説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】落下や振動による隔壁欠けを抑制し、高品質で高歩留まりなプラズマディスプレイパネルを実現することができる。
【解決手段】前面ガラス基板上に放電ギャップを設けて、透明電極とバス電極とで構成する表示電極と、遮光層と、誘電体層と、保護層とを形成した前面板と、前面板に放電空間を形成して対向配置され、表示電極と直交するアドレス電極と、隔壁と、蛍光体層とを形成した背面板とを備え、バス電極を形成した箇所における、前面板の前面ガラス基板上から前面板の最表面までの厚さE1と、遮光層を形成した箇所における、前面板の前面ガラス基板上から前面板の最表面までの厚さE2と、放電ギャップにおける、前面板の前面ガラス基板上から前面板の最表面までの厚さE3とが、E1>E2>E3であり、かつ透明電極の膜厚D1が、E1−E2>D1であるかまたは、遮光層の膜厚D2が、E1−E2>D2であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示デバイスとして知られているプラズマディスプレイパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、双方向情報端末として大画面、壁掛けテレビへの期待が高まっており、そのための表示デバイスとして、液晶表示パネル、フィールドエミッションディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどの数多くのものがある。これらの表示デバイスの中でもプラズマディスプレイパネル(以下、PDPと記す)は、自発光型で美しい画像表示ができ、大画面化が容易であるなどの理由から、視認性に優れた薄型表示デバイスとして注目されており、高精細化および大画面化に向けた開発が進められている。
【0003】
PDPは、表示電極、誘電体層、MgOによる保護層などの構成物を形成した前面板と、アドレス電極、隔壁、蛍光体層などの構成物を形成した背面板とを、内部に微小な放電セルを形成するように対向配置するとともに周囲を封着部材により封止して構成している。放電セルにはネオン(Ne)およびキセノン(Xe)などを混合した放電ガスを例えば66500Pa(約500Torr)程度の圧力で封入している。
【0004】
ここで前面板は、表示電極を覆って誘電体層を形成し、誘電体層を覆って保護層を形成しているが、表示電極としてその一部に導電性を確保するために膜厚の厚い金属電極を用いている。そのために、表示電極位置の保護層が膨らみ前面板と背面板とを対向させたとき、この膨らんだ保護層の部分と隔壁とが局所的に接触する。このような状態でPDPに振動や衝撃が加わると、保護層が接触している箇所の隔壁が欠損する場合があった。前面板の表示電極に対応する領域の隔壁は個々の放電セルの放電領域近傍であるため、欠損した隔壁によって蛍光体層が飛散して放電セルの放電状態に影響して放電電圧を上昇させたり、隣接する放電セルへの誤放電、さらには不灯などの点欠陥が発生していた。
【0005】
隔壁の欠損を防止する目的で、隔壁を2層構成とし、隔壁の上に酸化アルミニウム(Al23)を主成分とする黒色ポーラス層を緩衝材として形成する例などが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一方、PDPの輝度向上を目的として、隔壁として縦隔壁と横隔壁とにより井桁形状の隔壁を備えたPDPでは、放電空間の排気効率を高めるために縦隔壁上に盛り上がり部を設けて隔壁高さを部分的に変える例や、排気およびガス封入を容易とするためにアドレス電極に直交する隔壁の頂部を凹面形状とするなどの隔壁高さに関する例が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0007】
しかしながら、近年の表示画像の高精細度化の要求に対して放電セルの微細化が要求されている。これらの微細放電セルを高品質、高歩留まりで実現し、高品質の表示画像を実現するためには、隔壁幅が小さくなっても落下や振動による隔壁の欠損の少ない放電セル構造と、隣接放電セル間での放電の影響、すなわち放電クロストークを抑制した放電セル構造の実現が要望されている。
【0008】
一方、特許文献1には隔壁強度を向上させる隔壁構造が開示されているが、フルハイビジョン対応などの微細放電セルの隔壁幅の小さい隔壁の欠損抑制には充分ではなく、隣接放電セル間の放電クロストークの抑制についても効果がないものである。また、微細放電セルの輝度向上に有効な井桁形状の隔壁構造に関する特許文献2や特許文献3には、特に排気やガス封入の効率性を目的とした隔壁高さに関する例は開示されているが、隔壁の欠損や放電クロストークの抑制に関しては効果のないものであった。また、微細化に伴い縦隔壁において横隔壁との交点付近への応力集中により、高さが変化するために、前面板の表示電極位置の保護層の膨らみとの接触点にバラツキが生じ、接触点が少なくなりリブの欠損が増加したり、また、他の例のような縦と横の隔壁の交点を盛り上げるには、別の工程を追加する場合はコストアップになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−158345号公報
【特許文献2】特開2001−093425号公報
【特許文献3】特開2001−126624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
PDPの更なる高品質化、歩留まり向上を達成するためには、落下や振動による隔壁の欠けが一つの課題である。また、効率向上、高画素化の為にはPDPのセルの微細化が不可欠であり、隔壁の幅を狭くすることが必須であるが、落下や振動による隔壁の欠け対策を更に困難にする課題が生じた。この隔壁の欠けが発生するとそのセルの発光挙動が変わり、点滅したり、不灯になる虞がある。
【0011】
また、高精細化に伴い放電ギャップ近傍での表示電極方向への放電クロストークが発生しやすいという課題が生じた。
【0012】
更に、前面板の誘電体の低誘電率化に伴い、誘電体層を薄膜化する必要が生じたが、それに伴い誘電体形成前に形成されている電極の高さによる誘電体層の盛上りが相対的に大きくなり上記課題が更に厳しくなる虞が生じた。
【0013】
本発明はこれらの課題を解決し、高品質化、高歩留まり化と共に、高効率、高画素なPDPを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を実現するために、本発明のPDPは、前面ガラス基板上に放電ギャップを設けて、透明電極とバス電極とで構成する表示電極と、遮光層と、表示電極を覆うように誘電体層と、誘電体層上に保護層とを形成した前面板と、前面板に放電空間を形成して対向配置され、かつ背面ガラス基板上に表示電極と直交する方向に配置したアドレス電極と、放電空間を区画するように配置した隔壁と、蛍光体層とを形成した背面板とを備え、バス電極を形成した箇所における、前面板の前面ガラス基板上から前面板の最表面までの厚さE1と、遮光層を形成した箇所における、前面板の前面ガラス基板上から前面板の最表面までの厚さE2と、放電ギャップにおける、前面板の前面ガラス基板上から前面板の最表面までの厚さE3とが、E1>E2>E3であり、かつ透明電極の膜厚D1が、E1−E2>D1であるかまたは、遮光層の膜厚D2が、E1−E2>D2であることを特徴とする。
【0015】
ここで、隔壁は、アドレス電極と平行に配置した縦隔壁と、縦隔壁に交差するように配置した横隔壁とにより構成し、横隔壁は、前面板の遮光層に対応する領域に位置し、縦隔壁と横隔壁との交差部における高さH1と、表示電極の放電ギャップに対応する位置での隔壁の高さH2と、放電空間を区画する縦隔壁のうち、最低高さとなる縦隔壁の高さH3とが、H1≧H2>H3であることが望ましく、さらには、前面ガラス基板から前面板最表面までの厚さと、隔壁の高さとの関係がE1−E2<H1−H3となることが望ましい。
【0016】
また、表示電極は黒色層を含む複数層で形成され、遮光層の少なくとも一部が黒色層と同じ組成の材料によって形成されていることが望ましく、遮光層は透明電極と同じ組成の材料によって形成されている層と、バス電極と同じ組成の材料によって形成されている層とを含んでいることが望ましい。
【0017】
また、表示電極は黒色層と導電層を含む複数層で形成され、遮光層は、黒色層と同じ組成の材料によって形成されている層と、導電層と同じ組成の材料によって形成されている層とを含む複数層で形成され、導電層と同じ組成の材料によって形成されている層の幅が、黒色層と同じ組成の材料によって形成されている層の幅よりも細いことが望ましい。
【0018】
さらに、表示電極のそれぞれは、走査電極または維持電極のいずれかであり、走査電極および維持電極は2本毎に配置され、走査電極と維持電極との間隙が放電ギャップとなり、走査電極と走査電極との間隙または維持電極と維持電極との間隙の領域に遮光層が形成されることが望ましく、維持電極と維持電極との間隙の領域に形成された遮光層は、導電層と同じ組成の材料によって形成されている層を有し、走査電極と走査電極との間隙の領域に形成された遮光層は、導電層と同じ組成の材料によって形成されている層を有していないことが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のPDPによれば、PDPの落下や振動による隔壁欠けを抑制し、高品質で高歩留まりなPDPを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態におけるPDPの構造を示す分解斜視図
【図2】同PDPを前面板の前面ガラス基板側からみた平面図
【図3】同PDPの表示電極に垂直な方向の断面図
【図4】同PDPの前面板の表示電極に垂直な方向の断面図
【図5】従来技術におけるPDPの前面板の表示電極に垂直な方向の断面図
【図6】本発明の実施形態におけるPDPの前面板の表示電極に垂直な方向の断面図
