説明

ブラシシール組立体とその作成方法

ブラシシールに用いられる剛毛パックは、支持部材と複数の剛毛を有する。剛毛は支持部材に対して折り曲げられて折り目を形成し、折り目と対向して支持部材に隣接し集合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に高圧と低圧の領域間のギャップをシールするためのブラシシールに関し、より詳細には、支持部材回りに集められた剛毛で作られたブラシシールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガスタービンエンジンで見られるギャップをシールするためにブラシシールを用いることは、当技術分野で周知である。例えば、ガスタービンエンジンにおいて、エンジンの回転軸周りのマシンハウジングとローター間の円周状ギャップや、エンジン内の異なる流体圧を有する二つの空間の間の円周状ギャップにおける流体の漏れを最小化するために、ブラシシールがよく利用されている。システム内における液体又は気体からなる流体圧は、吐出圧力(流体が漏れ出ようとする、エンジンハウジングの外側の圧力)より大きく、従ってシステムに圧力差を生成させる。ここで用いられるように、ブラシシールのシステム圧力側を高圧側と称し、一方、ブラシシールの吐出圧力側を低圧側と称する。
【0003】
既知のブラシシールは、金属製又は非金属製のファイバから作ることができる。金属製のブラシシールは、一般的に昇温動作に適したコバルト又はニッケルベースの高温超合金ワイヤから作られたファイバを有している。非金属製ブラシシールは、セラミック又は高分子材料から作られたファイバを有することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1は、従来のブラシシールの一部を示している。従来のブラシシールは、伝統的に柔軟な剛毛パック1と、ギャップをシールするための複数の剛毛2を有しており、剛毛2は例えばローターのような1つのコンポーネントと接触するための自由端を有している。従来技術の剛毛パック1における剛毛2は、一般的にチャネル4で剛毛2を圧接することによって支持部材3に固定されている。例えば米国特許第4730876号に示され記載されているような、圧着用管4を用いて剛毛2を固定することは、圧着用管4が支持部材3と剛毛2に対して圧着するまでは剛毛2が固定されないため、しばしば困難である。結果的に、この製造方法は時間がかかり、費用がかかるものであった。従って、シンプルで製造し易い剛毛パックとそれを用いたブラシシールに対するニーズが存在した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ブラシシールで用いる剛毛パックと、ブラシシールと、剛毛パックの作成方法を提供する。剛毛パックは、長い支持部材と複数の剛毛とを有する。剛毛は支持部材に対して折り曲げられて折り目を形成し、また折り目の反対側に支持部材に隣接して集められる。
【0006】
本発明の一般的な目的は、剛毛パックと、ブラシシールと、シンプルで製造し易い剛毛パックの製造方法を提供することである。この目的は、支持部材に対して折り曲げられて、折り目の反対側に支持部材と隣接して集められた剛毛を有する剛毛パックを提供することによって達成される。
【0007】
本発明のこれらの目的や他の目的と長所は、以下の明細書の記載によって明らかになるであろう。以下の詳細な説明において、本発明の好ましい実施例が、添付図面を参照して記載される。これらの実施例は、本発明の全範囲を表わすものではない。むしろ本発明は他の実施例においても採用される。従って、発明の大きさを解釈するために請求項を参考にするべきである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来のブラシシールの斜視図である。
【図2】ハウジングに設けられた柔軟な前方及び後方プレートを供えたブラシシールデザインの概略図である。
【図3】本発明を具体化した図2の剛毛パックの正面図である。
【図4】図3の線4−4に沿った詳細図である。
【図5】図3の剛毛のグループの斜視図である。
【図6】図3の剛毛パックを部分的に組立てた正面図である。
【図7】本発明を具体化した図2の剛毛パックの他の実施例の正面図である。
【図8】図7の剛毛の3つのグループの前方斜視図である。
