説明

プライマーの設計及び表示方法及び装置

【課題】 プライマーの設計対象となるコンセンサス配列を容易に表示することができる技術を提供することにある。
【解決手段】
解析対象の配列データにおいて、塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントを実行し塩基配列のコンセンサス配列を作成し、アミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントを実行しアミノ酸配列のコンセンサス配列を作成し、該アミノ酸配列のコンセンサス配列を逆翻訳することによって塩基配列のコンセンサス配列を作成する。即ち、アミノ酸配列を基準にしたコンセンサス配列とアミノ酸配列を基準にしたコンセンサス配列の2つのコンセンサス配列を作成する。プライマーの設計パラメータの入力画面では、プライマーの標的として2つのコンセンサス配列の一方を選択することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCR(polymerase chain reaction)用プライマーの設計及び表示方法及び装置に関し、特に、縮重を含むプライマーの設計及び表示方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学の分野では、ゲノムプロジェクトによって生物の遺伝子の塩基配列が明らかになっているが、すべての生物種において遺伝子の塩基配列を決定したわけではない。これらのプロジェクトが進んでいない生物種の研究では、研究者単位で遺伝子ライブラリを作成し独自の解析を進める方法が一般的である。目的となる未知遺伝子もしくは未知機能タンパク質が明確であり、同生物種の同族体遺伝子(=同じ働きをする遺伝子)が既知である場合や、類縁生物種で目的遺伝子もしくは目的タンパク質で研究が進んでいる場合には、それらを比較(=マルチプルアラインメント)し、進化的に保存されている領域もしくは変化が少ないと考えられる領域を抽出することにより、PCRで増幅することができる。
【0003】
一般的にタンパク質の機能はアミノ酸残基の位置関係、距離(=高次構造)によって実現されている。同様の進化を辿ってきた類縁生物種では、機能タンパク質も同様の機構を持つ可能性が高く、機能に必要なアミノ酸残基の種類および高次構造は変化していない可能性が高い。この知見を基に、タンパク質のアミノ酸配列を比較し、共通する配列(=変化しない配列、以下コンセンサス配列と表記する。)から予測(逆翻訳)した塩基配列を基にPCRプライマーを設計し未知の遺伝子を増幅する手法が知られている。しかし、塩基が4種類なのに対し、基本アミノ酸は20種あることから、塩基とアミノ酸の対応は一対一ではない。実際には生物がDNAからタンパク質を合成する際は、3塩基(=コドン)と1アミノ酸を対応(64対20)させており、1つのアミノ酸から予測できるコドンは1から6種類であり、アミノ酸によって異なる。この概念を縮重という。
【0004】
図11に示すように、一つのアミノ酸から予測できる塩基はいくつかの組み合わせをもち、配列全体を完全に特定することはできない。アミノ酸配列から予測した塩基配列を標的としたプライマーを設計することは難しい。しかし、生物種により使用するコドンに偏りがあることから、塩基配列を比較することによってある程度絞り込むことができる。このようなプライマーを設計する際は、アミノ酸配列の比較結果と塩基配列の比較結果を総合的に判断し、プライマーを設計する方法が有効である。既存の製品でもマルチプルアラインメントの結果を基にプライマーを設計するプログラム(Bioinformatics. 2004 Jul 10;20(10):1644-5)は存在するが、塩基配列の比較結果とアミノ酸配列の比較結果を対照することはできない。そのため、アミノ酸配列を基準にしたコンセンサス配列と塩基配列を基準にしたコンセンサス配列が容易に比較でき、簡単にプライマーを設計する装置の開発が望まれる。
【0005】
特許文献1には、複製すべき遺伝子の塩基配列における変異又は多型の位置に関する情報を取得し、それによってプライマーの情報を自動的に生成する方法が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003-210175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プライマーの設計及び表示装置に望まれる機能として、以下の課題が挙げられる。
1.公共データベースなどの一般的なファイルから遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を抽出できること。
2.塩基配列間のマルチプルアラインメントによって塩基配列のコンセンサス配列を作成できること。
3.アミノ酸配列間のマルチプルアラインメントによってアミノ酸配列のコンセンサス配列を作成でき、それを逆翻訳することにより予測される塩基配列のコンセンサス配列を作成できること。
4.塩基配列間のマルチプルアラインメントによって得られたコンセンサス配列とアミノ酸配列間のマルチプルアラインメントによって得られたコンセンサス配列を同一画面にて対照して表示でき、それをユーザが比較できること。
5.ユーザがプライマーを設計する対象を自由に選択できること。
6.設計したプライマーの情報を明確に表示できること。
【0008】
課題1、2、3、6は既存の装置および方法でも実現可能であるが、課題4、5を含めて、すべての条件を満たした装置および方法は存在しない。
【0009】
本発明の目的は、数種類の既知の類似機能遺伝子の塩基配列もしくはアミノ酸配列を比較し、コンセンサス配列を作成し、コンセンサス配列を標的としたPCRプライマーを設計する方法において、塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントによる塩基配列のコンセンサス配列とアミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントによるアミノ酸配列のコンセンサス配列の逆翻訳により得られた塩基配列のコンセンサス配列を比較することができ、プライマーの設計対象となるコンセンサス配列を容易に表示することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、解析対象の配列データにおいて、塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントを実行し塩基配列のコンセンサス配列を作成し、アミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントを実行しアミノ酸配列のコンセンサス配列を作成し、該アミノ酸配列のコンセンサス配列を逆翻訳することによって塩基配列のコンセンサス配列を作成する。即ち、アミノ酸配列を基準にしたコンセンサス配列とアミノ酸配列を基準にしたコンセンサス配列の2つのコンセンサス配列を作成する。これらの2つのコンセンサス配列を同一画面に表示する。
【0011】
プライマーの設計パラメータの入力画面では、プライマーの標的として2つのコンセンサス配列の一方を選択することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントによる塩基配列のコンセンサス配列とアミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントによるアミノ酸配列のコンセンサス配列の逆翻訳により得られた塩基配列のコンセンサス配列を比較することができると同時に、プライマーの設計対象となるコンセンサス配列を容易に表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施する場合の一形態を、図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施の一形態のプライマー設計及び表示装置の構成を示すブロック図である。本例のプライマー設計及び表示装置は、遺伝子の塩基配列及びタンパク質のアミノ酸配列を含む配列データ、マルチプルアラインメントの結果(コンセンサス配列)、プライマーの設計に必要なパラメータおよび、設計したプライマーの情報を表示するための表示装置(101)、配列データ、マルチプルアラインメントのパラメータおよびプライマーの設計のパラメータに関与する情報を入力するためのキーボード(102)およびマウス(103)の入力手段、中央処理装置(104)、中央処理装置(104)での処理に必要なプログラムを格納するプログラムメモリ(105)を有する。
【0014】
プログラムメモリ(105)には、計算プログラム(106)、及び、描画プログラム(107)が格納されている。計算プログラム(106)は、マルチプルアラインメント法によりコンセンサス配列を作成するコンセンサス配列作成部(108)およびプライマーを設計するプライマー設計部(109)を含む。
【0015】
描画プログラム(107)は、配列データを表示する画面(図2)を描画及び表示する配列データ表示部(111)、マルチプルアラインメントのパラメータを入力するための画面(図3)を描画及び表示するマルチプルアラインメントパラメータ入力画面表示部(112)、塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果を表示する画面(図4)を描画及び表示する塩基配列マルチプルアラインメント結果表示部(113)、アミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果を表示する画面(図5)を描画及び表示するアミノ酸配列マルチプルアラインメント結果表示部(114)、プライマーの設計パラメータを入力するための画面(図6)を描画及び表示するプライマー設計パラメータ入力画面表示部(115)、プライマーの設計結果を表示する画面(図7)を描画及び表示するプライマー設計結果表示部(116)、及び、プライマーの設計結果の詳細情報を表示する画面(図8)を描画及び表示するプライマー設計結果詳細情報表示部(117)を有する。
【0016】
プライマー設計及び表示装置は、公共のデータベース等の配列データファイル(100)から遺伝子の塩基配列及びアミノ酸配列を含む配列データを入手し、作成したプライマーをプライマー情報ファイル(118)に保存する。
【0017】
図2は、遺伝子の塩基配列及びタンパク質のアミノ酸配列を含む配列データを表示する画面の例を示す。この画面は、描画プログラム(107)の配列データ表示部(111)によって、描画される。この画面は、配列名(200)、塩基配列(201)、アミノ酸配列(202)、処理を中止するボタン(203)、配列データを追加するためのボタン(204)およびマルチプルアラインメントを実行するためのボタン(205)を有する。
【0018】
プライマー設計及び表示装置が起動され、描画プログラム(107)が起動されると、表示装置(101)に、この画面が表示されるが、初期画面では配列データ(200)(201)(202)は表示されない。配列データを表示するには、配列データを入力する必要がある。ユーザが追加ボタン(204)を押下すと、配列データファイル(100)のリストを含むファイルダイアログが表示される。ユーザが、配列データファイル(100)を選択すると、選択された配列データファイルから配列名、塩基配列、アミノ酸配列が抽出され、それが表示される。
【0019】
ユーザは、解析対象である未知遺伝子又は未知機能タンパク質に対して同生物種又は類縁生物種の同族体遺伝子又はタンパク質の既知の配列データを検索し、選択する。塩基配列3文字とアミノ酸配列1文字が対応しており、塩基配列3文字ごとの1文字目とアミノ酸配列の1文字は、位置をそろえて表示される。入力データが塩基配列と転写産物の情報を持つ場合、アミノ酸配列は、塩基配列の翻訳領域と一致するように表示され、非翻訳領域およびイントロン部分に対応するアミノ酸配列には「X」が表示される。配列データは、繰り返し追加することができ、新しい配列データは、先に入力した配列データの下に表示される。
【0020】
マルチプルアラインメントを実行するためのボタン(205)は、この画面に少なくとも2以上の配列データが表示されている場合に有効である。ボタン(205)を押下すると、マルチプルアラインメントのパラメータを入力するための画面(図3)が表示される。
【0021】
図3は、マルチプルアラインメントのパラメータを入力するための画面の例を示す。この画面は、描画プログラム(107)のマルチプルアラインメントパラメータ入力画面表示部(112)によって、描画される。この画面は、解析対象の配列を選択するグループ(300)、コンセンサス配列を作成するときの条件又は方法を指定するグループ(301)、マルチプルアラインメントの詳細パラメータを設定するためのボタン(307)、処理を中止するためのボタン(308)およびマルチプルアラインメントを実行するためのボタン(309)を有する。解析対象の配列を選択するグループ(300)は、塩基配列を指定するラジオボタン(302)とアミノ酸配列を指定するラジオボタン(303)を有する。コンセンサス配列を作成するときの条件又は方法を指定するグループ(301)は、完全に一致した文字のみから作成することを指定するラジオボタン(304)と、多数決で作成することを指定するラジオボタン(305)と、複合コードを使用して作成することを指定するラジオボタン(306)を有し、3個より1つを選択することができる。解析対象の配列としてアミノ酸配列を指定している場合は、複合コードを使用するラジオボタン(306)は、無効になっており、選択できない。
【0022】
必要な場合は、先ず、ボタン(307)を押下し、マルチプルアラインメントの詳細なパラメータを設定する。グループ(300)のラジオボタン(302)又はラジオボタン(303)を選択し、グループ(301)のうち1つを選択する。次に、マルチプルアラインメントを実行するためのボタン(309)を押下すると、コンセンサス配列作成部(108)が実行される。塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントとアミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントが実行される。ラジオボタン(302)を選択した場合は、塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果が図4に示す画面に表示される。ラジオボタン(303)を選択した場合は、アミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果が図5に示す画面に表示される。ラジオボタン(302)を選択して、ボタン(309)を押下すると、塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントが実行され、その結果は図4に示す画面に表示される。ラジオボタン(303)を選択して、ボタン(309)を押下すると、アミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントが実行され、その結果は図5に示す画面に表示される。
【0023】
図4は、塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果を表示する画面の例を示す。この画面は、描画プログラム(107)の塩基配列マルチプルアラインメント結果表示部(113)によって、描画される。この画面は、スプリッタ(400)によって上下に分割され、上側には、図2の画面の配列データが表示され、下側には、塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果である塩基配列のコンセンサス配列(401)が表示される。尚、この画面には、アミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果であるアミノ酸配列のコンセンサス配列(402)、および、アミノ酸配列のコンセンサス配列の逆翻訳により得られた塩基配列(403)も同時に表示される。逆翻訳により得られた塩基配列は、アミノ酸配列のコンセンサス配列から予測される塩基配列である。上側の配列データの塩基配列と下側の塩基配列のコンセンサス配列(401)の一致する文字は、強調表示(410)されている。
【0024】
この画面は、更に、処理を中止するためのボタン(404)、前画面に戻るためのボタン(405)、プライマーの設計を実行するためのボタン(406)、および、表示を切り替えるためのグループ(407)を有する。
【0025】
表示を切り替えるためのグループ(407)は、塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果を表すラジオボタン(408)とアミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果を表すラジオボタン(409)を有する。図4の画面では、ラジオボタン(408)が選択されており、従って、塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果を表示する画面が表示されている。ラジオボタン(409)を選択すると、アミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果を表示する画面(図5)が表示される。
【0026】
本例では、画面の下側に、塩基配列を基準にしたコンセンサス配列(401)とアミノ酸配列を基準にしたコンセンサス配列(403)の両者が表示されるからユーザは両者を比較することができる。ユーザは、両者を比較し、どちらの配列に対してプライマーを設計するかを選択することができる。塩基配列を基準にしたコンセンサス配列(401)に対してプライマーを設計する場合には、プライマー設計ボタン(406)を押下する。それにより、プライマーの設計パラメータを入力するための画面(図6)が表示される。コンセンサス配列を1塩基以上選択した状態で、プライマーの設計ボタン(406)を押下した場合は、PCR増幅産物が、選択した領域を含むようにプライマーを設計する。選択しなかった場合は、配列全体を対象として、プライマーを設計する。
【0027】
アミノ酸配列を基準にしたコンセンサス配列(403)に対してプライマーを設計する場合には、ラジオボタン(409)を押下する。それによって、アミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果を表示する画面(図5)が表示される。
【0028】
図5は、アミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果を表示する画面の例を示す。この画面は、描画プログラム(107)のアミノ酸配列マルチプルアラインメント結果表示部(114)によって、描画される。この画面は、スプリッタ(500)によって上下に分割され、上側には、図2の画面の配列データが表示され、下側には、アミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果であるアミノ酸配列のコンセンサス配列(502)、および、アミノ酸配列のコンセンサス配列の逆翻訳により得られた塩基配列(503)が表示される。逆翻訳により得られた塩基配列は、アミノ酸配列のコンセンサス配列から予測される塩基配列である。尚、この画面には、塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果である塩基配列のコンセンサス配列も同時に表示される。上側の配列データのアミノ酸配列と下側のアミノ酸配列のコンセンサス配列(502)の一致する文字は、強調表示(510)されている。
【0029】
この画面は、更に、処理を中止するためのボタン(504)、前画面に戻るためのボタン(505)、プライマーの設計を実行するためのボタン(506)、および、表示を切り替えるためのグループ(507)を有する。これらのボタン(504)(506)(506)及びグループ(507)の機能は、図4の画面のボタン(404)(405)(406)、および、グループ(407)の機能と同一である。
【0030】
図6は、プライマーの設計のパラメータを入力するための画面の例を示す。この画面は、描画プログラム(107)のプライマー設計パラメータ入力画面表示部(115)によって、描画される。本例の画面は、プライマーの設計の標的であるコンセンサス配列を指定するグループ(600)、プライマーの条件を入力するグループ(603)、PCR産物の条件を入力するグループ(604)、処理を中止するためのボタン(605)および、処理を実行するためのボタン(606)を有する。プライマーの設計の標的であるコンセンサス配列を指定するグループ(600)は、塩基配列を基準にしたコンセンサス配列を選択するラジオボタン(601)およびアミノ酸配列を基準にしたコンセンサス配列の逆翻訳により得られた塩基配列を選択するラジオボタン(602)を有する。
【0031】
プライマーの設計の標的として、図4に示す、塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果であるコンセンサス配列を選択する場合には、ラジオボタン(601)を押下し、図5に示す、アミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果であるコンセンサス配列を選択する場合には、ラジオボタン(602)を押下する。
【0032】
2つのラジオボタン(601)(602)の一方を選択し、処理を実行するためのボタン(606)を押下すると、プライマー設計部(109)が実行される。プライマー設計部(109)は、ユーザが指定したコンセンサス配列に対して、入力した条件又は方法でプライマーの設計処理を行う。プライマーの設計結果は、図7の画面に表示される。
【0033】
図7は、プライマーの設計結果を表示する画面の例を示す。この画面は、描画プログラム(107)のプライマー設計結果表示部(116)によって、描画される。この画面は、スプリッタによって上下に分割され、上側には、図2の画面の配列データが表示され、下側には、プライマーの設計の標的であるコンセンサス配列とプライマーの位置情報を表す矢印の表示(700)が表示される。矢印(700)は、コンセンサス配列に対応した位置に配置されている。プライマーは、通常、一つのセンス鎖側のプライマーと複数のナンセンス鎖側のプライマーを1プライマーセットとして扱う。以下に、1プライマーセットを単に、プライマーという。
【0034】
この画面は、更に、処理を終了するためのボタン(701)、前画面に戻るためのボタン(702)および、プライマーの設計結果の詳細情報を表示するためのボタン(703)を有する。プライマーの位置情報を表す矢印(700)を選択した状態で、詳細表示ボタン(703)を押下すると、プライマーの設計結果の詳細情報を表示する画面(図8)が表示される。処理を終了するためのボタン(701)を押下すると、処理が終了し、すべてのウィンドウが閉じられる。
【0035】
図8は、プライマーの設計結果の詳細情報を表示する画面の例を示す。この画面は、描画プログラム(107)のプライマー設計結果詳細情報表示部(117)によって、描画される。この画面は、プライマーの設計の標的であるコンセンサス配列(800)、プライマーの位置情報を表す矢印(801)、プライマーの詳細情報(802)、ウィンドウを閉じるためのボタン(803)および、結果を出力するためのボタン(804)を有する。
【0036】
プライマーの設計の標的であるコンセンサス配列(800)は、常に、その全体がウィンドウ内に表示されるように、そのサイズが制御される。プライマーの設計の標的であるコンセンサス配列の対応する位置にプライマーの位置情報を表す矢印(801)が配置されている。プライマーの位置情報を表す矢印(801)は、図7の画面にて選択されているプライマーのみが表示される。図7の画面にて、他のプライマーを選択すると、選択されたプライマーの情報が表示される。図7の画面にて、プライマーを選択していない場合は、全てのプライマーの情報を表示する。出力ボタン(804)を押下すると、表示中のプライマー情報がタブ区切りでファイル(115)として出力される。ウィンドウを閉じるためのボタン(803)を押下すると、ウィンドウは閉じられ、図7の画面に戻る。
【0037】
図9を参照して本発明によるコンセンサス配列の作成、プライマーの設計及び表示処理の概略を説明する。ステップ(900)にて、描画プログラム(107)が起動し、配列データを表示する画面(図2)を描画及び表示する配列データ表示部(111)が起動し、ステップ(901)にて、表示装置(101)に図2の画面が表示される。ステップ(902)にて、配列データを入力する。ユーザが、図2の画面の追加ボタン(204)を押下すと、配列データファイル(100)のリストを含むファイルダイアログが表示される。ユーザは、配列データファイル(100)を選択する。ステップ(903)にて、選択された配列データファイル(100)から配列データを抽出し、配列データを表示する画面(図2)の配列データ(201)(202)に表示する。ステップ(904)にて、ユーザは、配列データを追加する場合には、再度データ追加ボタン(204)を押下する。この場合、ステップ(902)、(903)の処理を繰り返し行う。ユーザは、配列データを追加しない場合には、マルチプルアラインメント実行ボタン(206)を押下する。それによりステップ(905)に進み。マルチプルアラインメントのパラメータを入力するための画面(図3)を描画及び表示するマルチプルアラインメントパラメータ入力画面表示部(112)が起動する。
【0038】
ステップ(905)にて、図3の画面を表示する。ステップ(906)にて、図3の画面にて、マルチプルアラインメントのパラメータを入力する。このパラメータには、解析対象の配列データ、コンセンサス配列を作成する際の条件又は方法等がある。ステップ(907)にて、入力されたパラメータに従ってマルチプルアラインメント処理を実行する。マルチプルアラインメント処理は、コンセンサス配列作成部(108)によって実行され、その結果が表示されるが、その詳細は図10で述べる。ユーザがプライマーの設計ボタン(406)を押下すると、ステップ(908)にて、図6の画面を表示する。
【0039】
ステップ(909)にて、ユーザは、図6の画面にて、プライマーの設計パラメータを入力する。ステップ(910)にて、プライマー設計部(109)は、入力されたパラメータに基づき、プライマーに適した配列を検索する。ステップ(911)にて、図7の画面を表示し、プライマーの設計の結果を表示する。
【0040】
ユーザが詳細表示ボタン(803)を押下した場合は、ステップ(912)にて、図8の画面を表示し、結果をファイル出力する。本例では縮重を含むプライマーを得ることができる。
【0041】
図10を参照してマルチプルアラインメント処理を説明する。この処理は、図9のステップ(907)の処理であり、コンセンサス配列作成部(108)によって実行される。ステップ(1000)にて、コンセンサス配列作成部(108)を起動し、ステップ(1001)にて、解析対象である複数の配列データおよびパラメータを読み込む。ステップ(1002)にて、入力された塩基配列に対してマルチプルアラインメントを実行する。ステップ(1003)にて、入力されたアミノ酸配列に対してもマルチプルアラインメントを実行する。ステップ(1004)にて、パラメータに設定されているコンセンサス配列の条件又は方法を判定する。
【0042】
「Perfect Match」を選択している場合は、ステップ(1005)にて、マルチプルアラインメントの結果で対応する位置の配列がすべて同じ文字である場合のみコンセンサス配列とし、それ以外には“N”を用いる。「Partial Match」を選択している場合は、ステップ(1006)にて、マルチプルアラインメントの結果で対応する位置の配列でもっとも多い文字をコンセンサス配列とし、同数の場合は“N”を用いる。「Ambiguity Code」を選択している場合は、ステップ(1007)にて、マルチプルアラインメントの結果で対応する位置の配列から複合コードを使ってコンセンサス配列を作成する。
【0043】
ステップ(1008)にて、図3にて入力された解析対象の配列データおよびパラメータを読み込む。
【0044】
解析対象が塩基配列(302)の場合は、ステップ(1009)にて、塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果である塩基配列のコンセンサス配列(401)(501)を表示する。
【0045】
解析対象がアミノ酸配列(303)の場合は、ステップ(1010)にて、アミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果であるアミノ酸配列のコンセンサス配列(402)(502)を表示する。
【0046】
ステップ(1011)にて、アミノ酸配列のコンセンサス配列(502)の逆翻訳により求めた塩基配列のコンセンサス配列(403)(503)を表示する。ステップ(1012)にて、コンセンサス配列に対応する文字を強調表示(410)(510)する。
【0047】
図11はアミノ酸配列を示す文字と塩基配列を示す文字の対応を説明する図である。この図には、アミノ酸の3文字とそれに対応するコドン(塩基3文字)が示されている。[ ]内はアミノ酸の1文字表記を示す。( )内はコドンの縮重を考慮し、複合コードで示したアミノ酸配列の逆翻訳により得られた塩基配列である。
【0048】
以上、本発明の例を説明したが、本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明によるプライマー設計及び表示装置の構成を示す図である。
【図2】配列データを表示する画面の例を示す図である。
【図3】マルチプルアラインメントのパラメータを入力するための画面の例を示す図である。
【図4】塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果を表示する画面の例を示す図である。
【図5】アミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果を表示する画面の例を示す図である。
【図6】プライマーの設計パラメータを入力するための画面の例を示す図である。
【図7】プライマーの設計結果を表示する画面の例を示す図である。
【図8】プライマーの設計結果の詳細情報を表示する画面の例を示す図である。
【図9】本発明によるコンセンサス配列作成、プライマーの設計及び表示処理の概略を示した図である。
【図10】マルチプルアラインメント処理を示した図である。
【図11】アミノ酸配列の文字と塩基配列の文字の対応を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
100…配列データファイル 101…表示装置 102…キーボード 103…マウス 104…中央処理装置 105…プログラムメモリ 106…計算プログラム 107…描画プログラム 108…コンセンサス配列作成部 109…プライマー設計部 111…配列データ表示部 112…マルチプルアラインメントパラメータ入力画面表示部 113…塩基配列マルチプルアラインメント結果表示部 114…アミノ酸配列マルチプルアラインメント結果表示部 115…プライマー設計パラメータ入力画面表示部 116…プライマー設計結果表示部 117…プライマー設計結果詳細情報表示部 118…プライマー情報ファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解析対象の配列データを取得する配列データ取得ステップと、
入力手段を介してマルチプルアラインメントの条件を入力するマルチプルアラインメント条件入力ステップと、
演算手段を介して上記マルチプルアラインメントの条件に従って上記解析対象の配列データにおいて塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントを実行し第1の塩基配列のコンセンサス配列を作成する第1のコンセンサス配列作成ステップと、
演算手段を介して上記マルチプルアラインメントの条件に従って上記解析対象の配列データにおいてアミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントを実行しアミノ酸配列のコンセンサス配列を作成し、該アミノ酸配列のコンセンサス配列を逆翻訳することによって第2の塩基配列のコンセンサス配列を作成する第2のコンセンサス配列作成ステップと、
表示手段を介して上記第1の塩基配列のコンセンサス配列と上記第2の塩基配列のコンセンサス配列を同一画面にて表示するコンセンサス配列表示ステップと、
入力手段を介してプライマーの設計パラメータを入力するプライマー設計パラメータ入力ステップと、
演算手段を介して上記プライマーの設計パラメータに従って上記第1又は第2の塩基配列のコンセンサス配列に対するプライマーの設計を行うことと、
表示手段を介してプライマーの設計結果を表示するプライマーの設計結果表示ステップと、
を含むプライマー設計及び表示方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプライマー設計及び表示方法において、上記コンセンサス配列表示ステップは、
表示手段を介して上記第1の塩基配列のコンセンサス配列と上記解析対象の配列データの塩基配列を表示し且つ両者の一致する文字を強調して表示し、更に、上記第2の塩基配列のコンセンサス配列を表示する第1のコンセンサス配列画面を表示するステップと、
表示手段を介して上記アミノ酸配列のコンセンサス配列と上記解析対象の配列データのアミノ酸配列を表示し且つ両者の一致する文字を強調して表示し、更に、上記第1の塩基配列のコンセンサス配列を表示する第2のコンセンサス配列画面を表示するステップと、
を含み、入力手段を介して入力した命令に従って上記第1のコンセンサス配列画面と上記第2のコンセンサス配列画面を相互に切り替えて表示することができることを特徴とするプライマー設計及び表示方法。
【請求項3】
請求項1に記載のプライマー設計及び表示方法において、上記配列データ取得ステップは、
既存のデータベースに格納されている配列データファイルより、解析対象の配列データを読み出すことと、
表示手段を介して上記配列データに含まれる配列名、遺伝子の塩基配列、及び、タンパク質のアミノ酸配列を表示することと、
を含むことを特徴とするプライマー設計及び表示方法。
【請求項4】
請求項1に記載のプライマー設計及び表示方法において、マルチプルアラインメント条件入力ステップは、
表示手段を介してマルチプルアラインメントのパラメータを入力するためのマルチプルアラインメントパラメータ入力画面を表示することと、
入力手段を介して上記マルチプルアラインメントパラメータ入力画面にて選択されたマルチプルアラインメントのパラメータを入力することと、
を含むことを特徴とするプライマー設計及び表示方法。
【請求項5】
請求項1に記載のプライマー設計及び表示方法において、プライマー設計パラメータ入力ステップは、
表示手段を介してプライマーの設計を行う対象として上記2つの塩基配列のコンセンサス配列の一方を選択するための表示とプライマーの設計条件を入力するための表示を含むプライマー設計条件入力画面を表示することと、
入力手段を介して上記プライマー設計条件入力画面にて選択されたプライマーの設計条件を入力することと、
を含むことを特徴とするプライマー設計及び表示方法。
【請求項6】
請求項1に記載のプライマー設計及び表示方法において、上記プライマーの設計結果表示ステップは、
表示手段を介して上記プライマーが上記配列データの対応する位置に配置されるように上記解析対象の配列データと上記プライマーを同一画面にて表示すること、
を含むことを特徴とするプライマー設計及び表示方法。
【請求項7】
請求項1に記載のプライマー設計及び表示方法において、更に、入力手段を介して上記プライマーの設計結果の1つが選択されたとき、表示手段を介して上記選択されたプライマーの塩基配列を含む詳細情報を表示すること、
を含むことを特徴とするプライマー設計及び表示方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項の方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータによって読み取り可能なプログラム。
【請求項9】
データ及び命令を入力するための入力手段と、プログラムを格納するプログラムメモリと、上記プログラムを実行するための中央処理装置と、設計したプライマーを表示するための表示装置と、を有するプライマー設計及び表示装置において、
上記プログラムは、マルチプルアラインメント法によりコンセンサス配列を作成するコンセンサス配列作成部とプライマーを設計するプライマー設計部を含み、上記コンセンサス配列作成部は、上記入力手段によって入力された解析対象の配列データとマルチプルアラインメントの条件に従って塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントを実行して第1の塩基配列のコンセンサス配列を作成し、アミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントを実行しアミノ酸配列のコンセンサス配列を作成し、該アミノ酸配列のコンセンサス配列を逆翻訳することによって第2の塩基配列のコンセンサス配列を作成し、上記2つの塩基配列のコンセンサス配列を含む画面を上記表示装置にて表示することを特徴とするプライマー設計及び表示装置。
【請求項10】
請求項9に記載のプライマー設計及び表示装置において、上記入力手段からの切り替え入力に基づいて、上記表示装置は、上記第1の塩基配列のコンセンサス配列と解析対象の配列データの塩基配列を表示し且つ両者の一致する文字を強調して表示し、更に、上記第2の塩基配列のコンセンサス配列を表示する第1のコンセンサス配列画面と、上記アミノ酸配列のコンセンサス配列と上記解析対象の配列データのアミノ酸配列を表示し且つ両者の一致する文字を強調して表示し、更に、上記第1の塩基配列のコンセンサス配列を表示する第2のコンセンサス配列画面と、を相互に切り替えて表示することを特徴とするプライマー設計及び表示装置。
【請求項11】
請求項9に記載のプライマー設計及び表示装置において、上記プライマー設計部は、上記入力手段によって入力されたプライマーの設計条件に従って上記2つの塩基配列のコンセンサス配列の一方のコンセンサス配列に対してプライマーの設計を行い、設計したプライマーを上記表示装置に表示することを特徴とするプライマー設計及び表示装置。
【請求項12】
請求項9に記載のプライマー設計及び表示装置において、上記プログラムは、配列データを表示する画面を描画及び表示するプログラム、上記配列データにおいて塩基配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果を表示する画面を描画及び表示するプログラム、上記配列データにおいてアミノ酸配列を基準にしたマルチプルアラインメントの結果を表示する画面を描画及び表示するプログラム、プライマーの設計パラメータを入力するための画面を描画及び表示するプログラム、及び、プライマーの設計結果を表示する画面を描画及び表示するプログラムを有することを特徴とするプライマー設計及び表示装置。
【請求項13】
請求項12に記載のプライマー設計及び表示装置において、上記プログラムは、更に、マルチプルアラインメントのパラメータを入力するための画面を描画及び表示するプログラム、プライマーの設計パラメータを入力するための画面を描画及び表示するプログラム、及び、プライマーの設計結果の詳細情報を表示する画面を描画及び表示するプログラムを有することを特徴とするプライマー設計及び表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−158287(P2006−158287A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354063(P2004−354063)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】