ブラシ及びその製造方法
【課題】複数本のブリッスルからなるブリッスル束が金属製の植毛部における植毛穴に平線により植毛されてなるブラシにおいて、植毛部に平線を食い込ませることなく、ブリッスル束が植毛穴に平線により植毛されているブラシを提供すること。
【解決手段】本発明のブラシは、複数本のブリッスルからなるブリッスル束が、金属製の植毛部11における植毛穴3に平線4により植毛されてなるブラシ1であって、植毛穴3は、前記ブリッスル束を収容し得るブリッスル穴部31と、平線4の両端部近傍42をそれぞれ収容し得る一対の平線穴部32,32とからなり、平線穴部32は、ブリッスル穴部31の周縁部に連結している。ブリッスル穴部31と平線穴部32との境界近傍に、又は平線穴部32の内周縁部に突起部5が形成されており、突起部5と平線4とが係合することにより、平線4が植毛穴3に保持されている。
【解決手段】本発明のブラシは、複数本のブリッスルからなるブリッスル束が、金属製の植毛部11における植毛穴3に平線4により植毛されてなるブラシ1であって、植毛穴3は、前記ブリッスル束を収容し得るブリッスル穴部31と、平線4の両端部近傍42をそれぞれ収容し得る一対の平線穴部32,32とからなり、平線穴部32は、ブリッスル穴部31の周縁部に連結している。ブリッスル穴部31と平線穴部32との境界近傍に、又は平線穴部32の内周縁部に突起部5が形成されており、突起部5と平線4とが係合することにより、平線4が植毛穴3に保持されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本のブリッスルからなるブリッスル束が金属製の植毛部における植毛穴に平線により植毛されてなるブラシ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシ等のブラシにおいては、複数本のブリッスルからなるブリッスル束が植毛部(特に、植毛ヘッド部)における植毛穴に平線により植毛されてなるブラシ(このような構成のブラシを以下「平線固定ブラシ」という)が一般的である。平線固定ブラシにおいては、植毛部の素材よりも硬く且つ植毛穴よりも長い平線を、その両端部が植毛穴の外方の植毛部に食い込むよう(JIS B0401−1で規定している「しまりばめ」の状態)に打ち込むことによって、ブリッスル束を植毛している。
平線は、一般的に真鍮やステンレス鋼等の金属からなり、そのため、植毛部は、一般的に、これらの金属よりも軟らかい合成樹脂や木材から形成されている。また、植毛部を金属から形成する場合には、その素材として、平線が食い込むことが可能な軟らかい軽金属を用いている(例えば、特開昭49−77453号公報参照)。
【0003】
一方、ブラシの植毛部及びこれに連なる首部や把持部(使用時に把持される部分)等を硬い金属で形成することも考えられる。植毛部、首部、把持部等を硬い金属で形成すれば、それらを細く形成しても充分な強度を確保できるため、デザイン上の制約が少なくなり、デザイン性を向上させることができる。
【0004】
【特許文献1】特開昭49−77453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、植毛部を硬い金属から形成した場合には、平線を食い込ませることができないため、合成樹脂、軟金属等からなる植毛部の場合のように、前述した平線を食い込ませる植毛方法を採用することができない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、複数本のブリッスルからなるブリッスル束が金属製の植毛部における植毛穴に平線により植毛されてなるブラシにおいて、植毛部に平線を食い込ませることなく、ブリッスル束が植毛穴に平線により植毛されているブラシ、及びこのようなブラシを容易に製造することができるブラシの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数本のブリッスルからなるブリッスル束が、金属製の植毛部における植毛穴に平線により植毛されてなるブラシであって、前記植毛穴は、前記ブリッスル束を収容し得るブリッスル穴部と、前記平線の両端部近傍をそれぞれ収容し得る一対の平線穴部とからなり、前記平線穴部は、前記ブリッスル穴部の周縁部に連結しており、前記ブリッスル穴部と前記平線穴部との境界近傍に、又は前記平線穴部の内周縁部に突起部が形成されており、該突起部と前記平線とが係合することにより、該平線が前記植毛穴に保持されているブラシを提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0008】
また、本発明は、前記突起部が前記ブリッスル穴部の周縁部及び前記平線穴部の周縁部の交わり部分に形成されている前記ブラシの製造方法であって、ドリルによる切削加工によって前記一対の平線穴部及び前記ブリッスル穴部を形成して前記植毛穴を形成し、その後、前記ブリッスル束を該植毛穴に前記平線により植毛し、その際に、前記ドリル加工によって前記ブリッスル穴部の周縁部と前記平線穴部の周縁部の交わり部分に形成された前記突起物と前記平線とを係合させて、該平線を前記植毛穴に保持させるブラシの製造方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0009】
また、本発明は、複数本のブリッスルからなるブリッスル束が、金属製の植毛部における植毛穴に平線により植毛されてなるブラシであって、前記植毛穴は、前記ブリッスル束を収容し得るブリッスル穴部と、前記平線の両端部近傍をそれぞれ収容し得る一対の平線穴部とからなり、前記平線穴部は、前記ブリッスル穴部の周縁部に連結しており、前記平線穴部の内周縁部と前記平線とのはめあいを、JIS B0401−1で規定する中間ばめとすることにより、該平線が前記植毛穴に保持されているブラシを提供することにより、前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のブラシによれば、複数本のブリッスルからなるブリッスル束が金属製の植毛部における植毛穴に平線により植毛されてなるブラシにおいて、植毛部に平線を食い込ませることなく、ブリッスル束が植毛穴に平線により植毛されているブラシを提供することができる。
本発明のブラシの製造方法によれば、本発明のブラシを容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のブラシ及びブラシの製造方法について、その好ましい一実施形態又は一実施態様に基づき図面を参照しながら説明する。まず、本発明のブラシの第1実施形態について説明する。第1実施形態は、本発明のブラシを歯ブラシに適用したものである。
【0012】
