説明

ブラシ用毛材

【課題】毛倒れを少なくすることができると共に、毛抜けを防止でき、製造コストも低減できるブラシ用毛材を提供する。
【解決手段】 洗車ブラシ、ねじりブラシ、洗浄ブラシ、回転ロータ、清掃用ブラシ等の各種ブラシに用いられるブラシ用毛材1において、前記ブラシ用毛材1は、長尺の繊維束を蛇行状に折曲させて仮止め糸3、3により帯状に連ねた帯板状体2を有し、該帯板状体2は繊維束間を固着する溶着部4が形成されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車ブラシ、ねじりブラシ、洗浄ブラシ、回転ロータ、清掃用ブラシ等の各種ブラシに用いられるブラシ用毛材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のブラシ用毛材としては、1種類のブラシ用毛材をU字形に2つ折りしながら長尺チャンネルの溝に押し込んでチャンネルブラシとして使用するものがある(特許文献1)。
また、あらかじめ長尺チャンネルの溝に接着材が含浸され、この溝に1種類のブラシ用毛材を芯線でU字形に2つ折りしながら、芯線と共に長尺チャンネルの溝に押し込んで接着してチャンネルブラシとして使用するものがある(特許文献2)。
さらに、1種類のブラシ用毛材をU字形に2つ折りしながら長尺チャンネルの溝に押し込んだ後、ブラシ用毛材の側面に所定幅の接着層を形成してチャンネルブラシとして使用するものがある(特許文献3)。
また、長尺な繊維束を蛇行状に折り曲げて所定幅の帯板状体を形成させ、この帯板状体は、その長手方向の両縁部を仮止め糸で固定したうえで、幅方向の中央で2分割してブラシ用毛材として使用するものがある(特許文献4)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−275025号公報
【特許文献2】特開平8−38255号公報
【特許文献3】特開2004−33685号公報
【特許文献4】特開2001−161611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の特許文献1及び特許文献2に記載された技術では同じ材質の1種類の毛材を使用しているため、毛腰が弱く、使用回数が増すにつれて毛倒れし易くなっていた。また、特許文献3に記載された毛倒れを防止する構成を有するチャンネルブラシを製造する場合には、製造コストを下げる必要があった。さらに、特許文献4では仮止め糸で繊維束を固定しているだけなので、毛抜けを防止することはできなかった。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、毛倒れを少なくすることができると共に、毛抜けを防止し、製造コストも低減できるブラシ用毛材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、洗車ブラシ、ねじりブラシ、洗浄ブラシ、回転ロータ、清掃用ブラシ等の各種ブラシに用いられるブラシ用毛材において、前記ブラシ用毛材は、長尺の繊維束を蛇行状に折曲させて仮止め糸により帯状に連ねた帯板状体を有し、該帯板状体は繊維束間を固着する溶着部が形成されていることに特徴を有する。上記構成では、溶着部が形成されていることによって、多数の繊維が一体となるので、毛抜けを防止することができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、帯板状体の略中央部に前記繊維束間を固着する溶着部が形成されていることに特徴を有する。したがって、略中央部が帯板状体を折り込む時の目印となり、毛丈を揃えることができる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1及び2の発明では、各種ブラシに用いられるブラシ用毛材において、長尺の繊維束を蛇行状に折曲させて仮止め糸により帯状に連ねた帯板状体を有し、該帯板状体は繊維束間を固着する溶着部が形成されている構成としたので、毛倒れを少なくすることができると共に、毛抜けを防止でき、従来技術と比較しても、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の第一実施形態を示す説明図である。先ず、所望の太さにまとめた長尺の繊維束を、蛇行状に折曲させて、ブラシの背丈の略2倍の横幅寸法の帯板状体2とする。次に、両縁部を仮止め糸3、3によって固定する。次に、中央部を一端から他端に亘って溶着するのである。これによって、中央部に溶着部4が形成され、蛇行状に折曲させられた長尺な繊維束は解けることがなくなり、帯板状体2として固定されたブラシ用毛材1となるのである。
【0010】
図2は、本発明のブラシ用毛材1をチャンネルブラシ34に適用した状態を示す斜視図である。この図に示すように、チャンネルブラシ34は、ブラシ用毛材1、帯状体35及び芯線36より構成されている。帯状体35は概コ字状の溝部37を有する長尺形状に形成されており、ブラシ用毛材1は芯線36及び帯状体35にて挟みつけて折り込んで形成されている。
【0011】
また、上記チャンネルブラシ34の製造方法を図3を用いて説明する。先ず、長尺の帯状体35に対して、ブラシ用毛材1の中心にある溶着部4が帯状体35の上部になるように重ね合わせて設置し、縦ロール39を使用して芯線36にてブラシ用毛材1を挟み付けると共に、芯線36を概コ字状の溝部37に押し込む。次に、帯状体35の両側に形成された横ロール38、38を使用して帯状体35を両側からかしめる。その結果、図2に示したように中央部が帯状体35及び芯線36に挟み付けられて折り込まれた、密集且つ連続的に形成されてあるブラシ用毛材1を有するチャンネルブラシ34が形成される。また、図3においては、ブラシ用毛材1は、仮止め糸3、3の内側にて切断の後、帯状体35の上部になるように、重ね合わせて設置されてある。
【0012】
図4は本発明の第二実施形態を示す説明図である。先ず、所望の太さにまとめた長尺の繊維束を、蛇行状に折曲させて、ブラシの背丈の略2倍の横幅寸法の帯板状体2とする。次に、両縁部に芯線6を糸5によって固定する。さらに、仮止め糸3、3によって帯板状体2を固定する。次に、仮止め糸と芯線6との間を一端から他端に亘って溶着するのである。これによって、溶着部4が形成され、蛇行状に折曲させられた長尺な繊維束は解けることがなくなり、帯板状体2として固定されたブラシ用毛材1aとなるのである。
【0013】
そして、上述したブラシ用毛材の中央X線上で切断すると、図5のようなブラシが2個製作される。この状態では溶着部4によって繊維束は一体となっているので、仮止め糸3は取り外されている。
【0014】
ここで、ブラシ用毛材は使用する目的に応じて、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリカーボネイト系繊維に代表されるポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維、ウレタンゴム系繊維、アクリル系繊維、熱可塑性ポリビニルアルコール系繊維、熱可塑性フッ素系樹脂繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維等の材質の中から、選定して使用する。また、抗菌繊維、微生物分解性繊維、発色性繊維、蛍光繊維、蓄光繊維、高強度繊維、静電性繊維、制電性繊維、伸縮性繊維、熱融着繊維、弾性繊維等の材質の中から、選定して使用する。さらにまた、上記以外にも、例えば、アルミニウム、マグネシウム、鉄、ステンレス、セラミック等の繊維、前記材質の合金の繊維、天然繊維、化学繊維、天然樹脂発泡体、合成樹脂発泡体、天然樹脂、合成樹脂、天然ゴム、合成ゴムからなる繊維等の材質の中から、選定して使用できる。また、前記繊維は極細繊維の形態も設定できる。
【0015】
また、上述した溶着部の形成方法としては、超音波溶着、熱溶着、レーザー波溶着、電磁波溶着、高周波溶着等の様々な溶着方法が適用でき、帯板状体の中央部又は端部に関わらず、帯板状体を形成している多数の繊維を互いに接合可能であるならば、如何なる溶着部の形態も採用できる。
【0016】
図6〜図13に、上記第一及び第二実施形態で示したブラシ用毛材1又は1aの各種ブラシへの適用例を示す。先ず、図6はブラシ用毛材1、を回転ロータ24に適用した場合の断面図である。この図に示すように、回転ロータ24の回転軸25の溝26の底にブラシ用毛材1の溶着部4が接触するように芯線6と共に押し込んで製作される。また、ブラシ用毛材1は、両端部が切断されてあり、仮止め糸3は取り外されている。
【0017】
図7に示すのはブラシ用毛材1又は1aをエアコンのフィルタの清掃ブラシ、室内清掃用ブラシ、研磨、研削及びバリ取り用ブラシに適用した場合の図である。図7(a)は第二実施形態のブラシ用毛材1aの端部を板材7の溝に嵌め込んだものであり、溶着部4が板材7の締め付け部8、8によって締め付けられて固定されている。また、同様にして、図7(b)は第一実施形態のブラシ用毛材1の端部を板材7の溝に嵌め込んだものである。
【0018】
図8に示すのは洗車機用洗浄ブラシ10に適用した場合であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。この図に示すように、洗車機用洗浄ブラシ10は回転体11の外周に4条の溝12が設けられており、この溝12にブラケット13を有するブラシ用毛材1を嵌め込むのである。尚、このブラシ用毛材1は図1で示したものを使用し、帯板状体2の両縁をカットし、溶着部4をブラケット13に固定している。また、ブラシ用毛材1は、両端部が切断されてあり、仮止め糸3は取り外されている。
【0019】
図9はブラシ用毛材1又は1aをねじりブラシ14に適用した場合である。この場合は、2本の金属製の棒部材15、15の間にブラシ用毛材1の中央部分を挟み、2本の金属製の棒部材15、15をねじっていくことによって、ねじりブラシ14が製作されるのである。このねじりブラシ14はエアコンのフィルタ清掃用、円形の穴の中の汚れやゴミの除去用、研磨、バリ取り用等に使用される。尚、この場合は図1で示したブラシ用毛材1の両縁をカットしてもよいし、カットしないでループ状のままで使用することもできる。
【0020】
図10はブラシ用毛材1又は1aを洗浄ブラシ16に適用した場合である。この洗浄ブラシ16は、ブラシ用毛材1によって形成されたチャンネルブラシ17を螺旋状に回転軸18に巻き付けたものであり、洗車機用、一般洗浄用、液晶、ウェハ、ガラス等の基板洗浄用、掃除機用等に使用される。
【0021】
図11はブラシ用毛材1又は1aを洗浄ブラシ19に適用した場合である。この洗浄ブラシ19は室内清掃用、洗車機用等に使用される。
【0022】
図12はブラシ用毛材1又は1aを洗浄ブラシ20に適用した場合である。この洗浄ブラシ20は、回転軸21の溝部22にブラシ用毛材1にて形成されたチャンネルブラシ23を挿入し、捻ることによって製作される。この洗浄ブラシ20は、主に掃除機用床ノズルの回転ロータとして使用される。
【0023】
図13はブラシ用毛材1又は1aをブラシロール27に適用した場合である。このブラシロール27は鉄鋼又は非鉄金属性の板材の表面の洗浄、清掃、研磨、研削及び表面処理に使用される。
【0024】
尚、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の実施形態をとることができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のブラシ用毛材は洗車ブラシ、ねじりブラシ、洗浄ブラシ、回転ロータ、清掃用ブラシ等の各種ブラシを構成する一部品として使用する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一実施形態を示す図である。
【図2】チャンネルブラシの斜視図である。
【図3】チャンネルブラシの製造方法を示す斜視図である。
【図4】本発明の第二実施形態を示す図である。
【図5】第二実施形態のブラシ用毛材を分割した状態の斜視図である。
【図6】本発明のブラシ用毛材を回転ロータに適用した場合の図である。
【図7】本発明のブラシ用毛材を清掃ブラシ等に適用した場合の図である。
【図8】本発明のブラシ用毛材を洗車ブラシに適用した場合の図である。
【図9】本発明のブラシ用毛材をねじりブラシに適用した場合の図である。
【図10】本発明のブラシ用毛材を洗浄ブラシに適用した場合の図である。
【図11】本発明のブラシ用毛材を洗浄ブラシに適用した場合の図である。
【図12】本発明のブラシ用毛材を洗浄ブラシに適用した場合の図である。
【図13】本発明のブラシ用毛材をブラシロールに適用した場合の図である。
【符号の説明】
【0027】
1、1a ブラシ用毛材
2 帯板状体
3 仮止め糸
4 溶着部
5 糸
6 芯線
7 板材
8 締め付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗車ブラシ、ねじりブラシ、洗浄ブラシ、回転ロータ、清掃用ブラシ等の各種ブラシに用いられるブラシ用毛材において、前記ブラシ用毛材は、長尺の繊維束を蛇行状に折曲させて仮止め糸により帯状に連ねた帯板状体を有し、該帯板状体は繊維束間を固着する溶着部が形成されていることを特徴とするブラシ用毛材。
【請求項2】
帯板状体の略中央部に前記繊維束間を固着する溶着部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のブラシ用毛材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−330538(P2007−330538A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166329(P2006−166329)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】