説明

ブラシ

【課題】へたり難くて復元性に優れ、且つ被接触物を傷つけ難いブラシを提供する。
【解決手段】ブラシ24は、並列に配置された複数のブラシ糸24aを一体に形成することによって構成されている。ブラシ糸24aは、ニッケル(Ni)−チタン(Ti)合金製のベース繊維31にポリアミド製の内側繊維及び外側繊維33を螺旋状に重ねて巻回することによって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば空気調和機などに備えられた吸気用のフィルタに付着する塵埃を除去するためのブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気調和機などの機器は、運転中、空気吸入口から室内の空気とともに該空気中に浮遊する塵埃も一緒に吸入する。そして、このような塵埃の機器内部への進入を避けるため、通常は空気吸入口の上流部分に塵埃を除去するためのメッシュ状のフィルタが設けられている。このようなフィルタは塵埃による目詰まりを抑制すべく定期的な清掃が必要であるが、フィルタの清掃作業を手作業で行うには煩雑な作業が必要となる。
【0003】
このため、近年では、フィルタを自動的に清掃するフィルタ用清掃装置を備えた空気調和機が数多く提案されている。フィルタ用清掃装置は、ブラシを有しており、該ブラシをフィルタに摺接させた状態で移動させることにより、該フィルタに付着した塵埃を掻き取って除去するようになっている。こうしたフィルタ用清掃装置に用いられるブラシは、その使用目的から比較的復元性のよいポリアミド製の繊維によって構成されることが多いが、フィルタに対して強く接触させた場合には、どうしてもへたってしまう。
【0004】
そこで、こうしたブラシのへたりを抑制すべく、ポリアミド製の繊維よりもへたり難くて復元性に優れた超弾性合金製の繊維によって構成されたブラシ(例えば、特許文献1)を用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−306246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のブラシは、金属繊維(超弾性合金製の繊維)によって構成されているため、フィルタを傷つけてしまうおそれがあるという問題があった。
本発明は、このような課題に着目してなされたものである。その目的とするところは、へたり難くて復元性に優れ、且つ被接触物を傷つけ難いブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、並列に配置された複数のブラシ糸を一体に形成してなるブラシであって、前記ブラシ糸は、超弾性合金製の第1繊維に合成樹脂製の第2繊維を螺旋状に巻回してなることを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、ブラシ糸が被接触物に接触した場合に、超弾性合金製の第1繊維が該被接触物に対して直接接触することが合成樹脂製の第2繊維によって抑制されるので、ブラシ糸が被接触物を傷つけることを抑制することが可能となる。加えて、超弾性合金製の第1繊維がブラシ糸の芯として機能するため、ブラシ糸をへたり難くすることができるとともに、ブラシ糸に優れた復元性を持たせることが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1繊維には、複数本の前記第2繊維が重ねて巻回されていることを要旨とする。
上記構成によれば、ブラシ糸がばらけることを抑制することが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記各第2繊維の中には、巻回方向が他の第2繊維と異なる第2繊維が含まれていることを要旨とする。
上記構成によれば、一方向に巻回した第2繊維の本数と他方向に巻回した第2繊維の本数とを合わせることで、ブラシ糸のバランスを好適に維持することが可能となる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の発明において、前記第2繊維の巻きピッチは、該第2繊維の繊維径と同じになるように設定されていることを要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、第1繊維に第2繊維が隙間なく巻回されるので、第2繊維によって第1繊維を確実に隠蔽することが可能となる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の発明において、前記第1繊維の先端は前記第2繊維の先端よりも突出していることを要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、第1繊維によって第2繊維を確実に支持することが可能となる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の発明において、前記第2繊維には、捲縮加工が施されていることを要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、ブラシ糸にボリュームを持たせることが可能となる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載の発明において、前記超弾性合金は、チタン(Ti)−ニッケル(Ni)合金であることを要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、ブラシ糸に超弾性を確実に発現させることが可能となる。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載の発明において、前記ブラシ糸には、糊を付与するサイジングが行われていることを要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、ブラシ糸がほつれることを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、へたり難くて復元性に優れ、且つ被接触物を傷つけ難いブラシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態における空気調和機の断面図。
【図2】実施形態におけるフィルタの清掃状態を示す正面図。
【図3】実施形態のフィルタ用清掃装置の断面図。
【図4】実施形態におけるクリーニングブラシユニットの斜視図。
【図5】実施形態におけるブラシの製造方法を示す要部拡大簡略図。
【図6】実施形態におけるブラシ糸の製造方法を示す要部拡大簡略図。
【図7】実施形態におけるクリーニングブラシユニットの要部拡大図。
【図8】変更例のクリーニングブラシユニットの簡略断面図。
【図9】変更例のクリーニングブラシユニットにおいて、(a)は支持部材にブラシを接合するときの状態を示す簡略断面図、(b)は支持部材にブラシを接合したときの状態を示す簡略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を空気調和機に搭載されるフィルタ用清掃装置に用いられるブラシに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、室内の壁面に設置される空気調和機11は、断面視略四角形状をなす本体ケース12を備えている。本体ケース12の前面側(図1では左面側)には、室内の空気を該本体ケース12内に取り入れるための複数のスリット状の空気吸入口13が形成され、本体ケース12の下面側には、該本体ケース12内で熱交換された空気を室内に吹き出すための空気吹出口14が形成されている。
【0020】
本体ケース12内の前端部には、各空気吸入口13と対向するように合成樹脂よりなる矩形板状のフィルタ15が配設されている。さらに、本体ケース12内において、フィルタ15の後側には熱交換器16が配設され、該熱交換器16の後側には送風機17が配設されている。そして、空気調和機11の運転が開始されると、送風機17が駆動され、該送風機17の駆動により、室内の空気が該室内に浮遊する塵埃とともに各空気吸入口13から本体ケース12内に取り込まれる。この本体ケース12内に取り込まれた塵埃を含む空気は、フィルタ15により塵埃が除去された後、熱交換器16により熱交換され、その後、再び空気吹出口14から室内に吹き出される。
【0021】
この場合、塵埃を含む空気から除去された塵埃は、フィルタ15の前面(表面)に付着する。このため、本実施形態の空気調和機11は、本体ケース12内におけるフィルタ15の前面側に、該フィルタ15の前面に付着した塵埃を除去するためのフィルタ用清掃装置18が配設されている。
【0022】
次に、フィルタ用清掃装置18の構成について詳述する。
図2及び図3に示すように、フィルタ用清掃装置18は、後方側に開口部20bを有するとともに左右方向に延びる長四角箱状をなすケース20を備えている。ケース20の左側には柱状をなす移動装置21が立設されている。そして、ケース20は、その左端部において移動装置21によって片持ち支持されており、該移動装置21の駆動により上下方向に往復平行移動されるようになっている。この場合、移動装置21によるケース20の上下方向への移動可能範囲は、フィルタ15の上下方向の長さよりも広くなるように設定されている。
【0023】
図3及び図4に示すように、ケース20の前壁20aの内面には長四角箱状をなす取付部19が該ケース20の長手方向全体にわたって延びるように設けられている。取付部19における後方側には該取付部19の内外を連通する差込口19aが該取付部19の長手方向全体にわたって延びるように設けられている。そして、取付部19には、フィルタ15の前面(表面)と平行な左右方向に延びるクリーニングブラシユニット22が着脱自在に取り付けられるようになっている。
【0024】
クリーニングブラシユニット22は、左右方向に延びるとともに適度な柔軟性を有する熱可塑性エラストマーよりなる支持部材23と、並列に配置された直線状をなす複数本のブラシ糸24aを一体に形成してなる帯状のブラシ24とを備えている。すなわち、クリーニングブラシユニット22は、支持部材23の後面に形成された左右方向に延びる凹溝23aに、ブラシ24の前端部(基端部)を挿入した状態で、支持部材23にブラシ24を熱溶着することで形成される。この場合、支持部材23は押出成型によって成型されるが、この成型時に同時に支持部材23に対してブラシ24が熱溶着される。
【0025】
支持部材23は、後面側に凹溝23aが形成されたブロック状のヘッド部23bと、該ヘッド部23bの前面における上下方向の中央部から前方に向かって真っ直ぐに延びる平板状のボディ部23cと、該ボディ部23cと直交するとともに左右方向に延びる平板状の係止部23dとを備えている。ボディ部23cの前端部における上下方向の幅は、該ボディ部23cにおける他の部分の上下方向の幅よりも若干広くなっているとともに、取付部19の差込口19aの上下方向の幅よりも若干狭くなっている。
【0026】
ヘッド部23bと係止部23dとの間には隙間が形成されている。係止部23dの上下方向の幅は、取付部19の上下方向における内面間の距離よりも若干狭くなっているとともに、取付部19の差込口19aの上下方向の幅よりも広くなっている。また、ヘッド部23bの上下方向の幅は、係止部23dの上下方向の幅とほぼ同じになっている。そして、支持部材23をそのボディ部23cの前端部から取付部19の差込口19aに押し込むと、係止部23dが弾性変形しながら差込口19aから取付部19内に入り込んで元の形状に戻ることで、クリーニングブラシユニット22が取付部19に対して取り付けられる。クリーニングブラシユニット22を取付部19から取り外す場合には、支持部材23を差込口19aから引き抜けばよい。この場合も、支持部材23の係止部23dは、弾性変形しながら差込口19aを通り抜ける。
【0027】
クリーニングブラシユニット22が取付部19に取り付けられた状態では、取付部19の差込口19a(取付部19の後壁)が支持部材23の係止部23dとヘッド部23bとで挟まれるとともに、支持部材23のボディ部23cが差込口19aに挿通された状態になっている。このとき、支持部材23のヘッド部23bがケース20内において差込口19aと開口部20bとの間に位置するとともに、ブラシ24がケース20の開口部20bを通じてフィルタ15の前面に対して摺接するようになっている。この場合、ブラシ24は、該ブラシ24(各ブラシ糸24a)の先端部が適度に湾曲する程度の強さでフィルタ15の前面に対して摺接する。
【0028】
次に、ブラシ24の構成について詳述する。
図5に示すように、ブラシ24は、1本のブラシ糸24aを蛇行状に編み、両側の湾曲部分を互いに平行に延びる複数本(本実施形態では3本)の保持糸30によってそれぞれ綴じた後、中央部分を切断する(図5の矢印に沿って切断する)ことによって同時に2つ形成される。すなわち、ブラシ24は、並列に配置された複数のブラシ糸24aを保持糸30によって一体に形成してなっている。
【0029】
図6に示すように、ブラシ糸24aは、芯となる超弾性合金製の第1繊維としてのベース繊維31に合成樹脂製の第2繊維としての内側繊維32を螺旋状に巻回し、さらに内側繊維32の外側に合成樹脂製の第2繊維としての外側繊維33を重ねるように螺旋状に巻回した後、糊を付与するサイジングを行うことによって形成されている。
【0030】
ベース繊維31の材料として用いられる超弾性合金は、どのような形に変形しても予め記憶された形状に戻る形状記憶特性及びゴムひものように特定温度で伸び縮みする超弾性特性を有した合金である。この超弾性合金としては、例えばニッケル(Ni)−チタン(Ti)合金、Ni−Ti−コバルト(Co)合金、Ni−Ti−銅(Cu)合金、Cu−亜鉛(Zn)−アルミニウム(Al)合金等が挙げられるが、本実施形態ではニッケル(Ni)−チタン(Ti)合金(日本精線(株)製、商品名;リメンバロイ、繊維径50μm)を採用している。なお、ベース繊維31は、ニッケル(Ni)−チタン(Ti)合金製のモノフィラメント繊維で構成されている。
【0031】
一方、内側繊維32及び外側繊維33の材料として用いられる合成樹脂としては、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリルニトリル等が挙げられるが、本実施形態ではフィルタ15に対する擦過性(塵埃の掻き取り性)及び耐久性を考慮してポリアミドを採用している。そして、本実施形態において、内側繊維32及び外側繊維33は共に34本の繊維を撚り合わせてなる糸の形態になっており、該糸の太さは235デシテックスとなるように設定されている。この太さの糸を繊維径に換算すると、糸としての径は160μmに相当する。
【0032】
また、ブラシ糸24aにおいて、内側繊維32及び外側繊維33のそれぞれの巻きピッチはこれらの繊維径とそれぞれ同じになるように設定されている。すなわち、内側繊維32及び外側繊維33は、それぞれ隙間ができないように巻回されている。さらに、ブラシ糸24aにおいて、内側繊維32の巻回方向と外側繊維33の巻回方向とは互いに逆方向になっている。
【0033】
また、図7に示すように、クリーニングブラシユニット22のブラシ24のブラシ糸24aにおいて、ベース繊維31の後端(先端)は内側繊維32及び外側繊維33の後端(先端)よりも後方側へ若干突出している。すなわち、ベース繊維31の後端部(先端部)は上下方向から見て内側繊維32及び外側繊維33から若干露出している。
【0034】
次に、フィルタ用清掃装置18の動作時におけるブラシ24の作用について説明する。
空気調和機11の運転中には、ケース20は、空気の流れの妨げとならないようにフィルタ15よりも上側または下側(ここでは上側)に位置している。そして、空気調和機11が停止されると、フィルタ15の前面に付着した塵埃を除去すべくフィルタ用清掃装置18が作動する。具体的には、移動装置21の駆動によってケース20が下方に向かって平行移動されると、ブラシ24の各ブラシ糸24aがフィルタ15の前面上を上側から下側に向かって摺動する。この各ブラシ糸24aの摺動により、フィルタ15の前面に付着した塵埃が上側から下側に向かって順次掻き取られる。
【0035】
このとき、各ブラシ糸24aは、合成樹脂よりも硬いニッケル(Ni)−チタン(Ti)合金製のベース繊維31がポリアミド製の内側繊維32及び外側繊維33によって覆われているため、フィルタ15の前面にはベース繊維31が接触せずに外側繊維33が接触する。この場合、各ブラシ糸24aにおけるベース繊維31の先端は内側繊維32及び外側繊維33によって覆われていないが、各ブラシ糸24aは、フィルタ15の前面に対して所定の強さで接触しているため、上側に向かって適度に湾曲しながら該フィルタ15の前面上を摺動する。
【0036】
したがって、各ブラシ糸24aは、主にそれらの側部(外側繊維33)がフィルタ15の前面に対して接触するため、それらの先端(露出したベース繊維31)がフィルタ15の前面に接触することはほとんどない。この結果、各ブラシ糸24aによってフィルタ15に付着した塵埃を掻き取る際に、該各ブラシ糸24aがフィルタ15を傷つけることはほとんどない。
【0037】
フィルタ15の前面から各ブラシ糸24aによって掻き取られた塵埃は、ケース20内に収容される。そして、移動装置21によりケース20がフィルタ15よりも下側に移動されると、フィルタ15の前面全体の塵埃が各ブラシ糸24aによって掻き取られ、フィルタ15の清掃が完了する。その後、フィルタ用清掃装置18の作動が停止する。
【0038】
この場合、各ブラシ糸24aは、フィルタ15との接触時には湾曲しているが、フィルタ15から離間した際には、ベース繊維31の超弾性特性により、速やかに元の直線形状に戻る(復元する)。また、各ブラシ糸24aのベース繊維31を構成するニッケル(Ni)−チタン(Ti)合金は、ポリアミドなどの合成樹脂に比べて、復元性が優れていて、へたり難い。
【0039】
このため、各ブラシ糸24aが湾曲した状態でフィルタ15に接触しながら該フィルタ15に付着した塵埃を繰り返し掻き取っても、該各ブラシ糸24aがへたり難いため、各ブラシ糸24aの掻き取り性能を長期間にわたって維持することができる。したがって、クリーニングブラシユニット22の交換頻度を少なくすることができる。すなわち、クリーニングブラシユニット22を長期間にわたって使用することができる。
【0040】
以上詳述した実施形態によれば次のような効果が発揮される。
(1)ブラシ糸24aは、ニッケル(Ni)−チタン(Ti)合金製のベース繊維31に、ポリアミド製の内側繊維32及び外側繊維33を重ねて螺旋状に巻回してなっている。このため、各ブラシ糸24aがフィルタ15の前面上を摺動する際に、ベース繊維31がフィルタ15に直接接触することが内側繊維32及び外側繊維33によって抑制されるので、各ブラシ糸24aがフィルタ15を傷つけることを抑制することができる。加えて、超弾性特性を有するベース繊維31がブラシ糸24aの芯として機能するため、ブラシ糸24aをへたり難くすることができるとともに、ブラシ糸24aに優れた復元性を持たせることができる。
【0041】
(2)ブラシ糸24aは、ベース繊維31に内側繊維32及び外側繊維33を重ねて螺旋状に巻回してなっているため、ブラシ糸24aがベース繊維31と内側繊維32と外側繊維33とにばらけることを抑制することができる。因みに、ベース繊維31に内側繊維32のみを螺旋状に巻回するようにしてブラシ糸24aを構成した場合には、該ブラシ糸24aがベース繊維31と内側繊維32とにばらけ易くなってしまう。
【0042】
(3)ブラシ糸24aにおいてベース繊維31に巻回した内側繊維32及び外側繊維33の巻回方向は互いに逆方向になっているため、ブラシ糸24aのバランスを好適に維持することができる。
【0043】
(4)ブラシ糸24aにおいて内側繊維32及び外側繊維33のベース繊維31に対する巻きピッチは、これら内側繊維32及び外側繊維33の繊維径とそれぞれ同じになるように設定されている。このため、ベース繊維31に対して内側繊維32及び外側繊維33が隙間なく巻回されるので、内側繊維32及び外側繊維33によってベース繊維31を確実に隠蔽することができる。
【0044】
(5)ブラシ糸24aにおいてベース繊維31の先端は内側繊維32及び外側繊維33の先端よりも突出しているため、ベース繊維31によって内側繊維32及び外側繊維33を確実に支持することができる。
【0045】
(6)ベース繊維31は、超弾性合金であるチタン(Ti)−ニッケル(Ni)合金によって構成されているため、ブラシ糸24aに超弾性を確実に発現させることができる。
(7)ブラシ糸24aには、糊を付与するサイジングが行われているため、ブラシ糸24aを構成するベース繊維31、内側繊維32、及び外側繊維33を強固に一体化させることができる。したがって、ブラシ糸24aがほつれることを効果的に抑制することができる。
【0046】
(変更例)
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・外側繊維33に捲縮加工を施してもよい。このようにすればブラシ糸24aにボリュームを持たせることができるので、フィルタ15に対する塵埃の拭き取り性能を発揮させることができる。
【0047】
・ブラシ糸24aには、必ずしもサイジングを行う必要はない。
・ブラシ糸24aにおいて、ベース繊維31の先端は、必ずしも内側繊維32及び外側繊維33の先端よりも突出させる必要はない。すなわち、内側繊維32及び外側繊維33の先端がベース繊維31の先端よりも突出していてもよいし、内側繊維32及び外側繊維33の先端と、ベース繊維31の先端とが面一であってもよい。
【0048】
・ブラシ糸24aにおいて、ベース繊維31に対する内側繊維32及び外側繊維33の巻きピッチは、これら内側繊維32及び外側繊維33の繊維径よりも大きくなるように設定してもよい。すなわち、ベース繊維31に対して内側繊維32及び外側繊維33を隙間が形成されるようにそれぞれ巻回するようにしてもよい。この場合、巻きピッチを繊維径よりも大きく設定するのは、内側繊維32及び外側繊維33のうちの少なくとも一方でよい。このようにすれば、内側繊維32及び外側繊維33のうちの少なくとも一方の使用量を抑えることができる。この結果、製品のコストダウンに寄与できる。
【0049】
・ブラシ糸24aにおいて、内側繊維32と外側繊維33とをそれぞれ異なる色に着色し、さらに、ベース繊維31に対する内側繊維32の巻きピッチを該内側繊維32の繊維径と同じにするとともに、ベース繊維31に対する外側繊維33の巻きピッチを該外側繊維33の繊維径よりも大きくなるようにしてもよい。このようにすれば、外側繊維33の隙間から内側繊維32を露出させることができるので、ブラシ糸24aの意匠性を向上させることができる。
【0050】
・ブラシ糸24aにおいてベース繊維31に巻回した内側繊維32及び外側繊維33の巻回方向は同じであってもよい。
・ブラシ糸24aにおいてベース繊維31に内側繊維32のみを螺旋状に巻回するようにしてもよい。すなわち、ブラシ糸24aにおいて外側繊維33を省略してもよい。さらにこの場合、内側繊維32に捲縮加工を施してもよい。
【0051】
・ブラシ糸24aにおいて、外側繊維33の上からさらに1本あるいは2本以上の合成樹脂製の繊維を重ねて螺旋状に巻回するようにしてもよい。この場合、ブラシ糸24aのバランスを考慮すると、ベース繊維31に対して一方向に巻回する繊維の本数と他方向に巻回する繊維の本数とを合わせることが好ましいが、必ずしもこれらの本数を合わせる必要はない。
【0052】
・クリーニングブラシユニット22は回転ブラシによって構成してもよい。すなわち、回転ブラシは、長尺状の丸棒の表面に該丸棒の長手方向に沿って延びるとともに周方向に等間隔となるように複数(例えば4つ)の溝を形成し、該各溝にそれぞれブラシ24の保持糸30の部分(基端部分)を丸棒の長手方向に沿ってスライド挿入して各溝にそれぞれブラシ24を支持させてなる。この場合、丸棒の径方向においてブラシ24が溝から抜け落ちない程度にブラシ24の保持糸30を太くする必要がある。
【0053】
・ブラシ24は、並列に配置された複数のブラシ糸24aを、保持糸30の代わりに接着剤や粘着テープによって一体に形成するようにして構成してもよい。
・ケース20は、枠状に形成してもよい。
【0054】
・図8に示すように、クリーニングブラシユニット22において、支持部材23のヘッド部23bを後側に差込口23eを有する箱状にし、該差込口23eからブラシ24を保持糸30側から差し込むことでブラシ24が支持部材23に取り付けられるように構成してもよい。この場合、ブラシ24が支持部材23から抜け落ちないようにすべく、ブラシ24の保持糸30の太さを差込口23eの幅よりも大きくする必要がある。さらに、この場合、ヘッド部23bの大きさをできるだけ小さくすべく、ブラシ24の保持糸30を該ブラシ24の前端部に位置する一本のみにしている。
【0055】
・クリーニングブラシユニット22において、図9(a)に示すように、支持部材23のヘッド部23bを、二股に分かれた平板形状とし、図9(b)に示すように、該ヘッド部23bにブラシ24の前端部を挟んだ状態で、該ブラシ24を該ヘッド部23bに接着剤によって接着するようにしてもよい。この場合、支持部材23のヘッド部23bへのブラシ24の接合形態は、状況に応じて、熱溶着、縫着、あるいは既存の接合方法などに適宜変更してもよい。
【0056】
・支持部材23の形態は、上記実施形態に限定されない。すなわち、支持部材23の形態は、状況に応じて適宜変更してもよい。
・支持部材23は、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体)やPP(ポリプロピレン)などの硬質の合成樹脂によって構成してもよい。この場合、支持部材23(クリーニングブラシユニット22)を取付部19に対して着脱自在とするためには、例えば、取付部19をエラストマーによって構成する必要がある。
【0057】
・クリーニングブラシユニット22において、粘着テープによってブラシ24を支持部材23に取着してもよい。このようにすれば、支持部材23から凹溝23aを省略できるとともに、支持部材23とブラシ24との貼り合わせ部分の形状をより一層簡略化することができる。
【0058】
・フィルタ用清掃装置18は、ケース20を上下方向に延びるように配置し、該ケース20が移動装置21により左右方向へ往復移動されるように構成してもよい。
・フィルタ用清掃装置18は、空気調和機11以外のフィルタを有する装置、例えば空気清浄機や換気扇などに搭載してもよい。
【0059】
・ブラシ24は、画像形成装置の感光ドラムに付着したトナーを掻き取るためのクリーニングブラシに用いてもよいし、電気掃除機のヘッド内に収容される回転ブラシに用いてもよい。
【0060】
・ブラシ24は、例えば自動車のシフトレバーの溝やシートレールの目隠し部材として用いてもよい。このようにすれば、シフトレバーやシートを移動させても、今までシフトレバーやシートによって負荷がかかって湾曲していたブラシ糸24aは、シフトレバーやシートからの離間にともなって速やかに元の直線形状に戻るようになる。
【符号の説明】
【0061】
24…ブラシ、24a…ブラシ糸、31…第1繊維としてのベース繊維、32…第2繊維としての内側繊維、33…第2繊維としての外側繊維。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配置された複数のブラシ糸を一体に形成してなるブラシであって、
前記ブラシ糸は、超弾性合金製の第1繊維に合成樹脂製の第2繊維を螺旋状に巻回してなることを特徴とするブラシ。
【請求項2】
前記第1繊維には、複数本の前記第2繊維が重ねて巻回されていることを特徴とする請求項1に記載のブラシ。
【請求項3】
前記各第2繊維の中には、巻回方向が他の第2繊維と異なる第2繊維が含まれていることを特徴とする請求項2に記載のブラシ。
【請求項4】
前記第2繊維の巻きピッチは、該第2繊維の繊維径と同じになるように設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項5】
前記第1繊維の先端は前記第2繊維の先端よりも突出していることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項6】
前記第2繊維には、捲縮加工が施されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項7】
前記超弾性合金は、チタン(Ti)−ニッケル(Ni)合金であることを特徴とする請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項8】
前記ブラシ糸には、糊を付与するサイジングが行われていることを特徴とする請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載のブラシ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−179048(P2010−179048A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27714(P2009−27714)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(596024426)槌屋ティスコ株式会社 (47)
【Fターム(参考)】