH Bethesda, MD 20894;S.F. Altschul et al. J Molec Biol 1990, 215:403-410(前記文献の教示内容は参照により本明細書に含まれる)。これらのプログラムは、或る配列と参照配列間で最高レベルの配列同一性が得られるように、場合によってデフォルトギャップウェート値を用いて配列をアラインメントさせる。例示として、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも例えば85%、好ましくは90%、さらに好ましくは95%の“配列同一性”を有するヌクレオチド配列をもつポリヌクレオチドとは、或るポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列の100ヌクレオチド毎に15まで、好ましくは10まで、より好ましくは5つまでの点変異を含みえることを除いて、前記或るポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は参照配列と同一であることを意味する。換言すれば、参照ヌクレオチド配列に対して、少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%の同一性を有するポリヌクレオチドでは、参照配列中のヌクレオチドの15%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%までが欠失しているか若しくは別のヌクレオチドで置き換えられえるか、又は参照配列中の全ヌクレオチドの15%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%までの数のヌクレオチドが参照配列に挿入される。参照配列のこれらの変異は、参照ヌクレオチド配列の5'若しくは3'末端の位置に又は前記末端位置との間の任意の位置に、参照配列中のヌクレオチド中に個々に分散して又は参照配列内の1つ以上の連続する群として存在しえる。同様に、参照アミノ酸配列に対して例えば少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%の同一性を有する或るアミノ酸配列をもつポリペプチドとは、前記ポリペプチドの前記或るアミノ酸配列が、参照アミノ酸配列の100アミノ酸毎に15まで、好ましくは10まで、より好ましくは5つまでのアミノ酸変異を含みえることを除いて前記参照配列と同一であることを意味する。換言すれば、参照アミノ酸配列と少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%の配列同一性を有する或るポリペプチドを得るために、参照配列中のアミノ酸残基の15%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%までが欠失若しくは別のヌクレオチドで置換されるか、又は参照配列中のアミノ酸残基総数の15%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%までの数のアミノ酸が参照配列中に挿入される。参照配列のこれらの変異は、参照アミノ酸配列のアミノ若しくはカルボキシ末端の位置に又は前記末端位置との間の任意の位置に、参照配列中の残基中に個々に分散して又は参照配列内の1つ以上の連続する群として存在しえる。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸残基による相違である。しかしながら、保存的置換は、配列同一性を決定するときにはマッチには含まれない。
【0016】
本明細書で用いられる“配列相同性”は、2つの配列の関連性を決定する方法についていう。配列相同性を決定するために、2つ以上の配列が最適にアラインメントされ、必要な場合にはギャップが導入される。しかしながら、“配列同一性”とは対照的に、保存的アミノ酸置換は、配列相同性を決定するときにはマッチとして数えられる。換言すれば、参照配列と95%の配列相同性を有するポリペプチド又はポリヌクレオチドを得るために、参照配列中のアミノ酸残基又はヌクレオチドの85%、好ましくは90%、より好ましくは95%がマッチするか、又は別のアミノ酸若しくはヌクレオチドによる保存的置換を含む必要があり、又は、参照配列中の全アミノ酸残基若しくはヌクレオチドの15%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%までの数のアミノ酸若しくはヌクレオチド(保存的置換は含まれない)が参照配列に挿入される。好ましくは、相同な配列は、少なくとも50、好ましくは100、より好ましくは250、さらに好ましくは500ヌクレオチドの一続きを含む。
“保存的置換”は、全体的な機能性を著名には変化させない、類似の特徴又は特性(サイズ、疎水性などを含む)を有する別のアミノ酸残基又はヌクレオチドによるアミノ酸残基又はヌクレオチドの置換を指す。
“単離された”とは、“人工的に”その天然の状態から変更されることを意味する。すなわちそれが天然に存在する場合には、前記はその本来の環境を変更されてあるか、又は本来の環境から移動されてあること又はその両方を意味する。例えば生きている生物内に自然の状態で存在するポリヌクレオチド又はポリペプチドは“単離されて”いないが、その天然の状態で一緒に存在する物質から分離された同じポリヌクレオチド又はポリペプチドは、この用語が本明細書で用いられるように“単離されて”いる。
【0017】
したがって、本明細書で用いられる免疫原性組成物はまた、PCV2 ORF2タンパク質を含む組成物を指し、この場合、前記PCV2 ORF2タンパク質は上記に記載のいずれかである。
好ましくは、前記PCV2 ORF2タンパク質は以下のものである:
i)配列番号:5、配列番号:6、配列番号:9、配列番号:10又は配列番号:11の配列を含むポリペプチド;
ii)項目i)のポリペプチドと少なくとも80%相同な任意のポリペプチド;
iii)項目i)及び/又は項目ii)のポリペプチドの任意の免疫原性部分;
iv)配列番号:5、配列番号:6、配列番号:9、配列番号:10又は配列番号:11の配列に含まれる少なくとも10の連続するアミノ酸を含む、項目iii)の免疫原性部分;
v)配列番号:3又は配列番号:4の配列を含むDNAによってコードされるポリペプチド;
vi)項目v)のポリヌクレオチドと少なくとも80%相同なポリヌクレオチドによってコードされる任意のポリペプチド;
vii)項目v)及び/又は項目vi)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの任意の免疫原性部分;
viii)項目vii)の免疫原性部分、ここで前記免疫原性部分をコー用量るポリヌクレオチドは、配列番号:3又は配列番号:4の配列に含まれる少なくとも30の連続するヌクレオチドを含む。
好ましくは、前記免疫原性部分のいずれも、配列番号:3又は配列番号:4の配列によってコードされるPCV2 ORF2タンパク質の免疫原性の特徴を有するであろう。
【0018】
さらに別の特徴にしたがえば、PCV2 ORF2タンパク質は、所望の免疫応答の誘発(すなわちPCV2感染から生じる1つ以上の臨床徴候の発生の軽減又は前記の重篤度の緩和)に有効な抗原含有レベルで免疫原性組成物において提供される。好ましくは、PCV2 ORF2タンパク質の含有レベルは、最終免疫原性組成物の1mL当たり少なくとも0.2μg抗原(μg/mL)、より好ましくは約0.2から約400μg/mL、さらに好ましくは約0.3から約200μg/mL、さらに好ましくは約0.35から約100μg/mL、さらに好ましくは約0.4から約50μg/mL、さらに好ましくは約0.45から約30μg/mL、さらに好ましくは約0.6から約15μg/mL、さらに好ましくは約0.75から約8μg/mL、さらに好ましくは約1.0から約6μg/mL、さらに好ましくは約1.3から約3.0μg/mL、さらに好ましくは約1.4から約2.5μg/mL、さらに好ましくは約1.5から約2.0μg/mL、及びもっとも好ましくは約1.6μg/mLである。
さらに別の特徴にしたがえば、ORF2抗原含有レベルは、最終抗原組成物の1用量当たり上記に記載のPCV2 ORF2タンパク質の少なくとも0.2μg(μg/用量)、より好ましくは約0.2から約400μg/用量、より好ましくは約0.3から約200μg/用量、より好ましくは約0.35から約100μg/用量、より好ましくは約0.4から約50μg/用量、より好ましくは約0.45から約30μg/用量、より好ましくは約0.6から約15μg/用量、より好ましくは約0.75から約8μg/用量、より好ましくは約1.0から約6μg/用量、より好ましくは約1.3から約3.0μg/用量、より好ましくは約1.4から約2.5g/用量、より好ましくは約1.5から約2.0μg/用量、及びもっとも好ましくは約1.6μg/用量である。
【0019】
本発明にしたがって免疫原性組成物で用いられるPCV2 ORF2ポリペプチドは、PCV2 ORF2の単離及び精製の方法論、標準的タンパク質合成の方法論、及び組換え方法論を含む任意の態様で誘導することができる。PCV2 ORF2ポリペプチドを取得する好ましい方法は米国特許出願11/034,797号において提供され、前記文献の教示及び内容は参照により本明細書に含まれる。略記すれば、感受性細胞をPCV2 ORF2 DNAコード配列を含む組換えウイルスベクターに感染させ、PCV2 ORF2ポリペプチドを前記組換えウイルスによって発現させ、前記発現されたPCV2 ORFポリペプチドをろ過によって上清から回収し、任意の通常の方法によって、好ましくは二元エチレンイミンを用いて不活化する(続いてエチレンイミンを中和して不活化プロセスを停止させる)。
本明細書で用いられる免疫原性組成物はまた以下を含む組成物を指す:i)好ましくは上記に記載の濃度の、上記記載のPCV2 ORF2タンパク質のいずれか、及びii)前記PCV2 ORFタンパク質を発現するウイルスベクター、好ましくは組換えバキュロウイルスの少なくとも一部分。さらにまた前記免疫原性組成物は、i)好ましくは上記に記載の濃度の、上記記載のPCV2 ORF2タンパク質のいずれか、ii)前記PCV2 ORFタンパク質を発現するウイルスベクター、好ましくは組換えバキュロウイルスの少なくとも一部分、及びiii)細胞培養上清の一部分を含む。
本明細書で用いられる免疫原性組成物はまた以下を含む組成物を指す:i)好ましくは上記に記載の濃度の、上記記載のPCV2 ORF2タンパク質のいずれか、ii)前記PCV2 ORF2タンパク質を発現するウイルスベクター、好ましくは組換えバキュロウイルスの少なくとも一部分、及びiii)細胞培養の一部分(ここで前記成分の約90%は1μmより小さいサイズを有する)。
本明細書で用いられる免疫原性組成物はまた以下を含む組成物を指す:i)好ましくは上記に記載の濃度の、上記記載のPCV2 ORF2タンパク質のいずれか、ii)前記PCV2 ORF2タンパク質を発現するウイルスベクターの少なくとも一部分、iii)細胞培養の一部分、及びiv)組換えウイルスベクターを不活化する不活化薬剤、好ましくはBEI(ここでi)からiii)の成分の約90%は1μmより小さいサイズを有する)。好ましくは、BEIはバキュロウイルスの不活化に有効な濃度で存在する。有効な濃度は上記に記載されている。
本明細書で用いられる免疫原性組成物は以下を含む組成物を指す:i)好ましくは上記に記載の濃度の、上記記載のPCV2 ORF2タンパク質のいずれか、ii)前記PCV2 ORFタンパク質を発現するウイルスベクターの少なくとも一部分、iii)細胞培養の一部分、iv)組換えウイルスベクターを不活化する不活化薬剤、好ましくはBEI、及びv)前記不活化薬剤によって仲介された不活化を停止させる中和剤(ここでi)からiii)の成分の約90%は1μmより小さいサイズを有する)。好ましくは、前記不活化薬剤がBEIならば、前記組成物は、BEIに対して等価の量のチオ硫酸ナトリウムを含む。
前記ポリペプチドは、PCV2感染に感受性を有する動物に投与することができる組成物に取り込まれる。好ましい形態では、前記組成物はまた、当業者に公知の追加成分を含むことができる(以下の文献もまた参照されたい:Remington's Pharmaceutical Sciences (1990) 18th ed. Mack Publ. Easton)。さらにまた、前記組成物は獣医学的に許容される1つ以上の担体を含むことができる。本明細書で用いられる、“獣医学的に許容される担体”には任意の全ての溶媒、分散媒体、コーティング、アジュバント、安定化剤、稀釈剤、保存料、抗菌及び抗カビ剤、等張剤、吸着延長剤などが含まれる。好ましい実施態様では、前記免疫原性組成物は、本明細書で提供するPCV2 ORF2タンパク質を、好ましくは上記に記載の濃度で含み、前記はアジュバント(好ましくはカルボポール(Carbopol))及び生理学的食塩水とともに混合される。
【0020】
本明細書で用いられる組成物は、公知の注射可能な生理学的に許容できる無菌的溶液を含むことができることは当業者には理解されよう。非経口注射又は輸液用即席溶液の製造のためには、等張水溶液(例えば食塩水又は対応する血漿タンパク質溶液)が容易に入手できる。さらにまた、本発明の免疫原性及びワクチン組成物は、稀釈剤、等張剤、安定化剤又はアジュバントを含むことができる。稀釈剤には水、食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールなどが含まれえる。等張剤には、とりわけ塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、及びラクトースが含まれえる。安定化剤には、とりわけアルブミン及びエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩が含まれる。
本明細書で用いられる“アジュバント”には、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウム、サポニン、例えばQuil A、QS-21(Cambridge Biotech Inc., Cambridge MA)、GPI-0100(Galenica Pharmaceuticals, Inc., Birmingham, AL)、油中水エマルジョン、水中油エマルジョン、水中油中水エマルジョンが含まれえる。前記エマルジョンは、軽液体パラフィン油系(European Pharmacopeaタイプ);イソプレノイド油、例えばアルケン、特にイソブテン又はデセンのオリゴマー化から生じたスクァラン又はスクァレン;直鎖アルキル基を含む酸又はアルコールのエステル、より具体的には植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ-(カプリレート/カプレート)、グリセリル-(カプリレート/カプレート)、又はウロピレングリコールジオレエート;分枝脂肪酸又はアルコールのエステル、特にイソステアリン酸エステルが含まれえる。油を乳化剤と一緒に用いてエマルジョンを生成する。乳化剤は、好ましくは非イオン性界面活性剤、特にソルビタンのエステル、マンニドのエステル(例えばアンヒドロマンニトールオレエート)、グリセロールのエステル、ポリグリセロールのエステル、プロピレングリコールのエステル、及びオレイン酸、イソステアリン酸、リシノレン酸又はヒドロキシステアリン酸のエステル(前記は場合によってエトキシル化される)、並びにポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック、特にプルロニック社(Pluronic)の製品、特にL121である(以下を参照されたい:Hunter et al. The Theory and Practical Application of Adjuvants (Ed. D.E.S. Stewart-Tull), John Wiley and Sons, NY, pp51-94 (1995);及びTodd et al. 1997, Vaccine 15:564-570)。
【0021】
例えば、以下の文献(”Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach”, Ed. By M. Powell and M. Newman, Plenum Press, 1995)の147ページに記載されたSPTエマルジョン、及び同書の183ページに記載されたエマルジョンMF59を用いることができる。
アジュバントのさらに別の例は、アクリル酸又はメタクリル酸のポリマー、並びに無水マレイン酸及びアルケニル誘導体のコポリマーから選択される化合物である。有利なアジュバント化合物はアクリル酸又はメタクリル酸のポリマーであり、それらは特に糖又はポリアルコールのポリアルケニルエーテルで架橋される。これらの化合物はカルボマーという名で知られている(Pharmeuropa Vol.8, No.2, 1996年6月)。当業者はまた米国特許2,909,462号を参照することができる。前記特許は、少なくとも3つ(好ましくは8つを超えない)のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシル化化合物(少なくとも3つのヒドロキシルの水素原子は、少なくとも2つの炭素原子を有する不飽和脂肪族ラジカルによって置換されている)で架橋されたそのようなアクリル系ポリマーについて記載している。好ましいラジカルは2から4つの炭素原子を含むもの、例えばビニル、アリル、及び他のエチレン系不飽和基である。前記不飽和ラジカルはそれ自体他の置換基、例えばメチルを含んでいてもよい。カルボポール(カルボポール)(BF Goodrich, Ohio, USA)の名称で販売されている製品が特に適切である。それらはアリルシュクロース又はアリルペンタエリトリトールで架橋される。とりわけ、カルボポール974P、934P及び971Pと称されるものがある。もっとも好ましいものはカルボポール、特にカルボポール971Pの約500μgから約5mg/用量の量での使用、もっとも好ましくは約1mg/用量の量での使用である。
さらに適切なアジュバントには、多くの物の中でとりわけRIBIアジュバント系(RIBI Inc.)。ブロックコポリマー(CytRx, Atlanta GA)、SAF-M(Chiron, Emeryville CA)、モノホスホリル脂質A、アヴィリジン(Avridine)脂質-アミンアジュバント、大腸菌の易熱性内毒素(組換え型又は他のもの)、コレラ毒素、IMS 1314、又はムラミルジペプチドが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
好ましくは、アジュバントは、約100μgから約10mg/用量の量で添加される。より好ましくは、アジュバントは、約100μgから約10mg/用量の量で添加される。より好ましくは、アジュバントは、約500μgから約5mg/用量の量で添加される。さらに好ましくは、アジュバントは、約750μgから約2.5mg/用量の量で添加される。もっとも好ましくは、アジュバントは、約1mg/用量の量で添加される。
さらにまた、前記組成物は1つ以上の医薬的に許容される担体を含むことができる。本明細書で用いられる、“医薬的に許容される担体”には任意の全ての溶媒、分散媒体、コーティング、安定化剤、稀釈剤、保存料、抗菌及び抗カビ剤、等張剤、吸着延長剤などが含まれる。もっとも好ましくは、本明細書で提供する組成物は、in vitro培養細胞の上清から回収されたPCV2 ORF2タンパク質を含み、この場合、前記細胞は、PCV2 ORF2 DNAを含みPCV2 ORF2タンパク質を発現する組換えウイルスベクターで感染されてあり、さらにこの場合、前記細胞培養は約2から約8mMのBEIで、好ましくは約5mMのBEIで処理されてウイルスベクターが不活化され、さらに等価濃度の中和剤、好ましくは約2から約8mM、好ましくは約5mMの最終濃度にチオ硫酸ナトリウム溶液で処理された。
【0022】
本発明はまた以下を含む免疫原性組成物に関する:i)好ましくは上記に記載の濃度の、上記記載のPCV2 ORF2タンパク質のいずれか、ii)前記PCV2 ORF2タンパク質を発現するウイルスベクターの少なくとも一部分、iii)細胞培養の一部分、iv)組換えウイルスベクターを不活化する不活化薬剤、好ましくはBEI、v)前記不活化薬剤によって仲介された不活化を停止させる中和剤、好ましくはBEIに対して等価の量のチオ硫酸ナトリウム、及びvi)適切なアジュバント、好ましくは上記記載の量のカルボポール971(ここでi)からiii)の成分の約90%は1μmより小さいサイズを有する)。さらに別の特徴にしたがえば、この免疫原性組成物はさらに医薬的に許容される塩、好ましくは生理学的に許容できる濃度のリン酸塩を含む。好ましくは、前記免疫原性組成物のpHは生理学的pH(約6.5から7.5の間を意味する)に調節される。
本明細書で用いられる免疫原性組成物は、1mLにつき以下を含む組成物を指す:i)少なくとも1.6μgの上記に記載のPCV2 ORF2タンパク質、ii)前記PCV2 ORF2タンパク質を発現するバキュロウイルスの少なくとも一部分、iii)細胞培養の一部分、iv)約2から8mMのBEI、v)BEIに対して等価量のチオ硫酸ナトリウム、及びvi)約1mgのカルボポール971、及びvii)生理学的に許容できる濃度のリン酸塩(ここでi)からiii)の成分の約90%は1μmより小さいサイズを有し、さらに前記免疫原性組成物のpHは約6.5から7.5に調節される)。
前記免疫原性組成物はさらに1つ以上の他の免疫調節薬剤、例えばインターロイキン、インターフェロン又は他のサイトカインを含むことができる。免疫原性組成物はまたゲンタマイシン及びマーチオレートを含むことができる。本発明の関係で有用なアジュバント及び添加物の量及び濃度は当業者には容易に決定することができるが、本発明は、本ワクチン組成物の1mL用量当たり約50μgから約2000μg、好ましくは約250μgのアジュバントを含む組成物を意図する。したがって、本明細書で用いられる免疫原性組成物は、約1μg/mLから約60μg/mLの抗生物質、より好ましくは約30μg/mL未満の抗生物質を含むワクチン組成物を指す。
本明細書で用いられる免疫原性組成物はまた以下を含む組成物を指す:i)好ましくは上記に記載の濃度の、上記記載のPCV2 ORF2タンパク質のいずれか、ii)前記PCV2 ORF2タンパク質を発現するウイルスベクターの少なくとも一部分、iii)細胞培養の一部分、iv)組換えウイルスベクターを不活化する不活化薬剤、好ましくはBEI、及びv)前記不活化薬剤によって仲介された不活化を停止させる中和剤、好ましくはBEIに対し等価量のチオ硫酸ナトリウム、vi)上記記載の量の適切なアジュバント、好ましくはカルボポール971、vii)医薬的に許容される濃度の緩衝食塩水、好ましくはリン酸塩の緩衝食塩水、及びviii)抗微生物学的活性を有する薬剤(ここでi)からiii)の成分の約90%は1μmより小さいサイズを有する)。
驚くべきことに、PCV2 ORF2タンパク質を含む免疫原性組成物は24ヶ月にわたって極めて安定であることが判明した。さらにまた、前記免疫原性組成物は、PCV2感染に付随する臨床症状の軽減に非常に有効であることが見出された。さらにまた、上記に記載の組換えバキュロウイルス発現PCV2 ORF2タンパク質を含む免疫原性組成物は、不活化形の全PCV2ウイルス又は単離PCV2 ORF2抗原を含む免疫原性組成物よりも驚くほど有効であることが見出された。特に、驚くべきことに、組換えバキュロウイルス発現PCV2 ORF2タンパク質は非常に低い濃度(0.25μg/用量までの濃度を意味する)で有効であることが見出された。PCV2 ORF2タンパク質のこの予期せぬ高い免疫原性潜在能力はカルボポールによって増強される。実施例1から3では、PCV2 ORF2含有免疫原性組成物の製造が詳細に開示される。
本明細書で用いられる免疫原性組成物はまた以下を指す:Ingelvac(商標) CircoFLEXTM(Boehringer Ingelheim Vetmedica Inc. St Joseph, MO, USA)、CircoVac(商標)(Merial SAS, Lyon, France)、CircoVent(Intervet Inc. Millsboro, DE, USA)又はSuvaxyn PCV-2 One Dose(商標)(Fort Dodhe Animal Health, Kansas City, KA, USA)。
【0023】
免疫原性組成物の投与
本発明の組成物は、表皮内、気管内、又は膣内に適用することができる。好ましくは、前記組成物は筋肉内又は鼻内に、もっとも好ましくは筋肉内に適用することができる。動物体では上記に記載の医薬組成物を静脈内注射によって、又は標的組織に直接注射することによって適用することが有利であることを証明することができる。全身投与のためには、静脈内、血管内、筋肉内、鼻内、動脈内、腹腔内、経口、又は気管内ルートが好ましい。より局所的な適用は、皮下、表皮内、皮内、心臓内、肺葉内(intralobal)、髄内、肺内に、又は治療するべき組織(結合組織、骨組織、筋肉組織、神経組織、上皮組織)に直接若しくはその近くで実施することができる。所望される治療期間及び効果に応じて、本発明の組成物は1回又は数回、さらにまた間歇的に、例えば1日単位で数日間、数週間又は数ヶ月、さらに種々の用量で投与することができる。
好ましくは、上記に記載の免疫原性組成物の少なくとも1用量が、その必要がある対象動物の筋肉内に投与される。さらに別の特徴にしたがえば、PCV2抗原又は上記に記載のいずれかのPCV2抗原を含む免疫原性組成物は、1用量当たり1mLで処方され投与される。したがって、さらに別の特徴にしたがえば、本発明はまた、PCV2感染ブタでリンパ節腫脹症、リンパ球減少及び/又は多核/巨大組織球の軽減又は緩和を目的とする、本明細書に記載のPCV2抗原を含む、1mL免疫原性組成物に関する。
さらに別の特徴にしたがえば、本発明はまた、以下の症状の1つ又は多数が合併したリンパ節腫脹症をブタで軽減又は緩和することを目的とする、本明細書に記載のPCV2抗原を含む、1mL免疫原性組成物に関する:(1)小葉間浮腫を伴う間質性肺炎、(2)皮膚蒼白又は黄疸、(3)斑状萎縮肝(mottled atrophic liver)、(4)胃潰瘍、(5)腎炎及び(6)生殖器異常(例えば流産、死産、ミイラ胎児)。
【0024】
さらに別の特徴にしたがえば、上記に記載の免疫原性組成物の少なくとも1用量のさらにもう1回の投与が、その必要がある対称動物で実施される。この場合、2回目の、又はその後の任意の投与は、最初の投与又は任意の以前の投与から少なくとも14日を過ぎて実施される。好ましくは、前記免疫原性組成物は免疫刺激物質とともに投与される。好ましくは、前記免疫刺激物質は少なくとも2回投与される。前記免疫刺激物質の第1回目と第2回目の投与の間又はその後の任意の投与との間に、好ましくは少なくとも3日、より好ましくは少なくとも5日、さらに好ましくは少なくとも7日を置く。好ましくは、前記免疫刺激物質は、本明細書で提供する免疫原性組成物の最初の投与から少なくとも10日、好ましくは15日、より好ましくは20日、さらに好ましくは少なくとも22日経て投与される。好ましい免疫刺激物質は、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(好ましくはフロイントの不完全なジュバントで乳化される(KLH/ICFA))である。しかしながら、当業者に知られている他のいずれの免疫刺激物質もまた用いることができることは理解されよう。本明細書で用いられる“免疫刺激物質”という用語は、好ましくは特異的な免疫応答(例えば特定の病原体に対する免疫応答)を開始又は高めることなく、免疫応答を惹起することができる任意の物質又は組成物を意味する。前記免疫刺激物質を適切な用量で投与することがさらに指示される。
さらにまた、驚くべきことに、本明細書で用いられる免疫原性組成物、好ましくは組換えバキュロウイルス発現PCV2 ORF2タンパク質を含む免疫原性組成物、より好ましくはカルボポールと組み合わされた免疫原性組成物の免疫原性潜在能力は、IngelVac PRRS MLVワクチン(実施例5参照)の投与によってさらに増強されることが見出された。PCV2の臨床徴候及び症状は、PRRS感染が存在するときは極めて重篤化する。しかしながら、本明細書で提供する本免疫原性組成物及びワクチン接種による対策は、予想を超えて前記の影響を大きく軽減した。換言すれば、予想に反する相乗作用が、動物(好ましくは仔豚)を本明細書で提供する任意のPCV2 ORF2免疫原性組成物及びIngelvac PRRS MLVワクチン(Boehringer Ingelheim)で処置したときに観察された。
【0025】
好ましい実施態様の詳細な説明
以下の実施例は本発明の好ましい材料及び方法を示す。本明細書に記載されるものと類似するか又は等価の材料及び方法も本発明の実施又は試験に用いることができるが、好ましい方法、装置及び材料をこれから説明する。しかしながら、これらの実施例は単に例示として提供され、いずれも本発明の全体的な範囲を制限するものと解されるべきではないことは理解されよう。
【実施例1】
【0026】
本実施例では、本発明の方法を用いたORF2の相対的収量が従来技術で知られている方法と比較される。4本の1000mLスピンナーフラスコの各々に300mLの昆虫無血清培養液(Excell 420(JRH Biosciences, INc。、Lenexa, KS))中の約1.0x106/mLのSF+細胞を播種した。マスター細胞培養は、SF+(Spodoptera frugiperda)マスター細胞ストック、19継代、Lot#N112-095Wと認定される。SF+マスター細胞ストックを作成するために用いる細胞はProtein Sciences Corporation, Inc.(Meriden, CT)から入手した。この実施例のためのSF+細胞株は19継代から59継代の間に限定した。他の継代も本発明の目的に有用であろうが、大規模製造のために本プロセスをスケールアップするためには少なくとも19継代がおそらく必要であり、さらに59代を超える継代は発現に影響を及ぼすかもしれない(ただしこれは精査したわけではない)。さらに詳しく述べれば、液体窒素保存由来の最初のSF+細胞培養を、無菌的スピンナーフラスコで定常的に攪拌しながらEXcell 420培養液で懸濁増殖させた。培養は、25から150mLのExcell 420無血清培養液を用い100mLから250mLのスピンナーフラスコで増殖させた。前記細胞が1.0−8.0x106細胞/mLの細胞密度に増加したとき、それらを0.5−1.5x106細胞/mLの播種密度で新しい容器に分割した。その後の拡張培養は、36リットルの規模までスピンナーフラスコで、又は300リットルまでステンレススチールのバイオリアクターで2−7日間、25−29℃で増殖させた。
播種後、フラスコを27℃で4時間インキュベートした。続いて、PCV2 ORF2遺伝子(配列番号:4)を含む組換えバキュロウイルスを各フラスコに播種した。PCV2 ORF2遺伝子を含む組換えバキュロウイルスは以下のとおり作成した:PCV2北アメリカ株由来のPCV2 ORF2遺伝子を、5'コザク配列(配列番号:1)及び3' Eco RI部位(配列番号:2)を含むように増幅し、pGEM-T-Easyベクター(Promega, Madison, WI)にてクローニングした。続いて、前記を切り出し、さらにトランスファーベクターpVL1392(BD Biosciences Pharmingen, San Diego, CA)にてサブクローニングした。前記サブクローニング部分は本明細書では配列番号:7として提示されている。PCV2 ORF2遺伝子を含むpVL1392プラスミドをN47-064Yと称し、前記を続いてBaculoGold(商標)(BD Biosciences Pharmingen)バキュロウイルスDNAとともにSf+昆虫細胞(Protein Sciences, Meriden, CT)に同時トランスフェクトし、PCV2 ORF2遺伝子を含む組換えバキュロウイルスを生成した。前記新規な構築物は本明細書では配列番号:8として提供される。PCV2 ORF2遺伝子を含む組換えバキュロウイルスをプラーク精製し、マスターシードウイルス(MSV)はSF+細胞株で増殖させ、小分けして-70℃で保存した。MSVはバキュロウイルス特異的プライマーを用いてPCR-RFLPによって明確にPCV2 ORF2と確認された。MSV又は作業用シードウイルスを作成するためにPCV2 ORF2バキュロウイルスを感染させた昆虫細胞は、ポリクローナル血清又はモノクローナル抗体によって間接蛍光抗体アッセイで検出したときPCV2 ORF2抗原を発現する。さらにまた、PCV2 ORF2バキュロウイルスの実体はN-末端アミノ酸配列決定によって確認した。PCV2 ORF2バキュロウイルスMSVはまた、9C.F.R. 113.27(c)、113.28及び113.55にしたがって純度について検査した。スピンナーフラスコに播種した各組換えバキュロウイルスは種々の感染多重度(MOI)を有していた。フラスコ1には7.52mLで0.088MOIのシードを播種し、フラスコ2には3.0mLで0.36MOIのシードを播種し、フラスコ3には1.5mLで0.18MOIのシードを播種し、さらにフラスコ4には0.75mLで0.09MOIのシードを播種した。PCV2 ORF2組換えバキュロウイルスを構築するために用いた基本的工程を示す工程図は、本明細書で図1として提供されている。
バキュロウイルスを播種した後、続いてフラスコを27±2℃で7日間インキュベートし、その間同様に100rpmで攪拌した。フラスコには通気キャップを用いて空気を流通させた。次の7日間各フラスコのサンプルを24時間毎に採取した。採取後、各サンプルを遠心し、ペレットと上清の両方を分離し、0.45−1.0μmのポアサイズのマイクロフィルターメンブレンに通した。
【0027】
得られたサンプルに存在するORF2の量をELISAアッセイにより定量した。ELISAアッセイは、0.05Mの炭酸緩衝液(pH9.6)で1:6000に稀釈した捕捉抗体、プロテインG精製ブタ抗PCV2 Pab IgG(PBSで1:250に稀釈)を用いて実施した。100μLの抗体をマイクロタイタープレートのウェルに入れ、密閉し、さらに37℃で一晩インキュベートした。続いて前記プレートを洗浄溶液(Sigma, St. Louis, MO)で3回洗浄した。前記洗浄溶液は以下を含んでいた:0.5mLのトゥイーン20(Sigma, St. Louis, MO)、100mLの10x D-PBS(Gibco Invitrogen, Carlsbad, CA)及び899.5mLの蒸留水。続いて250μLのブロッキング溶液(10mLのD-PBS中の5gのカーネーション脱脂粉乳(Nestle, Glendale, CA)に蒸留水を加えて100mLとする)を各ウェルに添加した。次の工程でテストプレートを洗浄し、続いて前稀釈抗原を添加した。前記の前稀釈抗原は200μLの稀釈溶液(999.5mLのD-PBS中に0.5mLのトゥイーン20)を稀釈プレートの各ウェルに添加することによって作成された。続いて前記サンプルを1:240及び1:480比で稀釈し、これら稀釈サンプルの各々の100μLを稀釈プレートの最上段のウェルの1つに添加した(すなわち最上段の1つのウェルは1:240稀釈の100μLを受け取り、他方は1:480希釈の100μLを受け取った)。続いて、前記プレートの連続する各ウェルから100μLを取り出し次のウェルに移すことによって、連続稀釈をプレートの残りのウェルについて実施した。次に移す前に各ウェルを混合した。テストプレートの洗浄は、洗浄緩衝液による3回のプレート洗浄を含んでいた。続いてプレートを密閉し、37℃で1時間インキュベートしてから洗浄溶液でさらに3回洗浄した。使用した検出抗体はPCV2 ORF2に対するモノクローナル抗体であった。前記を稀釈溶液で1:300に稀釈し、稀釈した前記検出抗体の100μLをウェルに添加した。続いてプレートを密閉し37℃で1時間インキュベートしてから洗浄溶液で3回洗浄した。続いて、正常ウサギ血清(Jackson Immunoresearch, West Grove, PA)を稀釈溶液に1%の濃度に添加することによってコンジュゲート稀釈液を調製した。コンジュゲート抗体、ヤギ抗マウス(H+1)-HRP(Jackson Immunoresearch)を前記コンジュゲート希釈液で1:10,000に稀釈した。続いて、この稀釈したコンジュゲート抗体の100μLをウェルの各々に添加した。続いてプレートを封入し、37℃で45分間インキュベートしてから洗浄緩衝液で3回洗浄した。100μLの基質(TMB Peroxidase Substrate, Kirkgaard and Perry Laboratories (KPL), Gaithersberg, MD)(前記は同体積のペルオキシダーゼ基質B(KPL)と混合された)をウェルの各々に添加した。前記プレートを室温で15分インキュベートした。続いて100μLのHCL溶液(1N)をウェルの全てに添加して反応を停止させた。その後このプレートをELISAリーダーで読み取った。このアッセイの結果は下記の表1に提供されている。
【0028】
表1:

【0029】
これらの結果は、インキュベーション時間が長くなるとき、遠心した細胞及び培養液の上清へのORF2の発現は、遠心した細胞及び培養液のペレット中の発現よりも大きいことを示している。したがって、5日未満発現を進行させて細胞からORF2を回収するよりも、少なくとも5日間ORF2発現を進行させて上清中のORF2を回収することによって、従来方法を凌駕するORF2収量の大きな増加及び顕著な改善が提供される。
【実施例2】
【0030】
本実施例は本明細書で主張する発明の有効性に関するデータを提供する。1000mLのスピンナーフラスコに300mLのExcell 420培養液中の約1.0x106 Sf+細胞/mLを播種した。続いてこのフラスコを27℃でインキュベートし100rpmで攪拌した。24時間のインキュベーション後に、前記フラスコに10mLのPVC2 ORF2/Bac p+6ウイルス(Sf9昆虫細胞でさらに6回継代したPCV2 ORF2遺伝子を含む組換えバキュロウイルス)を0.1MOIで播種した。
続いてこのフラスコを合計6日間27℃でインキュベートした。インキュベーション後、フラスコを遠心し、得られた上清から3サンプルを採集して不活化した。上清はその温度を37±2℃にすることによって不活化した。第一のサンプルに対しては、2-ブロモエチレンアミンヒドロブロミドの0.4M溶液(前記は0.3NのNaOH中で0.2Mの二元エチレンイミン(BEI)に対して環化されてあった)を上清に添加し、BEIの最終濃度を5mMにした。第二のサンプルに対しては、10mMのBEIを上清に添加した。第三のサンプルに対しては上清にBEIを添加しなかった。続いてサンプルを持続的に48時間攪拌した。1.0Mのチオ硫酸ナトリウム溶液を最終最小濃度が5mMになるように添加して一切の残留BEIを中和した。続いて各サンプル中のORF2の量を、実施例1に記載したELISAアッセイと同じ方法を用いて定量した。
この結果は下記の表2で見ることができる。
【0031】
表2:

この実施例は、BEIによる中和によって組換えPCV2 ORF2タンパク生成物の顕著な量の除去又は分解は生じないことを示している。このことは、BEI又は上昇温度からは上清中のORF2の大きな損失は生じないという事実によって立証される。回収されたORF2は安定なタンパク生成物であることは当業者には理解されよう。
【実施例3】
【0032】
本実施例は、本発明は、組換えPCV2 ORF2の小規模生産から組換えPCV2 ORF2の大規模生産へとスケールアップ可能であることを示す。7000mLのExcell 420培養液中の5.0x105 SF+細胞/mLを20000mLのアプリコン(Applikon)バイオリアクターにプレートした。前記の培養液及び細胞を27℃でインキュベートしその後の68時間の間100RPMで攪拌した。68時間目に、41.3mLのPCV2 ORF2バキュロウイルスMSV+3を7000mLのExCell 420培養液に添加した。得られた混合物を続いて前記バイオリアクターに添加した。その後の7日間、前記混合物を27℃でインキュベートし100RPMで攪拌した。バイオリアクターからサンプルを感染後4日から始めて24時間毎に採取し、各サンプルを遠心した。サンプルの上清を保存し、ORF2の量をSDS-PAGEデンシトメトリーを用いて定量した。この結果は下記の表3で見ることができる。
【0033】
表3

【実施例4】
【0034】
本実施例は7つのPCV2候補ワクチンの有効性を試験し、さらにPCV2病毒株への暴露後の有効性パラメーターを規定する。帝王切開により得られた108匹の初乳枯渇(CDCD)仔豚(9−14日齢)を等しいサイズの9つの群に無作為化した。表4はこの実施例のための一般的な実験設計を示す
【0035】
表4:一般的実験設計

vORF2=単離したウイルスORF2;rORF2=組換えバキュロウイルスにより発現されたORF2;殺滅全細胞ウイルス=適切な細胞培養で増殖させたPCV2ウイルス
【0036】
前記群のうち7群(群1−7)はPCV2 ORF2ポリペプチドの投与を受け、前記群のうち1つはチャレンジコントロールとして機能してPCV2 ORF2を投与されず、さらにもう1つの群は完全陰性コントロール群として機能し、これもまたPCV2 ORF2を投与されなかった。0日目に群1から7は割り当てられたワクチンで処置された。群7の仔豚は14日目にブースター処置を与えられた。ワクチン接種後に副作用及び注射部位反応について仔豚を観察し、19日目に前記仔豚を第二の実験場所に移動させた。第二の実験場所では、群1−8を1つの建物内で群ごとに収容し、一方、群9は別の建物に収容した。全てのブタは、21日目及び27日目にキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)/フロイント不完全ジュバント(ICFA)を投与され、さらに24日目に群1−8は病毒性PCV2でチャレンジした。
チャレンジ前及びチャレンジ後に、血液サンプルをPCV2血清学のために採集した。チャレンジ後、平均一日体重増加(ADWG)を決定するための体重データ、臨床症状、及びPCV2の鼻内排出を決定するための鼻のスワブサンプルを採集した。49日目に、全ての生存ブタについて剖検を実施し、肺を病巣に関して採点し、後日の免疫化学的(IHC)検査のために選択した組織をホルマリンに保存した。
材料と方法
本実験は、CDCDブタ(実験0日目に9−14日齢)で実施された部分的盲検ワクチン接種-チャレンジフィージビリティー試験であった。この試験に含まれるためには、雌ブタのPCV2 IFA力価は1:1000以下であった。さらにまた、雌ブタの血清学的状態としてそれらはPRRS陰性と判明している群れ由来であった。28匹の雌ブタをPCV2血清学的状態について試験した。14匹の雌ブタが1000以下のPCV2力価を有し、第一の実験場所に移された。110匹の仔豚が帝王切開術によって分娩され、この実験の4日前に利用可能であった。実験3日前には、第一の場所の108匹のブタの体重を測定し、耳標識で特定し、重量で大まかに分け、さらに上記表4に示すように9群の1つに無作為化した。包含基準に適合する一切の被検動物がこの試験に登録され、さらに後で何らかの理由のために除外された場合には、実験者及び観察者は前記動物から採集したデータを最終分析において使用するか否かを決定するために協議した。登録ブタを除外した日付及び除外理由を書類に記載した。最初にはいずれの雌ブタも除外されなかった。利用可能な110匹のうち合計108匹を実験3日前に9群の1つに割り当てた。2匹のもっとも小さいブタ(No.17及び19)は1つの群に振り分け、必要な場合にエキストラとして利用可能であった。実験中に幾匹かの動物が除去された。1日前にブタNo.82(群9)、3日目にブタNo.56(群6)、4日目にブタNo.53(群9)、8日目にブタNo.28(群8)、7日目にブタNo.69(群8)及び9日目にブタNo.93(群4)はそれぞれチャレンジ前に死亡しているのが発見された。これらの6匹のブタは最終的な実験結果には含まれなかった。ブタNo.17(エキストラ豚の1匹)を群9に割り当てた。残りのエキストラ豚No.19は実験から除外した。
各群に投与した処方物は以下のとおりであった:群1は、16μg ORF2/mLを含むウイルスORF2(vORF2)の1mLを投与するために設計した。これは、10.24mLのウイルスORF2(265μg/25μg/mL=10.24mLのvORF2)を3.2mLの0.5%カルボポール及び2.56mLのリン酸緩衝食塩水(pH7.4)と混合することによって実施した。前記によって群1用の処方物16mLが得られた。群2は8μg vORF2/mLを含むvORF2の1mLを投与するために設計した。これは、5.12mLのvORF2(128μg/25μg/mL=5.12mLのvORF2)を3.2mLの0.5%カルボポール及び7.68mLのリン酸緩衝食塩水(pH7.4)と混合することによって実施した。前記によって群2用の処方物16mLが得られた。群3は4μg vORF2/mLを含むvORF2の1mLを投与するために設計した。これは、2.56mLのvORF2(64μg/25μg/mL=2.56mLのvORF2)を3.2mLの0.5%カルボポール及び10.24mLのリン酸緩衝食塩水(pH7.4)と混合することによって実施した。前記によって群3用の処方物16mLが得られた。群4は16μg rORF2/mLを含む組換えORF2(rORF2)の1mLを投与するために設計した。これは、2.23mLのrORF2(512μg/230μg/mL=2.23mLのrORF2)を6.4mLの0.5%カルボポール及び23.37mLのリン酸緩衝食塩水(pH7.4)と混合することによって実施した。前記によって群4用の処方物32mLが得られた。群5は8μg rORF2/mLを含むrORF2の1mLを投与するために設計した。これは、1.11mLのrORF2(256μg/230μg/mL=1.11mLのrORF2)を6.4mLの0.5%カルボポール及び24.49mLのリン酸緩衝食塩水(pH7.4)と混合することによって実施した。前記によって群5用の処方物32mLが得られた。群6は8μg rORF2/mLを含むrORF2の1mLを投与するために設計した。これは、0.56mLのrORF2(128μg/230μg/mL=0.56mLのrORF2)を6.4mLの0.5%カルボポール及び25.04mLのリン酸緩衝食塩水(pH7.4)と混合することによって実施した。前記によって群6用の処方物32mLが得られた。群7はMAX PCV2 KVを含むPCV2殺滅全細胞ワクチン(PCV2 KV)の2mLを投与するために設計した。これは、56mLのPCV2 KVを14mLの0.5%カルボポールと混合することによって実施した。前記によって群7用の処方物70mLが得られた。最後に群8は、2mL用量につき0.5μg/mL又は1.0μg/mLのKLHを投与するために設計した。これは、40.71mLのKLH(0.5μg/mLの7.0μgタンパク質/mL=570mL(7.0μg/mL)(x)=(0.5)(570mL))、244.29mLのリン酸緩衝食塩水(pH7.4)及び285mLのフロイントのアジュバントを混合することによって実施した。表5は本実施例の主要な調査活動についてのタイムフレームを示している。
【0037】
表5:調査活動

【0038】
本実験の生存期の終了後、ホルマリン固定組織を病理学者によるPCV2抗原の検出のために免疫組織化学検査によって調べ、血液サンプルはPCV2血清学的検査によって判定し、鼻のスワブサンプルはPCV2排出について判定し、平均1日当たり体重増加(ADWG)は24日目から49日目まで測定した。
動物は、誕生からほぼ11日齢(実験のほぼ0日目)まで、第一の実験場所で5つの部屋の個々のケージに収容した。それぞれの部屋はレイアウトが同一であり、加温されフィルターに通した空気が各単離ユニットに供給されている、積み重ねた個々のステンレススチールのケージから成っていた。それぞれの部屋は別々の加温換気を有し、したがって部屋間の空気の相互汚染は防止されている。第二の実験場所では、動物は2つの異なる建物に収容された。群9(完全陰性コントロール群)は改造した仕上げ肥育棟に離して収容し、群1−8は改造した哺育棟に収容した。各群は別々の囲いに収容し(11−12匹/囲い)、各囲いはブタ1匹当たり約3.0平方フィートを提供した。各囲いは、プラスチック製羽根板の床をもつ一段高いデッキ上にあった。囲い下のくぼみは排泄物及び廃液のための保持用タンクとして機能した。各棟はそれ自身の別個の加温及び換気システムを有し、建物間の空気の相互汚染の確率ははきわめて低かった。
第一の実験場所では、仔豚は特別処方比ミルクを誕生からほぼ3週齢まで与えられた。全てのブタは実験19日目(ほぼ4 1/2週齢)までは一定の特別混合比を消費した。第二の実験場所では、全ての仔豚は、それらの齢及び体重に適した通常の医薬品無添加の市販混合比を随意に与えられた。両実験場所では水もまた随意に利用可能であった。
全ての被検ブタは以下により処置された:実験2日前にビタミンE、実験1日前には鉄の注射、並びに実験16日目、17日目、18日目及び19日目にNAXCEL(商標)(交互のももの後部に1.0mL、筋肉内)。さらにまた、種々の健康上の理由のために、ブタNo.52(群9)には実験3日目に鉄の注射を処置し、ブタNo.45(群6)には実験11日目に鉄の注射を処置し、ブタNo.69(群8)には実験6日目にNAXCEL(商標)を処置し、ブタNo.74(群3)には実験14日目にデキサメタゾン及びペニシリンを処置し、さらにブタNo.51(群1)には実験13日目にデキサメタゾン及びペニシリン、並びに14日目にNAXCEL(商標)を処置した。
【0039】
両実験場所にいる間、ブタは獣医師の管理下にあった。動物の健康診断は0日目に実施され、健康診断書記録用紙に記録された。全ての動物は、0日目の観察によりワクチン接種前に良好な健康状態及び栄養状態にあった。全ての被検動物は、チャレンジ前に良好な健康状態及び栄養状態にあることが観察された。死骸及び組織は料金を支払って廃棄した。最終的な実験動物の処分は動物処分記録に記録された。
0日目に、群1−6に割り振られたブタは、無菌的な3.0mLのルアロック(Luer-lock)注射筒及び無菌的な20gx1/2インチ注射針を用い、それぞれ1.0mLのPCV2ワクチン1−6を左の首の領域の筋肉内に接種された。群7に割り振られたブタは、無菌的な3.0mLのルアロック注射筒及び無菌的な20gx1/2インチ注射針を用い、2.0mLのPCV2ワクチンNo.7を左の首の領域の筋肉内に接種された。14日目に、群7に割り振られたブタは、無菌的な3.0mLのルアロック注射筒及び無菌的な20gx1/2インチ注射針を用い、2.0mLのPCV2ワクチンNo.7を右の首の領域の筋肉内に接種された。
21日目に、全ての被検ブタは、無菌的な3.0mLのルアロック注射筒及び無菌的な20gx1/2インチ注射針を用い、2.0mLのKLH/ICFAを右のももの後部領域の筋肉内に接種された。27日目に、全ての被検ブタは、無菌的な3.0mLのルアロック注射筒及び無菌的な20gx1/2インチ注射針を用い、2.0mLのKLH/ICFAを左のももの後部領域の筋肉内に接種された。
24日目に、群1−8に割り振られたブタは、無菌的な3.0mLのルアロック注射筒及び無菌的な20gx1/2インチ注射針を用い、1.0mLのPCV2 ISUVDLチャレンジ材料(5.11 log10 TCID50/mL)を左の首の領域の筋肉内に接種された。同じ材料のさらに1.0mLが、無菌的な3.0mLのルアロック注射筒及び鼻用カニューレを用いて各ブタの鼻内に投与された(鼻孔当たり0.5mL)。
被検ブタは、全体的な健康状態及び副作用症状について実験4日前及び実験0日目から19日目まで毎日観察された。観察は臨床観察記録に記録された。全ての被検ブタは、注射部位反応について0日目から7日目まで観察され、群7はさらに14日目から21日目まで観察された。平均1日体重増加は、実験3日前、実験24日目及び49日目に、又はブタが死んでいるのを発見した日に、各ブタを目盛りつき天秤で測定することによって決定した。体重は、体重用紙に記録した。実験3日前の体重は、任意抽出前にブタを大まかに割り振る(block)ために利用した。24日目と49日目の体重データは、各ブタについてこれらの時点の間の平均1日体重増加(ADWG)の決定に利用した。チャレンジ後又は49日目の前に死亡したブタについては、ADWGは24日目から死亡日までのADWGを表すように調整した。
【0040】
PCV2の血清学を決定するために、実験3日前及び実験14日目に静脈性全血を各ブタの眼窩静脈洞から採集した。各ブタについて、血液は、無菌的キャピラリーチューブを一方の目のめがしらに挿入し、約3.0mLの全血を血清分離チューブ(SST)に引き入れることによって眼窩静脈洞から採集した。24日目、31日目及び49日目に、18gx1 1/2インチのヴァキュテイナー(Vacutainer)針(Becton Dickinson and Company, Franklin Lakes, New Jersey)、ヴァキュテイナー針ホルダー及び13mLのSSTを用いて、後大静脈から各ブタの静脈性全血を採集した。各時点の血液採集はサンプル採集記録に記録した。各SST内の血液を凝血させ、続いて各SSTを遠心して血清を採集した。採集血清は、無菌的な蓋付きチューブに移し、後日の検査まで-70±10℃で保存した。血清は、BIVI-R&Dの職員によってPCV2抗体の存在について試験された。
ブタは、20日目から49日目まで臨床症状について1日1回観察され、臨床観察は臨床観察記録に記録された。
PCV2の鼻内排出を試験するために、24日目、25日目及びその後49日目まで1日おきの奇数実験日に、無菌的ダクロンスワブを各ブタの左又は右の鼻孔にできるだけ無菌的に鼻内挿入し、数秒間ぐるりと回してから取り出した。続いて、各スワブを1.0mLのEMEM培養液(500ユニット/mLのペニシリン、500μg/mLのストレプトマイシン及び2.5μg/mLのファンギゾンを含む)を入れた1本の無菌的な蓋付きチューブに入れた。スワブをチューブ内で折り、前記蓋付きチューブを密閉し、動物番号、実験番号、採集日、実験日及び“鼻スワブ”と適切な付箋を付けた。密閉した蓋付きチューブを-40±10℃でBIVI-St. Josephへ輸送するまで一晩氷上で保存した。鼻スワブ収集物は、鼻スワブサンプル収集物用紙に記録した。BIVI-R&Dが鼻スワブサンプルによる定量的ウイルス単離(VI)試験を実施した。結果はlog 10値で表された。1.3 log以下の値は陰性とみなし、1.3 logより大きな値は陽性とみなした。
第一の実験場所で死亡したブタ(No.28、52、56、69、82及び93)は診断の確定に必要なレベルで剖検を実施した。肉眼病巣を記録し、これらのブタの組織は保存しなかった。第二の実験場所では、実験49日目までに死亡したブタ(No.45、23、58、35)、実験49日目に安楽死前に死亡が発見されたブタ(No.2、43)及び49日目に安楽死させたブタは剖検を実施した。全ての肉眼病巣を記録し、病巣をもつ肺葉を剖検記録用紙に記録した。
第二の実験場所で剖検を実施した103頭の各ブタから、扁桃、肺、心、肝、腸間膜リンパ節、腎及び鼠径部リンパ節の組織サンプルを、10%ホルマリン緩衝液を入れた1本の容器に入れ、一方、前述の同じ器官のまた別の組織サンプルをホァールパック(Whirl-pak)(M-Tech Diagnostics Ltd., Thelwall, UK)に入れ、各ホァールパックを氷上に置いた。各容器に適切な付箋を付けた。サンプル収集物は剖検記録用紙に記録した。その後、ホルマリン固定組織サンプル及び診断請求用紙をIHC検査のために提出した。IHC検査は、サンプルの受け取り、サンプルとスライドの調製、及び染色技術について標準的なISU実験室手順にしたがって実施された。ホァールパック中の新鮮組織は、保存(-70℃±10℃)及び将来の使用可能性のためにアイスパックとともに実験モニターに輸送した。ホルマリン固定組織は、IHCによるPCV2の検出のために病理専門家が精査し、以下のスコア系を用いて採点した:0=無し;1=わずかな部位に淡い陽性染色;2=多数の部位に中等度の陽性染色;3=組織全体に拡散した十分な陽性染色。病理専門家は鼠径部リンパ節と腸間膜リンパ節とを明確に識別することができなかったので、これらの組織についての結果は単にリンパ節として標識され、各動物のこれら2つの組織の各々に対する最高スコアをスコアとして標識した。
【0041】
結果
本実施例の結果は以下に提供される。群9の1匹のブタは0日前に死亡し、さらに5匹のブタ(群4から1匹、群6から1匹、群8から2匹、及び群9から1匹)がワクチン接種後に死亡したと記録されている。死後検査によって、6匹のいずれもワクチン接種又はPMWSには関連しない潜在的感染症のために死亡したことが示された。さらにまた、副作用又は注射部位反応はいずれの群でも記録されていない。
平均1日体重増加(ADWG)の結果は下記の表6に提供されている。群9(完全陰性コントロール群)は最高のADWG(1.06±0.17 lbs/日)を有し、群5(0.94±0.22 lbs/日)がこれに続いた(群5は8μgのrORF2の1用量を投与された)。群3(4μgのvORF2の1用量を投与された)はもっとも低いADWG(0.49±0.21 lbs/日)を示し、群7(0.50±0.15 lbs/日)がこれに続いた(群7は殺滅ワクチンの2用量を投与された)。
【0042】
表6:群の平均1日体重増加のまとめ

vORF2=単離したウイルスORF2;rORF2=組換えバキュロウイルスにより発現されたORF2;殺滅全細胞ウイルス=適切な細胞培養で増殖させたPCV2ウイルス
【0043】
PCV2血清学の結果は下記の表7に提供されている。9群の全てが実験3日前にはPCV2について血清陰性であった。実験14日目に、vORF2ワクチンを投与された群は最高の力価を示し、前記は187.5から529.2の範囲であった。殺滅ウイルスワクチンを投与されたブタは次に高い力価を示し、rORF2ワクチンを投与された群がその後に続いた。群8及び9は、この時点では血清陰性のままであった。24日目及び31日目に、vORF2ワクチンを投与されたブタは、強力な血清学的応答を示し続け、殺滅ウイルスワクチンの2用量を投与された群が接近して続いた。rORF2ワクチンを投与されたブタはよりゆっくりと血清学的に応答し、群8及び9は血清陰性を維持し続けた。49日目に、vORF2ワクチン、2用量の殺滅ウイルスワクチン及び最低用量のrORF2を投与されたブタは、もっとも強い血清学的応答を示した。16μg及び8μgのrORF2ワクチンを投与されたブタは、チャレンジコントロールよりもわずかに高いIFA力価を示した。49日目の群9はもっとも強い血清学的応答を示した。
【0044】
表7:群におけるPCV2 IFA力価のまとめ
平均IFA力価

vORF2=単離したウイルスORF2;rORF2=組換えバキュロウイルスにより発現されたORF2;殺滅全細胞ウイルス=適切な細胞培養で増殖させたPCV2ウイルス
*計算のために、≦100IFA力価を力価“50”と称し、≧6400IFA力価を力価“12,800”と称した。
**チャレンジの日
***剖検の日
【0045】
チャレンジ後の臨床観察の結果は下記の表8に提供されている。この結果の要旨には、異常行動、異常呼吸、咳及び下痢についての観察が含まれている。表9は群の全体的な臨床症状の発生率の要旨を含み、表10はチャレンジ後の群の死亡率の要旨から得られた結果を含む。本実験で観察されたもっとも一般的な臨床症状は異常行動であった。前記は軽度から重度の無気力として採点された。vORF2の低いほうの2種の用量を投与されたブタ、16μgのrORF2を投与されたブタ、及び2用量のKVワクチンを投与されたブタは27.3%以上の発生率を示した。8μgのrORF2を投与されたブタ及び完全な陰性コントロール群は異常行動を示さなかった。この実験のいずれのブタも異常呼吸を全く示さなかった。咳は全ての群でしばしばに認められ(0から25%)、下痢も同様であった(0−20%)。観察された臨床症状はいずれもPMWSに特有の症候ではなかった。
臨床症状の全体的な発生率は群間で変動した。いずれかのvORF2ワクチンを投与された群、16μgのrORF2を投与された群、2用量のKVワクチンを投与された群及びチャレンジコントロール群は最高の全体的臨床症状の発生率を示した(≧36.4%)。完全陰性コントロール群、8μgのrORF2を投与された群及び4μgのrORF2を投与された群は、それぞれ0%、8.3%及び9.1%の臨床症状発生率を示した。
全体的死亡率も同様に群間で変動した。2用量のKVワクチンを投与された群は最高の死亡率(16.7%)を示したが、4μgのvORF2、16μgのrORF2又は8μgのrORF2、及び完全陰性コントロール群はいずれも0%の死亡率を示した。
【0046】
表8:異常行動、異常呼吸、咳及び下痢についての群における観察のまとめ

