説明

ブレード及び剥離装置

【課題】反りのある基材でもCNTが基材上に残存すること抑制する。
【解決手段】本発明のブレードは、各々の縁がカーボンナノチューブを剥離するための部位となる複数の基板を備え、複数の基板が、縁が一つの直線上に配されるように一列に並んでおり、複数の基板が、互いに独立して、面方向に平行な方向であって前記縁に垂直な方向に変位をするように保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーボンナノチューブを剥離するためのブレード及び剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基材上に成長したカーボンナノチューブ(以下、「CNT」ともいう。)を基材から掻き落とす物として、特許文献1にスクレーバが記載されている。
【0003】
また、特許文献1とは用途が異なるが、特許文献2には電子複写機等に用いられる感光体ドラムをクリーニングするためのブレードクリーニング装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−67916号公報
【特許文献2】特開昭59−24875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のスクレーバでは、CNTの成長に用いる基材に反りがある場合においても、反りによる曲面を一直線上の縁で掻くことになる。これでは、当該縁のうち、当該曲面の表面に接することができない部分が生じる。つまり、当該部分において当該縁と当該表面との間に隙間が生じ、当該隙間にあるCNTをスクレーバは掻くことができず、基材上にCNTが残るという問題が生じる。なお、基材の反りは、基材が大型であればあるほど生じやすく、また、繰り返しの使用によっても生じやすい。
【0006】
特許文献2のブレードクリーニング装置では、上記の問題は解決できない。これは、感光体ドラムに比してCNTの成長に用いる基材は反り等による変形の程度が大きく、また不規則であるためと推測される。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、反りのある基材でもCNTが基材上に残存すること抑制できる、基材からCNTを剥離するためのブレードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係るブレードは、基材上に成長したカーボンナノチューブを剥離するためのブレードであって、各々の縁がカーボンナノチューブを剥離するための部位となる複数の基板を備え、前記複数の基板が、複数の前記縁が一つの直線上に配されるように一列に並んでおり、前記複数の基板が、互いに独立して、面方向に平行な方向であって前記縁に垂直な方向に変位をするように保持されている。
【0009】
本発明に係るブレードでは、前記縁が樹脂で形成されていることがより好ましい。
【0010】
本発明に係るブレードでは、前記基板が3〜5個であることがより好ましい。
【0011】
本発明に係るブレードでは、前記複数の基板の各々が付勢手段に接続されていることがより好ましい。
【0012】
本発明に係るブレードでは、前記付勢手段がシリンダーであることがより好ましい。
【0013】
また、本発明に係る剥離装置は、上記の本発明に係るブレードを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基材上に成長したCNTを剥離する場合において、基材に反りがある基材でもCNTが基材上に残存することを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るブレードの一実施形態であるブレード10の構成を模式的に示す図である。
【図2】ブレード10を用いて基材20上のCNTを剥離する様子の一例を示す図である。
【図3】ブレード10を用いて基材20上のCNTを剥離する様子の別の例を示す図である。
【図4】本発明に係る剥離装置の一実施形態である剥離装置100の構成を模式的に示す図である。
【図5】剥離装置100が備えるブレード110の構成を模式的に示す図である。
【図6】ブレード110が備える分割ブレード111の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<本発明に係るブレードの一例>
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図3を用いて詳細に説明する。
【0017】
〔ブレード10の構成〕
まず、図1を用いてブレード10の構成について説明する。図1はブレード10の構成を模式的に示す図である。
【0018】
ブレード10は分割ブレード(基板)1を4個備えている。
【0019】
分割ブレード1は本体部1a及び縁1bから構成されている。
【0020】
本体部1aは金属で構成されている。本体部1aを構成する金属の具体例としては、例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム等が挙げられる。
【0021】
縁1bはカーボンナノチューブ(CNT)が生成された基材に押し付けられる端であり、CNTを当該基材から剥離するための部位となる。縁1bを含む縁部は樹脂で形成されている。このように、本発明に係るブレードが備える基板の縁は基材表面を傷付けずにCNTのみを剥離できるように基材より柔らかい材料で形成されていることが好ましく、当該材料としては樹脂がより好ましい。樹脂の具体例としては、例えば、ナイロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン、ABS樹脂等が挙げられる。
【0022】
4枚の分割ブレード1は縁1bが矢印Xの方向に一つの直線上に配されるように一列に並んでいる。また、4枚の分割ブレード1の間には隙間が空かないように密着して並んでいる。各々の縁1bがCNTを剥離するための部位となる。
【0023】
4枚の分割ブレード1はそれぞれ縁1bとは逆側の端がシリンダー(図示せず)に接続されている。さらに、4個のシリンダーが一つの保持部(図示せず)に保持されることで、一つのブレード10が構成される。保持部によって、4個のシリンダー、ひいては4個の分割ブレードが保持されることで、1個のブレードが構成される。なお、4個の分割ブレードが接続される対象はシリンダーに限定されず、互いに独立して、面方向に平行な方向であって縁1bに垂直な方向に変位をするように付勢手段等に接続されていればよく、付勢手段としてはバネ等が挙げられる。
【0024】
4枚の分割ブレード1は、シリンダーに接続されることにより、互いに独立して、面方向に平行な方向であって縁1bに垂直な方向(矢印Zの方向)に変位をすることができる。つまり、縁1bがCNTが成長した基材の表面に沿うようにブレード10を当該基材上に載せて、矢印Yの方向に進めてCNTを剥離させるとき、分割ブレード1のそれぞれが、押し付けられた基材の表面に合わせて矢印Zの方向に位置を変えることができる。
【0025】
基材は大型であればあるほど、CNTを成長させる反応等を経ることにより反りが発生しやすい。また、基材は繰り返し使うと反りが大きくなる。しかし、本実施形態によれば、基材に反りがあり、曲面が形成されていても、当該曲面に縁1bのそれぞれの位置を合わすことができる。よって、ブレードが分割されていない特許文献1のスクレーバ等に比べて、曲面に接するブレードの縁の長さを長くすることができる。つまり、基材に反りがあっても、基材の表面と縁との間に隙間が空くことを抑制することができ、結果として、CNTが基材上に残存することを抑制できる。
【0026】
なお、本実施形態では分割ブレードの数が4個である場合について説明したが、本発明に係るブレードの備える基板の数はこれに限定されない。ブレードを分割する数、即ち、本発明に係るブレードの備える基板の数は、複数であればよく、対象のCNTが成長した基材の大きさによって適宜設定すればよい。例えば、好ましくは基板の幅が200mm以下、より好ましくは150mm以下にするとよい。また、基板の幅が狭く数が増えると装置が複雑になることから、基板の幅の下限は好ましくは50mmである。また、例えば、基材の幅が500mmのものであるとき、基板の数は3〜5個であることが好ましく、さらに好ましくは本実施形態のように4個である。
【0027】
〔ブレード10によるCNTの剥離の例1〕
次に、基材上のCNTをブレード10で剥離する様子の一例を図2を用いて説明する。図2は、ブレード10を用いて基材20上のCNTを剥離する様子の一例を示す図である。
【0028】
図2の(a)に示すように、本例では基材20上の全体にCNTが生成している。基材20上に生成しているCNTは、CNT配向集合体を形成していることが好ましい。CNT配向集合体とは、基材から成長した多数のCNTが特定の方向に配向した構造体をいう。CNT配向集合体が配向性を示すためには、CNT配向集合体の高さ(長さ)は10μm以上、10cm以下の範囲にあることが好ましい。高さが10μm以上であると、配向性が向上する。CNTを基材20から剥離するために、ブレード10の幅方向と基材20の幅方向とが一致するように、且つ、基材20の中央付近に位置するように、ブレード10を基材20に押し付ける。
【0029】
次に、図2の(b)に示すように、ブレード10を矢印Aの方向に移動させる。こうすることで、ブレード10の最初の位置より矢印Aの方向にあった基材20上のCNTが剥離する。
【0030】
また、ブレード10は、4個の分割ブレード1により構成されているので、基材20に反りがあっても、それぞれの分割ブレード1の位置が反りの曲面に合わせて変化できる。よって、基材20上にCNTが残存することを抑制できる。
【0031】
次に、図2の(c)に示すように、基材20を180度回転させる。そして、CNTが存在している箇所の端にブレード10の位置を合わせて押し付ける。
【0032】
次に、図2の(d)に示すように、ブレード10を矢印Aの方向に移動させる。これにより、基材20上の残りのCNTを剥離できる。また、図2の(b)における説明と同様に、基材20に反りがあってもCNTが基材20上に残存することを抑制できる。
【0033】
〔ブレード10によるCNTの剥離の例2〕
次に、基材上のCNTをブレード10で剥離する様子の別の例を図3を用いて説明する。図3は、ブレード10を用いて基材20上のCNTを剥離する様子の別の例を示す図である。
【0034】
図3の(a)に示すように本例では、基材20の端にはCNTが生成していない領域がある。このような基材20の場合には、図3の(a)に示すようにCNTが生成している領域と生成していない領域との境目であって、生成していない領域側の端に沿うようにブレード10を押し付ける。
【0035】
次に、図3の(b)に示すように、矢印Aの方向にブレード10を移動させることによって基材20上のCNTを剥離することができる。このとき、図2の(b)における説明と同様に、基材20に反りがあってもCNTが基材20上に残存することを抑制できる。
【0036】
<本発明に係る剥離装置の一例>
次に、本発明に係る剥離装置の一実施形態である剥離装置100について図4〜図6を用いて説明する。
【0037】
まず、剥離装置100の構成等について図4を用いて説明する。図4は剥離装置100の構成を模式的に示す図であり、図4の(a)は剥離装置100の側面図であり、図4の(b)は剥離装置100の正面図である。
【0038】
図4に示すように、剥離装置100は、ブレード110、載置台120を備えている。
【0039】
ブレード110は本発明に係るブレードの一実施形態である。ブレード110はベルトコンベア(図示せず)により矢印B方向に移動できる。また、ブレード110は載置台120に近づいたり、遠ざかったりするように上下動できるように設けられている。また、ブレード110は載置台130の表面に対して45°の角度を形成するように設置されている。この角度は45°に限定されるものではなく、例えば0°より大きく90°以下が好ましく、30°以上、60°以下がより好ましい。
【0040】
ブレード110の構成についてより詳細に図5及び図6を用いて説明する。図5はブレード110の構成を模式的に示す図であり、図6は分割ブレード111の構成を模式的に示す図である。
【0041】
図5に示すように、ブレード110は、4枚の分割ブレード111、保持部112、エアシリンダー(付勢手段;シリンダー)113を備えている。
【0042】
分割ブレード111は本体部111a及び縁111bから構成されている。4枚の分割ブレード111は縁111bが一直線上に配されるように並んでいる。また、4枚の分割ブレード111の間には隙間が空かないように並べられている。
【0043】
保持部112は4枚の分割ブレード111を保持する部材である。それぞれの分割ブレード111はエアシリンダー113を介して保持部112に接続されている。エアシリンダー113により4枚の分割ブレード111はそれぞれ独立して、その面方向に並行であり縁111bに垂直な方向(矢印Cの方向)に変位できる。
【0044】
また、図6に示すように、分割ブレード111は、基材130上に押し付けられた際に、その先端が基材130の面に対して平行になるように加工されている。このような構造にするためには、一旦、縁111bの先端を鋭く形成した上で、先端を適宜切断すればよい。このとき、基材130に接する矢印D方向の幅を、好ましくは1mm以上、3mm以下、より好ましくは約2mmにするとよい。
【0045】
載置台120はCNTが成長した基材130を載せるための台である。図4は、載置台120の上に基材130が載せられた状態を示している。
【0046】
基材130はCNTを成長させるための基材であり、例えば、金属板の上にCNTの成長を触媒する触媒層が設けられてなるものである。本実施形態では、基材130上に既にCNTが成長している場合について説明する。
【0047】
次に、剥離装置100の動作について説明する。
【0048】
載置代120上に基材130を載せた後、剥離装置100を起動させると、ブレード110は、矢印B方向に動き、且つ、後述する基材130に対して押し付けられる。これにより、ブレード110は基材130上のCNTを掻き取る。
【0049】
ブレード110の速度は、例えば、50mm/s以上、500mm/s以下が好ましい。また、本実施形態では基材130が固定され、ブレード110が動く場合について説明したが、本発明に係る剥離装置はこのような構成に限定されない。例えば、本発明に係る剥離装置では、ブレードを固定して、CNTが成長した基材を載せた載置台を移動させる構成でもよい。このような構成は連続的にCNTを製造する装置に本発明に係る剥離装置を組み込む場合に有利である。つまり、基材をベルトコンベア等で運搬して、CNTを成長させる炉内を通過させた後に、ブレードの下を通過させれば、CNTを連続的に剥離することができる。
【0050】
本実施形態においてブレード110を基材130に押し付ける力は20Nである。ただし、本発明に係る剥離装置においてブレードを基材に押し付ける力は20Nには限定されず、例えば、8N以上、700N以下が好ましく、15N以上、700N以下がより好ましい。押し付ける力が弱いと基材の反りの表面とブレード縁との間に隙間ができ、CNTが基材に残存するおそれがある。押し付ける力が強すぎると基材を傷付けたりブレード縁が磨耗しやすくなったりする場合がある。ブレードを基材に押し付ける力を適宜調節することで、CNTが基材上に残存することなく、かつ基材を傷付けずにCNTを剥離することができる。CNTが剥離された基材は必要に応じ触媒層を新たに形成した上で、CNTの成長のために再利用することが可能である。
【0051】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1、111 分割ブレード(基板)
1a 本体部
1b 縁
10、110 ブレード
20 基材
100 剥離装置
113 エアシリンダー(シリンダー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に成長したカーボンナノチューブを剥離するためのブレードであって、
各々の縁がカーボンナノチューブを剥離するための部位となる複数の基板を備え、
前記複数の基板が、複数の前記縁が一つの直線上に配されるように一列に並んでおり、
前記複数の基板が、互いに独立して、面方向に平行な方向であって前記縁に垂直な方向に変位をするように保持されている、ブレード。
【請求項2】
前記複数の基板の各々が付勢手段に接続されている、請求項1に記載のブレード。
【請求項3】
前記付勢手段がシリンダーである、請求項2に記載のブレード。
【請求項4】
前記縁が樹脂で形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のブレード。
【請求項5】
前記基板の幅が50mm以上200mm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のブレード。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のブレードを備えるカーボンナノチューブの剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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