説明

ブラシロール

【課題】高温下における熱、あるいは吸水により、ブラシ用毛材の剛性が低下すること無く、且つ被洗浄面上の洗浄液や粉塵等の汚れを洗浄機内部に飛散させること無く、被洗浄面を均一に洗浄、清掃、研削、研磨、表面処理することができるブラシロールを提供する。
【解決手段】鋼板、非鉄金属板、樹脂板、ガラス板、あるいはフィルム状樹脂組成物等を洗浄、清掃、研削、研磨、表面処理する為のブラシロールにおいて、前記ブラシロールはブラシ部及び台座を有し、前記台座は外周面に前記ブラシ部が形成される本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A、及び継ぎ手部Bを有し、前記継ぎ手部Aから前記継ぎ手部Bの方向に流体が貫通するよう前記継ぎ手部A側から前記継ぎ手部B側に近づくほど開口面積が小から大に変化する開口部が形成されてあると共に、前記開口部に連通する孔部が前記本体部の外周面に形成されてあるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、ガラス板、あるいはフィルム状樹脂組成物等を洗浄、清掃、研削、研磨、表面処理する為のブラシロールに関するものである。特に、加熱された鋼板、非鉄金属板が通板する圧延工程等におけるブラシロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、ガラス板、あるいはフィルム状樹脂組成物等を洗浄、清掃、研削、研磨、表面処理する為のブラシロールに関しては、さまざまな改良がなされ、例えば、ポリヘキサメチレン・テレフタルアミド樹脂を主成分とする樹脂繊維で形成してなる洗浄用ブラシロールのブラシ毛材が、特開2002−336053号公報に開示されてある。
【0003】
また、ブラシ材の基部を樋状チャンネルにて挟着保持して成るチャンネル形ブラシを形成し、該チャンネル形ブラシを樋状チャンネルを以って回転シャフトの外周面又は回転ドラムの外周面に螺旋巻きし、該回転シャフト又は回転ドラムの外周面に多数の放水孔を開口せしめ、該回転シャフト又は回転ドラムの回転遠心力により上記放水孔から放水された冷却水を上記樋状チャンネルへ向け放出するようにした回転ブラシロールにおいて、上記チャンネル形ブラシを形成する樋状チャンネルの底面に長手に亘り樋状チャンネルの底板を貫通せる多数の放水孔を開口せしめ、上記回転シャフト又は回転ドラムの放水孔から放出された冷却水を上記樋状チャンネルの放水孔を通じて樋状チャンネル内へ導入する構成としたことを特徴とする回転ロールブラシが、特許第3762902号に開示されてある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−336053号公報
【特許文献2】特許第3762902号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のブラシロールは、例えば、上記の如くの特徴を有する技術が開示されてあるが、特開2002−336053号公報に開示されてある技術においては、一般的に芳香族ナイロンと呼ばれているポリヘキサメチレン・テレフタルアミド樹脂を主成分とする樹脂繊維からなるブラシ毛材が用いられている為、一般的に脂肪族ナイロンと呼ばれているナイロン6、ナイロン66等に比べて耐熱性には優れており、80℃程度までの温度においては使用に耐え得るが、80℃以上の高温においては、熱により前記樹脂繊維が柔らかくなり、剛性が低下して毛腰が弱くなることから、洗浄性が低下するという課題を有していた。また、芳香族ナイロンは、脂肪族ナイロンに比べてコストが高い為、ブラシロール等の工業用途には不向きであるという課題も有していた。
【0006】