【図9】図8の剛毛の3つのグループの後方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に図2を参照して、例えばロッド又は芯材からなる支持部材16回りに折り曲げられた複数の剛毛14で構成された剛毛パック12を有するブラシシール10を示す。図2に概略的に示すように、剛毛14が支持部材16を包んで、剛毛パック12を形成している。図2に示す実施例において、剛毛パック12は、ローター26に取り付け可能なブラシシールハウジング18に設けられて、剛毛14は半径方向内側に延在して、回転軸24と係合している。もちろん、本発明の範囲を逸脱することなしに、ブラシシールハウジング18を回転軸24に取り付けて、剛毛14をローター26に係合させることができる。
【0010】
支持部材16は、好ましくは柔軟性のある金属で形成された、固体の又は網組された芯線である。支持部材16は、ブラシシール用途に要求される所望の形状に形成される。柔軟性のある支持部材が好ましいが、本発明の範囲を逸脱することなしに、支持部材16は剛性フレームで構成することができる。最も好ましくは、支持部材16は、そこに固定された剛毛14を切断したり折ったりするような荒れた端部を有さない。
【0011】
例えば図3で示すように支持部材16が円形であった場合、剛毛14は支持部材16に対して包み込み、又は折り曲げられて、折り目28を支持部材16の外径部に形成する。各剛毛14の先端部32は、半径方向内側に延在して、回転軸24と係合する。もちろん、もしブラシシール10が回転軸24に設けられた場合、剛毛の折り目28は、円形支持部材16の内径を形成し、剛毛14の先端部32は、半径方向外側に延在する。
【0012】
折り目28と反対側で支持部材16に隣接したところに剛毛14を集めて結ぶことによって、剛毛14は支持部材16に固定される。図3ないし6に開示された実施例において、折り目28と反対側で支持部材16に隣接したところに剛毛14を集めて結ぶ縫製糸36によって、剛毛14は支持部材16に固定されている。剛毛14を集めて結ぶために用いられる縫製糸36は、剛毛14と同じ材料でできていても良いし、例えば綿、金属、ポリマー、セラミック等の他の適切な材料でできた糸でも良い。剛毛14は、図3ないし6に示すように、個別の房状になるようにグループ化され、又は結ばれることができるし、又は本発明の範囲を逸脱することなく、長い連続した細片状に形成することもできる。
【0013】
折り曲げられた剛毛14に対して圧着用管4を圧着することで、例えば図1の従来例の管のような圧着用管4、又はUリングを、支持部材16に対して剛毛14をさらに固定するために利用することができる。安全性を高めるために、必要があれば、剛毛14を支持部材16に接着剤で接着することができる。
【0014】
本発明の1つの実施例において、剛毛14が直径約0.02〜0.05インチのねじった、又は編んだセラミック又は高分子繊維によって形成されている。セラミック剛毛は、例えば酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化ボロン等のセラミック酸化物や、Nextel(商標登録)ファイバ、炭化ケイ素ファイバや、他の全体的にセラミック/金属又はセラミック/セラミック合成材料で作られたセラミックファイバ等を含むがこれに限定されるものではない適切な高温セラミック繊維で、形成することができる。高分子剛毛は、超高強度のKEVLAR(登録商標)繊維や、高強度で中程度の温度(〜300℃)の用途に用いるNOMEX(登録商標)繊維等を含むがこれに限定されるものではない適切な高温高分子材料で、形成することができる。KEVLAR(登録商標)とNOMEX(登録商標)とは、DuPontが製造する合成芳香族ポリアミドポリマーである。他の適切な高分子材料も、ブラシシールのためにねじったり又は編んだりした繊維として利用することができ、これは当業者には周知である。
【0015】
1つの実施例においては、NOMEX(登録商標)ファイバが好ましい。なぜなら、NOMEX(登録商標)ファイバは、全体的に耐熱・耐炎衝撃特性が必須の用途に対して、強い織物に仕立てられるからである。NOMEX(登録商標)は、非常に薄くて、直径が約25マイクロメータから0.001インチの範囲で、低い弾性率を有している。ねじったNOMEX(登録商標)ファイバは、個々のファイバよりかなり厚くて、直径が約900ミクロンから0.36インチの範囲であり、従来の自動ブラシストリップ製造プロセスを利用してブラシストリップを製造できるほどに剛直である。これは、以下で説明するブラシシールインサートに加工されるNOMEX(商標登録)ブラシストリップの製造コストを低減するのに役立つ。
