説明

プライヤー

【課題】釣糸その他の細い線状体であっても確実に切断刃で挟み込んで切断できるプライヤーの提供。
【解決手段】このプライヤー10は、一対のハンドル11、12を有する。各ハンドル11、12はボス部19、20を備えており、これらに切断刃17、18を有する顎部15、16が設けられている。ボス部19、20は対向しており、ボス部19の一部に凹溝21が形成されている。凹溝21は、ボス部19の外周縁に沿って延びる凹条からなる。切断刃17、18の一端部24、25が凹溝21に進入しており、ラビリンス通路23が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線、パイプその他の対象物を挟持し切断するプライヤーの構造、特にスプリットリングの開放や釣糸の切断等に使用される釣用プライヤーの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プライヤーは、対象物を挟んだり、切断したりする道具として広く使用されている。魚釣りにおいても、プライヤーは釣針を挟んだり、スプリットリングを拡げたり、釣糸を切断したりする際に使用されている。
【0003】
プライヤーは、一般に一対のハンドルを有する。一対のハンドルは互いに交差するように配置されており、各ハンドルの中間部が支軸によって回動自在にジョイントされている。各ハンドルの先端部は対象物を挟持ないし切断する顎部を構成しており、作業者(釣人)が各ハンドルの他端側を握ることによって上記顎部が閉じるようになっている。また、対象物を確実に把持するための歯が各顎部の内側に形成されており、各顎部の根本付近(上記支軸の近傍)に対象物を切断するための刃が設けられている。そして、従来のプライヤーは、スプリットリングを容易に開放するための改良や、釣糸を誤って切断してしまうことを防止するための改良が施されている(たとえば、特許文献1〜特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−262795号公報
【特許文献2】特開2001−346491号公報
【特許文献2】特開2000−245320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実釣では、釣人はプライヤーを用いて釣糸を頻繁に切断する。釣人は、釣糸を上記刃が設けられた部位に配置し、上記各ハンドルを握る。これにより、釣糸は一対の刃によって挟み込まれ、切断される。
【0006】
ところで、上記一対の刃は、それぞれ上記各ハンドルに設けられるが、一方のハンドルに設けられた刃は他方のハンドルに対して相対的にスライドし、他方のハンドルに設けられた刃は一方のハンドルに対して相対的にスライドする。そのため、一対の刃と一対の顎部の根本との間に一定の隙間が形成されなければならない。
【0007】
しかし、この隙間が形成されることによって、釣人が釣糸を切断する際に当該釣糸が上記隙間に入り込むことがある。そのような場合、釣人が各ハンドルを握っても一対の刃が釣糸を挟み込むことができず、当該釣糸は切断されない。対象物が細径の釣糸である場合はなおさらである。
【0008】
そこで、本発明の目的は、釣糸その他の細い線状体であっても確実に切断することができるプライヤーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明に係るプライヤーは、連結支軸が挿通される挿通孔を有するボス部、当該ボス部に連続して当該ボス部の径方向一の向きに突出するように形成された顎部及び上記ボス部に連続して上記ボス部の径方向他の向きに突出するように形成された操作部をそれぞれ有する一対のハンドルを備える。このプライヤーは、上記挿通孔の中心軸が一致するように上記ボス部同士が軸方向に対向配置された状態で上記連結支軸が上記各挿通孔に嵌合されることによって上記一対のハンドルが上記連結軸を中心に回動自在に連結され、上記各操作部が上記連結軸を中心に回動して互いに接離すると上記顎部も互いに接離するようになっている。そして、上記各ボス部と上記各顎部との境界部位に線状体を挟んで切断する切断刃が設けられている。当該切断刃の一端部が上記一方のボス部に設けられた上記径方向に凹んだ凹部に進入することによってラビリンス通路が形成されている。
【0010】
この構成によれば、切断刃の一端部がボス部に設けられた凹部に進入することにより、上記ラビリンス通路が形成されている。したがって、当該プライヤーによって線状体(典型的には釣糸)が切断される際に当該線状体が一対の切断刃の間に配置された場合、仮に当該線状体が上記切断刃を躱して当該切断刃によって挟み込まれない状態になるとするならば、上記線状体は、上記ラビリンス通路に沿って配置されることになる。ところが、上記線状体は一定の剛性を備えているから、実際の操作では、線状体が上記ラビリンス通路に沿って配置されることはあり得ない。すなわち、切断されるべき線状体は、必ず一対の切断刃の間に挿入され、確実に切断される。
【0011】
(2) また、本発明に係るプライヤーは、連結支軸が挿通される挿通孔を有するボス部、当該ボス部に連続して当該ボス部の径方向一の向きに突出するように形成された顎部及び上記ボス部に連続して上記ボス部の径方向他の向きに突出するように形成された操作部をそれぞれ有する一対のハンドルを備える。このプライヤーは、上記挿通孔の中心軸が一致するように上記ボス部同士が軸方向に対向配置された状態で上記連結支軸が上記各挿通孔に嵌合されることによって上記一対のハンドルが上記連結軸を中心に回動自在に連結され、上記各操作部が上記連結軸を中心に回動して互いに接離すると上記顎部も互いに接離するようになっている。上記一方のボス部の一部が縮径されることにより、当該一方のボス部と上記顎部との境界部位から周方向に沿って延びる凹条が形成されている。上記各ボス部と上記各顎部との境界部位に線状体を挟んで切断する切断刃が設けられている。当該切断刃の一端部は、上記凹条内に進入している。
【0012】
この構成によれば、切断刃の一端部がボス部に設けられた凹条に進入することにより、当該ボス部と切断刃とによってラビリンス通路が形成されている。したがって、当該プライヤーによって線状体(典型的には釣糸)が切断される際に当該線状体が一対の切断刃の間に配置された場合、仮に当該線状体が上記切断刃を躱して当該切断刃によって挟み込まれない状態になるとするならば、上記線状体は、上記ラビリンス通路に沿って配置されることになる。ところが、上記線状体は一定の剛性を備えているから、実際の操作では、線状体が上記ラビリンス通路に沿って配置されることはあり得ない。すなわち、切断されるべき線状体は、必ず一対の切断刃の間に挿入され、確実に切断される。
【0013】
(3) 上記凹条は、上記一方のボス部のうち上記他方のボス部が対向する側の一部が縮径されることによって形成されていてもよい。
【0014】
この構成では、上記凹条が形成されることにより、上記他方のボス部に対して所定の間隔をあけてフランジが形成される。したがって、一対の切断刃は、上記他方のボス部と上記フランジとの間に配置される。したがって、切断されるべき線状体は、上記切断刃及びフランジを躱して配置されることはなく、確実に一対の切断刃の間に配置される。
【0015】
(4) 上記凹条は、上記一方のボス部のうち上記他方のボス部が対向する側と反対側の一部が縮径されることによって形成されていてもよい。
【0016】
この構成では、上記凹条が形成されることにより、上記他方のボス部に近接してフランジが形成される。したがって、一対の切断刃は、上記他方のボス部に隣接して配置される。つまり、当該プライヤーの中央付近に一対の切断刃が配置される。これにより、切断されるべき線状体は、作業者が意図する切断位置で正確に切断され得る。すなわち、いわゆる「際切り」が容易に行われる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、ボス部に設けられた凹部に切断刃が進入することによってラビリンス通路が形成されているので、釣糸その他の細い線状体であっても上記切断刃を躱して上記ラビリンス通路を通過することはできない。したがって、細い線状体であっても、確実に切断され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るプライヤー10の正面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係るプライヤー10の正面図である。
【図3】図3は、プライヤー10の要部拡大図である。
【図4】図4は、プライヤー10のハンドル11の正面図である。
【図5】図5は、ハンドル11の背面図である。
【図6】図6は、図5におけるVI−矢視図である。
【図7】図7は、図5におけるVII−VII断面図である。
【図8】図8は、プライヤー10のハンドル12の正面図である。
【図9】図9は、ハンドル12の顎本体44の正面図である。
