説明

プラスチック光ファイバ素線及びケーブル

【課題】高温環境下で熱処理を行った際の伝送損失の低下を抑制し得るプラスチック光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】ポリメチルメタクリレート系樹脂からなる芯と、該芯の周囲に設けた少なくとも1層の鞘層とを有し、該芯に接する鞘層が反応性官能基末端を有するエチレンーテトラフルオロエチレン系共重合体を含むことを特徴とするプラスチック光ファイバ素線。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック光ファイバ素線及びケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック光ファイバ素線は、透明樹脂からなる芯の周囲を該透明樹脂より低屈折率の樹脂からなる鞘層で囲んだ構造を有し、芯と鞘層との境界で光を反射させることにより芯内で光信号を伝送する媒体である。通常、プラスチック光ファイバは、物理的あるいは化学的な損傷を防止するために芯と鞘層とからなるプラスチック光ファイバ素線の外側に被覆層を設けたプラスチック光ファイバケーブルとして使用されている。そして近年の通信情報量の増加に伴い、屋内通信のみならず屋外や車載用途等、あらゆる環境下でプラスチック光ファイバケーブルは使用され始めており、その為、高温条件に耐えるプラスチック光ファイバが要求されている。具体的には、ケーブルの端末部において被覆を付けたままコネクタのフェルールに取り付けても信頼性が得られるように、ファイバが使用中熱によって縮み被覆の中に入り込む(以下、「ピストニング」と呼ぶ)程度が極力少ないプラスチック光ファイバが求められている。そしてピストニングを抑える方法としてケーブルを100℃前後の条件下で2時間以上4時間程度放置して熱処理する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−099447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、生産性の観点から、ピストニング抑制の為の熱処理にかかる時間は少なければ少ないほど好ましい。熱処理時間を少なくする方法としては熱処理の温度を上げる方法が考えられるが、特許文献1に記載のプラスチック光ファイバケーブルでは110〜120℃といった高温条件下で熱処理した場合、熱処理時間の短縮は可能だが、伝送損失が大幅に低下してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討した結果、プラスチック光ファイバ素線の芯と接する鞘層を構成する樹脂として、フッ素樹脂本来の特性を阻害しない範囲で変性させたフッ素樹脂を使用することで、110〜120℃という高温環境下で熱処理を行った際の伝送損失の低下を抑制し得るプラスチック光ファイバ素線及びケーブルを完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のプラスチック光ファイバケーブルである。
〔1〕ポリメチルメタクリレート系樹脂からなる芯と、該芯の周囲に設けた少なくとも1層の鞘層とを有し、該芯に接する鞘層が反応性官能基末端を有するエチレンーテトラフルオロエチレン系共重合体を含むことを特徴とするプラスチック光ファイバ素線。
〔2〕前記反応性官能基末端を有するエチレンーテトラフルオロエチレン系共重合体が、カーボネート変性エチレンーテトラフルオロエチレン系共重合体である〔1〕に記載のプラスチック光ファイバ素線。
【0006】
〔3〕前記反応性官能基末端を有するエチレンーテトラフルオロエチレン系共重合体が150〜200℃の範囲に融点を有し、ナトリウムD線で20℃で測定した屈折率が1.37〜1.41であり、メルトフローレート(230℃、荷重3.8kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mm)が5〜100g/10分であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のプラスチック光ファイバ素線。
〔4〕〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のプラスチック光ファイバ素線の外側に熱可塑性樹脂から形成される被覆層を有するプラスチック光ファイバケーブル。
〔5〕前記鞘層が少なくとも2層以上からなり、最外層の該鞘層が、テトラフルオロエチレン成分が0モル%を超え55モル%以下、ヘキサフルオロプロペン成分が8〜25モル%、ビニリデンフルオライド成分が30〜92モル%を含む共重合体からなり、該最外層の鞘層の外側に接する被覆層がポリアミド系樹脂からなる〔4〕に記載のプラスチック光ファイバケーブル。
【発明の効果】
【0007】
本発明のプラスチック光ファイバ素線及びケーブルは、110〜120℃の高温環境下で熱処理を行った際の伝送損失の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態のプラスチック光ファイバケーブルの一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態のプラスチック光ファイバケーブルの一例の断面模式図である。図1に示したプラスチック光ファイバケーブルは、1本の芯1を有する単芯プラスチック光ファイバケーブルである。該プラスチック光ファイバケーブルは、中央に芯1を有し、芯1の外周に被覆形成された鞘層2と、鞘層2の外周に被覆形成された被覆層3の3層とを備えている。この場合、芯1と鞘層2を合わせてプラスチック光ファイバ素線という。被覆層3の外側にさらに外被覆層(図示せず)を設けても良い。これにより屋外での長期使用や接触する化学薬品の影響からプラスチック光ファイバ素線をより確実に保護することができる。
【0010】
芯を構成する樹脂(以下、「芯樹脂」ともいう。)は、ポリメチルメタクリレート系樹脂を使用する。ポリメチルメタクリレート系樹脂とは、メチルメタクリレートの単独重合体、或いはメチルメタクリレート成分を50重量%以上含んだ共重合体をいう。メチルメタクリレート成分と共重合可能な成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸エステル類、イソプロピルマレイミドのようなマレイミド類、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンなどがあげられ、これらの中から一種以上適宜選択して共重合させたものが好ましい。ポリメチルメタクリレート系樹脂の分子量は、メルトフローの観点から、重量平均分子量として8万〜20万程度のものが成形しやすいので好ましく、特に10万〜12万が好ましい。
【0011】
鞘層は、芯の外側に被覆形成される。鞘層を設けることで、鞘層と芯との界面での反射により曲がった光ファイバ内を光信号が伝播される。該鞘層は少なくとも1層の鞘層からなる。該鞘層が2層以上の場合には内側に位置する鞘層を構成する樹脂よりも外側に位置する鞘層を構成する樹脂の屈折率を低くすれば、臨界角を超えて鞘層を突き抜けた光の一部を鞘層と鞘層との界面反射により回収することが可能になるので好ましい。本願発明のプラスチック光ファイバ素線は、芯に接する鞘層を構成する樹脂(以下、「第1鞘樹脂」ともいう。)に、以下の特徴を有する変性フッ素樹脂を用いる。
【0012】
変性フッ素樹脂とは、全部または一部の水素原子がフッ素原子で置換されたエチレン性モノマー(塩素等のフッ素以外のハロゲン原子を含んでいてもよい。以下、「含フッ素モノマー」ともいう。)の重合体、または該含フッ素モノマーと共重合可能な単量体との共重合体であって、主鎖あるいは側鎖に反応性官能基、例えばカーボネート基(カルボニルジオキシ基)、エステル基、ハロホルミル基、カルボキシル基などを導入して、変性したものをいう。該反応性官能基を導入することで、隣接する層、特に熱可塑性樹脂からなる被覆層との接着性を向上させることができる。それらの中でもカーボネート基を有するものが好ましい。カーボネート基を有する反応性官能基を導入した変性フッ素樹脂は、変性フッ素樹脂の重合時に重合開始剤としてパーオキシカーボネートを用いることで容易に導入できることや、幅広い樹脂との接着性が優れることや、それらのなかでも特にナイロン12等のポリアミド樹脂との接着性が特に優れること等の利点を有する。その結果、プラスチック光ファイバに優れた耐薬品性や耐熱性等を付与することができる。
これらの反応性官能基の導入は公知の方法によって行うことができるが、重合開始剤として共重合体に導入することが好ましく、得られる共重合体100質量部に対して、該重合開始剤0.05〜20質量部であることが好ましい。
【0013】
本実施形態の光ファイバ素線においては、芯に接する鞘層を構成する樹脂として、上記変性フッ素樹脂の中でも特にエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を主骨格とする変性フッ素樹脂を使用する。前記エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を主骨格とする変性フッ素樹脂を芯に接する鞘層を構成する樹脂として使用すると、110〜120℃と言う高温環境下で熱処理を行った際の伝送損失の低下を抑制することができ、好ましい。
エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体におけるエチレン/テトラフルオロエチレンのモル比は、特に限定されないが、成形性と耐薬品性のバランスの観点から、70/30〜30/70であることが好ましい。
【0014】
さらに、テトラフルオロエチレン、及びエチレンとともに、これらと共重合可能な他の単量体(例えば、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロイソブテン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)等のオレフィンを共重合させたものであってもよい。この場合、エチレン/テトラフルオロエチレン/共重合可能な他の単量体のモル比は、特に限定されないが、成形性と耐薬品性のバランスの観点から、(10〜80)/(20〜80)/(0〜40)であることが好ましい。
より好ましい変性フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン62〜80モル%、エチレン20〜38モル%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜10モル%からなる単量体成分から得られるポリマー鎖を有するカルボニルジオキシ基含有共重合体や、テトラフルオロエチレン20〜80モル%、エチレン10〜80モル%、ヘキサフルオロプロピレン0〜30モル%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜10モル%からなる単量体成分から得られるポリマー鎖を有するカルボニルジオキシ基含有共重合体が挙げられる。上記変性フッ素樹脂は耐薬品性、耐熱性に優れるために好ましい。
変性フッ素樹脂の融点は150℃から200℃の範囲にあることが好ましい。融点がかかる温度範囲であることにより、ポリメチルメタクリレート系樹脂の熱分解が許容できる300℃以下の成型温度で成形可能であるので好ましい。
【0015】
本実施形態においては、該変性フッ素樹脂として反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を使用する。ここで「反応性官能基末端を有する」とは主鎖及び/又は側鎖の末端に反応性官能基を有することをいう。
該エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体樹脂は、テトラフルオロエチレン、及びエチレンとともに、プロピレン等のモノマーを共重合させたものであっても差し支えない。なかでも融点が150℃から200℃の範囲で、メルトフローレート(230℃、荷重3.8kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mm)が5〜100g/10分であれば、ポリメチルメタクリレート系樹脂の熱分解が許容できる300℃以下の成型温度で成形可能であるので好ましい。
【0016】
芯に接する鞘層は、反応性官能基末端を有するエチレンーテトラフルオロエチレン系共重合体を70重量%以上含んだ鞘樹脂から形成されることが好ましく、より好ましくは85重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。
また芯に接する鞘層には、その透明性を損なわせない範囲で、反応性官能基末端を有するエチレンーテトラフルオロエチレン系共重合体以外の添加剤成分を含ませてもよい。使用目的に応じて、抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、金属不活性剤、滑剤、難燃(助)剤、充填剤等の添加剤を使用することができる。
【0017】
該樹脂は23℃におけるショアD硬度(ASTM D2240)の値が60〜80の範囲にある。ショアD硬度は高くなるが、第1鞘樹脂に反応性官能基を導入することで芯との接着性、外側に位置する鞘層との接着性が生じ、容易に剥離し難く、問題は生じないと考えられる。
このような変性フッ素樹脂としては、市販品として、ダイキン工業社製のネオフロンEFEP RP5000及びRP4020、並びに旭硝子社製のフルオンLM−ETFEAH2000などが挙げられる。このうち、ネオフロンEFEP RP5000及びRP4020は、反応性官能基としてカルボニルジオキシ基を末端に有するカーボネート変性エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体である。
鞘層が2層以上の場合には、第1鞘層を構成する樹脂よりも外側に位置する鞘層を構成する樹脂として、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペンとビニリデンフルオライドからなる3元共重合体またはヘキサフルオロプロペンとビニリデンフルオライドからなる2元共重合体を使用することが好ましい。(以下、鞘層が2層以上の場合には芯に近い鞘層から順に第1鞘層、第2鞘層・・・とする。)
【0018】
最外鞘層を構成する樹脂としては、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペンとビニリデンフルオライドからなる3元共重合体またはヘキサフルオロプロペンとビニリデンフルオライドからなる2元共重合体が好ましく、より好ましくはテトラフルオロエチレン成分が0モル%を超え55モル%以下、ヘキサフルオロプロペン成分が8〜25モル%、ビニリデンフルオライド成分が30〜92モル%を含む共重合体からなる樹脂である。テトラフルオロエチレン成分が28モル%を超え40モル%以下、ヘキサフルオロプロペン成分が8〜22モル%、ビニリデンフルオライド成分が40〜62モル%を含む共重合体からなる樹脂が更に好ましい。特に好ましくはテトラフルオロエチレン成分が28モル%を超え35モル%以下、ヘキサフルオロプロペン成分が9〜13モル%、ビニリデンフルオライド成分が52〜60モル%の樹脂である。該樹脂はナイロン12の被覆層と非常に強固に接着し、その引き抜き強度が強くピストニングを抑制する効果ある。本実施形態において、被覆層樹脂はポリアミド系樹脂が好ましく、その中でもナイロン12がより好ましい。
【0019】
本実施形態のプラスチック光ファイバケーブルは110〜120℃に1時間以上放置した際の伝送損失の低下を抑制することができ、これにより熱処理時間の短縮することができる。ピストニングとは、裸線とその直接被覆層との間に生じる、裸線の引っ込み又は突出のことであり、その測定方法としては、50cmのケーブルの両端を垂直に切断し、試験環境下に所定時間放置した後、引っ込みか或いは飛び出しを顕微鏡で観察するものである。
【0020】
プラスチック光ファイバ素線においては、素線の直径は200μm〜3000μmであり、第1鞘層の厚さは5μm〜50μmであり、第2鞘層以降の厚さは2μm〜50μmであり、被覆層の厚さは50〜700μmであることが好ましい。鞘層の厚さが5μm以上であれば変性フッ素樹脂を被覆することによる芯との接着性が向上する。また、鞘層の厚さが50μm以内であれば光ファイバとして機能する芯の断面積を十分に確保することができる。最外鞘層の厚さが2μmであればナイロン12の被覆層と非常に強固に接着する。これはプラスチック光ファイバ素線とナイロン被覆を一体として、端末のコネクタ固定などの端末処理ができることになり信頼性の信頼性を大きく向上させるものである。ナイロン12樹脂は十分な剛性と寸法安定性があり、コネクタの固定方法でも、ナイロン12の被覆層を締め付けて固定することも十分可能になる。また、経済性を考慮すれば50μm以内が好ましい。被覆層の厚さが50μm以上であれば、接着層と非常に強固に接着し、機械強度も向上して好ましい。また、厚さが700μm以下であれば、ケーブルに適度な柔軟性を保持させることができる。より好ましい厚さは100〜300μmである。
【0021】
本実施形態のプラスチック光ファイバケーブルはそのまま使用することも可能であるが、該ケーブルの外周に第二の被覆層を被覆形成したプラスチック光ファイバケーブルとすることで、機械的・化学的な耐久性を向上させることができる。第二の被覆層を構成する樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系エラストマー樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。被覆層を被覆するにあたっては、クロスヘッドダイによりプラスチック光ファイバ素線上に被覆層を形成する方法を好ましく使用することができる。
【実施例】
【0022】
[評価方法]
(1) 屈折率測定
ナトリウムD線を使用し、20℃で測定した値を採用した。
(2)メルトフローレート測定
ASTM D1238に準拠して測定した。
(3)融点測定
融点は、示差走査熱量測定によって測定した。測定は、セイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量計(EXSTAR DSC6200)を用いて、サンプルを昇温速度20℃/分で昇温することで測定した。
(4)ショアD硬度
ASTM D2240に準拠して測定した。
【0023】
<実施例1>
芯樹脂として、屈折率が1.492のポリメチルメタクリレート樹脂であって、重量平均分子量が10万、メルトフローレートが230℃、荷重3.8Kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mmの条件で1.5g/10分であるものを用いた。鞘樹脂として、テトラフルオロエチレン43モル%、エチレン41モル%、ヘキサフルオロプロピレン15.5モル%、パーフルオロ(1,1,5−トリハイドロ−1−ペンテン)0.5モル%からなる単量体成分から得られるポリマー鎖の主鎖及び側鎖の末端にカルボニルジオキシ基を導入したカルボニルジオキシ基含有共重合体であって、屈折率が1.385、メルトフローレートが230℃、荷重3.8Kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mmの条件で11g/10分、融点が166℃、ショアD硬度の値が67の変性フッ素樹脂を用いた。
上記芯樹脂、鞘樹脂を2層複合ダイに導入し、ダイの温度を240℃で紡糸した。ダイから吐出されたストランドを2倍に延伸し熱処理して、芯径980μm、鞘層の厚み10μmの直径1000μmのプラスチックファイバ素線を得た。
【0024】
次に、このプラスチック光ファイバ素線を電線被覆用のクロスヘッドダイに導入し、210℃で、ナイロン12を250μmの厚さに被覆し、直径が1500μmのケーブルを得た。このケーブルの波長650nm、入射NA0.15で、52m−2mのカットバック法によって測定した伝送損失は135dB/kmであった。
次に、上記プラスチック光ファイバケーブルを二本用意し、一本は熱処理を行わず、一本を115℃に1時間の熱処理を行った。熱処理を行ったケーブルの伝送損失を測定したところ129dB/kmであり、伝送損失を向上させることが出来た。また、105℃で24時間放置した後のピストニングは、熱処理を行ったケーブルは0.09mmで、熱処理を行わなかったケーブルは0.64mmであり、1時間の熱処理で十分ピストニングを抑えることができた。
【0025】
<実施例2>
芯樹脂として、屈折率が1.492のポリメチルメタクリレート樹脂であって、重量平均分子量が10万、メルトフローレートが230℃、荷重3.8Kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mmの条件で1.5g/10分であるものを用いた。鞘樹脂として、屈折率が1.385、メルトフローレートが230℃、荷重3.8Kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mmの条件で11g/10分、融点が166℃、ショアD硬度の値が67の変性フッ素樹脂(ダイキン工業社製 ネオフロンEFEP RP4020)を用いた。
上記芯樹脂、鞘樹脂を2層複合ダイに導入し、ダイの温度を240℃で紡糸した。ダイから吐出されたストランドを2倍に延伸し熱処理して、芯径980μm、鞘層の厚み10μmの直径1000μmのプラスチックファイバ素線を得た。
【0026】
次に、このプラスチック光ファイバ素線を電線被覆用のクロスヘッドダイに導入し、210℃で、ナイロン12を250μmの厚さに被覆し、直径が1500μmのケーブルを得た。このケーブルの波長650nm、入射NA0.15で、52m−2mのカットバック法によって測定した伝送損失は135dB/kmであった。
次に、上記プラスチック光ファイバケーブルを二本用意し、一本は熱処理を行わず、一本を115℃に1時間の熱処理を行った。熱処理を行ったケーブルの伝送損失を測定したところ129dB/kmであり、伝送損失を向上させることが出来た。また、105℃で24時間放置した後のピストニングは、熱処理を行ったケーブルは0.09mmで、熱処理を行わなかったケーブルは0.64mmであり、1時間の熱処理で十分ピストニングを抑えることができた。
【0027】
<実施例3>
芯樹脂として、屈折率が1.492のポリメチルメタクリレート樹脂であって、重量平均分子量が10万、メルトフローレートが230℃、荷重3.8Kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mmの条件で1.5g/10分であるものを用いた。第一鞘樹脂として、テトラフルオロエチレン43モル%、エチレン41モル%、ヘキサフルオロプロピレン15.5モル%、パーフルオロ(1,1,5−トリハイドロ−1−ペンテン)0.5モル%からなる単量体成分から得られるポリマー鎖の主鎖及び側鎖の末端にカルボニルジオキシ基を導入したカルボニルジオキシ基含有共重合体であって、屈折率が1.385、メルトフローレートが230℃、荷重3.8Kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mmの条件で11g/10分、融点が166℃、ショアD硬度の値が67の変性フッ素樹脂を用いた。
【0028】
第二鞘樹脂として、ビニリデンフルオライド57モル%、テトラフルオロエチレン32モル%、ヘキサフルオロプロペン11モル%からなる共重合体であって、メルトフローレートが230℃、荷重3.8Kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mmの条件で8g/10分、ショアD硬度の値が40、屈折率が1.364で、融点120℃の樹脂を用いた。
上記芯樹脂、鞘樹脂を3層複合ダイに導入し、ダイの温度を240℃で紡糸した。ダイから吐出されたストランドを2倍に延伸し熱処理して、芯径960μm、第一の鞘層の厚み10μm、第二の鞘層の厚み10μmの直径1000μmのプラスチックファイバ素線を得た。
【0029】
次に、このプラスチック光ファイバ素線を電線被覆用のクロスヘッドダイに導入し、210℃で、ナイロン12を250μmの厚さに被覆し、直径が1500μmのケーブルを得た。このケーブルの伝送損失は135dB/kmであった。
次に、上記プラスチック光ファイバケーブルを二本用意し、一本は熱処理を行わず、一本を115℃に1時間の熱処理を行った。熱処理を行ったケーブルの伝送損失を測定したところ133dB/kmであり、伝送損失を向上させることが出来た。また、105℃で24時間放置した後のピストニングは、熱処理を行ったケーブルは0.03mmで、熱処理を行わなかったケーブルは0.23mmであり、1時間の熱処理で十分ピストニングを抑えることができた。
【0030】
<実施例4>
芯樹脂として、屈折率が1.492のポリメチルメタクリレート樹脂であって、重量平均分子量が10万、メルトフローレートが230℃、荷重3.8Kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mmの条件で1.5g/10分であるものを用いた。第一鞘樹脂として、屈折率が1.385、メルトフローレートが230℃、荷重3.8Kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mmの条件で、11g/10分、融点166℃、ショアD硬度の値が67である変性フッ素樹脂(ダイキン工業社製 ネオフロンEFEP RP4020)を用いた。第二鞘樹脂として、ビニリデンフルオライド57モル%、テトラフルオロエチレン32モル%、ヘキサフルオロプロペン11モル%からなる共重合体であって、メルトフローレートが230℃、荷重3.8Kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mmの条件で8g/10分、ショアD硬度の値が40、屈折率が1.364で、融点120℃の樹脂を用いた。
上記芯樹脂、鞘樹脂を3層複合ダイに導入し、ダイの温度を240℃で紡糸した。ダイから吐出されたストランドを2倍に延伸し熱処理して、芯径960μm、第一の鞘層の厚み10μm、第二の鞘層の厚み10μmの直径1000μmのプラスチックファイバ素線を得た。
【0031】
次に、このプラスチック光ファイバ素線を電線被覆用のクロスヘッドダイに導入し、210℃で、ナイロン12を250μmの厚さに被覆し、直径が1500μmのケーブルを得た。このケーブルの伝送損失は135dB/kmであった。
次に、上記プラスチック光ファイバケーブルを二本用意し、一本は熱処理を行わず、一本を115℃に1時間の熱処理を行った。熱処理を行ったこのケーブルの伝送損失を測定したところ133dB/kmであり、伝送損失を向上させることが出来た。また、105℃で24時間放置した後のピストニングは、熱処理を行ったケーブルは0.03mmで、熱処理を行わなかったケーブルは0.23mmであり、1時間の熱処理で十分ピストニングを抑えることができた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のプラスチック光ファイバ素線は、110〜120℃の高温環境下で熱処理を行った際の伝送損失の低下を抑制することが可能である為、ピストニング小さく、且つ、伝送損失が小さいプラスチック光ファイバ素線を短時間で作製することが出来る。
【符号の説明】
【0033】
1 芯
2 鞘層
3 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメチルメタクリレート系樹脂からなる芯と、該芯の周囲に設けた少なくとも1層の鞘層とを有し、該芯に接する鞘層が反応性官能基末端を有するエチレンーテトラフルオロエチレン系共重合体を含むことを特徴とするプラスチック光ファイバ素線。
【請求項2】
前記反応性官能基末端を有するエチレンーテトラフルオロエチレン系共重合体が、カーボネート変性エチレンーテトラフルオロエチレン系共重合体である請求項1記載のプラスチック光ファイバ素線。
【請求項3】
前記反応性官能基末端を有するエチレンーテトラフルオロエチレン系共重合体が150〜200℃の範囲に融点を有し、ナトリウムD線で20℃で測定した屈折率が1.37〜1.41であり、メルトフローレート(230℃、荷重3.8kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mm)が5〜100g/10分であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプラスチック光ファイバ素線。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラスチック光ファイバ素線の外側に熱可塑性樹脂から形成される被覆層を有するプラスチック光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記鞘層が少なくとも2層以上からなり、最外層の該鞘層が、テトラフルオロエチレン成分が0モル%を超え55モル%以下、ヘキサフルオロプロペン成分が8〜25モル%、ビニリデンフルオライド成分が30〜92モル%を含む共重合体からなり、該最外層の鞘層の外側に接する被覆層がポリアミド系樹脂からなる請求項4に記載のプラスチック光ファイバケーブル。

【図1】
image rotate