また、特許第3762902号に開示されてある技術においては、ブラシ材が、回転シャフト又は回転ドラムの放水孔から放出された冷却水を、毛細管現象により吸水して、柔らかくなり、剛性が低下して毛腰が弱くなるので、洗浄性の低下をきたすという課題を有していた。また、回転シャフト又は回転ドラムの外周面に形成された放水孔から冷却水を、回転ロールブラシの外部に放出する為、被洗浄面上の洗浄液の一部は洗浄機内部に飛び散り、洗浄液の全量が洗浄に寄与することができず、被洗浄面を均一に洗浄することができないので、洗浄不良につながるという課題も有していた。さらに、放水孔から放出された冷却水により、被洗浄面上の粉塵等の汚れが、洗浄機内部に飛散し、飛び散った粉塵等が被洗浄面に再付着する場合もあった。なお、前記の如く、回転シャフト又は回転ドラムの外周面に形成された放水孔から冷却水を、回転ロールブラシの外部に放出する仕組みの回転ロールブラシは、一般的に内噴射式ブラシロールと呼ばれており、放水孔から冷却水を放出させる水冷式の他、孔部からエアーを噴出させる空冷式もある。空冷式においては、ブラシ材が吸水により、柔らかくなり、剛性が低下することは無いが、水冷式と同様に、被洗浄面上の洗浄液や粉塵等の汚れを洗浄機内部に飛散させるという現象は発生していた。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、高温下における熱、あるいは吸水により、ブラシ用毛材の剛性が低下すること無く、且つ被洗浄面上の洗浄液や粉塵等の汚れを洗浄機内部に飛散させること無く、被洗浄面を均一に洗浄、清掃、研削、研磨、表面処理することができるブラシロールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決する為に、本発明のブラシロールは、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、ガラス板、あるいはフィルム状樹脂組成物等を洗浄、清掃、研削、研磨、表面処理する為のブラシロールにおいて、前記ブラシロールはブラシ部及び台座を有し、前記台座は外周面に前記ブラシ部が形成される本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A、及び継ぎ手部Bを有し、前記継ぎ手部Aから前記継ぎ手部Bの方向に流体が貫通するよう前記継ぎ手部A側から前記継ぎ手部B側に近づくほど開口面積が小から大に変化する開口部が形成されてあると共に、前記開口部に連通する孔部が前記本体部の外周面に形成されてあるもので、前記開口部の断面積は、継ぎ手部A側が最も小さく、継ぎ手部B側が最も大きくなるように構成されてある。前記の如くの開口部にたいして、継ぎ手部Aから継ぎ手部Bの方向に流体を貫通させた場合、流体の位置エネルギー、運動エネルギー、及び圧力エネルギーの総和は、開口部の任意のどの位置においても常に一定であるというエネルギー保存の法則が成立する。前記開口部の如くの管路における流体のエネルギー保存の法則は、一般的にベルヌーイの定理と呼ばれている。前記ブラシロールの場合、流体は開口部において、継ぎ手部Aから継ぎ手部Bの横同一方向に貫通するのみであり、開口部は流体が上部から下部、あるいは下部から上部に流れるよう形成されていないので、流体の位置エネルギーは開口部のどの位置においても同一である。また、流体の運動エネルギーは、開口部の断面積が最も小さい継ぎ手部A側で流体の流速が最も速くなることから最大となり、開口部の断面積が最も大きい継ぎ手部B側で流体の流速が最も遅くなることから最小となる。その為、圧力エネルギーは、運動エネルギーが最大となる継ぎ手部A側で最小となり、運動エネルギーが最小となる継ぎ手部B側で最大となる。従って、流体を継ぎ手部Aから継ぎ手部Bの方向に貫通させると、開口部において断面積変化による負圧が発生する為、ブラシロールの外部における空気等の気体は、圧力の高い方から低い方へ移動するので、台座の本体部の外周面に形成された孔部に引き寄せられ、気流が発生する。発生した気流により、ブラシ部は冷却されるので、ブラシ部を構成するブラシ用毛材は、高温下においても剛性が低下することが無く、ブラシロールは高い洗浄、清掃、研削、研磨、表面処理機能を発揮することが可能である。前記の如く、流体を貫通することにより、断面積変化による負圧が発生する仕組みは、一般的にベンチュリー効果と呼ばれている。
