説明

ブロック共重合体を用いたナノリソグラフィー

本開示の実施形態に従い、基板表面上にサブミクロの大きさのナノ構造を形成するための方法として、基板上にブロック共重合体およびナノ構造前駆体を含む、プリントされたフィーチャーを形成するために、ブロック共重合体およびナノ構造前駆体を含むインクでコーティングされたチップに基板を接触させることと、および直径(または線幅)が1μm未満であるナノ構造を形成するため、プリントされたフィーチャーのナノ構造前駆体を還元することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2009年12月2日出願の米国特許仮出願第61/265、933号に基づく優先権を主張し、その開示内容全体を本明細書に参照により含めるものとする。
【0002】
(政府の利益の表明)
本発明は、国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)による国費プロジェクトN第66001―08―1―2044号、空軍科学研究局(AFOSR)による国費プロジェクトFA第9550―08―1―0124号、および全米科学財団のナノスケール科学工学センター(NSF NSEC)による国費プロジェクトEEC第0647560号の下で実施された。本発明に関して政府があるの権利を有する。
【0003】
(背景)
本開示内容は、全般にパターニング手法に関するものであり、とりわけ、ブロック共重合体を用いたナノリソグラフィーを利用してナノ構造の合成およびパターニングを行う方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ナノ粒子は、サイズに依存した、光子、電子および化学特性を表し、単一電子トランジスター、フォトニクスおよびバイオメディカルセンサ等を含む、新世代の触媒およびナノデバイスへと導く可能性がある。目標とされたこのような応用の多くを実現するためには、技術的に関連する表面上の個々の粒子の位置を制御しつつ単分散の粒子を合成する方法が必要である。所望される位置に単一のサブ10nmのナノ粒子を配置または合成するという課題は、従来のフォトリソグラフィー等を含む現在利用可能な技術を利用して行うとすれば、不可能ではないにしても困難であり得る。現在のリソグラフィ手法は、リフトオフプロセスを通じてか、ナノ粒子集合体の支援のため化学的または幾何学的に表面をプレパターニングすることによるか、そのいずれかによりナノ粒子アレイを生成する。
【0005】
電子ビーム(e−beam)リソグラフィ等の技術は、サブ50nm解像度を提供するが、サブ10nmフィーチャーを作り出すのは、電子ビームのフォトレジスト相互作用から生じる近接効果という理由から困難であり得る。さらに、e−beamリソグラフィのスループットは、その連続特性により限定される。一方、ナノインプリントリソグラフィーとマイクロコンタクトプリンティングでは、並行パターニングは可能であるが、任意のパターン形成はできない。走査型プローブに基づく方法として、ディップペンナノリソグラフィ(DPN)およびポリマーペンリソグラフィー(PPL)はとりわけ興味深い。なぜなら、「インク化した」ナノスケールのチップは、物質を、高精度レジストレーションおよびサブ50nmフィーチャー分解能を有する対象の基板上の所望の位置に直接デリバーすることができる。このような多目的技法は、広く多様な基板上に、アルカンチオール、オリゴヌクレオチド、タンパク質、重合体、および無機材料のナノパターンを生成するために使用されてきた。今までは、直接DPNによりナノ粒子をパターン化しようとしてきたが、表面相互作用、チップのインク化、およびインクの輸送に関して当該技術に過度に依存すれば、その結果不均質なフィーチャーを生じることとなり、その中では、DPN生成のテンプレートによるナノ粒子集合体は本質的に間接的であり、サブ10nmの次元を有する単一オブジェクトを配置するのに理想的ではない。フィーチャー分解能は、AFMチップ曲率半径、およびチップと基板の間に形成される水のメニスカスに制限されるため、現時点で報告されているDPNの究極の分解能は、金結晶(111)の基板上に形成されるアルカンチオールフィーチャーの12nmであり、それは半径2nmの超鋭チップを使用して達成された。
【0006】
トップダウン方式に対し、ブロック共重合体のセルフ集合体は、多目的のプラットフォームを提供し、ブロック共重合体の分子重量により定められるように、フィーチャーのサイズは通常5nm〜100nmの範囲が可能である。ブロック共重合体システムの、明確に定義されたドメイン構造は、金属、半導体、および絶縁誘導体等を含む機能材料の二次的パターンを達成するテンプレートとして使用することが可能である。しかし、先行文献には、ブロック共重合体は、個々の粒子の位置または次元を制御することなく塊の中でナノ粒子アレイを合成するための薄膜テンプレートであると記載されている。これら相分離ドメインは、多くの場合、配向と長距離秩序に不足があり、広範な利用および技術的に関連する応用への採用を妨げている。ブロック共重合体システムの配向を改善する試みは、外部電場、せん断流動応力、温度勾配、溶解焼鈍、化学的プレパターニング、およびグラフォエピタクシーを利用してこれまで行われてきた。化学的プレパターニングおよびグラフォエピタクシーは、翻訳順序とパターンにおけるフィーチャー登録に対しより強い制御を実施するが、e−beamリソグラフィのような間接リソグラフィのステップの追加を要求し、それは、広範な領域での応用には高コストおよび低スループットである。コルゲートのサファイア結晶の表面のブロック共重合体ミクロドメインの準長距離秩序は、リソグラフィの追加ステップを利用することなく得られる。しかし、この技法は、パターン化が可能であるタイプの基板に限定されており、任意の表面上の粒子の位置を制御することはできない。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態によると、基板の表面上に大きさがサブミクロのナノ構造を形成する方法として、基板上にブロック共重合体マトリックスおよびナノ構造前駆体を含む、プリントされたフィーチャーを形成するために、ブロック共重合体マトリックスおよびナノ構造前駆体を含むインクでコーティングされたチップに基板を接触させること、および直径(または線幅)が1μm未満であるナノ構造を形成するため、プリントされたフィーチャーのナノ構造前駆体を還元することが含まれる。
【0008】
本開示の実施形態によると、基板の表面上に大きさがサブミクロのナノ粒子を形成する方法として、PEO―b―P2VPを含み、金属塩を含有するミセルを含むプリントされたフィーチャーを形成するため、PEO―b―P2VPおよび金属塩を含むインクでコーティングされたチップに基板を接触させること、および直径が1μm未満であるナノ粒子を形成するため、プリントされたフィーチャーの金属塩を還元することが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】PEO―b―P2VPの構造と分子量を示す略図である。
【図1B】本開示の実施形態に従ってナノ構造を形成する方法を示す略図である。
【図1C】本開示の実施形態に従ってナノ構造を形成する方法を利用して、ディップペンナノリソグラフィによるSi/SiOx基板上に堆積したPEO−b−P2VP/AuCl4インクの四角形ドットアレイの、原子間力顕微鏡(AFM)トポグラフィ画像である。
【図1D】図1CのPEO−b−P2VP/AuCl4ドットの1つのラインの高さプロファイルを示すグラフであり、フィーチャーサイズの均一性を示している。
【図1E】図1Cの四角形ドットアレイのプラズマ処理により生成されるサブ10nm金ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図1F】本開示に従った方法により形成される結晶金ナノ粒子の高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)画像であり、ナノ粒子の直径は8nmで、結晶は0.24nmの結晶格子を有するのが示されている。挿入図は、金(111)ナノ粒子の一般的な電子回折パターンである。
【図2A】カーボンで被覆された銅グリッド上に溶液を滴下して作成された、PEO−b−P2VP/AuCl4ミセルのTEM画像である。
【図2B】本開示の実施形態に従った方法を利用してDPNパターニングした後、重合体マトリックス内に形成された金ナノ粒子のTEM画像である。
【図3】PEO−b−P2VP/HAuCl4インクを使って、本開示の実施形態に従った方法により形成された金ナノ粒子のX線光電子分光スペクトルである。
【図4A】本開示の実施形態に従った方法により形成された単一金ナノ粒子の大型アレイのSEM画像である。
【図4B】異なる領域の400粒子のフィーチャーのアレイのレジストリ解析を示すグラフであり、配分エラーは、ブロック共重合体フィーチャーの中心から粒子までの距離とフィーチャーの直径との比率であると定義されている。
【図5A】本開示の実施形態に従った方法で生成されたSi/SiOx基板上に堆積した異なるサイズのPEO−b−P2VP/AuCl4インクの5x5ドットパターンのAFMトポグラフィ画像である。但し、本開示の実施形態においては、チップと基板の接触の時間を意図的に増加した。画像の下から上までに至るチップと基板の接触時間は、0.01、0.09、0.25、0.49、および0.81秒である。
【図5B】図5AのPEO−b−P2VP/AuCl4ドットの1つのラインの高さプロファイルを示すグラフであり、時間に依存する重合体輸送量を表している。
【図5C】図5AのPEO−b−P2VP/AuCl4ドットを短時間プラズマに暴露した後、ブロック共重合体マトリックス(黒い輪)内に形成された異なるサイズの金粒子(明るいドット)のSEM画像である。
【図5D】図5Aのパターンの走査型TEM画像で、ブロック共重合体マトリックス(周囲の灰色ドット)内で、単一金ナノ粒子(黒いドット)が形成されたのを確認できる。
【図5E】図5AのPEO−b−P2VP/AuCl4ドットのサイズの分布と、図5AのPEO−b−P2VP/AuCl4ドットの還元により形成される、対応する金ナノ粒子のサイズの分布を示した図である。
【図6】本開示の実施形態に従った方法により生成されたSi34基板上で形成される、異なるサイズのPEO−b−P2VP/AuCl4ドットの5x5ドットアレイの走査型TEM画像である。但し、本開示の実施形態では、チップと基板の接触時間を意図的に増加した。図6の下から上に至るチップと基板の接触時間は、1、4、9、16、および25秒である。単一の金ナノ粒子(明るい白いスポット)が、ブロック共重合体マトリックス(周囲の灰色)内に形成された。但し、丸で囲まれたフィーチャーでは2つのナノ粒子が発見された。
【図7A】本開示の実施形態に従った方法により形成された個々のPEO−b−P2VP/AuCl4ドットフィーチャーで作られた、ノースウェスタン大学のワイルドキャットのロゴパターンの暗視野光学顕微鏡画像である。
【図7B】プラズマ暴露時にブロック共重合体マトリックスに埋め込まれた、金ナノ粒子アレイの形成を示す図7Aの拡大部分のSEM画像である。挿入図は、重合体除去後の単一金ナノ粒子のSEM画像である。
【図8A】本開示の実施形態に従った方法により形成された、直径がサブ5nmである金ナノ粒子の3x3アレイのSEM画像である。
【図8B】図8Aの金ナノ粒子を個別に示した走査型TEM画像であり、ナノ粒子のサイズを表している。
【図8C】図8Aのサブ5nm金ナノ粒子のサイズの分布を示したヒストグラムである。
【図9A】本開示の実施形態に従った方法を利用して、Si/SiOx基板上で、ポリマーペンリソグラフィ(15、000ペンアレイ)により形成されたPEO−b−P2VP/AuCl4ドットの大規模パターンの暗視野光学顕微鏡画像である。挿入図は、ペンアレイの個々のペンにより形成されたパターン毎に、2μmの間隔を有する20x20ドットアレイを示している。
【図9B】ブロック共重合体マトリックスが酸素プラズマにより取り除かれた後、図9Aのパターン化されたアレイ内で形成された金粒子(明るいドット)のSEM画像である。挿入図は、単一金ナノ粒子の直径が9.5nmであることを示している。
【図10】本開示の実施形態に従った方法を利用して、ディップペンナノリソグラフィによりPEO−b−P2VPブロック共重合体マトリックスに形成された、サブ5nmプラチナナノ粒子のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
走査型プローブブロック共重合体リソグラフィは、個別のin−situナノ構造の成長と位置の制御を可能にしつつ、大きさがサブ10nmの単一ナノ構造、例えば、ナノ粒子のパターニングを可能にする。本開示の実施形態に従い、走査型プローブブロック共重合体リソグラフィ法は、相分離ブロック共重合体―ナノ構造前駆体インクを基板に移すため、ディップペンナノリソグラフィまたはポリマーペンリソグラフィのプリント方法を用いることができる。パターニング後、プリントされたフィーチャーのナノ構造前駆体を還元し、ブロック共重合体マトリックスを除去することによりナノ構造が形成される。プリントされたフィーチャーとそれに伴うナノ構造の形成は、本開示の方法を利用して任意のあらゆるパターンで配列される。いかなる形状を有するいかなるナノ構造も、本開示の方法により形成され得る。ナノ構造としては、例えば、ナノ粒子またはナノ細線が挙げられる。
【0011】
有利なことに、本開示の実施形態に従った方法は、最初にプリントされたフィーチャーよりもサイズが10倍またはそれ以上小さいナノ構造のin situ合成を可能にする。例えば、ブロック共重合体およびナノ構造前駆体を含む、プリントされたフィーチャーの直径または線幅は、約20nm〜約1000nm、約40nm〜約800nm、約60nm〜約600nm、約80nm〜約400nm、または約100nm〜約200nmである。プリントされたフィーチャーのその他の適切な直径または線幅として、約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、420、440、460、480、500、520、540、560、580、600、620、640、660、680、700、720、740、760、780、800、820、840、860、880、900、920、940、960、980、および1000nmが含まれる。その結果生じるナノ構造の直径または線幅は、約1nm〜約100nm、約1nm〜約25nm、約2nm〜約20nm、約4nm〜約15nm、約6nm〜約10nm、約50nm〜約80nm、または約40nm〜60nmである。ナノ構造のその他の適切な直径または線幅として、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、および100nmが含まれる。
【0012】
図1Bを参照すると、ナノ構造を形成する方法として、ブロック共重合体マトリックスおよびナノ構造前駆体を含むインクをチップに充填することが含まれる。図1Bは、パターニング用のディップペンナノリソグラフィ(DPN)チップの利用を示している。しかし、ポリマーペンリソグラフィ(PPL)およびジェルペンリソグラフィ等、その他のチップを用いたリソグラフィも利用可能である。その後、コーディングされたチップを基板と接触させ、プリントされたフィーチャーの形式で基板上にインクを堆積させる。プリントされたフィーチャーには、ブロック共重合体マトリックス、およびブロック共重合体マトリックスに含有されるナノ構造前駆体が含まれる。その後、プリントされたフィーチャーのナノ構造前駆体を還元してナノ構造を形成させ、ブロック共重合体マトリックスを取り除くことができる。図7Aと図7Bを参照すると、本開示の方法の実施形態では、DPNおよびPPL等のチップを用いたパターニング法により、単一のナノ構造、例えば、ナノ粒子の任意のパターンの制御が可能となる。
【0013】
ブロック共重合体の材料には、走査型プローブチップから基板へ制御可能な方法で移転し、ナノ構造前駆体を分離することができるよう選択するべきである。適切なブロック共重合体の材料として、例えば、ポリ(酸化エチレン)−b−ポリ(2−ビニルピリジン)(PEO−b−P2VP)、PEO−b−P4VP、およびPEO−b−PAAが含まれる。図1Aは、PEO−b−P2VPブロック共重合体を示している。PEO−b−P2VPブロック共重合体を利用する時、P2VPはナノ構造前駆体の濃縮を行い、一方、PEOはインク輸送を促進するデリバリブロックの役割を担う。ブロック共重合体はナノスケールのミセルに分離されるが、それによりナノ構造前駆体が局所化されるだけでなく、もしフィーチャーが純金属イオンのインクで作成されるなら、各フィーチャーのナノ構造前駆体の量は大幅に低下する。
【0014】
ナノ構造の濃縮ブロックまたは前駆体調整ブロックのナノ構造前駆体に対する分子比は、約1:0.1〜約64:1、約1:0.1〜約10:1、約1:0.5〜約8:1、約1:1〜約10:1、約2:1〜約8:1、約4:1〜約6:1、約10:1〜約64:1、約15:1〜約60:1、または約30:1〜約40:1であり得る。その他の適切な分子比として、約1:0.1、1:0.2、1:0.25、1:0.3、1:0.4、1:0.5、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、22:1、24:1、26:1、28:1、30:1、32:1、34:1、36:1、38:1、40:1、42:1、44:1、46:1、48:1、50:1、52:1、54:1、56:1、58:1、60:1、62:1、および64:1が含まれる。
【0015】
ナノ構造前駆体は、例えば、金属ナノ構造、半導体ナノ構造、または誘導体ナノ構造を形成するのに適切な任意の前駆体材料であり得る。例えば、HAuCl4、Na2PtCl4、CdCl2、ZnCl2、FeCl3、NiCl2等の金属塩、およびその他の無機化合物がナノ構造前駆体となり得る。図8Aは、金属塩HAuCl4およびブロック共重合体PEO−b−P2VPを使用して、本開示の実施形態に従った方法により形成された金ナノ粒子のパターンを示している。図10は、金属塩Na2PtCl4およびブロック共重合体PEO−b−P2VPを使用し、P2VPとプラチナの分子比が1:0.25である、本開示の実施形態に従った方法により形成されたプラチナナノ粒子のパターンを示している。
【0016】
1つの実施形態では、ナノ構造前駆体はHAuCl4であり、ブロック共重合体はPEO−b−P2VPである。プロトン化ピリジンユニットは、静電作用のためAuCl4部分に対する強い親和性を有する。一方PEOブロックは、DPNの実験において良好な輸送特性を可能とする。図1Bを参照すると、ブロック共重合体およびナノ構造前駆体を水溶液で混合する時、水不溶性P2VPコアを有するミセルはPEOコロナフォームで囲まれ、AuCl4-をP2VPコアに対して制限する。
【0017】
ブロック共重合体−ナノ構造前駆体インクは、任意の適切な基板、例えば、Si/SiOx基板、Si34膜、ガラス状炭素、および金基板等の上にプリントできる。
【0018】
パターニングの後、ナノ構造は、プリントされたフィーチャーの中のナノ構造前駆体を還元することにより形成される。還元剤には、ナノ構造前駆体をナノ構造に変換するのに適切な任意の物質を用いることが可能である。その後、パターン化されたブロック共重合体−ナノ構造前駆体ミセルを還元すると、凝集されたミセル内にナノ構造が形成される。例えば、酸素またはアルゴンプラズマを還元剤として用いることができ、およびブロック共重合体を取り除くために使うことができる。酸素プラズマによるナノ構造前駆体物質の還元は、炭化水素酸化により促進され得る。その他の適切な還元剤として、例えば水素等の気体が含まれる。還元剤はまた、ナノ構造の形成後、ブロック共重合体を取り除くために用いられ得る。
【0019】
本開示の実施形態に従った方法により合成されたナノ構造のサイズは、例えば、共重合体ブロック鎖の長さの制御、ナノ構造前駆体の初濃度、および還元剤の種類により制御することが可能である。例えば、ナノ構造前駆体の初濃度を増加することにより、ナノ構造のサイズが大きくなる。さらに、理論的制約を受けることを意図しなければ、共重合体ブロックの分子量の増加によりミセルのコアは大きくなり、よってナノ構造も大きくなると信じられる。ナノ構造前駆体は、重合体ミセル内のイオンの局所的濃度を決定する。濃度が低ければそれだけ、合成されたナノ構造は小さくなる。例えば、図8Bを参照すると、サブ5nmのナノ粒子は、ナノ粒子の濃縮ブロックとナノ粒子の前駆体の分子比が約4:1である、塩と共重合体の混合物を用いて形成され得る。
【0020】
ブロック共重合体−ナノ構造前駆体インクのパターニングの間の滞留時間(または、本明細書ではチップと基板の接触時間と称される)は、約0.01秒〜約30秒、約0.01秒〜約10秒、約0.05秒〜約8秒、約0.1秒〜約6秒、約0.5秒〜約4秒、約1秒〜約2秒、約10秒〜約30秒、約8秒〜約26秒、約6秒〜約24秒、約15秒〜約20秒、または約10秒〜約15秒であり得る。その他の適切な滞留時間として、例えば、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、および30秒が含まれる。
【0021】
本開示の実施形態に従った方法により合成されたナノ構造のサイズはまた、DPNまたはポリマーペンリソグラフィ方法でパターニングする時の滞留時間を変えることによる制御も可能である。DPNまたはポリマーペンリソグラフィ法を利用した時に、フィーチャーのサイズは、チップと基板の接触時間(滞留時間)に依存することが示されるが、それを用いて、プリントされたフィーチャー(ブロック共重合体およびナノ構造前駆体を有する)のサイズとその結果生じるナノ構造のサイズの双方を制御することができる。図5Eを参照すると、例えば、本開示の実施形態に従った方法により合成され、DPNによりパターン化されたナノ構造の直径は、チップと基板の接触時間(滞留時間)の平方根に直線的に依存する。
【0022】
理論的制約を受けることを意図しなければ、ナノ構造、例えば、ブロック共重合体のプリントされたフィーチャー内で形成されたナノ粒子の数は、ブロック共重合体−ナノ構造前駆体のプリントされたフィーチャーのサイズを制御することにより、制御され得ると信じられている。例えば、図6を参照すると、ブロック共重合体のパターン化されたフィーチャーの直径が450nmまたはそれ以上である場合、複数のナノ粒子がブロック共重合体マトリックス内で形成され得る。
【実施例】
【0023】
(実施例1:DIPペンナノリソグラフィを用いたパターニング)
PEO−b−P2VPは、0.5%w/wの濃度の水溶液に溶かした。PEOの分子量は2.8kg/mol、PVPの分子量は1.5kg/molであった。HAuCl4・3H2Oが、P2VPと金の分子比2:1の溶液に加えられた。共重合体−金塩溶液を24時間撹拌した。12個のペンチップを持つDPNアレイ(イリノイ州スコーキー、NanoInk社から入手可能)をインク溶液に浸し、それから窒素で乾燥した。DPNの実験は、90μmのクローズドループスキャナおよび商業リソグラフィソフトウェアを備えたNscriptor system(NanoInk社)で行われた。インクチップを、ヘキサメチルジシラザン(HDMS)でコーティングされたSi/SiOxの表面に接触させた。均一なサイズのドットが、チップの滞留時間0.01秒、相対湿度70%で生成された。高湿度環境の下でPEOの輸送が容易となり、それによりPEO−b−P2VPが速やかに堆積することができる。当該プロセスは、合計約2分未満のパターニング時間の間に1600回繰り返され、図1Cに示すように、40x40のドットフィーチャーのアレイを生成した。フィーチャー間の距離は500nmであった。単一のペンで生成される代表的な20ドットラインの各フィーチャーの直径は、AFMトポグラフィの測定によると、約90nmで偏差は10%未満であった(図1D)。
【0024】
図2Aを参照すると、AuCl4-をポリマーミセルのコアに取り込むことで、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察に十分なZコントラストが提供され、バルク水溶液に球形のミセルが存在することを明らかにした。球形のミセルの直径は約2nmであった。PEO−b−P2VP/AuCl4-でインク化したペンアレイをサンプルの表面に接触させる時、チップの先端で形成されたメニスカスを通じてミセルが基板に運ばれた。その中で、チップによりブロック共重合体の局所濃度が高まったため、ピリジンユニット間で相互作用が生じ、その結果、図2Bに示すようなAuCl4-イオンが搭載された複数のミセルの融合が発生した。
【0025】
図3を参照すると、その後、パターンは酸素プラズマで還元され、その結果、凝集したミセル内に金ナノ粒子が形成された。周囲の重合体マトリックスは、酸素プラズマにより取り除かれ、Si基板上にサブ10nmの金ナノ粒子の四角形アレイを残した(図1E)。図4Aを参照すると、走査型電子顕微鏡使用法により、本方法において、11x8アレイに、各スポットに1つの金ナノ粒子を作成することが100%実現できたと示された。図4Bは形成されたパターンの異なる領域の400粒子のフィーチャーをレジストリ解析したものである。配分エラーは、ブロック共重合体フィーチャーの中心から粒子までの距離とフィーチャーの直径との比率であると定義されている。
【0026】
PEO−b−P2VP/AuCl4インクはまた、酸素プラズマ還元後に、50nmのSi34TEM膜上でパターン化された。図1Fを参照すると、TEM画像は、アレイの金ナノ粒子の直径の平均値は8.2nm±0.6nmであることを明らかにした。面心立法金の(111)面に対応する0.24nmの結晶格子を有する明瞭な格子縞であった。球形の金ナノ粒子は高結晶質であった。特徴のある電子回折パターンによっても、金ナノ粒子の単一結晶の性質であることを確認された(図1Fの挿入図を参照のこと)。
【0027】
(実施例2:フィーチャーのサイズを変える)
DPNの、時間依存型インクの輸送特性は、デポジットされたブロック共重合体のナノ反応器内で合成されたナノ材料のサイズを制御するのに容易な経路を提供することである。ブロック共重合体インクの拡散的特徴は、フィーチャーのサイズがチップと基板の接触時間に依存するという先の報告と類似していることが観察された。このDPNに基づくアプローチを利用して合成されたナノ粒子は、チップと基板の接触時間の平方根に直線的に依存する直径を有すると信じられている。
【0028】
図5Aを参照すると、DPNは、飽和湿度の環境で、直径が異なる金ナノ粒子を生成するために使われた。チップの滞留時間は、0.01、0.9、0.25、0.49、および0.81秒で、ナノ粒子生成のために使われた。ブロック共重合体マトリックスを取り除いていない、サイズの異なる金ナノ粒子が、図5Cおよび5Dで示されるように、SEMおよびTEM画像により確認された。DPNによりデポジットされたスポットサイズの直径の変動は、AMFトポグラフィの高さのプロファイルにより測定され(図5B)、図5Eでグラフにより概要が示された。スポットのサイズは、滞留時間が0.01秒〜0.81秒まで増加すると、約170nm〜約240nmまで増加し、線形成長率と平方根依存も同様であった。図5Eを参照すると、金粒子の直径が、チップ滞留時間の増加と共に約16nm〜約24nmまで増加したのを観察した。実際に行われた滞留の時間内で、親ブロック共重合体マトリックスのドットサイズと合成金ナノ粒子の直径の間は、約10の固定比率で線形近似関係であった。これは、DPNが生成するナノ粒子の直径が、直接パターン化されたオリジナルの材料の直径よりも10倍も小さくなったことを示しており、このことは、本開示の方法の実施形態が有意義に有利であることの表れである。
【0029】
図6を参照すると、金ナノ粒子もまた、PEO−b−P2VP/HAuCl4インクを使用し、滞留時間を変えることにより、異なるフィーチャーで合成された。当該フィーチャーは、DPNを使用し、滞留時間を25、16、9、4、および1秒とし、Si34基板上でパターン化された(図6の上から下まで)。酸素プラズマで還元後、単一の金ナノ粒子がブロック共重合体マトリックス内で形成された。図6の丸で囲まれたフィーチャーは、複数の金ナノ粒子が形成されたフィーチャーを示している。理論的制約を受けることを意図しなければ、ブロック共重合体のフィーチャーは十分大きく(例えば、直径約450nm)、1個以上の金ナノ粒子を最初にプリントされたフィーチャー内で形成することは可能であると信じられる。
【0030】
(実施例3:サブ5nmの金ナノ粒子のパターニング)
サブ5nmの金ナノ粒子は、合成ナノ反応器と同じブロック共重合体を使いつつ、塩濃縮を減少させることにより合成された。2−ビニルピリジンと金の分子比を4:1にするため、HAuCl4をPEO−b−P2VPミセル溶液に加えた。1日撹拌した後、ブロック共重合体−金塩インクにペンアレイを搭載した。その後、当該インクはSi34膜上でパターン化され、金還元のため酸素プラズマに暴露した。図8Aを参照すると、SEM画像が、サブ5nmの直径を有する金ナノ粒子のアレイの形成を示している。金ナノ粒子のサイズは、図8Cに示されているように、ZコントラストTEM画像を使って測定された。図8Bを参照すると、金ナノ粒子の直径の平均値は4.8nm±0.2nmで、偏差は4%であった。
【0031】
(実施例4:重合体ペンリソグラフィを用いたパターニング)
チップ間の間隔が80μmである、1cm2のポリマーペンアレイ(約15,000個のPDMSペン)を、2000rpmの速度で2分間スピンコーティングすることによりチップをPEO−b−P2VP/AuCl4インクでインク化した。湿度80%でパーク社のAFMプラットフォーム(XEP,韓国スウォン、パークシステムズ社)を利用して、ドット間の間隔が2μmである20x20のドットアレイを作成するために、PPLアレイの各ペンが使われた(図9A)。各ドットのデポジションの時間は0.5秒であった。こうして、約25万個のドット(400ドット/ペン)のアレイが、5分未満で生成された。図9Bを参照すると、ブロック共重合体マトリックスは、酸素プラズマにより取り除かれ、その結果、単一の金ナノ粒子のアレイが形成された。
【0032】
先に本発明の側面について記述し、例示したが、以下の請求項により定義される発明に限定されることを意図しない。本明細書に開示され、クレームされるすべての方法は、本開示の観点から過度の実験をすることなく開示され、クレームされるものである。本発明の材料及び方法については、特定の実施形態に関して記述されてきたが、当業者には、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の材料および/または方法、および方法のステップまたは一連のステップに諸変更を加え得ることは明白である。さらに具体的には、化学的にも物理的にも関連している特定の物質が、同じまたは類似の結果を達成しつつ、本明細書に記載の物質と置き換え得ることは明らかであろう。
【0033】
本明細書で引用したすべての特許、刊行物および参考文献は、よってここに参照により完全に含まれるものとする。本発明の開示と含まれた特許、刊行物および参考文献の間に対立が生じる場合は、本発明の開示が優先する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面上にサブミクロの大きさのナノ構造を形成する方法であって、
基板上にブロック共重合体およびナノ構造前駆体を含む、プリントされたフィーチャーを形成するために、ブロック共重合体およびナノ構造前駆体を含むインクでコーティングされたチップに基板を接触させることと、
直径(または線幅)が1μm未満であるナノ構造を形成するため、プリントされたフィーチャーのナノ構造前駆体を還元することを
含む、方法。
【請求項2】
ナノ構造の直径(または線幅)が10nm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ナノ構造の直径(または線幅)が5nm未満である、請求項1または2のいずれか1つに記載の方法。
【請求項4】
ブロック重合体マトリックスが、PEO−b−P2VP、PEO−b−P4VP、およびPEO−b−PAAから成る群から選択される、請求項1〜3のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
ブロック共重合体が、ナノ構造前駆体を濃縮する第一重合体およびインク輸送を促進する第二重合体を含む、請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
ナノ構造前駆体が金属塩を含む、請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
金属塩が、金、銀、プラチナ、パラジウム、鉄、カドミウム、およびその組み合わせと金属合金から成る群から選択される金属を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
金属塩が、HAuCl4、Na2PtCl4、CdCl2、ZnCl2、FeCl3、およびNiCl2から成る群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ブロック共重合体マトリックスがPEO−b−P2VPを含み、ナノ構造前駆体がHAuCl4を含み、およびインクには、P2VPと金が含まれ、その分子比が約1:1〜約10:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
プラズマ処理を行うことにより金属塩を還元することが含まれる、請求項1〜9のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
プラズマ処理が酸素プラズマ処理またはアルゴンプラズマ処理である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
複数のチップを含み、各チップがインクでコーティングされているチップアレイに基板を接触させることを含む、請求項1〜11のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
約0.01秒〜約30秒の間基板をチップに接触させることを含む、請求項1〜12のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
第一の接触時間の間基板を接触させ、さらにチップ、基板、または両方を移動させ、第二の接触時間の間接触ステップを反復することを含む、請求項1〜13のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
第一および第二の接触時間が異なる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
プリントされたフィーチャーが、その中に含有されたナノ構造前駆体を有するブロック共重合体マトリックスミセルを含む、請求項1〜15のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
プリントされたフィーチャーの直径(または線幅)が約20nm〜約1000nmである、請求項1〜16のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
プリントされたフィーチャーのナノ構造前駆体を還元した後、ブロック共重合体マトリックスを取り除くことをさらに含む、請求項1〜17のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
プラズマ処理を行うことによりブロック共重合体マトリックスを取り除くことが含まれる、請求項1〜18のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
ナノ構造がナノ粒子である、請求項1〜19のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
チップがディップペンナノリソグラフィ用のチップである、請求項1〜20のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
チップがカンチレバー上に配される、請求項1〜21のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
チップが原子間力顕微鏡のチップである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
共通の基板レイヤに固定された複数のチップを含むチップアレイの少なくとも1つのチップに基板を接触させ、チップと共通基板レイヤがエラストマー重合体またはエラストマーゲル重合体から形成され、およびチップの曲率半径が約1μm未満であることを含む、請求項1〜20のうちいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
基板表面上にサブミクロの大きさのナノ粒子を形成する方法であって、
PEO−b−P2VPを含み、および金属塩を含有するミセルを含むプリントされたフィーチャーを形成するために、PEO−b−P2VPおよび金属塩を含むインクでコーティングされたチップに基板を接触させることと、
直径が1μm未満であるナノ粒子を形成するために、プリントされたフィーチャーの金属塩を還元することを
含む、方法。

【図1A】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図1B】
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【図4B】
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【図5E】
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【図8C】
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【公表番号】特表2013−512790(P2013−512790A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542183(P2012−542183)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/058715
【国際公開番号】WO2011/068960
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(500041019)ノースウェスタン ユニバーシティ (24)
【Fターム(参考)】