図1は、第1実施形態の歯ブラシの植毛部近傍を示す斜視図である。図2(a)は、図1に示す歯ブラシの植毛部近傍について、ブリッスル束の図示を省略して示す平面図で、図2(b)は、図2(a)に示す歯ブラシにおける植毛穴の拡大図である。
図3(a)は、第1実施形態の歯ブラシにおける植毛穴について、ブリッスル束を構成するブリッスルを仮想的に1本のみ示す斜視図である。図3(b)は、植毛穴の平面図であり、図3(c)は、図3(b)に示すC−C線断面図である。図4(a)は、図1に示す歯ブラシの植毛部近傍について、ブリッスル束及び平線の図示を省略して示す平面図で、図4(b)は、図4(a)に示す歯ブラシにおける植毛穴の拡大図である。
【0013】
第1実施形態の歯ブラシ1は、図1〜図3に示すように、複数本のブリッスル21〔図3(a)参照〕からなるブリッスル束2が、金属製の植毛部11における植毛穴3に平線4により植毛されてなるブラシである。植毛部11は、これに連なる首部12及び把持部(図示せず)とから歯ブラシ本体を構成している。
【0014】
植毛部11には、ブリッスル21を複数本束ねて構成されるブリッスル束2,2が複数束植毛されている。ブリッスル束2を構成するブリッスル21は、例えば、ナイロン等の合成樹脂からなるフィラメント材である。ブリッスル21の太さは、例えば0.1〜0.4mmである。ブリッスル21を例えば数本〜数十本束ねることによって、ブリッスル束2が形成される。
【0015】
ブリッスル束2は、図1及び図2に示すように、歯ブラシ1の短手方向Yに配列してブリッスル束列を形成しており、このブリッスル束列が、歯ブラシ1の長手方向Xに沿って複数列に配列している。ブリッスル束列は、歯ブラシ1の長手方向Xに沿って交互に、歯ブラシ1の短手方向Yに半ピッチずれている。
【0016】
植毛部11を含む歯ブラシ本体は、金属からなる。植毛部11を形成する金属としては、例えばステンレス鋼、銅、銀、チタンなどが挙げられる。
植毛部11は、複数束のブリッスル束2が植毛される部分であり、歯ブラシを含め、一般的にブラシにおけるヘッド部に位置している。植毛部11の平坦状の上面には、ブリッスル束2に対応して植毛穴3が縦横に配列して形成されている。
把持部(図示せず)は、使用者によって把持される部分であり、一般的にヘッド部とは反対側に位置している。
首部12は、植毛部11と把持部とを連結する部分である。
【0017】
植毛穴3は、図1〜図4に示すように、ブリッスル束2を収容し得るブリッスル穴部31と、平線4の両端部近傍42をそれぞれ収容し得る一対の平線穴部32とからなる。ブリッスル穴部31には、平線4の中央部41も収容されることになる。
ブリッスル穴部31は、例えばドリルによる切削加工により形成され、ブリッスル穴部の径は、例えばφ0.5〜5mmの円形断面を有している。当該孔部の断面積は、ブリッスル束の合計断面積の6〜7割(平板断面積除く)であることがブリッスルの固定化の観点で好ましい。歯ブラシ1の長手方向Xに沿うブリッスル穴部31のピッチP1〔図2(a)参照〕は、例えば0.5〜5mmである。歯ブラシ1の短手方向Yに沿うブリッスル穴部31のピッチP2〔図2(a)参照〕は、例えば0.5〜5mmである。
【0018】
平線穴部32は、ブリッスル穴部31の周縁部に連結しており、本実施形態においては、円形のブリッスル穴部31における直径の両端部に対応する位置にそれぞれ位置している。平線穴部32は、例えばドリルによる切削加工により形成され、例えばφ0.2〜2mmの円形断面を有している。
【0019】
平線4は、例えば真鍮、ステンレス鋼等の金属からなる矩形帯状の部材である。植毛穴3には、図3(a)に示すように、ブリッスル穴部31において、2つ折りされたブリッスル21の屈曲部に平線4の中央部41が引っ掛かると共に、平線4の両端部近傍42が平線穴部32に収容される形で、ブリッスル束2が植毛されている。
【0020】
ブリッスル束2は、図2に示すように、平面視で、平線4を、歯ブラシ1の長手方向Xに対して傾けて打ち込むことによって植毛穴3に植毛されている。このように平線4を傾けて打ち込む理由は、植毛穴3(ブリッスル穴部31)の前記ピッチP1,P2を狭くして、ブリッスル束2をより多く植毛するためである。歯ブラシ1の長手方向Xに対する平線4の角度θ〔図2(b)参照〕は、例えば5〜85度である。
植毛されたブリッスル束2の根元部は、例えばφ0.1〜3mmの円形の断面形状を有している。また、植毛部11の平坦状の上面からのブリッスル束2の先端の高さは、例えば5〜20mmである。
【0021】
第1実施形態においては、図4(b)に示すように、ブリッスル穴部31と平線穴部32との境界近傍に突起部5が形成されており、図2(b)に示すように、突起部5と平線4とが係合することにより、平線4が植毛穴3に保持されている。
突起部5は、例えば、後述する製造方法によって、ブリッスル穴部31及び平線穴部32を形成する際に幾何学的に形成される。つまり、第1実施形態においては、ブリッスル穴部31の周縁部と平線穴部32の周縁部との交わり部分に突起部5が形成される。ここで周縁部とはドリル等の切削工具で形成された穴の縁部を意味する。
平線4と突起部5との係合の態様は、平線4を植毛穴3に保持させることができれば制限されない。また、平線4と突起部5との係合の態様は、平線4の硬さと突起部5の硬さの大小関係によって異なる。
【0022】
ここで、突起部5の硬さとは、突起部5の素材自体の硬さ、つまり植毛部11の素材自体に起因する硬さと、突起部5の厚みに起因する硬さがある。
例えば、突起部5の素材自体が硬く、突起部5が厚ければ、突起部5の硬さは当然高くなり、突起部5の素材自体が軟らかく、突起部5が薄ければ、突起部5の硬さは当然低くなる。
一方、突起部5の厚みが薄くても、突起部5の素材自体が硬ければ、突起部5は充分な硬さを有する場合がある。また、突起部5の素材自体が軟らかくても、突起部5の厚みが厚ければ、突起部5は充分な硬さを有する場合がある。
【0023】
平線4の硬さと突起部5の硬さとの大小関係によって、突起部5が平線4に噛み込むことがあり、反対に、平線4によって突起部5が押し潰されることもある。場所によって、突起部5が平線4に噛み込むと共に、平線4によって突起部5が押し潰されることもある。いずれも場合においても、平線4と突起部5との係合力によって、平線4が植毛穴3に保持されている。
【0024】
第1実施形態の歯ブラシ1においては、ブリッスル穴部31と平線穴部32との境界近傍に突起部5が形成されており、突起部5と平線4とが係合することにより、平線4が植毛穴3に保持されているため、植毛部11に平線4を食い込ませることなく、ブリッスル束2が植毛穴3に平線4により植毛されている歯ブラシ1を提供することができる。
また、前述のように突起部5は、ブリッスル穴部31及び平線穴部32を形成する際に幾何学的に形成されるため、ドリルによる切削加工によって容易に形成することができる。