【図10】図10は、顎本体44の左側面図である。
【図11】図11は、顎本体44の拡大底面図である。
【図12】図12は、ハンドル11の顎本体27の正面図である。
【図13】図13は、顎本体27の左側面図である。
【図14】図14は、顎本体27の拡大底面図である。
【図15】図15は、プライヤー10の組立要領を示す図である。
【図16】図16は、プライヤー10の取付ボルト58、59の構造を示す図である。
【図17】図17は、プライヤー10の雄型軸65の構造を示す図である。
【図18】図18は、プライヤー10の雌型軸66の構造を示す図である。
【図19】図19は、プライヤー10の要部拡大斜視図である。
【図20】図20は、図19におけるXX−XX断面図である。
【図21】図21は、本発明の一実施形態の変形例に係るプライヤー76の要部拡大断面図ある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されながら説明される。
【0020】
[プライヤーの概略構成とポイント]
【0021】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係るプライヤー10の正面図である。
【0022】
このプライヤー10は、主として釣りの際に使用されるものであって、たとえばスプリットリングの開閉や釣糸の切断等に好適に使用される。もっとも、プライヤー10が他の用途に使用され得るものであることは言うまでもない。
【0023】
プライヤー10は、一対のハンドル11、12を有する。各ハンドル11、12は、それぞれ、ボス部19、20、操作部13、14及び顎部15、16を備えている。各ハンドル11、12が後述される連結支軸22によって回動自在に連結されており、操作部13、14が互いに接離されることによって顎部15、16が接離し、閉じた状態(図1参照)と開いた状態(図2参照)に変位することができる。顎部15、16は、切断刃17、18を備えており、これらによって釣糸が挟み込まれて切断されるようになっている。
【0024】
図3は、プライヤー10の要部拡大図である。同図は、プライヤー10の顎部15、16とボス部19、20との境界部分の構造を詳細に示している。
【0025】
本実施形態に係るプライヤー10の特徴とするところは、切断刃17、18の取付構造である。すなわち、同図が示すように、ボス部19、20が紙面に垂直な方向に沿って重ね合わされており、そのうちの一方のボス部19の一部に凹溝21(特許請求の範囲に記載された「凹部」「凹条」に相当)が形成されている。そして、この凹溝21に切断刃17、18の一端部24、25が進入しており、これによっていわゆるラビリンス通路23が形成されている。その結果、切断されるべき釣糸は、確実に切断刃17、18によって挟み込まれて切断されるようになっている。
【0026】
以下、プライヤー10の構造が詳述される。
【0027】
[一方のハンドル]
【0028】
図4及び図5は、それぞれ、ハンドル11の正面図及び背面図である。図6は図5におけるVI−矢視図、図7は図5におけるVII−VII断面図である。
【0029】
ハンドル11は、所定の肉厚の板状部材からなる。ハンドル11を構成する材料は特に限定されるものではないが、アルミニウム合金が好ましい。ハンドル11は、ボス部19、操作部13及び顎基部26を有し、これらが一体的に形成されている。この顎基部26に後述される顎本体27(図12〜図14)が装着されることにより、顎部15(図1及び図2参照)が構成される。
【0030】
ボス部19の中央に挿通孔28が設けられており、この挿通孔28はボス部19を貫通している。上記連結支軸22は、この挿通孔28に差し込まれる。ボス部19の肉厚t1は、他の部分(操作部13及び顎基部26)の肉厚t2の半分に設定されている。ハンドル11は、後述のようにハンドル12と重ね合わされるが、このときにボス部19とボス部20とが重ね合わされた状態の肉厚(2×t1)が、その他の部分の肉厚t2と一致するようになっている。
【0031】
図5が示すように、ボス部19の形状は、外周面39、40及び境界面41、42によって規定される。外周面39、40は、上記挿通孔28を中心とする所定半径の円弧の一部に一致している。また、境界面41は、ボス部19と顎基部26との境界を区画しており、境界面42は、ボス部19と操作部13との境界を区画している。境界面41、42は、ハンドル11、12が回動する際に(図1及び図2参照)、互いの干渉が回避されるように決定されている。
【0032】
ボス部19の所定位置にピン29が設けられている。このピン29は、図4及び図6では図示されていないが、円柱状に形成されており、図5においてボス部19から紙面に垂直な方向の手前側に突出している。このピン29の作用効果については後述される。なお、このピン29は、ボス部19と一体的に形成されていてもよいし、ボス部19に設けられた孔に嵌め込まれていてもよい。
【0033】
図4及び図7が示すように、ボス部19の上縁に沿って凹溝21が形成されている。この凹溝21は、ボス部19の一部が縮径されることにより径方向に凹んだ部分により構成されている。具体的には、図4において紙面に垂直な方向の手前側から奥側に向かって(図7において左側から右側に向かって)ボス部19の上縁部分に段差部75(図20参照)が形成されている。そして、この段差部75は、所定の長さt3に設定されており、したがって、ボス部19の上縁に沿ってフランジ30が形成されている。また、当該段差部の深さd(図20参照)は、1mm〜2mm程度に設定され得る。さらに、凹溝21は、挿通孔28の中心を基準として角度θ(本実施形態では46°(degree))に設定されている。ただし、この角度θは特に限定されるものではない。つまり、上記凹溝21は、図4が示すように、ボス部19と顎基部26との境界部から上記挿通孔28を基準にして周方向に延びる凹条からなる。
【0034】
図4が示すように、顎基部26は、ボス部19に連続している。具体的には、顎基部26は、ボス部19の径方向上向き(特許請求の範囲に記載された「一の向き」に相当)に延びている。図7が示すように、顎基部26の肉厚はt2である。また、顎基部26は、図4及び図7が示すように四角錐状に形成されており、上端側に向かって漸次外形形状が小さくなっている。
【0035】
顎基部26は、位置決め凹部31及び位置決め孔32を備えている。これらは、上記顎本体27を顎基部26に位置決めするためのものである。位置決め凹部31は、図7において左右方向に延びる溝からなる。位置決め凹部31の幅や深さ、位置決め孔32の内径や深さは特に限定されず、上記顎本体27が顎基部26に確実に位置決めできる形状であればよい。また、顎基部26は、2つの取付孔33を備えている。図7が示すように、各取付孔33は、上記位置決め凹部31を挟んで上下に対称に配置されている。各取付孔33の内周面にねじが形成されている。
【0036】
図4が示すように、操作部13は、ボス部19に連続しており、ボス部19の径方向下向き(特許請求の範囲に記載された「他の向き」に相当)に延びている。操作部13の肉厚はt2である。操作部13は、このプライヤー10を使用する者(典型的には釣人)が手で把持する部分である。操作部13は、釣人が握りやすいように、湾曲して形成されている。操作部13に肉抜き孔34〜37が設けられている。これにより、操作部13の軽量化が図られている。
【0037】
[他方のハンドル]
【0038】
図8は、ハンドル12の正面図である。
【0039】
同図が示すように、ハンドル12は、全体としてハンドル11と左右対称に形成されている。ハンドル12がハンドル11と異なるところは、ハンドル11は上記凹溝21を備えていたのに対して、ハンドル12は、凹溝21に相当するものが設けられていない点、及びハンドル11は上記ピン29を備えていたのに対して、ハンドル12は、ピン29に代えて当該ピン29が嵌合する嵌合溝43を備えている点である。この嵌合溝43は、上記挿通孔28を中心とする円弧状に形成されている。なお、ハンドル12のその他の構成についてはハンドル11と同様である。また、ハンドル12は、後述の顎本体44(図9〜図11参照)が装着される。
【0040】
[顎本体]
【0041】
図9及び図10は、顎本体44の正面図及び左側面図である。図11は、顎本体44の拡大底面図である。
【0042】
顎本体44は、ハンドル12の顎基部26に装着される。顎本体44は、たとえばステンレス鋼からなり、固定部45とアーム部46とを有する。固定部45は、全体として平板状に形成されており、図9において右側面に位置決めピン47及び位置決め凸部48が突設されている。これらは、ハンドル12の顎基部26に設けられた位置決め孔32及び位置決め凹部31に嵌合する。これにより、顎本体44がハンドル12に確実に位置決めされる。
【0043】
図10が示すように、固定部45に2つの取付孔49、50が設けられている。この取付孔49、50は、顎本体44がハンドル12に位置決めされた状態で、ハンドル12に設けられた上記取付孔33(図7参照)と重合する。
【0044】
図9ないし図11が示すように、固定部45の下端部に切断刃18が形成されている。この切断刃18は、図9において上下方向に延びている。切断刃18は、ハンドル11側に設けられた切断刃17と対を成しており、釣糸その他の線状体が両者によって挟み込まれることによって切断される。
【0045】
図9が示すように、アーム部46は、固定部45に連続して同図において上方に延びている。アーム部46は、全体として三角形状に形成されており、左側面52は、所要の波形に形成されている。また、アーム部46の先端51は鈎状に形成されており、たとえばスプリットリングを簡単に開くことができるようになっている。
【0046】
図12及び図13は、顎本体27の正面図及び左側面図である。図14は、顎本体27の拡大底面図である。
【0047】
顎本体27は、顎本体44と同様にステンレス鋼からなり、ハンドル11の顎基部26に装着される。顎本体27は、全体として顎本体44と左右対称に形成されており、固定部53とアーム部54とを有する。図12において、固定部53の左側面に位置決めピン55及び位置決め凸部56が突設されている。これらは、上記顎本体44に設けられた位置決めピン47及び位置決め凸部48と同様の形状であり、ハンドル11の顎基部26に設けられた位置決め孔32及び位置決め凹部31に嵌合する。これにより、顎本体27がハンドル11に確実に位置決めされる。また、図13が示すように、固定部53に2つの取付孔49、50が設けられている。この取付孔49、50は、顎本体27がハンドル11に位置決めされた状態で、ハンドル11に設けられた上記取付孔33(図7参照)と重合する。
【0048】
図12ないし図14が示すように、固定部53の下端部に切断刃17が形成されている。この切断刃17は、図13において上下方向に延びている。切断刃17は、上記切断刃18と対を成しており、当該切断刃18と協働して釣糸その他の線状体を切断する。また、図12が示すように、アーム部54は、固定部53に連続して同図において上方に延びている。アーム部54の右側面57は、上記アーム部46の左側面52(図9参照)の形状に対応して所要の波形に形成されている。
【0049】
[組立要領]
【0050】
図15は、プライヤー10の組立要領を示す図である。
【0051】
同図が示すように、顎部15及び顎部16は、それぞれ、ハンドル11の顎基部26に顎本体27が組み付けられることにより、及びハンドル12の顎基部26に顎本体44が組み付けられることにより構成される。具体的には、前述のように顎本体27、44がそれぞれハンドル11、12に位置決めされた状態で、取付ボルト58、59が顎本体27及び顎本体44のそれぞれの取付孔49、50にねじ込まれる。これにより、顎本体27がハンドル11に固定され、顎本体44がハンドル12に固定される。
【0052】
図16は、取付ボルト58、59の構造を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【0053】
取付ボルト58、59は同一の形状であって、軸部60及び頭部61を有する。軸部60に雄ねじ62が形成されており、軸部60の外径は上記取付孔49、50の内径に対応している。頭部61は円盤状に形成されており、頭部61の中央に六角孔63が設けられている。頭部61は、取付孔49、50の座部に進入することができ、これにより、取付ボルト58、59がねじ込まれると、頭部61が顎本体27、44に埋め込まれた状態となる。
【0054】
ハンドル11及びハンドル12は、上記連結支軸22によって連結される。具体的には、図8が示す姿勢のハンドル12に対して図4が示す姿勢のハンドル11が、図8において紙面に垂直な方向に沿って重ね合わされる。すなわち、各ハンドル11、12が対向するように配置され、各ハンドル11、12に設けられた挿通孔28同士が重合し、各挿通孔28の中心軸が一致する。この状態で、ハンドル11に設けられたピン29(図5参照)が、ハンドル12に設けられた嵌合溝43に嵌り込む。上記連結支軸22が上記挿通孔28に嵌め込まれることにより、当該連結支軸22を中心としてハンドル11がハンドル12に対して相対的に回動自在となる。ハンドル11がハンドル12に対して相対的に回動すると、上記ピン29が上記嵌合溝43に沿ってスライドする。これにより、ハンドル11、12の円滑な回動が実現される。本実施形態では、図15が示すように、圧縮コイルバネ64が上記嵌合溝43内に配置されている。これにより、上記ピン29は、常時反時計回りの向きに弾性付勢されている。つまり、顎部15、16が常に開いた状態(図2参照)となるように弾性付勢されている。なお、上記ピン29及び嵌合溝43並びに上記圧縮コイルバネ64は省略されていてもよい。
【0055】
上記連結支軸22は、雄型軸65と雌型軸66とを有する。図15は、雄型軸65のみを図示しているが、この雄型軸65に対向して同図において紙面に垂直な方向で裏面側から雌型軸66が嵌めあわされている。
【0056】
図17は雄型軸65の構造を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。図18は、雌型軸66の構造を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【0057】
雄型軸65は、主軸部67と頭部68とを有する。主軸部67は、所定の外径寸法に設定されており、雄ねじ69が形成されている。頭部68は、円盤状に形成されている。頭部68の外径は上記挿通孔28の内径に対応しており、当該頭部68は上記挿通孔28に嵌り込むようになっている。この頭部68にはドライバーが係合する溝70(いわゆるマイナス溝)が形成されている。
【0058】
一方、雌型軸66は、主幹部71と頭部62とを有する。主幹部71は、円筒状に形成されており、所定の内径寸法に設定されている。主幹部71の内径は上記雄型軸65の主軸部67の外径に対応しており、主幹部71の内壁面に雌ねじ73が形成されている。頭部72は、円盤状に形成されており、上記雄型軸66の頭部68と同様の形状である。したがって、図15において、ハンドル12の裏面側から雌型軸66が挿通孔28に嵌め込まれた状態で、ハンドル11側から雄型軸65が挿通孔28に嵌め込まれる。これにより、上記主軸部67が上記主幹部71にねじ込まれ、雄型軸66及び雌型軸67の頭部62、72によりハンドル11、12が挟み込まれて保持される。上記主幹部71の長さは所定長さに設定されており、上記主軸部67が上記主幹部71にねじ込まれた状態であってもハンドル11は、ハンドル12に対して締結固定されることなく、相対的に回動自在となっている。
【0059】
[プライヤーの使用要領]
【0060】
図19は、プライヤー10の要部拡大斜視図であって、釣糸74が切断される要領を示している。図20は、図19におけるX−X断面図である。
【0061】
釣人は、次の要領で釣糸74を切断する。釣人は、ハンドル11、12の操作部を13、14(図1及び図2参照)を操作し、顎部15、16を開く。この状態で、釣糸74が一対の切断刃17、18の間に配置され、顎部15、16が閉じられる。
【0062】
ハンドル11のボス部19に凹溝21が形成されており、これにより、図20が示すように、ボス部19に深さdの段差部75が形成されている。切断刃17、18の一端部24、25は、この凹溝21によって形成される段差部75に進入している。すなわち、ボス部19と切断刃17、18とによってラビリンス通路23が形成されている。したがって、切断刃17、18の間に配置された釣糸74は、確実に切断刃17、18によって挟み込まれる。なぜなら、仮に釣糸74が切断刃17、18を躱して当該切断刃17、18によって挟み込まれない状態になるとすれば、この釣糸74は、ラビリンス通路23に沿って蛇行して配置されることになるが、釣糸74は一定の剛性を備えているから、このような状態になることは実際にはほとんどあり得ないからである。すなわち、切断されるべき釣糸74は、必ず一対の切断刃17、18の間に挿入され、確実に切断される。
【0063】
[変形例]
【0064】
図21は、本発明の一実施形態の変形例に係るプライヤー76の要部拡大断面図ある。
【0065】
本変形例に係るプライヤー76が上記プライヤー10と異なるところは、上記プライヤー10では、図20が示すように、凹溝21は、ボス部19のうち、ボス部20と対向する側と反対側の部分に形成されていたのに対し、本変形例では、凹溝77は、ボス部19のうち、ボス部20と対向する側の部分が縮径されることにより形成されている点である。換言すれば、図20が示すように、プライヤー10では、凹溝21によって形成されるフランジ30がボス部20と隣接して配置されているが、本変形例に係るプライヤー76では、図21が示すように、凹溝77によって形成されるフランジ78は、ボス部20と所定の間隔を開けて配置されている。なお、プライヤー76のその他の構成については、プライヤー10と同様である。
【0066】
本変形例に係るプライヤー76では、フランジ78とボス部20との間に一対の切断刃17、18が配置される。すなわち、切断刃17、18がボス部20に隣接して当該プライヤー76の中央付近に配置される。したがって、ラビリンス通路23がより複雑になり、釣糸74は、一層確実に切断刃17、18の間に配置される。
【0067】
なお、これに対して上記プライヤー10では、切断刃17、18は、ボス部19の外側に配置されることになるから(図20参照)、釣人は、意図する切断位置で正確に釣糸74を切断することができる。すなわち、いわゆる「際切り」が容易に行われる。
【0068】
また、本実施形態及び上記変形例に係るプライヤー10、76では、上記段差部75が設けられることによって(図7参照)、フランジ30、78(図7、図20及び図21参照)が形成されている。ただし、これらのフランジ30、78が省略されることも可能である。すなわち、上記段差部75において(図7参照)、長さ寸法t3がボス部19の肉厚t1と等しくなるように(t4=0)設定されていてもよい。この場合であっても上記ラビリンス通路23が形成され、上記実施形態及び上記変形例に係るプライヤー10、76と同様の作用効果が奏される。
【符号の説明】
【0069】
10・・・プライヤー
11・・・ハンドル
12・・・ハンドル
13・・・操作部
14・・・操作部
15・・・顎部
16・・・顎部
17・・・切断刃
18・・・切断刃
19・・・ボス部
20・・・ボス部
21・・・凹溝
22・・・連結支軸
23・・・ラビリンス通路
24・・・一端部
25・・・一端部
26・・・顎基部
27・・・顎本体
28・・・挿通孔
44・・・顎本体
45・・・固定部
46・・・アーム部
53・・・固定部
54・・・アーム部
74・・・釣糸
75・・・段差部
76・・・プライヤー
77・・・凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結支軸が挿通される挿通孔を有するボス部、当該ボス部に連続して当該ボス部の径方向一の向きに突出するように形成された顎部及び上記ボス部に連続して上記ボス部の径方向他の向きに突出するように形成された操作部をそれぞれ有する一対のハンドルを備え、
上記挿通孔の中心軸が一致するように上記ボス部同士が軸方向に対向配置された状態で上記連結支軸が上記各挿通孔に嵌合されることによって上記一対のハンドルが上記連結軸を中心に回動自在に連結され、上記各操作部が上記連結軸を中心に回動して互いに接離すると上記顎部も互いに接離するプライヤーであって、
上記各ボス部と上記各顎部との境界部位に線状体を挟んで切断する切断刃が設けられており、当該切断刃の一端部が上記一方のボス部に設けられた上記径方向に凹んだ凹部に進入することによってラビリンス通路が形成されているプライヤー。
【請求項2】
連結支軸が挿通される挿通孔を有するボス部、当該ボス部に連続して当該ボス部の径方向一の向きに突出するように形成された顎部及び上記ボス部に連続して上記ボス部の径方向他の向きに突出するように形成された操作部をそれぞれ有する一対のハンドルを備え、
上記挿通孔の中心軸が一致するように上記ボス部同士が軸方向に対向配置された状態で上記連結支軸が上記各挿通孔に嵌合されることによって上記一対のハンドルが上記連結軸を中心に回動自在に連結され、上記各操作部が上記連結軸を中心に回動して互いに接離すると上記顎部も互いに接離するプライヤーであって、
上記一方のボス部の一部が縮径されることにより、当該一方のボス部と上記顎部との境界部位から周方向に沿って延びる凹条が形成されており、
上記各ボス部と上記各顎部との境界部位に線状体を挟んで切断する切断刃が設けられており、当該切断刃の一端部が上記凹条内に進入しているプライヤー。
【請求項3】
上記一方のボス部のうち上記他方のボス部が対向する側の一部が縮径されることによって上記凹条が形成されている請求項2に記載のプライヤー。
【請求項4】
上記一方のボス部のうち上記他方のボス部が対向する側と反対側の一部が縮径されることによって上記凹条が形成されている請求項2に記載のプライヤー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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