説明

ブラケットの固定構造

【課題】
ねじを用いずにブラケットを固定基体にしっかりと固定できるようにする。ブラケットの板厚や板幅が多少変化してもブラケットを確実に固定できるようにする。
【解決手段】
断面略逆U字形に形成され、かつ両外面に鋸歯状突起26が形成されたリテーナ22を用いる。固定基体12には、リテーナ22が押し込まれるホルダー28を立設すると共に、ホルダー28の先端に前記鋸歯状突起26と係合するロック爪30を形成する。ホルダー28間にブラケット14を差し込むと共に、このブラケット14に跨らせたリテーナ22をホルダー28間に押し込む。これにより、リテーナ22でブラケット14を挟み付けると共に、リテーナ22の鋸歯状突起26をホルダー28のロック爪30に係合させ、ブラケット14を固定する。リテーナ22の内面を、リテーナ開口端から奥の方へ行くに従い間隔が狭くなるようにテーパー状に形成することで、ブラケット14の厚さや幅の変化に対応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品や機器に設けられているブラケットを固定基体に固定する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車に搭載される部品や機器を、筐体や車体等の固定基体に取り付ける場合には、搭載すべき部品や機器にブラケットを設けて、このブラケットを筐体や車体等の固定基体にねじで固定するのが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、ねじを用いずに固定する構造としては、例えば図4及び図5に示すようなものが考案されている。図示の例は、大型リレー10を電気接続箱の筐体12(固定基体)に取り付ける場合である。リレー10は両側に固定用のブラケット14を有し、上面にワイヤーハーネスの丸端子(図示せず)が接続されるねじ端子16を有するものである。通常はブラケット14を筐体12にねじ止めすることにより固定するが、この固定構造は、筐体12に、上端に係止爪20を有する一対のホルダー18を立設し、このホルダー18間にブラケット14を差し込むことにより固定するものである。この固定構造はブラケット14をホルダー18間に差し込むだけでよいので、固定作業が簡単である。
【0004】
【特許文献1】特開平11−127523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ブラケットを固定基体にねじ止めする構造では、ブラケットのねじ穴の位置決めや、ねじの締め付け等の手間が必要であり、さらにねじ締め時の締め付けトルクの管理など厄介な作業も必要となる。
【0006】
また図4及び図5のような固定構造では、ブラケット14が抜け出さないようにするために、ホルダー18とブラケット14の間に隙間Sがなるべく発生しないように設計されるが、ブラケット14の板厚公差を考慮すると、ブラケット14をホルダー18に挿入可能にするためには、最大公差時に合わせて設計する必要がある。そのため、ホルダー18とブラケット14との間には隙間Sが発生することがあり、ブラケット14のガタツキが生じやすく、ブラケット14をしっかりと固定できないという問題がある。またブラケット14の寸法(厚さ、幅)が少しでも変わればホルダー14を作り変えなければならないという問題もある。
【0007】
本発明の目的は、ねじを用いずにブラケットをしっかりと固定することができる固定構造を提供することにある。もう一つの目的はブラケットの断面寸法が多少変化してもブラケットを確実に固定することができる固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ブラケットを固定基体に固定するブラケットの固定構造において、
断面略逆U字形に形成され、かつ両脚部の外面に鋸歯状突起が形成されたリテーナを用い、
ブラケットが固定される固定基体には、前記リテーナが押し込まれる一対のホルダーを立設すると共に、このホルダーの先端に前記リテーナの鋸歯状突起と係合するロック爪を形成し、
前記ホルダー間にブラケットをその板幅面をホルダー立設方向に向けて差し込むと共に、このブラケットに跨らせたリテーナをホルダー間に押し込むことにより、リテーナでブラケットを挟み付けると共に、リテーナの鋸歯状突起をホルダーのロック爪に係合させたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係るブラケットの固定構造は、前記リテーナの両脚部の内面が、リテーナの開口端から奥の方へ行くに従い間隔が狭くなるようにテーパー状に形成されていることが好ましい。
【0010】
また本発明に係るブラケットの固定構造は、前記リテーナの鋸歯状突起の先端間隔が、前記ホルダーの内面間隔と同等に設定されていることが好ましい。
【0011】
また本発明に係るブラケットの固定構造は、前記固定基体のホルダーの隣りに、ブラケットをホルダー間の中間位置に位置決めするガイド片が形成されているものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、略逆U字形のリテーナをブラケットに跨らせてホルダー間に押し込むことにより、リテーナでブラケットを挟み付けると共に、リテーナの鋸歯状突起をホルダーのロック爪に係合させるようにしたので、ブラケットを固定基体にガタツキなくしっかりと固定することができる。
【0013】
またリテーナの両脚部の内面をテーパー状に形成しておけば、ブラケットの断面寸法が多少変化しても、リテーナの押し込み量を加減することで、ブラケットを確実に固定することができる。
【0014】
またリテーナの鋸歯状突起の先端間隔を、前記ホルダーの内面間隔と同等にしておけば、リテーナとホルダーの間に隙間ができなくなり、ガタツキをより確実に防止することができる。
【0015】
また固定基体のホルダーの隣りに、ブラケットをホルダー間の中間位置に位置決めするガイド片を設けておけば、ホルダーにブラケットが異常な方向から差し込まれることがなくなるので、ブラケットを差し込むときにホルダーのロック爪を破損するのを防止できると共に、リテーナの押し込みを正しい姿勢で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1ないし図3は本発明に係るブラケットの固定構造の一実施形態を示す。この固定構造では、大型リレー10(部品)のブラケット14を電気接続箱の筐体12(固定基体)に固定するのに、リテーナ22を用いる。リテーナ22は、ブラケット14にその板厚面を背にして跨るように断面略逆U字形に形成され、その両脚部24の外面に鋸歯状突起26が形成されているものである。またリテーナ22の両脚部24の内面は、リテーナ22の開口端(ブラケット14が入る側)から奥の方へ行くに従い間隔が狭くなるように、テーパー状に形成されている。
【0017】
また、ブラケット14が固定される電気接続箱の筐体12には、前記リテーナ22が押し込まれる一対のホルダー28が立設されており、このホルダー28の先端には前記リテーナ22の鋸歯状突起26と係合するロック爪30が内向きに形成されている。
【0018】
上記のように形成されたホルダー28間にブラケット14をその板幅面をホルダー立設方向に向けて差し込むと共に、このブラケット14に跨らせたリテーナ22をホルダー28間に押し込む。すると、図3に示すように、リテーナ22がブラケット14を挟み付けると共に、リテーナ22の鋸歯状突起26がホルダー28のロック爪30に係合し、ブラケット14が筐体12に固定された状態となる。
【0019】
ブラケット14の板厚が比較的厚い場合には、図3(A)のようにホルダー28へのリテーナ22の押し込み量が少ない状態でブラケット14を固定できる。またブラケット14の板厚が標準的な場合には、同図(B)のようにリテーナ22を中間まで押し込んだ状態でブラケット22を固定できる。さらにブラケット14の板厚が比較的薄い場合には、同図(C)のようにリテーナ22の押し込み量を多くすることでブラケット14を固定できる。つまりこの固定構造は、ブラケット14の板厚が多少変化しても、ブラケット14を確実に固定することができる。またブラケット14の板幅が多少変化した場合でも、同様にしてブラケット14を確実に固定することができる。
【0020】
またこの固定構造では、リテーナ22の両外面の鋸歯状突起26の先端間隔Pが、ホルダー28の内面間隔Qと同等に設定されている(図2参照)。このようにすると、リテーナ22とホルダー28の間に隙間ができなくなり、ガタツキをより確実に防止することができる。
【0021】
またこの固定構造では、ホルダー28の隣りに、ブラケット14をホルダー28間の中間位置に位置決めするガイド片32が立設されている。このようなガイド片32を設けておくと、ホルダー28にブラケット14が異常な方向から差し込まれることがなくなるので、ブラケット14を差し込むときにブラケット14がホルダー28のロック爪30に突き当たってロック爪30が破損する事故を防止することができると共に、リテーナ22の押し込みを正しい姿勢で行うことができる。
【0022】
なお図面では、リレー10の片方のブラケット14を筐体12に固定する構造を示したが、他方のブラケット14の固定構造もこれと同じである。
【0023】
また以上の実施形態では、リレーのブラケットを電気接続箱の筐体(固定基体)に固定する場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、部品や機器に設けられたブラケットを、筐体や車体等の固定基体に固定する場合一般に広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るブラケットの固定構造の一実施形態を、固定前の状態で示す斜視図。
【図2】図1の固定構造の要部の断面図。
【図3】図1の固定構造の固定後の状態を示すもので、(A)はブラケットの厚さが厚い場合、(B)はブラケットの厚さが標準的な場合、(C)はブラケットの厚さが薄い場合の断面図。
【図4】従来のブラケットの固定構造の一例を、固定前の状態で示す斜視図。
【図5】図4の固定構造の、固定後の状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0025】
10:リレー
12:電気接続箱の筐体(固定基体)
14:ブラケット
22:リテーナ
24:脚部
26:鋸歯状突起
28:ホルダー
30:ロック爪
32:ガイド片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラケットを固定基体に固定するブラケットの固定構造において、
断面略逆U字形に形成され、かつ両脚部の外面に鋸歯状突起が形成されたリテーナを用い、
ブラケットが固定される固定基体には、前記リテーナが押し込まれる一対のホルダーを立設すると共に、このホルダーの先端に前記リテーナの鋸歯状突起と係合するロック爪を形成し、
前記ホルダー間にブラケットをその板幅面をホルダー立設方向に向けて差し込むと共に、このブラケットに跨らせたリテーナをホルダー間に押し込むことにより、リテーナでブラケットを挟み付けると共に、リテーナの鋸歯状突起をホルダーのロック爪に係合させたことを特徴とするブラケットの固定構造。
【請求項2】
前記リテーナの両脚部の内面が、リテーナの開口端から奥の方へ行くに従い間隔が狭くなるようにテーパー状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のブラケットの固定構造。
【請求項3】
前記リテーナの鋸歯状突起の先端間隔が、前記ホルダーの内面間隔と同等に設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載のブラケットの固定構造。
【請求項4】
前記固定基体のホルダーの隣りに、ブラケットをホルダー間の中間位置に位置決めするガイド片が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のブラケットの固定構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−158099(P2006−158099A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345404(P2004−345404)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】