図5に示すように、突起部5の間隔Wと平線4の幅Tとの関係は、突起部5と平線4との良好な係合を得る観点から、0.5T≦W≦Tであることが好ましい。
【0025】
次に、本発明のブラシの製造方法の第1実施態様について、図面を参照しながら説明する。第1実施態様のブラシの製造方法は、前述した第1実施形態の歯ブラシ1の一製造方法である。
図6(a)及び図7(a)は、第1実施態様の歯ブラシの製造方法を順次示す平面図である。図6(b)は、図6(a)に示す矩形状波線内の拡大図で、図7(b)は、図7(a)に示す矩形状波線内の拡大図で、図7(c)は、図7(b)に示す矩形状波線内の拡大図である。図6及び図7における2点鎖線は、想像線である。
【0026】
第1実施態様の歯ブラシの製造方法においては、ドリルによる切削加工によって一対の平線穴部32,32を形成し、その後、ドリルによる切削加工によってブリッスル穴部31を形成し、その後、ブリッスル束2を植毛穴3に平線4により植毛し、その際に、ドリル加工によってブリッスル穴部31の周縁部と平線穴部32の周縁部の交わり部分に形成された突起部5と平線4とを係合させて、平線4を植毛穴3に保持させている。そして、第1実施態様の歯ブラシの製造方法によれば、前記第1実施形態の歯ブラシ1が得られる。
【0027】
詳述すると、まず、図6に示すように、ドリルによる切削加工によって、所定間隔を開けて、一対の平線穴部32,32を形成する。ここで、符号「31’」は、ブリッスル穴部31の周縁部が形成される位置を示し、符号「4’」は、平線4が打ち込まれる位置を示し、符号「42’」は、平線4の端部近傍42の位置を示す。
【0028】
次に、図7に示すように、ドリルによる切削加工によってブリッスル穴部31を形成する。ブリッスル穴部31が形成されると、ブリッスル穴部31を介して、離間した一対の平線穴部32,32が連結される。また、別の見方をすると、ブリッスル穴部31の周縁部に平線穴部32が連結される。
ドリル加工によってブリッスル穴部31を形成すると、図7に示すように、ブリッスル穴部31と平線穴部32との境界近傍に突起物5が形成される。突起部5は、1個の平線穴部32につき、突起部5の尖端部が対向するように1対(2個)形成される。つまり、1個の植毛穴3につき、2対(4個)の突起部5が形成される。
【0029】
その後、ブリッスル束2を植毛穴3に平線4により植毛する際に、平線4と突起部5とを係合させて、平線4を植毛穴3に保持させる。これにより、前記第1実施形態の歯ブラシ1が得られる。
このように、第1実施態様の歯ブラシ1の製造方法によれば、ブリッスル束2を植毛穴3に平線4により植毛する際に、平線4と突起部5とを係合させて、平線4を植毛穴3に保持させているため、前記第1実施形態の歯ブラシ1を容易に製造することができる。
【0030】
次に、本発明のブラシの他の実施形態について説明する。他の実施形態については、上述した第1実施形態と異なる点を主として説明し、同様の点は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。他の実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0031】
本発明のブラシの第2実施形態である歯ブラシについて、図8を参照しながら説明する。図8(a)は、第2実施形態の歯ブラシにおける植毛穴の平線穴部近傍を示す部分拡大平面図で、図8(b)は、図8(a)に示す矩形状破線内の拡大図である。
第2実施形態の歯ブラシ1は、第1実施形態に比して、平線穴部32が放電加工によって形成されている点が主として異なり、これに起因して、突起部5の形状も異なる。
【0032】
第2実施形態においては、平線穴部32は、平線4と同様に矩形状の平面視形状を有し、平線4の端部近傍42よりも広い幅を有している。そのため、平線穴部32は、その内周縁部の大部分において、平線4の端部近傍42とは接触していない。
而して、平線穴部32におけるブリッスル穴部31近傍においては、平線穴部32の幅が平線4の端部近傍42よりも局所的に狭くなっている。そのため、ブリッスル穴部31と平線穴部32との境界近傍には、平線4の端部近傍42と係合し得る突起部5が形成される。
【0033】
第1実施形態においては、突起部5は、ドリル加工を複数箇所実施することによって所望の形成位置及び所望の突出方向に形成することができる。これに対して、第2実施形態においても、加工形状の自由度が高い放電加工によって平線穴部32が形成されているため、突起部5の形成位置及びその突出方向の自由度がさらに高い。
【0034】
第2実施形態の歯ブラシ1は、例えば、図9に示す製造方法によって製造することができる。ドリル加工によりブリッスル穴部31を形成した後に、図9に示すように、放電加工により、前述した形状の平線穴部32を形成することにより、平線4の端部近傍42の幅よりも間隔が狭い一対の突起部5を形成する。
その後、図8に示すように、ブリッスル束2(図8において図示せず)を植毛穴3に平線4により植毛する際に、平線4と突起部5とを係合させて、平線4を植毛穴3に保持させる。これにより、前記第2実施形態の歯ブラシ1が得られる。
尚、放電加工により平線穴部32を形成した後に、ドリル加工によりブリッスル穴部31を形成してもよい。
【0035】
次に、第3実施形態の歯ブラシについて説明する。第3実施形態の歯ブラシ1は、第2実施形態に比して、図10に示すように、突起部5が平線穴部31の内周縁部に形成されており、ブリッスル穴部31と平線穴部32との境界近傍には形成されていない点が主として異なる。
平線穴部31の内周縁部に形成される突起部5の形成位置は、特に制限されないが、第3実施形態においては、第1の突起部51が、平線穴部32の内周縁部におけるブリッスル穴部31の径方向の端部に、ブリッスル穴部31に向けて突出して形成されており、また、第2の突起部52,52が、平線穴部32の内周縁部における平線穴部32の幅方向(ブリッスル穴部31の周方向)の両端部に、それぞれ対向するように突出して形成されている。本実施形態の突起部5は、1個の平線穴部32につき、2対(4個)以上の突起部5が形成されるため、平線の保持がさらに安定したものとなる。
【0036】
第3実施形態の歯ブラシ1は、例えば、突起部5の数及びその形成位置が異なる点を除き、前述した第2実施形態の歯ブラシ1の一製造方法と同様に製造することができる。
【0037】
次に、第4実施形態の歯ブラシについて説明する。第4実施形態の歯ブラシ1は、前述した第1〜第3実施形態に比して、植毛穴3に突起部5が設けられておらず、かつ突起部5と平線4との係合力によっては平線4が植毛穴3に保持されない構造である点が主として異なる。
具体的には、第4実施形態の歯ブラシ1は、図11に示すように、平線穴部32の内周縁部と平線4とのはめあいにより、平線4が植毛穴3に保持されている。
