ブレーキ・速度計複合試験機
【課題】 本発明は、車両のホイールベースに左右されることなく、迅速に車両のブレーキ制動力及び速度を測定することができる小型でフラット形状のブレーキ・速度計複合試験機を提供するものである。
【解決手段】 かゝる本発明は、マルチローラ型フラットユニット200が、多数の回転ローラ220・・・を有して、かつ、これらの多数の回転ローラ220・・・が回転駆動でき、また、フリーローラともなる構成であるため、このマルチローラ型フラットユニット200のみで、又は、これと従来型のダブルローラ型フラットユニット300との組み合わせにより、試験場内の床面に特にピットを設ける必要がなく、単に敷設して使用することができる、利便性に優れたブレーキ・速度計複合試験機を得ることができる。
【解決手段】 かゝる本発明は、マルチローラ型フラットユニット200が、多数の回転ローラ220・・・を有して、かつ、これらの多数の回転ローラ220・・・が回転駆動でき、また、フリーローラともなる構成であるため、このマルチローラ型フラットユニット200のみで、又は、これと従来型のダブルローラ型フラットユニット300との組み合わせにより、試験場内の床面に特にピットを設ける必要がなく、単に敷設して使用することができる、利便性に優れたブレーキ・速度計複合試験機を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のホイールベースに左右されることなく、迅速に車両のブレーキ制動力及び速度を測定することができる小型でフラット形状のブレーキ・速度計複合試験機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のブレーキ・速度計複合試験機としては、例えば図12に示すような装置が提案されている。この装置は、一対の回転ローラ11、11を回転自在に設置させたダブルロール(2ロール)型ユニット10を、測定車両の前後左右の4輪が載る位置に計4台配置したものである(図中車両の前後左右の4輪のうち片側を省略)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このダブルロール型ユニット10を4台配置した装置では、先ず、測定車両のホイールベース(前後輪の車軸間距離)に対応させて、図示のように、測定車両の後輪側が載る、ダブルロール型ユニット10を移動させなければならない。
つまり、乗用車やワゴン車、トラックなどの大型車両では、タイヤT1も大きく、ホイールベースも長いため、後方に後退させる必要がある。一方、軽自動車や小型車両では、タイヤT2も小さく、ホイールベースも短いため、逆に前方に前進させる必要がある。この作業は結構面倒であると共に、時間も掛かり作業性の低下が避けられないという問題があった。
【0004】
さらに、構造的にダブルロール型ユニット10の移動手段20を、小型で、特に高さの低い偏平構造とすることは難しいため、通常試験場内の床面に装置収納用の穴(ピット)30を設ける必要があった。この場合、移動手段自体の製造コストの他に、ピット形成コストが掛かる。また、ピット構造を採用すると、装置の移動時開口部分が危険なため、開放部分を塞ぐためのカバー機構なども必要となる。従って、この面からのコスト上昇も避けられない。
【0005】
このような問題点に対処するため、図13に示すように、多数の回転ローラ41・・・を配置して、測定車両の前後方向にある程度の長さを有するマルチロール型ユニット40を組み込む方式の装置も提案されている(引用文献1)。この場合、マルチロール型ユニット40の長さにより、測定車両によって異なるホイールベースに対応することが可能となる。
【特許文献1】特公平06−063927号
【0006】
しかしながら、引用文献1の装置の場合、多数の回転ローラ41・・・は単なるフリーローラ構造であるため、この部分では、所定の試験ができない構成である。
また、車両の搬入時や退出時にタイヤが滑らないように、隣接するローラ間に上下動する多数の歯50・・・を設けてあるが、これらの歯50・・・の上下動には、シリンダ装置60を用い、そのシリンダロッド61の昇降で上下動させるものである。この装置自体の上下方向の高さが高くなり、通常試験場内の床面にピット30を設ける必要がある。これにより、上記図12の場合と同様の問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、車両のホイールベースに関係なく、迅速に車両のブレーキ制動力及び速度を測定することができる小型でフラット形状のものからなり、試験場内の床面に単に敷設するのみで使用できる、利便性に優れたブレーキ・速度計複合試験機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の本発明は、車両のブレーキ制動力及び速度を測定するブレーキ・速度計複合試験機において、ベースフレームに対して測定車両の前後方向に摺動可能に設置された左右のスライドフレームと、前記各スライドフレームの前後方向に配列された多数の回転ローラと、前記多数の回転ローラを連動して回転させる回転伝動手段と、前記各スライドフレームの少なくとも一つの回転ローラに連結されて当該回転ローラを回転させる左右の回転駆動手段と、前記各回転駆動手段と当該各回転駆動手段に連結された回転ローラ軸間に介在させた左右のクラッチ内蔵減速機と、前記各スライドフレーム間の少なくとも前記回転駆動手段の連結されていない回転ローラ軸間に介在させた電磁クラッチと、前記各スライドフレームの前記ベースフレームに対する移動負荷を検出するためのロードセルと、前記各スライドフレームの多数の回転ローラのいずれかの回転速度を検出するためのエンコーダとからなるマルチローラ型フラットユニットを、少なくとも測定車両の後輪側に設置したことを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機にある。
【0009】
請求項2記載の本発明は、前記請求項1記載のブレーキ・速度計複合試験機において、前記ベースフレームと前記各スライドフレーム間の前後方向にリニアガイド機構を設けて、前記各スライドフレームを摺動可能とさせたことを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機にある。
【0010】
請求項3記載の本発明は、前記請求項2記載のブレーキ・速度計複合試験機において、前記リニアガイド機構を、前記ベースフレーム側に設けたガイドレールと当該ガイドレールに摺動可能に装着されると共に、前記各スライドフレーム側に設けたリニアスライダからなることを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機にある。
【0011】
請求項4記載の本発明は、前記請求項1、2又は3記載のブレーキ・速度計複合試験機において、前記各スライドフレームの前後方向で隣接する両回転ローラ間に上下動するタイヤ滑り止めを設けたことを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機にある。
【0012】
請求項5記載の本発明は、前記請求項4のブレーキ・速度計複合試験機において、前記タイヤ滑り止めを、当該部材と前記スライドフレーム底面間に設置したベローズの伸縮によるエア方式の昇降手段で上下動させることを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機にある。
【0013】
請求項6記載の本発明は、前記請求項1乃至5記載のいずれかのブレーキ・速度計複合試験機において、測定車両の前後方向に設置された左右の一対の回転ローラと、前記左右の一対の各回転ローラを連動して回転させる回転伝動手段と、前記左右の一対の回転ローラの少なくとも一つの回転ローラに連結されて当該回転ローラを回転させる左右の回転駆動手段と、前記各回転駆動手段と当該各回転駆動手段に連結された回転ローラ軸間に介在させた左右のクラッチ内蔵減速機と、前記左右の一対の回転ローラ間の非駆動側の回転ローラ軸間に介在させた電磁クラッチと、前記左右の一対の回転ローラの少なくとも一つの負荷を検出するためのロードセルと、前記左右の一対の回転ローラの少なくとも一つの回転速度を検出するためのエンコーダとからなるダブルローラ型フラットユニットを、測定車両の前輪側に設置したことを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明のブレーキ・速度計複合試験機によると、マルチローラ型フラットユニットが、多数の回転ローラを有して、かつ、これらの多数の回転ローラが回転駆動でき、また、フリーローラともなる構成であるため、このマルチローラ型フラットユニットのみで、又は、これと従来型のダブルローラ型フラットユニットとの組み合わせにより、車両のブレーキ制動力及び速度の測定に対応することができる。
【0015】
また、多数の回転ローラが配列されたマルチローラ型フラットユニットは、測定車両の前後方向に自在な長さとして構成することができるため、車両のホイールベースに左右されることなく、すべての駆動方式の車種、例えば前輪駆動車(FF)、前輪駆動車(FR)、4輪駆動車(4WD)に対して、簡単かつ迅速に所定の測定を行うことができる。
【0016】
また、マルチローラ型フラットユニットは、その高さを300mm前後に抑えた偏平なフラット形状とすることができるため、その設置にあたって、試験場内の床面に特にピットを設ける必要がなく、単に敷設し、簡単な構造のスロープ(傾斜台)を設けるのみで使用することができる。このため、設置コストの大幅な逓減が可能となる。
なお、マルチローラ型フラットユニットく組み合わせられる、一対の回転ローラがあるのみの従来型のダブルローラ型フラットユニットは構造がより簡単なため、その高さを300mm前後に抑えることは容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜図2は、本発明に係るブレーキ・速度計複合試験機の全体の一例を示したものである。図中、100は測定車両の前後方向に対して、矩形状の枠組をなすベースフレームで、200はこれに組み付けられた、本発明の中心技術をなすマルチローラ型フラットユニット、300は一対の回転ローラを有するダブルローラ型フラットユニットである。
【0018】
本例では、マルチローラ型フラットユニット200を、測定車両の左右の後輪側に設置し、ダブルローラ型フラットユニット300を、測定車両の左右の前輪側に設置してある。なお、各ユニット200、300の配置は逆にすることも可能であり、また、コスト的に不利となるが、ユニット200のみの組み合わせとすることも可能である。
【0019】
マルチローラ型フラットユニット200は、ベースフレーム100に対して、測定車両の前後方向に摺動可能に設置された枠組をなす、左右のスライドフレーム210、210を有する。このスライドフレーム210、210は、例えば図1、図3、図6〜図7に示すように、ベースフレーム100側の長手方向に設けたガイドレール211aと、これに摺動可能に装着されると共に、各スライドフレーム210、210の底面側の長手方向に設けたリニアスライダ211bとからなる、リニアガイド機構211により、フレーム全体が摺動可能となっている。なお、本例では、2組のリニアガイド機構211を採用しているが、特に組数はこれに限定されない。
【0020】
スライドフレーム210内には、測定車両の前後方向に対して、比較的小型の多数の回転ローラ220が適宜間隔で配列してある。具体的には、例えばその中心軸221の左右に軸受け222、222を嵌め込み、この軸受け222、222をスライドフレーム210側に固着することで行っている。
【0021】
また、これら多数の回転ローラ220・・・は、例えばこれらの中心軸221の末端側にチェン用の歯車231・・・を装着してある。そして、隣接する前後の回転ローラ220、220の歯車231、231間に装着されたチェン232により、回転伝動手段230を構成してある。この回転伝動手段230は、省スペース化のため、隣接する前後の回転ローラ220、220ごとに互い違いに左右に振り分けてある。
【0022】
この回転伝動手段230により、多数の回転ローラ220・・・は連動して回転されるようになっている。なお、回転伝動手段230は、片側に重層構造に設けることも可能であり、また、チェン伝動に限定されず、ベルト伝動などとすることも可能である。
【0023】
各スライドフレーム210、210内の少なくとも一つの回転ローラ220(より具体的には、図2に示すように、図中上側のスライドフレーム210の最左端下隅の中心軸221、及び図中下側のスライドフレーム210の最左端上隅の中心軸221)には、当該回転ローラ220を回転させるモータなどの左右の回転駆動手段240、240が、クラッチ内蔵減速機250、250を介して、連結させてある。
【0024】
従って、回転駆動手段240を駆動させれば、多数のすべての回転ローラ220・・・が回転する。クラッチ内蔵減速機250は、回転数を減速してローラ側に伝えるものであり、図示しないが、この内部にはクラッチ(機構)が組み込んであるため、必要により、伝動を切断することができる。つまり、車両の速度測定時には、車両側の駆動力で各回転ローラ220・・・をフリーの状態で回転させる必要があるため、このとき、クラッチにより、回転駆動手段240との接続を解除するのである。ここで、内蔵クラッチを電磁クラッチとしてその操作部を試験機の制御盤側に組み込めば、制御盤側でのテストメニュで、「ブレーキ制動」を選択すれば自動的に「接続」となり、「速度測定」を選択すれば自動的に「切断」とすることができる。これにより、良好な利便性が得られる。
【0025】
また、各スライドフレーム210、210間の少なくとも上記回転駆動手段240、240の連結されていない回転ローラ軸、即ち中心軸221、221間(より具体的には、図2に示すように、図中上側のスライドフレーム210の最右端下隅の中心軸221、及び図中下側のスライドフレーム210の最右端上隅の中心軸221)には、電磁クラッチ260が介在させてある。この電磁クラッチ260は、ブレーキ制動力試験時、左右の車輪を独立して測定するとき、左右のスライドフレーム210、210の各回転ローラ220・・・間の接続を切断するためのものである。この場合も、電磁クラッチとしてその操作部を試験機の制御盤側に組み込めば、制御盤側でのテストメニュで、「ブレーキ制動」を選択すれば自動的に「切断」となり、「速度測定」を選択すれば自動的に「接続」とすることができる。これにより、良好な利便性が得られる。
【0026】
各スライドフレーム210、210には、ブレーキ制動力試験時、回転ローラ220に対する反力として、所定の負荷が掛かるわけであるが、このとき、本発明のスライドフレーム210、210では、ベースフレーム100に対して移動できる構造としてあるため、上記反力を、ベースフレーム100に対する移動負荷として、検出するロードセル270をベースフレーム100側に設けてある。本例では、図2に示すように、各スライドフレーム210、210の図中右端側の各隅寄りにそれぞれ2個設けてある。2個としたのは、例えば右端側の中央寄りに1個設ける場合などに比較して、試作段階でのテストによると、フレームの剛性強度が小さくて済むことが分かったことによる。結果として、フレームのコスト逓減が図れている。
【0027】
また、各スライドフレーム210、210の多数の回転ローラ220のいずれか(より具体的には、図2に示すように、図中上側のスライドフレーム210の最右端下隅のクラッチ内蔵減速機250に貫通された中心軸221)には、回転速度を検出するためのエンコーダ280を設けてある。
【0028】
また、各スライドフレーム210、210の隣接する両回転ローラ220、220間には、上下動する横長のプレート片などからなるタイヤ滑り止め290を設けてある。
これらのタイヤ滑り止め290・・・は、測定車両のタイヤを確実に止める(ロックする)ためのもので、タイヤのロック時にはこれらを上昇させてタイヤに押圧させる。勿論タイヤのロック解除時にはこれらを下降させてタイヤから離間させておく。
【0029】
これらのタイヤ滑り止め290・・・は、例えば図1、図3に示すように、スライドフレーム210の前後方向に延びる底板291に櫛歯状に設ける一方、この底板291とスライドフレーム210の底面210aとの間に、例えば図7に示すように、エアの出し入れによりベローズ(蛇腹)が伸縮するエア方式の昇降手段292を設置して行う。設置個数は特に問わない。
【0030】
エア方式の昇降手段292は、シリンダ機構などに比較して、優れた省スペース化が得られる。この結果、スライドフレーム210、ベースフレーム100を含めたユニットの高さを、上述したように、300mm前後に抑えることができる。この偏平なフラット形状により、特にピットを設けることなく、試験場内の床面に単に敷設するのみで使用することが可能となる。また、ここで、昇降手段292の操作部を試験機の制御盤側に組み込めば、制御盤側でのテストメニュで、所定のメニュを選択したとき、必要により自動的に「タイヤロック」や「タイヤロック解除」を行うことができる。これにより、良好な利便性が得られる。
【0031】
