説明

ブラシ用平線およびブラシ

【課題】合成樹脂製でありながら十分な硬さを持ち、植毛の際の割れや欠損が少なく、しかも従来の汎用プラスチック製のブラシ基材に対して使用できる自然環境を配慮したブラシ用平線およびこの平線を用いたブラシの提供。
【解決手段】ブラシ基材3の植毛孔4にブラシ用毛材2と共に埋め込まれ、ブラシ用毛材2をブラシ基材3に固定するために機能する平線1であって、JIS K7110に準じて測定したアイゾット衝撃強さ(ノッチ付)15〜100J/mの合成樹脂を主成分としてなり、植毛方向に平行な断面の幅が0.5〜3.0mm、同じく厚さが0.1〜1.0mmであり、且つこの断面の形状が四角形以上の多角形または楕円であることを特徴とするブラシ用平線1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製でありながら十分な硬さを持ち、植毛の際の割れや欠損が少なく、しかも従来の汎用プラスチック製のブラシ基材に対して使用できる自然環境を配慮したブラシ用平線およびこの平線を用いたブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラシには、ヘアブラシ、ボディブラシ、歯ブラシ、化粧用ブラシなどの一般家庭用のものや、金属板研磨・洗浄ブラシ、液晶画面洗浄ブラシなど工業用ブラシもあり、その用途は極めて幅広い。
【0003】
これらのブラシは、一般に合成樹脂繊維からなるブラシ用毛材の束を植毛機に供給し、ブラシ用毛材を基材に植毛することによって製造されるが、例えば、歯ブラシの場合は、ブラシ基材のヘッド部分に予め植毛孔を開け、ブラシ用毛材を2つに折り曲げて金属製の平線と共に植毛孔に埋め込み、ブラシ用毛材をブラシ基材に固定する方法が採用されている。
【0004】
この方法は安価で容易に植毛できることから、ブラシの製造方法として主流となっているが、使用される平線は金属製であるため、製造されたブラシは、合成樹脂からなるブラシ基材およびブラシ用毛材と金属からなる平線との複合体となるため、合成樹脂と金属とを分離することが極めて難しく、廃棄の際の分離作業にコストがかかるなどの問題があり、実際には分離されずにそのまま廃棄されているか、または焼却廃棄されているのが実状である。
【0005】
上記の通り、ブラシはヘアブラシ、ボディブラシ、歯ブラシ、化粧ブラシなどの一般家庭用のものや工業用のものまで幅広く製造されているため、これら全てが合成樹脂と金属の分離をせずに廃棄された場合には、産業や自然環境に過大な悪影響を与えかねない。
【0006】
こうした問題に対して、生分解性樹脂製ハンドルの植毛孔に、生分解性樹脂製フィラメントをくさび型三角形柱形状の生分解性樹脂製平線で植毛した歯ブラシ(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【0007】
この歯ブラシは全て生分解性樹脂からなるため、廃棄の際には分離が不要で、そのまま自然分解するなどの自然環境にやさしい製品であるが、平線が生分解性樹脂であるために金属平線のように十分な硬さがなく、植毛の際に植毛孔に埋め込まれにくいばかりか、生分解性樹脂モノフィラメントをカットして平線とする際に、上手く切断できずに、生分解性樹脂平線が割れたり、欠けたりして植毛ロスが発生し易いなどの問題があった。
【0008】
また、生分解性樹脂は、従来のハンドルに使用されてきたポリエチレンやポリプロピレンなどの汎用プラスチックに比べて、原料価格が高いために実用化はなかなか難しく、従来の汎用プラスチックに使える合成樹脂製のブラシ平線の開発がしきりに求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3861320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、合成樹脂製でありながら十分な硬さを持ち、植毛の際の割れや欠損が少なく、しかも従来の汎用プラスチック製のブラシ基材に対して使用できる自然環境を配慮したブラシ用平線およびこの平線を用いたブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明によれば、ブラシ基材の植毛孔にブラシ用毛材と共に埋め込まれ、ブラシ用毛材をブラシ基材に固定するために機能する平線であって、JIS K7110に準じて測定したアイゾット衝撃強さ(ノッチ付)15〜100J/mの合成樹脂を主成分としてなり、植毛方向に平行な断面の幅が0.5〜3.0mm、同じく厚さが0.1〜1.0mmであり、且つこの断面の形状が四角形以上の多角形または楕円であることを特徴とするブラシ用平線が提供される。
