説明

プラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペースト

【課題】 セルロース系樹脂とB−SiO系非鉛ガラスからなるガラス粉末を含むペーストを用いても、誘電率が低く、表面平滑性に優れた膜厚の薄い誘電体層を得ることができるプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストを提供することである。
【解決手段】 本発明のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストは、ガラス粉末、熱可塑性樹脂及び溶剤を含むプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストにおいて、ガラス粉末がB−SiO系非鉛ガラスからなり、熱可塑性樹脂がセルロース系樹脂からなり、且つ、溶剤が、グリコールエーテル系溶剤を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイは、自己発光型のフラットパネルディスプレイであり、軽量薄型、高視野角等の優れた特性を備えており、また大画面化が可能であることから、急速に市場が拡大している。
【0003】
プラズマディスプレイパネルは、前面ガラス基板と背面ガラス基板とが一定の間隔で対向しており、その周囲が封着ガラスで気密封止された構造を有している。尚、前面ガラス基板の外面側には、前面ガラス基板を保護するための保護板が貼り付けられ、保護板の上にはカラーフィルタが取り付けられている。また、パネル内部にはNe、Xe等の希ガスが充填されている。
【0004】
上記用途に供される前面ガラス基板には、プラズマ放電用の走査電極が形成され、その上には走査電極を保護するために、10〜40μm程度の誘電体層(透明誘電体層)が形成されている。
【0005】
また、背面ガラス基板には、プラズマ放電の位置を定めるためのアドレス電極が形成され、その上にはアドレス電極を保護するために、10〜20μm程度の誘電体層(アドレス電極保護誘電体層)が形成されている。更に、アドレス電極保護誘電体層上には、放電のセルを仕切るために隔壁が形成され、また、セル内には、赤(R)、緑(G)、青(B)の蛍光体が塗布されており、プラズマ放電を起こして紫外線を発生させることにより、蛍光体が刺激されて発光する仕組みになっている。
【0006】
一般に、プラズマディスプレイパネルの前面ガラス基板や背面ガラス基板には、ソーダライムガラスや高歪点ガラスが使用されており、走査電極やアドレス電極には、安価なAgやCr−Cu−Crからなる材料が広く用いられている。また、電極を形成したガラス基板に誘電体層を形成する方法としては、ガラス粉末等の粉末成分とビークル(溶剤に熱可塑性樹脂等を溶かしたもの)を混練して作製したペースト状の誘電体材料をスクリーン印刷法により塗布し、乾燥後、焼成する方法が広く用いられている。尚、ガラス基板上への誘電体層の形成にあたっては、ガラス基板の変形を防止し、電極との反応による特性の劣化を抑えるために、500〜600℃程度の温度域で焼成される。それ故、誘電体材料には、ガラス基板の熱膨張係数に適合し、500〜600℃で焼成でき、しかも、電極と反応しないことが求められている。
【0007】
また、透明誘電体層においては、上記特性に加え、高い透明性を有すること、高い耐電圧を有することも求められている。そのため、透明誘電体層を形成するための誘電体材料には、焼成時に泡が抜けやすいことが求められ、また、焼成して得られる誘電体層には、表面が平滑で、しかも、膜厚が均一であることが求められている。
【0008】
上記の要求特性を満たすものとして、特許文献1に示すようなPbO−B−SiO系の鉛ガラス粉末を含む誘電体材料が使用されてきたが、近年、環境保護の高まりや環境負荷物質の使用削減の動きから、特許文献2に示すようなB−SiO系非鉛ガラス粉末を含む誘電体材料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−60272号公報
【特許文献2】特開2008−60064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストには、ガラス基板上に誘電体形成ガラスペーストを塗布、乾燥して得られるペースト乾燥膜の膜強度を高めるために、熱可塑性樹脂が含有されている。
【0011】
尚、誘電体形成ガラスペースト中に含まれる熱可塑性樹脂としては、安価であること、誘電体形成ガラスペーストを塗布する際の塗工性や塗布膜のレベリング性を容易に向上させることができることから、通常、セルロース系樹脂が用いられている。
【0012】
しかしながら、セルロース系樹脂は、天然高分子素材からなるため、分子量や分子構造のばらつきが大きく、それにより溶剤に対する溶解性も大きく変化する。そのため、溶剤にセルロース系樹脂を溶解させたビークル中には、ゲル状のセルロース系樹脂の未溶解物が残存することがある。尚、セルロース系樹脂の未溶解物を含む誘電体形成ガラスペーストを用いて、ガラス基板上にペースト膜を形成し、これを焼成して誘電体層を形成すると、セルロース系樹脂の未溶解物が存在した部分には、大きな泡が残存したり、脱泡時に膜表面に大きな窪みを形成しやすく、表面が平滑で、均一な膜厚を有する誘電体層が得難くなることがある。
【0013】
特に、プラズマディスプレイにおいては、近年の低消費電力化の流れから、誘電体層の低誘電率化が求められている。誘電体層の低誘電率化を図るために、誘電率の低いB−SiO系非鉛ガラスからなるガラス粉末を含む誘電体形成ガラスペーストを用いることが検討されているが、このガラス粉末は、ペースト乾燥膜の焼成温度域でのガラスの粘性が高いため、ペースト乾燥膜を焼成する際に、熱可塑性樹脂等の有機成分の熱分解で生じる放出ガスを膜中に内包しやすく、大きな泡となって、脱泡時に膜表面に大きな窪みを形成しやすい。
【0014】
さらに、誘電体層の誘電率を低くすると、静電容量等の他の誘電特性を満足させるために誘電体層の厚みを薄くしなければならないため、従来、誘電体層表面に影響を及ぼさないような小さな泡でも、誘電体層表面に影響を及ぼすようになってきている。
【0015】
本発明の目的は、セルロース系樹脂とB−SiO系非鉛ガラスからなるガラス粉末を含むペーストを用いても、誘電率が低く、表面平滑性に優れた膜厚の薄い誘電体層を得ることができるプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は種々の実験を行った結果、溶剤として、グリコールエーテル系溶剤を含有させることで、セルロース系樹脂や、B−SiO系非鉛ガラスからなるガラス粉末を含むペーストを用いても、誘電率が低く、表面平滑性に優れた膜厚の薄い誘電体層が得られることを見いだし提案するものである。
【0017】
即ち、本発明のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストは、ガラス粉末、熱可塑性樹脂及び溶剤を含むプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストにおいて、ガラス粉末がB−SiO系非鉛ガラスからなり、熱可塑性樹脂がセルロース系樹脂からなり、且つ、溶剤が、グリコールエーテル系溶剤を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストは、溶剤中にゲル状の未溶解物を生成しやすいセルロース系樹脂や、ペースト乾燥膜の焼成温度域におけるガラスの粘性が高いB−SiO系非鉛ガラスからなるガラス粉末を含むペーストを用いても、誘電率が低く、表面平滑性に優れた膜厚の薄い誘電体層を形成することができる。それ故、プラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストとして好適である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストは、比較的容易に低い誘電率が得やすいB−SiO系非鉛ガラスからなるガラス粉末と、ペーストを塗布する際の塗工性や塗布膜のレベリング性を容易に向上させることが可能なセルロース系樹脂を含む熱可塑性樹脂と、溶剤を主成分とする。
【0020】
一般に、このような誘電体形成ガラスペーストは、上述したように、溶剤中にセルロース系樹脂の未溶解物が残存しやすく、ペースト乾燥膜の焼成温度域でのガラスの粘性が高いため、ペースト乾燥膜を焼成する際に生じる放出ガスが大泡となって誘電体層中に残存したり、誘電体層表面に大きな窪みを形成しやすい傾向にある。
【0021】
しかし、本発明のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストでは、溶剤の一部に、熱可塑性樹脂に用いられるセルロース系樹脂の未溶解物の生成を抑える効果を有するグリコールエーテル系溶剤を含有させている。そのため、B−SiO系非鉛ガラスからなるガラス粉末を含むペーストを用いても、焼成時における大泡の発生を抑えることができ、誘電率が低く、表面平滑性に優れた膜厚の薄い誘電体層を形成することができる。
【0022】
尚、溶剤の一部に使用するグリコールエーテル系溶剤としては、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、フェニルプロピレングリコール、ベンジルグリコールの中から選ばれた少なくとも1種以上のグリコールエーテル系溶剤を使用することが好ましい。これらのグリコールエーテル系溶剤であれば、ペーストの粘度調整のために用いられる他の溶剤(具体的には、ターピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールモノイソブチレート等を単独あるいは混合した溶剤)との親和性も良く、セルロース系樹脂の未溶解物の生成を抑えることができるため、焼成時における大泡の発生を抑えて、表面平滑性に優れた膜厚の薄い誘電体層を形成することができる。
【0023】
溶剤中におけるグリコールエーテル系溶剤の含有割合は、質量比で3〜90%の範囲にすることが好ましい。溶剤中におけるグリコールエーテル系溶剤の含有割合が小さすぎると、セルロース系樹脂の未溶解物の生成を抑える効果が得難くなり、焼成時に、誘電体層中に大泡が残存したり、誘電体層表面に大きな窪みを形成しやすく、表面平滑性に優れた誘電体層が得難くなる。また、溶剤中におけるグリコールエーテル系溶剤の含有割合が大きすぎても、セルロース系樹脂の未溶解物の生成を抑える効果が得難くなり、焼成時に、誘電体層中に大泡が残存したり、誘電体層表面に大きな窪みを形成しやすく、表面平滑性に優れた誘電体層が得難くなる。また、ガラス基板上に形成した塗布膜の乾燥性が低下する傾向にあり、作業性が低下しやすくなる。溶剤中におけるグリコールエーテル系溶剤の含有割合のより好ましい範囲は、質量比で10〜85%である。
【0024】
また、ペースト中における溶剤の含有量は、20〜60質量%の範囲にすることが好ましい。ペースト中における溶剤の含有量が少なくなりすぎると、セルロース系樹脂の未溶解物の生成を抑える効果が得難くなり、焼成時に、誘電体層中に大泡が残存したり、誘電体層表面に大きな窪みを形成しやすく、表面平滑性に優れた誘電体層が得難くなることがある。また、ガラス粉末の含有量が多くなるため、膜厚の薄い誘電体層が得難くなったり、セルロース系樹脂を含む熱可塑性樹脂の含有量が多くなり、焼成時において、脱バインダー性が低下して誘電体層が黄変しやすくなる。一方、ペースト中における溶剤の含有量が多くなりすぎると、誘電体形成ガラスペーストの粘度が低くなりすぎて、誘電体形成ガラスペーストを塗布する上で適切な粘度が得られず、塗布膜を形成する際に液だれ等が生じ誘電体形成ガラスペーストの塗工性が著しく低下する。溶剤のより好ましい範囲は22〜58質量%であり、さらに好ましい範囲は24〜56質量%である。
【0025】
本発明のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストは、上記の溶剤の他に、熱可塑性樹脂及びガラス粉末を主成分とする。以下、各成分について説明する。
【0026】
本発明において使用する熱可塑性樹脂は、誘電体形成ガラスペーストの粘度を調整して誘電体形成ガラスペーストの塗工性を向上させると共に、ペースト乾燥膜の膜強度を高めたり、柔軟性を付与するための成分であり、その含有量は3〜30質量%の範囲にすることが好ましい。ペースト中における熱可塑性樹脂の含有量が少なくなりすぎると、ガラス粉末の含有量が多くなり、膜厚の薄い誘電体層が得難くなったり、溶剤の含有量が多くなり、誘電体形成ガラスペーストの塗工性が著しく低下する。一方、熱可塑性樹脂の含有量が多くなりすぎると、焼成時において、脱バインダー性が低下する傾向にあり、電極としてAgを用いた場合、Ag電極が還元され、誘電体層が黄変しやすくなる。熱可塑性樹脂のより好ましい範囲は4〜25質量%であり、さらに好ましい範囲は5〜20質量%である。
【0027】
尚、熱可塑性樹脂としては、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの中から選ばれた少なくとも1種以上のセルロース系樹脂からなるものを使用することが好ましい。これらのセルロース系樹脂であれば、グリコールエーテル系溶剤に溶けやすくなるため、焼成時における大泡の発生を抑えて、表面平滑性に優れた膜厚の薄い誘電体層を形成することができる。中でも、特に、エチルセルロースを用いると、間欠塗布に適した粘度を有する誘電体形成ガラスペーストが得やすくなる。また、焼成時における脱バインダー性を向上させるために、これらのセルロース系樹脂の一部を、ポリブチルメタアクリレート、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチルメタアクリレート等のアクリル樹脂に置き換えて使用してもよい。
【0028】
本発明において使用するガラス粉末は、低誘電率で、しかも、高い耐電圧を有する誘電体層を形成するための成分であり、その含有量は15〜60質量%の範囲にすることが好ましい。ペースト中におけるガラス粉末の含有量が少なくなりすぎると、低誘電率で、しかも、高い耐電圧を有する誘電体層が得難くなる。一方、ガラス粉末の含有量が多くなりすぎると、膜厚の薄い誘電体層が得難くなる。ガラス粉末のより好ましい範囲は17〜57質量%であり、さらに好ましい範囲は20〜55質量%である。
【0029】
尚、本発明において使用するガラス粉末は、B−SiO系非鉛ガラスを基本組成とする。その理由は、比較的容易にガラスの低誘電率化及び低融点化が可能であり、しかも、ガラス基板に適合する熱膨張係数を得やすいためである。
【0030】
また、ガラス粉末は、B−SiO系非鉛ガラスの中でも、特に、B 26〜45%、SiO 42超〜57%、Al 1〜6%、NaO 0〜10%、KO 1〜15%、NaO+KO 4〜20%、ZnO 0〜7%、CuO+MoO+CeO+MnO+CoO 0〜6%の組成範囲からなるガラスを使用することが好ましい。このような組成範囲内にあるガラスであれば、ガラス化範囲も広く安定で、ガラスの軟化点が低く、25℃、1MHzにおけるガラス粉末の誘電率が6.0以下となりやすく、低い誘電率を有する誘電体層が得やすくなる。
【0031】
本発明において、ガラス粉末のガラス組成を上記のように限定した理由は、次の通りである。
【0032】
はガラスの骨格を形成する成分であり、その含有量は26〜45%であることが好ましい。Bの含有量が少なくなると、ガラスの誘電率が高くなる傾向にある。一方、含有量が多くなりすぎると、ガラスの軟化点が高くなる傾向にあり、600℃以下の温度で焼成し難くなる。また、焼成温度域におけるガラスの粘性が高くなりやすく、誘電体層中に大泡が残存したり、誘電体層表面に窪みを形成し、表面平滑性に優れた膜厚の薄い誘電体層が得難くなる。さらに、ガラスの耐候性が低下してガラスが変質して、粉末状に加工することが難しくなったり、ガラスの安定性が著しく低下する傾向にあり、誘電体層を焼成する際に、ガラスが分相して高い透過率を有する誘電体層が得難くなる。Bのより好ましい範囲は29〜40%であり、さらに好ましい範囲は30〜38%未満である。
【0033】
SiOはガラスの骨格を形成すると共に、誘電率を低下させる成分であり、その含有量は42超〜57%であることが好ましい。SiOの含有量が少なくなると、ガラスの誘電率が著しく上昇する傾向にある。一方、含有量が多くなると、ガラスの軟化点が高くなる傾向にあり、600℃以下の温度で焼成し難くなる。また、焼成温度域におけるガラスの粘性が高くなりやすく、誘電体層中に大泡が残存したり、誘電体層表面に窪みを形成し、表面平滑性に優れた膜厚の薄い誘電体層が得難くなる。さらに、ガラスの熱膨張係数が小さくなりすぎて、焼成時にガラス基板に反りが発生しやすくなる。SiOのより好ましい範囲は42.5〜56%であり、さらに好ましい範囲は43〜55%である。
【0034】
尚、低い誘電率を維持しながら、焼成時におけるガラスの分相を抑えて高い透過率を有する誘電体層を得やすくするには、B/SiOの値をモル比で0.55〜0.80の範囲となるようにすることが好ましい。B/SiOの値が小さくなりすぎると、誘電体層の強度が低下する傾向にあり、高い強度を有するガラス基板が得難くなる。一方、B/SiOの値が大きくなりすぎると、ガラスの耐候性が低下してガラスが変質して、粉末状に加工することが難しくなったり、ガラスの安定性が低下する傾向にあり、誘電体層を焼成する際に、ガラスが分相して高い透過率を有する誘電体層が得難くなる。B/SiOのより好ましい範囲は0.60〜0.80であり、さらに好ましい範囲は0.67〜0.80である。
【0035】
Alはガラスの耐候性を向上させたり、ガラスを安定化させ、焼成時におけるガラスの分相を抑える成分であり、その含有量は1〜6%であることが好ましい。Alの含有量が少なくなると、ガラスの耐候性が低下してガラスが変質して、粉末状に加工することが難しくなる。また、分相を抑える効果が得難くなり、結果として、高い透過率を有する誘電体層が得難くなる。一方、含有量が多くなっても、分相を抑える効果が得難くなり、高い透過率を有する誘電体層が得難くなる。Alのより好ましい範囲は1.1〜5.9%であり、さらに好ましい範囲は1.2〜5.4%である。
【0036】
NaOはガラスの軟化点及び焼成温度域におけるガラスの粘性を低下させたり、熱膨張係数を調整する成分であり、その含有量は0〜10%であることが好ましい。NaOの含有量が多くなると、電極にAgを用いた場合、誘電体材料とAgが反応し、誘電体層が黄色に変色(黄変)しやすくなり、画像が見難くなる問題が生じる。また、熱膨張係数が大きくなりすぎる傾向にあり、ガラス基板の熱膨張係数と整合し難くなる。さらに、ガラスの安定性が低下する傾向にあり、誘電体層を焼成する際に、ガラスが分相して高い透過率を有する誘電体層が得難くなる。NaOのより好ましい範囲は0〜8%であり、さらに好ましい範囲は0〜6%である。尚、ガラスの軟化点と誘電率を著しく上昇させずに、焼成時における分相を抑えて高い透過率を有する誘電体層を得たい場合は、ガラスの軟化点を下げると共に、ガラスを安定化させる成分であるZnOを1%以上含有させると共に、NaOの含有量を0〜3%にすることが好ましく、より好ましくは0〜1%であり、さらに好ましくは実質的に含有しないことである。
【0037】
Oはガラスの軟化点及び焼成温度域におけるガラスの粘性を低下させたり、熱膨張係数を調整する成分であり、その含有量は1〜15%であることが好ましい。KOの含有量が少なくなると、ガラスの軟化点が上昇して、600℃以下の温度で焼成し難くなる。一方、含有量が多くなると、電極にAgを用いた場合、誘電体材料とAgが反応し、誘電体層が黄変する傾向にあり、画像が見難くなる問題が生じやすくなる。また、熱膨張係数が大きくなりすぎる傾向にあり、ガラス基板の熱膨張係数と整合し難くなる。KOのより好ましい範囲は1〜14%であり、さらに好ましい範囲は4〜12%である。尚、ガラスの軟化点と誘電率を著しく上昇させずに、焼成時における分相を抑えて高い透過率を有する誘電体層を得たい場合は、ガラスの軟化点を下げると共に、ガラスを安定化させる成分であるZnOを1%以上含有させると共に、KOの含有量を1〜10%にすることが好ましく、より好ましくは4〜10%であり、さらに好ましくは4〜9%である。
【0038】
尚、Agとの反応による誘電体層の黄変を抑え、600℃以下の温度で焼成でき、ガラス基板に適合する熱膨張係数を有するようにするには、NaO及びKOを合量で4〜20%にすることが好ましい。これら成分の合量が少なくなると、ガラスの軟化点が上昇して、600℃以下の温度で焼成し難くなる。一方、これら成分の合量が多くなると、電極にAgを用いた場合、誘電体材料とAgが反応し、誘電体層が黄変する傾向にあり、画像が見難くなる問題が生じやすくなる。また、熱膨張係数が大きくなりすぎる傾向にあり、ガラス基板の熱膨張係数と整合し難くなる。さらに、ガラスの安定性が低下する傾向にあり、誘電体層を焼成する際に、ガラスが分相して高い透過率を有する誘電体層が得難くなる。これら成分の合量のより好ましい範囲は4〜18%であり、さらに好ましい範囲は5〜15%である。尚、誘電率を著しく上昇させずに、より低い温度で焼成することが可能な誘電体層を得たい場合は、ZnOを1%未満にすると共に、NaO及びKOを合量で5〜20%にすることが好ましく、より好ましくは7〜18%であり、さらに好ましくは8〜15%である。また、ガラスの軟化点と誘電率を著しく上昇させずに、焼成時における分相を抑えて高い透過率を有する誘電体層を得たい場合は、ガラスの軟化点を下げると共に、ガラスを安定化させる成分であるZnOを1%以上含有させると共に、NaO及びKOを合量で4〜10%にすることが好ましく、より好ましくは4〜9%であり、さらに好ましくは5〜9%である。
【0039】
また、本発明の誘電体材料をAg電極上に形成する場合、誘電体材料とAgとの反応による誘電体層の変色を抑えたい場合、CuO、MoO、CeO、MnO及びCoOを合量で6%まで含有させることが好ましい。これら成分の合量が多くなると、これらの成分による誘電体層の着色が生じやすくなる。これら成分の合量のより好ましい範囲は0.005〜5%であり、さらに好ましい範囲は0.005〜3%である。尚、これらの成分の中でも、CuOは黄変の抑制効果が最も大きく、CuOを必須成分とすることがより好ましく、この場合、CuOの含有量は、0.01〜3.0%(望ましくは0.02〜2.5%)であることが好ましく、また、MoO、CeO、MnO及びCoOはそれぞれ0〜5%(望ましくは0.01〜3%)であることが好ましい。また、焼成条件の変動によるCuOの変色抑制効果にばらつきが生じる場合には、CuOの含有量を0.005〜0.20%に制限し、CuO、MoO、CeO、MnO及びCoOを合量で0.005〜6%となるように含有量を調整することが望ましい。
【0040】
また、焼成時におけるガラスの分相とAgとの反応による誘電体層の黄変を抑えて高い透過率を有する誘電体層を得やすくするには、B/(NaO+KO)の値をモル比で3.3〜7.2の範囲となるようにすることが好ましい。B/(NaO+KO)の値が小さくなりすぎると、電極にAgを用いた場合、誘電体材料とAgが反応し、誘電体層が黄変する傾向にあり、画像が見難くなる問題が生じやすくなる。一方、B/(NaO+KO)の値が大きくなりすぎると、ガラスの安定性が低下する傾向にあり、誘電体層を焼成する際に、ガラスが分相して高い透過率を有する誘電体層が得難くなる。また、ガラスの軟化点が上昇する傾向にあり、600℃以下の温度で焼成し難くなる。B/(NaO+KO)のより好ましい範囲は3.3〜5.1であり、さらに好ましい範囲は3.3〜4.9であり、最も好ましい範囲は3.4〜4.8である。
【0041】
ZnOはガラスの軟化点及び焼成温度域におけるガラスの粘性を下げると共に、ガラスを安定化させる成分であるが、ガラスの誘電率を著しく上昇させる成分でもあり、その含有量は0〜7%であることが好ましい。ZnOの含有量が多くなると、ガラスの誘電率が著しく上昇する傾向にある。尚、誘電率を著しく上昇させずに、より低い温度で焼成することが可能な誘電体層を得たい場合は、アルカリ金属酸化物の含有量を多くすると共に、ZnOの含有量を0〜1%未満にすることが好ましく、より好ましくは0〜0.9%であり、さらに好ましくは0.1〜0.7%である。また、誘電率を著しく上昇させずに、焼成時における分相を抑えて高い透過率を有する誘電体層を得たい場合は、アルカリ金属酸化物の含有量を少なくすると共に、ZnOの含有量を1〜7%にすることが好ましく、より好ましくは1〜6%であり、さらに好ましくは2〜6%である。
【0042】
また、本発明の誘電体材料は、上記成分以外にも、要求される特性を損なわない範囲で種々の成分を添加することができる。例えば、熱膨張係数を調整する成分であるMgO、CaO、SrO、BaO及びTiOを合量で15%まで、ガラスの軟化点を低下させるために、CsO、RbO等を合量で10%まで、ガラスを安定化させたり、耐水性や耐酸性を向上させるために、ZrO、Y、La、Ta、SnO、WO、Nb、Sb、P等を合量で10%まで添加することができる。但し、Pはガラスを失透させて、透明な焼成膜を得難くする成分でもあるため、その含有量は5%以下にすることが望ましい。
【0043】
尚、Biは、ガラスの軟化点及び焼成温度域におけるガラスの粘性を低下させる成分であるため、Biを含有させることによって、アルカリ金属酸化物成分の含有量を低減させて、Agとの反応による誘電体層の黄変を生じ難くすることが可能である。しかし、Biは、ガラスの誘電率を大きくしたり、コストを著しく上昇させる成分であるため、その含有量は5%以下にすることが好ましく、より好ましくは実質的に含有しないことである。
【0044】
また、PbOは、ガラスの軟化点及び焼成温度域におけるガラスの粘性を低下させる成分であるが、環境負荷物質でもあるため、実質的に含有しないことが好ましい。
【0045】
尚、本発明で言う「実質的に含有しない」とは、積極的に原料として用いず不純物として混入するレベルをいい、具体的には、含有量が0.1%以下であることを意味する。
【0046】
また、本発明のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストに使用するガラス粉末の粒度は、平均粒径D50が3.0μm以下、最大粒径Dmaxが20μm以下のものを使用することが望ましい。いずれか一方でもその上限を超えると、焼成膜中に大きな泡が残存しやすくなり、安定した耐電圧を有する誘電体層が得難くなるためである。
【0047】
また、上記成分以外にも、必要に応じて、可塑剤、無機フィラー粉末等を加えることもできる。
【0048】
可塑剤は、塗付膜の乾燥速度をコントロールすると共に、乾燥膜に柔軟性を与える成分であり、10質量%まで添加することができる。但し、可塑剤の含有量が多くなると、脱バインダー性が著しく低下し、焼成膜中に泡が残存しやすくなるため、0〜5質量%の範囲にあることが特に好ましい。可塑剤としてはブチルベンジルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジカプリルフタレート、ジブチルフタレート等が使用可能であり、これらを単独あるいは混合して使用する。
【0049】
無機フィラー粉末は、ペーストの流動性、焼結性、或いは熱膨張係数を調整する成分であり、40質量%まで添加することができる。但し、無機フィラー粉末の含有量が多くなると、十分に焼結が行えず、緻密な膜を形成することが難しくなるため、0〜30質量%の範囲にあることが特に好ましい。無機フィラー粉末としては、例えばアルミナ、ジルコニア、ジルコン、チタニア、コージエライト、ムライト、シリカ、ウイレマイト、酸化錫、酸化亜鉛等を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、無機フィラー粉末の導入による誘電体層の透明性の低下を避けたい場合は、無機フィラー粉末の一部または全部が球状のものを用いればよい。ここでいう球状とは、写真での状態観察において、粒子表面に角張った個所がなく、且つ粒子中心から表面全体の半径が±20%以内であるものをいう。また、無機フィラー粉末は平均粒径が5.0μm以下、最大粒径は20μm以下のものを用いることが望ましい。
【0050】
尚、本発明のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストは、前面ガラス基板用の透明誘電体層もしくは背面ガラス基板用のアドレス電極保護誘電体層のいずれの用途においても使用することが可能であり、また、2層以上の誘電体構造を有する誘電体の電極と接する下層誘電体層や、下層誘電体層の上に形成されるため直接電極と接することのない上層誘電体層の材料としても使用することが可能である。もちろんAg以外の電極上に形成する誘電体材料や、それ以外の用途、例えば、隔壁形成材料においても使用することもできる。透明誘電体材料として使用する場合は、上記無機フィラー粉末の含有量を0〜30質量%(好ましくは0〜25質量%)にすることで使用できる。無機フィラー粉末の含有量をこのようにすることで、無機フィラー粉末の添加による可視光の散乱を抑えて透明度の高い焼成膜を得ることができる。また、アドレス電極保護誘電体材料や隔壁材料として使用する場合は、上記無機フィラー粉末を0〜40質量%(より好ましくは5〜38質量%、更に好ましくは10〜35質量%)の範囲で含有させることで使用できる。無機フィラー粉末の含有量をこのようにすることで、高い強度、或いは優れた耐酸性を有する焼成膜を得ることができる。
【0051】
次に、本発明の誘電体形成ガラスペーストを作製する方法を述べる。
【0052】
まず、ガラス粉末、熱可塑性樹脂及び溶剤等を用意する。尚、ガラス粉末は、ボールミル、ジェットミル、ビーズミル等を用いて粉砕し、さらに気流分級等により分級して、所定の粒度分布を有するようにしておくことが重要である。続いて、各成分を所定の割合で混練することにより本発明の誘電体形成ガラスペーストとすることができる。
【0053】
次に、本発明の誘電体形成ガラスペーストを用いて誘電体層を形成する方法を説明する。
【0054】
まず、電極が形成された背面ガラス基板を用意し、このガラス基板上に、本発明の誘電体形成ガラスペーストをスクリーン印刷法や一括コート法等を用いて塗布し、所定の膜厚(透明誘電体層の場合は50〜100μm、アドレス保護誘電体層の場合は30〜50μm)の塗布層を形成した後、乾燥させる。その後、500〜600℃の温度で5〜20分間保持し焼成することで所定の誘電体層を得ることができる。尚、焼成温度が低くしすぎたり、保持時間が短くなると、十分に焼結が行えず、緻密な膜を形成することが難しくなる。一方、焼成温度が高すぎたり、保持時間が長くなると、ガラス基板が変形したり、電極との反応によって誘電体層が変色しやすくなる。
【0055】
また、2層以上の誘電体構造有する誘電体層を形成する場合、予め電極が形成されたガラス基板上に、下層誘電体形成用ペーストをスクリーン印刷法や一括コート法等によって、膜厚およそ20〜80μmに塗布し、乾燥させた後、上記と同様に焼成する。続いて、その上に上層誘電体形成用ペーストをスクリーン印刷や一括コート法等によって膜厚およそ60〜160μmに塗布し、乾燥させる。その後、上記と同様に焼成することで得ることができる。
【0056】
2層以上の誘電体構造有する誘電体層を形成するにあたっては、上層誘電体層を形成する場合、下層誘電体層を焼成する温度±20℃の温度範囲で上層誘電体材料を焼成すれば、Agによる誘電体層の黄変を抑制でき、しかも、下層誘電体層の形状を維持しながら、下層と上層との界面での発泡を抑制することができる。また、上層誘電体材料及び下層誘電体材料の焼成温度が同じである場合は、上記形成方法以外にも、下層誘電体膜を乾燥させた後、上層誘電体膜を形成し乾燥後、所定の温度で両層を同時焼成する方法を採用することもできる。
【0057】
上記のように、電極が形成されたガラス基板上に本発明の誘電体形成ガラスペーストを塗布し、焼成し、誘電体層を形成することで、電極にAgを用いた場合、Agによる誘電体層の変色が少なく、透明性に優れ本発明のプラズマディスプレイパネル用ガラス板を得ることができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の誘電体形成ガラスペーストを実施例に基づいて詳細に説明する。
【0059】
表1〜4は、本発明の実施例(試料No.1〜18)及び比較例(試料No.19)を示している。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
表の各試料は、次のようにして調製した。
【0065】
まず、モル%で表に示すガラス組成となるように原料を調合し、均一に混合した。次いで、白金ルツボに入れて1300℃で2時間溶融した後、溶融ガラスを薄板状に成形した。続いて、これらをボールミルにて粉砕し、気流分級して平均粒径D50が3.0μm以下、最大粒径Dmaxが20μm以下のガラス粉末からなる試料を得た。このようにして得られた各ガラス粉末試料について、軟化点、熱膨張係数及び誘電率を評価した。評価結果を表に示す。
【0066】
次に、表に示す割合で、ガラス粉末、熱可塑性樹脂、溶剤を混合し、3本ロールミルで均一に混練してペースト化することで、ペースト試料を得た。このようにして得られた各ペースト試料について、ペースト中における未溶解物の量を測定した。評価結果を表に示す。
【0067】
次に、上記で作製したペーストを用いて、ガラス基板上に20μmの焼成膜が得られるようにコーターで塗布し、乾燥後、電気炉で600℃で10分間保持し焼成して、誘電体層を形成したガラス基板試料を得た。このようにして得られた各試料について、誘電体層中の大泡の有無、誘電体層表面の高低差及び透過率を評価した。評価結果を表に示す。
【0068】
さらに、上記で作製したペーストを用いて、Ag電極が形成されたガラス基板上に、上記と同様にして、誘電体層を形成し黄変の度合いを評価した。評価結果を表に示す。
【0069】
尚、グリコールエーテル系溶剤としては、次のa〜dのものを用いた。
【0070】
a:フェニルグリコール
b:フェニルジグリコール
c:フェニルプロピレングリコール
d:ベンジルグリコール
また、グリコールエーテル系溶剤以外の溶剤としてはターピネオール用い、熱可塑性樹脂としてはエチルセルロースを用い、可塑剤としては、ジブチルフタレートを用いた。
【0071】
さらに、ガラス基板としては厚み1.8mm、5cm角の日本電気硝子株式会社製PP−8を用い、Ag電極としては昭栄化学工業株式会社製のH−4040Aを用いた。
【0072】
表から明らかなように、実施例である試料No.1〜18は、ペースト中におけるセルロース樹脂の未溶解物の数が3個以下と少ないものであった。また、これらのペーストを用いて形成した誘電体層は、誘電体層中に残存する大泡はなく、また、表面の高低差は、2μm以下と小さく、表面平滑性に優れたものであった。さらに、誘電体層の透過率は80%以上と高く、b*が+4.9以下でAg電極との反応による黄変も殆どないものであった。また、ガラスの軟化点は603℃以下であり、600℃以下の温度で十分に焼成できるものであり、熱膨張係数は56〜75×10−7/℃でガラス基板の熱膨張係数と整合するものであった。また、誘電率は5.3以下と低いものであった。
【0073】
これに対し、比較例である試料No.19は、ペースト中におけるセルロース樹脂の未溶解物の数が7個と多かった。また、このペーストを用いて形成した誘電体層は、誘電体層中に大泡が残存し、表面の高低差は6μmと大きく、表面平滑性に劣るものであった。さらに誘電体層の透過率は78%と低かった。
【0074】
これらの事実は、本発明の誘電体形成ガラスペーストを用いれば、誘電率が低く、しかも、残存する大泡が殆どなく、透明性及び表面平滑性に優れた膜厚の薄い誘電体層を得ることができことを示している。
【0075】
尚、ガラスの軟化点については、マクロ型示差熱分析計を用いて測定し、第四の変曲点の値を軟化点とした。尚、昇温速度は10℃/分の条件で測定した。
【0076】
ガラスの熱膨張係数については、各ガラス粉末試料を粉末プレス成型し、600℃、10分間焼成した後、直径4mm、長さ20mmの円柱状に研磨加工し、JIS R3102に基づいて測定し、30〜300℃の温度範囲における値を求めた。尚、プラズマディスプレイパネルに用いられているガラス基板の熱膨張係数は83×10−7/℃程度であり、誘電体材料の熱膨張係数が55〜83×10−7/℃であれば、ガラス基板の熱膨張係数と整合し、ガラス基板上に誘電体層を形成しても、焼成時にガラス基板に反りが発生し難いものとなる。
【0077】
誘電率については、各試料を粉末プレス成型し、600℃、10分間焼成した後、2mmの板状体に研磨加工し、JIS C2141に基づいて測定し、25℃、1MHzにおける値を求めた。
【0078】
ペースト中における未溶解物の量については、635メッシュ(開口20μm)の標準篩を用いて、各ペースト試料を濾過し、篩上に残存したゲル状のセルロース系樹脂の未溶解物の数(1リットル当たり)を測定した。
【0079】
誘電体層中の大泡の有無については、実体顕微鏡で誘電体層を観察し、誘電体層中に15μm以上の泡の有無を確認して評価した。
【0080】
誘電体層表面の高低差については、レーザー変位計を用いて誘電体層を形成した側のガラス基板表面を測定した。尚、この値が大きくなるほど、誘電体層の表面平滑性が劣っていることを示す。
【0081】
透過率については、ガラス基板上に誘電体層を形成したガラス基板試料及びガラス基板単体の波長550nmにおける直線透過率を分光光度計にて測定し、ガラス基板の直線透過率をキャンセルすることで評価した。
【0082】
黄変の度合いについては、誘電体層の色調を色彩色差計にてb*値を測定し評価した。尚、b*値が大きくなるほど、黄色に変色していることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス粉末、熱可塑性樹脂及び溶剤を含むプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストにおいて、ガラス粉末がB−SiO系非鉛ガラスからなり、熱可塑性樹脂がセルロース系樹脂からなり、且つ、溶剤が、グリコールエーテル系溶剤を含有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペースト。
【請求項2】
溶剤が、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、フェニルプロピレングリコール、ベンジルグリコールの中から選ばれた少なくとも1種以上のグリコールエーテル系溶剤からなることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペースト。
【請求項3】
熱可塑性樹脂が、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの中から選ばれた少なくとも1種以上のセルロース系樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペースト。
【請求項4】
ガラス粉末が、実質的にPbOを含まず、モル百分率で、B 26〜45%、SiO 42超〜57%、Al 1〜6%、NaO 0〜10%、KO 1〜15%、NaO+KO 4〜20%、ZnO 0〜7%、CuO+MoO+CeO+MnO+CoO 0〜6%含有するガラスからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペースト。
【請求項5】
25℃、1MHzにおけるガラス粉末の誘電率が6.0以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペースト。
【請求項6】
質量百分率で、ガラス粉末が15〜60%、無機フィラー粉末が0〜40%、熱可塑性樹脂が3〜30%、溶剤が20〜60%、可塑剤が0〜10%の割合であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペースト。
【請求項7】
ガラス基板上に形成されたAg電極と接する誘電体層の形成に用いられることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペースト。
【請求項8】
前面ガラス基板用の透明誘電体形成材料として使用されることを特徴とする特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペースト。

【公開番号】特開2012−134079(P2012−134079A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286871(P2010−286871)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】