vORF2=単離したウイルスORF2;rORF2=組換えバキュロウイルスにより発現されたORF2;殺滅全細胞ウイルス=適切な細胞培養で増殖させたPCV2ウイルス
1少なくとも1日の間何らかの異常行動を示した、各群のブタの総数
2少なくとも1日の間何らかの異常呼吸を示した、各群のブタの総数
3少なくとも1日の間咳を示した、各群のブタの総数
4少なくとも1日の間下痢を示した、各群のブタの総数
【0047】
表9:臨床症状の群における全体的発生率のまとめ

vORF2=単離したウイルスORF2;rORF2=組換えバキュロウイルスにより発現されたORF2;殺滅全細胞ウイルス=適切な細胞培養で増殖させたPCV2ウイルス
1少なくとも1日の間何らかの臨床症状を示した、各群のブタの総数
【0048】
表10:群におけるチャレンジ後の死亡率のまとめ

vORF2=単離したウイルスORF2;rORF2=組換えバキュロウイルスにより発現されたORF2;殺滅全細胞ウイルス=適切な細胞培養で増殖させたPCV2ウイルス
【0049】
PCV2の鼻内排出の結果は下記表11に提供されている。24日目のチャレンジ後に、群7の1匹のブタが27日目にPCV2を排出し始めた。他の群のいずれも33日目まで排出を示さなかった。鼻内排出塊は35日目から45日目まで観察された。3種のvORF2ワクチンのいずれかを投与された群及び4μg又は8μgのORF2のどちらかを投与された群は、PCV2の鼻内排出の最も低い発生率(≦9.1%)を示した。チャレンジコントロール群(群8)は最高の排出率(80%)を示し、完全陰性コントロール(群9)がこれに続いた(群9の発生率は63.6%であった)。
【0050】
表11:群におけるPCV2の鼻内排出発生率のまとめ

vORF2=単離したウイルスORF2;rORF2=組換えバキュロウイルスにより発現されたORF2;殺滅全細胞ウイルス=適切な細胞培養で増殖させたPCV2ウイルス
群における黄疸発生率、群における胃潰瘍の発生率、群における平均肺病巣スコア、及び群における肺病巣の発生率の要旨は下記表12に示されている。6匹のブタがワクチン接種後の実験期に第一の実験場所で死亡した(群4、N=1;群6、N=1;群8、N=2;群9、N=1)。6匹のブタのうち4匹が1つ以上の体腔に線維性病巣を有し、1匹のブタ(群6)はクロストリジウム症に一致する病巣を有し、さらに1匹のブタ(群9)には肉眼病巣はなかった。ワクチン接種後の実験期に死亡したブタのいずれにもPMWSと一致する病巣はなかった。
チャレンジ後に死亡したブタ及び実験49日目に安楽死させたブタで剖検を実施した。剖検では、いずれの群にも黄疸及び胃潰瘍は存在しなかった。肺病巣の平均%に関しては、群9は最も低い肺病巣平均%(0%)を有し、群1(0.40±0.50%)及び群5(0.68±1.15%)がこれに続いた。群2、3、7及び8は最も高い肺病巣平均%を有した(≧7.27%)。これら4群の各々は、%肺病巣が71.5%以上の1匹のブタを含み、前記がこれら4群の結果を歪めてより高くした。観察された肺病巣が0%の群9を例外として、残りの8つの群は36%以下の肺病巣を有していた。観察されたほとんど全ての肺病巣が赤色/紫色で硬化性であると記載されていた。
【0051】
表12:群における黄疸発生率、群における胃潰瘍の発生率、群における平均%肺病巣スコア、及び群における顕著な肺病巣の発生率のまとめ

vORF2=単離したウイルスORF2;rORF2=組換えバキュロウイルスにより発現されたORF2;殺滅全細胞ウイルス=適切な細胞培養で増殖させたPCV2ウイルス
群におけるIHC陽性発生率の結果の要旨は表13に示されている。群1(vORF2−16μg)及び群5(rORF2−8μg)は、最も低いIHC陽性率の結果を示した(16.7%)。群8(チャレンジコントロール)及び群9(完全陰性コントロール)は、それぞれ90%及び90.9%の最高IHC陽性率の結果を示した。
【0052】
表13:群におけるIHC陽性発生率のまとめ

vORF2=単離したウイルスORF2;rORF2=組換えバキュロウイルスにより発現されたORF2;殺滅全細胞ウイルス=適切な細胞培養で増殖させたPCV2ウイルス
【0053】
チャレンジ後、群5(8μgのrORF2抗原1用量を投与された)は他の6ワクチン群よりも優れていた。群5は、最高のADWG(0.94±0.22 lbs/日)、もっとも低い異常行動発生率(0%)、2番目に低い咳発生率(8.3%)、最も低い全体的臨床症状発生率(8.3%)、最も低い死亡率(0%)、最も低いPCV2鼻内排出率(8.3%)、2番目に低い平均%肺病巣(0.68±1.15%)及び最も低い陽性組織発生率(16.7%)を示した。種々のレベルのrORF2抗原を投与された群は、種々のレベルのvORF2を投与された群よりも全体的に優れ、さらに殺滅全細胞PCV2ワクチンの2用量を投与された群の性能は最も低かった。表14及び15は、チャレンジ後の群のデータの要旨を含む。
【0054】
表14:チャレンジ後の群のデータのまとめ、その1

vORF2=単離したウイルスORF2;rORF2=組換えバキュロウイルスにより発現されたORF2;殺滅全細胞ウイルス=適切な細胞培養で増殖させたPCV2ウイルス
【0055】
表15:チャレンジ後の群のデータのまとめ、その2

vORF2=単離したウイルスORF2;rORF2=組換えバキュロウイルスにより発現されたORF2;殺滅全細胞ウイルス=適切な細胞培養で増殖させたPCV2ウイルス
【0056】
本実験の結果は、ワクチンに対する今後のあらゆる努力がrORF2ワクチンに注がれるべきであることを示している。全体的に、PCV2の鼻内排出はチャレンジ後に検出され、PCV2ワクチンによるワクチン接種は排出の減少をもたらした。選択した類リンパ組織の免疫化学検査もまたワクチンの有効性について良好なパラメーターとして機能したが、一方、ADWG、臨床症状及び肉眼病巣では大きな相違は群間で検出されなかった。この実験の間のいくつかの時点で外部からPCV2が導入されたという事実(群9(完全陰性コントロール群)におけるPCV2の排出、PCV2血清変換及び陽性IHC組織によって立証された)よって本実験は複雑になった。
【0057】
考察
この実験では7種のPCV2ワクチンを評価した(前記ワクチンには0日目に1回投与された3つの異なる用量レベルのvORF2抗原、0日目に1回投与された3つの異なる用量レベルのrORF2抗原、並びに0日目及び14日目に投与された1つの用量レベルの殺滅全細胞PCV2ワクチンが含まれる)。全体的に、群5(8μgのrORF2抗原を含む1用量のワクチンが投与された)が最良の結果を示した。群5は、最も高いADWG、最も低い異常行動発生、もっとも低い異常呼吸発生、2番目に低い咳発生、最も低い全体的臨床症状発生、最も低い死亡率、最も低いPCV2鼻内排出率、2番目に低い平均%肺病巣率及び最も低い陽性IHC組織発生率を示した。
興味深いことに、群4(群5よりも高い用量のrORF2抗原が投与された)は群5と同様又は群5よりも良好な性能を示したわけではなかった。群4は、群5よりもわずかに低いADWG、より高い異常行動発生、より高い全体的臨床症状発生、より高いPCV2鼻内排出率、より高い平均%肺病巣、及びより高い陽性IHC組織率を示した。統計分析はこれらのデータについて実施されなかったが(これら2つの群間の相違は統計的には有意ではないことを示す可能性があった)、群4は群5と同様に良好な性能を示さない傾向が観察された。
ワクチン接種後、6匹のブタは第一の実験場所で死亡した。この6匹のブタうち4匹は、群8又は群9由来であった(前記群はワクチンが投与されなかった)。6匹のブタのいずれもPMWSに一致する病巣を示さず、副作用も報告されず、全体的に7種全てのワクチンが、ほぼ11日齢のブタに投与するときは安全であるようであった。本実験のワクチン接種後の期間中、3つの用量レベルのvORF2ワクチン又は殺滅全細胞ワクチンのいずれかを投与されたブタは最高のIFATレベルを示したが、一方、群5は、チャレンジ直前にワクチン群で最低のIFATレベルを示した。
正式に証明したわけではないが、離乳後間もない若い雌ブタへのPCV2のもっとも支配的な伝播経路は口及び鼻の直接接触によると考えられており、PCV2の鼻内排出を減少させる効果的なワクチンは感染の拡大の制御に役立つであろう。3種のvORF2抗原レベルの1つを投与された群、及び8μgのrORF2を投与された群は、最も低いPCV2鼻内排出発生率(8.3%)を示した。予想したとおり、チャレンジコントロール群は最高の鼻内排出発生率(80%)を示した。
PCV2感染に対し二次性のPMWSを示すブタの肉眼病巣は、典型的には、以下の1つ又は複数の症状が合併する全身性リンパ節腫脹症から成る:(1)小葉間浮腫を伴う間質性肺炎、(2)皮膚蒼白又は黄疸、(3)斑状萎縮肝(mottled atrophic liver)、(4)胃潰瘍、(5)腎炎、及び生殖器の異常、例えば流産、死産、ミイラ化胎児など。剖検では、いずれの群においても黄疸、肝炎、腎炎及び胃潰瘍は認められず、リンパ節腫脹症は特に調べたわけではなかった。平均%肺病巣スコアは群間で変動した。16μgのvORF2抗原を投与された群は、最も低い平均%肺病巣スコア(0.40±0.50%)を示し、8μgのrORF2を投与された群がこれに続いた(0.68±1.15%)。予想したように、チャレンジコントロール群は最高の平均%肺病巣スコア(9.88±29.2%)を示した。4群全てで、平均%肺病巣スコアは、これらの群の各々において非常に高い肺病巣スコアを有する1匹のブタのために上昇した。肺病巣のほとんどが赤色/紫色で硬化性であると記載された。典型的には、PMWSに付随する肺病巣は、小葉間浮腫を伴う褐色で非崩壊性であると記されている。この実験で認められた肺病巣はPCV2感染に関連しないか、又は第二の肺感染性因子が存在している可能性があった。この実験の関係では、おそらく%肺病巣スコアは、PCV2による肺感染量の真の測定値を反映していない。
【0058】
他の研究者らは、IHCによるPCV2抗原の存在と組織病理学との間の正の相関性を示した。選択した組織の組織病理学はこの実験では実施されなかった。群1(16μgのvORF2)及び群5(8μgのrORF2)では、PCV2抗原陽性のブタの発生率はもっとも低く(8.3%)、一方、群9(完全陰性コントロール群−90.9%)及び群8(チャレンジコントロール群−90.0%)では、PCV2抗原陽性ブタの発生率はもっとも高かった。この検査の非主観的性質のために、IHCの結果は、おそらくワクチンの有効性判定のための最良のパラメーターの1つであろう。
したがって、本発明のある特徴では、CDCDブタモデルにおけるPCV2チャレンジ時の抽出PCV2 ORF2を含む1mL/1用量組換え生成物(rORF2)の最小防御用量(MPD)が決定された。種々のレベルのrORF2抗原を投与された3群のうち、群5(8μgのrORF2抗原)は明確に最高レベルの防御を示した。群5は最良の結果を示すか、又は調べたパラメーターの全てに関して好ましい結果と結びついていた。群5を他の6つのワクチン群のチャレンジ後と比較したとき、群5は、最高のADWG(0.94±0.22 lbs/日)、もっとも低い異常行動の発生(0%)、2番目に低い咳の発生(8.3%)、最も低い全体的臨床症状発生(8.3%)、最も低い死亡率(0%)、最も低いPCV2鼻内排出率(8.3%)、2番目に低い平均%肺病巣(0.68±1.15%)及び最も低い陽性IHC組織発生率(16.7%)を示した。
本発明のまた別の特徴では、部分精製PCV2 ORF2(vORF2)抗原である1mL/1用量の通常の生成物のCDCDブタモデルにおけるPCV2チャレンジ時のMPDが決定された。種々のレベルのvORF2抗原を投与された3群のうち、群1(16μgのvORF2)が最高レベルの防御を示した。群1は、ADWG、平均%肺病巣及びIHCに関して群2及び3よりも優れていた。群1及び2(8μgのvORF2抗原)は、全体的臨床症状発生に関しては等価の性能を有し、群3(4μgのvORF2抗原)は最も低い死亡率を示し、さらに鼻内ウイルス排出に関して3群はいずれも等価の性能を示した。全体的に、vORFワクチンは、rORFワクチンのような良好な性能を示さなかった。
さらに別の特徴では、CDCDブタモデルにおけるPCV2チャレンジに対して、2mL/2用量の通常の殺滅PCV2ワクチンの最大用量の有効性が決定された。この実験で評価された7つのワクチンのうち、殺滅全細胞PCV2ワクチンはもっとも性能が低かった。殺滅全細胞PCV2ワクチンの2用量を投与された仔豚は、最も低いADWG、2番目に高い異常行動の割合(58.3%)、2番目に高い全体的臨床症状の発生(58.3%)、最も高い死亡率(16.7%)、2番目に高い鼻内排出率(41.7%)、最高の平均%肺病巣(9.88±29.2%)、認識された肺病巣の高発生(75%)及び中等度のIHC組織発生率(41.7%)を示した。しかしながら、前記はなお免疫応答の喚起に有効であった。
本発明のさらに別の特徴では、有効性のパラメーターとしてPCV2の鼻内排出が査定され、さらに以前の実験から得られた以前のPCV2有効性パラメーターが確認された。本実験から得られた結果は、PCV2の鼻内排出は鼻内チャレンジに続いて生じ、PCV2ワクチンはチャレンジ後のPCV2の鼻内排出を減少させることを示した。さらにまた、本実験の結果及び文献上の報告は、IHCの査定は将来のPCV2ワクチンの試験でも同様に続けられるべきであることを示している。
本実験から得られたいくつかの付加的結論は、リンパ節腫脹症はPMWSの特徴の1つであるということである。PMWSのまた別の特徴は、リンパ球減少及び多核性/巨大組織球である。さらにまた、7つのPCV2ワクチンのいずれについても副作用又は注射部位反応は観察されず、さらに7つのPCV2ワクチンのいずれも若いブタへ投与したとき安全であるように思われた。
【実施例5】
【0059】
本実施例は8つのPCV2候補ワクチンの有効性を試験し、先のチャレンジ実験で得られた、病毒性PCV2株への暴露後のPCV2チャレンジパラメーターを再確認する。150匹の帝王切開由来初乳断ち(CDCD)仔豚(6−16日齢)を体重でおおまかに分け、同じサイズの10群に無作為化した。表16は本実施例の一般的実験設計を示す。
【0060】
表16:一般的実験設計

vORF2=単離したウイルスORF2;rORF2=組換えバキュロウイルスにより発現されたORF2;KV又は殺滅全細胞ウイルス=適切な細胞培養で増殖させたPCV2ウイルス
【0061】
各群に投与されたワクチン処方物は以下のとおりであった:PCV2ワクチンNo.1(群1に1x2mL用量で投与)は、アジュバントとしてIMS1314が添加された、高用量(16μg/2mL用量)の不活化組換えORF2抗原であった(16μg rORF2−IMS1314)。PCV2ワクチンNo.2(群2に1x2mL用量で投与)は、アジュバントとしてカルボポールが添加された、高用量(16μg/2mL用量)の部分精製されたVIDO R-1生成PCV2 ORF2抗原であった(16μg vORF2−カルボポール)。PCV2ワクチンNo.3(群3に1x2mL用量で投与)は、アジュバントとしてカルボポールが添加された、高用量(16μg/2mL用量)の不活化組換えORF2抗原であった(16μg rORF2−カルボポール)。PCV2ワクチンNo.4(群4に1x1mL用量で投与)は、アジュバントとしてカルボポールが添加された、高用量(16μg/1mL用量)の部分精製されたVIDO R-1生成PCV2 ORF2抗原であった(16μg vORF2−カルボポール)。ワクチンNo.5(群5に1x2mL用量で投与)は、アジュバントとしてカルボポールが添加された、4μg/2mL用量の不活化組換えORF2抗原であった(4μg rORF2−カルボポール)。PCV2ワクチンNo.6(群6に1x2mL用量で投与)は、アジュバントとしてカルボポールが添加された、1μg/2mL用量の不活化組換えORF2抗原であった(1μg rORF2−カルボポール)。PCV2ワクチンNo.7(群7に1x2mL用量で投与)は、アジュバントとしてカルボポールが添加された、低用量(0.25μg/2mL用量)の不活化組換えORF2抗原であった(0.25μg rORF2−カルボポール)。PCV2ワクチンNo.8(群8に1x2mL用量で投与)は、アジュバントとしてカルボポールが添加された、高用量(不活化前力価>8.0 log/2mL用量)の不活化通常殺滅VIDOR-1生成PCV2 Struve抗原であった(>8.0 log KV−カルボポール)。0日目に、群1−8は割り振られたそれらのワクチンで処置された。群1−3及び5−8はそれぞれのワクチンで14日目にブースターを受けた。16μgのvORF2−カルボポールのシングル用量の有効性は群4で試験された(群4は14日目にブースターを受けなかった)。仔豚は、両ワクチン接種の後、副作用及び注射部位反応について観察された。21日目に、仔豚を第二の実験場所に移し、この場所では群1−9は1つの建物に群ごとに収容され、群10は別の建物に収容された。全てのブタは、フロイントの不完全アジュバントで乳化したキーホールリンペットヘモシアニンを22日目及び28日目に投与された。25日目に、群1−9を約4 logの病毒性PCV2ウイルスでチャレンジした。46日目までに、チャレンジコントロール群で極めてわずかの死亡が発生した。ブタの免疫刺激及びPCV2チャレンジ材料の病毒性強化のために、全ての群をINGELVAC(商標)PRRS MLV(ブタ生殖器系及び呼吸器系ワクチン、改変生ウイルス)で46日目に処置した。
チャレンジ前及びチャレンジ後の血液サンプルをPCV2血清学のために採集した。平均1日体重増加(ADWG)の決定のためのチャレンジ後体重データ及び臨床症状観察を実施した。50日目に、全ての生存ブタで剖検を実施し、肉眼病巣を記録し、肺の病変を採点し、さらに、後日のPCV2抗原検出のために免疫組織化学(IHC)による調査用選択組織をホルマリン中で保存した。
【0062】
材料及び方法
これは、0日目に6−16日齢のCDCD豚で実施した部分的盲検ワクチン接種-チャレンジフィージビリティー実験であった。本実験に含まれるためには、雌豚のPCV2 IFA力価は≦1:1000であった。さらにまた、雌豚の血清学的状況は、PRRSが陰性であることが判明している群れ出身であった。16頭の雌豚をPCV2血清学的状況について調査し、16頭全てが1000以下のPCV2力価を有し、第一の実験場所に移された。150匹の仔豚が帝王切開術で娩出され、この実験の3日前に取得できた。実験3日前に、第一の実験場所の150匹のCDCD豚の体重を測定し、耳標識で特定し、体重によっておおまかに分け、さらに上記表16に示したように10群の1つに無作為化した。血液サンプルを全てのブタから採集した。包含基準に適合する全ての被検動物を本実験に登録し、後に何らかの理由で排除した場合には、研究者及び測定者は、前記動物から採集したデータを最終分析で使用するか否かを決定するために協議した。登録した豚が排除された日付及び排除の理由が記載された。この包含基準に適合し、本実験のために選択され、第一の実験場所に移されたいずれの雌豚も排除されなかった。いずれの仔豚も本実験から排除されず、いずれの被検動物も終了前に本実験から取り除かれることはなかった。表17は、本実施例の主要な調査活動についてのタイムフレームを示している。
【0063】
表17:調査活動

【0064】
本実験の生存期の終了後、ホルマリン固定組織は、病理学専門家によるPCV2抗原の検出のために免疫組織化学検査によって調べ、血液サンプルはPCV2血清学について査定し、平均1日体重増加(ADWG)は25日目から50日目まで測定した。
動物は、誕生からほぼ11日齢(実験のほぼ0日目)まで、第一の実験場所で7つの部屋の個々のケージに収容した。それぞれの部屋はレイアウトが同一であり、加温されフィルターに通した空気が各単離ユニットに供給されている、積み重ねた個々のステンレススチールのケージから成っていた。それぞれの部屋は別々の加温換気を有し、したがって部屋間の空気の相互汚染は防止されている。第二の実験場所では、動物は2つの異なる建物に収容された。群10(完全陰性コントロール群)は改造した保育棟に離して収容し、群1−9は改造した分娩棟に収容した。各群は別々の囲いに収容し(14−15匹/囲い)、各囲いはブタ1匹当たり約2.3平方フィートを提供した。群2、4及び8は通路の一方の側にある隣り合う3つの囲いに入れ、さらに群1、3、5、6、7及び9は通路のもう一方の側にある隣り合う6つの囲いに入れた。群を分離したのは、群2、4及び8に投与されるワクチンが完全には不活化されていないという実験測定者の懸念のためであった。各囲いは、プラスチック製羽根板の床をもつ一段高いデッキ上にあった。囲い下のくぼみは排泄物及び廃液のための保持用タンクとして機能した。各棟はそれ自身の別個の加温及び換気システムを有し、建物間での空気の相互汚染の確率ははきわめて低かった。
第一の実験場所では、仔豚は特別処方比ミルクを誕生からほぼ3週齢まで与えられた。全てのブタは実験29日目(ほぼ4 1/2週齢)までは固定した特別混合比を消費した。第二の実験場所では、全ての仔豚は、それらの齢及び体重に適した通常の医薬品無添加の市販混合比を随意に与えられた。両実験場所では水もまた随意に利用可能であった。
全ての被検ブタは、19、20及び21日目に1.0mLのNAXCEL(商標)を交互のももの後部のIMに処置された。さらにまた、種々の健康上の理由のために、ブタNo.11(群1)には10日目にNAXCEL(商標)を筋肉内に処置し、ブタNo.13(群10)には10日目に1mLのペニシリン及び1mLのPREDEF(商標)2Xを処置し、ブタNo.4(群9)には11日目に1.0mLのNAXCEL(商標)を筋肉内に処置し、さらにブタNo.1(群1)、4及び11にはそれぞれ14日目に1.0mLのNAXCEL(商標)を処置した。
両実験場所にいる間、ブタは獣医師の管理下にあった。動物の健康診断は実験3日前に実施され、健康診断書記録用紙に記録された。全ての動物は、0日目の観察により決定したときワクチン接種前に良好な健康状態及び栄養状態にあった。全ての被検動物は、チャレンジ前に良好な健康状態及び栄養状態にあることが観察された。死骸及び組織は料金を支払って廃棄した。最終的な実験動物の処分は動物処分記録に記録された。
0日目及び14日目に、群1−3に割り振られたブタは、無菌的な3.0mLのルアロック注射筒及び無菌的な20gx1/2インチ注射針を用い、それぞれ2.0mLの割り振られたPCV2ワクチン1−4をそれぞれ右及び左の首の領域の筋肉内に投与された。群4に割り振られたブタは、0日目にのみ、無菌的な3.0mLのルアロック注射筒及び無菌的な20gx1/2インチ注射針を用い、1.0mLのPCV2ワクチンNo.2を右の首の領域の筋肉内に投与された。
22日目に、全ての被検ブタは、無菌的な3.0mLのルアロック注射筒及び無菌的な20gx1/2インチ注射針を用い、2.0mLのKLH/ICFAを左の首領域の筋肉内に投与された。28日目に、全ての被検ブタは、無菌的な3.0mLのルアロック注射筒及び無菌的な20gx1/2インチ注射針を用い、2.0mLのKLH/ICFAを右のももの後部領域に投与された。
25日目に、群1−9に割り振られたブタは、無菌的な3.0mLのルアロック注射筒及び無菌的な20gx1/2インチ注射針を用い、1.0mLのPCV2 ISUVDLチャレンジ材料(3.98 log10 TCID50/mL)を右の首の領域の筋肉内に接種された。同じ材料のさらに1.0mLが、無菌的な3.0mLのルアロック注射筒及び鼻用カニューレを用いて各ブタの鼻内に投与された(鼻孔当たり0.5mL)。
46日目に、全ての被検ブタは、無菌的な3.0mLのルアロック注射筒及び無菌的な20gx1/2インチ注射針を用い、2.0mLのINGELVAC(商標)PRRS MLVを右の首の領域の筋肉内に接種された。PRRSV MLVは、PCV2チャレンジ材料の病毒性を高めるために投与された。
被検ブタは、全体的な健康状態及び副作用について実験3日前及び実験0日目から21日目まで毎日観察された。各ブタは正常若しくは異常行動、呼吸又は咳について採点された。観察は臨床観察記録に記録された。全ての被検ブタは注射部位反応について0日目から7日目まで観察され、群7はさらに14日目から21日目まで観察された。平均1日体重増加は、実験3日前、実験25日目及び50日目に、又はチャレンジ後にブタが死んでいるのを発見した日に、各ブタを目盛りつき天秤で測定することによって決定した。体重は、体重用紙に記録した。実験3日前の体重は、任意抽出前にブタを大まかに振り分けるために利用した。25日目と50日目の体重データは、各ブタについてこれらの時点の間の平均1日体重増加(ADWG)の決定に利用した。チャレンジ後又は50日目の前に死亡したブタについては、ADWGは25日目から死亡日までのADWGを表すように調整した。
【0065】
PCV2の血清学を決定するために、実験3日前及び実験14日目に静脈性全血を各ブタの眼窩静脈洞から採集した。各ブタについて、血液は、無菌的キャピラリーチューブを一方の目のめがしらに挿入し、約3.0mLの全血を血清分離チューブ(SST)に引き入れることによって眼窩静脈洞から採集した。25日目、32日目及び50日目に、20gx1 1/2インチのヴァキュテイナー針(Becton Dickinson and Company, Franklin Lakes, New Jersey)、ヴァキュテイナー針ホルダー及び13mLのSSTを用いて、後大静脈から各ブタの静脈性全血を採集した。各時点の血液採集はサンプル採集記録に記録した。各SST内の血液を凝血させ、続いて各SSTを遠心して血清を採集した。採集血清は、無菌的な蓋付きチューブに移し、後日の検査まで-70±10℃で保存した。血清は、BIVI-R&Dの職員によってPCV2抗体の存在について試験された。
ブタは、22日目から50日目まで臨床症状について1日1回観察され、さらに正常若しくは異常行動、呼吸又は咳について採点された。臨床観察は臨床観察記録に記録された。
ブタNo.46(群1)及び98(群9)は第一の実験場所で死亡した。これら両方の死亡は出血死と分類され、これら2匹のブタについては剖検を実施しなかった。第二の実験場所では、チャレンジ後及び実験50日目前に死亡したブタ、及び実験50日目に安楽死させたブタでは剖検が実施された。全ての肉眼病巣を記録し、病巣をもつ肺葉のパーセンテージを剖検記録用紙に記録した。
第二の実験場所で剖検を実施した各ブタから、扁桃、肺、心、及び腸間膜リンパ節の組織サンプルを、10%ホルマリン緩衝液を入れた1本の容器に入れ、一方、前述の同じ器官のまた別の組織サンプルをホァールパック(Whirl-pak(商標))(M-Tech Diagnostics Ltd., Thelwall, UK)に入れ、各ホァールパック(商標)を氷上に置いた。各容器に適切な付箋を付けた。サンプル収集は剖検記録用紙に記録した。その後、ホルマリン固定組織サンプル及び診断請求用紙をIHC検査のために提出した。IHC検査は、サンプルの受け取り、サンプルとスライドの調製、及び染色技術について標準的な実験室手順にしたがって実施された。ホァールパック(商標)中の新鮮組織は、保存(-70℃±10℃)及び将来の使用可能性のためにアイスパックとともに実験モニターに輸送した。ホルマリン固定組織は、IHCによるPCV2の検出のために病理専門家が精査し、以下のスコア系を用いて採点された:0=無し;1=わずかな部位に淡い陽性染色;2=多数の部位に中等度の陽性染色;3=組織全体に拡散した豊富な陽性染色。分析のために、スコア0は“陰性”とみなし、0を超えるスコアは“陽性”とみなした。
【0066】
結果
本実施例の結果は以下に提供される。ブタNo.46及び98は14日目及び25日目にそれぞれ死亡した。これらの死亡は出血死と分類された。ブタNo.11(群1)は15日目に浅速呼吸を行いあえいでいた。それ以外は、本観察期間中、全てのブタは行動、呼吸及び咳について正常であり、全身的な副作用はいずれの群でも観察されなかった。0日目のワクチン接種後、注射部位反応は全く認められなかった。14日目のワクチン接種後、14匹の群1のブタのうち7匹(50.0%)が15日目にスコア“2”の腫脹を示した。群1の14匹のうち4匹(28.6%)が16日目になおスコア“2”の腫脹を示した。他の群のいずれもいずれのワクチン接種後にも注射部位反応を示さなかった。
平均1日体重増加(ADWG)の結果は下記の表18に提供されている。出血のために死亡したNo.46及び98は群の結果から除外された。群4(16μg vORF2-カルボポールの1用量を投与)は最も高いADWG(1.16±0.26 lbs/日)を示し、群1、2、3、5、6及び10がこれに続いた(前記は1.07±0.23 lbs/日から1.11±0.26 lbs/日の範囲のADWGを示した)。群9は最も低いADWG(0.88±0.29 lbs/日)を示し、群8及び7がこれに続いた(前記はそれぞれ0.93±0.33 lbs/日及び0.99±0.44 lbs/日を示した)。
【0067】
表18:群の平均1日体重増加(ADWG)のまとめ

vORF2=単離したウイルスORF2;rORF2=組換えバキュロウイルスにより発現されたORF2;KV又は殺滅全細胞ウイルス=適切な細胞培養で増殖させたPCV2ウイルス
【0068】
PCV2の血清学は下記の表19に提示されている。実験3日前には10群全てがPCV2について血清陰性であった。14日目には、PCV2力価は10群全てについて低いままであった(50−113の範囲)。25日目に、群8(殺滅全細胞ウイルスワクチンを投与)は、最高のPCV2力価(4617)を有し、群2(16μgのvORF2−カルボポールを投与)、群4(16μgのvORF2−カルボポールのシングル用量を投与)、及び群3(16μgのrORF2−カルボポールを投与)がこれに続き、前記はそれぞれ2507、1920及び1503の力価を有していた。32日目(チャレンジ後1週間)に、群1−6及び群8の力価は2360から7619の範囲であったが、一方、群7(0.25μgのrORF2−カルボポール)、群9(チャレンジコントロール)及び群10(完全陰性コントロール)は、それぞれ382、129及び78の力価を示した。50日目(剖検の日)に、10群全てが高いPCV2力価を示した(≧1257)。
25日目、32日目及び50日目に、群3(16μgのrORF2−カルボポールの2用量を投与)は群1(16μgのrORF2−IM1314の2用量を投与)よりも高い抗体力価を示した。25日目、32日目及び50日目に、群2(16μgのvORF2の2用量を投与)は群4(同じワクチンの1用量だけを投与)よりも高い力価を示した。25日目及び32日目に、群3、5、6、7(低レベルのrORF2−カルボポール、それぞれ16、4、1及び0.25μgを投与)は対応する低レベルの抗体力価を示した。
【0069】
表19:群におけるPCV2 IFA力価のまとめ

vORF2=単離したウイルスORF2;rORF2=組換えバキュロウイルスにより発現されたORF2;KV又は殺滅全細胞ウイルス=適切な細胞培養で増殖させたPCV2ウイルス
*計算のために、≦100のIFA力価を力価“50”と称し、≧6400のIFA力価を力価“12,800”と称した。
**チャレンジの日
***剖検の日
【0070】
チャレンジ後の臨床観察から得られた結果は下記に提示されている。表20は、異常行動、異常呼吸、咳及び下痢についての観察を含む。表21は、群の全体的な臨床症状の発生のまとめから得られた結果を含み、表22はチャレンジ後の群の死亡率のまとめから得られた結果を含む。チャレンジ後の異常行動、異常呼吸及び咳の発生は、16μgのrORF2-IMS1314(群1)、16μgのrORF2-カルボポール(群3)、1μgのrORF2-カルボポール(群6)、0.25μgのrORF2-カルボポール(群7)を投与されたブタ、及びチャレンジコントロール群(群9)のブタで低かった。チャレンジ後の異常行動、異常呼吸及び咳の発生率は、16μgのvORF2-カルボポール(群2)、16μgのvORF2-カルボポールのシングル用量(群4)、4μgのrORF2-カルボポール(群5)、>8 logのKV-カルボポール(群8)を投与されたブタ、及び完全陰性コントロール群(群10)のブタでゼロであった。
臨床症状の全体的な発生率は群間で変動した。16μgのvORF2-カルボポール(群2)、16μgのvORF2-カルボポールのシングル用量(群4)を投与されたブタ、及び完全陰性コントロール群(群10)のブタは0%の発生率を有し、16μgのrORF2-カルボポール(群3)及び1μgのrORF2-カルボポール(群6)を投与されたブタは6.7%の発生率を有し、16μgのrORF2-IMS1314を投与されたブタ(群1)は7.1%の全体的発生率を有し、4μgのrORF2-カルボポール(群5)、0.25μgのrORF2-カルボポール(群7)及び>8 logのKVワクチン(群8)を投与されたブタは13.3%の発生率を有し、チャレンジコントロール群(群9)のブタは14.3%の発生率を示した。
全体的死亡率は同様に群間で変動した。群8(2用量のKVワクチンを投与)は最高の死亡率(20.0%)を有し、群9(チャレンジコントロール)及び群7(0.25μgのrORF2-カルボポールを投与)がこれに続き、それぞれ14.3%及び13.3%の死亡率を示した。群4(16μgのvORF2-カルボポールのシングル用量を投与)は6.7%の死亡率を示した。他の1、2、3、5、6及び10は0%の死亡率を示した。
【0071】
表20:チャレンジ後の群における異常行動、異常呼吸、及び咳についての観察のまとめ

1少なくとも1日の間何らかの異常行動を示した、各群のブタの総数
2少なくとも1日の間何らかの異常呼吸を示した、各群のブタの総数
3少なくとも1日の間咳を示した、各群のブタの総数
【0072】
表21:チャレンジ後の群における臨床症状の全体的発生率のまとめ

vORF2=単離したウイルスORF2;rORF2=組換えバキュロウイルスにより発現されたORF2;KV又は殺滅全細胞ウイルス=適切な細胞培養で増殖させたPCV2ウイルス
1少なくとも1日の間何らかの臨床症状を示した、各群のブタの総数
【0073】
表22:チャレンジ後の群における死亡率のまとめ

vORF2=単離したウイルスORF2;rORF2=組換えバキュロウイルスにより発現されたORF2;KV又は殺滅全細胞ウイルス=適切な細胞培養で増殖させたPCV2ウイルス
【0074】
群の平均パーセント肺病巣及び一時的診断の要旨は下記の表23に提供されている。群9(チャレンジコントロール群)は、平均が10.81±23.27%の最高のパーセント肺病巣を示し、群7(0.25μgのrORF2−カルボポールを投与)(平均が6.57±24.74%)、群5(4μgのrORF2−カルボポールを投与)(平均が2.88±8.88%)及び群8(KVワクチンを投与)(平均が2.01±4.98%)がこれに続いた。残りの6群はより低い平均%肺病巣を示し、前記は0.11±0.38%から0.90±0.15%の範囲であった。
肺炎の一時的診断は群間で変動した。群3(16μgのrORF2−カルボポールの2用量を投与)は、最も低い肺炎の一時的診断を受け13.3%であった。群9(チャレンジコントロール群)は群の50%が肺炎と一時的に診断され、群10(完全陰性コントロール群)及び群2(16μgのvORF2-カルボポールの2用量を投与)がこれに続き、それぞれ46.7%及び40%が一時的に肺炎と診断された。
群1、2、3、5、9及び10では群の0%がPCV2感染と一時的に診断されたが、一方、群8(KVワクチンの2用量を投与)では一時的にPCV2感染と診断された割合がもっとも高く(20%)、群7(0.25μgのrORF2−カルボポールの2用量を投与)及び群4(16μgのvORF2-カルボポールの1用量を投与)では、各群のそれぞれ13.3%及び6.7%が一時的にPCV2感染と診断された。
胃潰瘍は群7の1匹のブタ(6.7%)で診断されただけであったが、他の9つの群では胃潰瘍は存在しなかった。
【0075】
表23:群における平均%肺病巣及び一時的診断のまとめ

vORF2=単離したウイルスORF2;rORF2=組換えバキュロウイルスにより発現されたORF2;KV又は殺滅全細胞ウイルス=適切な細胞培養で増殖させたPCV2ウイルス
【0076】
群におけるIHC陽性発生結果の要旨は下記表24に示されている。群1(16μgのrORF2−IMS1314)は最も低い群内IHC陽性結果を示し(PCV2陽性ブタは0%)、群2(16μgのvORF2−カルボポール)及び群4(16μgのvORF2−カルボポールのシングル用量)がこれに続き、それぞれ6.7%及び13.3%の群内IHC率を示した。群9(チャレンジコントロール群)はもっとも高いIHC陽性発生率を示し(100%のPCV2陽性ブタ)、群10(完全陰性コントロール群)及び群8(KVワクチン)がこれに続き、PCV2陽性ブタはそれぞれ93.3%及び80%であった。
【0077】
表24:群におけるIHC陽性発生率のまとめ

vORF2=単離したウイルスORF2;rORF2=組換えバキュロウイルスにより発現されたORF2;KV又は殺滅全細胞ウイルス=適切な細胞培養で増殖させたPCV2ウイルス
【0078】
考察
この実施例では7種のPCV2ワクチンを評価した(前記ワクチンには、2回投与されるIMS1314アジュバント添加高用量(16μg)rORF2抗原、1つの群のブタに1回及び第二の群のブタに2回投与されるカルボポールアジュバント添加高用量(16μg)vORF2抗原、2回投与されるカルボポールアジュバント添加高用量(16μg)rORF2抗原、2回投与されるカルボポールアジュバント添加4μg用量のrORF2抗原、2回投与されるカルボポールアジュバント添加1μg用量のrORF2抗原、2回投与されるカルボポールアジュバント添加低用量(0.25μg)のrORF2抗原、及びカルボポールアジュバント添加高用量(>8 log)の殺滅全細胞PCV2ワクチンが含まれる)。全体的には、群1(16μgのrORF2−IMS1314の2用量が投与された)は、群2から群7(カルボポールアジュバントを添加され種々のレベルのvORF2又はrORF2抗原を含む)よりもわずかに良好な性能を示し、群8(殺滅全細胞PCV2ワクチンの2用量が投与された)よりもはるかに良好な性能を示した。群1は3番目に高いADWG(1.80±0.30 lbs/日)、最も低い異常行動の発生(0%)、最も低い異常呼吸(0%)、低い咳の発生(7.1%)、低い全体的臨床症状の発生(7.1%)を示し、もっとも低い死亡率(0%)、2番目に低率の平均%肺病巣(0.15±0.34%)、2番目に低率の肺炎(21.4%)及び最も低い陽性IHC組織の発生率(0%)については他の3群と連携していた。しかしながら、群1は、注射部位反応が認められた唯一の群で、第二のワクチン接種の1日後には50%のワクチン接種動物が含まれた。群2から群7に投与された他のワクチンは殺滅全細胞ワクチンよりも良好な性能を示し、さらに群1に投与されたワクチンとはほぼ同様の性能を示した。
群8(カルボポールアジュバント添加殺滅PCV2ワクチンの2用量が投与された)は、いずれのワクチン群よりも劣る結果を示した。群8は、もっとも低いADWG(0.93±0.33 lbs/日)、2番目に高率の異常行動(6.7%)、最も高率の異常呼吸(6.7%)を示し、最も高い全体的臨床症状の発生率(13.3%)については他の3つの群と同様であり、死亡率については全ての群でもっとも高く(20%)、さらにいずれのワクチンよりも高いIHC陽性率(80%)を示した。殺滅全細胞PCV2ワクチンは群8への投与前に完全には不活化されてなかったという懸念が存在し、このことはこの群の不良な結果を説明しえる。残念ながら、この懸念を確認するための明確なデータは利用可能ではなかった。全体として、この実施例の状況では、通常の殺滅PCV2ワクチンはPCV2関連症状の緩和を促進しなかった。
以前に述べたように、IMS1314アジュバント添加ワクチンを除いて本被検ワクチンは副作用を伴わなかった。注射部位反応は、IMS1314で処方されたワクチンによる第二のワクチン接種の1日後には50%のブタで観察され、第二のワクチン接種の2日後には28.6%のブタで観察された。カルボポールアジュバント添加を投与されたいずれのブタでも反応は観察されなかった。IMS1314アジュバント添加ワクチンを接種されたブタを含むさらに別の実験を継続して、注射部位反応についてブタを厳密にモニターする必要がある。
【0079】
全てのブタが実験3日前にPCV2について血清陰性であり、さらに群2のみが実験14日目に100を越える力価を示した。25日目(チャレンジの日)に、群8はもっとも高いPCV2抗体力価を有し(4619)、群2(2507)がこれに続いた。群7、9及び10を例外として、全ての群が32日目までに強い抗体応答を示した。50日目までに、群7、9及び10を含む全ての群が強い抗体応答を示した。
後期PCV2感染およびそれに続くPMWSの発症の特徴の1つは、離乳豚の発育遅延であり、重篤な症例では体重減少が認められる。群における平均1日体重増加は発育遅延又は体重減少を示す定量的な方法である。本実施例では、群間でADWGの大きな相違はなかった。群8はもっとも低いADWG(0.88±0.29 lbs/日)を示し、一方、群4は最高のADWG(1.16±0.26 lbs/日)を示した。本実験の状況では、ADWGにワクチンの更なる有効性の根拠を置くために十分な相違は群間には存在しなかった。
体重の減少に加えて、呼吸困難、嗜眠、皮膚蒼白及び時には黄疸がPMWSに付随する臨床症状である。本実施例では、異常行動及び異常呼吸並びに咳が各群でときに認められた。本実験で立証されたように、このチャレンジモデル及びチャレンジ株は過剰な臨床症状をもたらさず、前記はワクチンの有効性の根拠とするための強力なパラメーターではない。
本実施例では死亡率は全体的に高くなく、チャレンジコントロール群で高死亡率を欠くということは、ワクチンの有効性の根拠となるこのパラメーターの限界を示す。46日目前に、群4及び群7ではそれぞれ15匹のブタのうち1匹が死亡し、群9では14匹のブタのうち2匹が死亡し、群8では15匹のブタのうち3匹が死亡した。群9(チャレンジコントロール群)はPCV2の臨床症状を示さず、46日目までにこの群では2匹が死亡しただけであるという事実のために、ブタの呼吸器及び生殖器症候群ウイルス(PRRSV)MLVワクチンを46日目に全てのブタに投与した。以前の実験は、INGELVAC(商標)PRRS MLVを免疫刺激剤として利用し、PCV2関連PMWSの症状を悪化させ、これらの以前の実験では死亡率が高められた。2匹の死亡は46日目にPRRSワクチンを投与した後まもなく発生した:群4では46日目に1匹が死亡し、群7では47日目に1匹が死亡した(これらは。おそらくPRRSワクチンの投与とは関連しない)。50日までに、群8(殺滅ワクチンの2用量を投与)は最高の死亡率を示し、群9(チャレンジコントロール)及び群7(0.25μgのrORF2−カルボポール)がこれに続き、それぞれ14.3%及び13.3%の死亡率を示した。全体的には、本実施例のチャレンジ後観察期後期におけるチャレンジモデルへのPRRSワクチンの投与は、死亡率を顕著には高めなかった。
PCV2感染に対し二次性PMWSを有するブタの肉眼病巣は、典型的には以下の1つ以上と合併した全身性リンパ節腫脹症から成る:(1)小葉間浮腫を伴う間質性肺炎、(2)皮膚蒼白又は黄疸、(3)斑状萎縮肝(mottled atrophic liver)、(4)胃潰瘍、(5)腎炎及び(6)生殖器異常、例えば流産、死産、ミイラ化胎児など。剖検(50日目)では、いずれの群においても黄疸、肝炎、及び腎炎は認められなかった。胃潰瘍は群7の1匹のブタで観察されたが、リンパ節腫脹症については特に調査されなかった。PCV2感染に一致する病巣の存在を基準にしたとき、3つの群が、一時的にPCV2(PMWS)と診断されるブタを1匹含んでいた。群8(殺滅ワクチンの2用量を投与)は20%が一時的にPCV2と診断され、一方、群7及び群4はそれぞれ13.3%及び6.7%が一時的にPCV2と診断された。平均%肺病巣スコアは剖検時に群間で変動した。群1、2、3、4、6及び10は、0.11±0.38%から0.90±0.15%の範囲の低い%肺病巣スコアを有した。予想したとおり、群9(チャレンジコントロール)は、最高の平均%肺病巣スコア(10.81±23.27%)を示した。4つの群では、平均%肺病巣スコアは、これらの群の各々において非常に高い肺病巣スコアを有する1匹から3匹のブタのために上昇した。肺病巣は赤色/紫色で硬化していた。典型的には、PMWSに付随する肺病巣は、小葉間浮腫を伴う褐色で非崩壊性であると記される。この実験で認められた肺病巣はPCV2感染に付随しないか、又は二次的な肺感染因子が存在する可能性があった。この実験の関係では、おそらく%肺病巣スコアは、PCV2による肺感染量の真の測定値を反映しない。同様に、一時的な肺炎の診断もまた過剰に利用されていたかもしれない。肺病巣を有する全てのブタ(あるものはわずかに0.10%である)が一時的な肺炎の診断とともに列挙された。本実施例では、肉眼病巣と%肺病巣に関してはワクチンの有効性の根拠とするために十分な相違は群間に存在しなかった。
IHCの結果はもっとも大きな群間の相違を示した。群1(16μgのrORF2−IMS1314)は、PCV2抗原に対し最も低い陽性IHCの結果を示し(0%)、一方、群9及び群10は最も高い陽性IHCの結果を示し、発生率はそれぞれ100%及び93.3%であった。群3、5、6及び7(カルボポールアジュバントを添加されたそれぞれ16、4、1又は0.25μgのrORF2抗原を投与された)は、それぞれ20%、20%、40%及び46.7%のIHC陽性率を示した。群2(カルボポールアジュバントを添加された16μgのvORF2の2用量を投与された)は6.7%のIHC陽性率を示し、一方、群4(同じワクチンの1用量が投与されただけであった)は13.3%のIHC陽性率を示した。この検査の客観的な性質及びIHCの結果が予想される結果と相関性を示したという事実により、IHC検査はおそらくワクチンの有効性の根拠とするための最良のパラメーターの1つであろう。
したがって、本発明のある特徴では、PCV2チャレンジに対する、カルボポールアジュバント添加PCV2 rORF2抗原のCDCDブタモデルにおける最小防御用量(MPD)が決定される。群3、5、6及び7は、それぞれカルボポールアジュバントを添加されたrORF2抗原の2用量を投与されたが、rORF2抗原のレベルは各群について異なっていた。群3、5、6及び7は各々、それぞれ16、4、1又は0.25μgのrORF2抗原を投与された。一般的には、rORF2抗原レベルの減少はPCV2抗体力価を低下させ、さらに死亡率、平均%肺病巣及びIHC陽性組織の発生を増加させた。種々のレベルのrORF2−カルボポールを投与された4つの群のうち、群3及び5(それぞれ16又は4μgのrORF2抗原の2用量が投与された)は各々、わずかに20%のIHC陽性率を有し、さらにそれぞれ類似の抗体力価を示した。全体的に、IHC陽性結果を基準に、2回投与されるrORF2抗原の最小防御用量はほぼ4μgである。
本発明の別の特徴では、組換え体(rORF2)及びVIDO R-1(vORF2)PCV2抗原の抗原性が査定された。群2は16μgのvORF2の2用量を投与され、群3は16μgのrORF2の2用量を投与された。両ワクチンはカルボポールアジュバントを添加された。両ワクチンは安全であることが判明し、両方とも死亡率が0%であった。群2は25日目に2507のPCV2抗体力価を示し、一方、群3は1503のPCV2抗体力価を示した。群3は、群2よりも低い平均%肺病巣を示したが(0.11±0.38%対0.90±0.15%)、群2は、群3よりも低いIHC陽性発生率を示した(6.7%対20%)。全体的に、両ワクチンは類似の抗原性を有するが、vORF2はわずかに良好なIHC結果を伴った。
本発明のさらに別の特徴では、2つの異なるアジュバント(カルボポール及びIMS1314)の適切性が決定された。群1及び3はともに16μgのrORF2抗原を含むワクチンの2用量を投与されたが、群1はIMS1314アジュバントを添加された抗原を投与され、一方、群3はカルボポールアジュバントを添加された抗原を投与された。両群は、本質的に同じADWG、本質的に同じチャレンジ後臨床徴候の発生、同じ死亡率、及び本質的に同じ平均%肺病巣を示したが、群1は0%のIHC陽性率を示し、一方、群3は20%のIHC陽性率を示した。しかしながら群3(カルボポールアジュバント添加ワクチンを投与された)は、25日目、32日目及び50日目に、群1(IMS1314アジュバントを添加したワクチンを投与された)よりも高いIFAT PCV2力価を示した。全体的に、IMS1314アジュバントを添加されたPCV2ワクチンは確かにより良好なIHCの結果を提供したが、前記はPCV2感染に対して相当に良好な防御を提供したわけではなく、さらに注射部位反応も誘発した。一方、カルボポールアジュバント添加PCV2ワクチンはIMS1314アジュバント添加ワクチンとほぼ同様な性能を示したが、いかなる副作用も伴わなかった。
本発明のさらに別の特徴では、PCV2 ORF2の1mL、1用量製品としてのフィージビリティーが決定された。群2及び4はともに、カルボポールアジュバントが添加された16μgのvORF2ワクチンを0日目に投与されたが、群2は14日目に第二の用量を14日目に投与された。群4は、群2よりもわずかに高いADWG及び低い平均%肺病巣を示したが、群2は、25日目、32日目及び50日目により高いIFAT PCV2力価を示し、さらにわずかに低いIHC陽性組織発生率を示した。これら2つの群についての他の全ての結果は類似していた。全体的に、カルボポールアジュバント添加vORF2の1用量は、同じワクチンの2用量と類似の性能を有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタシクロウイルス2型抗原をブタに投与することを含む、PCV2感染に付随する臨床症状の重篤度を軽減又は緩和し、動物のブタシルコウイルス総保持量を減少し、及び/又はブタシクロウイルス感染の免疫抑制作用をブタで軽減する方法。
【請求項2】
前記抗原が、ブタシルコウイルス2型のウイルスのORF2と少なくとも80%の配列同一性を有するDNA配列によってコードされるタンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ブタシルコウイルス2型抗原が組換えバキュロウイルスによって発現されるORF2抗原である、請求項1及び2のどちらかに記載の方法。
【請求項4】
前記ブタシルコウイルス2型抗原が1mL/用量で処方及び投与される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記臨床症状が、リンパ節腫脹症、リンパ球減少、及び多核又は巨大組織球から成る群から選択される、請求項1から4のいずれかの項に記載の方法。
【請求項6】
前記リンパ節腫脹症、リンパ球減少、及び/又は多核若しくは巨大組織球が、小葉間浮腫を伴う間質性肺炎、皮膚蒼白又は黄疸、斑状萎縮肝、胃潰瘍、腎炎、ピア様病巣及び生殖障害から成る群から選択される別の症状と合併する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記投与が15週齢未満のブタで実施される、請求項1から6のいずれかの項に記載の方法。
【請求項8】
前記投与が、3週齢を超えない、好ましくは2週齢を超えないブタで実施される、請求項1から7のいずれかの項に記載の方法。
【請求項9】
前記投与が、病毒性ブタシルコウイルス2型抗原への暴露の約3週間以内に実施される、請求項1から8のいずれかの項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物がさらに、獣医学的に許容される担体、医薬的に許容される担体及び免疫調節物質から成る群から選択される少なくとも1つの追加の成分を含む、請求項1から9のいずれかの項に記載の方法。
【請求項11】
前記投与が、表皮内、気管内、膣内、筋肉内、鼻内、静脈内、血管内、動脈内、腹腔内、経口、髄腔内、皮下、皮内、心臓内、肺葉内、髄内、又は肺内から成る群から選択される、請求項1から10のいずれかの項に記載の方法。
【請求項12】
前記ブタシルコウイルス2型抗原の投与が副作用又は注射部位反応を示さない、請求項1から11のいずれかの項に記載の方法。
【請求項13】
ブタシルコウイルス2型抗原をブタに投与することを含む、病気に対するブタの全般的抵抗力レベルを向上させる方法。
【請求項14】
PCV2感染に付随する臨床症状の重篤度の軽減又は緩和、動物のブタシルコウイルス総保持量の減少、又はブタシルコウイルス感染の免疫抑制作用の軽減のための医薬を製造する方法であって、前記方法が、ブタシルコウイルス抗原を取得する工程、及び前記抗原を獣医学的に許容される担体、医薬的に許容される担体、又は免疫調節物質と一緒にする工程を含む、前記医薬の製造方法。
【請求項15】
前記抗原がブタシルコウイルス2型のORF2によってコードされるポリペプチドを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
PCV2感染に付随する臨床症状の重篤度の軽減又は緩和、動物のブタシルコウイルス総保持量の減少、及び/又はブタシルコウイルス感染の免疫抑制作用の軽減のための医薬を製造するためのブタシルコウイルス2型抗原の使用であって、前記医薬がブタに投与される、前記ブタシルコウイルス2型抗原の使用。
【請求項17】
前記抗原が、ブタシルコウイルス2型のウイルスのORF2と少なくとも80%の配列同一性を有するDNA配列によってコードされるタンパク質を含む、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記ブタシルコウイルス2型抗原が組換えバキュロウイルスによって発現されるORF2抗原である、請求項16及び17のどちらかに記載の使用。
【請求項19】
前記ブタシルコウイルス2型抗原が1mL/用量で処方及び投与される、請求項16から18いずれかの項に記載の使用。
【請求項20】
前記臨床症状が、リンパ節腫脹症、リンパ球減少、及び多核又は巨大組織球から成る群から選択される、請求項16から19のいずれかの項に記載の使用。
【請求項21】
前記リンパ節腫脹症、リンパ球減少、及び/又は多核若しくは巨大組織球が、小葉間浮腫を伴う間質性肺炎、皮膚蒼白又は黄疸、斑状萎縮肝、胃潰瘍、腎炎、ピア様病巣及び生殖障害から成る群から選択される別の症状と合併する、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記投与が15週齢未満のブタで実施される、請求項16から21のいずれかの項に記載の使用。
【請求項23】
前記投与が、3週齢を超えない、好ましくは2週齢を超えないブタで実施される、請求項16から22のいずれかの項に記載の使用。
【請求項24】
前記投与が、病毒性ブタシルコウイルス2型抗原への暴露の約3週間以内に実施される、請求項16から23のいずれかの項に記載の使用。
【請求項25】
前記組成物がさらに、獣医学的に許容される担体、医薬的に許容される担体及び免疫調節物質から成る群から選択される少なくとも1つの追加の成分を含む、請求項16から24のいずれかの項に記載の使用。
【請求項26】
前記投与が、表皮内、気管内、膣内、筋肉内、鼻内、静脈内、血管内、動脈内、腹腔内、経口、髄腔内、皮下、皮内、心臓内、肺葉内、髄内、又は肺内である、請求項16から25のいずれかの項に記載の使用。
【請求項27】
前記ブタシルコウイルス2型抗原の投与が副作用又は注射部位反応を示さない、請求項16から26のいずれかの項に記載の使用。
【請求項28】
病気に対するブタの全般的抵抗力レベルを向上させるための医薬を製造するためのブタシルコウイルス2型の使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公開番号】特開2013−67655(P2013−67655A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−182(P2013−182)
【出願日】平成25年1月4日(2013.1.4)
【分割の表示】特願2008−548847(P2008−548847)の分割
【原出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(503345374)ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】