【0012】
なお、本発明のブラシ用平線においては、
前記合成樹脂のJIS G0202に準じて測定したロックウェル硬さがM50〜120またはR80〜150であること、
前記合成樹脂が、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、およびポリフェニレンサルファイド系樹脂から選ばれた少なくとも一種であること、および
合成樹脂モノフィラメントのカット片からなること
がさらに好ましい条件として挙げられる。
【0013】
また、本発明のブラシは、上記ブラシ用平線を使用したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下に説明するとおり、合成樹脂製でありながら十分な硬さを持ち、植毛の際の割れや欠損が少なく、しかも従来の汎用プラスチック製のブラシ基材に対して使用できる自然環境を配慮したブラシ用平線およびブラシを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)はブラシ基材にブラシ用毛材を植毛する方法を示す説明図であり、(b)は植毛部分を上方から見た拡大図、(c)はブラシの斜視図である。
【図2】(a)は本発明のブラシ用平線の一例を示す斜視図であり、(b)は合成樹脂モノフィラメントからブラシ用平線が得られることを示す説明図である。
【図3】(a)〜(e)は本発明のブラシ用平線の他の数例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図面にしたがって具体的に説明する。
【0017】
図1の(a)はブラシ基材にブラシ用毛材を植毛する方法を示す説明図であり、1はブラシ用平線、2はブラシ用毛材、3はブラシ基材、4は植毛孔をそれぞれ示し、(b)は植毛部分を上方から見た拡大図、そして(c)はブラシの斜視図であり、5はブラシを示している。
【0018】
図1に示すように、一般的なブラシの製法としては、ブラシ基材3に予め植毛孔4を開け、ブラシ用毛材2を2つに折り曲げてブラシ用平線1と共に植毛孔4に埋め込み、ブラシ用毛材2をブラシ基材3に固定する方法が採用されている。そして、従来のブラシ5には金属製のブラシ用平線1が使用されている。
【0019】
本発明のブラシ用平線1は金属製ではなく、合成樹脂からなり、さらに詳しくは、JIS K7110に準じて測定したアイゾット衝撃強さ(ノッチ付)が15〜100J/mの合成樹脂からなることを特徴とするものである。
【0020】
材料となる合成樹脂のアイゾット衝撃強さ(ノッチ付)が上記範囲を下回ると、植毛の際にブラシ用平線1が割れたり欠けたりし易く、ブラシ用毛材2を植毛孔4の中にしっかりと固定させることができず、植毛性が低下する場合があるため好ましくない。
【0021】
また、本発明のブラシ用平線1は、合成樹脂モノフィラメントのカット片からなることが好ましいが、材料となる合成樹脂のアイゾット衝撃強さ(ノッチ付)が上記範囲を上回ると、合成樹脂モノフィラメントをブラシ用平線1に上手くカットできない場合があり、その結果ブラシ用毛材2を植毛孔4の中に埋め込むことができずに、植毛性を低下させる場合がある。
【0022】
なお、材料となる合成樹脂のアイゾット衝撃強さ(ノッチ付)は、上記範囲を満たせばブラシ用平線として十分な機能を発揮するが、さらにはアイゾット衝撃強さ(ノッチ付)が20〜85J/mの範囲にあることが好ましい。
【0023】
本発明のブラシ用平線1の形状は、従来の金属製のブラシ用平線と同じ長方体の小片であれば十分であるが、その他の形状としては図3の(a)〜(e)に示すような四角形以上の多角形または楕円形状であることが必要であり、係る形状とすることによって、ブラシ用平線1がブラシ基材3に刺さり、アンカー効果が得られ易く、また植毛の際にブラシ用平線1が割れたり欠けたりしにくいなどの利点が得られる。
【0024】
なお、上記多角形には図3の(c)に示すように、頂点が丸みを帯びた略多角形であっても問題はない。
【0025】
ちなみに三角形はブラシ基材3に刺さり易い形状であるが、先が尖っているために割れ易く、植毛性が低下しやすい傾向にある。
【0026】
また、本発明のブラシ用平線1の寸法は、図2の(a)や図3の(a)〜(e)に示すように、植毛方向pに対して平行な断面が、幅0.5〜3.0mm、厚さ0.1〜1.0mmの異形状であることが好ましく、さらには幅0.5〜2.0mm、厚さ0.3〜0.8mmであることがより好ましい。
【0027】
ブラシ用平線1の植毛方向pに対して平行な断面の幅が上記範囲を下回ると、アンカー効果が得られ難い傾向となり、逆に幅が上記範囲を上回ると、ブラシ用平線1がブラシ基材3に十分に刺さり難い傾向となる。
【0028】
また、ブラシ用平線1の植毛方向pに対して平行な断面の厚さが上記範囲を下回ると、植毛の際にブラシ用平線1が割れたり欠けたりする傾向となり、逆に厚さが上記範囲を上回ると、ブラシ用平線1がブラシ基材3に刺さり難い傾向となる。
【0029】
ここで、本発明のブラシ用平線1の主成分となる合成樹脂としては、アイゾット衝撃強さ(ノッチ付)が上記範囲内にあれば特に限定はされないが、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロンMDX6、ナイロン11、ナイロン12またはこれら2種類以上の共重合体からなるポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリメチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレートまたはこれら2種類以上の共重合体からなるポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・フッ化ビニリデン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレンクロライド・テトラフルオロエチレン共重合体、フルオロビニルエーテルなどのフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を挙げることができ、特に優れた化学的・物理的特性を有するポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、およびポリフェニレンサルファイド系樹脂の使用が好ましい。
【0030】
なお、本発明で言う主成分とは、ブラシ用平線1の大半を占める構成素材を言い、具体的には重量比で50〜100重量%、さらに好ましくは70〜100重量%を占める構成素材を言う。
【0031】
したがって、本発明においては、上記合成樹脂を2種類以上ブレンドしたものも使用することもでき、例えばポリエチレンナフタレートやポリフェニレンサルファイドなどの硬くて割れやすい素材に、その他のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などの合成樹脂を3〜50重量%の範囲で適宜ブレンドすることで適度な硬さにコントロールすることができ、しかも割れや欠けが少ないブラシ用平線が得られる。
【0032】
また、ポリエステルエラストマー樹脂やポリアミドエラストマー樹脂などのエラストマー樹脂は、非常に耐衝撃性の高い素材であることから、上記ポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂などにエラストマー樹脂を3〜50重量%の範囲で適宜ブレンドすることで、さらに好適な硬さを持ち、しかも割れや欠けが至って少ないブラシ用平線が得られる。
【0033】
なお、上記の合成樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、その目的に応じて、各種無機粒子、各種金属粒子および架橋高分子粒子などの粒子類のほか、公知の抗酸化剤、耐光剤、耐侯剤、イオン交換剤、着色防止剤、耐電防止剤、各種着色剤、ワックス類、シリコーンオイル、各種界面活性剤および各種強化繊維類などを適宜任意に添加させることも可能である。
【0034】
また、本発明のブラシ用平線1は、JIS G0202に準じて測定したロックウェル硬さがM50〜120またはR80〜150の合成樹脂からなることが好ましく、さらにはM70〜100またはR90〜130の範囲が好ましい。
【0035】
一般にブラシ基材3に使用される素材には、安価で加工し易いことから、ポリプロピレンやポリエチレンなどの汎用プラスチックが使用されているが、ロックウェル硬さが上記範囲を下回ると、ブラシ用平線1がブラシ基材3に刺さり難くなって、アンカー効果が得られくい場合があり、逆にロックウェル硬さが上記範囲を上回ると、合成樹脂モノフィラメントからブラシ用平線1に上手くカット出来ない場合があり、その結果ブラシ用毛材2を植毛孔4の中に埋め込むことができずに、植毛性を低下させる場合がある。
【0036】
ここで、本発明のブラシ用平線1の製造方法について説明する。
【0037】
合成樹脂製のブラシ用平線1の製造方法としては、例えば合成樹脂製品を製造する射出成型や押出成型などの一般的な方法があるが、本発明のブラシ用平線1の場合は、安価で容易に製造することができることから、合成樹脂モノフィラメントのカット片が好ましく、ここでは合成樹脂モノフィラメントからブラシ用平線1を得る方法について説明する。
【0038】
まず、合成樹脂モノフィラメントは、合成樹脂チップを溶融紡糸機に供給して溶融紡糸機内で溶融混練した後、口金から合成樹脂の溶融物を押し出しする。
【0039】
引き続き、押し出された合成樹脂の溶融物は、冷却浴中で冷却固化された後、延伸および熱セットされて、合成樹脂モノフィラメントを得る。
【0040】
そして、得られた合成樹脂モノフィラメントを必要な長さにカットして、ブラシ用平線1とする。
【0041】
また、本発明のブラシ用平線1には、銀イオンを担持させたリン酸塩系、ゼオライト系、ヒドロキシアパタイト系抗菌剤のほか、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、リン酸亜鉛、硝酸亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、クエン酸亜鉛、フマル産亜鉛、ギ酸亜鉛などの亜鉛化合物、ベンゼトニウム、ベンザルコニウム、セチルピリジウム、クロルヘキシジンなどのカチオン系抗菌剤、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキン、エピカテキンガレートなどの茶カテキン、アナターゼ型またはルチル型二酸化チタンなどの光触媒を使用して、抗菌性能を付与することもできる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明のブラシ用平線について、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
なお、植毛性は、太さ0.2mm、長さ30mmのナイロン製ブラシ用毛材を使用し、歯ブラシを1000本製作することで評価した。歯ブラシの仕様は次の通り。
ブラシ基材:ポリプロピレン製(9mm×22mm)
植毛孔の数:34箇
植毛孔の直径:1.5mm
植毛孔の深さ:3.0mm
植毛本数:一つの植毛孔につき20本
【0044】
[植毛性評価]
1000本の歯ブラシを作製し、植毛不良本数を次の項目ごとにパーセンテージで求めた。
(イ)ブラシ用平線の割れや欠けが発生し、ブラシ用毛材が上手く植毛されていない植毛孔があった歯ブラシ本数、
(ロ)ブラシ用平線が上手くカット出来ず、ブラシ用毛材が植毛されていない植毛孔があった歯ブラシ本数、
(ハ)ブラシ用平線がブラシ基材に上手く刺さらず、ブラシ用毛材が上手く植毛されていない植毛孔があった歯ブラシ本数。
【0045】
[実施例1]
原料にナイロン6ペレット(アイゾット衝撃強さ(ノッチ付)69J/m、ロックウェル硬さR119、M80)を使用した。
【0046】
ナイロン6ペレットを溶融紡糸機に供給し、溶融紡糸機内で溶融混練した後、複合口金から合成樹脂の溶融物を押し出しした。
【0047】
引き続き、押し出された合成樹脂の溶融物を、冷却浴中で冷却固化した後、延伸および熱セットを行い、図3の(a)に示すような、幅1.3mm、厚さ0.4mmの合成樹脂モノフィラメントを製糸した。
【0048】
この合成樹脂モノフィラメントを長さ方向に2.2mmカットし、カット片をブラシ用平線として使用し、歯ブラシを作製した。
【0049】
[実施例2〜6]
原料をナイロン6ペレットから表1に示す合成樹脂に変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で合成樹脂モノフィラメント、ブラシ用平線および歯ブラシを作製した。
【0050】
[実施例7〜10]
合成樹脂モノフィラメントの断面形状を、図3の(a)から同図の(b)〜(e)に変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で合成樹脂モノフィラメント、ブラシ用平線および歯ブラシを作製した。
【0051】
[実施例11〜13]
断面形状の寸法を表1に示す大きさに変更したこと以外は、実施例8と同じ条件で合成樹脂モノフィラメント、ブラシ用平線および歯ブラシを作製した。
【0052】
[実施例14]
原料をポリフェニレンサルファイドペレット(アイゾット衝撃強さ(ノッチ付)18J/m、ロックウェル硬さM100)とナイロン6ペレット(アイゾット衝撃強さ(ノッチ付)69J/m、ロックウェル硬さR119)を80:20の比でブレンドした混合物に変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で合成樹脂モノフィラメント、ブラシ用平線および歯ブラシを作製した。
【0053】
[実施例15]
原料をポリエチレンテレフタレート(アイゾット衝撃強さ(ノッチ付)39J/m、ロックウェル硬さM95)とポリエステルエラストマー(アイゾット衝撃強さ(ノッチ付)NB、ロックウェル硬さD47)を90:10でブレンドした混合物に変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で合成樹脂モノフィラメント、ブラシ用平線および歯ブラシを作製した。
【0054】
[比較例1]
合成樹脂モノフィラメントの断面形状を三角形に変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で合成樹脂モノフィラメント、ブラシ用平線および歯ブラシを作製した。
【0055】
[比較例2〜4]
断面形状の寸法を表1に示す大きさに変更したこと以外は、実施例8と同じ条件で合成樹脂モノフィラメント、ブラシ用平線および歯ブラシを作製した。
【0056】
[参考例1]
銅製のブラシ用平線(幅1.3mm、厚さ0.3mm、長さ2.2mm)を使用して歯ブラシを作製した。
【0057】
上記実施例および比較例で得られたブラシ用平線の各評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明のブラシ用平線(実施例1〜15)は、本発明の条件を満たさないブラシ用平線(比較例1〜4)に比べて大幅に植毛性が良いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のブラシ用平線は、合成樹脂製でありながら十分な硬さを持ち、植毛の際の割れや欠損が少なく、しかも自然環境を配慮したものであることから、歯ブラシ、ヘアブラシ、ボディブラシ、クリーニングブラシ、化粧ブラシなどの各種ブラシの他にも各種工業用ブラシにも幅広く利用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 ブラシ用平線
2 ブラシ用毛材
3 ブラシ基材
4 植毛孔
5 ブラシ
6 合成樹脂モノフィラメント
w 幅
d 厚み
p 植毛方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシ基材の植毛孔にブラシ用毛材と共に埋め込まれ、ブラシ用毛材をブラシ基材に固定するために機能する平線であって、JIS K7110に準じて測定したアイゾット衝撃強さ(ノッチ付)15〜100J/mの合成樹脂を主成分としてなり、植毛方向に平行な断面の幅が0.5〜3.0mm、同じく厚さが0.1〜1.0mmであり、且つこの断面の形状が四角形以上の多角形または楕円であることを特徴とするブラシ用平線。
【請求項2】
前記合成樹脂のJIS G0202に準じて測定したロックウェル硬さがM50〜120またはR80〜150であることを特徴とする請求項1に記載のブラシ用平線。
【請求項3】
前記合成樹脂が、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、およびポリフェニレンサルファイド系樹脂から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2に記載のブラシ用平線。
【請求項4】
合成樹脂モノフィラメントのカット片からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のブラシ用平線。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のブラシ用平線を使用したことを特徴とするブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−101734(P2011−101734A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257839(P2009−257839)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Fターム(参考)】