平線穴部32の内周縁部と平線4とのはめあいにより平線4を植毛穴3に保持させるために、本実施形態においては平線4の端部近傍42の幅と、平線穴部32の内周縁部の幅との関係を中間ばめ(JIS B0401−1で規定)としている。これによって、平線4の材質が限定されず、平線4の植毛穴3への保持が比較的容易となり、保持力が強固となる。中間ばめのうち、押込み、打込み、軽圧入とすることがさらに好ましい。
【0038】
第4実施形態の歯ブラシ1においては、平線穴部32の内周縁部と平線4とのはめあいにより平線4を植毛穴3に保持させるために、平線4の端部近傍42の形状とほぼ一致した形状を有する平線穴部32が要求される。したがって、ドリル加工によって形成される円形の平線穴部32よりも、加工形状の自由度が高い放電加工によって形成された矩形状の平線穴部32の方が好ましい。
【0039】
本発明のブラシ及びブラシの製造方法は、それぞれ前述した実施形態及び実施態様に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
例えば、ブリッスル穴部31の加工方法は、特に制限されず、放電加工又はそ
の他の加工でもよい。平線穴部32の加工方法は、特に制限されない。
前述した実施形態においては、植毛部11を含む歯ブラシ本体全体が金属から形成されているが、本発明のブラシにおいては、少なくとも植毛部11が金属から形成されていればよい。したがって、把持部及び/又は首部12は、合成樹脂、木材等から形成することができる。
【0040】
また前記実施形態では、図3(c)に示すように、平線穴部32の幅(径)が該穴部断面の上下方向で一定であったが、これに代えて平線4の収容のしやすさの観点から、図12(a)に示すように、平線穴部32の断面視において該平線穴部32の幅が上部に向かうにつれ広がるテーパー形状としたり、図12(b)に示すように、幅広の上段32aと幅狭の下段32bとからなる2段形状としたりすることもできる。また、ドリル加工の後に仕上げ加工を要しない観点から、図12(c)に示すように、平線穴部32の底部における隅部32cが、ドリルの外周形状が残った曲面形状とすることもできる。
【0041】
一対の平線穴部32は、前記実施形態においては、ブリッスル穴部31の直径の両端部に対応する位置に設けられているが、本発明のブラシにおいては、かかる位置に制限されない。
植毛部11は、前記実施形態においては、ブラシのヘッド部に位置しているが、本発明のブラシにおいては、ヘッド部以外の位置、例えばブラシの中央部分に位置してもよい。
前述した各実施形態における各構成は、適宜組み合わせることができる。
本発明のブラシは、歯ブラシに制限されず、歯ブラシ以外のブラシ、例えば爪部に蓄積された汚れを除去する為の爪ブラシ、切削被加工物のバリ取り研磨等に使用される工業用ブラシ等に適用することができる。
【0042】
本発明のブラシの製造方法においては、ドリル加工によりブリッスル穴部31を形成した後に、ドリル加工により平線穴部32を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、第1実施形態の歯ブラシの植毛部近傍を示す斜視図である。
【図2】図2(a)は、図1に示す歯ブラシの植毛部近傍について、ブリッスル束の図示を省略して示す平面図で、図2(b)は、図2(a)に示す歯ブラシにおける植毛穴の拡大図である。
【図3】図3(a)は、第1実施形態の歯ブラシにおける植毛穴について、ブリッスル束を構成するブリッスルを仮想的に1本のみ示す斜視図である。図3(b)は、植毛穴の平面図であり、図3(c)は、図3(b)に示すC−C線断面図である。
【図4】図4(a)は、図1に示す歯ブラシの植毛部近傍について、ブリッスル束及び平線の図示を省略して示す平面図で、図4(b)は、図4(a)に示す歯ブラシにおける植毛穴の拡大図である。
【図5】図5は、第1実施形態の歯ブラシにおける植毛穴の平面図であり、突起部の間隔Wと平線幅Tとの関係を説明するための図である。
【図6】図6(a)は、第1実施態様の歯ブラシの製造方法を示す平面図で、図6(b)は、図6(a)に示す矩形状波線内の拡大図である。
【図7】図7(a)は、第1実施態様の歯ブラシの製造方法を示す平面図で、図7(b)は、図7(a)に示す矩形状波線内の拡大図で、図7(c)は、図7(b)に示す矩形状波線内の拡大図である。
【図8】図8(a)は、第2実施形態の歯ブラシにおける植毛穴の平線穴部近傍を示す部分拡大平面図で、図8(b)は、図8(a)に示す矩形状破線内の拡大図である。
【図9】図9(a)は、第2実施形態の歯ブラシの一製造方法を示す部分拡大平面図〔図8(a)対応図〕で、図9(b)は、図9(a)に示す矩形状破線内の拡大図である。
【図10】図10は、第3実施形態の歯ブラシを示す部分拡大平面図〔図8(a)対応図〕である。
【図11】図11は、第4実施形態の歯ブラシを示す部分拡大平面図〔図8(a)対応図〕である。
【図12】図12(a)、(b)及び(c)はそれぞれ、本発明の他の実施形態における植毛穴の断面図(図3(c)相当図)である。
【符号の説明】
【0044】
1 ブラシ(歯ブラシ)
11 植毛部
12 首部
2 ブリッスル束
21 ブリッスル
3 植毛穴
31 ブリッスル穴部
32 平線穴部
4 平線
41 平線の中央部
42 平線の端部近傍
5 突起部
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本のブリッスルからなるブリッスル束が金属製の植毛部における植毛穴に平線により植毛されてなるブラシ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシ等のブラシにおいては、複数本のブリッスルからなるブリッスル束が植毛部(特に、植毛ヘッド部)における植毛穴に平線により植毛されてなるブラシ(このような構成のブラシを以下「平線固定ブラシ」という)が一般的である。平線固定ブラシにおいては、植毛部の素材よりも硬く且つ植毛穴よりも長い平線を、その両端部が植毛穴の外方の植毛部に食い込むよう(JIS B0401−1で規定している「しまりばめ」の状態)に打ち込むことによって、ブリッスル束を植毛している。
平線は、一般的に真鍮やステンレス鋼等の金属からなり、そのため、植毛部は、一般的に、これらの金属よりも軟らかい合成樹脂や木材から形成されている。また、植毛部を金属から形成する場合には、その素材として、平線が食い込むことが可能な軟らかい軽金属を用いている(例えば、特開昭49−77453号公報参照)。
【0003】
一方、ブラシの植毛部及びこれに連なる首部や把持部(使用時に把持される部分)等を硬い金属で形成することも考えられる。植毛部、首部、把持部等を硬い金属で形成すれば、それらを細く形成しても充分な強度を確保できるため、デザイン上の制約が少なくなり、デザイン性を向上させることができる。
【0004】
【特許文献1】特開昭49−77453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、植毛部を硬い金属から形成した場合には、平線を食い込ませることができないため、合成樹脂、軟金属等からなる植毛部の場合のように、前述した平線を食い込ませる植毛方法を採用することができない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、複数本のブリッスルからなるブリッスル束が金属製の植毛部における植毛穴に平線により植毛されてなるブラシにおいて、植毛部に平線を食い込ませることなく、ブリッスル束が植毛穴に平線により植毛されているブラシ、及びこのようなブラシを容易に製造することができるブラシの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数本のブリッスルからなるブリッスル束が、金属製の植毛部における植毛穴に平線により植毛されてなるブラシであって、前記植毛穴は、前記ブリッスル束を収容し得るブリッスル穴部と、前記平線の両端部近傍をそれぞれ収容し得る一対の平線穴部とからなり、前記平線穴部は、前記ブリッスル穴部の周縁部に連結しており、前記ブリッスル穴部と前記平線穴部との境界近傍に、又は前記平線穴部の内周縁部に突起部が形成されており、該突起部と前記平線とが係合することにより、該平線が前記植毛穴に保持されているブラシを提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0008】
また、本発明は、前記突起部が前記ブリッスル穴部の周縁部及び前記平線穴部の周縁部の交わり部分に形成されている前記ブラシの製造方法であって、ドリルによる切削加工によって前記一対の平線穴部及び前記ブリッスル穴部を形成して前記植毛穴を形成し、その後、前記ブリッスル束を該植毛穴に前記平線により植毛し、その際に、前記ドリル加工によって前記ブリッスル穴部の周縁部と前記平線穴部の周縁部の交わり部分に形成された前記突起物と前記平線とを係合させて、該平線を前記植毛穴に保持させるブラシの製造方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0009】
また、本発明は、複数本のブリッスルからなるブリッスル束が、金属製の植毛部における植毛穴に平線により植毛されてなるブラシであって、前記植毛穴は、前記ブリッスル束を収容し得るブリッスル穴部と、前記平線の両端部近傍をそれぞれ収容し得る一対の平線穴部とからなり、前記平線穴部は、前記ブリッスル穴部の周縁部に連結しており、前記平線穴部の内周縁部と前記平線とのはめあいを、JIS B0401−1で規定する中間ばめとすることにより、該平線が前記植毛穴に保持されているブラシを提供することにより、前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のブラシによれば、複数本のブリッスルからなるブリッスル束が金属製の植毛部における植毛穴に平線により植毛されてなるブラシにおいて、植毛部に平線を食い込ませることなく、ブリッスル束が植毛穴に平線により植毛されているブラシを提供することができる。
本発明のブラシの製造方法によれば、本発明のブラシを容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のブラシ及びブラシの製造方法について、その好ましい一実施形態又は一実施態様に基づき図面を参照しながら説明する。まず、本発明のブラシの第1実施形態について説明する。第1実施形態は、本発明のブラシを歯ブラシに適用したものである。
【0012】
図1は、第1実施形態の歯ブラシの植毛部近傍を示す斜視図である。図2(a)は、図1に示す歯ブラシの植毛部近傍について、ブリッスル束の図示を省略して示す平面図で、図2(b)は、図2(a)に示す歯ブラシにおける植毛穴の拡大図である。
図3(a)は、第1実施形態の歯ブラシにおける植毛穴について、ブリッスル束を構成するブリッスルを仮想的に1本のみ示す斜視図である。図3(b)は、植毛穴の平面図であり、図3(c)は、図3(b)に示すC−C線断面図である。図4(a)は、図1に示す歯ブラシの植毛部近傍について、ブリッスル束及び平線の図示を省略して示す平面図で、図4(b)は、図4(a)に示す歯ブラシにおける植毛穴の拡大図である。
【0013】
第1実施形態の歯ブラシ1は、図1〜図3に示すように、複数本のブリッスル21〔図3(a)参照〕からなるブリッスル束2が、金属製の植毛部11における植毛穴3に平線4により植毛されてなるブラシである。植毛部11は、これに連なる首部12及び把持部(図示せず)とから歯ブラシ本体を構成している。
【0014】
植毛部11には、ブリッスル21を複数本束ねて構成されるブリッスル束2,2が複数束植毛されている。ブリッスル束2を構成するブリッスル21は、例えば、ナイロン等の合成樹脂からなるフィラメント材である。ブリッスル21の太さは、例えば0.1〜0.4mmである。ブリッスル21を例えば数本〜数十本束ねることによって、ブリッスル束2が形成される。
【0015】
ブリッスル束2は、図1及び図2に示すように、歯ブラシ1の短手方向Yに配列してブリッスル束列を形成しており、このブリッスル束列が、歯ブラシ1の長手方向Xに沿って複数列に配列している。ブリッスル束列は、歯ブラシ1の長手方向Xに沿って交互に、歯ブラシ1の短手方向Yに半ピッチずれている。
【0016】
植毛部11を含む歯ブラシ本体は、金属からなる。植毛部11を形成する金属としては、例えばステンレス鋼、銅、銀、チタンなどが挙げられる。
植毛部11は、複数束のブリッスル束2が植毛される部分であり、歯ブラシを含め、一般的にブラシにおけるヘッド部に位置している。植毛部11の平坦状の上面には、ブリッスル束2に対応して植毛穴3が縦横に配列して形成されている。
把持部(図示せず)は、使用者によって把持される部分であり、一般的にヘッド部とは反対側に位置している。
首部12は、植毛部11と把持部とを連結する部分である。
【0017】
植毛穴3は、図1〜図4に示すように、ブリッスル束2を収容し得るブリッスル穴部31と、平線4の両端部近傍42をそれぞれ収容し得る一対の平線穴部32とからなる。ブリッスル穴部31には、平線4の中央部41も収容されることになる。
ブリッスル穴部31は、例えばドリルによる切削加工により形成され、ブリッスル穴部の径は、例えばφ0.5〜5mmの円形断面を有している。当該孔部の断面積は、ブリッスル束の合計断面積の6〜7割(平板断面積除く)であることがブリッスルの固定化の観点で好ましい。歯ブラシ1の長手方向Xに沿うブリッスル穴部31のピッチP1〔図2(a)参照〕は、例えば0.5〜5mmである。歯ブラシ1の短手方向Yに沿うブリッスル穴部31のピッチP2〔図2(a)参照〕は、例えば0.5〜5mmである。