【0009】
また、本発明のブラシロールは、前記内噴射式ブラシロールと異なり、台座の本体部の外周面に形成された孔部からブラシロールの外部に冷却水やエアー等の流体を噴出させるのではなく、ベンチュリー効果により、ブラシロールの外部の気体にたいして気流を発生させ、孔部を介して、台座の開口部に気流を吸引する仕組みである為、内噴射式ブラシロールの如く、被洗浄面上の洗浄液や粉塵等の汚れを、洗浄機内部に飛散させることが無いので、ブラシロールは被洗浄面を均一に洗浄することが可能である。
【0010】
さらに、被洗浄面に付着している粉塵等の汚れは、ブラシ用毛材により掻き取られ、ベンチュリー効果により発生した気流と伴って、孔部を介して開口部に吸引されるので、洗浄性の向上が図られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のブラシロールは、台座に形成された開口部の断面積が、継ぎ手部A側から継ぎ手部B側に近づくほど小から大に変化するよう形成されてあり、流体を継ぎ手部Aから継ぎ手部Bの方向に貫通させると、開口部の断面積変化による負圧の発生に伴うベンチュリー効果により、ブラシロールの外部における気体は、圧力の高い方から低い方へ移動するので、台座の本体部の外周面に形成された孔部に引き寄せられ、気流が発生する。その為、ブラシ部は、気流により冷却されるので、ブラシ部を構成するブラシ用毛材は、高温下においても剛性が低下することが無く、ブラシロールは高い洗浄、清掃、研削、研磨、表面処理機能を発揮することができる。
【0012】
また、本発明のブラシロールは、ベンチュリー効果により、ブラシロールの外部の気体にたいして気流を発生させ、孔部を介して、台座の開口部に気流を吸引する為、被洗浄面上の洗浄液や粉塵等の汚れを、洗浄機内部に飛散させることが無く、ブラシロールは被洗浄面を均一に洗浄することができる。さらに、被洗浄面に付着している粉塵等の汚れは、ブラシ用毛材により掻き取られ、ベンチュリー効果により発生した気流と伴って、孔部を介して開口部に吸引されるので、洗浄性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、ガラス板、あるいはフィルム状樹脂組成物等を洗浄、清掃、研削、研磨、表面処理する為のブラシロールにおいて、前記ブラシロールはブラシ部及び台座を有し、前記台座は外周面に前記ブラシ部が形成される本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A、及び継ぎ手部Bを有し、前記継ぎ手部Aから前記継ぎ手部Bの方向に流体が貫通するよう前記継ぎ手部A側から前記継ぎ手部B側に近づくほど開口面積が小から大に変化する開口部が形成されてあると共に、前記開口部に連通する孔部が前記本体部の外周面に形成されてあるもので、流体を継ぎ手部Aから継ぎ手部Bの方向に貫通させると、開口部の断面積変化による負圧の発生に伴うベンチュリー効果により、ブラシロールの外部における気体は、圧力の高い方から低い方へ移動するので、台座の本体部の外周面に形成された孔部に引き寄せられ、気流が発生する。その為、ブラシ部は、気流により冷却されるので、ブラシ部を構成するブラシ用毛材は、高温下においても剛性が低下することが無く、ブラシロールは高い洗浄、清掃、研削、研磨、表面処理機能を発揮することができる。
【0014】
また、本発明のブラシロールは、ベンチュリー効果により、ブラシロールの外部の気体にたいして気流を発生させ、孔部を介して、台座の開口部に気流を吸引する為、被洗浄面上の洗浄液や粉塵等の汚れを、洗浄機内部に飛散させることが無く、ブラシロールは被洗浄面を均一に洗浄することができる。
【0015】
さらに、被洗浄面に付着している粉塵等の汚れは、ブラシ用毛材により掻き取られ、ベンチュリー効果により発生した気流と伴って、孔部を介して開口部に吸引されるので、洗浄性が向上する。
【0016】
第2の発明は、特に、第1の発明のブラシロールにおいて、前記継ぎ手部Aの端部から前記開口部の継ぎ手部A側の端部に近づくほど開口面積が大から小に変化する絞り開口部が形成されてあると共に、前記絞り開口部は前記開口部に連通するよう形成されてあるもので、絞り開口部と開口部が連接する位置において、流体の運動エネルギーを最大にし、圧力エネルギーを最小にすることができる。その為、絞り開口部において流体の運動エネルギーを徐々に上昇させ、圧力エネルギーを徐々に低下させることができるので、絞り開口部が形成されていない場合に比べて、絞り開口部と開口部が連接する位置において、流体の運動エネルギーを一層大きくし、圧力エネルギーを一層小さくして開口部における負圧を一層大きくすることが可能であり、一段と優れたベンチュリー効果を発現させることができ、ブラシロールの外部において、一層強力な気流を発生させることができる為、ブラシ部を構成するブラシ用毛材にたいする冷却機能が大幅に向上する。
【0017】
また、最初の流体の運動エネルギーが小さくても、絞り開口部と開口部が連接する位置において、流体の運動エネルギーを最大にすることができる為、流体を供給する送風機等の外部装置にて流体の運動エネルギーを予め最大に設定して、流体を噴射する必要が無いので、外部装置にたいする負荷を軽減することができる。
【0018】
第3の発明は、特に、第1から第2の発明のブラシロールにおいて、前記本体部の継ぎ手部B側の端部外方に、前記開口部における最大開口面積以上の面積を有する流通路が形成されてあるもので、本体部の継ぎ手部B側の端部外方における流体の圧力エネルギーは、開口部における圧力エネルギー以下になることが無い。その為、本体部の継ぎ手部B側の端部外方からブラシロールの外部に放出される流体、孔部を介して開口部に排出された気流、及び粉塵等の汚れは、開口部に引き寄せられることが無く、開口部に逆流することを抑止することができる。
【0019】
第4の発明は、特に、第1から第3の発明のブラシロールにおいて、前記流通路の少なくとも一部が、前記継ぎ手部Bの外周部に形成されてあるもので、ブラシロール外部に放出される流体、気流、及び粉塵等の汚れが開口部に逆流することを抑止することができると共に、容易に流体、気流、及び粉塵等の汚れをブラシロール外部に放出することができる。
【0020】
第5の発明は、特に、第1から第4の発明のブラシロールにおいて、前記孔部の面積は、継ぎ手部B側が継ぎ手部A側よりも大であるもので、流体の圧力エネルギーが徐々に高くなる開口部の継ぎ手部B側に近づくほど、開口部における負圧が徐々にブラシロールの外部の大気圧に近づくので、ベンチュリー効果は徐々に低下してブラシロールの外部の気体を、台座の本体部に引き寄せ難くなる。その為、ブラシロールの外部に発生した気流は、本体部の外周面に形成された孔部から排出し難くなるが、孔部の面積を、開口部の継ぎ手部A側より継ぎ手部B側の方を大に設定することにより、ベンチュリー効果が低下する開口部の継ぎ手部B側においても積極的、且つ効果的にブラシロールの外部に発生した気流を、孔部を介して開口部に排出することができる。その為、ブラシ部を構成するブラシ用毛材にたいする冷却機能が飛躍的に向上すると共に、被洗浄面に付着し、ブラシ用毛材により掻き取られた粉塵等の汚れを効率的に孔部を介して開口部に排出することができ、洗浄性も大幅に向上する。
【0021】
第6の発明は、特に、第1から第5の発明のブラシロールにおいて、前記継ぎ手部A、あるいは前記継ぎ手部Bに重量補正手段が形成されてあるもので、開口部の断面積が大きい継ぎ手部B側の方が、継ぎ手部A側に比べて軽くなる為、ブラシロールに重量補正を施すことにより、ブラシロールの回転時におけるバランスを保持することができ、ブラシロールは安定した回転を持続させることができる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
