説明

プラスチック製袋状容器

【課題】袋本体の内部を複数の室に分けている分離帯を、外力によって確実に破断することができるプラスチック製袋状容器を提供する。
【解決手段】扁平な形態の袋本体を有し、上記袋本体の内部が袋構成材を接着した分離帯によって複数の室に分けられている構造を持つ、プラスチック製袋状容器について、
分離帯12は、全体として、外力により破断しない強接着によって接着されており、その分離帯の一部に、複数の室の一方13から他方14へ向かう突き出し部分を形成し、
突き出し部分17には、外力によって分離帯を破断可能にする手段として、複数の室の一方から他方へ向かって分離帯に入り込んだ破断誘導部18を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平な形態の袋本体を有し、上記袋本体の内部が袋構成材を接着した分離帯によって複数の室に分けられている構造を持つ、プラスチック製袋状容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
袋状容器は柔軟性があり、また薄くも厚くも形成することができる。袋状容器には一つの収納部分を有するものと、複数の収納部分を有するものとがある。複数の収納部分を持つものも、種類の異なるものを別々に封入しているだけで、例えば異なる物質を開封前に混合可能な状態にすることができる構造のものは少ない。
【0003】
特開平7−236570号は複数の収納部分を持つ例である。しかし、同号のものは外力により破断可能な密閉内袋とこの内袋を内部に配置する密閉外袋からなり、内袋が化学物質の内部に埋められているので、破断したかどうかを直接目で確認することが難しい。
【0004】
特開2005−154274号はシートを重ね合わせたパック材内部に、所要成分を封入した円球状の易破断性カプセルを内蔵したもので、カプセルに易破断部が形成されている。しかしカプセルは樹脂シートで囲まれているため力を加えにくく、確かに破断したかどうかを目で見て確認することも容易とはいえない
実用新案登録第3122906号は水成二酸化塩素水を封入した易破断性の内袋と、水成二酸化塩素水と接触して二酸化塩素ガスを発生する粉末とを気体透過性外袋に同封したものである。内袋の破断には外力で圧迫する必要があるが、易破断部として例示されている部分は強度の低く設定された直線状であるため、破断がどの部分から開始するか分からず、破裂するような状況になりやすい。
【0005】
【特許文献1】特開平7−236570号
【特許文献2】特開2005−154274号
【特許文献3】実用新案登録第3122906号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、袋本体の内部を複数の室に分けている分離帯を、外力によって確実に破断することができるプラスチック製袋状容器を提供することである。また、本発明の他の課題は、分離帯を境に一方に室に封入されている液体を他方の室に封入されている目的物へ確実かつ迅速に供給できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本発明は、扁平な形態の袋本体を有し、上記袋本体の内部が袋構成材を接着した分離帯によって複数の室に分けられている構造を持つ、プラスチック製袋状容器として、
分離帯は、全体として、外力により破断しない強接着によって接着されており、その分離帯の一部に、複数の室の一方から他方へ向かう突き出し部分を形成し、
突き出し部分には、外力によって分離帯を破断可能にする手段として、複数の室の一方から他方へ向かって分離帯に入り込んだ破断誘導部を形成する
という手段を講じたものである(請求項1)。
【0008】
本発明はプラスチック製袋状容器というものを対象とするが、樹脂シートや樹脂フィルムを袋構成材として含むものであり、プラスチックという文言から来る硬いイメージが優先するものではない。袋状ということから柔軟性のある容器であることが示唆され、袋本体として、外力が加えられると自由に形を変える形態を有することが望ましい。
【0009】
本発明のプラスチック製袋状容器は、扁平な形態の袋本体を有している。扁平な形態の典型は2枚のシートの縁を接着した構造であるが、マチ(襠)を備えたものも含まれる。上記袋本体は、その内部が袋構成材を接着した分離帯によって複数の室に分けられている構造を持つ。この構造は、異なる物質を複数の室に分けて封入しておき、開封前に上記複数の物質を混合可能な状態にするための手段である。
【0010】
上記袋本体は、最小限2室を有している必要がある。3室以上に分かれている袋本体も本発明に含まれるが、その場合にも最小限2室の間の分離帯が後述の破断容易な構造を備えていれば良い。
【0011】
上記の分離帯は、全体として、外力により破断しない強接着によって接着されている。ここで強接着とは、終末的破壊に至るのと同程度の接着力、つまり袋本体が破壊されることになるのと同等の外力まで耐える強度に接着されていることを意味している。
【0012】
その分離帯の一部に、複数の室の一方から他方へ向かって突き出し部分が形成されている。突き出し部分は、複数の室の一方に外力が加えられたときにその外力の働く方向を分離帯に向かわせる指向性を与えるもので、折線状、彎曲状ないしは膨らみ箇所状などの形態を取る。
【0013】
分離帯は、その突き出し部分が弱く接着された弱接着部として形成されていることが望ましい(請求項2)。弱接着部は、分離部をヒートシール機によって形成するときには、他の部分よりも低温でヒートシールすることによって得られる。
【0014】
例えば分離帯が折れ曲がった折り曲げ箇所を有し、複数の室の一方から他方へ向かうようになっているその折り曲げ箇所は突き出し部分に該当する(請求項3)。分離帯は全体が折れ曲がっているもの、又は部分的に折れ曲がっているものを含む。
【0015】
また、分離帯は、複数の室の一方から他方へ向かって膨らんだ膨らみ箇所を有し、その膨らみ箇所が複数の室の一方から他方へ向かう突き出し部分になっているものを含む(請求項4)。膨らみ箇所の部分は大小様々であり、形態的にも円形や多角形などの他不定形などを含む。
【0016】
突き出し部分には、外力によって分離帯を破断可能にする手段として、複数の室の一方から他方へ向かって分離帯に入り込んだ破断誘導部を形成する。分離帯は、破断誘導部により幅が狭まり、その結果破断強度が減少する。
【0017】
袋本体の1室は液体が封入される部分とし、袋本体のもう1室は目的物が封入される部分とするとき、上記の液体封入室部分から目的物封入室部分へ向かうように突き出し部分を形成する(請求項5)。これにより、1室を打撃すると分離帯が破断誘導部で破断し、液体をもう1室の目的物へ向かわせることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、袋本体の内部を複数の室に分けている高強度の分離帯を、外力によって確実に破断することができるプラスチック製袋状容器を提供することができ、また、本発明によれば、分離帯を境にして一方の室に封入されている液体を、開封前に、他方の室に封入されている目的物へ確実かつ迅速に供給することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1は本発明に係るプラスチック製袋状容器10の例1を示すもので、2枚のシートをヒートシール機によって接着した構造の袋本体から構成されている。全周縁11と、袋本体の内部を2室13、14に分けている分離帯12は、強接着で接着されており、各室13、14には接着前に液体15と、目的物16が夫々封入されている。
【0020】
図1の例において、分離帯12は突き出し部分として折れ曲がった折り曲げ箇所17を途中に有し、その折り曲げ箇所17は2室の一方の室13から他方の室14へ向かうように突き出している。そして、上記一方の室13から他方の室14へ向かって分離帯12に入り込んだ破断誘導部18が設けられている。
【0021】
例1における破断誘導部18はほぼU字型であり、折り曲げ箇所17の外角へ向かって切り込み状に形成されている。強接着の分離帯12は、ヒートシール機を用いて2枚のシートを接着した構造であり、折り曲げ箇所17の前後の所要範囲を低温度でヒートシールし、接着力を低下させた弱接着部12Aを形成している。なお、破断誘導部18は非接着部がほぼU字状のヒートシール型を有する装置により形成される。
【0022】
図2は図1のII−II線部分における横断面を示しており、幅の狭い弱接着部12′の部分が図示されている。袋本体を構成する熱可塑性プラスチックシート19として2重ポリエステルフィルム19aとナイロンフィルム19bの3層張り合わせフィルムを使用し、ナイロンフィルム19bを内面としてヒートシールされている。
【0023】
図3はさらに各部分をより詳細に示したもので、上記の構造によって形成されている分離帯12の強接着部は、破断誘導部18の分だけ幅の狭い弱接着部12′に形成するが、その幅は任意に調整可能である。
【0024】
このように構成される本発明のプラスチック製袋状容器10では、開封前に液体15の封入されている室13を打撃して使用する。一方の室13は液体15で満たされていることが、打撃力を破断誘導部18へ効果的に伝えるためには望ましく、確実に分離帯12を破断させることができる。分離帯12の破断により、液体15を目的物16に供給し必要な過程を経てから開封し内容物を取り出すことができる。
【0025】
図4は本発明の例2のプラスチック容器20を示すもので、突き出し部分としての折り曲げ箇所27の、一方の室側に相当する分離帯22の弱接着部22Aに、破断誘導部28として複数個のV字型切り込みから成る鋸歯状の凹凸を形成した例を示す。他の構成は例1の場合と全く同じであるので符号を援用し、詳細な説明を省略する。例2では全体として例1と同じように作用し、破断誘導部28の切り込みの何れかの箇所で破断する。
【0026】
図5は本発明の例3のプラスチック容器30を示すもので、分離帯32はほぼ水平で、複数の室33、34の一方の室33から他方34へ向かって半円弧状に膨らんだ膨らみ箇所37をその中央部に有し、その膨らみ箇所37が突き出し部分になっている例である。突き出し部分としての膨らみ箇所37内部の弱接着部32Aには、円弧の内側から外側に向かって切り込み状にほぼU字型の破断誘導部38が3箇所断続的に形成されている。
【0027】
例3では、一方の室33を打撃すると、打撃力は半円弧状の膨らみ箇所37の内部に形成された破断誘導部38に作用し、何れかの破断誘導部38が押し開かれて分離帯32が破断する。他の構成は例1の場合と全く同じであるので符号を援用し詳細な説明を省略するが、切り込みの個数が少ないほど破断力は集中すると考えられる。
【0028】
図6は本発明の例4のプラスチック容器40を示すもので、分離帯42は中央に向かってテーパー状に傾斜しており、その両側の2室43、44の一方の室43から他方44へ向かって半円弧状に膨らんだ膨らみ箇所47をその中央部に有し、その膨らみ箇所47が突き出し部分になっている例である。半円弧状の膨らみ箇所47内部の弱接着部42Aには、円弧の内側から外側に向かってほぼV字型の6、7箇所の切り込みから成る破断誘導部48が連続的に形成されている。
【0029】
例4では、一方の室43を打撃すると、打撃力は半円弧状の膨らみ箇所47の内部の破断誘導部48に作用し、破断誘導部48のどこかが押し開かれて分離帯42が破断する。例4はテーパー状の分離帯を有するので、破断誘導部48に打撃力を誘導しやすい。
【0030】
図7は本発明の例5のプラスチック容器50を示すもので、分離帯52は中央に向かってテーパー状に傾斜しており、その両側の2室53、54の一方の室43から他方44へ向かって円弧状に膨らんだ部分を有するより深い膨らみ箇所57を突き出し部分としてその中央部に有し、その膨らみ箇所57が突き出し部分になっている例である。膨らみ箇所57内部の弱接着部52Aには、円弧の内側から外側に向かってほぼU字型の3箇所の切り込みから成る破断誘導部58が断続的に形成されている。
【0031】
例5では、一方の室53を打撃すると、打撃力は円弧状の膨らみ箇所57の内部の破断誘導部58に作用し、破断誘導部58のどこかが押し開かれて分離帯52が破断する。例4はテーパー状の分離帯を有しかつ膨らみ箇所57が深いので、破断誘導部58に打撃力を誘導しやすいとともに、打撃力を膨らみ箇所57に集中させ易い。
【0032】
これまでは、分離帯の一部に、複数の室の一方から他方へ向かう突き出し部分を1箇所有する例について説明したが、複数箇所設けられる例を図8以下に示す。この場合、各突き出し部に夫々弱接着部を設ける。図8の例6は突き出し部分として2箇所の折り曲げ箇所67のある分離帯62により2室63、64に袋内が分けられており、その深いV字の底が破断誘導部68を兼ね、その前後が弱接着部62Aになっている。
【0033】
図9の例7は室の一方73から他方74へ向かう湾入状の3箇所の突き出し部分77から成る分離帯72を有し、その湾入状の底に切り込んで破断誘導部78を設けており、その前後の範囲は弱接着部72Aになっている。これは膨らみ箇所77の集合から成る破断誘導部78の例といえる。
【0034】
図10の例8は室の一方83から他方84へ向かう独立した湾入状の3箇所の突き出し部分87を設けた分離帯82を有し、それぞれの湾入状の底にU字状の破断誘導部88を1個ずつ設けており、その前後の範囲は弱接着部82Aになっている。この例では分離帯82のほぼ全域に及ぶ膨らみ箇所87により広範囲に液体を供給することができる。
【0035】
上記のように、この発明の場合分離帯で分けられている複数の室の一方から他方へ向かう突き出し部分を有することにより、本体に加えられた外力を突き出し部分に導き、突出し部分に破断誘導部を有することにより、突き出し部分によって導いた外力を破断誘導部に誘導し、さらに突き出し部分に弱く接着された弱接着部を設けることにより、分離帯を効果的に破断することができるものである。
【0036】
本発明のプラスチック製袋状容器は、分離帯を破ることによって目的物に液体を含浸させ、開封する前には液体を含浸させることがない。よって必要時に目的物に液体を含浸させるとともに、目的物が液体を含浸しない状態では取り出せないので、目的物が例えば手拭きのように膨張性の場合に誤って飲み込み、窒息する事故の防止に有効である。
【0037】
本発明のプラスチック製袋状容器に適用し得る物品としては、液体と固体を混合して使用するものが考えられ、例えば上記の手拭き類の他に、フェイスパック、保冷、保温材などの身の回り品、離乳食、スープなどの食品等を挙げることができる。液体としては水が主であるが、それ以外の液体も当然使用可能である。また、2液型の接着剤類や、着色剤と希釈液などを一組とする塗料、或いは化粧水として使用するための化粧料と水などについても適用することができ、これらの場合には、目的物も液体や粉体など流動性の物質2種類の組み合わせとなる。このように本発明はあらゆる種類の物品に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るプラスチック製袋状容器の例1を示す正面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】同じく要部断面を示すもので、Aは分離部破断前の、Bは破断後の説明図である。
【図4】本発明の例2を示す正面図である。
【図5】本発明の例3を示す正面図である。
【図6】本発明の例4を示す正面図である。
【図7】本発明の例5を示す正面図である。
【図8】本発明の例6を示す正面図である。
【図9】本発明の例7を示す正面図である。
【図10】本発明の例8を示す正面図である。
【符号の説明】
【0039】
10、20、30、40、50、60、70、80 プラスチック製袋状容器
11 全周縁
12、22、32、42、52、62、72、82 分離帯
12A、22A、32A、42A、52A、62A、72A、82A 弱接着部
13、23、33、43、53、63、73、83 一方の室
14、24、34、44、54、64、74、84 他方の室
15 液体
16 目的物
17、27、67 折り曲げ箇所
18、28、38、48、58、68、78、88 破断誘導部
19 熱可塑性プラスチックシート
37、37、57、77,87 膨らみ箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平な形態の袋本体を有し、上記袋本体の内部が袋構成材を接着した分離帯によって複数の室に分けられている構造を持つ、プラスチック製袋状容器であって、
分離帯は、全体として、外力により破断しない強接着によって接着されており、その分離帯の一部に、複数の室の一方から他方へ向かう突き出し部分を形成し、
突き出し部分には、外力によって分離帯を破断可能にする手段として、複数の室の一方から他方へ向かって分離帯に入り込んだ破断誘導部を形成した
ことを特徴とするプラスチック製袋状容器。
【請求項2】
分離帯は、その突き出し部分が弱く接着された弱接着部として形成されている請求項1記載のプラスチック製袋状容器。
【請求項3】
分離帯は折れ曲がった箇所を有し、その箇所が複数の室の一方から他方へ向かう突き出し部分になっている請求項1記載のプラスチック製袋状容器。
【請求項4】
分離帯は、複数の室の一方から他方へ向かって突き出した突出部分を有し、その突出部分が複数の室の一方から他方へ向かう突き出し部分になっている請求項1記載のプラスチック製袋状容器。
【請求項5】
袋本体の1室は液体が封入される部分であり、袋本体のもう1室は目的物が封入される部分であり、上記の液体封入室部分から目的物封入室部分へ向かう突き出し部分が形成されている請求項1記載のプラスチック製袋状容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−161212(P2009−161212A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341027(P2007−341027)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(394022277)株式会社スリーケイ (6)
【Fターム(参考)】