【0018】
平線穴部32は、ブリッスル穴部31の周縁部に連結しており、本実施形態においては、円形のブリッスル穴部31における直径の両端部に対応する位置にそれぞれ位置している。平線穴部32は、例えばドリルによる切削加工により形成され、例えばφ0.2〜2mmの円形断面を有している。
【0019】
平線4は、例えば真鍮、ステンレス鋼等の金属からなる矩形帯状の部材である。植毛穴3には、図3(a)に示すように、ブリッスル穴部31において、2つ折りされたブリッスル21の屈曲部に平線4の中央部41が引っ掛かると共に、平線4の両端部近傍42が平線穴部32に収容される形で、ブリッスル束2が植毛されている。
【0020】
ブリッスル束2は、図2に示すように、平面視で、平線4を、歯ブラシ1の長手方向Xに対して傾けて打ち込むことによって植毛穴3に植毛されている。このように平線4を傾けて打ち込む理由は、植毛穴3(ブリッスル穴部31)の前記ピッチP1,P2を狭くして、ブリッスル束2をより多く植毛するためである。歯ブラシ1の長手方向Xに対する平線4の角度θ〔図2(b)参照〕は、例えば5〜85度である。
植毛されたブリッスル束2の根元部は、例えばφ0.1〜3mmの円形の断面形状を有している。また、植毛部11の平坦状の上面からのブリッスル束2の先端の高さは、例えば5〜20mmである。
【0021】
第1実施形態においては、図4(b)に示すように、ブリッスル穴部31と平線穴部32との境界近傍に突起部5が形成されており、図2(b)に示すように、突起部5と平線4とが係合することにより、平線4が植毛穴3に保持されている。
突起部5は、例えば、後述する製造方法によって、ブリッスル穴部31及び平線穴部32を形成する際に幾何学的に形成される。つまり、第1実施形態においては、ブリッスル穴部31の周縁部と平線穴部32の周縁部との交わり部分に突起部5が形成される。ここで周縁部とはドリル等の切削工具で形成された穴の縁部を意味する。
平線4と突起部5との係合の態様は、平線4を植毛穴3に保持させることができれば制限されない。また、平線4と突起部5との係合の態様は、平線4の硬さと突起部5の硬さの大小関係によって異なる。
【0022】
ここで、突起部5の硬さとは、突起部5の素材自体の硬さ、つまり植毛部11の素材自体に起因する硬さと、突起部5の厚みに起因する硬さがある。
例えば、突起部5の素材自体が硬く、突起部5が厚ければ、突起部5の硬さは当然高くなり、突起部5の素材自体が軟らかく、突起部5が薄ければ、突起部5の硬さは当然低くなる。
一方、突起部5の厚みが薄くても、突起部5の素材自体が硬ければ、突起部5は充分な硬さを有する場合がある。また、突起部5の素材自体が軟らかくても、突起部5の厚みが厚ければ、突起部5は充分な硬さを有する場合がある。
【0023】
平線4の硬さと突起部5の硬さとの大小関係によって、突起部5が平線4に噛み込むことがあり、反対に、平線4によって突起部5が押し潰されることもある。場所によって、突起部5が平線4に噛み込むと共に、平線4によって突起部5が押し潰されることもある。いずれも場合においても、平線4と突起部5との係合力によって、平線4が植毛穴3に保持されている。
【0024】
第1実施形態の歯ブラシ1においては、ブリッスル穴部31と平線穴部32との境界近傍に突起部5が形成されており、突起部5と平線4とが係合することにより、平線4が植毛穴3に保持されているため、植毛部11に平線4を食い込ませることなく、ブリッスル束2が植毛穴3に平線4により植毛されている歯ブラシ1を提供することができる。
また、前述のように突起部5は、ブリッスル穴部31及び平線穴部32を形成する際に幾何学的に形成されるため、ドリルによる切削加工によって容易に形成することができる。
図5に示すように、突起部5の間隔Wと平線4の幅Tとの関係は、突起部5と平線4との良好な係合を得る観点から、0.5T≦W≦Tであることが好ましい。
【0025】
次に、本発明のブラシの製造方法の第1実施態様について、図面を参照しながら説明する。第1実施態様のブラシの製造方法は、前述した第1実施形態の歯ブラシ1の一製造方法である。
図6(a)及び図7(a)は、第1実施態様の歯ブラシの製造方法を順次示す平面図である。図6(b)は、図6(a)に示す矩形状波線内の拡大図で、図7(b)は、図7(a)に示す矩形状波線内の拡大図で、図7(c)は、図7(b)に示す矩形状波線内の拡大図である。図6及び図7における2点鎖線は、想像線である。
【0026】
第1実施態様の歯ブラシの製造方法においては、ドリルによる切削加工によって一対の平線穴部32,32を形成し、その後、ドリルによる切削加工によってブリッスル穴部31を形成し、その後、ブリッスル束2を植毛穴3に平線4により植毛し、その際に、ドリル加工によってブリッスル穴部31の周縁部と平線穴部32の周縁部の交わり部分に形成された突起部5と平線4とを係合させて、平線4を植毛穴3に保持させている。そして、第1実施態様の歯ブラシの製造方法によれば、前記第1実施形態の歯ブラシ1が得られる。
【0027】
詳述すると、まず、図6に示すように、ドリルによる切削加工によって、所定間隔を開けて、一対の平線穴部32,32を形成する。ここで、符号「31’」は、ブリッスル穴部31の周縁部が形成される位置を示し、符号「4’」は、平線4が打ち込まれる位置を示し、符号「42’」は、平線4の端部近傍42の位置を示す。
【0028】
次に、図7に示すように、ドリルによる切削加工によってブリッスル穴部31を形成する。ブリッスル穴部31が形成されると、ブリッスル穴部31を介して、離間した一対の平線穴部32,32が連結される。また、別の見方をすると、ブリッスル穴部31の周縁部に平線穴部32が連結される。
ドリル加工によってブリッスル穴部31を形成すると、図7に示すように、ブリッスル穴部31と平線穴部32との境界近傍に突起物5が形成される。突起部5は、1個の平線穴部32につき、突起部5の尖端部が対向するように1対(2個)形成される。つまり、1個の植毛穴3につき、2対(4個)の突起部5が形成される。
【0029】
その後、ブリッスル束2を植毛穴3に平線4により植毛する際に、平線4と突起部5とを係合させて、平線4を植毛穴3に保持させる。これにより、前記第1実施形態の歯ブラシ1が得られる。
このように、第1実施態様の歯ブラシ1の製造方法によれば、ブリッスル束2を植毛穴3に平線4により植毛する際に、平線4と突起部5とを係合させて、平線4を植毛穴3に保持させているため、前記第1実施形態の歯ブラシ1を容易に製造することができる。
【0030】
次に、本発明のブラシの他の実施形態について説明する。他の実施形態については、上述した第1実施形態と異なる点を主として説明し、同様の点は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。他の実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0031】
本発明のブラシの第2実施形態である歯ブラシについて、図8を参照しながら説明する。図8(a)は、第2実施形態の歯ブラシにおける植毛穴の平線穴部近傍を示す部分拡大平面図で、図8(b)は、図8(a)に示す矩形状破線内の拡大図である。
第2実施形態の歯ブラシ1は、第1実施形態に比して、平線穴部32が放電加工によって形成されている点が主として異なり、これに起因して、突起部5の形状も異なる。
【0032】
第2実施形態においては、平線穴部32は、平線4と同様に矩形状の平面視形状を有し、平線4の端部近傍42よりも広い幅を有している。そのため、平線穴部32は、その内周縁部の大部分において、平線4の端部近傍42とは接触していない。
而して、平線穴部32におけるブリッスル穴部31近傍においては、平線穴部32の幅が平線4の端部近傍42よりも局所的に狭くなっている。そのため、ブリッスル穴部31と平線穴部32との境界近傍には、平線4の端部近傍42と係合し得る突起部5が形成される。
【0033】
第1実施形態においては、突起部5は、ドリル加工を複数箇所実施することによって所望の形成位置及び所望の突出方向に形成することができる。これに対して、第2実施形態においても、加工形状の自由度が高い放電加工によって平線穴部32が形成されているため、突起部5の形成位置及びその突出方向の自由度がさらに高い。
【0034】
第2実施形態の歯ブラシ1は、例えば、図9に示す製造方法によって製造することができる。ドリル加工によりブリッスル穴部31を形成した後に、図9に示すように、放電加工により、前述した形状の平線穴部32を形成することにより、平線4の端部近傍42の幅よりも間隔が狭い一対の突起部5を形成する。
その後、図8に示すように、ブリッスル束2(図8において図示せず)を植毛穴3に平線4により植毛する際に、平線4と突起部5とを係合させて、平線4を植毛穴3に保持させる。これにより、前記第2実施形態の歯ブラシ1が得られる。
尚、放電加工により平線穴部32を形成した後に、ドリル加工によりブリッスル穴部31を形成してもよい。
【0035】
次に、第3実施形態の歯ブラシについて説明する。第3実施形態の歯ブラシ1は、第2実施形態に比して、図10に示すように、突起部5が平線穴部31の内周縁部に形成されており、ブリッスル穴部31と平線穴部32との境界近傍には形成されていない点が主として異なる。
平線穴部31の内周縁部に形成される突起部5の形成位置は、特に制限されないが、第3実施形態においては、第1の突起部51が、平線穴部32の内周縁部におけるブリッスル穴部31の径方向の端部に、ブリッスル穴部31に向けて突出して形成されており、また、第2の突起部52,52が、平線穴部32の内周縁部における平線穴部32の幅方向(ブリッスル穴部31の周方向)の両端部に、それぞれ対向するように突出して形成されている。本実施形態の突起部5は、1個の平線穴部32につき、2対(4個)以上の突起部5が形成されるため、平線の保持がさらに安定したものとなる。
【0036】
第3実施形態の歯ブラシ1は、例えば、突起部5の数及びその形成位置が異なる点を除き、前述した第2実施形態の歯ブラシ1の一製造方法と同様に製造することができる。
【0037】
次に、第4実施形態の歯ブラシについて説明する。第4実施形態の歯ブラシ1は、前述した第1〜第3実施形態に比して、植毛穴3に突起部5が設けられておらず、かつ突起部5と平線4との係合力によっては平線4が植毛穴3に保持されない構造である点が主として異なる。
具体的には、第4実施形態の歯ブラシ1は、図11に示すように、平線穴部32の内周縁部と平線4とのはめあいにより、平線4が植毛穴3に保持されている。
平線穴部32の内周縁部と平線4とのはめあいにより平線4を植毛穴3に保持させるために、本実施形態においては平線4の端部近傍42の幅と、平線穴部32の内周縁部の幅との関係を中間ばめ(JIS B0401−1で規定)としている。これによって、平線4の材質が限定されず、平線4の植毛穴3への保持が比較的容易となり、保持力が強固となる。中間ばめのうち、押込み、打込み、軽圧入とすることがさらに好ましい。
【0038】
第4実施形態の歯ブラシ1においては、平線穴部32の内周縁部と平線4とのはめあいにより平線4を植毛穴3に保持させるために、平線4の端部近傍42の形状とほぼ一致した形状を有する平線穴部32が要求される。したがって、ドリル加工によって形成される円形の平線穴部32よりも、加工形状の自由度が高い放電加工によって形成された矩形状の平線穴部32の方が好ましい。
【0039】
本発明のブラシ及びブラシの製造方法は、それぞれ前述した実施形態及び実施態様に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
例えば、ブリッスル穴部31の加工方法は、特に制限されず、放電加工又はそ
の他の加工でもよい。平線穴部32の加工方法は、特に制限されない。
前述した実施形態においては、植毛部11を含む歯ブラシ本体全体が金属から形成されているが、本発明のブラシにおいては、少なくとも植毛部11が金属から形成されていればよい。したがって、把持部及び/又は首部12は、合成樹脂、木材等から形成することができる。
【0040】
また前記実施形態では、図3(c)に示すように、平線穴部32の幅(径)が該穴部断面の上下方向で一定であったが、これに代えて平線4の収容のしやすさの観点から、図12(a)に示すように、平線穴部32の断面視において該平線穴部32の幅が上部に向かうにつれ広がるテーパー形状としたり、図12(b)に示すように、幅広の上段32aと幅狭の下段32bとからなる2段形状としたりすることもできる。また、ドリル加工の後に仕上げ加工を要しない観点から、図12(c)に示すように、平線穴部32の底部における隅部32cが、ドリルの外周形状が残った曲面形状とすることもできる。
【0041】
一対の平線穴部32は、前記実施形態においては、ブリッスル穴部31の直径の両端部に対応する位置に設けられているが、本発明のブラシにおいては、かかる位置に制限されない。
植毛部11は、前記実施形態においては、ブラシのヘッド部に位置しているが、本発明のブラシにおいては、ヘッド部以外の位置、例えばブラシの中央部分に位置してもよい。
前述した各実施形態における各構成は、適宜組み合わせることができる。
本発明のブラシは、歯ブラシに制限されず、歯ブラシ以外のブラシ、例えば爪部に蓄積された汚れを除去する為の爪ブラシ、切削被加工物のバリ取り研磨等に使用される工業用ブラシ等に適用することができる。
【0042】