図1(A)は、本発明のブラシロールを圧延工程における鋼板洗浄用として用いた形態の斜視図、図1(B)は、チャンネルブラシの断面図、図2は、本発明のブラシロールの断面図、図3は、本発明のブラシロールを継ぎ手部B側から見た側面図、図4(A)は、本発明の他の実施の形態におけるブラシロールの部分拡大断面図、図4(B)は、本発明の他の実施の形態におけるブラシ部の正面図、図4(C)は、本発明の他の実施の形態におけるブラシ部を前面側から見た斜視図である。
【0024】
図1(A)、及び図2において、ブラシロール1は、鉄等の金属材料からなる略円筒形状の台座3の外周面に、複数のブラシ用毛材6が挟み込まれたチャンネルブラシ4が、螺旋状に巻き付けてあり、両側から止め金具5にて固定されてブラシ部2が形成されてある。台座3は、外周面にブラシ部2が形成される本体部9、及び本体部9の両端にボルト17にて連接される継ぎ手部A10、及び継ぎ手部B11を有し、継ぎ手部B11にはロール1の回転時におけるバランスを保持する目的で、鉄、鉛等の金属材料からなるバランスウエイト16が溶接により装着され、ロール1の継ぎ手部B11側の重量が補正されてあると共に、外周部、及び端面には流通路15が形成されてある。また、図1(B)の如く、チャンネルブラシ4は、ブラシ用毛材6が概U字断面を有するよう芯線7と帯状体8にて挟み込まれて形成されてある。なお、本体部9と、継ぎ手部A10及び継ぎ手部B11の連接は、前記ボルト17締めの他、溶接等の方法を用いることもできる。また、継ぎ手部B11にバランスウエイト16を装着する方法は、前記溶接以外にもボルト締め等の方法を用いても良い。さらに、継ぎ手部B11にバランスウエイト16を装着せず、継ぎ手部A10に穴を設けて、ロール1の継ぎ手部A10側の重量を軽くすることにより、ロール1に重量補正を施しても構わない。
【0025】
ブラシ用毛材6は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等のポリアミド系樹脂繊維、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂繊維等が使用されてあり、前記の如くの樹脂繊維に酸化アルミ、炭化珪素、ダイアモンド等の鉱物系の砥粒を担持させて用いてもよい。また、ステンレス鋼線、ピアノ鋼線、硬鋼線、真鍮線等の金属鋼線も使用目的に応じて採用される。
【0026】
図2において、台座3は、本体部9の外周面に、継ぎ手部A10側から継ぎ手部B11側に近づくほど孔径が小から大に変化する複数の孔部13を有すると共に、継ぎ手部A10側から継ぎ手部B11側に近づくほど開口面積が小から大に変化するテーパー形状の開口部12、及び継ぎ手部A10の端部から開口部12の継ぎ手部A10側の端部に近づくほど開口面積が大から小に変化する絞り開口部14が形成されてあり、絞り開口部14と開口部12は連通するよう形成されてある。一方、継ぎ手部B11側には、図2、及び図3の如く、本体部9の端部外方、及び継ぎ手部B11の端面に、開口部12における最大開口面積以上の面積を有する流通路15が形成されてあると共に、流通路15の一部は継ぎ手部Bの外周部に形成されてあり、継ぎ手部A10側に設置されてある送風機(図示せず)を用いて、継ぎ手部A10の端部から継ぎ手部B11の矢印Aの方向に流体が貫通するよう構成されてある。なお、開口部12における最大開口面積以上の面積を有する流通路15とは、流通路15の面積の総和のことである。
【0027】
本体部9の外周面に形成される複数の孔部13の形成方法は、上記の如く、継ぎ手部A10側から継ぎ手部B11側に近づくほど孔径が小から大に変化する形成方法以外にも、孔部13の孔径は全て略同一径に設定しておき、孔部13の設定数を、継ぎ手部B11側に近づくほど多くなるように構成して用いても構わない。
【0028】
また、開口部12の形態は、前記の如く、相対する面が対称的に傾斜している円錐状のテーパー形状以外にも、継ぎ手部A10側から継ぎ手部B11側に近づくほど、概ラッパ形状の如く、開口部12の断面積が加速度的に大となる形態も採用できる。概ラッパ形状の開口部12においては、継ぎ手部B11側における負圧を、テーパー形状の開口部12に比べて、大きくすることが可能であり、継ぎ手部B11側でより効果的にブラシロール1の外部で気流を発生させることができ、継ぎ手部B11側におけるブラシ部2の冷却効果の向上を図ることができる。
【0029】
次に、本発明のブラシロール1の動作、作用について説明する。
【0030】
ブラシロール1は、略箱形の鋼板洗浄機(図示せず)に上下一対で設置され、回転駆動装置により回転駆動し、上下のブラシロール1の間を、加熱された鋼板が通過する。その際、鋼板はブラシ部2と接触し、ブラシ部2を構成するブラシ用毛材6により洗浄される。
【0031】
台座3は、継ぎ手部A10側に設置された送風機から配管系(図示せず)が継ぎ手部A10の端部に連接され、送風機により矢印Aの方向に流体が噴射されている。流体は、継ぎ手部A10に設けられた絞り開口部14を通り、本体部9に設けられた開口部12を通過し、本体部9の継ぎ手部B11側の端部外方、及び継ぎ手部B11の端面に設けられた流通路15を介して、ブラシロール1の外部に流出していく。流体は、絞り開口部14と開口部12が連通する位置において、運動エネルギーが最大となり、且つ圧力エネルギーが最小となり、継ぎ手部B11側に向かって進むにつれ、運動エネルギーは徐々に低下し、圧力エネルギーは徐々に上昇する。従って、ブラシロール1の外部の気体は、開口部12の断面積変化による負圧の発生に伴うベンチュリー効果により、圧力の高い方から低い方へ移動するので、台座3の本体部9に引き寄せられ、気流が発生する。発生した気流は、加熱された鋼板と接触して蓄熱されたブラシ用毛材6等のブラシ部2を冷却すると共に、ブラシ用毛材6により掻き取られた鋼板上の粉塵等の汚れを伴って、鎖線B、鎖線Cの如く、本体部9の外周面に形成されてある孔部13を介して、開口部12に排出され、開口部12を通る流体と共に本体部9の継ぎ手部B11の外周部、及び継ぎ手部B11の端面に設けられた流通路15よりブラシロール1の外部に放出される。その為、ブラシ部2は、気流により冷却されるので、ブラシ部2を構成するブラシ用毛材6は、高温下においても剛性が低下することが無く、ブラシロール1は高い洗浄機能が発揮される。
【0032】
また、ベンチュリー効果により、ブラシロール1の外部の気体にたいして気流を発生させ、孔部13を介して、台座3の開口部12に気流を吸引する為、鋼板上の洗浄液や粉塵等の汚れを、洗浄機内部に飛散させることが無いので、ブラシロール1は鋼板を均一に洗浄することができる。
【0033】
また、鋼板に付着している粉塵等の汚れは、ブラシ用毛材6により掻き取られ、ベンチュリー効果により発生した気流と伴って、孔部13を介して開口部12に吸引されるので、洗浄性が向上する。
【0034】
また、継ぎ手部A10に絞り開口部14を設けることにより、絞り開口部14と開口部12が連接する位置において、流体の運動エネルギーを最大にし、圧力エネルギーを最小にすることができる。その為、絞り開口部14において流体の運動エネルギーを徐々に上昇させ、圧力エネルギーを徐々に低下させることができ、絞り開口部14が形成されていない場合に比べて、絞り開口部14と開口部12が連接する位置において、流体の運動エネルギーを一層大きくし、圧力エネルギーを一層小さくして開口部12における負圧を一層大きくすることができるので、一段と優れたベンチュリー効果の発現が可能であり、ブラシロール1の外部において、一層強力な気流を発生させることができる為、ブラシ部2を構成するブラシ用毛材6にたいする冷却機能が大幅に向上する。
【0035】
