説明

プラスチック用発泡剤

【課題】 本発明は、発泡剤組成物をプラスチックマトリックスに導入し、前記発泡剤組成物から少なくとも二酸化炭素ガスを放出することによりプラスチックマトリックス内に気泡を形成する、発泡プラスチック成形品成形方法に関するもので、この方法では前記発泡剤組成物はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、遷移金属および/またはアンモニウムの炭酸塩、炭酸水素塩およびカルバミン酸塩から選択される少なくとも1種の二酸化炭素担体、ならびに少なくとも1種の酸担体から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡プラスチック成形品の製造方法に関し、発泡剤組成物をプラスチックマトリックスに導入し、前記発泡剤組成物からガスを放出することにより前記プラスチックマトリックス内に気泡を形成する、発泡プラスチック成形品の製造方法に関する。本発明はまた、発泡剤自体、および前記製造方法により成形されたプラスチック成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡プラスチック成形品の製造は、発泡剤を使用して達成され、発泡剤はプラスチックと混合するか、あるいはプラスチックに溶解され、この発泡剤がプラスチック中にガスを生成あるいは遊離させる。その場合、ガスの生成は発泡剤または発泡剤中の成分を分解または反応させて達成し得る。ガスの遊離は加熱および/または化学反応により開始および/または誘発されることが多い。
【0003】
発泡処理では、プラスチック成形品は単位容積に対して重量が減少し、すなわち密度が減少する。重量減少は、プラスチック材料の代わりにガスを含む発泡プラスチック成形品のパーセント割合、すなわちプラスチック成形品の総容積に対する気泡容積の実質的割合に対応している。
【0004】
プラスチック成形品の発泡は様々な目的、例えば成形品の重量削減、熱絶縁部品の形成、スポンジ、他の吸収性発泡体の形成、または気泡体の形成に役立つ。それぞれの使用目的に応じ、重量の減少または気泡の割合の増加により機械的特性、熱絶縁特性、化学的特性および他の材料特性が大きく変化という事実が、考慮される。
【0005】
現時点では、異なる発泡方法間で以下の相違点が指摘されている:
1.ガスを溶融プラスチック材料に物理的に導入し、膨張させる物理的方法。その場合、生成したガス気泡により、プラスチックが発泡する。ここでの短所は、装置および制御技術に関して複雑な要素が多く、コストも高い。複雑要素が多く、費用もかかるガス供給により発泡させるために、プラスチック成形機、例えば押出機を改造しなければならない。さらなる問題としては、プラスチックの溶融特性に関連してガスの放出と制御とをマッチさせることがある。
【0006】
2.いわゆる溶解法では、プラスチック部は、適切な溶媒により固形プラスチック材料から溶解する。これにより、望ましく重量を減少させる空洞および空隙が生じる。しかし、この方法は、環境保護の理由からすでに信頼できないものとなっており、また、そこに含有されるプラスチック成分と共に使用される溶媒が、主に廃棄およびリサイクルの問題が起こるという問題にも直面する。
【0007】
3.化学的発泡方法では、過去に発泡剤としてHCFCを有する製品が主に使用された。しかし環境適合性の理由で、これらの発泡剤は次第に避けられ、他の発泡剤に置き換わっている。ジアゾ化合物、N‐ニトロソ化合物、スルホニルヒドラジド、尿素誘導体、グアニジン誘導体、ホウ化水素/水系、炭酸塩および炭酸水素塩が次第に使用されてきている。アゾ化合物の1つの欠点は、分解および発泡による深刻なアンモニア形成であり、健康を害する恐れがあると疑われている。多くの炭酸塩および炭酸水素塩は分解温度に達すると、添加剤を追加しなければ、制御不能に分解する。この制御不能な発泡の結果として、望まれていない変色および/または異臭をまねく可能性がある。
【0008】
4.発泡体はポリウレタン(PUR)から非常に容易に生成可能である。この発泡体はとりわけ発泡ゴムとして知られ、洗浄用スポンジ、マットレス材料または枕として、さらには建造物、冷蔵庫、保温および保冷装置の断熱体、ならびに絶縁パイプ装置用に使用される。ポリウレタンフォームの用途のさらなる領域は以前から、例えば自動車構造物などで拡大している。低熱伝導性の気泡ガスが発泡セル内に残留するように、断熱目的のポリウレタンフォームを閉鎖気孔構造で形成する。以前ではトリクロロフルオロメタンが気泡ガスとして使用されることが多かった。しかしながらそのハロゲン化炭化水素のオゾン破壊特性のために、トリクロロフルオロメタンは、最初は二酸化炭素と、その後シクロペンタンと大々的に置き換わり、それにより現在、発泡セルは残り物として通常、二酸化炭素とシクロペンタンの約10〜30%の混合物を含有している。
【0009】
ほとんどの発泡剤および発泡システム自体またはその反応成形体は、環境または健康の面で信頼できず、および/または、加工または取り扱い時の問題が生じることが多い。このような取り扱い上の問題は、例えば制御不能に急速、発熱的であったり、または非常に緩慢なガス形成の場合もあり、このことは結果として、プラスチック成形品での正確な発泡体成形が全く行われず、あるいは例えば不均一な気泡形成や望ましからざる気泡サイズ(過剰に大きいかまたは過剰に小さい)などのため、発泡体構造が目的の要件に適合しない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、発泡状態およびガス形成が、従来の発泡剤系より良好に制御可能で、発泡剤が環境および/または健康の面で欠点がほとんど無いかあるいは全く無く、取り扱いやすさと良好な成形品特性が際立つ、発泡プラスチック成形品を製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本目的は、本明細書の冒頭に記載された種類の一つの発泡プラスチック成形品の製造方法により達成され、発泡剤組成物が、プラスチックマトリックスに導入され、前記発泡剤組成物から少なくとも二酸化炭素ガスを放出することにより前記プラスチックマトリックス内に気泡を形成する。ここで発泡剤組成物は以下の成分を含有する:
a)アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、遷移金属および/またはアンモニウムの炭酸塩、炭酸水素塩およびカルバミン酸塩から選択される少なくとも1種の二酸化炭素担体、ならびに
b)少なくとも1種の酸担体。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発泡剤組成物は、少なくとも1種の二酸化炭素担体および少なくとも1種の酸担体を含有するので、ガス形成の制御を優れたものにする。ガス形成の調整は、それらの成分の選択およびその割合が適していることで達成し得る。本発明の二酸化炭素担体はそれ自体、膨らまし剤を固める成分として少なくとも一部では公知である。酸担体からの酸により二酸化炭素担体の反応が起こり、発泡作用のための二酸化炭素ガスが生成または遊離する。驚くべきことに、これらの基礎物質、二酸化炭素担体および酸担体は発泡プラスチック成形品に適しており、このような状況下で、従来の発泡剤より優れた多数の利点を有する。例えば、本発明のほとんどの発泡剤組成物は健康に無害であり、一般的に食品に適してさえおり、また、環境的に好ましいものである。したがって本発明の製造方法は、従来の溶解法や化学発泡法よりも優れ、またポリウレタンフォームの製造方法に対しても非常に有利である。
【0013】
当技術水準の多くの方法に勝る本発明の製造方法のさらなる利点は、二酸化炭素担体および酸担体ならびにそれらの組成物を適切に選択することにより、二酸化炭素ガスの放出が良好に制御可能であるため、発泡反応の制御性が優れることである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の製造方法の好ましい実施態様において、発泡剤組成物は少なくとも2種の異なる酸担体を含み、それらの中では、第1酸担体(ST1)の反応率(ROR)は28%CO2未満、好ましくは20%CO2未満であり、少なくとも1種の第2酸担体(ST2)の反応率(ROR)は28%CO2を超え、好ましくは36%CO2を超え、ここでRORは以下のように定義される:
ROR=温度21℃で8分間にわたる二酸化炭素担体と酸担体をある化学量論比で反応させるとき、完全な反応で理論的に求められるCO2ガス量に対する、実際に発生したCO2ガス量(mol)のパーセント表示(%CO2
【0015】
本発明の製造方法のさらに好ましい実施態様では、発泡剤組成物は少なくとも2種の異なる酸担体を含み、それらの中では、少なくとも1種の第1酸担体(ST1)および少なくとも1種の第2酸担体(ST2)の反応率(ROR)は、少なくとも10%CO2、好ましくは少なくとも20%CO2の差がある。ここでRORは上記のように定義される。
【0016】
本発明において、異なる反応率(ROR)を有する、すなわち第1酸担体(ST1)の反応率が第2酸担体(ST2)よりも低い、少なくとも2種の異なる酸担体を使用すると、とりわけ均一な発泡および均質の気泡形成という驚くほどの利点が得られる。その点に関しては理論に捉われることなく、少なくとも1種の遅反応性および高速反応性の酸担体の組み合わせにより、最初に比較的高速で速く反応する酸担体により、多数の小さな発泡体の気泡が形成され、その後、比較的低速での遅反応性の酸担体の反応で気泡が満たされることが想定されるためである。その場合、非常に規則正しい発泡と気泡形成が観察される。この観測は驚嘆に値すべきもので、予想外のものであった。
【0017】
少なくとも1種の二酸化炭素担体は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸アルミニウム、炭酸水素アルミニウム、炭酸鉄、炭酸水素鉄、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、およびこれらの混合物から選択されることが特に好ましい。
【0018】
二酸化炭素担体として本発明に適切な前述の化合物は、主に健康に無害であり、一部では食品に適してさえおり、環境的にも好ましい。それらは酸担体または酸担体の混合物を用いて二酸化炭素の遊離の制御に極めて良好に適している。
【0019】
本発明に使用される少なくとも1種の酸担体は、リン含有オキソアニオンの塩、好ましくはリン酸塩、縮合リン酸塩、ホスホン酸塩、亜リン酸塩、混合リン酸水酸化物およびシアヌル酸塩から選択されることが好ましい。
【0020】
少なくとも1種の酸担体は、酸性ピロリン酸ナトリウム(SAPP)、リン酸一カルシウム一水和物(MCPM)、リン酸二カルシウム二水和物(DCPD)、硫酸ナトリウムアルミニウム(SAS)、リン酸ナトリウムアルミニウム(SALP)、リン酸カルシウムマグネシウムアルミニウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸マグネシウムおよびこれらの混合物から選択されることが格段に好ましい。
【0021】
当該技術に熟達した者は、本発明の知識を用いて、ほとんど試験することもなく、所与のプラスチック材料を使用した発泡操作のため、プラスチックマトリックスに導入する発泡剤組成物の量を確定することができる。発泡剤組成物の量は、適用される成形または発泡条件に関連して、とりわけ、使用し発泡させるプラスチック材料、および発泡剤組成物ならびに目的の発泡特性に依存している。本発明の製造方法の好ましい実施態様では、プラスチックマトリックス重量に対して0.2〜10重量%の発泡剤組成物がプラスチックマトリックスに導入される。さらに好ましくは0.5〜6重量%の発泡剤組成物、特に好ましくは1〜3重量%の発泡剤組成物がプラスチックマトリックスに導入される。
【0022】
発泡剤組成物は、できる限り大気温度において、二酸化炭素ガスの形成を伴う分解、または反応消失が起きないように選択するか、あるいはそのような組成物とする。二酸化炭素ガス放出は、高温で、一般的には流動性または発泡可能な状態のプラスチック材料の加工温度でのみ起こることが好ましい。本発明の製造方法において、発泡剤組成物から、少なくとも二酸化炭素ガスの放出は、80〜400℃、好ましくは110〜350℃、特に好ましくは140〜300℃の範囲の温度で起こるとよい。
【0023】
単数または複数の二酸化炭素担体および単数または複数の酸担体の選択の他に、発泡剤組成物の特性および反応性は添加剤にも影響され得る。本発明の好ましい実施態様では、発泡剤組成物はさらに、二酸化炭素担体と酸担体間の早発反応を防止または遅延させるための分離剤を含み、それはトウモロコシデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、修飾小麦粉などの穀物デンプン;焼成ケイ酸、疎水性ケイ酸、親水性ケイ酸などの二酸化ケイ素類;リン酸三カルシウム;炭酸カルシウム;硫酸カルシウム;シラン;油脂;およびこれらの混合物から好ましくは選択される。分離剤を添加すると二酸化炭素担体と酸担体間の早発反応を防止または遅延させるだけでなく、プラスチックマトリックスでの反応率にも影響を及ぼし得る。
【0024】
発泡剤組成物の導入は、いわゆるマスターバッチにより行われることが好ましい。用語マスターバッチは、顆粒の形態でプラスチックマトリックスに包埋され、最終的使用におけるより高い含有量で存在する添加剤を表すために使用する。マスターバッチはプラスチック(原料ポリマー)に添加し、それを着色するか、あるいはその特性を改変する。マスターバッチは、ペースト、粉末または液体の形態で様々な物質の添加に対っする利点を有し、それらは加工信頼性の高さを確保し、加工に非常に適している。マスターバッチにより、可能な限り多くの添加剤を濃縮する、すなわち単数または複数の添加剤を包埋するために可能な限り少量のプラスチックマトリックス材料を使用することが一般的に試みられている。マスターバッチを製造するために、添加剤、例えば着色顔料もまた、原料ポリマー、すなわち未処理プラスチック粒と混合される。その後、該混合物を押出機で溶融し、次いで粒状化する。あるいは、各成分を異なる計量秤量装置を使用し、押出機内へ直接投入混合し溶融することも可能である。マスターバッチは計量性が良好であるという理由から取り扱いを簡単にする。
【0025】
本発明にしたがった発泡剤のマスターバッチを作製する場合に、注意を払うべきことは、マスターバッチ用のポリマー担体材料の融点を発泡剤分解温度より確実に低くすることである。したがって、低融点ポリマー、例えばポリエチレン、特にLDPEまたはLLDPEおよびEVAをマスターバッチに使用することが好ましい。
【0026】
本発明の製造方法は、従来の発泡剤で発泡させることも可能なプラスチック全種類を実質的に含む発泡プラスチック成形品を製造するのに適している。本発明の製造方法は、発泡熱可塑性プラスチックを生成するために本発明にしたがって使用されることが特に好ましい。適切な熱可塑性ポリマーの例は以下のとおりである:
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテンならびにそれらのブロック、グラフトおよび共重合体などのポリオレフィン;標準ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、アクリロニトリルスチレン、アクリルゴムなどのスチレン重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロメチレン−ヘキサフルオロメチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、アクリル重合体、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどのハロゲン含有ビニル重合体;ポリオキシメチレンなどのポリアセテート;ポリアミド(PA−6、PA−66、PA−610、PA−612、PA−11、PA−12等)、ポリカーボネート、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリイミド、ポリアリールケトン、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリフェニレンなどの直鎖重縮合体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリビニル安息香酸などの不飽和アルコールおよびアミンまたはそれらのアシル誘導体もしくはアセタールの重合体;フェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタンなどの架橋重縮合体および付加重合体;セルロースエステルなどの修飾天然物質;前述のポリマー類の共重合体または混合物を含む。
【0027】
これから、例を挙げて実施態様により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0028】
実施例1
200gの低密度ポリエチレン(LD−PE)をブラベンダー混練機内で溶融し、2重量%(4g)の発泡剤組成物を添加し、さらに30秒間、混練を行った。混練機を停止し、プラスチックを取り出した。同時に発泡が起こり、容積が増加、すなわち材料密度が低下した。
【0029】
発泡剤組成物は、二酸化炭素担体として炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を、対応する酸成分と定量的関係、中和量に相当するように含有していた。様々な試験に使用した酸成分、および製造されたプラスチック成形品の密度を、下記表1に記載する。密度は発泡後に確定され、また発泡させなかった成形品をコントロールとした。
【0030】
以下の酸担体を使用した:
SAPP10 = RORが10%CO2である酸性ピロリン酸ナトリウム
SAPP28 = RORが28%CO2である酸性ピロリン酸ナトリウム
SAPP40 = RORが40%CO2である酸性ピロリン酸ナトリウム
SAS = 硫酸ナトリウムアルミニウム
MCPM = リン酸一カルシウム一水和物
DCPD = リン酸二カルシウム二水和物
【0031】
【表1】

【0032】
実施例2
200gのポリアミド66(PA66;Badamid、BADA Plast、ビュール、ドイツ)をブラベンダー混練機内で溶融し、2重量%(4g)の発泡剤組成物を添加し、さらに30秒間、混練を行った。混練機を停止し、プラスチックを取り出した。同時に発泡が起こり、容積が増加、すなわち材料密度が低下した。
【0033】
発泡剤組成物は、二酸化炭素担体として炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を、対応する酸成分と定量的関係、中和量に相当するように含有していた。様々な試験に使用した酸成分、および製造されたプラスチック成形品の密度を、下記表2に記載する。密度は発泡後に確定され、また発泡させなかった成形品をコントロールとした。
【0034】
【表2】

【0035】
実施例3
低密度ポリエチレン(LD−PE)を使用する実施例1において、ここでは発泡剤組成物は20重量%のSAPP40および80重量%のSALP(=リン酸ナトリウムアルミニウム;Na3Al214(PO48)を含有していた。このRORが異なる2種の発泡酸を含む発泡剤組成物で達成された軽量化と密度は、純粋SALPで達成された軽量化と密度に相当するが、発泡酸の組み合わせで発泡したプラスチックの気泡構造の方がかなり均一であった。
【0036】
より均一な気泡構造の理由は、反応性が早い酸担体により最初に気泡になる核が形成され、その後これらがより反応性がより遅い酸担体により「発泡」されると思われる。反応性が早い酸担体のみを使用すれば、気泡が互いに結合し非常に大きな気泡が形成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分a)およびb)を含む発泡剤組成物をプラスチックマトリックスに導入し、前記発泡剤組成物から少なくとも二酸化炭素ガスを放出することにより前記プラスチックマトリックス内に気泡を形成することを特徴とする発泡プラスチック成形品の製造方法。
a)アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、遷移金属および/またはアンモニウムの炭酸塩、炭酸水素塩およびカルバミン酸塩から選択される少なくとも1種の二酸化炭素担体、ならびに
b)少なくとも1種の酸担体
【請求項2】
前記発泡剤組成物が、少なくとも2種の異なる酸担体を含み、それらの中では、少なくとも1種の第1酸担体(ST1)の反応率(ROR)は28%CO2未満、好ましくは20%CO2未満であり、少なくとも1種の第2酸担体(ST2)の反応率(ROR)は28%CO2を超え、好ましくは36%CO2を超え、前記RORは以下のように:
ROR=温度21℃で8分間にわたる二酸化炭素担体と酸担体をある化学量論比で反応させるとき、完全な反応で理論的に求められるCO2ガス量に対する、実際に発生したCO2ガス量(mol)のパーセント表示(%CO2
と定義されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記発泡剤組成物が、少なくとも2種の異なる酸担体を含み、それらの中では、少なくとも1種の第1酸担体(ST1)および少なくとも1種の第2酸担体(ST2)の反応率(ROR)は、少なくとも10%CO2、好ましくは少なくとも20%CO2の差があって、RORは上記のように定義されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の二酸化炭素担体が、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸アルミニウム、炭酸水素アルミニウム、炭酸鉄、炭酸水素鉄、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウムおよびこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の酸担体が、リン含有オキソアニオンの塩、好ましくはリン酸塩、縮合リン酸塩、ホスホン酸塩、亜リン酸塩、混合リン酸水酸化物およびシアヌル酸塩から選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の酸担体が、酸性ピロリン酸ナトリウム(SAPP)、リン酸一カルシウム一水和物(MCPM)、リン酸二カルシウム二水和物(DCPD)、硫酸ナトリウムアルミニウム(SAS)、リン酸ナトリウムアルミニウム(SALP)、リン酸カルシウムマグネシウムアルミニウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸マグネシウムおよびこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記プラスチックマトリックス重量に対し、0.2〜10重量%、好ましくは0.5〜6重量%、特に好ましくは1〜3重量%の前記発泡剤組成物が前記プラスチックマトリックスに導入されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記発泡剤組成物から、少なくとも二酸化炭素ガスの放出が、80〜400℃、好ましくは110〜350℃、特に好ましくは140〜300℃の範囲の温度で起こることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記発泡剤組成物がさらに二酸化炭素担体と酸担体間の早発反応を防止または遅延させるための分離剤を含み、該分離剤がトウモロコシデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、修飾小麦粉などの穀物デンプン;焼成ケイ酸、疎水性ケイ酸、親水性ケイ酸などの二酸化ケイ素類;リン酸三カルシウム;炭酸カルシウム;硫酸カルシウム;シラン;油脂;およびこれらの混合物から選択された、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記プラスチックが熱可塑性プラスチックであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法により形成される発泡プラスチック成形品。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかで定義された発泡剤組成物であって、a)アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、遷移金属および/またはアンモニウムの炭酸塩、炭酸水素塩およびカルバミン酸塩から選択される少なくとも1種の二酸化炭素担体、ならびにb)少なくとも1種の酸担体を含み、粉末形態で、またはでプラスチックマトリックスに包埋された顆粒形態(マスターバッチ)である発泡剤組成物。
【請求項13】
発泡プラスチック成形品を成形するための請求項12記載の発泡剤組成物の使用。

【公表番号】特表2013−501837(P2013−501837A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524201(P2012−524201)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061336
【国際公開番号】WO2011/018398
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(504098118)
【氏名又は名称原語表記】CHEMISCHE FABRIK BUDENHEIM KG
【Fターム(参考)】