本発明のブラシの製造方法においては、ドリル加工によりブリッスル穴部31を形成した後に、ドリル加工により平線穴部32を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、第1実施形態の歯ブラシの植毛部近傍を示す斜視図である。
【図2】図2(a)は、図1に示す歯ブラシの植毛部近傍について、ブリッスル束の図示を省略して示す平面図で、図2(b)は、図2(a)に示す歯ブラシにおける植毛穴の拡大図である。
【図3】図3(a)は、第1実施形態の歯ブラシにおける植毛穴について、ブリッスル束を構成するブリッスルを仮想的に1本のみ示す斜視図である。図3(b)は、植毛穴の平面図であり、図3(c)は、図3(b)に示すC−C線断面図である。
【図4】図4(a)は、図1に示す歯ブラシの植毛部近傍について、ブリッスル束及び平線の図示を省略して示す平面図で、図4(b)は、図4(a)に示す歯ブラシにおける植毛穴の拡大図である。
【図5】図5は、第1実施形態の歯ブラシにおける植毛穴の平面図であり、突起部の間隔Wと平線幅Tとの関係を説明するための図である。
【図6】図6(a)は、第1実施態様の歯ブラシの製造方法を示す平面図で、図6(b)は、図6(a)に示す矩形状波線内の拡大図である。
【図7】図7(a)は、第1実施態様の歯ブラシの製造方法を示す平面図で、図7(b)は、図7(a)に示す矩形状波線内の拡大図で、図7(c)は、図7(b)に示す矩形状波線内の拡大図である。
【図8】図8(a)は、第2実施形態の歯ブラシにおける植毛穴の平線穴部近傍を示す部分拡大平面図で、図8(b)は、図8(a)に示す矩形状破線内の拡大図である。
【図9】図9(a)は、第2実施形態の歯ブラシの一製造方法を示す部分拡大平面図〔図8(a)対応図〕で、図9(b)は、図9(a)に示す矩形状破線内の拡大図である。
【図10】図10は、第3実施形態の歯ブラシを示す部分拡大平面図〔図8(a)対応図〕である。
【図11】図11は、第4実施形態の歯ブラシを示す部分拡大平面図〔図8(a)対応図〕である。
【図12】図12(a)、(b)及び(c)はそれぞれ、本発明の他の実施形態における植毛穴の断面図(図3(c)相当図)である。
【符号の説明】
【0044】
1 ブラシ(歯ブラシ)
11 植毛部
12 首部
2 ブリッスル束
21 ブリッスル
3 植毛穴
31 ブリッスル穴部
32 平線穴部
4 平線
41 平線の中央部
42 平線の端部近傍
5 突起部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のブリッスルからなるブリッスル束が、金属製の植毛部における植毛穴に平線により植毛されてなるブラシであって、
前記植毛穴は、前記ブリッスル束を収容し得るブリッスル穴部と、前記平線の両端部近傍をそれぞれ収容し得る一対の平線穴部とからなり、
前記平線穴部は、前記ブリッスル穴部の周縁部に連結しており、
前記ブリッスル穴部と前記平線穴部との境界近傍に、又は前記平線穴部の内周縁部に突起部が形成されており、該突起部と前記平線とが係合することにより、該平線が前記植毛穴に保持されているブラシ。
【請求項2】
前記突起部が、前記ブリッスル穴部の周縁部及び前記平線穴部の周縁部の交わり部分に形成されている請求項1記載のブラシ。
【請求項3】
前記平線穴部は、ドリルによる切削加工又は放電加工により形成されている請求項1又は2に記載のブラシ。
【請求項4】
請求項2記載のブラシの製造方法であって、ドリルによる切削加工によって前記一対の平線穴部及び前記ブリッスル穴部を形成して前記植毛穴を形成し、その後、前記ブリッスル束を該植毛穴に前記平線により植毛し、その際に、前記ドリル加工によって前記ブリッスル穴部の周縁部と前記平線穴部の周縁部の交わり部分に形成された前記突起物と前記平線とを係合させて、該平線を前記植毛穴に保持させるブラシの製造方法。
【請求項5】
複数本のブリッスルからなるブリッスル束が、金属製の植毛部における植毛穴に平線により植毛されてなるブラシであって、
前記植毛穴は、前記ブリッスル束を収容し得るブリッスル穴部と、前記平線の両端部近傍をそれぞれ収容し得る一対の平線穴部とからなり、
前記平線穴部は、前記ブリッスル穴部の周縁部に連結しており、
前記平線穴部の内周縁部と前記平線とのはめあいを、JIS B0401−1で規定する中間ばめとすることにより、該平線が前記植毛穴に保持されているブラシ。
【請求項1】
複数本のブリッスルからなるブリッスル束が、金属製の植毛部における植毛穴に平線により植毛されてなるブラシであって、
前記植毛穴は、前記ブリッスル束を収容し得るブリッスル穴部と、前記平線の両端部近傍をそれぞれ収容し得る一対の平線穴部とからなり、
前記平線穴部は、前記ブリッスル穴部の周縁部に連結しており、
前記ブリッスル穴部と前記平線穴部との境界近傍に、又は前記平線穴部の内周縁部に突起部が形成されており、該突起部と前記平線とが係合することにより、該平線が前記植毛穴に保持されているブラシ。
【請求項2】
前記突起部が、前記ブリッスル穴部の周縁部及び前記平線穴部の周縁部の交わり部分に形成されている請求項1記載のブラシ。
【請求項3】
前記平線穴部は、ドリルによる切削加工又は放電加工により形成されている請求項1又は2に記載のブラシ。
【請求項4】
請求項2記載のブラシの製造方法であって、ドリルによる切削加工によって前記一対の平線穴部及び前記ブリッスル穴部を形成して前記植毛穴を形成し、その後、前記ブリッスル束を該植毛穴に前記平線により植毛し、その際に、前記ドリル加工によって前記ブリッスル穴部の周縁部と前記平線穴部の周縁部の交わり部分に形成された前記突起物と前記平線とを係合させて、該平線を前記植毛穴に保持させるブラシの製造方法。
【請求項5】
複数本のブリッスルからなるブリッスル束が、金属製の植毛部における植毛穴に平線により植毛されてなるブラシであって、
前記植毛穴は、前記ブリッスル束を収容し得るブリッスル穴部と、前記平線の両端部近傍をそれぞれ収容し得る一対の平線穴部とからなり、
前記平線穴部は、前記ブリッスル穴部の周縁部に連結しており、
前記平線穴部の内周縁部と前記平線とのはめあいを、JIS B0401−1で規定する中間ばめとすることにより、該平線が前記植毛穴に保持されているブラシ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−125084(P2009−125084A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299751(P2007−299751)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
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