説明

ブタノールおよびヘキサノールの間接生産

多数の供給源から、燃料または化学薬品の用途用のブタノールおよびヘキサノールへの炭水化物の変換のプロセスが開示される。プロセスは、ホモ酢酸生成発酵を行って、酢酸中間体を生成することを伴い、酢酸中間体はエタノールに化学的に変換される。エタノールおよび酢酸中間体の残りの部分は、酸生成発酵における基質として用いられて、酪酸中間体およびカプロン酸中間体を生成する。酪酸中間体およびカプロン酸中間体は、次に、ブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料または化学薬品の用途のための、多数の供給源からブタノールおよびヘキサノールへの炭水化物の転化のプロセスに関する。本発明は、ホモ酢酸生成発酵と酸生成発酵との組み合わせを用いて、炭水化物からのブタノールおよびヘキサノールの収率を大幅に増大する。
【0002】
本願は、米国特許法第119条(e)項のもと、2008年2月7日出願の「INDIRECT
PRODUCTION OF BUTANOL AND HEXANOL」と題された米国仮特許出願第61/026,910号に対する優先権を主張する。前記特許文献はこの参照によって本願に余すところなく援用される。
【背景技術】
【0003】
アセトン−ブタノール−エタノール発酵(ABE)は既知であり、100年近くにわたって工業的に行われてきた。その生態、歴史および技術は、Acetone-Butanol Fermentation Revisited, Microbial Reviews、2006年12月、第50(4)巻、第484〜5
24頁において詳細に検討されている。炭水化物からの溶媒の合計A+B+Eの収率は、約32%w/wとして報告されている。前記発酵には、まず酸が生成され、続いて、その酸から溶媒が生成されるといった二つの段階が存在する。しかしながら、酸、主として酢酸および酪酸、の全てが溶媒に変換されるとは限らないため、最終発酵培養液は、回収または処理される必要がある多数の副生物を含有している。主な副生物はまた、HおよびCOである。生化学的経路の全てが研究されている。該プロセスの収率およびプロセス経済性を改善するために多くの試みがなされてきた。供給材料としてバイオマスからの炭水化物を使用する多くのプロセスが提案されてきた。しかしながら、主な限界は、目的とする溶媒の低い全収率、よって不十分な経済性であり、これがすべての工業的生産を終わらせてきた。上記発酵は非常に成熟した技術である。
【0004】
最近では、酪酸が生成され、次に、別の水素化工程で続いてブタノールに変換されるハイブリッドプロセスを用いることが提案されている。利点は、特許文献1に提案されているように、クロストリジウム・チロブチリカム(Clostrdium tyrobutylicum)のような、酪酸とガス状の副生物とを生成する発酵生物が選択され得るということである。しかしながら、この生物およびほとんどの酪酸菌はまたCOも生成するため、炭素収率は低い。提案されたプロセスにおいて報告された収率は、理論的には41%w/wである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公開公報第2008/0248540号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブタノールおよび他の溶媒を生成する能力は工業的に証明され、より進んだ研究によって改善されてきたが、より良好な経済性を有し、工業的に競合し得る高い収率を有するプロセスを見出すことが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの方法は、ブタノールおよびヘキサノールを生成する方法である。前記方法は、炭水化物源を含む培地中においてホモ酢酸生成発酵を行って、アセタート、酢酸、またはそれらの混合物を生成することを含む。前記アセタート、酢酸、または混合物の一
部は、エタノールに化学的に変換される。前記エタノールと、前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物との一部を含む培地中において酸生成発酵が行われ、ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物を生成する。該方法は、前記ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換することをさらに含む。
【0008】
この方法の様々な実施形態において、前記炭水化物源中の、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%の炭素が、ブタノールおよびヘキサノールに変換される。他の実施形態において、炭水化物源中の炭素は、本質的に、全く二酸化炭素として放出されない。他の実施形態では、前記炭水化物源は炭素含有化合物を含む物質であり、前記炭素含有化合物の約75重量%未満が炭水化物である場合、前記方法の化学エネルギー効率は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、または少なくとも約70%である。他の実施形態では、前記炭水化物源は炭素含有化合物を含有する材料であり、前記炭素含有化合物の約75重量%未満が炭水化物である場合、ブタノールおよびヘキサノールの収量は、炭水化物源に対して少なくとも約100gal/BDT、炭水化物源に対して少なくとも約120gal/BDT、または炭水化物源に対して少なくとも約140gal/BDTであり得る。
【0009】
この方法の別の実施形態において、前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物の一部をエタノールに化学的に変換する工程は、ホモ酢酸生成発酵培地を酸性化して、アセタートを酢酸に変換する工程と、前記酢酸をエステル化する工程と、その酢酸エステルを還元してエタノールを形成する工程とを含み得る。この実施形態において、前記酸性化の工程は、酢酸の塩を含む発酵培地に、二酸化炭素、または酢酸より低いpKaを有する酸を導入することを含み得る。これに代わって、この実施形態において、酸性化の工程は、二酸化炭素と共にアミンを発酵培地に導入して、酢酸/アミン錯体を形成することを含み得る。この実施形態はまた、酸/アミン錯体を水不混和性溶媒と接触させて、水不混和性溶媒と酢酸とのエステルを形成することも含む。
【0010】
前記ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換する工程は、前記酸生成発酵培地を酸性化して、ブチラートおよびカプロエートを酪酸およびカプロン酸に変換する工程と、前記酪酸およびカプロン酸をエステル化する工程と、その酪酸エステルおよびカプロン酸エステルを還元して、ブタノールおよびエタノールを形成する工程とを含み得る。この実施形態において、前記酸性化の工程は、酪酸およびカプロン酸の塩を含む発酵培地に、二酸化炭素、または酪酸およびカプロン酸より低いpKaを有する酸を導入することを含み得る。これに代わって、前記酸性化の工程は、発酵培地に二酸化炭素と共にアミンを導入して、酪酸/アミン錯体およびカプロン酸/アミン錯体を形成することを含み得る。この実施形態はまた、酸/アミン錯体を水不混和性溶媒と接触させて、水不混和性溶媒と酪酸とのエステル、並びに水不混和性溶媒とカプロン酸とのエステルとを形成することも含む。
【0011】
前記実施形態のいずれにおいても、前記還元の工程は、炭素含有物質の一部の熱化学処理によって生成される還元剤によって行なわれ得る。そのような実施形態において、前記熱化学処理は、ガス化、熱分解、改質および部分酸化から選択され得る。さらに、そのような実施形態において、前記ホモ酢酸生成発酵のための炭水化物源は、炭素含有物質の一部から誘導され得る。また、前記還元の工程は、水素化、水素化分解および一酸化炭素による還元から選択され得る。
【0012】
本発明の方法のホモ酢酸生成発酵は、発酵培地中でムーレラ属またはクロストリジウム属の微生物を培養することを含み得る。より詳細には、前記微生物は、ムーレラ・サーモアセチカム(Moorella thermoaceticum)種またはクロストリジウム・フォルミコアセチカ
ム(Clostridium formicoaceticum)種の微生物であり得る。他の実施形態において、前記
酸生成発酵は、培地中でクロストリジウム属の微生物を培養することを含み得る。より詳細には、酸生成発酵は、培地中でクロストリジウム・クルイベリClostridium kluyveri)
種の微生物を培養することを含み得る。
【0013】
本発明の様々な実施形態において、前記炭水化物源は、炭水化物および非炭水化物を含む炭素含有化合物を有する物質から誘導され得る。前記炭水化物源は、炭素含有化合物を含有することを含む物質から、ホモ酢酸生成発酵のために炭水化物含有画分を形成し、熱化学的変換プロセスによる生成物への変換のためにリグニンを含む残りの画分を形成するように前記物質を分画することにより、誘導され得る。この実施形態において、熱化学的変換プロセスの生成物は、アセタート、酢酸またはそれらの混合物の一部をエタノールに化学的に変換する工程、またはブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換する工程、またはそれらの双方の工程において使用され得る。前記分画の工程は、物理的処理、金属イオン処理、紫外線処理、オゾン処理、酸素処理、オルガノソルブ処理、水蒸気爆発処理、水蒸気爆発処理を伴う石灰含浸、水蒸気処理を有さない石灰含浸、過酸化水素処理、過酸化水素/オゾン(パーオキソン)処理、酸処理、希酸処理または塩基処理のうちから選択され得る。これに代わって、前記炭水化物源が誘導される物質はバイオマスを含むこともできるし、または草木物質、農業残渣、林業残渣、都市固形廃棄物、古紙、紙パルプ工場残渣のうちから選択することもできる。さらに、前記物質は、樹木、低木、草、小麦、麦わら、小麦ふすま、サトウキビバガス、トウモロコシ、トウモロコシの皮、トウモロコシ穀粒、コーンファイバー、都市固形廃棄物、古紙、庭ごみ、枝、潅木、エネルギー作物、果物、果皮、花、穀類、草本作物、葉、樹皮、針状葉、丸太、根、若木、短期輪作木質作物スイッチグラス、野菜、つる植物、甜菜パルプ、オート麦の殻、広葉落葉樹、木材チップ、パルプ化工程からの中間流、または軟材から選択され得る。前記物質はまた、樹木、草、植物全体および植物の構成成分から選択され得る。
【0014】
本発明の別の方法はブタノールおよびヘキサノールを生成する。この方法は、エタノールと、アセタート、酢酸またはそれらの混合物とを含む培地中で酸生成発酵を行うことを含む。この酸生成発酵は、ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物を生成する。前記方法は、ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換することをさらに含む。特定の実施形態において、前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物は、炭水化物源を含む培地中でホモ酢酸生成発酵を行うことにより生成される。さらに、前記エタノールは、炭水化物源を有する培地中においてホモ酢酸生成発酵を行って、アセタート、酢酸、またはそれらの混合物を生成し、そのアセタート、酢酸、またはそれらの混合物の一部をエタノールに化学的に変換することによって、生成される。
【0015】
本発明の様々な実施形態において、エタノールおよびアセタート、酢酸またはそれらの混合物中の、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%が、ブタノールおよびヘキサノールに変換される。他の実施形態において、エタノールおよびアセタート、酢酸またはそれら混合物中の炭素は、本質的に全く、二酸化炭素として放出されない。他の実施形態では、前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物が、炭水化物源を含む培地におけるホモ酢酸生成発酵によって生成され、前記炭水化物源は炭素含有化合物を含む材料であり、前記炭素含有化合物の約75重量%未満が炭水化物である場合、前記方法の化学エネルギー効率は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、または少なくとも約70%である。これに代わって、前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物が炭水化物源を有する培地におけるホモ酢酸生成発酵によって生成され、前記炭水化物源は炭素含有化合物を含有する物質であり、前記炭素含有化合物の約75重量%未満が炭水化物である場合、ブタノールおよびヘキサノールの収量は、炭水化物源に対して少なくと
も約100gal/BDT、炭水化物源に対して少なくとも約120gal/BDT、または炭水化物源に対して少なくとも約140gal/BDTであり得る。
【0016】
この方法において、前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物の一部をエタノールに化学的に変換する工程、並びに前記ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換する工程は、上述した特定の化学的変換プロセスを含み得る。さらに、この方法では、ホモ酢酸生成発酵または酸生成発酵のいずれかを行うための微生物は、具体的に上述したものと同一であり得る。さらに、この方法では、前記炭水化物源は、具体的に上述したものと同一であり得る。
【0017】
本発明の別の方法は、炭水化物および非炭水化物を含む炭素含有化合物を有する物質からブタノールおよびヘキサノールを生成する方法である。この方法は、前記炭水化物の少なくとも一部を含む培地中においてホモ酢酸生成発酵を行って、アセタート、酢酸、またはそれらの混合物を生成することを含む。前記非炭水化物の少なくとも一部は、熱化学処理法によって処理されて、還元剤を生成する。前記アセタート、酢酸、またはそれらの混合物の一部は、その還元剤を用いてエタノールに化学的に変換される。前記方法は、エタノールと、アセタート、酢酸、またはそれらの混合物の一部とを含む培地中で酸生成発酵を行って、ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物を生成することをさらに含む。前記ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物は、還元剤を用いて、ブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換される。
【0018】
この方法において、前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物をエタノールに化学的に変換する工程は、ホモ酢酸生成発酵培地を酸性化して、アセタートを酢酸に変換する工程と、前記酢酸をエステル化する工程と、前記還元剤を用いて、その酢酸エステルを還元して、エタノールを形成することとを含み得る。この実施形態はまた、酸生成発酵培地を酸性化して、ブチラートおよびカプロエートを酪酸およびカプロン酸に変換することと、前記酪酸およびカプロン酸をエステル化することと、それらの酪酸エステルおよびカプロン酸エステルを還元剤を用いて還元して、ブタノールおよびエタノールを形成することとによって、ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換する工程も含む。
【0019】
前記還元の工程は、水素化、水素化分解および一酸化炭素による還元のうちから選択され得る。前記熱化学処理は、ガス化、熱分解、改質および部分酸化から選択され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】酢酸生成発酵および酸生成発酵を有するブタノールおよびヘキサノールを生産するための本発明の特定の実施形態を示す図。
【図2】原料として木材のようなバイオマスを用いる場合におけるABE発酵工程、酪酸ハイブリッドプロセス、および本発明のプロセスの化学エネルギーの流れおよび化学効率の比較を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の方法は、高い炭素収率および重量収率、並びに高いエネルギー効率を有する、ブタノールおよびヘキサノールの混合物を生産するためのものである。前記方法は、一般に、発酵における炭素基質がほぼ全て生成物に変換されるように、炭素収率および重量収率が非常に高く、実質的に二酸化炭素の生成を有さない、ホモ酢酸生成発酵および酸生成発酵の使用を伴い得る。前記方法は、一般に、ホモ酢酸生成発酵の生成物、すなわちアセタート、酢酸、混合物、の一部をエタノールへの化学的変換に用いることを含むことができ、前記エタノールは、次に、後の酸生成発酵において基質として用いられる。さらに、ホモ酢酸生成発酵の生成物(アセタート、酢酸または混合物)の一部はまた、エタノール
と共に、後の酸生成発酵において基質としても用いられる。酸生成発酵は、ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸または混合物を生成し、それらは、次に、ブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換される。前記方法はホモ酢酸生産性および酸生成発酵の使用を伴うので、ブタノールおよびヘキサノールを生成するための他の既知の方法に対してよりも、より高い炭素収率および重量収率、並びにより良好なエネルギー効率が得られる。さらに、バイオマスのような複合原材料の画分が全て用いられる場合、特に高い炭素収率および重量収率、および改善されたエネルギー効率が達成され得る。例えば、本発明の方法は、様々な化学的変換工程における非炭水化物画分の使用を含み、供給材料としてバイオマスを用いる場合に別法に対して有意な利点を提供することができる。
【0022】
本発明の1つの特定の実施形態は、ブタノールおよびヘキサノールを生成する方法である。この方法は、炭水化物源を含有する培地中でホモ酢酸生成発酵を行うことを含む。前記プロセスのホモ酢酸生成醗酵工程は、酢酸中間物として、アセタート、酢酸またはそれらの混合物を生成する。前記プロセスは、前記アセタート、酢酸または混合物の一部をエタノールに化学的に変換することをさらに含む。この実施形態は、アセタート、酢酸またはそれらの双方の混合物の化学的変換によって生成されるエタノールと、エタノールに化学的に変換されないホモ酢酸生成発酵からのアセタート、酢酸または混合物の一部との双方を含む培地中で酸生成発酵を行うことをさらに含む。前記酸生成発酵は、ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはすべての生成物の混合物を含む様々な生成物を生成する。この実施形態は、ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換することをさらに含む。
【0023】
(ホモ酢酸生成発酵)
アセタート、酢酸またはそれらの混合物を酢酸中間物として生成するホモ酢酸生成発酵および前記中間物のエタノールへの化学的変換を行うための好ましいプロセスは、「Process for Producing Ethanol」に関するPCT公開公報第WO00/53791号に記載
されている。前記特許文献は、参照により、本願に余すところなく援用される。ホモ酢酸生成発酵とは、ホモ酢酸生成微生物を培養して、酢酸、アセタートまたはそれらの混合物を生成することを指す。ホモ酢酸生成微生物は、100%の炭素収率で糖から酢酸を生成する特有の生化学的経路を用いる細菌の類である。例えば、以下に示すように、3モルのグルコースは、クロストリジウム・サーモアセチカムによって、9モルの酢酸に変換され得る。
【0024】
3C12 → 9CHCOOH (1)
ホモ発酵型酢酸生成菌であるホモ酢酸生成菌(またはホモ発酵微生物)によるアセタートへのグルコース(またはグルコースおよびキシロース)発酵は、COをアセタートに内部で変換する。前記菌は、いかなる炭水化物もCOに変換せず、酢酸のみを生成する。ホモ酢酸生成菌の例は、ドレーク、エイチ.エル.(Drake, H. L.)(編者)、Acetogenesis、チャップマン アンド ホール(Chapman & Hall)、1994年に開示されている。前記文献は、参照により本願に余すところなく援用される。さらに、これらのホモ発酵生物は、典型的には、グルコース、キシロース、フルクトース、ラクトースなどを含む広範囲の糖を酢酸に変換する。したがって、それらのホモ発酵生物は、バイオマスからの複合加水分解物の発酵に特に適している。
【0025】
ホモ酢酸生成発酵を行うのに適した微生物としては、ムーレラ属およびクロストリジウム属の微生物が挙げられる。具体的には、ムーレラ・サーモアセチカム種(以前はクロストリジウム・サーモアセチカムとして分類されていた)またはクロストリジウム・フォルミコアセチカム種の微生物は、本発明のホモ酢酸生成発酵を行うのに適している。現在、22の属において約100種の既知の酢酸生成菌が存在しており、圧倒的に最もよく研究されているのは、ムーレラ・サーモアセチカ(以前のクロストリジウム・サーモアセチカ
ム)である。酢酸生成菌の最新の検討は、ドレーク(Drake)ら、Ann. NY Acad. Sci. 1125:第100〜128頁(2008年)に見られる。前記文献は、参照により本願に余すところなく援用される。
【0026】
当業においてよく知られている本発明のホモ酢酸生成発酵に適した炭水化物源を含む多数の発酵培地が存在する。本発明の目的のためには、任意の適当な培地調製法が用いられ得る。その最も一般的な実施形態において、本発明は、発酵培地中の特定の炭水化物源に依存しないが、任意の適当な供給源が用いられ得る。例えば、ホモ酢酸生成発酵の適当な発酵培地の調製のための方法は、国際特許出願第WO00/53791号の中の第10頁28行目から始まる「Preparation of Suitable Fermentation Substrate」と題された部分により詳細に記載されている。例証となる例として、国際特許出願第WO00/53791号は、発酵基質の原材料としてトウモロコシの使用を記載している。その場合、トウモロコシ粉砕においていくつかの前処理工程が行なわれ、続く処理は、デンプン、セルロース、ヘミセルロースまたはタンパク画分の使用のために行われる。発酵基質としてのトウモロコシ画分の使用は、糖化活動を、同時糖化発酵(SSF)と呼ばれる設計における発酵工程と重ね合わせることによって、行うことができる。
【0027】
他の実施形態において、ホモ酢酸生成発酵のための発酵培地中の炭水化物源は、炭水化物および非炭水化物を含む炭素含有化合物を含む物質から誘導され得、そのような物質はバイオマスであり得る。例えば、前記バイオマスは、草木物質、農業残渣、林業残渣、都市固形廃棄物、古紙、パルプまたは製紙工場残渣から選択され得る。これに代わって、前記物質は、樹木、低木、草、小麦、麦わら、小麦ふすま、サトウキビバガス、トウモロコシ、トウモロコシの皮、トウモロコシ穀粒、コーンファイバー、都市固形廃棄物、古紙、庭ごみ、枝、潅木、エネルギー作物、果物、果皮、花、穀類、草本作物、葉、樹皮、針状葉、丸太、根、若木、短期輪作木質作物、スイッチグラス、野菜、つる植物、甜菜パルプ、オート麦の殻、広葉落葉樹、木材チップ、パルプ化工程からの中間流、または軟材から選択され得る。加えて、前記物質は、樹木、草、植物全体、または植物の構成成分から選択され得る。本発明の特定の実施形態において、生成物は、炭素含有化合物を含む物質から生成され、前記炭素含有化合物の約75重量%未満は炭水化物である。水素化または水素化分解の工程における非炭水化物のガス化からの水素の使用のように、生成物を生成するために非炭水化物を部分的に使用することができるので、本発明のプロセスは、そのような物質に特に適している。
【0028】
一部の実施形態において、炭水化物源は、炭素含有化合物を含む物質から、ホモ酢酸生成発酵のために炭水化物含有画分を形成し、熱化学的変換プロセスによる生成物への変換のためにリグニンを含む残りの画分を形成するように前記物質を分画することにより、誘導され得る。そのような実施形態において、前記分画の工程は、物理的処理、金属イオン処理、紫外線処理、オゾン処理、酸素処理、オルガノソルブ処理、水蒸気爆発処理、水蒸気爆発処理を伴う石灰含浸、水蒸気処理を有さない石灰含浸、過酸化水素処理、過酸化水素/オゾン(パーオキソン)処理、酸処理、希酸処理および塩基処理のうちから選択することができる。下記に記載するように、熱化学的変換プロセスの生成物は、アセタート、酢酸またはそれらの混合物の一部をエタノールに化学的に変換する工程、またはブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換する工程、またはそれらの双方の工程において用いることができる。
【0029】
本発明の微生物のホモ酢酸生成発酵に適したプロセス条件、培地および装置は、当業において知られており、使用されている微生物に基づいて選択することができる。
前記プロセスのホモ酢酸生成醗酵工程の生成物は、アセタート、酢酸またはそれらの混合物を含む酢酸中間物である。前記プロセスは、下記で述べるように、アセタート、酢酸または混合物の一部をエタノールに化学的に変換することをさらに含む。さらに、下記で
述べるように、前記アセタート、酢酸または混合物の異なる部分は、エタノールと共に、基質として酸生成発酵に用いられる。
【0030】
酢酸のエタノールへの化学的変換
ホモ酢酸生成発酵によって生成されたアセタート、酢酸またはそれらの混合物を含む酢酸中間物の一部は、化学的にエタノールに変換される。化学的にエタノールに変換される酢酸中間物の量は、後の酸生成発酵における微生物によって必要とされるエタノールおよび酢酸中間物の相対量に依存する。好ましくは、エタノールに変換される酢酸中間物の量は、残りの酢酸中間物と組み合わせて、後の酸生成発酵における微生物の必要量が、エタノールまたは酢酸中間物のいずれが有意に過剰になることなく満たされる、十分なエタノールを生じる。
【0031】
化学的変換のプロセスの工程は、酢酸のエステルの形成でありえる。エステル化は、有機酸がそのプロトン化した酸の形(例えば酢酸)で存在するときには容易であるが、有機酸が塩の形(例えば酢酸カルシウム)で存在するときにはより困難である。酢酸は、pKa=4.76を有する弱い有機酸である。ホモ酢酸生成発酵が中性pH(すなわちpH=7.0)付近で行われる場合には、前記発酵の生成物は、主として、酸ではなく、むしろ酢酸塩になるであろう。酢酸塩をプロトン化した形に変換するために、発酵培地に硫酸のような無機酸を直接添加することは可能であるが、これはセッコウのような塩副産物の化学量論的生成を生じる。価値が低い塩副産物の大規模な生成は、商品規模の生産プロセスには望ましくない。したがって、前記酢酸塩は好ましくは酸に変換され、その酸は水中希薄溶液から除去されなければならない。
【0032】
一実施形態において、酸性化の工程は、カルボン酸の塩を含む溶液に、二酸化炭素または酸性化されているそのカルボン酸よりも低いpKaを有する酸を導入することを含み得る。別の実施形態において、酸性化の工程は、二酸化炭素と共に第三アミンを導入して、酸/アミン錯体を形成することを含む。
【0033】
例えば、二酸化炭素およびトリブチルアミン(TBA)は酢酸カルシウムと反応して、アミン錯体および炭酸カルシウムを形成する:
酸性化:Ca(Ac)+HO+CO+2TBA → 2TBA:HAc+CaCO (2)
二酸化炭素は上記の反応において酸性化剤である。水中に溶解された場合、炭酸の弱い酸性溶液が形成される。前記炭酸は、次に、酢酸塩を酸性化し、その酢酸塩は次にアミン錯体(すなわちTBA:HAc)に変換される。任意の二酸化炭素の低圧源(例えばボイラー排気ガス、石灰工場排気、H生産からのCOに富んだ廃ガス)を用いることができる。トリブチルアミンは、水と混合されると、通常は、独立した液相を形成する。しかしながら、TBA:HAc錯体は水溶性である。従って、酸性化反応が起きる場合、TBAを含有する第2液相は消失し、結果として生じる反応混合物は炭酸カルシウム沈澱物を有する単一液体相である。炭酸カルシウムは、本質的に水に不溶性であるため、ほぼ100%の収率で回収することができ、発酵において塩基として使用するために再利用することができる。
【0034】
このプロセスは、酸/アミン錯体を水不混和性溶媒(例えば水と分離した液相を形成することができるアルコール(例えばn−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、など))と接触させて、水不混和性溶媒とカルボン酸とのエステルを形成することをさらに含み得る。アルコールおよびTBA:HAc錯体を含有する有機抽出物を加熱することができ、エステルは前記錯体から直接形成される。
【0035】
エステル化: TBA:HAc+BuOH → TBA+BuAc+H
(3)
反応を完了まで推進するために、反応塊(reaction mass)から水を抜き出すことができ
る。反応が完了した後、前記混合物を蒸留して、再利用のためにTBAおよび過剰ブタノールを回収し、酢酸ブチル中間物はさらに処理され得る。ペンタノール、ヘキサノールなどを含む他の水不混和性アルコールを用いることができる。
【0036】
酸性化およびエステル化の方法は、「Energy Efficient Methods to Produce Products」に関するPCT公開公報第WO2005/073161号および同WO2000/53791号により詳細に記載されている。上記特許文献は双方とも、参照により余すところなく本願に援用される。
【0037】
酢酸中間物のエタノールへの化学的変換のプロセスにおいてエステルが形成されると、前記エステルは還元されてエタノールを形成し得る。例えば、エステルは、水素化、水素化分解または一酸化炭素による還元から選択されるプロセスによって還元され得る。水素化分解は、同時の加水分解および水素化を指す。一酸化炭素による還元の一例は、米国特許第4,851,344号である。
【0038】
アルコールを生成するエステルの水素化はよく知られている反応である。参照により余すところなく本願に援用される米国特許第2,782,243号、同第4,113,662号、同第4,454,358号および同第4,497,967号は、酢酸のエステルのエタノールへの水素化のためのプロセスを開示している。水素化は液相または気相のいずれかにおいて行なうことができる。任意の適当な水素化プロセスを用いることができる。この反応はまた平衡反応である。前記反応は、高分圧の水素を用いることにより右側に促進される。典型的な反応条件は、所望の変換および選択性に依存して、150°C〜250°Cおよび500psi〜3000psiである。前記反応は、銅クロマイト、ニッケル、ラネーニッケル、ルテニウムおよび白金のような任意の適当な水素化触媒によって触媒され得る。銅クロマイト、ニッケルまたはラネーニッケル触媒は、これらの触媒が水によって阻害されないので、水素化に好ましい。液相プロセスにおいて、エタノールのようなアルコールは良溶媒である。
【0039】
水素化分解の例として、気相プロセスでは、エステル材料は気化させられて、過剰水素と共に水素化反応装置に供給され得る。吸着床(bed)を通過した後に、前記蒸気は冷却さ
れ低圧ノックアウトドラム内に押し流され得る。水素富化蒸気相は反応装置に再利用される。生成物(例えばエタノール)は、未反応のエステルおよびアルコール溶媒から分離され、未反応のエステルおよびアルコール溶媒はさらなる反応のために再利用することができる。
【0040】
エステル化および水素化ユニットからの副産物の性質および量に応じて、最終仕上げ工程(final polishing step)として、蒸留塔のような別の精製プロセスを用いることができる。
【0041】
エタノールの生産のための好ましい酢酸エステルは、酢酸ブチルまたは酢酸ヘキシルであり、これは、酢酸ブチルまたは酢酸ヘキシルの各々は、生成物流から除去されなければならない第2の化合物を前記プロセスに導入することを回避するためである。
【0042】
酸性化、エステル化および水素化ユニットから水の流れを集めるために水ストリッパを用いることができる。水は、溶媒の価値があるもの(solvent values)を回収するために水蒸気蒸留され得、次いで、その水は最終処理に送られ、発酵部に放出または再利用される。
【0043】
本発明で使用するための水素の多数の可能な供給源が存在する。水素添加反応のために十分な純度の水素を生成し、触媒を作用を阻害しない任意の適当な水素源を用いることができる。水素生成のための原材料としては、電気分解によって水素が生成され得る水が挙げられる。多数の化石原料および再生可能な有機原料も用いることができる。天然ガスからのメタンのように、化石原料が用いられる場合には、いくらかのCOが水素と共に生成されるであろう。しかしながら、再生可能な原料が使用されるならば、COの生成は環境に対して中立であろう。例えば、炭素を含有するほとんどの原料が水素を生成するために用いられ得る。木材チップ、おがくず、都市廃棄物、再生紙、製紙工業からの廃棄物、動物および/または作物生産からの固体農業廃棄物はすべて、例えばガス化技術を用いて、水素の生成に用いられ得る再生可能原料の例である。
【0044】
水素を生成するためのメタンの水蒸気改質は、よく知られたプロセスである。天然ガスおよび水を水蒸気改質器内で反応させて、水素と二酸化炭素とを形成することができる。水素を生成するための他の方法(炭化水素の部分酸化、石炭の部分酸化、水電解など)を用いることもできる。空気分離プラントによるフェンスライン操作(fenceline operation)においてなどのように、純酸素が利用可能な場合には、部分酸化プロセスは経済的に実
行可能であり得る。低価格の電力供給源が利用可能である場合には、電気分解は実行可能であり得る。
【0045】
好ましい実施形態において、「Energy Efficient Methods to Produce Products」に関する国際特許出願第WO2008/098254号に記載されているように、水素は、炭水化物および非炭水化物を含む炭素含有化合物を含む物質から得ることができる。前記文献は、参照により本願に余すところなく援用される。国際特許出願第WO2008/098254号に詳細に記載されているように、非炭水化物を変換するためには、熱化学的変換プロセスが用いられ得る。そのような熱化学的変換プロセスは、ガス化、熱分解、改質および部分酸化を含み得る。そのようなプロセスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタノールおよび/またはそれらの混合物を含み得る中間体を生成することができる。この実施形態の重要な部分は、複合原材料の炭水化物画分が醗酵工程によって変換されている間に、複合原材料の非炭水化物残渣は、化学的変換工程のための水素に変換され得るので、バイオマスのような複合原材料のすべての画分を用いる能力を提供するということである。原料としてバイオマスを用いる場合、これは、この実施形態の別法に対する利点の重要な要因である。
【0046】
酸生成発酵
本発明の方法は、エタノールと、アセタート、酢酸またはそれらの混合物との一部を含む培地中で酸生成発酵を行って、ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物を生成することをさらに含み得る。本願に用いられる酸生成という用語は、二酸化炭素を生成することなく、炭素源を1つ以上の有機酸に変換する発酵工程を指す。そのようなプロセスは、水素のような他の種の生成を含み得る。
【0047】
酸生成発酵は、二酸化炭素を生成することなく、炭素源を1つ以上の有機酸に変換する微生物を培養することによって行うことができる。例えば、クロストリジウム菌の種は、エタノールおよび酢酸をブタノールおよびカプロン酸に変換することができる。特に、クロストリジウム・クルイベリは、本質的に、エタノールおよび酢酸を、COが生成されないプロセスにおいて、酪酸、カプロン酸および水素に変換することができる。(例えば、スタニエ(Stanier)ら、Microbial World、Prentice Hall、1976年;タウアー(Thauer)ら、European J. Biochem.、第4巻(1968年)第173〜180頁参照。上記特
許文献は双方とも参照により余すところなく本願に援用される)クロストリジウム・クルイベリの菌株は、ATCC 8527としてATCCから入手可能である。
【0048】
6CHCHOH+3CHCOOH → 3CHCHCHCOOH+CHCHCHCHCHCOOH+2H+HO (4)
エタノールおよび酢酸の酪酸およびカプロン酸への発酵
本発明の微生物の発酵に適したプロセス条件、培地および装置は、当業において知られており、使用されている微生物に基づいて選択することができる。
【0049】
酪酸およびカプロン酸のブタノールおよびヘキサノールへの化学的変換
上述した酢酸のエタノールへの化学的変換のための酸性化、エステル化および還元の工程は、ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換するために用いられ得る。
【0050】
3CHCHCHCOOH+CHCHCHCHCHCOOH+8H→ 3CHCHCHCHOH+CHCHCHCHCHCHOH (5)
エステル化および水素化分解による、酪酸およびカプロン酸のブタノールおよびヘキサノールへの変換
炭水化物からのアルコールの生成のためのこの経路の理論収量は、63%w/wである。これは先に開示された別法よりも約50%高い(ABEプロセスについては32%w/w、米国特許公開公報第2008/0248540号のプロセスについては41%w/w)。
【0051】
本発明の様々な実施形態は、炭水化物源中の炭素をブタノールおよびヘキサノールに変換することにおいて非常に効率的である。より詳細には本発明の好ましい実施形態では、炭水化物源中の炭素の少なくとも約70%は、ブタノールおよびヘキサノールに変換される、炭水化物源中の炭素の少なくとも約75%は、ブタノールおよびヘキサノールに変換される、炭水化物源中の炭素の少なくとも約80%は、ブタノールおよびヘキサノールに変換される、炭水化物源中の炭素の少なくとも約85%は、ブタノールおよびヘキサノールに変換される、炭水化物源中の炭素の少なくとも約90%は、ブタノールおよびヘキサノールに変換される、または、炭水化物源中の炭素の少なくとも約95%は、ブタノールおよびヘキサノールに変換される。他の実施形態において、炭水化物源中の炭素は、本質的に、全く二酸化炭素として放出されない。
【0052】
ブタノールおよびヘキサノールを生成するための本発明の方法の化学エネルギー効率は非常に高くなり得る。例えば炭素含有化合物を含む物質からブタノールおよびヘキサノールを生成するそのような方法の化学エネルギー効率は、前記炭素含有化合物の約75重量%未満が炭水化物である場合、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%である。
【0053】
本発明はまた、ブタノールおよびヘキサノールの高い収量を達成することができる。具体的には、炭素含有化合物を含む物質から生成される場合のブタノールおよびヘキサノールの収量は、前記炭素含有化合物の約75重量%未満が炭水化物である場合、炭水化物源に対して少なくとも約100gal/BDT、炭水化物源に対して少なくとも約110gal/BDT、炭水化物源に対して少なくとも約120gal/BDT、炭水化物源に対して少なくとも約130gal/BDT、炭水化物源に対して少なくとも約140gal/BDT、炭水化物源に対して少なくとも約150gal/BDTであり得る。
【0054】
本発明の特定の実施形態は、炭水化物および非炭水化物を含む炭素含有化合物を含む物質からブタノールおよびヘキサノールを生成する方法である。前記方法は、前記炭水化物の少なくとも一部を含む培地中においてホモ酢酸生成発酵を行って、アセタート、酢酸、またはそれらの混合物を生成することを含む。前記方法は、前記非炭水化物の少なくとも
一部を熱化学処理によって処理して還元剤を生成することと、前記還元剤を用いて、アセタート、酢酸またはそれらの混合物の一部をエタノールに化学的に変換することとを含む。酸生成発酵は、エタノールと、アセタート、酢酸またはそれらの混合物との一部を含む培地中で行われ、ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物を生成する。前記方法は、次に、前記還元剤を用いて、ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換することを含む。いくつかの実施形態において、アセタート、酢酸またはそれらの混合物の一部をエタノールに化学的に変換する工程は、ホモ酢酸生成発酵培地を酸性化して、アセタートを酢酸に変換する工程と、前記酢酸をエステル化する工程と、前記還元剤を用いて、その酢酸エステルを還元して、エタノールを形成する工程とを含み得る。それらの実施形態はまた、ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換する工程を有し、該工程は、前記酸生成発酵培地を酸性化して、ブチラートおよびカプロエートを酪酸およびカプロン酸に変換する工程と、酪酸およびカプロン酸をエステル化する工程と、前記還元剤を用いて、その酪酸エステルおよびカプロン酸エステルを還元して、ブタノールおよびエタノールを形成する工程とを含む。これらの実施形態において、前記還元の工程は、水素添加、水素化分解および一酸化炭素による還元のうちから選択され得る。加えて、前記熱化学処理は、ガス化、熱分解、改質および部分酸化から選択することができる。
【0055】
本発明のさらなる実施形態は、酸生成発酵を行うことを含むブタノールおよびヘキサノールを生成する方法である。前記発酵は、エタノールと、アセタート、酢酸またはそれらの混合物とを含む培地中で行われる。前記発酵は、ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物を生成する。前記方法は、ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換することをさらに含む。この実施形態では、エタノールおよびアセタート、酢酸またはそれらの混合物は任意の供給源から誘導され得る。例えば、前記エタノールは、トウモロコシの乾式粉砕または湿式粉砕からのグルコースの酵母発酵、または甘ショ糖液または糖蜜からの酵母発酵のような任意の従来のエタノール生産方法によって生成することができる。前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物はまた、天然ガスからの石油化学経路、またはエタノールからの酢プロセス(vinegar process)のような任意の従来の生産方法によっ
て生成することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物は、前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物を生成するために、炭水化物源を含む培地中でホモ酢酸生成発酵を行うことによって生成される。さらに他の実施形態において、前記エタノールは、炭水化物源を含む培地中においてホモ酢酸生成発酵を行って、アセタート、酢酸、またはそれらの混合物を生成し、そのアセタート、酢酸、またはそれらの混合物の一部が、次いでエタノールに化学的に変換されることによって生成される。
【0056】
エタノールと、アセタート、酢酸またはそれらの混合物とをブタノールおよびヘキサノールに変換するこの方法は、酸生成発酵を用いるので、炭水化物源中の炭素を、ブタノールおよびヘキサノールに変換することにおいて非常に効率的である。より詳細には、方法の好ましい実施形態において、炭素源(すなわちエタノールおよびアセタート、酢酸またはそれらの混合物)中の炭素の少なくとも約70%は、ブタノールおよびヘキサノールに変換される、炭素源の少なくとも約75%はブタノールおよびヘキサノールに変換される、炭素源の少なくとも約80%はブタノールおよびヘキサノールに変換される、炭素源の少なくとも約85%はブタノールおよびヘキサノールに変換される、炭素源の少なくとも約90%はブタノールおよびヘキサノールに変換される、または、炭素源の少なくとも約95%はブタノールおよびヘキサノールに変換される。他の実施形態において、エタノールおよびアセタート、酢酸またはそれら混合物中の炭素は、本質的に全く、二酸化炭素として放出されない。
【0057】
図1を参照すると、本発明の特定の実施形態が示されており、該実施形態においては、木材または草のようなほとんどのバイオマスに典型的である約60%の炭水化物および40%の残余を含むバイオマス原料がブタノールおよびヘキサノールに変換される。バイオマス10は化学的分別20を受ける。概して上述したように、バイオマス10は広範囲の物質から選択することができる。1つの画分30は、発酵性糖または容易に発酵性糖に変換され得る物質を含む。例えば、バイオマスは、典型的には、炭水化物画分と非炭水化物画分とを含有する。炭水化物画分は、セルロース、ヘミセルロース、デンプンおよび糖を含有し得る。セルロース、ヘミセルロースおよびデンプンは、典型的には、グルコース、キシロース、アラビノース、マンノースなどのような糖を含み得る。別の画分40は、複合フェノール樹脂材料であるリグニン、並びにタンパク質、樹脂状物質および無機物を含有し得る非炭水化物画分である。画分40はガス化工程100を通され、該工程では水素ガス110が生成される。水素ガス110は、エタノール130を生成することを目的とした水素化120の工程で用いられるか、またはブタノールおよびヘキサノール220を生成するための水素化210の工程において用いられ得る。
【0058】
発酵性糖または容易に発酵性糖に変換され得る物質を含む画分30は、酢酸生成発酵50における基質として用いられる。酢酸生成発酵50の生成物は、アセタート、酢酸およびそれらの混合物であり、これらの成分を含む発酵培地は、酢酸60に酸性化され得る。前記発酵工程の目的は発酵性炭水化物を酢酸に変換することである。次いで、酢酸60は、メチルアルコールまたはエチルアルコールのようなアルコール90とのエステル化工程70を通って、揮発性エステル80を形成するように導かれる。前記酸性化およびエステル化プロセスを高転化に促進するために、反応蒸留プロセスを用いることができる。酢酸60のエステル80の2種のアルコールへの変換は、ガス化工程100からの水素110を用いて、水素化120によって行われる。このプロセスのためには多くの可能な水素供給源が存在するが、反応のために十分な純度の水素を生成し、水素化触媒を阻害しない任意の供給源が用いられ得る。水素化プロセス120は、エタノール130と、別のアルコール90とを形成する。別のアルコール90はエステル化の工程に再利用される。別のアルコール90はエタノールを含む任意のアルコールであり得る。
【0059】
水素化120からのエタノール130の画分および酢酸生成発酵50からの酢酸60の画分は、酸生成発酵150における基質として使用するために組み合わせられて、酪酸、ブチラート、カプロン酸、カプロエートおよびそれらの混合物を生成し、これらの成分を含む発酵培地は、酪酸およびカプロン酸160に酸性化され得る。前記酪酸およびカプロン酸160は、酸がエステル180に変換されるエステル化工程170を受ける。酪酸160およびカプロン酸160のエステル180のアルコールへの変換は、水素化210によって行われる。ガス化工程100からの水素ガス200は、水素化工程210に供給される。酪酸およびカプロン酸160のエステル180の水素化210は、前記エステルをブタノール、ヘキサノールおよびそれらの混合物220と別のアルコール190とに変換する。水素化プロセス210によって生成された別のアルコール190は、酸混合物のエステル化工程170に再利用(190)される。
【0060】
本発明のプロセスは、他の既知の技術よりも、バイオマスから高級アルコール生成物への化学エネルギーの流れの著しく高度な捕捉と、より高い化学的効率とを提供する。図2を参照すると、ブタノールを生成するための2つの既知の技術と本発明の実施形態との間の比較が示されている。図2の異なる経路は、太字の下線付き数字で示され、100に相当する出発バイオマスに対して正規化された化学エネルギーの流れと共に、3つの異なる技術における様々な生産工程を示している。また、木材のエネルギー含量(HFTV高位発熱量)に基づいて、200gal/BDT(Bone Dry Ton: 絶乾重量1トン当たり)の収量が100%の化学的効率であると仮定した、前記技術の各々の化学的効率も示されて
いる。
【0061】
ABE発酵技術の計算は、Acetone-Butanol Fermentation Revisited、2006年12月、第50(4)巻、第484〜524頁に基づいており、酪酸ハイブリッド技術の計算は、米国特許公開公報第2008/0248540号に基づいている。酸生成ハイブリッド技術は、本発明の実施形態である。図2に示したように、ABE技術の化学エネルギーの流れは、出発バイオマスの化学エネルギーの30%がブタノール、エタノールおよびアセトンに変換されこととなり、酪酸ハイブリッド技術は、出発バイオマスの化学エネルギーの50%がブタノールに変換されることになる。対照的に、本発明の酸生成ハイブリッド技術は、出発バイオマスの化学エネルギーの75%がブタノールおよびヘキサノールに変換されることとなる。さらに、本発明の酸生成ハイブリッド技術の収量は、150gal/BDTである。これは、酪酸ハイブリッド技術(100gal/BDT)およびABE技術(60gal/BDT)の収量よりも著しく高い。
【0062】
本発明の様々な実施形態について詳細に説明してきたが、当業者がそれらの実施形態の変更および改造に想到するであとうことは明白である。しかしながら、そのような変更および改造は本発明の精神および範囲内にあることは明らかに理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタノールおよびヘキサノールを生成するための方法であって、
(a)炭水化物源を含む培地中でホモ酢酸生成発酵を行って、アセタート、酢酸、またはそれらの混合物を生成する工程と、
(b)前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物の一部をエタノールに化学的に変換する工程と、
(c)前記エタノールと、前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物の一部とを含む培地中で酸生成発酵を行って、ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物を生成する工程と、
前記ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換する工程とを備える、方法。
【請求項2】
前記炭水化物源中の炭素の少なくとも約70%は、ブタノールおよびヘキサノールに変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭水化物源中の炭素の少なくとも約80%は、ブタノールおよびヘキサノールに変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炭水化物源中の炭素の少なくとも約90%は、ブタノールおよびヘキサノールに変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記炭水化物源中の炭素は、本質的に、二酸化炭素として放出されない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物の一部をエタノールに化学的に変換する工程は、ホモ酢酸生成発酵培地を酸性化して、アセタートを酢酸に変換する工程と、前記酢酸をエステル化する工程と、その酢酸エステルを還元してエタノールを形成する工程とを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記酸性化の工程は、酢酸の塩を含む発酵培地に、二酸化炭素、または酢酸より低いpKaを有する酸を導入することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記酸性化の工程は、前記発酵培地に二酸化炭素と共にアミンを導入して、酢酸/アミン錯体を形成することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記酸/アミン錯体を水不混和性溶媒と接触させて、前記水不混和性溶媒と酢酸とのエステルを形成する工程をさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換する工程は、前記酸生成発酵培地を酸性化して、ブチラートおよびカプロエートを酪酸およびカプロン酸に変換する工程と、前記酪酸およびカプロン酸をエステル化する工程と、その酪酸エステルおよびカプロン酸エステルを還元して、ブタノールおよびエタノールを形成する工程とを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記酸性化の工程は、酪酸およびカプロン酸の塩を含む発酵培地に、二酸化炭素、または酪酸およびカプロン酸より低いpKaを有する酸を導入することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記酸性化の工程は、前記発酵培地に、二酸化炭素と共にアミンを導入して、酪酸/ア
ミン錯体およびカプロン酸/アミン錯体を形成することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記酸/アミン錯体を水不混和性溶媒と接触させて、水不混和性溶媒と酪酸とのエステル、並びに水不混和性溶媒とカプロン酸とのエステルを形成する工程をさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記還元の工程のための還元剤は、炭素含有物質の一部の熱化学処理によって生成される、請求項6または10に記載の方法。
【請求項15】
前記熱化学処理は、ガス化、熱分解、改質および部分酸化のうちから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ホモ酢酸生成発酵のための炭水化物源は、前記炭素含有物質の一部から誘導される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記還元の工程は、水素化、水素化分解および一酸化炭素による還元のうちから選択される、請求項6または10に記載の方法。
【請求項18】
前記培地中でホモ酢酸生成発酵を行う工程は、培地中でムーレラ属またはクロストリジウム属の微生物を培養することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記培地中でホモ酢酸生成発酵を行う工程は、培地中でムーレラ・サーモアセチカム種またはクロストリジウム・フォルミコアセチカム種の微生物を培養することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記培地中で酸生成発酵を行う工程は、培地中でクロストリジウム属の微生物を培養することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記培地中で酸生成発酵を行う工程は、培地中でクロストリジウム・クルイベリ種の微生物を培養することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記炭水化物源は、炭水化物および非炭水化物を含む炭素含有化合物を含む物質から誘導される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記炭水化物源は、炭素含有化合物を含む物質から、ホモ酢酸生成発酵のための炭水化物含有画分を形成し、熱化学的変換プロセスによる生成物への変換のためのリグニンを含む残りの画分を形成するように、前記物質を分画することにより、誘導される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記熱化学的変換プロセスの生成物は、前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物の一部をエタノールに化学的に変換する工程、またはブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換する工程、またはそれらの双方の工程において用いられる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記分画の工程は、物理的処理、金属イオン処理、紫外線処理、オゾン処理、酸素処理、オルガノソルブ処理、水蒸気爆発処理、水蒸気爆発処理を伴う石灰含浸、水蒸気処理を有さない石灰含浸、過酸化水素処理、過酸化水素/オゾン(パーオキソン)処理、酸処理、希酸処理、および塩基処理のうちから選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記物質はバイオマスを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記物質は、草木物質、農業残渣、林業残渣、都市固形廃棄物、古紙、紙パルプ工場残渣のうちから選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記物質は、樹木、低木、草、小麦、麦わら、小麦ふすま、サトウキビバガス、トウモロコシ、トウモロコシの皮、トウモロコシ穀粒、コーンファイバー、都市固形廃棄物、古紙、庭ごみ、枝、潅木、エネルギー作物、果物、果皮、花、穀類、草本作物、葉、樹皮、針状葉、丸太、根、若木、短期輪作木質作物、スイッチグラス、野菜、つる植物、甜菜パルプ、オート麦の殻、広葉落葉樹、木材チップ、パルプ化工程からの中間流、および軟材のうちから選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記物質は、樹木、草、植物全体、および植物の構成成分のうちから選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記炭水化物源は、炭素含有化合物を含む物質であり、前記炭素含有化合物の約75重量%未満は炭水化物であり、前記方法の化学エネルギー効率は少なくとも約50%である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記炭水化物源は、炭素含有化合物を含む物質であり、前記炭素含有化合物の約75重量%未満は炭水化物であり、前記方法の化学エネルギー効率は少なくとも約60%である、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記炭水化物源は、炭素含有化合物を含む物質であり、前記炭素含有化合物の約75重量%未満は炭水化物であり、前記方法の化学エネルギー効率は少なくとも約70%である、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記炭水化物源は、炭素含有化合物を含む物質であり、前記炭素含有化合物の約75重量%未満は炭水化物であり、ブタノールおよびヘキサノールの収量は、炭水化物源に対して少なくとも約100gal/BDTである、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記炭水化物源は、炭素含有化合物を含む物質であり、前記炭素含有化合物の約75重量%未満は炭水化物であり、ブタノールおよびヘキサノールの収量は、炭水化物源に対して少なくとも約120gal/BDTである、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記炭水化物源は、炭素含有化合物を含む物質であり、前記炭素含有化合物の約75重量%未満は炭水化物であり、ブタノールおよびヘキサノールの収量は、炭水化物源に対して少なくとも約140gal/BDTである、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
ブタノールおよびヘキサノールを生成するための方法であって、
(a)エタノールと、アセタート、酢酸またはそれらの混合物とを含む培地中で酸生成発酵を行って、ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物を生成する工程と、
(b)前記ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換する工程とを備える、方法。
【請求項37】
前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物は、炭水化物源を含む培地中でホモ酢酸生成発酵を行って、アセタート、酢酸またはそれらの混合物を生成することによって、生成される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記エタノールは、炭水化物源を含む培地中においてホモ酢酸生成発酵を行って、アセ
タート、酢酸、またはそれらの混合物を生成し、前記アセタート、酢酸、またはそれらの混合物の一部をエタノールに化学的に変換することによって、生成される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記エタノールおよびアセタート、酢酸またはそれらの混合物中の炭素の少なくとも約70%は、ブタノールおよびヘキサノールに変換される、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記エタノールおよびアセタート、酢酸またはそれらの混合物中の炭素の少なくとも約80%は、ブタノールおよびヘキサノールに変換される、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記エタノールおよびアセタート、酢酸またはそれらの混合物中の炭素の少なくとも約90%は、ブタノールおよびヘキサノールに変換される、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記エタノールおよびアセタート、酢酸またはそれらの混合物中の炭素は、本質的に、全く二酸化炭素として放出されない、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物の一部をエタノールに化学的に変換する工程は、ホモ酢酸生成発酵培地を酸性化して、アセタートを酢酸に変換する工程と、前記酢酸をエステル化する工程と、前記酢酸エステルを還元して、エタノールを形成する工程とを備える、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記酸性化の工程は、酢酸の塩を含む発酵培地に、二酸化炭素、または酢酸より低いpKaを有する酸を導入することを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記酸性化の工程は、前記発酵培地に二酸化炭素と共にアミンを導入して、酢酸/アミン錯体を形成することを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記酸/アミン錯体を水不混和性溶媒と接触させて、前記水不混和性溶媒と酢酸とのエステルを形成することをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換する工程は、前記酸生成発酵培地を酸性化して、ブチラートおよびカプロエートを酪酸およびカプロン酸に変換する工程と、前記酪酸およびカプロン酸をエステル化する工程と、その酪酸エステルおよびカプロン酸エステルを還元して、ブタノールおよびエタノールを形成する工程とを備える、請求項36に記載の方法。
【請求項48】
前記酸性化の工程は、酪酸およびカプロン酸の塩を含む発酵培地に、二酸化炭素、または酪酸およびカプロン酸より低いpKaを有する酸を導入することを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記酸性化の工程は、前記発酵培地に、二酸化炭素と共にアミンを導入して、酪酸/アミン錯体およびカプロン酸/アミン錯体を形成することを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記酸/アミン錯体を水不混和性溶媒と接触させて、水不混和性溶媒と酪酸とのエステル、並びに水不混和性溶媒とカプロン酸とのエステルを形成することをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記還元の工程のための還元剤は、炭素含有物質の一部の熱化学処理によって生成される、請求項43または47に記載の方法。
【請求項52】
前記熱化学処理は、ガス化、熱分解、改質および部分酸化のうちから選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ホモ酢酸生成発酵のための炭水化物源は、前記炭素含有物質の一部から誘導される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記還元の工程は、水素化、水素化分解および一酸化炭素による還元のうちから選択される、請求項43または47に記載の方法。
【請求項55】
前記培地中でホモ酢酸生成発酵を行う工程は、培地中でムーレラ属またはクロストリジウム属の微生物を培養することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項56】
前記培地中でホモ酢酸生成発酵を行う工程は、培地中でムーレラ・サーモアセチカム種またはクロストリジウム・フォルミコアセチカム種の微生物を培養することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項57】
前記培地中で酸生成発酵を行う工程は、培地中でクロストリジウム属の微生物を培養することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項58】
前記培地中で酸生成発酵を行う工程は、培地中でクロストリジウム・クルイベリ種の微生物を培養することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項59】
前記炭水化物源は、炭水化物および非炭水化物を含有する炭素含有化合物を含む物質から誘導される、請求項37に記載の方法。
【請求項60】
前記炭水化物源は、炭素含有化合物を含む物質から、ホモ酢酸生成発酵のために炭水化物含有画分を形成し、熱化学的変換プロセスによる生成物への変換のためにリグニンを含む残りの画分を形成するように、前記物質を分画することにより、誘導される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記熱化学的変換プロセスの生成物は、前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物の一部をエタノールに化学的に変換する工程、またはブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換する工程、またはそれらの双方の工程において用いられる、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記分画の工程は、物理的処理、金属イオン処理、紫外線処理、オゾン処理、酸素処理、オルガノソルブ処理、水蒸気爆発処理、水蒸気爆発処理を伴う石灰含浸、水蒸気処理を有さない石灰含浸、過酸化水素処理、過酸化水素/オゾン(パーオキソン)処理、酸処理、希酸処理、および塩基処理のうちから選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記物質はバイオマスを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記物質は、草木物質、農業残渣、林業残渣、都市固形廃棄物、古紙、紙パルプ工場残渣のうちから選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
前記物質は、樹木、低木、草、小麦、麦わら、小麦ふすま、サトウキビバガス、トウモロコシ、トウモロコシの皮、トウモロコシ穀粒、コーンファイバー、都市固形廃棄物、古紙、庭ごみ、枝、潅木、エネルギー作物、果物、果皮、花、穀類、草本作物、葉、樹皮、針状葉、丸太、根、若木、短期輪作木質作物、スイッチグラス、野菜、つる植物、甜菜パ
ルプ、オート麦の殻、広葉落葉樹、木材チップ、パルプ化工程からの中間流、および軟材のうちから選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項66】
前記物質は、樹木、草、植物全体、および植物の構成成分のうちから選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項67】
前記炭水化物源は、炭素含有化合物を含む物質であり、前記炭素含有化合物の約75重量%未満は炭水化物であり、前記方法の化学エネルギー効率は少なくとも約50%である、請求項37に記載の方法。
【請求項68】
前記炭水化物源は、炭素含有化合物を含む物質であり、前記炭素含有化合物の約75重量%未満は炭水化物であり、前記方法の化学エネルギー効率は少なくとも約60%である、請求項37に記載の方法。
【請求項69】
前記炭水化物源は、炭素含有化合物を含む物質であり、前記炭素含有化合物の約75重量%未満は炭水化物であり、前記方法の化学エネルギー効率は少なくとも約70%である、請求項37に記載の方法。
【請求項70】
前記炭水化物源は、炭素含有化合物を含む物質であり、前記炭素含有化合物の約75重量%未満は炭水化物であり、ブタノールおよびヘキサノールの収量は、炭水化物源に対して少なくとも約100gal/BDTである、請求項37に記載の方法。
【請求項71】
前記炭水化物源は、炭素含有化合物を含む物質であり、前記炭素含有化合物の約75重量%未満は炭水化物であり、ブタノールおよびヘキサノールの収量は、炭水化物源に対して少なくとも約120gal/BDTである、請求項37に記載の方法。
【請求項72】
前記炭水化物源は、炭素含有化合物を含む物質であり、前記炭素含有化合物の約75重量%未満は炭水化物であり、ブタノールおよびヘキサノールの収量は、炭水化物源に対して少なくとも約140gal/BDTである、請求項37に記載の方法。
【請求項73】
炭水化物および非炭水化物を含む炭素含有化合物を含む物質からブタノールおよびヘキサノールを生成するための方法であって、該方法は、
a.前記炭水化物の少なくとも一部を含む培地中においてホモ酢酸生成発酵を行って、アセタート、酢酸、またはそれらの混合物を生成する工程と、
b.前記非炭水化物の少なくとも一部を熱化学処理によって処理して、還元剤を生成する工程と、
c.前記還元剤を用いて、前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物の一部をエタノールに化学的に変換する工程と、
d.前記エタノールと、前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物の一部とを含む培地中で酸生成発酵を行って、ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物を生成する工程と、
e.前記還元剤を用いて、前記ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノールおよびヘキサノールに化学的に変換する工程とを備える、方法。
【請求項74】
a.前記アセタート、酢酸またはそれらの混合物の一部をエタノールに化学的に変換する工程は、前記ホモ酢酸生成発酵培地を酸性化して、アセタートを酢酸に変換する工程と、前記酢酸をエステル化する工程と、前記還元剤を用いて、その酢酸エステルを還元して、エタノールを形成する工程とを含み、かつ、
b.前記ブチラート、酪酸、カプロエート、カプロン酸またはそれらの混合物をブタノ
ールおよびヘキサノールに化学的に変換する工程は、前記前記酸生成発酵培地を酸性化して、ブチラートおよびカプロエートを酪酸およびカプロン酸に変換する工程と、前記酪酸およびカプロン酸をエステル化する工程と、前記還元剤を用いて、その酪酸エステルおよびカプロン酸エステルを還元して、ブタノールおよびエタノールを形成する工程とを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記還元の工程は、水素化、水素化分解および一酸化炭素による還元のうちから選択される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記熱化学処理は、ガス化、熱分解、改質および部分酸化のうちから選択される、請求項73に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−511639(P2011−511639A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546092(P2010−546092)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/033561
【国際公開番号】WO2009/100434
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(502307014)ジーケム インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】ZeaChem Inc.
【Fターム(参考)】