説明

ブレーカープレートおよびそれを用いた押出成形機

【課題】設計製作が容易でかつ掃除がしやすいように、できるだけ単純な形状にてブレーカープレート中心付近における樹脂の滞留を効果的に防止しうるブレーカープレート、および、それを用いた押出成形機を提供する。
【解決手段】本発明に係るブレーカープレート2は、押出成形機1のスクリュー先端3と樹脂押出口4の間に設けられ、樹脂を多数の樹脂通過孔4に分散して通過させ、その出口側の空間で合流させ、樹脂押出口4に供給するブレーカープレート2において、樹脂通過孔4が、ブレーカープレート2の中心軸を中心Oとする3つ以上の同心円上に配置され、これら樹脂通過孔の内径がブレーカープレート2の中心軸から半径方向に向かって順次小さくなるように形成されてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形機用のブレーカープレート、特に、ブレーカープレート付近における樹脂の滞留を最小限に抑え得るブレーカープレートおよびそれを用いた押出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、スクリュー式押出成形機は、バレル内でスクリューにより樹脂を混練し溶融した後、バレル先端から樹脂押出口へ押し出すように構成されている。そして、バレル内の樹脂の滞留時間を稼いでスクリューによる樹脂の混練を促進させることで樹脂が未溶融の部分を残したまま押し出されるのを防止するとともに、押出成形機の吐出量を安定化するために、バレル先端と樹脂押出口の間には、金属製円板に多数の樹脂通過孔を開けたブレーカープレートを挿入している。
【0003】
このブレーカープレートとしては、例えば、樹脂の入口側および出口側の端面がブレーカープレートの軸に直角な断面と平行な平面であって、内径一定の樹脂通過孔をその中心軸の回りに同心円状に配置したものが多く用いられている。
【0004】
しかしながら、このような従来のブレーカープレートを使用した場合、その中心付近の樹脂通過孔を通る樹脂の流速が、他の樹脂通過孔を通る樹脂の流速よりも遅くなってしまうため、この部分に樹脂が滞留しやすく、ここに滞留した樹脂が劣化してしまうという問題があった。また、押出成形機内の樹脂を別の樹脂に置換する際には、この部分に滞留した樹脂が置換される時間により完全に置換されるまでの時間が律速され、完全置換に長時間を要するという問題があった。
【0005】
そこで、上記問題点を解決すべく、過去に以下のようなブレーカープレートが提案されている。
【0006】
その一は、押出機(押出成形機)のスクリューと成形口金(樹脂押出口)との間の流路に挿入するところの金属製円板の全面に亙って、複数の同心円上にそれぞれ多数の孔を並べて開けてなるブレーカープレートであって、端面近傍で、端面に向かって、各孔の径を徐々に増大させたテーパー孔部分を設けると共に、前記各同心円に沿って、断面形状V字状もしくはU字状の環状溝を設けてなり、しかも、同一円周上、隣合うテーパー孔部分の環状溝の底における隙間、及び隣合う環状溝の端面における隙間をそれぞれ可及的に小さくしてなるブレーカープレートである(特許文献1参照)。
【0007】
その二は、押出成形機のスクリュー先端と樹脂押出口との間に設けられ、樹脂押出口に供給するブレーカープレートにおいて、スクリュー先端面と対向する端面が、相対向するスクリューの先端面と平行であって、スクリューの先端面との距離がスクリュー計量部溝底とバレル内壁とのクリアランス100〜500%となるよう構成されたブレーカープレートである(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−315967号公報(特許請求の範囲など)
【特許文献2】特開平9−29816号公報(特許請求の範囲など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のブレーカープレートは、従来のものに比べて、余分にテーパー孔部分および環状溝を形成する必要があるため、加工に手間がかかる問題がある。また、孔、テーパー孔部分、環状溝、隙間など寸法の制約が多いため、設計が困難な問題もある。
【0009】
また、特許文献2に記載のブレーカープレートは、スクリュー先端面と対向する端面をスクリューの先端面と平行に形成する必要があるため、従来のものに比べて、加工に手間がかかるとともに、スクリュー先端の形状に合わせて加工形状をその都度変更する必要があるという問題がある。
【0010】
さらに、これらのブレーカープレートは、凹凸が多いなど形状が複雑なため、掃除が難しいという問題もある。
【0011】
そこで本発明の目的は、設計製作が容易でかつ掃除がしやすいように、できるだけ単純な形状にてブレーカープレート中心付近における樹脂の滞留を効果的に防止しうるブレーカープレート、および、それを用いた押出成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、押出成形機のスクリュー先端と樹脂押出口の間に設けられ、樹脂を多数の樹脂通過孔に分散して通過させ、その出口側の空間で合流させ、樹脂押出口に供給するブレーカープレートであって、前記樹脂通過孔が、ブレーカープレートの中心軸の周りに3つ以上の同心円上に配置され、これら樹脂通過孔の内径がブレーカープレートの中心軸からその半径方向に向かって順次小さくなるように形成されてなることを特徴とするブレーカープレートである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記樹脂通過孔の最大内径Dと最小内径dとの比D/dが1.1〜3である請求項1に記載のブレーカープレートである。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記樹脂通過孔の軸方向断面形状がテーパ状である請求項1または2に記載のブレーカープレートである。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のブレーカープレートを備えた押出成形機であって、前記ブレーカープレートと前記スクリュー先端との距離Lと前記樹脂通過孔の最大直径Dとの比L/Dが0.5〜2であることを特徴とする押出成形機である。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記ブレーカープレートの前記スクリュー先端側の面に、前記樹脂中のごみを除去する金網を取り付けた請求項4に記載の押出成形機である。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記金網が、開き目が粗い金網と開き目が細かい金網とを重ね合せてなる請求項5に記載の押出成形機である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、樹脂通過孔の内径を、ブレーカープレート中心軸から半径方向に向かって順次小さくなるように形成するだけの単純な形状にて、ブレーカープレート中心付近における樹脂の滞留を効果的に防止できるとともに、その他の複雑な形状の加工を必要としないため設計および製作が容易で、かつ掃除もしやすいブレーカープレートおよびそれを用いた押出成形機を安価に提供できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0020】
図1(a)は本発明に係る押出成形機のブレーカープレート近傍における部分断面図であり、同図(b)は本発明に係るブレーカープレートの平面図である。
【0021】
図1(a)に示すように、ブレーカープレート2は、押出成形機1のスクリュー先端3と樹脂押出口4の間に組み込まれる厚肉の金属製円盤状部材である。なお、ブレーカープレート2の端面の形状は、特許文献2に記載のもののようにわざわざスクリュー先端面と平行なコーン状とする必要はなく、従来品と同様、単純な平面状としたもので十分である。
【0022】
そして、同図(b)に示すように、ブレーカープレート2には、その中心軸周りに3つ以上(本例では中心軸上のものを含めて4つ)の同心円上に多数の樹脂通過孔5が開けられ、これら樹脂通過孔5の内径は、ブレーカープレートの中心軸からその半径方向に向かって順次小さくなるように形成されている。このように、中心付近の開口を大きくして、周辺へ行くほど開口を小さくすることで、中心付近の樹脂通過孔5を通過する樹脂の流速が、従来の内径一定の樹脂通過孔を有するブレーカープレートを用いた場合より高まるため、この部分での樹脂の滞留が効果的に防止されることとなる。
【0023】
樹脂通過孔5の最大内径Dと最小内径dとの比D/dは、1.1〜3とするのが望ましい。この比D/dが1.1未満では中心付近の樹脂通過孔5を通過する樹脂の流速が十分に高くならないため、上記従来のブレーカープレートと同様、この部分に樹脂の滞留が生じやすく、いっぽう、D/dが3を超えると中心付近の樹脂通過孔5を通過する樹脂の流速は十分に高くなりこの部分での滞留は問題とならないが、周辺部の樹脂通過孔5を通過する樹脂の流速が大幅に低下するため、この部分に滞留が生じるやすくなるからである。
【0024】
樹脂通過孔5は、従来品と同様、単純なストレート孔でもよいが、樹脂の整流効果を増加させるために、その入口側から出口側に向かって断面積が縮小するテーパ孔とするのがさらに好ましい。なお、樹脂通過孔5をテーパ孔とする場合、上記樹脂通過孔5の内径は、樹脂通過孔5の入口における内径を意味するものとする。
【0025】
また、ブレーカープレート2とスクリュー先端3との距離Lと樹脂通過孔5の最大直径Dとの比L/Dは、0.5〜2とするのが望ましい。この比L/Dが2を超えるとブレーカープレート2とスクリュー先端3との間が開きすぎて樹脂の流速が低下するため、この部分に樹脂の滞留が生じやすくなり、いっぽう、L/Dが0.5を下回ると押出成形機の組立て時にスクリュー先端3がブレーカープレート2に近づきすぎるため、その位置調整が困難になるからである。
【0026】
さらに、ブレーカープレート2のスクリュー先端3側の面に、樹脂中に含まれるごみを除去するために金網を取り付けてもよい。この金網としては、例えば、100メッシュ(線径0.1mm、開き目0.154mm)の金網1枚を40メッシュ(線径0.18mm、開き目0.455mm)の金網2枚でサンドイッチ状に挟んだもののように、開き目が粗い金網と開き目が細かい金網とを重ね合せたものを用いるのが推奨される。開き目が細かい金網だけを用いると線径が細いため金網が破れやすく、開き目が粗い金網だけを用いるとごみが除去できにくくなるためである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は、本発明に係る押出成形機のブレーカープレート近傍における部分断面図であり、(b)は、本発明に係るブレーカープレートの平面図である。
【符号の説明】
【0028】
1…押出成形機
2…ブレーカープレート
3…スクリュー先端
4…樹脂押出口
5…樹脂通過孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形機のスクリュー先端と樹脂押出口の間に設けられ、樹脂を多数の樹脂通過孔に分散して通過させ、その出口側の空間で合流させ、樹脂押出口に供給するブレーカープレートであって、前記樹脂通過孔が、ブレーカープレートの中心軸の周りに3つ以上の同心円上に配置され、これら樹脂通過孔の内径がブレーカープレートの中心軸からその半径方向に向かって順次小さくなるように形成されてなることを特徴とするブレーカープレート。
【請求項2】
前記樹脂通過孔の最大内径Dと最小内径dとの比D/dが1.1〜3である請求項1に記載のブレーカープレート。
【請求項3】
前記樹脂通過孔が、その入口側から出口側に向かって断面積が縮小するテーパ孔である請求項1または2に記載のブレーカープレート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のブレーカープレートを備えた押出成形機であって、前記ブレーカープレートと前記スクリュー先端との距離Lと前記樹脂通過孔の最大直径Dとの比L/Dが0.5〜2であることを特徴とする押出成形機。
【請求項5】
前記ブレーカープレートの前記スクリュー先端側の面に、前記樹脂中のごみを除去する金網を取り付けた請求項4に記載の押出成形機。
【請求項6】
前記金網が、開き目が粗い金網と開き目が細かい金網とを重ね合せてなる請求項5に記載の押出成形機。

【図1】
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