【0016】
ローターの運動中の高分子ファイバの曲げを容易にするために、ファイバストリップは流体の流れの軸方向に、低圧(Lp)側に向かって、傾けることができる。幾らかの剛性を提供するために、図2に示すブラシシールハウジング18を形成するより剛直な前方プレート52と剛直な後方プレート54に取り付けられた、より薄い前方プレート44と後方プレート48の間の軸方向に傾いた位置に、柔軟な剛毛パック12を保持することができる。もちろん、必要があれば、本発明の範囲から逸脱することなく、剛毛パック12を高圧側に向かって傾けることもできる。
【0017】
剛毛の先端部32のみを露出して、取り付け中や取り扱いミスの際に、より柔らかな高分子ファイバの損傷を防ぐために、柔軟なプレートは、剛毛14を所定の長さまで延在することができる。高分子ブラシシールは、インターシャフトシール構成のために、第一端部でステータハウジング又はローター26に取り付けられ、第二端部で回転軸24と接触する。剛毛パックは、柔軟な金属製バックプレートセグメントによって支持されているので、回転シールとして、遠心力に由来する高分子ファイバにおけるストレスは最小化されている。金属製セグメントは、遠心力による最大曲げ応力に耐えるように設計されている。剛毛14を、流体の流れ方向に対して軸方向に傾けた前方プレートと後方プレート44、48、52、54の間に固定することによって、(プレート44、48、52、54は、外径方向の剛直なプレート52、54と内径方向のより薄いプレート44、48とで構成されているが、)剛直パックの変位が制御されて、剛毛パック12におけるストレスが最小化される。
【0018】
図3ないし図6に示された実施例において、剛毛パック12は、所望の剛毛密度が得られるまで、支持部材16周りに剛毛14を包む又は折り曲げることによって作成されている。支持部材16周りに剛毛14を包む又は折り曲げることで、各剛毛14に折り目28を形成する。上述のように、剛毛14は、金属、セラミック、高分子、有機材料やこれらの組み合わせをもとに作成することができる。剛毛14は、縫製糸36によって支持部材16に対して固定され、縫製糸16は、折り目28の反対側で支持部材16に隣接した剛毛14を集めて結ぶ。
【0019】
ひとたび所望の長さの剛毛パック12が得られると、支持部材の端部42同士が、溶接で接続される。理想的には、これは突き合わせ溶接で行なわれるが、端部42同士を接着剤で接続することも、他の手段によって接続することもできる。ここで開示された実施例では、最終組立てで輪状に形成され、ブラシシール組立体10のハウジング18のような適切なハードウエアに組み付けることができる。好ましくは、支持部材16と剛毛パック12が輪状、又は円形に形成される。しかし、剛毛パック12は、本発明の範囲を逸脱することなく、例えば正方形、長方形、楕円形、三角形等のあらゆる形状をとることができる。
【0020】
図7ないし図9に示す他の実施例において、上述のように、剛毛パック112は、支持部材116周りに剛毛114を包むことによって、各剛毛114に折り目を形成する。図7ないし図9に示す他の実施例において、例えばステープルのような金属性クリップ132が、剛毛114の各グループに対してステープラーで綴じる等によって、巻き付けられている。クリップ132は、折り目128の反対側に支持部材116に隣接して剛毛114を集めて結ぶことによって、個々の房144を形成している。隣接する房144は、隣接した剛毛114のグループに巻き付けられた隣接するクリップ132によって形成されている。有利なことに、各クリップ132は迅速かつ効率的に剛毛の各グループを支持部材に固定する。
【0021】
ここに開示された実施例から、種々の変形をなすことができることが理解されるであろう。従って、上の記述は発明を限定するものではなく、単に好ましい実施例の例示にすぎない。本発明の範囲と精神と意図の範囲内で、当業者は他の変形を想定するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、
前記支持部材に対して折り曲げられて折り目を形成し、前記折り目に対向して前記支持部材に隣接して集合する複数の剛毛と、
によって構成された、ブラシシールに用いるための剛毛パック。
【請求項2】
前記剛毛の少なくとも幾らかが、縫製糸によって集められたことを特徴とする請求項1に記載の剛毛パック。
【請求項3】
前記剛毛の少なくとも幾らかが、クリップによって集められたことを特徴とする請求項1に記載の剛毛パック。
【請求項4】
前記剛毛が金属製であることを特徴とする請求項1に記載の剛毛パック。
【請求項5】
前記剛毛が非金属製であることを特徴とする請求項1に記載の剛毛パック。
【請求項6】
前記支持部材が、柔軟性のある針金で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の剛毛パック。
【請求項7】
前記複数の剛毛が、複数のグループに分けられて、各グループが前記折り目に対向して前記支持部材に隣接して結ばれ合っていることを特徴とする請求項1に記載の剛毛パック。
【請求項8】
前記グループの少なくとも1つがクリップによって結ばれていることを特徴とする請求項7に記載の剛毛パック。
【請求項9】
前記グループの少なくとも1つが縫製糸によって結ばれていることを特徴とする請求項7に記載の剛毛パック。
【請求項10】
複数の剛毛を支持部材に対して折り曲げて、折り目を形成するステップと、
前記折り目に対向して前記支持部材に隣接した剛毛を集めて、前記支持部材に対して前記剛毛を固定するステップと、
によって構成された、剛毛パックの作成方法。
【請求項11】
前記剛毛を集めるステップが、少なくとも前記剛毛の幾らかにクリップを取り付けるステップを有していることを特徴とする請求項10に記載の作成方法。
【請求項12】
前記剛毛を集めるステップが、少なくとも前記剛毛の幾らかを縫い合わせてグループにするステップを有していることを特徴とする請求項10に記載の作成方法。
【請求項13】
前記支持部材をリングに変形させるステップをさらに有していることを特徴とする請求項10に記載の作成方法。
【請求項14】
前記支持部材の第一端部と第二端部を結合するステップをさらに有していることを特徴とする請求項13に記載の作成方法。
【請求項15】
支持部材と、前記支持部材に対して折り曲げられて折り目を形成し、前記折り目に対向して前記支持部材に隣接して集合する複数の剛毛と、によって構成された剛毛パックを備えたブラシシール。
【請求項16】
前記剛毛の少なくとも幾らかが、縫製糸によって集められたことを特徴とする請求項15に記載のブラシシール。
【請求項17】
前記剛毛の少なくとも幾らかが、クリップによって集められたことを特徴とする請求項15に記載のブラシシール。
【請求項18】
前記剛毛が金属製であることを特徴とする請求項15に記載のブラシシール。
【請求項19】
前記剛毛が非金属製であることを特徴とする請求項15に記載のブラシシール。
【請求項20】
前記支持部材が、柔軟性のある針金で構成されていることを特徴とする請求項15に記載のブラシシール。
【請求項21】
前記複数の剛毛が、複数のグループに分けられて、各グループが前記折り目に対向して前記支持部材に隣接して結ばれ合っていることを特徴とする請求項15に記載のブラシシール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−521230(P2010−521230A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553678(P2009−553678)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/055129
【国際公開番号】WO2008/112432
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(506224746)レックスノード インダストリーズ, エルエルシー (14)
【氏名又は名称原語表記】Rexnord Industries, LLC
【住所又は居所原語表記】4701 West Greenfield Avenue, Milwaukee, WI 53214−1498, U.S.A.
【Fターム(参考)】