説明

ブレーキ用途用の成形複合材料およびその製造方法

【課題】熱および/または圧縮ストレスのためにできる亀裂または破損の存在のために崩壊しない、ブレーキ用途用の成形複合材料の提供。
【解決手段】ブレーキ用途用の成形複合材料は、次の工程を含む方法により製造できる:a)実質的に炭素からなり、長さ30mm未満であるフィラメントの束、および有機バインダーを含む混合物を前記形状の型の中に備え、同時に、その混合物中に亀裂の伝播を防ぐような方法でその形状に従って延びる多数の強化用繊維を混和させる工程、b)強化用繊維を含む混合物を成形して半製品を製造する工程、c)この半製品を、実質的に有機バインダーの熱分解をもたらすような温度における一次焼成、およびケイ素の存在下における二次焼成に供する工程。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
技術分野
一般に、本発明はブレーキ用途用の成形複合材料およびその製造方法に関する。
【0002】
本発明は特に、実質的に炭素よりなるフィラメントの束を含む混合物を、ケイ素の融解をもたらすのに十分に高い温度においてケイ素と相互作用させることによって製造され得る成形複合材料に関する。
【0003】
術語「実質的に炭素よりなるフィラメント」は、たとえばポリアクリロニトリル(PAN)またはポリシラザンのような合成原料(origin)、またはピッチまたは植物繊維や木材のようなセルロース系の天然原料の、種々の産物の熱分解により製造される繊維状材料を含むことが意図される。
【0004】
術語「フィラメントの束」は、3000〜50000単位の間で可変であり、2〜3mの間の直径を有し、互いに接しており、かつたとえばポリウレタン樹脂のような樹脂を含浸させた繊維集団を含むことが意図される。
【0005】
この束を長さ30mm未満になるように分解し、そして最後に、混合物中でランダムに配置させる。
【0006】
これらのランダムに配置されたフィラメントの束は一般に、束を構成している単位数を基にして、たとえば3K、10K、50Kなどのように定義される。
【0007】
純粋なセラミック材料によってはその内在性の脆性のために保証されない特性である、良好な衝撃強さ、圧縮強さ、および摩擦により生じる熱に対する耐性を必要とする種々の用途において、複合セラミック材料を使用することが知られている。
【0008】
特に、既知のブレーキ用途用の複合セラミック材料は、ケイ素が溶融状態にある温度における、ケイ素と、炭素フィラメントの束および添加剤を含む混合物との相互作用により製造される。
【0009】
許容可能な粘着特性を有する複合材料は、一般に比較的低い生産コストで製造されるので、上記に定義されるフィラメントの束は、上記で言及した材料の製造において広く使用されている。
【0010】
従来技術によれば、これらの複合材料は次の方法で製造できる:フィラメントの束を凝集用の樹脂、ピッチおよび他の添加剤と混合し、この混合物を型に設置し、加熱および加圧により成形し、成形された半製品(semi−finished product)を製造する。
【0011】
この半製品を次に、炉内で樹脂の炭化または熱分解をもたらす温度において一次焼成に供する。
【0012】
この焼成の結果として、半製品は、炭化または熱分解温度において揮発性材料を失うために多孔度を獲得する。
【0013】
焼成した半製品を次に、ケイ素の存在下で、ケイ素の融解およびその半製品の孔への浸透をもたらすような温度において二次焼成に供する。
【0014】
ケイ素の浸透は炭素フィラメントの束の粘着性を増加させ、同時に、二次焼成の条件において融解したケイ素は部分的に半製品の炭素と反応し、材料の粘着特性を向上させる効果を有する炭化ケイ素を形成する。
【0015】
上述した方法により製造される複合セラミック材料は、その良好な特性である圧縮強さおよび摩擦により生じる熱および磨耗に対する耐性のために、しばしば車のブレーキまたはクラッチ部品、特にディスクブレーキの製造において使用される。
【0016】
上述の良好な特性にもかかわらず、上述の複合セラミック材料は、たとえばブレーキ要素として使用時にさらされる熱および/または圧縮ストレスの結果として形成されるいかなる亀裂または破損でも、その材料の構造内を素早く伝播し、それを完全に崩壊させる傾向があるという重大な欠点を有する。
【0017】
従って、車のディスクブレーキの製造において、たとえばブレーキバンドとして、上述の材料を使用することは、明らかにそのブレーキの使用者の安全性に対してかなりの危険性を導く。
【0018】
本発明に基づく技術的な問題は、従来技術に関する上述の欠点を克服するために、熱および/または圧縮ストレスのためにできる亀裂または破損の存在のために崩壊しない、ブレーキ用途用の成形複合材料を提供することである。
【0019】
この問題は、ケイ素と、実質的に炭素よりなり、ランダムに配置され、かつ30mm未満の厚さを有するフィラメントの束を含む混合物との相互作用によって製造される成形複合材料であって、この相互作用はケイ素の融解をもたらすのに好適な温度において起こり、多数の強化用繊維が混合物中に混和され、亀裂の伝播を防止するような方法で材料の形状に従って延びることを特徴とする成形複合材料によって解決される。
【0020】
本発明は、ランダムに配置させたフィラメントの束を含む混合物への強化用繊維の混和は、良好な粘着特性を有するにもかかわらず、同時に、その材料の使用時に強化用繊維が全形状に渡る亀裂の伝播を防止できるという成形複合材料を生成するという驚くべき発見に基づく。
【0021】
強化用繊維は好ましくは、本発明の複合材料の構造内に、その全体の形状に従って延びる。
【0022】
代わりに、強化用繊維は、いずれも構造上の計算に基づいて予測できる亀裂が生じる部分、およびそれらの伝播路の部分に依存して、複合材料のある部分にのみ設けても良い。
【0023】
たとえば、ディスクブレーキディスクのような軸方向に対称的な構造の場合、亀裂の伝播路は放射状に配置され、亀裂はディスクが破裂するまでディスクの内側から外側に向かって伝播する可能性が最も大きいことは、構造上の計算から明らかである。
【0024】
上記で説明した本発明の概念に基づくと、ディスクブレーキディスクの場合において、亀裂の伝播は、強化用繊維をサイズが増加しているディスクの環状部分の周りに配置させることによって防止される。
【0025】
亀裂または破損が無くても、全体構造が使用時に崩壊することを防ぐために、強化用繊維が本発明の複合材料の他の成分に対して良好な粘着特性を有することは重要である。
【0026】
さらに強化用繊維は、本発明の複合材料を製造している間に分解することを避けるために、実質的にこの複合材料の成分に対して不活性であるべきであり、また熱分解の温度およびケイ素の浸潤に耐えるのに十分な性能を有するべきである。
【0027】
この目的のために、強化用繊維の材料は好ましくは炭素繊維より成る。しかしながら、たとえばケイ素との相互作用の温度に耐えることができる、白金のような金属も、SiC、Si、およびTiCのような他の材料も使用することが可能である。
【0028】
強化用繊維は、種々の方法により、本発明の材料内に混和させることができる。たとえば、強化用繊維は、予め決定された方向に配置された多数の束の中に配置させても良い。
【0029】
これらの方向は、束が織物を形成する縦方向と横方向でも良い。
【0030】
代わりに、結合されているかまたは捩じられている強化用繊維のいくつかの束が、織物を形成するために、単一の縦糸または横糸を形成する。
【0031】
代わりに、強化用繊維は、たとえばフェルトのような不織布を構成しても良い。
【0032】
強化用繊維は、本発明の材料内に1またはそれ以上の層を構成しても良い。
【0033】
本発明の成形複合材料の成分の量は、材料の体積に対する体積パーセントで、以下に示すように変動しても良い:
フィラメントの束 40〜70%、好ましくは50〜60%、
バインダー 5〜30%、好ましくは15〜25%、
添加剤 0.5〜20%、好ましくは1〜15%、
強化用繊維 4〜30%、好ましくは10〜20%。
【0034】
本発明は、以下の工程を含む成形複合材料の製造方法にも関する:
a)予め決定した量の実質的に炭素からなり30mm未満の長さを有するフィラメントの束を、予め決定した量の有機バインダーと混合して混合物を得る工程、
b)該混合物をある形状の型に設置し、同時にその混合物に、亀裂の伝播を防止するような方法で、その形状に従って延びる多数の強化用繊維を混和させる工程、
c)強化用繊維を含有する混合物を成形して半製品を生成する工程、
d)半製品を、実質的に有機バインダーの炭化または熱分解をもたらすような温度において一次焼成に供する工程、
e)焼成した半製品を、ケイ素の存在下で、実質的にケイ素の融解およびその半製品への浸透をもたらすような温度において二次焼成に供し、成形複合材料を製造する工程。
【0035】
本発明に方法において、フィラメントの束は、直径0.1〜2mm、好ましくは0.3〜0.5mmであり得る。
【0036】
混合物中に含まれるフィラメントの束の量は、混合物の体積に対して50体積%〜80体積%で変動でき、好ましくは60体積%〜70体積%の範囲内である。
【0037】
フィラメントの束および/または強化用繊維は、本発明の方法に従って使用される前に、保護性の樹脂、好ましくはポリウレタン樹脂で、前もってコートされることが好ましい。
【0038】
代わりに、フィラメントの束および強化用繊維は、前もって、混合物を製造するのに使用するものと同じ有機バインダーでコートされても良い。
【0039】
材料のより強い粘着性と、より緻密な製品がこのようにして得られる。
【0040】
半製品の一次焼成の間に、樹脂および有機バインダーは炭化し、フィラメントの束および強化用繊維の上に保護層を形成し、次のケイ素との処理の間にそれらが崩壊または溶解するのを防止する。
【0041】
従って、フィラメントの束および強化用繊維は、良好な粘着および強度の特性を有する材料を製造するために、その工程を通してそれらの元の形状を維持する。
【0042】
有機バインダーは、フェノール樹脂およびアクリル樹脂、パラフィン、ピッチ、ポリスチレンなどよりなる群の中から選択され得る通常のバインダーである。
【0043】
バインダーは、好ましくはピッチ、およびフェノール樹脂よりなる群の中から選択される。
【0044】
バインダーは、たとえば固体、半流動体または液体状態、または溶液のような、所望の形態で混合物に添加され得る。
【0045】
たとえばフェノール樹脂は、ペレット、粉末、または粒の形態で添加され得る。
【0046】
混合物中の有機バインダーの量は、混合物の体積に対して5体積%〜30体積%で変動してよく、好ましくは20体積%〜26体積%の範囲内である。
【0047】
混合物は、充填剤として用いられ、また間接的には所望の複合材料の空隙率および密度を調節する、他の通常の添加剤を添加してもよい。
【0048】
これらの添加剤は、好ましくは、粉末状のグラファイト、炭化ケイ素、または金属炭化物または金属窒化物のような、不活性材料の粒子より成る。
【0049】
混合物中の添加剤の量は、混合物の体積に対して0.7体積%〜23体積%で変動でき、好ましくは9体積%〜15体積%の範囲内である。
【0050】
混合は通常の方法および通常の装置で行われ、フィラメントの束は様々な方向にランダムに配置されるであろう。
【0051】
強化用繊維は種々の方法で混合物に取り込まれ得る。
【0052】
本発明の方法を実行する好ましい方法によれば、取り込みは次の工程により行われる:
i) 型の形状に従って混合物の第1層を配置し、
ii) 混合物の第1層の上に、亀裂の伝播を防ぐようにその形状に従って延びる多数の強化用繊維を添加し、
iii)多数の強化用繊維を完全にカバーするように、第1層の上に混合物の第2層を配置する。
【0053】
強化用繊維は、予め決定された方向に配置された多数の束の形態で混合物に添加されても良い。
【0054】
これらの予め決定された方向は、束は織物を形成するように縦方向および横方向であって良い。
【0055】
織物はcm当たり2〜30の繊維を含み、好ましくは5〜8繊維/cmである。
【0056】
代わりに、強化用繊維は、たとえばフェルトのような不織布を形成しても良い。
【0057】
混合物に組み込まれる強化用繊維の量は、最終的な複合材料に要求される繊維含量に依存し、この含有量は材料の体積に対して4〜30体積%の範囲内であり、好ましくは10〜20体積%である。
【0058】
明らかに、上述した層形成(layering)工程は、強化用繊維の各層が、フィラメントの束を含む混合物の2つの層の間に組み込まれた多層複合材料を製造するために、予め決定した複数回だけ繰り返しても良い。
【0059】
本発明の方法の成形工程の間に、強化用繊維を含む混合物を型の中で80℃〜180℃、好ましくは100〜120℃の温度まで熱し、また0.1N/cm〜5N/cm、好ましくは0.5〜1N/cmの圧力をそこに加える。
【0060】
そのようにして得られる成形され圧縮された半製品を型から取り外し、次に有機バインダーを炭化させるために一次焼成に供する(工程d、熱分解)。
【0061】
この焼成は好ましくは通常の炉内で、使用するバインダーのタイプに実質的に依存する温度において行い、一般にその温度は900〜1200℃の範囲内である。
【0062】
焼成は、窒素またはアルゴンのような不活性ガスの気流の存在下で、過剰圧10〜100ミリバール、好ましくは20〜30ミリバールで行う。
【0063】
この気流は、好ましくは、有機バインダーの熱分解によって放出されるガスをも除去する。
【0064】
本方法のこの工程の間に、半製品は、より大きな空隙率を獲得し、これは、融解したケイ素を半製品に浸透させることを可能にするので、次の焼成において重要である。
【0065】
本発明の第1の実施形態によれば、本方法は、一次焼成工程d)によって製造される半製品の表面を仕上げる工程を含んでも良い。
【0066】
これによれば、それに所望の形状を与えるために、半製品のいかなる表面の歪みでも通常の装置によって取り除かれることが都合良く可能となる。
【0067】
一次焼成後、半製品は多孔度を獲得しており、もし仕上げを湿式(wet)で行えば不都合なことに液体物質を吸収してしまうので、仕上げ工程は好ましくはたとえばダイアモンドによって乾式(dry)で行う。
【0068】
工程d)に従って焼成した半製品は、ケイ素の存在下で二次焼成に供する(工程e)。
【0069】
二次焼成を行うために、焼成し、かつ仕上げに供したかもしれない半製品を、半製品の約2倍の体積を有する容器のチャンバーに挿入し、半製品と容器との間に形成される空間をケイ素で満たし、半製品を包囲する。従って、使用するケイ素の量は、半製品の孔を満たすために必要な量、またはそれより少し多い量である。
【0070】
空間を満たすのには、粒状または粉末状の純粋なケイ素、またはケイ素とアルミニウムまたは銅との合金を使用する。
【0071】
チャンバーは、焼成の間に放出されるガスの排気口に適した孔により、外部と連通していても良い。
【0072】
ケイ素を装入した後、容器は1400〜1700℃の温度に熱した好適な通常の炉に挿入する。
【0073】
これらの温度においては、ケイ素は融解し、半製品の孔に浸透する(シリケイション(silication))。
【0074】
焼成は、900ミリバール〜300ミリバール、好ましくは800〜500ミリバールの減圧における部分真空下で行う。
【0075】
焼成が完了したら、複合材料を、残留するケイ素が容器から除去しやすいような小さな球状に凝固するように、たとえばアルゴンまたは好ましくは窒素で冷却する。
【0076】
このようにして製造される本発明の複合材料を、たとえば、通常の方法で乾式または湿式で行うことができる表面仕上のような仕上げ操作におそらく供することができる。
【0077】
明らかに、炉内での焼成を含む工程、すなわち熱分解およびシリケイション工程は1つの炉内で行うことができ、生産時間と装置の複雑性を減少させる。
【0078】
本発明の複合材料は、最終的な使用用途に従って種々の方法で成形することができる。
【0079】
特に、本発明の材料は好ましくは、車のブレーキ、特にディスクブレーキ用の部品の製造に使用され得る。
【0080】
この用途においてこの材料は、ディスクブレーキのブレーキ部品を構成するディスクのブレーキリングまたはブレーキバンドの形状に成形することができ、またはブレーキバンドを支持するためのベル(bell)に取り付けることができる。
【0081】
さらにこの材料は、ブレーキパッドにもディスクブレーキのカリパーボディにも適用することもでき、これらの適用のために好適な方法で成形できる。
【0082】
本発明の複合材料は、最適な摩擦特性、硬さ、曲げ強さ、磨耗および摩擦により生じる熱に対する耐性、衝撃強さ、および圧縮強さに優れており、ブレーキ用途に使用するために特に好適である。
【0083】
しかしながら、本発明の複合材料の主要な利点は、亀裂または破損の伝播はその材料内に組み込まれた強化用繊維により防がれるので、使用時に生じ得るいかなる亀裂または破損もその構造を完全に崩壊させないために、使用において非常に安全であるという事実にある。
【0084】
本発明の複合材料のさらなる利点は、実質的な付加的な費用、または特に高価な工具整備を必要とすることなく、容易かつ経済的に製造できることである。
【0085】
実際、本発明の複合材料は類似する既知の複合材料の製造に適用される通常の技術により製造でき、さらに、この材料に添加する強化用繊維の量は比較的低い(体積で30%未満)ことは言及すべきであろう。
【0086】
本発明の特性および利点は、以下の本発明の成形複合材料の製造の実施例の説明によりさらに明らかとなるであろう。説明は、非制限的な実施例によりなされる。
【0087】
[実施例]
混合物の体積に対して、65体積%の直径0.3mm〜0.5mm、長さ5mm〜10mmである炭素フィラメントの束、23体積%の乾燥フェノール樹脂、および12体積%の炭化ケイ素粉末を含有する混合物を、エリーミキサー(Erigh mixer)として知られるミキサー内で、通常の方法により調製した。
【0088】
混合により、フィラメントの束の分布をランダムにした。
【0089】
次に混合物の一部分を、層を形成するために、内径150mm、外形335mm、および高さ70mmの環状の型のキャビティ内に配置した。
【0090】
通常の方法で製造し、cm当たり6本の繊維を有する炭素強化用繊維のリング型織物を、混合物の層に当て付けた。織物の強化用繊維は、直径0.3mm〜0.5mmであり、3000単位すなわち3Kの束を形成しており、それぞれポリウレタンを含浸させてあった。
【0091】
次にこの織物を、さらなる混合物で型を満たすまで覆った。
【0092】
次に、粗製のディスク型ボディを製造するために、織物を含む混合物を、型を1100℃の温度に熱し、1N/cmの圧力を加えることにより成形した。
【0093】
粗製ディスクを型から取り外した後、1100℃の温度に熱した炉内で12時間焼成した。
【0094】
焼成は、圧力30ミリバール、流速30L/分で炉内に搬送されるアルゴンの存在による不活性な雰囲気中で行われた。
【0095】
焼成後、表面の歪みを除去するために、ディスクを通常の方法でダイアモンドによる乾式仕上に供した。
【0096】
この時点で、粗製ディスクをガス排気口(gas−outlet holes)を備える容器内に設置した。
【0097】
容器を、ディスクと容器との間に形成される空間を満たすために必要な量の粒状のケイ素で満たした。
【0098】
次に、容器を1500℃の温度に熱した炉に移し、8時間炉内に放置した。
【0099】
焼成を700ミリバールの減圧下で行い、次に連続的な窒素の吹き入れにより炉内を冷却した。
【0100】
このようにして本発明の複合材料のディスクを製造し、冷却後、表面の歪みを除去し、かつ所望の精度と許容誤差を持つ最終的な形状を達成するために、ダイアモンドによる仕上に供する。
【0101】
ディスクの複合材料の組成は、材料の体積に対する体積パーセントで表すと次のようである:55%のフィラメントの束、10%の添加剤、15%の強化用繊維、および20%のバインダーの炭化により得られる生成物。
【0102】
このようにして製造されたディスクを、車のディスクブレーキの部品として試験し、最適な硬さ特性、衝撃強さ、磨耗耐性、圧縮強さ、およびブレーキ中の摩擦により生じる熱に対する耐性を有することが見いだされた。
【0103】
特に、ディスク内に亀裂があった場合でも、強化材としての繊維を添加せずに同じ方法で製造した複合材料のディスクに起こることと対照的に、連続的に使用している間には断片へと崩壊しなかった。
【0104】
付随的かつ特異的な要求を満たすために、当業者は、添付される請求の範囲から外れることなく、上述した複合セラミック材料の好ましい実施形態に、種々の修飾、改造、および部品の他の機能的に等価な部品との交換を適用しても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)混合物を得るために、予め決定した量の実質的に炭素からなり30mm未満の長さを有するフィラメントの束を、予め決定した量の有機バインダーと混合する工程と、
b)前記混合物をある形状の型に設置し、同時に前記混合物に、亀裂の伝播を防止するような方法で、前記形状に従って延びる多数の強化用繊維を混和させる工程と、
c)前記強化用繊維を含有する前記混合物を成形して半製品を生成する工程と、
d)前記半製品を、実質的に有機バインダーの炭化または熱分解をもたらすような温度において一次焼成に供する工程と、
e)前記焼成した半製品を、ケイ素の存在下で、実質的にケイ素の融解および前記半製品への浸透をもたらすような温度において二次焼成に供する工程と
を含む成形複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記多数の強化用繊維の前記混合物への取り込みが、
i) 前記型の形状に従って前記混合物の第1層を配置する工程と、
ii) 前記混合物の第1層の上に、亀裂の伝播を防ぐように前記形状に従って延びる前記多数の強化用繊維を添加する工程と、
iii) 前記多数の強化用繊維を完全にカバーするように、前記第1層の上に前記混合物の第2層を配置する工程と
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記多数の強化用繊維が前記混合物内に、予め決定された方向に配置された多数の束の形態で前記混合物中に混和される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記予め決定された方向が、束が織物を形成する縦方向と横方向である請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記多数の強化用繊維が、不織布の形態で前記混合物中に混和される、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
前記フィラメントの束および/または前記強化用繊維が樹脂でコートされる請求項1ないし5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記樹脂がポリウレタン樹脂より成る請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記混合物中のフィラメントの束の量が、前記混合物の体積に対して50〜80体積%の範囲内である請求項1ないし7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記混合物中の有機バインダーの量が、前記混合物の体積に対して5〜30体積%の範囲内である請求項1ないし8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記混合物がさらに、前記混合物の体積に対して0.7〜23体積%の、粉末状のグラファイト、炭化ケイ素、および金属炭化物および金属窒化物よりなる群の中から選択される添加剤を含む、請求項1ないし9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記強化用繊維が炭素繊維および金属繊維よりなる群の中から選択される、請求項1ないし10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記混合物中に混和される強化用繊維の量が、前記材料の体積に対して10〜30体積%の範囲内である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
成形工程が、80〜180℃の温度において、前記強化用繊維を含む前記混合物に対して0.1〜5N/cmに加圧して行われる、請求項1ないし12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記半製品の一次焼成が900〜1200℃の温度において、不活性ガスの存在下で行われる請求項1ないし13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記半製品の二次焼成が、不活性ガスの存在下で、1400〜1700℃の温度において、300〜900ミリバールの減圧における部分真空下で行われる、請求項1ないし14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記工程d)の一次焼成の後で、前記工程e)の二次焼成の前に行われる、前記半製品の乾式仕上の工程をさらに含む請求項1ないし15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記工程e)の二次焼成の後に行われる、前記半製品の乾式または湿式仕上の工程をさらに含む請求項1ないし16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれか1項記載の方法により製造され得る成形複合材料。
【請求項19】
ケイ素と、実質的に炭素よりなり、ランダムに配置され、かつ30mm未満の厚さを有するフィラメントの束を含む混合物との相互作用によって製造される成形複合材料であって、前記相互作用はケイ素の融解をもたらすのに好適な温度において起こり、多数の強化用繊維が前記混合物中に混和され、亀裂の伝播を防止するような方法で材料の形状に従って延びることを特徴とする成形複合材料。
【請求項20】
前記多数の強化用繊維が、予め決定された方向に配置された多数の束の中に配置される、請求項18または19記載の材料。
【請求項21】
前記予め決定された方向が縦方向および横方向であり、前記束は織物を形成する請求項20記載の材料。
【請求項22】
前記多数の強化用繊維が不織布を構成する請求項18または19記載の材料。
【請求項23】
請求項18ないし22のいずれか1項記載の成形複合材料のブレーキ用途における使用方法。
【請求項24】
請求項18ないし22のいずれか1項記載の成形複合材料の、車のブレーキ部品の製造における使用方法。
【請求項25】
請求項18ないし22のいずれか1項記載の成形複合材料の、ディスクブレーキディスクの製造における使用方法。

【公開番号】特開2011−251899(P2011−251899A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−152075(P2011−152075)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【分割の表示】特願2001−558631(P2001−558631)の分割
【原出願日】平成13年1月29日(2001.1.29)
【出願人】(501016696)フレニ・ブレンボ エス・ピー・エー (18)