一方、上記マルチローラ型フラットユニット200と組み合わせて使用される、ダブルローラ型フラットユニット300は、測定車両の前後方向に対して、矩形状の枠組をなす固定フレーム310、310を有する。これらの固定フレーム310内には、図2、図5に示すように、測定車両の前後方向に対して、比較的大型の一対の回転ローラ320、320を適宜間隔で配列してある。具体的には、上述したマルチローラ型フラットユニット200の回転ローラ220の場合と同様、例えばその中心軸321の左右に軸受け322、322を嵌め込み、この軸受け322、322を固定フレーム310側に固着することで行っている。
【0032】
また、これら一対の回転ローラ320、320には、例えばこれらの中心軸221の末端側に装着されたチェン用の歯車331、331とこれらの間に装着されたチェン332からなる回転伝動手段330を設けてある。この回転伝動手段330により、連動して回転されるようになっている。本例では、図2に示すように、回転伝動手段330は、測定車両の前後方向に対して外側となる部分に設けてある。なお、回転伝動手段330は上記チェン伝動に限定されず、ベルト伝動などとすることも可能である。
【0033】
各固定フレーム310、310内の一つの回転ローラ320(より具体的には、図2に示すように、図中上側の固定フレーム310の左端下隅の中心軸321、及び図中下側の固定フレーム310の左端上隅の中心軸321)には、当該回転ローラ320を回転させるモータなどの左右の回転駆動手段340、340が、クラッチ内蔵減速機350、350を介して、連結させてある。従って、回転駆動手段340を駆動させれば、一対の回転ローラ320、320が回転する。
【0034】
クラッチ内蔵減速機350は、回転数を減速してローラ側に伝えるものである。図示しないが、この内部にはクラッチ(機構)が組み込んであり、必要により、伝動を切断することができる。つまり、車両の速度測定時には、車両側の駆動力で各回転ローラ320、320をフリーの状態で回転させる必要があるため、このとき、クラッチにより、回転駆動手段340との接続を解除するのである。
また、ここで、内蔵クラッチを電磁クラッチとしてその操作部を試験機の制御盤側に組み込めば、制御盤側でのテストメニュで、「ブレーキ制動」を選択すれば自動的に「接続」となり、「速度測定」を選択すれば自動的に「切断」とすることができる。これにより、良好な利便性が得られる。
【0035】
また、各固定フレーム310、310の上記回転駆動手段340、340の連結されていない回転ローラ軸、即ち中心軸321、321間には、電磁クラッチ360が介在させてある。この電磁クラッチ360は、ブレーキ制動力試験時、左右の車輪を独立して測定するとき、左右の固定フレーム310、310の各回転ローラ320・・・間の接続を切断するためのものである。この場合も、電磁クラッチとしてその操作部を試験機の制御盤側に組み込めば、制御盤側でのテストメニュで、「ブレーキ制動」を選択すれば自動的に「切断」となり、「速度測定」を選択すれば自動的に「接続」とすることができる。これにより、良好な利便性が得られる。
【0036】
また、上記左右のクラッチ内蔵減速機350、350の場合、ブレーキ制動力試験時、回転ローラ320に対する反力が伝達されるように取り付けられていて、その反力は、これらのクラッチ内蔵減速機350、350部分に付設させたロードセル370、370で検出されるようになっている。具体的には、ロードセル370、370を固定フレーム310側に取り付ける一方、その検出部を、回転ローラ320の中心軸321に装着された各左右のクラッチ内蔵減速機350、350側に連結させて、回転ローラ320側の反力を、クラッチ内蔵減速機350、350側の回転力(応力)として検出できるようにしてある。このため、クラッチ内蔵減速機350、350側と連結されている回転駆動手段340、340は、固定フレーム310側と干渉しない形で取り付けてある。
【0037】
また、各固定フレーム310、310の回転ローラ320、320のいずれか(より具体的には、図2、図5に示すように、図中上側の固定フレーム310の右端下隅のクラッチ内蔵減速機350に貫通された中心軸321)には、回転速度を検出するためのエンコーダ380を設けてある。
【0038】
以上のような構成のマルチローラ型フラットユニット200、及びダブルローラ型フラットユニット300は、その高さを、上述したように、300mm前後に抑えることができるため、使用にあたっては、図1〜図2に示すように、試験場内の床面に特にピットを設けことなく、単に敷設するのみでよい。
【0039】
そして、マルチローラ型フラットユニット200(これが測定車両の後輪側のとき)のベースフレーム100の後端には、例えば図8〜図9に示すような、スロープ(傾斜台)400を設けるとよい。このスロープ400は、傾斜板となるベースプレート410と、ベースプレート410の片端の高さを、ベースフレーム100の高さに一致させて支持するための回動自在の軸着部421を有するスタンド420と、ベースプレート410の他方の片端(床面設置端)に設けた床面との段差を解消するための段差解消プレート430(ベースプレートと一体の先端加工部とすることも可能)と、必要により付設される、ベースプレート410の床面設置端寄りの底面に設けたエアの出し入れによりベローズ(蛇腹)が伸縮するエア方式(これ以外の方式も可能)の昇降手段440とからなる。
【0040】
このスロープ400では、測定車両の搬入時や退出時には、図8に示すように、所定の傾斜面としておくだけでよい。しかし、上記したマルチローラ型フラットユニット200、及びダブルローラ型フラットユニット300の組み合わせてに対して、例えば、両ユニット200、300の間に別の試験ユニット、例えばサイドスリップテスタユニットなどを追加したり、さらに、ダブルローラ型フラットユニット300の前方にヘッドライトテスタユニットなどを追加して、より総合的な複合試験として使用する場合、測定車両をさらに後退させて、かつ、水平に保つ必要がある。このときには、図9に示すように、昇降手段440を駆動させることにより、ベースプレート410を水平に維持して対応することができる。
【0041】
次に、上記図1〜図2の配置によるブレーキ・速度計複合試験機において、ブレーキ制動力の測定について述べる。
【0042】
先ず、試験機上に測定車両を搬入する。そして、前輪の左右について測定する場合には、ダブルローラ型フラットユニット300の電磁クラッチ360を「切断」の状態にして、前輪左側の回転駆動手段340により所定の回転速度まで一対の回転ローラ320、320を回転させる。この状態で、測定車両側のブレーキペダルを踏み込む。そうすると、タイヤの押圧による回転ローラ320、320に対する反力が、クラッチ内蔵減速機350を介して、ロードセル370により検出される。この検出値により、ブレーキ制動力が得られる。前輪右側にあっては、右側の回転駆動手段340を駆動させて、上記と同様にしてブレーキ制動力を得ればよい。
【0043】
この前輪側の測定時には、後輪側のタイヤは、確実に固定されていることが望ましいため、タイヤ滑り止め290・・・を上昇させて、タイヤをロックさせておく。これにより、測定の安全性が得られる。
【0044】
一方、後輪の左右について測定する場合には、マルチローラ型フラットユニット200の電磁クラッチ260を「切断」の状態にして、後輪左側の回転駆動手段240により所定の回転速度まで多数の回転ローラ220・・・を回転させる。この状態で、測定車両側のブレーキペダルを踏み込む。そうすると、タイヤの押圧による回転ローラ220・・・に対する反力が、スライドフレーム210自体の移動を通じて(移動負荷として)、ロードセル270、270により検出される。この検出値により、ブレーキ制動力が得られる。後輪右側にあっては、右側の回転駆動手段240を駆動させて、上記と同様にしてブレーキ制動力を得ればよい。
【0045】
ここで、スライドフレーム210の移動検出により、ブレーキ制動力の測定が可能である点の概略原理について、以下に述べる。
例えば回転する回転ローラ間にタイヤを挟んで転接させ、この状態でブレーキ操作したときの関係を示すと、図10の如くである。
つまり、ローラ表面とタイヤ面との摩擦係数をμとすると、ローラ間に垂直に掛かる力Wは次のように表される。
W=WFcosθ+WRcosθ=(WF+WR)cosθ・・・(1)
ブレーキペダルを踏み込んだブレーキ操作時、ローラ表面に生じる反力(WF1 、WR1 )は以下のように表される。
WF1 =WF・μ・・・(2)
WR1 =WR・μ・・・(3)
従って、WF1 +WR1 =μ(WF+WR)・・・(4)となる。
【0046】
一方、ブレーキ制動力F=WF1 +WR1 となるので、
F=μ(WF+WR)・・・(5)となる。 この結果、上記式(1)から、
μ=(W/cosθ)・・・(6)と表せる。
一般的に、θは30°前後が使用れていて、タイヤ外径は500mm〜800mm程度であればμはほぼ一定となる。このようにμをほぼ一定とすると、ブレーキ制動力Fはθの関数と判断することができる。このことから、ブレーキ制動力測定は、回転ローラの大小には影響されないことが分かる。
【0047】
また、このとき、図10の回転ローラを支持する枠(フレーム)に掛かる力をFHとすると、この力FHはWF1 とWR1 の合力となるため、図11に示すように、
FH=WF1 cosθ+WR1 cosθ・・・(7)と表せ、また、
FH=(WF1 +WR1 )cosθ=μ(WF+WR)cosθ=(W/cosθ)と展開することができる。従って、FH=Fとなり、枠に掛かる力(反力)がブレーキ制動力として捉えられることが分かる。このことは、多数の回転ローラを配列させた枠に掛かる力、つまり、本発明のような上記マルチローラ型フラットユニット200のスライドフレーム210にあっても同様であると言える。即ち、各回転ローラの表面で発生する力の合力として、ブレーキ制動力が得られるのである。
【0048】
上記後輪側の測定時、前輪側のタイヤは、ダブルローラ型フラットユニット300の一対の回転ローラ320、320間に落ち込んでいるのみであるが、この一対の回転ローラ320、320の外径は大きく、大きな凹み(谷部)を形成しているため、実用上支障のない、安定したタイヤのロックが得られる。
【0049】
次に、速度の速度であるが、この速度測定の場合、測定車両のタイヤ駆動により、回転ローラ320、220側を回転させて行う。従って、駆動方式の異なる車種、例えば前輪駆動車(FF)、前輪駆動車(FR)、4輪駆動車(4WD)によって少々異なる。
【0050】
前輪駆動車(FF)では、先ず、ダブルローラ型フラットユニット300の左右のクラッチ内蔵減速機350、350のクラッチを「切断」の状態にし、かつ、電磁クラッチ360を「接続」の状態にする。この状態で、測定車両のエンジンを駆動させ、所定の速度まで上げる。そして、このときの回転ローラ320の回転速度をエンコーダ380に検出し、測定車両側の速度計の速度と比較すればよい。
【0051】
後輪駆動車(FR)では、先ず、マルチローラ型フラットユニット200の左右のクラッチ内蔵減速機250、250のクラッチを「切断」の状態にし、かつ、電磁クラッチ260を「接続」の状態にする。この状態で、測定車両のエンジンを駆動させ、所定の速度まで上げる。そして、このときの回転ローラ220の回転速度をエンコーダ280に検出し、測定車両側の速度計の速度と比較すればよい。
【0052】
4輪駆動車(4WD)の場合、前輪左右の4輪が駆動するため、ダブルローラ型フラットユニット300の左右のクラッチ内蔵減速機350、350のクラッチ、及びマルチローラ型フラットユニット200の左右のクラッチ内蔵減速機250、250のクラッチを「切断」の状態にし、かつ、それぞれの電磁クラッチ360、260を「接続」の状態にする。この状態で、測定車両のエンジンを駆動させ、所定の速度まで上げる。そして、このときの回転ローラ320、220の回転速度をエンコーダ380、280に検出し、測定車両側の速度計の速度と比較すればよい。
このとき、エンコーダ380では前輪側の速度が検出でき、また、エンコーダ280では後輪側の速度が検出できるため、両者の速度を比較することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るブレーキ・速度計複合試験機の一例を示した概略縦断面図である。
【図2】図1のブレーキ・速度計複合試験機の平面図である。
【図3】図1のブレーキ・速度計複合試験機におけるマルチローラ型フラットユニットの拡大縦断面図である。
【図4】図1のブレーキ・速度計複合試験機におけるマルチローラ型フラットユニットの拡大平面図である。
【図5】図1のブレーキ・速度計複合試験機におけるダブルローラ型フラットユニットの拡大平面図である。
【図6】図1のブレーキ・速度計複合試験機におけるマルチローラ型フラットユニットの一部縦断拡大側面図である。
【図7】図1のブレーキ・速度計複合試験機におけるマルチローラ型フラットユニットの縦断拡大側面図である。
【図8】図1のブレーキ・速度計複合試験機に用いるスロープ(傾斜台)を示した側面図である。
【図9】図1のブレーキ・速度計複合試験機に用いるスロープ(傾斜台)の他の状態を示した側面図である。
【図10】回転する回転ローラ間に転接されたタイヤにおけるブレーキ制動時の力関係を示した概略説明図である。
【図11】図10の枠に掛かる力とタイヤに。掛かる力の関係を示した概略説明図である。
【図12】従来のブレーキ・速度計複合試験機を示した概略縦断面図である。
【図13】従来の試験機の一部を示した概略説明図である。
【符号の説明】
【0054】
100・・・ベースフレーム、
200・・・マルチローラ型フラットユニット、210・・・スライドフレーム、211・・・リニアガイド機構、211a・・・ガイドレール、211b・・・リニアスライダ、220・・・回転ローラ、221・・・回転軸、230・・・回転伝動手段、240・・・回転駆動手段、250・・・クラッチ内蔵減速機、260・・・電磁クラッチ、270・・・ロードセル、280・・・エンコーダ、290・・・タイヤ滑り止め、
300・・・ダブルローラ型フラットユニット、310・・・固定フレーム、320・・・回転ローラ、321・・・回転軸、330・・・回転伝動手段、340・・・回転駆動手段、350・・・クラッチ内蔵減速機、360・・・電磁クラッチ、370・・・ロードセル、380・・・エンコーダ、
400・・・スロープ(傾斜台)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のホイールベースに左右されることなく、迅速に車両のブレーキ制動力及び速度を測定することができる小型でフラット形状のブレーキ・速度計複合試験機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のブレーキ・速度計複合試験機としては、例えば図12に示すような装置が提案されている。この装置は、一対の回転ローラ11、11を回転自在に設置させたダブルロール(2ロール)型ユニット10を、測定車両の前後左右の4輪が載る位置に計4台配置したものである(図中車両の前後左右の4輪のうち片側を省略)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このダブルロール型ユニット10を4台配置した装置では、先ず、測定車両のホイールベース(前後輪の車軸間距離)に対応させて、図示のように、測定車両の後輪側が載る、ダブルロール型ユニット10を移動させなければならない。
つまり、乗用車やワゴン車、トラックなどの大型車両では、タイヤT1も大きく、ホイールベースも長いため、後方に後退させる必要がある。一方、軽自動車や小型車両では、タイヤT2も小さく、ホイールベースも短いため、逆に前方に前進させる必要がある。この作業は結構面倒であると共に、時間も掛かり作業性の低下が避けられないという問題があった。
【0004】
さらに、構造的にダブルロール型ユニット10の移動手段20を、小型で、特に高さの低い偏平構造とすることは難しいため、通常試験場内の床面に装置収納用の穴(ピット)30を設ける必要があった。この場合、移動手段自体の製造コストの他に、ピット形成コストが掛かる。また、ピット構造を採用すると、装置の移動時開口部分が危険なため、開放部分を塞ぐためのカバー機構なども必要となる。従って、この面からのコスト上昇も避けられない。
【0005】
このような問題点に対処するため、図13に示すように、多数の回転ローラ41・・・を配置して、測定車両の前後方向にある程度の長さを有するマルチロール型ユニット40を組み込む方式の装置も提案されている(引用文献1)。この場合、マルチロール型ユニット40の長さにより、測定車両によって異なるホイールベースに対応することが可能となる。
【特許文献1】特公平06−063927号
【0006】
しかしながら、引用文献1の装置の場合、多数の回転ローラ41・・・は単なるフリーローラ構造であるため、この部分では、所定の試験ができない構成である。
また、車両の搬入時や退出時にタイヤが滑らないように、隣接するローラ間に上下動する多数の歯50・・・を設けてあるが、これらの歯50・・・の上下動には、シリンダ装置60を用い、そのシリンダロッド61の昇降で上下動させるものである。この装置自体の上下方向の高さが高くなり、通常試験場内の床面にピット30を設ける必要がある。これにより、上記図12の場合と同様の問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、車両のホイールベースに関係なく、迅速に車両のブレーキ制動力及び速度を測定することができる小型でフラット形状のものからなり、試験場内の床面に単に敷設するのみで使用できる、利便性に優れたブレーキ・速度計複合試験機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の本発明は、車両のブレーキ制動力及び速度を測定するブレーキ・速度計複合試験機において、ベースフレームに対して測定車両の前後方向に摺動可能に設置された左右のスライドフレームと、前記各スライドフレームの前後方向に配列された多数の回転ローラと、前記多数の回転ローラを連動して回転させる回転伝動手段と、前記各スライドフレームの少なくとも一つの回転ローラに連結されて当該回転ローラを回転させる左右の回転駆動手段と、前記各回転駆動手段と当該各回転駆動手段に連結された回転ローラ軸間に介在させた左右のクラッチ内蔵減速機と、前記各スライドフレーム間の少なくとも前記回転駆動手段の連結されていない回転ローラ軸間に介在させた電磁クラッチと、前記各スライドフレームの前記ベースフレームに対する移動負荷を検出するためのロードセルと、前記各スライドフレームの多数の回転ローラのいずれかの回転速度を検出するためのエンコーダとからなるマルチローラ型フラットユニットを、少なくとも測定車両の後輪側に設置したことを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機にある。
【0009】
請求項2記載の本発明は、前記請求項1記載のブレーキ・速度計複合試験機において、前記ベースフレームと前記各スライドフレーム間の前後方向にリニアガイド機構を設けて、前記各スライドフレームを摺動可能とさせたことを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機にある。
【0010】
請求項3記載の本発明は、前記請求項2記載のブレーキ・速度計複合試験機において、前記リニアガイド機構を、前記ベースフレーム側に設けたガイドレールと当該ガイドレールに摺動可能に装着されると共に、前記各スライドフレーム側に設けたリニアスライダからなることを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機にある。
【0011】
請求項4記載の本発明は、前記請求項1、2又は3記載のブレーキ・速度計複合試験機において、前記各スライドフレームの前後方向で隣接する両回転ローラ間に上下動するタイヤ滑り止めを設けたことを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機にある。
【0012】
請求項5記載の本発明は、前記請求項4のブレーキ・速度計複合試験機において、前記タイヤ滑り止めを、当該部材と前記スライドフレーム底面間に設置したベローズの伸縮によるエア方式の昇降手段で上下動させることを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機にある。
【0013】
請求項6記載の本発明は、前記請求項1乃至5記載のいずれかのブレーキ・速度計複合試験機において、測定車両の前後方向に設置された左右の一対の回転ローラと、前記左右の一対の各回転ローラを連動して回転させる回転伝動手段と、前記左右の一対の回転ローラの少なくとも一つの回転ローラに連結されて当該回転ローラを回転させる左右の回転駆動手段と、前記各回転駆動手段と当該各回転駆動手段に連結された回転ローラ軸間に介在させた左右のクラッチ内蔵減速機と、前記左右の一対の回転ローラ間の非駆動側の回転ローラ軸間に介在させた電磁クラッチと、前記左右の一対の回転ローラの少なくとも一つの負荷を検出するためのロードセルと、前記左右の一対の回転ローラの少なくとも一つの回転速度を検出するためのエンコーダとからなるダブルローラ型フラットユニットを、測定車両の前輪側に設置したことを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明のブレーキ・速度計複合試験機によると、マルチローラ型フラットユニットが、多数の回転ローラを有して、かつ、これらの多数の回転ローラが回転駆動でき、また、フリーローラともなる構成であるため、このマルチローラ型フラットユニットのみで、又は、これと従来型のダブルローラ型フラットユニットとの組み合わせにより、車両のブレーキ制動力及び速度の測定に対応することができる。
【0015】
また、多数の回転ローラが配列されたマルチローラ型フラットユニットは、測定車両の前後方向に自在な長さとして構成することができるため、車両のホイールベースに左右されることなく、すべての駆動方式の車種、例えば前輪駆動車(FF)、前輪駆動車(FR)、4輪駆動車(4WD)に対して、簡単かつ迅速に所定の測定を行うことができる。
【0016】
また、マルチローラ型フラットユニットは、その高さを300mm前後に抑えた偏平なフラット形状とすることができるため、その設置にあたって、試験場内の床面に特にピットを設ける必要がなく、単に敷設し、簡単な構造のスロープ(傾斜台)を設けるのみで使用することができる。このため、設置コストの大幅な逓減が可能となる。
なお、マルチローラ型フラットユニットく組み合わせられる、一対の回転ローラがあるのみの従来型のダブルローラ型フラットユニットは構造がより簡単なため、その高さを300mm前後に抑えることは容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜図2は、本発明に係るブレーキ・速度計複合試験機の全体の一例を示したものである。図中、100は測定車両の前後方向に対して、矩形状の枠組をなすベースフレームで、200はこれに組み付けられた、本発明の中心技術をなすマルチローラ型フラットユニット、300は一対の回転ローラを有するダブルローラ型フラットユニットである。
【0018】
本例では、マルチローラ型フラットユニット200を、測定車両の左右の後輪側に設置し、ダブルローラ型フラットユニット300を、測定車両の左右の前輪側に設置してある。なお、各ユニット200、300の配置は逆にすることも可能であり、また、コスト的に不利となるが、ユニット200のみの組み合わせとすることも可能である。
【0019】
マルチローラ型フラットユニット200は、ベースフレーム100に対して、測定車両の前後方向に摺動可能に設置された枠組をなす、左右のスライドフレーム210、210を有する。このスライドフレーム210、210は、例えば図1、図3、図6〜図7に示すように、ベースフレーム100側の長手方向に設けたガイドレール211aと、これに摺動可能に装着されると共に、各スライドフレーム210、210の底面側の長手方向に設けたリニアスライダ211bとからなる、リニアガイド機構211により、フレーム全体が摺動可能となっている。なお、本例では、2組のリニアガイド機構211を採用しているが、特に組数はこれに限定されない。
【0020】
スライドフレーム210内には、測定車両の前後方向に対して、比較的小型の多数の回転ローラ220が適宜間隔で配列してある。具体的には、例えばその中心軸221の左右に軸受け222、222を嵌め込み、この軸受け222、222をスライドフレーム210側に固着することで行っている。
【0021】
また、これら多数の回転ローラ220・・・は、例えばこれらの中心軸221の末端側にチェン用の歯車231・・・を装着してある。そして、隣接する前後の回転ローラ220、220の歯車231、231間に装着されたチェン232により、回転伝動手段230を構成してある。この回転伝動手段230は、省スペース化のため、隣接する前後の回転ローラ220、220ごとに互い違いに左右に振り分けてある。
【0022】
この回転伝動手段230により、多数の回転ローラ220・・・は連動して回転されるようになっている。なお、回転伝動手段230は、片側に重層構造に設けることも可能であり、また、チェン伝動に限定されず、ベルト伝動などとすることも可能である。
【0023】
各スライドフレーム210、210内の少なくとも一つの回転ローラ220(より具体的には、図2に示すように、図中上側のスライドフレーム210の最左端下隅の中心軸221、及び図中下側のスライドフレーム210の最左端上隅の中心軸221)には、当該回転ローラ220を回転させるモータなどの左右の回転駆動手段240、240が、クラッチ内蔵減速機250、250を介して、連結させてある。
【0024】
従って、回転駆動手段240を駆動させれば、多数のすべての回転ローラ220・・・が回転する。クラッチ内蔵減速機250は、回転数を減速してローラ側に伝えるものであり、図示しないが、この内部にはクラッチ(機構)が組み込んであるため、必要により、伝動を切断することができる。つまり、車両の速度測定時には、車両側の駆動力で各回転ローラ220・・・をフリーの状態で回転させる必要があるため、このとき、クラッチにより、回転駆動手段240との接続を解除するのである。ここで、内蔵クラッチを電磁クラッチとしてその操作部を試験機の制御盤側に組み込めば、制御盤側でのテストメニュで、「ブレーキ制動」を選択すれば自動的に「接続」となり、「速度測定」を選択すれば自動的に「切断」とすることができる。これにより、良好な利便性が得られる。
【0025】
また、各スライドフレーム210、210間の少なくとも上記回転駆動手段240、240の連結されていない回転ローラ軸、即ち中心軸221、221間(より具体的には、図2に示すように、図中上側のスライドフレーム210の最右端下隅の中心軸221、及び図中下側のスライドフレーム210の最右端上隅の中心軸221)には、電磁クラッチ260が介在させてある。この電磁クラッチ260は、ブレーキ制動力試験時、左右の車輪を独立して測定するとき、左右のスライドフレーム210、210の各回転ローラ220・・・間の接続を切断するためのものである。この場合も、電磁クラッチとしてその操作部を試験機の制御盤側に組み込めば、制御盤側でのテストメニュで、「ブレーキ制動」を選択すれば自動的に「切断」となり、「速度測定」を選択すれば自動的に「接続」とすることができる。これにより、良好な利便性が得られる。
【0026】
各スライドフレーム210、210には、ブレーキ制動力試験時、回転ローラ220に対する反力として、所定の負荷が掛かるわけであるが、このとき、本発明のスライドフレーム210、210では、ベースフレーム100に対して移動できる構造としてあるため、上記反力を、ベースフレーム100に対する移動負荷として、検出するロードセル270をベースフレーム100側に設けてある。本例では、図2に示すように、各スライドフレーム210、210の図中右端側の各隅寄りにそれぞれ2個設けてある。2個としたのは、例えば右端側の中央寄りに1個設ける場合などに比較して、試作段階でのテストによると、フレームの剛性強度が小さくて済むことが分かったことによる。結果として、フレームのコスト逓減が図れている。
【0027】
また、各スライドフレーム210、210の多数の回転ローラ220のいずれか(より具体的には、図2に示すように、図中上側のスライドフレーム210の最右端下隅のクラッチ内蔵減速機250に貫通された中心軸221)には、回転速度を検出するためのエンコーダ280を設けてある。
【0028】
また、各スライドフレーム210、210の隣接する両回転ローラ220、220間には、上下動する横長のプレート片などからなるタイヤ滑り止め290を設けてある。
これらのタイヤ滑り止め290・・・は、測定車両のタイヤを確実に止める(ロックする)ためのもので、タイヤのロック時にはこれらを上昇させてタイヤに押圧させる。勿論タイヤのロック解除時にはこれらを下降させてタイヤから離間させておく。
【0029】
これらのタイヤ滑り止め290・・・は、例えば図1、図3に示すように、スライドフレーム210の前後方向に延びる底板291に櫛歯状に設ける一方、この底板291とスライドフレーム210の底面210aとの間に、例えば図7に示すように、エアの出し入れによりベローズ(蛇腹)が伸縮するエア方式の昇降手段292を設置して行う。設置個数は特に問わない。
【0030】
エア方式の昇降手段292は、シリンダ機構などに比較して、優れた省スペース化が得られる。この結果、スライドフレーム210、ベースフレーム100を含めたユニットの高さを、上述したように、300mm前後に抑えることができる。この偏平なフラット形状により、特にピットを設けることなく、試験場内の床面に単に敷設するのみで使用することが可能となる。また、ここで、昇降手段292の操作部を試験機の制御盤側に組み込めば、制御盤側でのテストメニュで、所定のメニュを選択したとき、必要により自動的に「タイヤロック」や「タイヤロック解除」を行うことができる。これにより、良好な利便性が得られる。
【0031】
一方、上記マルチローラ型フラットユニット200と組み合わせて使用される、ダブルローラ型フラットユニット300は、測定車両の前後方向に対して、矩形状の枠組をなす固定フレーム310、310を有する。これらの固定フレーム310内には、図2、図5に示すように、測定車両の前後方向に対して、比較的大型の一対の回転ローラ320、320を適宜間隔で配列してある。具体的には、上述したマルチローラ型フラットユニット200の回転ローラ220の場合と同様、例えばその中心軸321の左右に軸受け322、322を嵌め込み、この軸受け322、322を固定フレーム310側に固着することで行っている。
【0032】
また、これら一対の回転ローラ320、320には、例えばこれらの中心軸221の末端側に装着されたチェン用の歯車331、331とこれらの間に装着されたチェン332からなる回転伝動手段330を設けてある。この回転伝動手段330により、連動して回転されるようになっている。本例では、図2に示すように、回転伝動手段330は、測定車両の前後方向に対して外側となる部分に設けてある。なお、回転伝動手段330は上記チェン伝動に限定されず、ベルト伝動などとすることも可能である。
【0033】
各固定フレーム310、310内の一つの回転ローラ320(より具体的には、図2に示すように、図中上側の固定フレーム310の左端下隅の中心軸321、及び図中下側の固定フレーム310の左端上隅の中心軸321)には、当該回転ローラ320を回転させるモータなどの左右の回転駆動手段340、340が、クラッチ内蔵減速機350、350を介して、連結させてある。従って、回転駆動手段340を駆動させれば、一対の回転ローラ320、320が回転する。
【0034】
クラッチ内蔵減速機350は、回転数を減速してローラ側に伝えるものである。図示しないが、この内部にはクラッチ(機構)が組み込んであり、必要により、伝動を切断することができる。つまり、車両の速度測定時には、車両側の駆動力で各回転ローラ320、320をフリーの状態で回転させる必要があるため、このとき、クラッチにより、回転駆動手段340との接続を解除するのである。
また、ここで、内蔵クラッチを電磁クラッチとしてその操作部を試験機の制御盤側に組み込めば、制御盤側でのテストメニュで、「ブレーキ制動」を選択すれば自動的に「接続」となり、「速度測定」を選択すれば自動的に「切断」とすることができる。これにより、良好な利便性が得られる。
【0035】
また、各固定フレーム310、310の上記回転駆動手段340、340の連結されていない回転ローラ軸、即ち中心軸321、321間には、電磁クラッチ360が介在させてある。この電磁クラッチ360は、ブレーキ制動力試験時、左右の車輪を独立して測定するとき、左右の固定フレーム310、310の各回転ローラ320・・・間の接続を切断するためのものである。この場合も、電磁クラッチとしてその操作部を試験機の制御盤側に組み込めば、制御盤側でのテストメニュで、「ブレーキ制動」を選択すれば自動的に「切断」となり、「速度測定」を選択すれば自動的に「接続」とすることができる。これにより、良好な利便性が得られる。
【0036】
また、上記左右のクラッチ内蔵減速機350、350の場合、ブレーキ制動力試験時、回転ローラ320に対する反力が伝達されるように取り付けられていて、その反力は、これらのクラッチ内蔵減速機350、350部分に付設させたロードセル370、370で検出されるようになっている。具体的には、ロードセル370、370を固定フレーム310側に取り付ける一方、その検出部を、回転ローラ320の中心軸321に装着された各左右のクラッチ内蔵減速機350、350側に連結させて、回転ローラ320側の反力を、クラッチ内蔵減速機350、350側の回転力(応力)として検出できるようにしてある。このため、クラッチ内蔵減速機350、350側と連結されている回転駆動手段340、340は、固定フレーム310側と干渉しない形で取り付けてある。
【0037】
また、各固定フレーム310、310の回転ローラ320、320のいずれか(より具体的には、図2、図5に示すように、図中上側の固定フレーム310の右端下隅のクラッチ内蔵減速機350に貫通された中心軸321)には、回転速度を検出するためのエンコーダ380を設けてある。
【0038】
以上のような構成のマルチローラ型フラットユニット200、及びダブルローラ型フラットユニット300は、その高さを、上述したように、300mm前後に抑えることができるため、使用にあたっては、図1〜図2に示すように、試験場内の床面に特にピットを設けことなく、単に敷設するのみでよい。
【0039】
そして、マルチローラ型フラットユニット200(これが測定車両の後輪側のとき)のベースフレーム100の後端には、例えば図8〜図9に示すような、スロープ(傾斜台)400を設けるとよい。このスロープ400は、傾斜板となるベースプレート410と、ベースプレート410の片端の高さを、ベースフレーム100の高さに一致させて支持するための回動自在の軸着部421を有するスタンド420と、ベースプレート410の他方の片端(床面設置端)に設けた床面との段差を解消するための段差解消プレート430(ベースプレートと一体の先端加工部とすることも可能)と、必要により付設される、ベースプレート410の床面設置端寄りの底面に設けたエアの出し入れによりベローズ(蛇腹)が伸縮するエア方式(これ以外の方式も可能)の昇降手段440とからなる。
【0040】
このスロープ400では、測定車両の搬入時や退出時には、図8に示すように、所定の傾斜面としておくだけでよい。しかし、上記したマルチローラ型フラットユニット200、及びダブルローラ型フラットユニット300の組み合わせてに対して、例えば、両ユニット200、300の間に別の試験ユニット、例えばサイドスリップテスタユニットなどを追加したり、さらに、ダブルローラ型フラットユニット300の前方にヘッドライトテスタユニットなどを追加して、より総合的な複合試験として使用する場合、測定車両をさらに後退させて、かつ、水平に保つ必要がある。このときには、図9に示すように、昇降手段440を駆動させることにより、ベースプレート410を水平に維持して対応することができる。
【0041】
次に、上記図1〜図2の配置によるブレーキ・速度計複合試験機において、ブレーキ制動力の測定について述べる。
【0042】
先ず、試験機上に測定車両を搬入する。そして、前輪の左右について測定する場合には、ダブルローラ型フラットユニット300の電磁クラッチ360を「切断」の状態にして、前輪左側の回転駆動手段340により所定の回転速度まで一対の回転ローラ320、320を回転させる。この状態で、測定車両側のブレーキペダルを踏み込む。そうすると、タイヤの押圧による回転ローラ320、320に対する反力が、クラッチ内蔵減速機350を介して、ロードセル370により検出される。この検出値により、ブレーキ制動力が得られる。前輪右側にあっては、右側の回転駆動手段340を駆動させて、上記と同様にしてブレーキ制動力を得ればよい。
【0043】
この前輪側の測定時には、後輪側のタイヤは、確実に固定されていることが望ましいため、タイヤ滑り止め290・・・を上昇させて、タイヤをロックさせておく。これにより、測定の安全性が得られる。
【0044】
一方、後輪の左右について測定する場合には、マルチローラ型フラットユニット200の電磁クラッチ260を「切断」の状態にして、後輪左側の回転駆動手段240により所定の回転速度まで多数の回転ローラ220・・・を回転させる。この状態で、測定車両側のブレーキペダルを踏み込む。そうすると、タイヤの押圧による回転ローラ220・・・に対する反力が、スライドフレーム210自体の移動を通じて(移動負荷として)、ロードセル270、270により検出される。この検出値により、ブレーキ制動力が得られる。後輪右側にあっては、右側の回転駆動手段240を駆動させて、上記と同様にしてブレーキ制動力を得ればよい。
【0045】
ここで、スライドフレーム210の移動検出により、ブレーキ制動力の測定が可能である点の概略原理について、以下に述べる。
例えば回転する回転ローラ間にタイヤを挟んで転接させ、この状態でブレーキ操作したときの関係を示すと、図10の如くである。
つまり、ローラ表面とタイヤ面との摩擦係数をμとすると、ローラ間に垂直に掛かる力Wは次のように表される。
W=WFcosθ+WRcosθ=(WF+WR)cosθ・・・(1)
ブレーキペダルを踏み込んだブレーキ操作時、ローラ表面に生じる反力(WF1 、WR1 )は以下のように表される。
WF1 =WF・μ・・・(2)
WR1 =WR・μ・・・(3)
従って、WF1 +WR1 =μ(WF+WR)・・・(4)となる。
【0046】
一方、ブレーキ制動力F=WF1 +WR1 となるので、
F=μ(WF+WR)・・・(5)となる。 この結果、上記式(1)から、
μ=(W/cosθ)・・・(6)と表せる。
一般的に、θは30°前後が使用れていて、タイヤ外径は500mm〜800mm程度であればμはほぼ一定となる。このようにμをほぼ一定とすると、ブレーキ制動力Fはθの関数と判断することができる。このことから、ブレーキ制動力測定は、回転ローラの大小には影響されないことが分かる。
【0047】
また、このとき、図10の回転ローラを支持する枠(フレーム)に掛かる力をFHとすると、この力FHはWF1 とWR1 の合力となるため、図11に示すように、
FH=WF1 cosθ+WR1 cosθ・・・(7)と表せ、また、
FH=(WF1 +WR1 )cosθ=μ(WF+WR)cosθ=(W/cosθ)と展開することができる。従って、FH=Fとなり、枠に掛かる力(反力)がブレーキ制動力として捉えられることが分かる。このことは、多数の回転ローラを配列させた枠に掛かる力、つまり、本発明のような上記マルチローラ型フラットユニット200のスライドフレーム210にあっても同様であると言える。即ち、各回転ローラの表面で発生する力の合力として、ブレーキ制動力が得られるのである。
【0048】
上記後輪側の測定時、前輪側のタイヤは、ダブルローラ型フラットユニット300の一対の回転ローラ320、320間に落ち込んでいるのみであるが、この一対の回転ローラ320、320の外径は大きく、大きな凹み(谷部)を形成しているため、実用上支障のない、安定したタイヤのロックが得られる。
【0049】
次に、速度の速度であるが、この速度測定の場合、測定車両のタイヤ駆動により、回転ローラ320、220側を回転させて行う。従って、駆動方式の異なる車種、例えば前輪駆動車(FF)、前輪駆動車(FR)、4輪駆動車(4WD)によって少々異なる。
【0050】
前輪駆動車(FF)では、先ず、ダブルローラ型フラットユニット300の左右のクラッチ内蔵減速機350、350のクラッチを「切断」の状態にし、かつ、電磁クラッチ360を「接続」の状態にする。この状態で、測定車両のエンジンを駆動させ、所定の速度まで上げる。そして、このときの回転ローラ320の回転速度をエンコーダ380に検出し、測定車両側の速度計の速度と比較すればよい。
【0051】
後輪駆動車(FR)では、先ず、マルチローラ型フラットユニット200の左右のクラッチ内蔵減速機250、250のクラッチを「切断」の状態にし、かつ、電磁クラッチ260を「接続」の状態にする。この状態で、測定車両のエンジンを駆動させ、所定の速度まで上げる。そして、このときの回転ローラ220の回転速度をエンコーダ280に検出し、測定車両側の速度計の速度と比較すればよい。
【0052】
4輪駆動車(4WD)の場合、前輪左右の4輪が駆動するため、ダブルローラ型フラットユニット300の左右のクラッチ内蔵減速機350、350のクラッチ、及びマルチローラ型フラットユニット200の左右のクラッチ内蔵減速機250、250のクラッチを「切断」の状態にし、かつ、それぞれの電磁クラッチ360、260を「接続」の状態にする。この状態で、測定車両のエンジンを駆動させ、所定の速度まで上げる。そして、このときの回転ローラ320、220の回転速度をエンコーダ380、280に検出し、測定車両側の速度計の速度と比較すればよい。
このとき、エンコーダ380では前輪側の速度が検出でき、また、エンコーダ280では後輪側の速度が検出できるため、両者の速度を比較することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るブレーキ・速度計複合試験機の一例を示した概略縦断面図である。
【図2】図1のブレーキ・速度計複合試験機の平面図である。
【図3】図1のブレーキ・速度計複合試験機におけるマルチローラ型フラットユニットの拡大縦断面図である。
【図4】図1のブレーキ・速度計複合試験機におけるマルチローラ型フラットユニットの拡大平面図である。
【図5】図1のブレーキ・速度計複合試験機におけるダブルローラ型フラットユニットの拡大平面図である。
【図6】図1のブレーキ・速度計複合試験機におけるマルチローラ型フラットユニットの一部縦断拡大側面図である。
【図7】図1のブレーキ・速度計複合試験機におけるマルチローラ型フラットユニットの縦断拡大側面図である。
【図8】図1のブレーキ・速度計複合試験機に用いるスロープ(傾斜台)を示した側面図である。
【図9】図1のブレーキ・速度計複合試験機に用いるスロープ(傾斜台)の他の状態を示した側面図である。
【図10】回転する回転ローラ間に転接されたタイヤにおけるブレーキ制動時の力関係を示した概略説明図である。
【図11】図10の枠に掛かる力とタイヤに。掛かる力の関係を示した概略説明図である。
【図12】従来のブレーキ・速度計複合試験機を示した概略縦断面図である。
【図13】従来の試験機の一部を示した概略説明図である。
【符号の説明】
【0054】
100・・・ベースフレーム、
200・・・マルチローラ型フラットユニット、210・・・スライドフレーム、211・・・リニアガイド機構、211a・・・ガイドレール、211b・・・リニアスライダ、220・・・回転ローラ、221・・・回転軸、230・・・回転伝動手段、240・・・回転駆動手段、250・・・クラッチ内蔵減速機、260・・・電磁クラッチ、270・・・ロードセル、280・・・エンコーダ、290・・・タイヤ滑り止め、
300・・・ダブルローラ型フラットユニット、310・・・固定フレーム、320・・・回転ローラ、321・・・回転軸、330・・・回転伝動手段、340・・・回転駆動手段、350・・・クラッチ内蔵減速機、360・・・電磁クラッチ、370・・・ロードセル、380・・・エンコーダ、
400・・・スロープ(傾斜台)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキ制動力及び速度を測定するブレーキ・速度計複合試験機において、ベースフレームに対して測定車両の前後方向に摺動可能に設置された左右のスライドフレームと、前記各スライドフレームの前後方向に配列された多数の回転ローラと、前記多数の回転ローラを連動して回転させる回転伝動手段と、前記各スライドフレームの少なくとも一つの回転ローラに連結されて当該回転ローラを回転させる左右の回転駆動手段と、前記各回転駆動手段と当該各回転駆動手段に連結された回転ローラ軸間に介在させた左右のクラッチ内蔵減速機と、前記各スライドフレーム間の少なくとも前記回転駆動手段の連結されていない回転ローラ軸間に介在させた電磁クラッチと、前記各スライドフレームの前記ベースフレームに対する移動負荷を検出するためのロードセルと、前記各スライドフレームの多数の回転ローラのいずれかの回転速度を検出するためのエンコーダとからなるマルチローラ型フラットユニットを、少なくとも測定車両の後輪側に設置したことを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機。
【請求項2】
前記請求項1記載のブレーキ・速度計複合試験機において、前記ベースフレームと前記各スライドフレーム間の前後方向にリニアガイド機構を設けて、前記各スライドフレームを摺動可能とさせたことを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機。
【請求項3】
前記請求項2記載のブレーキ・速度計複合試験機において、前記リニアガイド機構を、前記ベースフレーム側に設けたガイドレールと当該ガイドレールに摺動可能に装着されると共に、前記各スライドフレーム側に設けたリニアスライダからなることを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機。
【請求項4】
前記請求項1、2又は3記載のブレーキ・速度計複合試験機において、前記各スライドフレームの前後方向で隣接する両回転ローラ間に上下動するタイヤ滑り止めを設けたことを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機。
【請求項5】
前記請求項4のブレーキ・速度計複合試験機において、前記タイヤ滑り止めを、当該部材と前記スライドフレーム底面間に設置したベローズの伸縮によるエア方式の昇降手段で上下動させることを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機。
【請求項6】
前記請求項1乃至5記載のいずれかのブレーキ・速度計複合試験機において、測定車両の前後方向に設置された左右の一対の回転ローラと、前記左右の一対の各回転ローラを連動して回転させる回転伝動手段と、前記左右の一対の回転ローラの少なくとも一つの回転ローラに連結されて当該回転ローラを回転させる左右の回転駆動手段と、前記各回転駆動手段と当該各回転駆動手段に連結された回転ローラ軸間に介在させた左右のクラッチ内蔵減速機と、前記左右の一対の回転ローラ間の非駆動側の回転ローラ軸間に介在させた電磁クラッチと、前記左右の一対の回転ローラの少なくとも一つの負荷を検出するためのロードセルと、前記左右の一対の回転ローラの少なくとも一つの回転速度を検出するためのエンコーダとからなるダブルローラ型フラットユニットを、測定車両の前輪側に設置したことを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機。
【請求項1】
車両のブレーキ制動力及び速度を測定するブレーキ・速度計複合試験機において、ベースフレームに対して測定車両の前後方向に摺動可能に設置された左右のスライドフレームと、前記各スライドフレームの前後方向に配列された多数の回転ローラと、前記多数の回転ローラを連動して回転させる回転伝動手段と、前記各スライドフレームの少なくとも一つの回転ローラに連結されて当該回転ローラを回転させる左右の回転駆動手段と、前記各回転駆動手段と当該各回転駆動手段に連結された回転ローラ軸間に介在させた左右のクラッチ内蔵減速機と、前記各スライドフレーム間の少なくとも前記回転駆動手段の連結されていない回転ローラ軸間に介在させた電磁クラッチと、前記各スライドフレームの前記ベースフレームに対する移動負荷を検出するためのロードセルと、前記各スライドフレームの多数の回転ローラのいずれかの回転速度を検出するためのエンコーダとからなるマルチローラ型フラットユニットを、少なくとも測定車両の後輪側に設置したことを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機。
【請求項2】
前記請求項1記載のブレーキ・速度計複合試験機において、前記ベースフレームと前記各スライドフレーム間の前後方向にリニアガイド機構を設けて、前記各スライドフレームを摺動可能とさせたことを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機。
【請求項3】
前記請求項2記載のブレーキ・速度計複合試験機において、前記リニアガイド機構を、前記ベースフレーム側に設けたガイドレールと当該ガイドレールに摺動可能に装着されると共に、前記各スライドフレーム側に設けたリニアスライダからなることを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機。
【請求項4】
前記請求項1、2又は3記載のブレーキ・速度計複合試験機において、前記各スライドフレームの前後方向で隣接する両回転ローラ間に上下動するタイヤ滑り止めを設けたことを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機。
【請求項5】
前記請求項4のブレーキ・速度計複合試験機において、前記タイヤ滑り止めを、当該部材と前記スライドフレーム底面間に設置したベローズの伸縮によるエア方式の昇降手段で上下動させることを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機。
【請求項6】
前記請求項1乃至5記載のいずれかのブレーキ・速度計複合試験機において、測定車両の前後方向に設置された左右の一対の回転ローラと、前記左右の一対の各回転ローラを連動して回転させる回転伝動手段と、前記左右の一対の回転ローラの少なくとも一つの回転ローラに連結されて当該回転ローラを回転させる左右の回転駆動手段と、前記各回転駆動手段と当該各回転駆動手段に連結された回転ローラ軸間に介在させた左右のクラッチ内蔵減速機と、前記左右の一対の回転ローラ間の非駆動側の回転ローラ軸間に介在させた電磁クラッチと、前記左右の一対の回転ローラの少なくとも一つの負荷を検出するためのロードセルと、前記左右の一対の回転ローラの少なくとも一つの回転速度を検出するためのエンコーダとからなるダブルローラ型フラットユニットを、測定車両の前輪側に設置したことを特徴とするブレーキ・速度計複合試験機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−292160(P2008−292160A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134859(P2007−134859)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000226600)株式会社アルティア (48)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000226600)株式会社アルティア (48)
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