プラスチック光ファイバの製造方法
【課題】生産効率を維持しながらも熱収縮を十分に低減したPOFを得ることができる熱緩和処理方法を提供する
【解決手段】延伸工程で延伸処理されたプラスチック光ファイバを加熱炉内で熱緩和処理するプラスチック光ファイバの製造方法であって、プラスチック光ファイバを支持部材により支持しながら加熱炉内を搬送して熱緩和処理を行うことを特徴としたプラスチック光ファイバの製造方法。
【解決手段】延伸工程で延伸処理されたプラスチック光ファイバを加熱炉内で熱緩和処理するプラスチック光ファイバの製造方法であって、プラスチック光ファイバを支持部材により支持しながら加熱炉内を搬送して熱緩和処理を行うことを特徴としたプラスチック光ファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載通信用、家庭内ネットワーク用、オフィス用などに好適に用いられるプラスチック光ファイバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安価でかつ大口径でありながら、端面加工、取り扱い等が容易であるといった長所を有するプラスチック製の光ファイバ(以下、POFという。)が開発され、ライティング用途、センサー用途、情報通信用途等の分野において実用化がなされている。
【0003】
一般に、POFはポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、或いはアモルファスポリオレフィンのような、屈折率が大きく且つ光の透過性に優れるポリマーを芯材とする芯部の外周に、芯材よりも屈折率が小さく且つ透明なポリマーを鞘材とする鞘部を設けた、芯―鞘構造の繊維からなる。
【0004】
このようなPOFの工業的製造プロセスとしては、通常、複合紡糸ノズルを用いて芯材ポリマーと鞘材ポリマーを同心円状に配置し、溶融複合紡糸することでファイバ状に賦形し、その後前記ファイバの機械的強度向上のために高温条件下で延伸処理を行っている。
【0005】
この延伸処理によって分子が配向するためPOFの力学的強度は向上するが、一方でこの分子配向とは異なる残留応力すなわち残留歪みもそのまま凍結される。そのため、POFが芯材のガラス転移温度(Tgc)近傍の温度付近に再度加熱された際には、一旦凍結されていた残留歪みが開放されるためPOFが大きく収縮を起こす。
【0006】
そこで、この残留歪みを取り除いて熱収縮の発生を防止するために、延伸後のPOFに熱緩和処理を施しておく必要がある。ここで延伸により付与された分子配向を維持して力学的強度を損なうことなく、残留歪みのみを除去するには、Tgcの近傍でPOFの熱処理を行うのが効果的である。
【0007】
しかしTgcを超える温度で熱緩和処理を行った場合、残留歪みが除去されるだけでなく分子配向も緩和されてしまうため、力学的強度も損なわれてしまう。
【0008】
一方、熱緩和処理温度がTgc以下の場合には、分子配向の緩和は抑制されるが、熱緩和処理温度が低いほど残留歪みの除去に要する時間も長くなるため、生産効率が著しく低下してしまう。
【0009】
以上の課題を解決するために、所望する機械的強度と熱収縮のバランスを考慮しながら短時間で熱緩和処理できる技術の検討が種々行われている。例えば、特許文献1には、POFを可能な限り低張力の状態にして連続熱処理する技術として、POFを鉛直上方から下方へ流しながら連続的に熱緩和処理する方法が開示されている。
【0010】
しかしながら、特許文献1の熱緩和処理法を用いた場合、熱緩和炉の長さは製造ライン速度および必要熱緩和時間により支配されるが、熱緩和炉の鉛直方向への設置長さには限界があることから、所望する低熱収縮性が得られるまで十分な熱緩和処理を行うには製造ライン速度を低下させなければならなかったため、この方法では生産効率が上がらず、実用性の低いものであった。また、所望する処理量と熱緩和時間を満足する熱緩和炉を鉛直方向に設置できても、POF自体の重量分の張力が付加された状態で熱緩和処理を行うことになり、結果として十分な熱収縮特性を有したPOFを得ることが出来なかった。
【特許文献1】特開2001−305353
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、生産効率を維持しながらも熱収縮を十分に低減したPOFを得ることができる熱緩和処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明はかかる問題点を解決すべくなされたものである。すなわち本発明の要旨は、延伸工程で延伸処理されたプラスチック光ファイバを加熱炉内で熱緩和処理するプラスチック光ファイバの製造方法であって、プラスチック光ファイバを支持部材により支持しながら加熱炉内を搬送して熱緩和処理を行うことを特徴としたプラスチック光ファイバの製造方法、である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、POFの熱緩和処理を実質的に無張力の状態で行うことができ、生産効率を低下させることなく熱収縮を低減したPOFを得ることができる。
【0014】
さらに、無張力状態での熱緩和処理を連続で行えるため、紡糸、延伸、熱緩和、巻き取りまで連続したプロセスが可能となり、プロセスの効率化が計れると共に生産性も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0016】
本発明は、POFの熱緩和処理時に、支持部材上にPOFを配置し、該支持部材を移動または駆動させることによってPOFを搬送しながらPOFを加熱することを特徴としている。POFを支持部材によって支持することにより、POFに張力がかからない状態で熱緩和処理を実施でき、熱緩和時間の短縮が可能となる。
【0017】
また、支持部材上にPOFを乗せて搬送するので、熱緩和炉を水平、鉛直方向の双方にも連続した構造で設置することができ、設置が許されるスペースの範囲において所望する炉長で熱緩和炉を設計することができる。
【0018】
ここでPOFを搬送する上記支持部材としては、POFを連続的に搬送でき、且つPOFを均一に加熱できるものであればよく、例えばコンベアベルト、あるいはロールを連ねた形態の支持部材を挙げることができる。
【0019】
図1は支持部材としてシート状のコンベアベルトを用いた際のPOFの熱緩和処理の一例を示している。コンベアベルトを連続的に搬送させるには、コンベアベルトを搬送させる搬送ロールと、コンベアベルトの張力を調整するためのテンションロールとを少なくとも設置すればよい。また、コンベアベルトの蛇行を防止するための蛇行防止機能を付与することが好ましい。ここで、コンベアベルトはエンドレス状に加工するが、エンドレスに加工する際のコンベアベルトの接続部は、表面が平滑であることが好ましく、例えば突合せ継ぎ法や編み込み継ぎ法、あるいは、予め筒状の基材を用いるシームレス法も採用できる。
【0020】
コンベアベルトの材質は、POFの表面を傷つけるものでなければ特に限定されないが、熱緩和炉内での加熱温度を考慮し、耐熱性の高い材料が好ましい。例えば、ポリアミド系樹脂などの樹脂材料、ガラス材料、金属材料などを挙げることができる。また、これらの材料の表面にフッ素樹脂などのコーティング材料、あるいは前記コーティング材料中に帯電防止用のカーボン粉を混入させたコーティング材料等をコーティングして使用することもできる。
【0021】
ここでPOFを支持する上記コンベアベルトの表面は、加熱された状態のPOF表面が傷つくことを防止するため、異物等の除去されたクリーンな状態に維持されていることが好ましい。コンベアベルト面の異物を排除する方法としては、例えば、圧搾エアーなどにより吹き飛ばし排除する方法や、粘着ロールをコンベアベルト面と接触させ異物を取り除く方法や、ブラシを設置し該ブラシ近傍に異物を吸引させる吸引ノズルを設置し、コンベアベルト上の異物を吸引する方法等を挙げることができる。
【0022】
コンベアベルトの種類としては、熱緩和炉内でPOFを均一に加熱できるものであればよく、図1のようなシート状のコンベアベルトを用いることができるが、POFを加熱させる場合には、前記シート状のコンベアベルトに孔加工されている形態や、繊維を束ねた形態、あるいは繊維に撚りを加えネット状に加工された形態のコンベアベルトを用いることにより、対流熱伝達や放射熱伝達によりコンベアベルト下方からも熱緩和に必要な熱をPOFに与えることができ、より均一にPOFを加熱することができる。
【0023】
POFを搬送する上記コンベアベルトの移動速度は、熱緩和炉内でPOFに張力が発生しないようにするため、延伸工程から連続した製造プロセスの場合には、延伸工程後のライン速度未満に設定することが好ましい。また、移動速度は、熱緩和処理工程が独立した単独工程(バッチ式)の場合も含めて、熱緩和炉の長さに応じて、所望する熱収縮特性が得られるのに十分な時間熱処理を実施できる範囲の速度以上に設定すればよい。
【0024】
コンベアベルト面上には、POFを円状、あるいは蛇行状にして配置することが好ましい。このような状態でコンベアベルト上に配置することで、直線状に配置する場合に比べ、熱緩和炉内における単位長さ当りのPOFの配置量を増やすことができ、熱緩和炉の長さをより短くすることができる。
【0025】
尚、延伸工程によりPOFに生じた残留歪が熱緩和によって開放されることにより、POFは自然に蛇行した状態でコンベアベルト面上に配置されることになるが、より円状、あるいは蛇行状にしてコンベアベルト面上へ配置するには、コンベアベルト面上へPOFを供給する際に、トラバースを介してPOFを供給する方法を採ればよい。
【0026】
ここで、POFをコンベアベルト面上で蛇行状に配置する方法としては、例えば図3に示すように、突起状部材をコンベアベルト上に具備し、該突起状部材にPOFを引っ掛ける方法が挙げられる。
【0027】
上記突起状部材の材料としては、耐熱性を有しかつPOFの表面を傷つけることのない、物理的に攻撃性の無い材料が好ましく、例えばシリコン、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミドなどの樹脂材料や、これらの樹脂材料をゴム状や発泡体にしたものが好ましい。またステンレスや汎用の金属材料も使用することができ、これら金属材料は表面をゴムや発泡体でコーティングして使用することが好ましい。また、セラミックス材料も突起状部材として使用することができる。
【0028】
突起状部材のコンベアベルト上への設置方法は、コンベアベルトを製造する際に同時に成形しても良いし、コンベアベルト完成後に接着剤やネジなどにより接合してもよい。またその形状は、突起状部材からPOFが離脱しないような形状が好ましく、例えば図4〜図6に示すように、高さのある部材や、コの字形状のもの等を用いることができる。
【0029】
本発明の製造方法の好ましい実施形態の一つとして、POF搬送用の支持部材として前述のコンベアベルトを用いる方法以外にも、図2に示すような円柱状のロールを連ねたロールコンベアも用いることができる。
【0030】
前記ロールコンベアを支持部材として使用する際のロール間のピッチおよびロール径は、ロール間にPOFが落ち込まないような間隔およびサイズに配置、設定すればよい。
【0031】
ロールの周速についても、コンベアベルトを用いた場合と同様に、熱緩和炉内でPOFの収縮を妨げるような張力が発生しないようにするため延伸工程後のライン速度未満とし、熱緩和炉の長さに応じて、所望する熱収縮特性が得られるのに十分な時間熱処理を実施できる速度範囲に設定してやればよい。
【0032】
本発明においては上記のような、コンベアベルトとロールコンベアを併用してもよく、例えば搬送ラインの直線部分にコンベアベルトを用い、進行方向を変更させる部分にロールコンベアを用いるなど、コンベアベルトとロールコンベアを組み合わせて搬送ラインを組み立てることもできる。
【0033】
また、搬送時にPOFがコンベアベルト上あるいはロール上から巾方向に落下することを防止するためには、落下防止ガードを設置することが好ましい。
【0034】
落下防止ガードは、落下防止ガードとPOFが接触した際にPOF表面を損傷することの無い形状であって、かつ耐熱性のあるものであればよい。
【0035】
落下防止ガードとして使用可能な材料としては、前記突起部材と同様に、例えばシリコン、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミドなどの樹脂材料やステンレスや汎用の金属材料、セラミックス材料等をあげることができる。
【0036】
落下防止ガードの設置方法は、例えば支持部材の両端に長手方向に設置され、ブロック状の部材を連続に、あるいは断続に配置する方法や、ピン状の部材を連続に、あるいは断続に配置する方法が挙げられる。あるいは、支持部材に直接設置せずに、支持部材の両端近傍に設置してもよい。
【0037】
支持部材と落下防止ガードとのクリアランスは、支持部材と落下防止ガードとの間にPOFが挟み込まれることが無いようPOFの直径以下にすることが好ましい。
【0038】
次に、POFを熱緩和処理する熱緩和炉について説明する。
【0039】
熱緩和炉は、その炉長を、POFを十分に熱緩和できる熱緩和時間に対応した長さに決定した後、設置予定のスペースに合わせレイアウトすればよい。例えば、図10に示すように直線状に配置した支持部材を多段に配置した熱緩和炉、あるいは図7に示すように旋回状に配置した支持部材を多段に配置した熱緩和炉などがあり、さらには図8および図9に示すように直線、旋回を組み合わせて支持部材を配置した熱緩和炉としてもよい。
【0040】
加熱手段としては、温調風、スチーム、赤外線などを挙げることができ、またそれらを組み合わせて使用することもできる。
【0041】
延伸工程を経たPOFはTgc近傍の温度付近に加熱されると、凍結された残留歪みが開放され収縮する。熱緩和炉内のPOFは支持部材上に布置しており無張力の状態であるため、収縮の際に激しく不規則に揺動することがある。例えばPOFの上方に加熱手段を設けている熱緩和炉の場合、激しく揺動するPOFは前記加熱手段と接触することがある。このため、POFと加熱手段との間に接触防止部材を設けることが好ましい。熱緩和炉の側面に加熱手段が設けられている場合についても同様に、POFと側面加熱手段との間に接触防止部材を設けることが好ましい。
【0042】
接触防止部材は、接触防止部材とPOFが接触した際POF表面に損傷を与えず、かつ加熱手段の加熱効果を著しく低下させない、耐熱性のある部材であることが好ましい。このような部材として例えば、ポリアミド系などの樹脂やガラス、金属などを用いることができる。
【0043】
接触防止部材の形状は、特に限定しないが、加熱手段の加熱効率が低減しにくい開孔部を有しているネット状シートが好適に使用できる。さらにネット状シートを使用する場合はPOFへの加熱効果を低下させることの少ない開孔率の高いネット状シートを使用することが好ましい。
【0044】
ネット状シートの開孔部の形状は、円形、多角形いずれでもよいが、開孔部の短目方向長さと長目方向長さは、それぞれ150mm以下の大きさであることが好ましい。150mm以下であると、POFが激しく揺動しても開口部からPOFが飛び出ることがない。
【0045】
熱緩和処理を行う際のPOFの本数は限定しない。1本でも複数本でも同時に熱緩和処理することができる。
【0046】
ただし、熱緩和炉内の雰囲気温度は、POFの鞘材が溶融状態とならないような温度にすることが好ましい。このような温度範囲であれば、POFの表面に支持部材との、あるいはPOF同士間の接触痕が発生することが少ないためである。
【0047】
次に本発明の製造方法によって製造するのに好ましい形態のPOFについて説明する。
【0048】
本発明の製造方法で製造されるPOFの芯材としては、非晶性の透明重合体が好適であり、例えばメタクリル酸メチルの単独重合体、またはメタクリル酸メチルと他の単量体との共重合体(メタクリル酸メチル共重合体)が好ましい。更に、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソブルニル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ナフチル等のメタクリル酸エステルとこれら単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸エステル系共重合体、あるいはこれらポリマーの水素原子の全部あるいは一部が重水素原子で、置換された重水素化重合体等が使用可能であり、その他の透明重合体、透明ブレンド物も使用可能である。
【0049】
メタクリル酸メチル共重合体としては、原料の全単量体量を100質量%として、メタクリル酸メチル70質量%以上と、メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体30質量%以下とを重合してなる共重合体であることが好ましい。メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体としては、例えばメタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸−2,2,2−トリフルオロエチル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル類、耐熱性の向上を目的としてN−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド等のマレイミド化合物などの単量体が挙げられる。
【0050】
芯材の製造法は、特に制限は無く、公知の重合方法により製造することができるが、異物の混入等の面から連続塊状重合もしくは連続溶液重合法を採用するのが好ましい。
【0051】
次に鞘材としては、公知の材料が使用可能である。熱処理時のPOFの取り扱い性を向上させ、POFの径斑を低減する点から、(Tgc+10)℃以下で溶融状態とならないものが好ましい。また、良好な伝送特性を有するPOFが得られる点で、フッ素系メタクリレートの単独重合体、フッ素系メタクリレートとメタクリル酸エステル系単量体との共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ化ビニリデン単位を主成分とする共重合体、α−フルオロメタクリレート系樹脂、及びそれらの混合物を用いることが好ましい。
【0052】
本発明において、POFの構造としては、公知のものが用いられ、例えば、芯−鞘の2層構造を有するPOF、芯部が屈折率分布を有するようなグレーデットインデックス型POF、芯部、または芯部及び鞘部が複数種の重合体を多層状に配置した構造を有するPOF、一本のファイバ中に複数の芯鞘構造を有する多芯状のPOF等が挙げられる。これらのPOFの外周に耐溶剤性や耐熱性等の機能を有する保護層を被覆したものとすることも可能である。保護層としては、公知の材料が使用可能であるが、力学的強度に優れたフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体が好ましく用いられる。
【0053】
以上に説明したPOFを用い、その外周に被覆層を公知の方法により形成することにより光ファイバケーブルを製造することができる。被覆層の材料としては、従来使用されているナイロン12、ポリ塩化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリエチレン、ポリウレタン、ペルプレン等を用いることができる。
【0054】
また、上記のように製造された光ファイバケーブルの先端に公知の方法によりプラグを配置することにより、プラグ付き光ファイバケーブルとして使用することができる。プラグとしては公知のものが使用可能である。
【実施例】
【0055】
以下に本発明の実施例を示す。尚、熱収縮率の評価方法は以下の通りである。
【0056】
(熱収縮率の測定)
予めPOFに1m(L0)間隔で目印を付け、このPOFを90℃に設定した乾熱乾燥機内に、乾燥機内壁に触れないようにして放置し、24時間後、このPOFを取り出し、室温(約20℃)まで放冷したのち目印の間隔(L1)を測定し、L0およびL1から下記式(1)を用いて熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=〔(L0−L1)/L0〕×100 ........(1)
【0057】
芯が、Tgc=112℃のポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、第一鞘が、フッ素化メタクリレート/メチルメタクリレート共重合体、第二鞘が、Tg=℃のビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる3層構造のPOFを溶融紡糸により形成後、延伸処理を施した。さらに延伸処理を施したPOFを、ガラス繊維の表面をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で処理した、開口数が40%のメッシュシート上に布置し、図11に示すような、IRヒーター及び温調風を備え、炉内の雰囲気温度を99℃になるように設定した熱緩和炉内を前記メッシュシート上に布置した状態で搬送しながら約60秒間、熱緩和処理を施した。
【0058】
このようにして得られたPOFの熱収縮率を測定したところ、0.3%であり、非常に短い緩和時間ながらも、熱収縮率の小さな非常に優れたPOFが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の熱緩和処理の実施状況の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の熱緩和処理の実施状況の一例を示す模式図である。
【図3】支持部材上のPOF状況の一例を示す模式図である。
【図4】支持部材上に設置する突起状部材の一例を示す模式図である。
【図5】支持部材上に設置する突起状部材の一例を示す模式図である。
【図6】支持部材上に設置する突起状部材の一例を示す模式図である。
【図7】熱緩和炉の一例を示す模式図である。
【図8】熱緩和炉の一例を示す模式図である。
【図9】熱緩和炉の一例を示す模式図である。
【図10】熱緩和炉の一例を示す模式図である。
【図11】熱緩和炉の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0060】
1 プラスチック光ファイバ(POF)
2 コンベアベルト
3 コンベアベルト搬送ロール
4 ロール
5 突起状部材
6a スパイラル式熱緩和炉(平面図)
6b スパイラル式熱緩和炉(正面図)
7a 複合スパイラル式熱緩和炉(平面図)
7b 複合スパイラル式熱緩和炉(正面図)
8a XYZ式熱緩和炉(平面図)
8b XYZ式熱緩和炉(正面図)
9a XZ式熱緩和炉(平面図)
9b XZ式熱緩和炉(正面図)
【技術分野】
【0001】
本発明は車載通信用、家庭内ネットワーク用、オフィス用などに好適に用いられるプラスチック光ファイバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安価でかつ大口径でありながら、端面加工、取り扱い等が容易であるといった長所を有するプラスチック製の光ファイバ(以下、POFという。)が開発され、ライティング用途、センサー用途、情報通信用途等の分野において実用化がなされている。
【0003】
一般に、POFはポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、或いはアモルファスポリオレフィンのような、屈折率が大きく且つ光の透過性に優れるポリマーを芯材とする芯部の外周に、芯材よりも屈折率が小さく且つ透明なポリマーを鞘材とする鞘部を設けた、芯―鞘構造の繊維からなる。
【0004】
このようなPOFの工業的製造プロセスとしては、通常、複合紡糸ノズルを用いて芯材ポリマーと鞘材ポリマーを同心円状に配置し、溶融複合紡糸することでファイバ状に賦形し、その後前記ファイバの機械的強度向上のために高温条件下で延伸処理を行っている。
【0005】
この延伸処理によって分子が配向するためPOFの力学的強度は向上するが、一方でこの分子配向とは異なる残留応力すなわち残留歪みもそのまま凍結される。そのため、POFが芯材のガラス転移温度(Tgc)近傍の温度付近に再度加熱された際には、一旦凍結されていた残留歪みが開放されるためPOFが大きく収縮を起こす。
【0006】
そこで、この残留歪みを取り除いて熱収縮の発生を防止するために、延伸後のPOFに熱緩和処理を施しておく必要がある。ここで延伸により付与された分子配向を維持して力学的強度を損なうことなく、残留歪みのみを除去するには、Tgcの近傍でPOFの熱処理を行うのが効果的である。
【0007】
しかしTgcを超える温度で熱緩和処理を行った場合、残留歪みが除去されるだけでなく分子配向も緩和されてしまうため、力学的強度も損なわれてしまう。
【0008】
一方、熱緩和処理温度がTgc以下の場合には、分子配向の緩和は抑制されるが、熱緩和処理温度が低いほど残留歪みの除去に要する時間も長くなるため、生産効率が著しく低下してしまう。
【0009】
以上の課題を解決するために、所望する機械的強度と熱収縮のバランスを考慮しながら短時間で熱緩和処理できる技術の検討が種々行われている。例えば、特許文献1には、POFを可能な限り低張力の状態にして連続熱処理する技術として、POFを鉛直上方から下方へ流しながら連続的に熱緩和処理する方法が開示されている。
【0010】
しかしながら、特許文献1の熱緩和処理法を用いた場合、熱緩和炉の長さは製造ライン速度および必要熱緩和時間により支配されるが、熱緩和炉の鉛直方向への設置長さには限界があることから、所望する低熱収縮性が得られるまで十分な熱緩和処理を行うには製造ライン速度を低下させなければならなかったため、この方法では生産効率が上がらず、実用性の低いものであった。また、所望する処理量と熱緩和時間を満足する熱緩和炉を鉛直方向に設置できても、POF自体の重量分の張力が付加された状態で熱緩和処理を行うことになり、結果として十分な熱収縮特性を有したPOFを得ることが出来なかった。
【特許文献1】特開2001−305353
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、生産効率を維持しながらも熱収縮を十分に低減したPOFを得ることができる熱緩和処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明はかかる問題点を解決すべくなされたものである。すなわち本発明の要旨は、延伸工程で延伸処理されたプラスチック光ファイバを加熱炉内で熱緩和処理するプラスチック光ファイバの製造方法であって、プラスチック光ファイバを支持部材により支持しながら加熱炉内を搬送して熱緩和処理を行うことを特徴としたプラスチック光ファイバの製造方法、である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、POFの熱緩和処理を実質的に無張力の状態で行うことができ、生産効率を低下させることなく熱収縮を低減したPOFを得ることができる。
【0014】
さらに、無張力状態での熱緩和処理を連続で行えるため、紡糸、延伸、熱緩和、巻き取りまで連続したプロセスが可能となり、プロセスの効率化が計れると共に生産性も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0016】
本発明は、POFの熱緩和処理時に、支持部材上にPOFを配置し、該支持部材を移動または駆動させることによってPOFを搬送しながらPOFを加熱することを特徴としている。POFを支持部材によって支持することにより、POFに張力がかからない状態で熱緩和処理を実施でき、熱緩和時間の短縮が可能となる。
【0017】
また、支持部材上にPOFを乗せて搬送するので、熱緩和炉を水平、鉛直方向の双方にも連続した構造で設置することができ、設置が許されるスペースの範囲において所望する炉長で熱緩和炉を設計することができる。
【0018】
ここでPOFを搬送する上記支持部材としては、POFを連続的に搬送でき、且つPOFを均一に加熱できるものであればよく、例えばコンベアベルト、あるいはロールを連ねた形態の支持部材を挙げることができる。
【0019】
図1は支持部材としてシート状のコンベアベルトを用いた際のPOFの熱緩和処理の一例を示している。コンベアベルトを連続的に搬送させるには、コンベアベルトを搬送させる搬送ロールと、コンベアベルトの張力を調整するためのテンションロールとを少なくとも設置すればよい。また、コンベアベルトの蛇行を防止するための蛇行防止機能を付与することが好ましい。ここで、コンベアベルトはエンドレス状に加工するが、エンドレスに加工する際のコンベアベルトの接続部は、表面が平滑であることが好ましく、例えば突合せ継ぎ法や編み込み継ぎ法、あるいは、予め筒状の基材を用いるシームレス法も採用できる。
【0020】
コンベアベルトの材質は、POFの表面を傷つけるものでなければ特に限定されないが、熱緩和炉内での加熱温度を考慮し、耐熱性の高い材料が好ましい。例えば、ポリアミド系樹脂などの樹脂材料、ガラス材料、金属材料などを挙げることができる。また、これらの材料の表面にフッ素樹脂などのコーティング材料、あるいは前記コーティング材料中に帯電防止用のカーボン粉を混入させたコーティング材料等をコーティングして使用することもできる。
【0021】
ここでPOFを支持する上記コンベアベルトの表面は、加熱された状態のPOF表面が傷つくことを防止するため、異物等の除去されたクリーンな状態に維持されていることが好ましい。コンベアベルト面の異物を排除する方法としては、例えば、圧搾エアーなどにより吹き飛ばし排除する方法や、粘着ロールをコンベアベルト面と接触させ異物を取り除く方法や、ブラシを設置し該ブラシ近傍に異物を吸引させる吸引ノズルを設置し、コンベアベルト上の異物を吸引する方法等を挙げることができる。
【0022】
コンベアベルトの種類としては、熱緩和炉内でPOFを均一に加熱できるものであればよく、図1のようなシート状のコンベアベルトを用いることができるが、POFを加熱させる場合には、前記シート状のコンベアベルトに孔加工されている形態や、繊維を束ねた形態、あるいは繊維に撚りを加えネット状に加工された形態のコンベアベルトを用いることにより、対流熱伝達や放射熱伝達によりコンベアベルト下方からも熱緩和に必要な熱をPOFに与えることができ、より均一にPOFを加熱することができる。
【0023】
POFを搬送する上記コンベアベルトの移動速度は、熱緩和炉内でPOFに張力が発生しないようにするため、延伸工程から連続した製造プロセスの場合には、延伸工程後のライン速度未満に設定することが好ましい。また、移動速度は、熱緩和処理工程が独立した単独工程(バッチ式)の場合も含めて、熱緩和炉の長さに応じて、所望する熱収縮特性が得られるのに十分な時間熱処理を実施できる範囲の速度以上に設定すればよい。
【0024】
コンベアベルト面上には、POFを円状、あるいは蛇行状にして配置することが好ましい。このような状態でコンベアベルト上に配置することで、直線状に配置する場合に比べ、熱緩和炉内における単位長さ当りのPOFの配置量を増やすことができ、熱緩和炉の長さをより短くすることができる。
【0025】
尚、延伸工程によりPOFに生じた残留歪が熱緩和によって開放されることにより、POFは自然に蛇行した状態でコンベアベルト面上に配置されることになるが、より円状、あるいは蛇行状にしてコンベアベルト面上へ配置するには、コンベアベルト面上へPOFを供給する際に、トラバースを介してPOFを供給する方法を採ればよい。
【0026】
ここで、POFをコンベアベルト面上で蛇行状に配置する方法としては、例えば図3に示すように、突起状部材をコンベアベルト上に具備し、該突起状部材にPOFを引っ掛ける方法が挙げられる。
【0027】
上記突起状部材の材料としては、耐熱性を有しかつPOFの表面を傷つけることのない、物理的に攻撃性の無い材料が好ましく、例えばシリコン、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミドなどの樹脂材料や、これらの樹脂材料をゴム状や発泡体にしたものが好ましい。またステンレスや汎用の金属材料も使用することができ、これら金属材料は表面をゴムや発泡体でコーティングして使用することが好ましい。また、セラミックス材料も突起状部材として使用することができる。
【0028】
突起状部材のコンベアベルト上への設置方法は、コンベアベルトを製造する際に同時に成形しても良いし、コンベアベルト完成後に接着剤やネジなどにより接合してもよい。またその形状は、突起状部材からPOFが離脱しないような形状が好ましく、例えば図4〜図6に示すように、高さのある部材や、コの字形状のもの等を用いることができる。
【0029】
本発明の製造方法の好ましい実施形態の一つとして、POF搬送用の支持部材として前述のコンベアベルトを用いる方法以外にも、図2に示すような円柱状のロールを連ねたロールコンベアも用いることができる。
【0030】
前記ロールコンベアを支持部材として使用する際のロール間のピッチおよびロール径は、ロール間にPOFが落ち込まないような間隔およびサイズに配置、設定すればよい。
【0031】
ロールの周速についても、コンベアベルトを用いた場合と同様に、熱緩和炉内でPOFの収縮を妨げるような張力が発生しないようにするため延伸工程後のライン速度未満とし、熱緩和炉の長さに応じて、所望する熱収縮特性が得られるのに十分な時間熱処理を実施できる速度範囲に設定してやればよい。
【0032】
本発明においては上記のような、コンベアベルトとロールコンベアを併用してもよく、例えば搬送ラインの直線部分にコンベアベルトを用い、進行方向を変更させる部分にロールコンベアを用いるなど、コンベアベルトとロールコンベアを組み合わせて搬送ラインを組み立てることもできる。
【0033】
また、搬送時にPOFがコンベアベルト上あるいはロール上から巾方向に落下することを防止するためには、落下防止ガードを設置することが好ましい。
【0034】
落下防止ガードは、落下防止ガードとPOFが接触した際にPOF表面を損傷することの無い形状であって、かつ耐熱性のあるものであればよい。
【0035】
落下防止ガードとして使用可能な材料としては、前記突起部材と同様に、例えばシリコン、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミドなどの樹脂材料やステンレスや汎用の金属材料、セラミックス材料等をあげることができる。
【0036】
落下防止ガードの設置方法は、例えば支持部材の両端に長手方向に設置され、ブロック状の部材を連続に、あるいは断続に配置する方法や、ピン状の部材を連続に、あるいは断続に配置する方法が挙げられる。あるいは、支持部材に直接設置せずに、支持部材の両端近傍に設置してもよい。
【0037】
支持部材と落下防止ガードとのクリアランスは、支持部材と落下防止ガードとの間にPOFが挟み込まれることが無いようPOFの直径以下にすることが好ましい。
【0038】
次に、POFを熱緩和処理する熱緩和炉について説明する。
【0039】
熱緩和炉は、その炉長を、POFを十分に熱緩和できる熱緩和時間に対応した長さに決定した後、設置予定のスペースに合わせレイアウトすればよい。例えば、図10に示すように直線状に配置した支持部材を多段に配置した熱緩和炉、あるいは図7に示すように旋回状に配置した支持部材を多段に配置した熱緩和炉などがあり、さらには図8および図9に示すように直線、旋回を組み合わせて支持部材を配置した熱緩和炉としてもよい。
【0040】
加熱手段としては、温調風、スチーム、赤外線などを挙げることができ、またそれらを組み合わせて使用することもできる。
【0041】
延伸工程を経たPOFはTgc近傍の温度付近に加熱されると、凍結された残留歪みが開放され収縮する。熱緩和炉内のPOFは支持部材上に布置しており無張力の状態であるため、収縮の際に激しく不規則に揺動することがある。例えばPOFの上方に加熱手段を設けている熱緩和炉の場合、激しく揺動するPOFは前記加熱手段と接触することがある。このため、POFと加熱手段との間に接触防止部材を設けることが好ましい。熱緩和炉の側面に加熱手段が設けられている場合についても同様に、POFと側面加熱手段との間に接触防止部材を設けることが好ましい。
【0042】
接触防止部材は、接触防止部材とPOFが接触した際POF表面に損傷を与えず、かつ加熱手段の加熱効果を著しく低下させない、耐熱性のある部材であることが好ましい。このような部材として例えば、ポリアミド系などの樹脂やガラス、金属などを用いることができる。
【0043】
接触防止部材の形状は、特に限定しないが、加熱手段の加熱効率が低減しにくい開孔部を有しているネット状シートが好適に使用できる。さらにネット状シートを使用する場合はPOFへの加熱効果を低下させることの少ない開孔率の高いネット状シートを使用することが好ましい。
【0044】
ネット状シートの開孔部の形状は、円形、多角形いずれでもよいが、開孔部の短目方向長さと長目方向長さは、それぞれ150mm以下の大きさであることが好ましい。150mm以下であると、POFが激しく揺動しても開口部からPOFが飛び出ることがない。
【0045】
熱緩和処理を行う際のPOFの本数は限定しない。1本でも複数本でも同時に熱緩和処理することができる。
【0046】
ただし、熱緩和炉内の雰囲気温度は、POFの鞘材が溶融状態とならないような温度にすることが好ましい。このような温度範囲であれば、POFの表面に支持部材との、あるいはPOF同士間の接触痕が発生することが少ないためである。
【0047】
次に本発明の製造方法によって製造するのに好ましい形態のPOFについて説明する。
【0048】
本発明の製造方法で製造されるPOFの芯材としては、非晶性の透明重合体が好適であり、例えばメタクリル酸メチルの単独重合体、またはメタクリル酸メチルと他の単量体との共重合体(メタクリル酸メチル共重合体)が好ましい。更に、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソブルニル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ナフチル等のメタクリル酸エステルとこれら単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸エステル系共重合体、あるいはこれらポリマーの水素原子の全部あるいは一部が重水素原子で、置換された重水素化重合体等が使用可能であり、その他の透明重合体、透明ブレンド物も使用可能である。
【0049】
メタクリル酸メチル共重合体としては、原料の全単量体量を100質量%として、メタクリル酸メチル70質量%以上と、メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体30質量%以下とを重合してなる共重合体であることが好ましい。メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体としては、例えばメタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸−2,2,2−トリフルオロエチル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル類、耐熱性の向上を目的としてN−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド等のマレイミド化合物などの単量体が挙げられる。
【0050】
芯材の製造法は、特に制限は無く、公知の重合方法により製造することができるが、異物の混入等の面から連続塊状重合もしくは連続溶液重合法を採用するのが好ましい。
【0051】
次に鞘材としては、公知の材料が使用可能である。熱処理時のPOFの取り扱い性を向上させ、POFの径斑を低減する点から、(Tgc+10)℃以下で溶融状態とならないものが好ましい。また、良好な伝送特性を有するPOFが得られる点で、フッ素系メタクリレートの単独重合体、フッ素系メタクリレートとメタクリル酸エステル系単量体との共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ化ビニリデン単位を主成分とする共重合体、α−フルオロメタクリレート系樹脂、及びそれらの混合物を用いることが好ましい。
【0052】
本発明において、POFの構造としては、公知のものが用いられ、例えば、芯−鞘の2層構造を有するPOF、芯部が屈折率分布を有するようなグレーデットインデックス型POF、芯部、または芯部及び鞘部が複数種の重合体を多層状に配置した構造を有するPOF、一本のファイバ中に複数の芯鞘構造を有する多芯状のPOF等が挙げられる。これらのPOFの外周に耐溶剤性や耐熱性等の機能を有する保護層を被覆したものとすることも可能である。保護層としては、公知の材料が使用可能であるが、力学的強度に優れたフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体が好ましく用いられる。
【0053】
以上に説明したPOFを用い、その外周に被覆層を公知の方法により形成することにより光ファイバケーブルを製造することができる。被覆層の材料としては、従来使用されているナイロン12、ポリ塩化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリエチレン、ポリウレタン、ペルプレン等を用いることができる。
【0054】
また、上記のように製造された光ファイバケーブルの先端に公知の方法によりプラグを配置することにより、プラグ付き光ファイバケーブルとして使用することができる。プラグとしては公知のものが使用可能である。
【実施例】
【0055】
以下に本発明の実施例を示す。尚、熱収縮率の評価方法は以下の通りである。
【0056】
(熱収縮率の測定)
予めPOFに1m(L0)間隔で目印を付け、このPOFを90℃に設定した乾熱乾燥機内に、乾燥機内壁に触れないようにして放置し、24時間後、このPOFを取り出し、室温(約20℃)まで放冷したのち目印の間隔(L1)を測定し、L0およびL1から下記式(1)を用いて熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=〔(L0−L1)/L0〕×100 ........(1)
【0057】
芯が、Tgc=112℃のポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、第一鞘が、フッ素化メタクリレート/メチルメタクリレート共重合体、第二鞘が、Tg=℃のビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる3層構造のPOFを溶融紡糸により形成後、延伸処理を施した。さらに延伸処理を施したPOFを、ガラス繊維の表面をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で処理した、開口数が40%のメッシュシート上に布置し、図11に示すような、IRヒーター及び温調風を備え、炉内の雰囲気温度を99℃になるように設定した熱緩和炉内を前記メッシュシート上に布置した状態で搬送しながら約60秒間、熱緩和処理を施した。
【0058】
このようにして得られたPOFの熱収縮率を測定したところ、0.3%であり、非常に短い緩和時間ながらも、熱収縮率の小さな非常に優れたPOFが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の熱緩和処理の実施状況の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の熱緩和処理の実施状況の一例を示す模式図である。
【図3】支持部材上のPOF状況の一例を示す模式図である。
【図4】支持部材上に設置する突起状部材の一例を示す模式図である。
【図5】支持部材上に設置する突起状部材の一例を示す模式図である。
【図6】支持部材上に設置する突起状部材の一例を示す模式図である。
【図7】熱緩和炉の一例を示す模式図である。
【図8】熱緩和炉の一例を示す模式図である。
【図9】熱緩和炉の一例を示す模式図である。
【図10】熱緩和炉の一例を示す模式図である。
【図11】熱緩和炉の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0060】
1 プラスチック光ファイバ(POF)
2 コンベアベルト
3 コンベアベルト搬送ロール
4 ロール
5 突起状部材
6a スパイラル式熱緩和炉(平面図)
6b スパイラル式熱緩和炉(正面図)
7a 複合スパイラル式熱緩和炉(平面図)
7b 複合スパイラル式熱緩和炉(正面図)
8a XYZ式熱緩和炉(平面図)
8b XYZ式熱緩和炉(正面図)
9a XZ式熱緩和炉(平面図)
9b XZ式熱緩和炉(正面図)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸工程で延伸処理されたプラスチック光ファイバを加熱炉内で熱緩和処理するプラスチック光ファイバの製造方法であって、プラスチック光ファイバを支持部材により支持しながら加熱炉内を搬送して熱緩和処理を行うことを特徴としたプラスチック光ファイバの製造方法。
【請求項1】
延伸工程で延伸処理されたプラスチック光ファイバを加熱炉内で熱緩和処理するプラスチック光ファイバの製造方法であって、プラスチック光ファイバを支持部材により支持しながら加熱炉内を搬送して熱緩和処理を行うことを特徴としたプラスチック光ファイバの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−225805(P2007−225805A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45730(P2006−45730)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】
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