さらに、継ぎ手部A10に絞り開口部14を設けることにより、最初の流体の運動エネルギーが小さくても、絞り開口部14と開口部12が連接する位置において、流体の運動エネルギーを最大にすることができる為、送風機にて流体の運動エネルギーを予め最大に設定して、流体を噴射する必要が無いので、送風機にたいする負荷が軽減される。
【0036】
また、本体部9の継ぎ手部B11側の端部外方、及び継ぎ手部B11の端面に、開口部12における最大開口面積以上の面積を有する流通路15を形成することにより、本体部9の継ぎ手部B11側の端部外方における流体の圧力エネルギーは、開口部12における圧力エネルギー以下になることが無い。その為、本体部9の継ぎ手部B11側の端部外方からブラシロール1の外部に放出される流体、孔部13を介して開口部12に排出された気流、及び粉塵等の汚れは、開口部12に引き寄せられることが無く、開口部12に逆流することを抑止することができる。
【0037】
さらに、流通路15の一部が、継ぎ手部B11の外周部に形成されることにより、ブラシロール1の外部に放出される流体、気流、及び粉塵等の汚れが開口部12に逆流することを抑止することができると共に、容易に流体、気流、及び粉塵等の汚れはブラシロール1の外部に放出される。
【0038】
また、本体部9の外周面に、継ぎ手部A10側から継ぎ手部B11側に近づくほど孔径が小から大に変化する複数の孔部13を形成することにより、流体の圧力エネルギーが徐々に上昇し、ベンチュリー効果が低下する開口部12の継ぎ手部B11側においても積極的、且つ効果的にブラシロール1の外部に発生した気流を、孔部13を介して開口部12に排出することができる。その為、ブラシ部2を構成するブラシ用毛材6にたいする冷却機能が飛躍的に向上すると共に、鋼板に付着し、ブラシ用毛材6により掻き取られた粉塵等の汚れを効率的に開口部に排出することができ、洗浄性も大幅に向上する。
【0039】
また、継ぎ手部B11にバランスウエイト16を装着することにより、開口部12の断面積が大きく、継ぎ手部A10側より重量が軽くなる継ぎ手部B11側の重量補正を施すことができ、ブラシロール1は回転時におけるバランスを保持することができる。
【0040】
次に、図4を用いて、本発明の他の実施の形態におけるブラシロールについて説明する。
【0041】
図4(A)において、ブラシロール21は、台座23の外周面に設けられた孔部33の間にある凹状の穴部27にたいしてブラシ用毛材26を平板形状の止め板25にて押さえ込み、ブラシ用毛材26を二つ折りにして、穴部27の内周面に嵌合するように止め板25を打ち込み、ブラシ用毛材26を台座23に固定する平線ブラシ24として構成されてある。
【0042】
また、上記平線ブラシ24以外にも、穴部27にたいしてブラシ用毛材26をステープルにて挟み付け、ブラシ用毛材26を二つ折りにして、穴部27の底面にたいしてステープルを打ち込み、ブラシ用毛材26を台座23に固定する丸線ブラシ、あるいは穴部27にたいしてブラシ用毛材26をナイロン等の引き込み線で押さえ込み、ブラシ用毛材26を二つ折りにして、引き込み線を台座23の内周面に這わせて、ブラシ用毛材26を台座23に固定する引き込みブラシ等を採用して、ブラシロール21を形成してもよい。
【0043】
図4(B)において、ブラシ部32は、ブラシ用毛材36を二つ折りにして、リング状に形成された芯線(図示せず)及び帯状体38にて挟み付け、帯状体38をプレス成形することにより、爪部35にてブラシ用毛材36を、芯線と帯状体38の間に固定するリングブラシ34として構成されてある。そして、台座の本体部の外周面にたいして、穴部37を挿入してリングブラシ34を積層させ、本体部の両端を押さえ板にて挟み付け、ブラシロールとして形成される。
【0044】
図4(C)において、ブラシ部42は、二つ折りされたブラシ用毛材46を、芯線47及び帯状体48にて挟み付けてチャンネルブラシ44を形成し、止め板45にたいしてチャンネルブラシ44の帯状体48が溶接による接合部49を介して固定され、形成されてある。そして、台座の本体部の外周面にたいして、止め板45の有する穴部57を介してボルトやリベット等により固定して、ブラシロールとして形成される。
