説明

ブレーキ冷却装置

【課題】燃費の向上及びブレーキの小型化を両立して実現可能なブレーキ冷却装置を提供することを目的とする。
【解決手段】駆動軸の回転動力と電力とを相互に変換可能な電動機を備えた車両において用いられるブレーキ冷却装置であって、当該車両の前輪前方に配置されたスパッツの一部又は全部を変位させることにより、前記スパッツを前記前輪前方の位置から回避させる又は前記前輪前方の位置に戻す駆動を行う駆動手段と、当該車両の制動時に、前記駆動軸の回転動力負荷電力量が所定量以上であると判定すると、前記駆動手段により前記スパッツを前記前輪前方の位置から回避させる駆動を行うよう制御する制御手段とを有することを特徴とするブレーキ冷却装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両において使用される駆動軸から動力を出力する動力出力装置には、原動機を用いるもの、電動機を用いるもの、および原動機と電動機を組み合わせて用いるもの(以下、ハイブリッド式動力出力装置という)等がある。電動機を用いる動力出力装置及びハイブリッド式動力出力装置では、発電機として機能しうる電動機を用いることにより、駆動軸から動力を出力するだけでなく、駆動軸の回転動力を電力として回生することができるものもある。
【0003】
このような回生機能を備えた動力出力装置が車両に搭載された場合、該車両は制動時に車両の走行に伴う運動エネルギーを電力として回生しバッテリーに蓄えることができるため、省エネルギー性に優れたものとなる。この際、駆動軸の回転動力を電力として回生している間は、駆動軸の回転に負荷を与えることになるため、車両に制動力を与えることもできる。
【0004】
一方、上記バッテリーが満充電に近い状態である場合は、回生電力を蓄えておくことができないため、車両の制動時にはその運動エネルギーを何らかの形で消費する必要が生じる。例えば、通常の車両と同様に、ブレーキの摩擦により熱として消費することも考えられるが、ブレーキの負荷が大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
そのため、従来、ブレーキにおいて発生する熱量の低減等を目的とする各種発明がなされてきた。
【0006】
例えば、特許文献1には、隔壁部材とケーシング部の間に空気通路を形成し、車体側に設けた空気強制送給手段からこの空気通路に冷却空気を強制的に導入する空気導入孔をケーシング部に形成する技術が開示されている。また、特許文献2には、ブレーキ冷却用に走行風を導入するブレーキ冷却ダクトであって、一端がタイヤ前方に第1開口を、他端がフロントバンパ後方に第2開口を有し、本体に必要に応じて開閉作動により両開口を連通、遮断する扉を配設する技術が開示されている。さらに、特許文献3には、充電状態が所定状態である場合に、電動機により駆動軸の回転動力を変換して得られた電力を用いて、冷却手段を運転する動力出力装置に係る技術が開示されている。
【特許文献1】特開平6―109045号公報
【特許文献2】実開平5―75034号公報
【特許文献3】特開平11―69510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような回生機能を備えた従来の動力出力装置において電力の回生を行う場合と行わない場合とで同じ耐フェード性能を得るには、ブレーキの冷却性を向上させるのみならず、回生を行わない場合を想定してブレーキの容量(ディスク部分の体積等)を増大させる等の設定が必要とされていた。
【0008】
そのため、燃費の向上とブレーキ冷却性の向上又はブレーキの小型化をを両立して実現できないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みて、この問題を解消するために発明されたものであり、燃費の向上及びブレーキの小型化を両立して実現可能なブレーキ冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明におけるブレーキ冷却装置は、駆動軸の回転動力と電力とを相互に変換可能な電動機を備えた車両において用いられるブレーキ冷却装置であって、当該車両の前輪前方に配置されたスパッツの一部又は全部を変位させることにより、前記スパッツを前記前輪前方の位置から回避させる又は前記前輪前方の位置に戻す駆動を行う駆動手段と、当該車両の制動時に、前記駆動軸の回転動力負荷電力量が所定量以上であると判定すると、前記駆動手段により前記スパッツを前記前輪前方の位置から回避させる駆動を行うよう制御する制御手段とを有するように構成することができる。
【0011】
また、上記の目的を達成するために、本発明における前記制御手段は、前記駆動軸の回転動力に基づき前記電動機により回生される電力量が当該車両の走行のために前記電動機により消費される電力量よりも大きい場合に前記駆動軸の回転動力負荷電力量が所定量以上であると判定するように構成することができる。
【0012】
また、上記の目的を達成するために、本発明における前記制御手段は、さらに、前記電動機の供給する電力に基づく前記駆動軸の回転のみで走行可能と判断した場合に、前記駆動手段により前記スパッツを前記前輪前方の位置から回避させる駆動を行うよう制御するように構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、燃費の向上及びブレーキの小型化を両立して実現可能なブレーキ冷却装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づき説明する。
【0015】
(機能の構成)
まず、本発明におけるブレーキ冷却装置の機能構成の一例について説明を行う。
【0016】
図1は、本発明におけるブレーキ冷却装置の機能構成の一例を示す図である。図1に示すブレーキ冷却装置1は、主たる構成としてECU(Electronic Control Unit)11、ブレーキ冷却部12を有する。このようなブレーキ冷却装置1は自動車等の車両に搭載されている。
【0017】
ECU11は、当該ブレーキ冷却装置1が行うブレーキ冷却に係る制御等を含み各種制御を行う制御手段としてのマイクロコントローラである。例えば、当該車両が駆動軸の回転動力を電力として回生する回生システム(駆動軸の回転動力と電力とを相互に変換可能な電動機)を採用している場合には、回生システムの作動状態及びブレーキの負荷状態を判定して、判定結果に基づきブレーキ冷却部12を作動させる処理等を行う。詳細には、以降に示す第1の実施形態〜第3の実施形態において説明する。
【0018】
ブレーキ冷却部12は、ECU11により制御され、ブレーキを冷却する機能部である。ブレーキが冷却されることにより、ブレーキの小型化(軽量化)が図れ、燃費の向上等が実現される。
【0019】
なお、本実施形態では、ブレーキ冷却部12の冷却対象となるブレーキは、その容量(ディスク部分の体積等)が通常のブレーキの容量に比して特に増大されたものである必要はないものとする。そのため、本実施形態によれば、ブレーキの冷却性の向上による燃費の向上とブレーキの小型化(軽量化)とが両立して実現可能となる。
【0020】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態について図2及び3を参照しながら説明する。
【0021】
(ブレーキ冷却装置について)
図2は、実施形態1に係るブレーキ冷却装置の例を示す図である。図2(a)では、ブレーキ冷却装置1としてのECU11及びブレーキ冷却部12が適用される車両10を車体斜め前方上側から見た斜視図を示している。図2(b)では、図2(a)のECU11及びブレーキ冷却部12周辺を拡大した図を示している。なお、図中矢印FRは車体前方方向を、矢印UPは車体上方方向を示す。
【0022】
図2(a)に示す車両10は、ECU11、ブレーキ冷却部12(スパッツ13、モータ14)を有する構成である。なお、ECU11は図1のECU11に対応し、スパッツ13及びモータ14は図1のブレーキ冷却部12に対応するものとする。
【0023】
ECU11は、前述のように、当該ブレーキ冷却装置1が行うブレーキ冷却に係る制御等を含み各種制御を行うマイクロコントローラである。
【0024】
スパッツ13は、フロントバンパ2の後方で左右の前輪3の前方に配置される部材である。スパッツ13が配置されることにより、車両10の走行時に前輪3に当たる気流を排除して前輪3前方の圧力増加を抑制し、車両10に対する空気抵抗と揚力を低減させて前輪3周りの整流を行うことができる。
【0025】
なお、本実施形態においては、図2(b)に示されるように、スパッツ13は車体に固定されたL字状の部材であり、後述するモータ14の回転に応じてその一部又は全部が変位可能になっている。例えばモータ14の回転に応じて前輪3の前方の位置から回避させたり(図2(b)の破線形状)又は前輪3の前方の位置に戻されたり(図2(b)の実線形状)することができる。なお、スパッツ13の形状や変位方向等は上記の場合に限らないものとする。
【0026】
モータ14は、スパッツ13の一部又は全部を変位させることにより、スパッツ13を前輪3の前方の位置から回避させる又は前輪3の前方の位置に戻す駆動を行う駆動手段としてのモータである。その作動、非作動は、ECU11により制御される。
【0027】
以上のような構成により、所定の条件下でECU11により作動するように制御されたモータ14は、スパッツ13を前輪3の前方の位置から回避させるように制御する。そうすると、前輪3の内部の非図示のブレーキディスク近傍に気流が当たることになり結果的にブレーキの冷却が実現される。
【0028】
続いて、当該ブレーキ冷却装置1においてモータ14はどのような状況(前記所定の条件)下において作動するように制御されるのかについての具体的な一例を図3のフローを用いて説明する。
【0029】
(ブレーキ冷却装置の動作例)
図3は、実施形態1に係るブレーキ冷却装置の動作例を示すフローチャートである。ここでは、当該車両10は駆動軸の回転動力を電力として回生する回生システム(駆動軸の回転動力と電力とを相互に変換可能な電動機)を備えたハイブリッド式の車両であるとして説明を行う。
【0030】
まず、制動負荷演算を行う(S101)。ここでは、走行中の当該車両10においてドライバによるブレーキペダルの踏下等により制動の指示を受けると、ECU11は、制動負荷、即ち制動時の駆動軸の動力負荷電力量等を演算する。既知の技術であるとしてここでは詳細については省略する。
【0031】
続いてステップS102へ移って、回生システムが作動しているか否かを判定する(S102)。ここでは、ECU11は、回生システムが作動しているか否かを判定する。これは、当該車両10の回生システムが電力を蓄えることが可能な状態(回生システムが作動中)か、或いは、バッテリーが満充電に近いために電力を蓄えずに駆動軸の回転動力を何らかの形で消費すべき状態(回生システムが非作動中)かを判定するための処理である。既知の技術であるとしてここでは詳細については省略する。
【0032】
なお、回生システムが非作動中であって、駆動軸の回転動力を消費すべく例えばブレーキの摩擦により熱として消費する場合には、ブレーキにおいて発生する熱量を低減する必要が生じる。一方、回生システムが作動中である場合には、駆動軸の回転動力を電力として回生しバッテリーに蓄えることができるため、当該システムが非作動中である場合に比してブレーキにおいて発生する熱量を低減する必要は生じない。
【0033】
ステップS102においてNOの場合、即ち回生システムが作動していない場合(S102、NO)、ステップS103へ移る。なお、ステップS102においてYESの場合、即ち回生システムが作動している場合(S102、YES)、ここでは処理を終了する。
【0034】
ステップS103へ移った場合、制動負荷は高いか否かを判定する(S103)。ここでは、ECU11は、ステップS1において演算された制動時の動力負荷電力量が所定値以上か否かを判定する。これは即ち、制動時の駆動軸の回転動力に基づき回生システムにおいて回生される回生電力量が当該車両の走行のために消費される消費電力量以上か否かを判定していることと同義である。
【0035】
なお、制動負荷が高い(回生電力量が消費電力量以上である)場合にはバッテリーが満充電になりやすく、従って回生システムが非作動になりやすいことを示している。一方、制動負荷が高くない(消費電力量が回生電力量以上である)場合にはバッテリーに蓄えられた電力が消費され回生システムが作動しやすいことを示している。
【0036】
ステップS103においてYESの場合、即ち制動負荷が高い場合(S103、YES)、ステップS104へ移って、モータ駆動のみで走行可能か否かを判定する(S104)。ここでは、ECU11は、回生システムにより供給される電力に基づく駆動軸の回転のみで走行可能であるか否かを判定する。
【0037】
ステップS104においてYESの場合、即ちモータ駆動のみで走行可能であると判定した場合(S104、YES)、ステップS105へ移って、スパッツ13を作動させる(S105)。ここでは、ECU11はモータ14によりスパッツ13を前輪3の前方の位置から回避させる駆動を行うよう制御する。そうすると、前輪3の非図示のブレーキディスク近傍に気流が当たることになり結果的にブレーキの冷却が実現される。なお、ステップS104においてNOの場合、即ちモータ駆動のみで走行可能でないと判定した場合(S104、NO)、ここでは処理を終了するが、ステップS101へ戻るようにしてもよい。
【0038】
以上に示される動作により、本実施形態1におけるブレーキ冷却装置1によれば、回生システムが作動しなくなりブレーキの負荷が高くなった場合に、ブレーキ冷却装置1を作動させブレーキを冷却する動作を行う。例えば坂道を下っていてバッテリーが満充電になったとき等である。
【0039】
そのため、以下に掲げる利点を奏する。その利点とは、回生によるエネルギー回収を見込んだブレーキ容量とできるため、軽量化、CO2の低減などが実現可能であることである。また、燃費の向上とブレーキの小型化(軽量化)とが両立して実現可能となることである。
【0040】
[第2の実施形態]
以下、本発明の第2の実施形態について図4〜5を参照しながら説明する。
【0041】
(ブレーキ冷却装置について)
図4は、実施形態2に係るブレーキ冷却装置の例を示す図である。図4(a)では、ブレーキ冷却装置1としてのECU11及びブレーキ冷却部12が適用される車両10を車体斜め前方上側から見た斜視図を示している。図4(b)では、図4(a)のECU11及びブレーキ冷却部12周辺を拡大した図を示している。なお、図中矢印FRは車体前方方向を、矢印UPは車体上方方向を示す。
【0042】
図4(a)に示す車両10は、ECU11、ブレーキ冷却部12(ブレーキ用冷却ファン15、導風ダクト16)を有する構成である。なお、ECU11は図1のECU11に対応し、ブレーキ用冷却ファン15及び導風ダクト16は図1のブレーキ冷却部12に対応するものとする。
【0043】
ECU11は、前述のように、当該ブレーキ冷却装置1が行うブレーキ冷却に係る制御等を含み各種制御を行うマイクロコントローラである。
【0044】
ブレーキ用冷却ファン15は、当該車両10の例えばエンジンルーム内等に配設された送風を行う冷却ファンである。その作動、非作動は、ECU11により制御される。
【0045】
導風ダクト16は、風を流すことを目的にして設けられた例えば蛇腹構造の通風管である。本実施形態では、この導風ダクト16の一端はブレーキ用冷却ファン15と接続され、他端はブレーキディスク4近傍に配設されている。
【0046】
以上のような構成により、所定の条件下でECU11により作動するように制御されたブレーキ用冷却ファン15は、導風ダクト16を介してブレーキディスク4近傍に対して送風を行う。これにより、ブレーキの冷却が実現される。
【0047】
続いて、当該ブレーキ冷却装置1においてブレーキ用冷却ファン15はどのような状況(前記所定の条件)下において作動するように制御されるのかについての具体的な一例を図5のフローを用いて説明する。
【0048】
(ブレーキ冷却装置の動作例)
図5は、実施形態2に係るブレーキ冷却装置の動作例を示すフローチャートである。ここでは、当該車両10は制動時に駆動軸の回転動力を電力として回生する回生システムを備えたハイブリッド式の車両であるとして説明を行う。
【0049】
図5におけるステップS201〜S203に係る処理は、図3のステップS101〜S103に係る処理と同様であるとしてここでは説明を省略する。なお、ステップS202においてYESの場合及びステップS203においてNOの場合、ここではステップS206へ移る。
【0050】
ステップS204へ移った場合、ブレーキ用冷却ファン15が作動中か否かを判定し(S204)、作動中でない場合には(S204、NO)、ステップS205へ移って、ブレーキ用冷却ファン15を作動させる(S205)。ここでは、ECU11は制動による回収エネルギー(回生された回生電力)をブレーキ用冷却ファン15の作動に用いる電力として利用するものとする。
【0051】
なお、ステップS204においてYESの場合、即ちブレーキ用冷却ファン15が作動中の場合(S204、YES)、ここではステップS201へ再び戻るようにしている。
【0052】
ステップS206へ移った場合、ブレーキ用冷却ファン15が作動中か否かを判定する(S206)。ここでは、ECU11はブレーキ用冷却ファン15が作動中か否かを判定する。ステップS206においてYESの場合、即ちブレーキ用冷却ファン15が作動中である場合(S206、YES)、ステップS207へ移ってこれを停止する(S207)。
【0053】
ステップS207に係る処理を行うのは、ステップS202においてYES又はステップS203においてNOであるため、ブレーキ用冷却ファン15を作動させる必要がないためである。
【0054】
以上に示される動作により、本実施形態2におけるブレーキ冷却装置1によれば、回生システムが作動しなくなりブレーキの負荷が高くなった場合に、ブレーキ冷却装置1を作動させブレーキを冷却する動作を行う。例えば坂道を下っていてバッテリーが満充電になったとき等である。
【0055】
そのため、以下に掲げる利点を奏する。その利点とは、回生によるエネルギー回収を見込んだブレーキ容量とできるため、軽量化、CO2の低減などが実現可能であることである。また、燃費の向上とブレーキの小型化(軽量化)とが両立して実現可能となることである。
【0056】
[第3の実施形態]
以下、本発明の第3の実施形態について図6を参照しながら説明する。
【0057】
(ブレーキ冷却装置について)
図6は、実施形態3に係るブレーキ冷却装置の例を示す図である。図6(a)では、ブレーキ冷却装置1としてのECU11及びブレーキ冷却部12が適用される車両10を車体前方から見た図を示している。図6(b)では、図6(a)のECU11及びブレーキ冷却部12周辺を拡大した図を示している。
【0058】
図6(a)に示す車両10は、ECU11、ブレーキ冷却部12(導風板用モータ17、導風板18)を有する構成である。なお、ECU11は図1のECU11に対応し、導風板用モータ17及び導風板18は図1のブレーキ冷却部12に対応するものとする。
【0059】
ECU11は、前述のように、当該ブレーキ冷却装置1が行うブレーキ冷却に係る制御等を含み各種制御を行うマイクロコントローラである。
【0060】
導風板用モータ17は、後述の導風板18を変位させることにより、導風板18を所定位置に移動させる駆動手段としてのモータである。その作動、非作動は、ECU11により制御される。
【0061】
導風板18は、外気を取り込んで風をブレーキディスク2近傍に取り込むためにロアアーム5下部に配設された一般的なブレーキ用導風板である。
【0062】
なお、本実施形態においては、図6(b)に示されるように、導風板18は車体に固定されたL字状の部材であり、導風板用モータ17の回転に応じて変位可能になっている。例えば導風板用モータ17の回転に応じて外気をブレーキディスク4近傍に取り込むことが可能な位置(図6(b)の破線形状)に変位させたり、外気とブレーキディスク4近傍の空気の流れを遮断する位置(図6(b)の実線形状)に変位させたりすることができる。なお、導風板18の形状や変位方向等は上記の場合に限らないものとする。
【0063】
以上のような構成により、所定の条件下でECU11により作動するように制御された導風板用モータ17は、導風板18をブレーキディスク4近傍に外気を取り込むことが可能な位置に変位させるように制御する。そうすると、ブレーキディスク4近傍に気流が当たることになり結果的にブレーキの冷却が実現される。
【0064】
当該ブレーキ冷却装置1において導風板用モータ17がどのような状況(前記所定の条件)下において作動するように制御されるのかについての具体的な一例は前述の図3又は図5のフローと同様であるとしてここでは説明を省略する。
【0065】
本実施形態3におけるブレーキ冷却装置1によれば、回生システムが作動しなくなりブレーキの負荷が高くなった場合に、ブレーキ冷却装置1を作動させブレーキを冷却する動作を行う。例えば坂道を下っていてバッテリーが満充電になったとき等である。
【0066】
そのため、以下に掲げる利点を奏する。その利点とは、回生によるエネルギー回収を見込んだブレーキ容量とできるため、軽量化、CO2の低減などが実現可能であることである。また、燃費の向上とブレーキの小型化(軽量化)とが両立して実現可能となることである。
【0067】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記各実施形態にあげたその他の要素との組み合わせなど、ここで示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明におけるブレーキ冷却装置の機能構成の一例を示す図である。
【図2】実施形態1に係るブレーキ冷却装置の例を示す図である。
【図3】実施形態1に係るブレーキ冷却装置の動作例を示すフローチャートである。
【図4】実施形態2に係るブレーキ冷却装置の例を示す図である。
【図5】実施形態2に係るブレーキ冷却装置の動作例を示すフローチャートである。
【図6】実施形態3に係るブレーキ冷却装置の例を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
1 ブレーキ冷却装置
10 車両
11 ECU
12 ブレーキ冷却部
13 スパッツ
14 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸の回転動力と電力とを相互に変換可能な電動機を備えた車両において用いられるブレーキ冷却装置であって、
当該車両の前輪前方に配置されたスパッツの一部又は全部を変位させることにより、前記スパッツを前記前輪前方の位置から回避させる又は前記前輪前方の位置に戻す駆動を行う駆動手段と、
当該車両の制動時に、前記駆動軸の回転動力負荷電力量が所定量以上であると判定すると、前記駆動手段により前記スパッツを前記前輪前方の位置から回避させる駆動を行うよう制御する制御手段と、
を有することを特徴とするブレーキ冷却装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記駆動軸の回転動力に基づき前記電動機により回生される電力量が当該車両の走行のために前記電動機により消費される電力量よりも大きい場合に前記駆動軸の回転動力負荷電力量が所定量以上であると判定することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ冷却装置。
【請求項3】
前記制御手段は、さらに、前記電動機の供給する電力に基づく前記駆動軸の回転のみで走行可能と判断した場合に、前記駆動手段により前記スパッツを前記前輪前方の位置から回避させる駆動を行うよう制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のブレーキ冷却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate