説明

プラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】隔壁に欠損部分を有するPDPのパネル面における不要な発光を防止することが出来るPDPの製造方法を提供する。
【解決手段】PDPの放電空間を放電セルC毎に区画する隔壁6を備え、この隔壁6の隣接する放電セルC間を区画する縦壁6Bにこの縦壁6Bを挟んで隣接する放電セルCを互いに連通させる欠損部分pが生じているPDPに対して、二次電子放出材料によって形成された保護層3の縦壁6Bの欠損部分pに対向する部分3aに向けてレーザ光bを照射する工程を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1および2は、従来のプラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)の構成を示している。
【0003】
この図1および2において、前面ガラス基板1の背面側に、行方向に延びる複数の行電極対(X,Y)と、この行電極対(X,Y)を被覆する誘電体層2が形成されており、さらに、この誘電体層2の背面が、酸化マグネシウム(MgO)等の二次電子放出材料によって形成された保護層3によって被覆されている。
【0004】
行電極対(X,Y)を構成する行電極XとYは、それぞれ、行方向に延びるバス電極Xa,Yaと、このバス電極Xa,Yaから対になっている相手の行電極側に延びて互いに放電ギャップgを介して対向する複数の透明電極Xb,Ybとから構成されている。
【0005】
この前面ガラス基板1と放電空間を介して平行に対向する背面ガラス基板4の前面ガラス基板1に対向する側の面上には、列方向に延びる複数の列電極Dと、この列電極Dを被覆する列電極保護層5と、この列電極保護層5上に形成されて放電空間の行電極対(X,Y)と列電極Dが交差する位置にそれぞれ形成される放電セルCを区画する隔壁6と、各放電セルC毎に赤,緑,青に色分けされた蛍光体層7とが形成されている。
【0006】
隔壁6は、それぞれ行電極対(X,Y)に対向する部分毎に、行方向に延びる二本の横壁6Aとこの二本の横壁6A間を列方向に延びる複数の縦壁6Bとによって略梯子形状に成形されていて、放電空間を各放電セルC毎に方形に区画しており、各放電セルCに、それぞれ、行電極対(X,Y)の放電ギャップgを介して対向して互いに対になっている透明電極XbとYbが対向されている。
【0007】
放電空間S内には放電ガスが封入されている。
【0008】
なお、この図1および2において、符号BSは、前面ガラス基板1の背面の非表示領域に形成された光吸収層を示している。
【0009】
このような構成のPDPは、その製造工程において、前面ガラス基板1と列電極保護層4が重ね合わされて放電空間内に放電ガスが封入された後に駆動試験が行われるが、このとき、一部の放電セルCが常時点灯してしまうことがある。 このような常時点灯する放電セルCにおける輝度は、他の放電セルCが点灯した場合の輝度よりも大きい場合が多く、その存在は、特にPDPが暗い画面を表示する場合のような低輝度表示の際に非常に目立つので、画像の表示品質を低下させてしまうことになる。
【0010】
PDPの製造工程において、製造したPDPに上記のような常時点灯する放電セルCが存在する場合には、前面ガラス基板1と背面ガラス基板4の封着前であれば、専用装置を用いてその常時点灯する放電セルCの修復が行われるが、常時点灯する放電セルCの存在が前面ガラス基板1と背面ガラス基板4の封着後に確認された場合には、行電極対(X,Y)の常時点灯する放電セルCに対向している透明電極XbまたはYbがレーザによって切断されることにより、その放電セルCが不点灯化、すなわち、その放電セルC内での放電が不可にされる。
【0011】
図3は、レーザによって常時点灯する放電セルCが不点灯化される工程の状態を示しており、レーザ発生装置Lにより、背面ガラス基板4上に重ね合わされて封着された前面ガラス基板1の上方から、常時点灯する放電セルCに対向している透明電極Xbに向かってレーザ光bが照射されて、この透明電極Xbがその基端部分において切断される。
【0012】
図4は、常時点灯する放電セルC(下段中央の放電セルCA)に対向する透明電極Xbの基端部分qがレーザによって切断されて、この放電セルCAが不点灯化された状態を示しており、この不点灯化された放電セルCA内では、透明電極XbとYb間で放電が発生することは無くなる。
【0013】
しかしながら、この図4に示されるように、上記のようにして不点灯化された放電セルCAとこの放電セルCAに隣接する放電セル(例えば、図4の下段右側の放電セルCB)との間を区画する隔壁6の縦壁6Bの保護層3に対向する部分に、隔壁の成形不良等によって欠損部分pが生じているような場合には、放電セルCB内において放電が発生する際に、この放電セルCB内での放電が隣接する不点灯化処理された放電セルCA内に縦壁6Bの欠損部分pを介して拡がる、所謂、放電干渉が生じ、これによって、放電セルCAが誤点灯してしまうという問題が発生する。
【0014】
さらに、隔壁6の縦壁6Bに欠損部分pが生じていると、この欠損部分pに放電セルCAまたは放電セルCBから蛍光体層7を形成する蛍光材料が食み出してしまい、上記のような放電干渉が発生する際に欠損部分pに食み出した蛍光材料が発光して、パネル面に色むらを形成してしまうといった問題が発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この発明は、上記のような従来のPDPが有している問題点を解決することが出来るPDPの製造方法を提供することをその技術的課題の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明によるPDPの製造方法は、上記目的を達成するために、放電空間を介して一対の基板が対向され、この一対の基板の一方の基板の他方の基板に対向する側に、放電空間内において放電を発生させる放電電極とこの放電電極を被覆する誘電体層とこの誘電体層を被覆する二次電子放出材料によって形成された保護層が形成され、他方の基板の一方の基板に対向する側に、放電空間をそれぞれ放電電極に対向する単位発光領域毎に区画する隔壁を備えたPDPの製造方法であって、前記隔壁の隣接する単位発光領域間を区画する部分にこの部分を挟んで隣接する単位発光領域を互いに連通させる欠損部分が生じたPDPに対して、保護層の隔壁の欠損部分に対向する部分に向けてレーザ光を照射する工程を有していることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明は、放電空間を介して一対の基板が対向され、この一対の基板の一方の基板の他方の基板に対向する側に、放電空間内において放電を発生させる放電電極とこの放電電極を被覆する誘電体層とこの誘電体層を被覆する二次電子放出材料によって形成された保護層が形成され、他方の基板の一方の基板に対向する側に、放電空間をそれぞれ放電電極に対向する放電セル毎に区画する隔壁を備え、この隔壁の隣接する放電セル間を区画する部分にこの部分を挟んで隣接する放電セルを互いに連通させる欠損部分が生じているPDPに対して、保護層の隔壁の欠損部分に対向する部分に向けてレーザ光を照射する工程を有するPDPの製造方法を、最良の実施形態としている。
【0018】
この実施形態によるPDPの製造方法は、放電空間を放電セル毎に区画する隔壁の隣接する放電セルの間を区画する部分にこの隔壁を挟んで隣接する放電セル間を連通させるような欠損部分が生じているPDPに対して実施される。
【0019】
すなわち、この隔壁の欠損部分に対向している部分の保護層に向かってレーザ光が照射されて、二次電子放出材料によって形成された保護層の欠損部分に対向する部分からの欠損部分内への二次電子放出量を減少させる処理が行われる。
【0020】
このような二次電子放出量を減少させる処理としては、例えば、レーザ光の照射によって保護層の隔壁の欠損部分に対向している部分を除去するか、または、保護層の隔壁の欠損部分に対向している部分の二次電子放出材料を変質させることによって、その部分の保護層の二次電子放出係数を低下させる方法が挙げられる。
【0021】
この実施形態によるPDPの製造方法によれば、PDPが隔壁の隣接する放電セル間を区画する部分にこの隣接する放電セル間を連通させるような欠損部分を有している場合でも、レーザ光の照射による保護層の加工処理によって、PDPの隔壁の欠損部分に対向する部分の保護層からの欠損部分内への二次電子の放出量を減少させることが出来るので、欠損部分を有する隔壁を挟んで隣接する一方の放電セル内において放電が発生された際に、この放電が欠損部分を介して他方の放電セル内に拡がろうとすると、この欠損部分内では二次電子量が不足して放電し難くなり、これによって、PDPの隣接する放電セル間における隔壁の欠損部分を介した放電干渉を防止することが出来るようになる。
【0022】
さらに、PDPの隔壁の欠損部分に放電セル内から蛍光体層を形成する蛍光材が食み出している場合でも、この欠損部分内では放電がほぼ消滅してしまうので、この欠損部分に食み出した蛍光材が発光するのが防止される。
【0023】
以上のようにして、この製造方法によって製造されたPDPは、放電セル間を区画する隔壁に欠損部分が生じている場合でも、この欠損部分の存在によるパネル面での不要な発光の発生が防止されるので、表示品質の低下が防止されるようになる。
【0024】
また、上記実施形態によるPDPの製造方法において、レーザ光の照射によって保護層を形成する二次電子放出材料を変質させることによって、保護層の欠損部分に対向する部分の二次電子放出係数を低下させる場合には、この部分の保護層は除去されないので、保護層による誘電体層の保護機能が損なわれることはない。
【0025】
この実施形態によるPDPの製造方法は、放電セルとこの放電セルに隣接する他の放電セルとの間に位置する部分の隔壁に欠損部分が生じたプラズマディスプレイパネルに対して実施されるようにするのが好ましい。
【0026】
これによって、PDPが放電セルと隣接する放電セルとの間を区画する隔壁に欠損部分が存在する場合でも、この隔壁の欠損部分の存在によって放電干渉が発生するのが防止されて、不点灯化された放電セルが誤発光するのが防止される。
【0027】
また、この実施形態によるPDPの製造方法は、放電の発生が不可にされた放電セル(不点灯化された放電セル)とこの放電セルに隣接する他の放電セルとの間に位置する部分の隔壁に欠損部分が生じたプラズマディスプレイパネルに対して実施されるようにするのが好ましい。
【0028】
これによって、PDPが不点灯化された放電セルを有し、この不点灯化された放電セルと隣接する放電セルとの間を区画する隔壁に欠損部が存在する場合でも、この隔壁の欠損部分の存在によって放電干渉が発生するのが防止されて、不点灯化された放電セルが誤発光するのが防止される。
【0029】
さらに、この実施形態によるPDPの製造方法において、レーザ光としてYAGレーザ光を使用するのが好ましい。
【0030】
このYAGレーザ光は、一般に、放電電極の放電セルに対向して放電を発生させる部分を切断することによりこの放電セル内での放電を不可にする工程に使用されるので、このPDPの製造方法にYAGレーザ光が用いられることによって、放電セル内での放電を不可にする工程と保護層にレーザ光を照射する工程とを一台のYAGレーザ装置によって行うことが可能になり、これによって、PDPの製造工程を簡素化することが出来るようになる。
【実施例1】
【0031】
図5は、この発明の第1実施例におけるPDPの製造方法を示す工程説明図である。
【0032】
この図5の(a)図は、前述した図4においてPDPの隔壁6の縦壁6Bの欠損部分pが形成されている部分をV2−V2線に沿って断面した図であり、(b)図は、(a)図の欠損部分pの形成部分における補修工程の状態を示した図である。
【0033】
なお、この図5の(a)図および(b)図において、PDPの構成は前述した図1および2の構成と同様であるため、図1および2と同一の符号が付されている。
【0034】
すなわち、このPDPは、前面ガラス基板1の背面側に、行方向に延びる複数の行電極対(X,Y)と、この行電極対(X,Y)を被覆する誘電体層2が形成されており、さらに、この誘電体層2の背面が、酸化マグネシウム(MgO)等の二次電子放出材料によって形成された保護層3によって被覆されている。
【0035】
この前面ガラス基板1と放電空間を介して平行に対向する背面ガラス基板4の前面ガラス基板1に対向する側には、列方向に延びる複数の列電極Dと、この列電極Dを被覆する列電極保護層5と、この列電極保護層5上に形成されて放電空間の行電極対(X,Y)と列電極Dが交差する位置にそれぞれ形成される放電セルCを区画する隔壁6と、各放電セルC毎に赤,緑,青に色分けされた蛍光体層7とが形成されている。
【0036】
隔壁6は、各行電極対(X,Y)に対向する部分毎に、列方向に所要の間隔を空けて行方向に互いに平行に延びる二本の横壁6Aとこの二本の横壁6A間を行方向に所要の間隔を空けて列方向に延びる複数の縦壁6Bとによって略梯子形状に成形されていて、前面ガラス基板1と背面ガラス基板4の間の放電空間を各放電セルC毎に方形に区画している。
【0037】
そして、この隔壁6の少なくとも縦壁6Bの前面ガラス基板1に対向する側の頂面が保護層3に当接されていて、それぞれ行方向に隣接する放電セルCの間の連通が遮断されている。
【0038】
図5(a)において、行電極Xの透明電極が切断されて不点灯化された放電セルC(放電セルCA)と、この放電セルCAに行方向において隣接する他の放電セル(図5(a)において紙面に対して奥側に位置する放電セル)との間を区画する隔壁6の縦壁6Bの保護層3に対向する部分に、欠落によって、放電セルCAと隣接する放電セルとを連通させる欠損部分pが形成されている(図4参照)。
【0039】
PDPの製造工程において、互いに重ね合わされた前面ガラス基板1と背面ガラス基板4の封着工程の終了後に、常時点灯する放電セルCAの存在が検出されると、前述したように、前面ガラス基板1の上方からのレーザ照射による行電極XまたはYの透明電極の切断によって(図3参照)、常時点灯する放電セルCAの不点灯化が行われる。
【0040】
そして、さらに、この不点灯化された放電セルCAと行方向に隣接する他の放電セル(図4の放電セルCB)との間を区画する隔壁6の縦壁6Bに、図5(a)に示されるような欠損部分pの存在が検出されると、図5(b)に示されるように、レーザ発生装置L1により、背面ガラス基板4上に重ね合わされて封着された前面ガラス基板1の上方から、保護層3の縦壁6Bの欠損部分pに対向している部分3a(図5(a)参照)に向かってレーザ光b1が照射されて、この保護層3の欠損部分pに対向する部分3aが除去される。
【0041】
この保護層3の欠損部分pに対向する部分3aの除去に使用されるレーザ発生装置L1には、YAGレーザ装置を用いるのが好ましい。
【0042】
このYAGレーザ装置は、一般に、放電セルを不点灯化する際の行電極の透明電極の切断に用いられており、そして、上記のようにして保護層3を部分的に除去する際の加工条件は、YAGレーザ装置の使用条件の範囲内である。
【0043】
このため、PDPの製造工程において、YAGレーザ装置を用いることによって、放電セルの不点灯化工程と保護層の部分的な除去工程とを一台のYAGレーザ装置によって行うことが可能になり、PDPの製造工程を簡素化することが出来る。
【0044】
レーザ発生装置L1による縦壁6Bの欠損部分pに対向する保護層3の部分3aの除去工程は、前面ガラス基板1の上方において、例えば酸化マグネシウム(MgO)によって形成された保護層3の成膜面(誘電体層2に接する面)にレーザの焦点を合わせることによって行われる。
【0045】
このレーザ発生装置L1から照射されるレーザ光b1の加工エネルギは、(レーザ出力)×(照射時間)によって表わされる。
【0046】
従って、実施例におけるPDPの製造方法においては、レーザ発生装置L1からのレーザ光の出力と照射時間が互いの相互関係によって調整されることにより、レーザ光b1による加工エネルギが、保護層3を部分的に除去するのに最適な大きさとなるように設定される。
【0047】
この製造方法によって製造されたPDPは、縦壁6Bの欠損部分pに対向する保護層3の部分3aが除去されていることによって、不点灯化された放電セルCAとこの放電セルCAに行方向において隣接する放電セルCB(図4参照)とを連通させる欠損部分pに対向する部分に、放電によって放電空間内に二次電子を放出する二次電子放出材が無く、これによって、隣接する放電セルCB内で放電が発生しても、この放電が欠損部分pを介して放電セルCA内に拡がろうとすると、この欠損部分p内では二次電子が不足しているため、放電を維持され難くなる。
【0048】
これによって、隣接する放電セルCBから不点灯化された放電セルCAへの放電干渉が防止される。
【0049】
そして、この縦壁6Bの欠損部分pに蛍光体層7の蛍光材が食み出している場合でも、上述したように、この欠損部分pにおいては放電セルCB内において発生した放電がほぼ消滅してしまうため、欠損部分pに食み出した蛍光材が発光するのが防止される。
【0050】
以上のように、上記PDPの製造方法によれば、製造されたPDPに不点灯化された放電セルと隣接する放電セルとの間を区画する隔壁に欠損部分が存在する場合でも、この隔壁の欠損部分の存在によって不点灯化された放電セルが誤発光したり、隔壁の欠損部分に食み出した蛍光材が発光したりするのが防止されることによって、PDPのパネル面における不要な発光の発生による表示品質の低下を防止することが出来るようになる。
【実施例2】
【0051】
図6は、この発明の第2実施例におけるPDPの製造方法を示している。
【0052】
なお、この図6において、PDPの構成は前述した図5の場合と同様に、図1および2と同一の符号が付されている。
【0053】
前述した第1実施例においては、PDPの不点灯化された放電セルとこの放電セルに隣接する他の放電セルとの間の隔壁の欠損部分に対向している部分の保護層をレーザ照射によって除去することにより、不点灯化された放電セルへの放電干渉を防止している。
【0054】
これに対して、この実施例においては、不点灯化された放電セルCAと行方向に隣接する他の放電セルCB(図4参照)との間を区画する隔壁6の縦壁6Bに欠損部分pが存在することが検出されると、第1実施例の場合と同様に、レーザ発生装置L1からレーザ光b1が、背面ガラス基板4上に重ね合わされて封着された前面ガラス基板1の上方から酸化マグネシウム(MgO)によって形成された保護層3の成膜面(誘電体層2に接する面)に焦点を合わせて、保護層3の縦壁6Bの欠損部分pに対向している部分3a(図5(a)参照)に向かって照射される。
【0055】
このとき、レーザ発生装置L1から照射されるレーザ光b1の(レーザ出力)×(照射時間)によって表わされる加工エネルギは、レーザ光b1の照射により、二次電子放出材である酸化マグネシウム(MgO)によって形成された保護層3が除去されることなく、このレーザ光b1が照射された部分の保護層3の酸化マグネシウム(MgO)を変質させてその二次電子放出係数γを低下させる値、すなわち、第1実施例の場合よりも小さい所要の値となるように設定される。
【0056】
図6に符号3bによって示された部分は、レーザ光b1の照射によって酸化マグネシウム(MgO)が変質してその二次電子放出係数γが低下された保護層3の欠損部分pに対向する部分を示している。
【0057】
このレーザ光b1の加工エネルギの設定は、第1実施例において説明したように、レーザ発生装置L1からのレーザ光b1のレーザ出力と照射時間の何れか、またはその双方を調整することによって行われる。
【0058】
レーザ発生装置L1には、第1実施例の場合と同様の理由により、YAGレーザ装置を用いるのが好ましい。
【0059】
この製造方法によって製造されたPDPは、縦壁6Bの欠損部分pに対向する保護層3の部分3bの二次電子放出係数γがレーザ照射によって低下されていることによって、不点灯化された放電セルCAとこの放電セルCAに行方向において隣接する放電セルCB(図4参照)とを連通する欠損部分p内への二次電子の放出量が少なくなり、これによって、放電セルCB内で放電が発生した際に、この放電が欠損部分pを介して放電セルCA内に拡がろうとしても、この欠損部分pにおいて放電が維持され難くなる。
【0060】
これによって、隣接する放電セルCBから不点灯化された放電セルCAへの放電干渉が防止される。
【0061】
そして、この縦壁6Bの欠損部分pに蛍光体層7の蛍光材が食み出している場合でも、上述したように、この欠損部分pにおいては放電セルCB内において発生した放電がほぼ消滅してしまうため、欠損部分pに食み出した蛍光材が発光するのが防止される。
【0062】
以上のように、上記PDPの製造方法によれば、第1実施例の場合と同様に、製造されたPDPが不点灯化された放電セルと隣接する放電セルとの間を区画する隔壁に欠損部分を有している場合でも、この隔壁の欠損部分の存在によって不点灯化された放電セルが誤発光したり隔壁の欠損部分に食み出した蛍光材が発光したりするのが防止されて、PDPのパネル面における不要な発光の発生による表示品質の低下を防止することが出来るようになる。
【0063】
そして、この実施例におけるPDPの製造方法によれば、製造されたPDPの隔壁の欠損部分に対向する部分の保護層は、レーザ光の照射によって変質するだけで、除去されないので、誘電体層の保護機能が損なわれることはない。
【0064】
上記各実施例におけるPDPの製造方法は、放電空間を介して一対の基板が対向され、この一対の基板の一方の基板の他方の基板に対向する側に、放電空間内において放電を発生させる放電電極とこの放電電極を被覆する誘電体層とこの誘電体層を被覆する二次電子放出材料によって形成された保護層が形成され、他方の基板の一方の基板に対向する側に、放電空間をそれぞれ放電電極に対向する放電セル毎に区画する隔壁を備え、この隔壁の隣接する放電セル間を区画する部分にこの部分を挟んで隣接する放電セルを互いに連通させる欠損部分が生じたPDPに対して、保護層の隔壁の欠損部分に対向する部分に向けてレーザ光を照射する工程を有する実施形態のPDPの製造方法を、その上位概念の実施形態としている。
【0065】
この実施形態によるPDPの製造方法は、放電空間を放電セル毎に区画する隔壁の隣接する放電セルの間を区画する部分にこの隔壁を挟んで隣接する放電セル間を連通させるような欠損部分が生じているPDPに対して実施される。
【0066】
すなわち、この隔壁の欠損部分に対向している部分の保護層に向かってレーザ光が照射されて、二次電子放出材料によって形成された保護層の欠損部分に対向する部分からの欠損部分内への二次電子放出量を減少させる処理が行われる。
【0067】
このような二次電子放出量を減少させる処理としては、例えば、レーザ光の照射によって保護層の隔壁の欠損部分に対向している部分を除去するか、または、保護層の隔壁の欠損部分に対向している部分の二次電子放出材料を変質させることによって、その部分の保護層の二次電子放出係数を低下させる方法が挙げられる。
【0068】
この実施形態によるPDPの製造方法によれば、PDPが隔壁の隣接する放電セル間を区画する部分にこの隣接する放電セル間を連通させるような欠損部分を有している場合でも、レーザ光の照射処理によって、PDPの隔壁の欠損部分に対向する部分の保護層からの欠損部分内への二次電子の放出量を減少させることが出来るので、欠損部分を有する隔壁を挟んで隣接する一方の放電セル内で発生した放電が、この放電が欠損部分を介して他方の放電セル内に拡がろうとしても、この欠損部分内では、二次電子量が不足していることによって放電が維持され難くなり、これによって、PDPの隣接する放電セル間における隔壁の欠損部分を介した放電干渉を防止することが出来るようになる。
【0069】
さらに、PDPの隔壁の欠損部分に放電セル内から蛍光体層を形成する蛍光材が食み出している場合でも、欠損部分内では放電がほぼ消滅してしまうので、この欠損部分に食み出した蛍光材が発光するのが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】従来のPDPの構成を示す正面図である。
【図2】図1のV−V線における断面図である。
【図3】PDPの製造方法の従来例を示す説明図である。
【図4】従来のPDPにおける問題点を説明するための説明図である。
【図5】この発明の実施形態における第1実施例を示す工程説明図であり、(a)は工程実施前のPDPの状態を示す断面図であり、(b)はPDPの工程の実施状態を示す断面図である。
【図6】この発明の実施形態における第2実施例を示す工程説明図である。
【符号の説明】
【0071】
1 …前面ガラス基板(一方の基板)
2 …誘電体層
3 …保護層
3a,3b …欠損部分に対向する保護層の部分
4 …背面ガラス基板(他方の基板)
6 …隔壁
6A …横壁(隔壁)
6B …縦壁(隔壁)
7 …蛍光体層
C …放電セル(単位発光領域)
CA …不点灯化された放電セル
CB …不点灯化された放電セルに隣接する放電セル
L1 …レーザ発生装置
X,Y …行電極(放電電極)
b …レーザ光
p …欠損部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間を介して一対の基板が対向され、この一対の基板の一方の基板の他方の基板に対向する側に、放電空間内において放電を発生させる放電電極とこの放電電極を被覆する誘電体層とこの誘電体層を被覆する二次電子放出材料によって形成された保護層が形成され、他方の基板の一方の基板に対向する側に、放電空間をそれぞれ放電電極に対向する単位発光領域毎に区画する隔壁を備えたプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記隔壁の隣接する単位発光領域間を区画する部分にこの部分を挟んで隣接する単位発光領域を互いに連通させる欠損部分が生じたプラズマディスプレイパネルに対して、保護層の隔壁の欠損部分に対向する部分に向けてレーザ光を照射する工程を有していることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項2】
前記レーザ光の照射が、放電の発生が不可にされた単位発光領域とこの単位発光領域に隣接する他の単位発光領域との間に位置する部分の隔壁に欠損部分が生じているプラズマディスプレイパネルに対して、このプラズマディスプレイパネルの隔壁の欠損部分に対向する部分の保護層に向けて行われる請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項3】
前記レーザ光の照射によって、隔壁の欠損部分に対向する部分の保護層が除去される請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項4】
前記レーザ光の照射によって、隔壁の欠損部分に対向する部分の保護層が変質されて、この部分の保護層を形成している二次電子放出材料の二次電子放出係数が低下される請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項5】
前記レーザ光としてYAGレーザ光が使用される請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−99289(P2009−99289A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267328(P2007−267328)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】