【0045】
なお、ブラシロールを構成するブラシ部の構造に関しては、特に限定されるものではなく、上記の如くの構造以外にも、使用目的に応じて、適時、設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のブラシロールは、主に、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、ガラス板、あるいはフィルム状樹脂組成物等を洗浄、清掃、研削、研磨、表面処理する目的以外にも、高い耐久性を必要とするブラシロールとして、広く好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】(A)本発明のブラシロールを圧延工程における鋼板洗浄用として用いた形態の斜視図、(B)チャンネルブラシの断面図
【図2】本発明のブラシロールの断面図
【図3】本発明のブラシロールを継ぎ手部B側から見た側面図
【図4】(A)本発明の他の実施の形態におけるブラシロールの部分拡大断面図、(B)本発明の他の実施の形態におけるブラシ部の正面図、(C)本発明の他の実施の形態におけるブラシ部を前面側から見た斜視図
【符号の説明】
【0048】
1、21 ブラシロール
2、32、42 ブラシ部
3、23 台座
4、44 チャンネルブラシ
5 止め金具
6、26、36、46 ブラシ用毛材
7、47 芯線
8、38、48 帯状体
9 本体部
10 継ぎ手部A
11 継ぎ手部B
12 開口部
13、33 孔部
14 絞り開口部
15 流通路
16 バランスウエイト
17 ボルト
24 平線ブラシ
25、45 止め板
27、37、57 穴部
34 リングブラシ
35 爪部
49 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、ガラス板、あるいはフィルム状樹脂組成物等を洗浄、清掃、研削、研磨、表面処理する為のブラシロールにおいて、前記ブラシロールはブラシ部及び台座を有し、前記台座は外周面に前記ブラシ部が形成される本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A、及び継ぎ手部Bを有し、前記継ぎ手部Aから前記継ぎ手部Bの方向に流体が貫通するよう前記継ぎ手部A側から前記継ぎ手部B側に近づくほど開口面積が小から大に変化する開口部が形成されてあると共に、前記開口部に連通する孔部が前記本体部の外周面に形成されてあることを特徴とするブラシロール。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなるブラシロールにおいて、前記継ぎ手部Aの端部から前記開口部の継ぎ手部A側の端部に近づくほど開口面積が大から小に変化する絞り開口部が形成されてあると共に、前記絞り開口部は前記開口部に連通するよう形成されてあることを特徴とするブラシロール。
【請求項3】
請求項1から2記載の構成よりなるブラシロールにおいて、前記本体部の継ぎ手部B側の端部外方に、前記開口部における最大開口面積以上の面積を有する流通路が形成されてあることを特徴とするブラシロール。
【請求項4】
請求項1から3記載の構成よりなるブラシロールにおいて、前記流通路の少なくとも一部が、前記継ぎ手部Bの外周部に形成されてあることを特徴とするブラシロール。
【請求項5】
請求項1から4記載の構成よりなるブラシロールにおいて、前記孔部の面積は、継ぎ手部B側が継ぎ手部A側よりも大であることを特徴とするブラシロール。
【請求項6】
請求項1から5記載の構成よりなるブラシロールにおいて、前記継ぎ手部A側、あるいは前記継ぎ手部B側に重量補正手段が形成されてあることを特徴とするブラシロール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate