説明

ブラウン管

【構成】 ブラウン管の漏斗状ファンネル2の径大部外表面にこの外表面上のアドレスを指定することが可能なパターンを設け、このパターンにより指定されるファンネルの径大部外表面上の所定のアドレスに画面特性を補正する補正部材を配置し得る構成とした。
【効果】 シャーシ・エフェクト対策の補正を容易かつ適正におこなうことができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【0001】[発明の目的]
【0002】
【産業上の利用分野】この発明は、ブラウン管に係り、特にファンネルの径大部外表面に補正部材を配置して画面特性を補正するブラウン管に関する。
【0003】
【従来の技術】ブラウン管、特にカラーブラウン管については、その性能の優劣を決定するものとして、3電子ビームのコンバーゼンス、画像歪みなどがある。この性能の優劣は、ブラウン管自体の設計、偏向ヨークの性能、ITC(Integrated Tube Compornents )に対する作業者の技術によるところ大であるが、それらによって良好な性能が得られたとしても、最終的には、シャーシに組込んだときに受ける磁界や信号などにより、本来の性能が得られない場合がほとんどである。
【0004】従来は、ブラウン管製造時に用いられる基本シャーシと最終的にブラウン管が組込まれるシャーシとの間に生ずるコンバーゼンスや画像歪みなどの特性の変化を測定し、偏向ヨークの設計やITCの作業時にその変化量を見込んだ補正を加え、最終的なシャーシ上での特性を良好にするという手段(シャーシ・エフェクト対策)がとられている。
【0005】しかし、偏向ヨークの設計にシャーシ・エフェクト対策の補正を加えることは、補正を加える必要のない他の特性への影響も考慮しなければならず、また目に見えない磁界を定められた方向、定められた量変化させるという内容になるため、その設計や管理が難しいという問題がある。
【0006】また、ITC作業でシャーシ・エフェクトを考慮した補正を加えることは、上記偏向ヨークを改良する場合にくらべて、簡単かつ短期間に対応可能であるが、この対応には、かなりの熟練したITC作業者が必要であり、また多品種ブラウン管について各種の補正量を記憶して作業することは困難であり、品質チェックの際にも、補正変化分を考慮に入れて確認しなければなず、手間がかかるという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、従来より最終的にシャーシに組込まれるブラウン管に所定の特性を付与する手段の一つにITC作業による方法がある。このITC作業によりブラウン管に所定の補正をかけることは、容易であり、短期間に対応できる利点があるが、反面、熟練者でないと、その作業に多くの時間を費やし、また多品種ブラウン管について適正に補正を加えることが困難であり、補正量のばらつきが大きくなるなどの問題がある。
【0008】この発明は、上記問題点を解決するためになさたものであり、熟練、非熟練者に関係なく、ITC作業によりブラウン管に所定の補正を容易にかけることができるように構成することを目的とする。
【0009】[発明の構成]
【0010】
【課題を解決するための手段】ブラウン管において、その漏斗状ファンネルの径大部外表面にアドレスを選択することが可能な設け、このパターンにより決定されるファンネルの径大部外表面上の指定のアドレスに画面特性を補正する補正部材を配置し得る構成とした。
【0011】
【作用】上記のように、ファンネルの径大部外表面にアドレスを選択することが可能なパターンを設けると、シャーシ・エフェクトによる変化量を測定して、その量に合った補正部材の種類と配置位置とを決定することにより、ITC熟練者でなくても、補正部材の種類と配置位置の情報のみで、シャーシ・エフェクト対策の補正を容易かつ適正におこなうことができるようになる。
【0012】
【実施例】以下、図面を参照してこの発明を実施例に基づいて説明する。
【0013】図1にその一実施例であるカラーブラウン管を示す。このカラーブラウン管は、ほぼ矩形状のパネル1およびこのパネル1に一体に接合された漏斗状のファンネル2からなる外囲器を有し、そのパネル1内面に、青、緑、赤に発光する3色蛍光体層からなる蛍光体スクリーンが形成され、この蛍光体スクリーンに対向して、その内側に多数の電子ビーム通過孔の形成されたシャドウマスクが装着されている。またファンネル2のネック3内に、3電子ビームを放出する電子銃が配設されている。
【0014】なお、図1において、4はファンネルの径大部に設けられた陽極端子、5はファンネルの径大部外表面に陽極端子近傍を避けて塗布形成された外部導電膜、6はパネル外側部を緊締する防爆バンド、7はブラウン管をセットに取付けるための取付け金具、8はファンネルの径大部とネックとの境界部外側に装着された偏向ヨーク、9はネック3の外側に装着された静コンバーゼンスおよび色純度調整用磁石7である。
【0015】さらに、この例のブラウン管においては、ファンネル2の径大部外表面に、上記外部導電膜5とオーバラップするようにその径大部外表面に沿って放射方向に延在する複数の縦線11と、この縦線11と直交するように径大部外表面に沿って横方向に延在する複数の横線12とからなる交差線パターンが径大部外表面に対して凸状に設けられている。このようなパターンは、たとえばファンネル2の径大部外表面に任意色の塗料を塗布することにより形成することができる。そしてその縦線11および横線12には、1,2,3…、A,B,C…で示したように記号が付けられ、その縦線11および横線12の記号を指定することにより、ファンネル2の径大部外表面上の位置、すなわちアドレスを正確に指定することができるようになっている。
【0016】ITC作業では、製造されたブラウン管に偏向ヨーク8を装着してその装着位置を調整するとき使用する基本シャーシと最終的にブラウン管を組込むシャーシとの間の特性の変化を測定し、その変化量を補正することが可能な補正部材を上記ファンネル2の径大部外表面上に取付けして補正するが、特に永久磁石など方向性を有する補正部材については、図2に示すように、その取付け方向を正確に決定できるように、記号1,2,3…のついた複数の放射方向線14などからなるパターンが設けられている。
【0017】したがって、上記ブラウン管でのITC作業は、製造されたブラウン管に偏向ヨーク8を装着してその装着位置を調整するとき使用する基本シャーシと最終的にブラウン管を組込むシャーシとの間の性能の変化を測定して、その変化量を補正可能な補正部材を上記ファンネル2の径大部外表面上に取付けして補正するが、上記のようにファンネル2の径大部外表面に、アドレスを任意かつ正確に指定できるパターンを設けておくと、上記基本シャーシでの測定時に補正部材の種類、取付け位置、取付け方向などの情報を得、その後、その情報に基づいて、所定の補正部材を指定のアドレス、指定の方向に取付けることにより、シャーシ・エフェクト対策が実施できる。
【0018】すなわち、上記のようにブラウン管を構成することにより、ITC熟練者でなくても、ITC作業を容易つ適正におこなうことができる。またセット・メーカー(エンド・ユーザー)にブラウン管が納入されたのちに、画像歪みなどの特性変化が生じても、問題検討後、補正部材の種類、取付け位置、取付け方向などの情報を相手方に伝達するのみで、補正作業の実施が可能となる。さらに上記のように構成されたブラウン管では、通常のITC作業をおこない、品質チェックしたのちに補正部材を取付けることもできるため、品質管理が容易となるなどの利点がある。
【0019】なお、上記実施例では、ファンネルの径大部外表面に塗料を塗布してパターンを凸状に形成したが、このパターンは、ファンネルの径大部外表面をエッチングなどにより凹状に形成してもよく、また凸と凹との組合わせからなるパターンを形成してもよい。
【0020】また、上記実施例では、パターンをファンネルの径大部外表面に沿って放射方向に延在する複数の縦線と、この縦線と直交して横方向に延在する複数の横線とからなる交差線で形成したが、このパターンは、要するにファンネルの径大部外表面上のアドレスを容易に選択できるものであればよく、ファンネルの径大部外表面に複数の点を点在させた点パターンなど、他のパターンでもよい。
【0021】なお、ファンネルの径大部外表面に取付ける補正部材としては、永久磁石のほか、フェライト片、鉄片などがあるが、その補正部材の種類の選択は、補正を必要とするブラウン管の特性や補正量に応じて決定される。
【0022】なお、ブラウン管の外囲器の外表面に凹凸パターンを形成することについては、実開昭51−112453号公報に示されているが、この公報に示されている凹凸パターンは、装着された偏向ヨークや静コンバーゼンス調整用マグネットなどの位置ずれを防止するためのものであり、上述したこの発明に係るパターンとは、構成、作用効果が相違するものである。
【0023】
【発明の効果】ブラウン管のファンネルの径大部外表面にアドレスを選択することが可能なパターンを設けると、シャーシ・エフェクトによる変化量を測定して、その量に合った補正部材の種類、配置位置、配置方向などを決定することにより、ITC熟練者でなくても、補正部材の種類、配置位置、配置方向などの情報のみでシャーシ・エフェクト対策の補正を容易かつ適正におこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例であるカラーブラウン管の要部構成を示す斜視図である。
【図2】上記カラーブラウン管に取付けられる永久磁石からなる補正部材の斜視図である。
【符号の説明】
1…バネル
2…ファンネル
4…陽極端子
5…外部導電膜
11…縦線
12…横線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 漏斗状ファンネルの径大部外表面にこの外表面上のアドレスを選択することが可能なパターンが設けられ、このパターンにより決定される上記ファンネルの径大部外表面上の指定のアドレスに画面特性を補正する補正部材を配置し得る構成にしたことを特徴とするブラウン管。

【図1】
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【図2】
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