【図7】同PDPの前面板の表示電極に垂直な方向の断面図
【図8】同PDPの前面板の表示電極に垂直な方向の断面図
【図9】同PDPの前面板の表示電極に垂直な方向の断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態におけるPDPについて図面を用いて説明する。まず、本発明の実施形態1におけるPDPの構造について図1を用いて説明する。図1は本発明の実施形態1におけるPDPの構造を示す分解斜視図である。図1に示すように、PDPは、前面板20と背面板30とから構成され、前面板20と背面板30とは放電空間を形成するように対向配置されている。前面板20は、前面ガラス基板21上に、走査電極22と維持電極23とで対をなすストライプ状の複数の表示電極24が形成されている。隣接する表示電極24の間には、光遮蔽部となる遮光層25が形成されている。また、表示電極24と遮光層25とを覆って誘電体層26が形成され、さらに誘電体層26を覆って酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層27が形成されている。
【0022】
また、背面板30は、背面ガラス基板31上に前面板20の表示電極24と直交する方向にアドレス電極32が形成され、アドレス電極32を覆って下地誘電体層33が設けられている。また、下地誘電体層33上には、アドレス電極32に平行な方向の縦隔壁34aとアドレス電極32に直交する方向の横隔壁34bとにより井桁状に形成された隔壁34が設けられ、隔壁34の側面と下地誘電体層33の表面に蛍光体層35が設けられている。蛍光体層35は隣接する隔壁34によって仕切られた放電空間40に、アドレス電極32毎にそれぞれ赤色に発光する赤色蛍光体層、緑色に発光する緑色蛍光体層、青色に発光する青色蛍光体層が順に形成されている。
【0023】
表示電極24とアドレス電極32とが交差するように前面板20と背面板30とを対向配置し、その周縁部を封着材で封着接合している。放電空間40には、放電ガスとして、例えばネオン(Ne)とキセノン(Xe)との混合ガスなどが封入されている。表示電極24に映像信号電圧を選択的に印加することによって放電ガスを放電させ、それによって発生した紫外線が各色の蛍光体層35を励起して、赤色、緑色、青色の各色を発光させることによりカラー画像を表示する。
【0024】
なお、図1に示すように縦隔壁34aと横隔壁34bとはその隔壁高さが異なり、横隔壁34bが縦隔壁34aよりも低くなるようにしている。
【0025】
図2は本発明の実施形態のPDPを前面板20の前面ガラス基板21側からみた平面図を示している。走査電極22と維持電極23とにより対をなす表示電極24が、放電ギャップ50を挟んで配列されている。前面板20に設けられた表示電極24を構成する走査電極22および維持電極23は、それぞれ透明電極22a、23aとバス電極22b、23bとにより構成されている。透明電極22a、23aは薄膜のITOなどで形成されて放電ギャップ50を形成するとともに放電セルから発生する光を透過させている。また、バス電極22b、23bは相対的に表示面側からのコントラストを向上させるためのL値の低い黒色層と電流を流すための抵抗の低い導電層との二種類の層から形成されている。
【0026】
そして、縦隔壁34aと横隔壁34bとによって区画され表示電極24とアドレス電極32とが直交する方形の領域が単位発光領域としての放電セル51を構成している。放電セル51は隣接する放電セル51間、すなわち隣接する表示電極24間では非放電領域52を形成し、この領域の前面ガラス基板21上にコントラストを向上させる遮光層25を形成している。したがって、横隔壁34bは非放電領域52に形成され、横隔壁34bに対応する位置に遮光層25が形成されている。なお本発明の実施形態1における遮光層25の構成については後に詳細に説明する。
【0027】
次に、PDPの製造方法について説明する。まず、前面ガラス基板21上に、走査電極22および維持電極23と遮光層25とを形成する。これらの透明電極22a、23aとバス電極22b、23bは、フォトリソグラフィ法などを用いてパターニングして形成される。透明電極22a、23aは薄膜プロセスなどを用いて形成され、バス電極22b、23bは銀(Ag)材料を含むペーストを所望の温度で焼成して固化している。
【0028】
バス電極22b、23bの黒色層はスクリーン印刷法でガラス基板の全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いて形成される。バス電極22b、23bの導電層はオフセット印刷法により低透過率黒層上に形成される。その後、所望の温度で焼成して固化する。そして本発明の実施形態1では、遮光層25はバス電極22b、23bの黒色層と同一材料とし、同一プロセスにて製造する。
【0029】
次に、走査電極22、維持電極23および遮光層25を覆うように前面ガラス基板21上に誘電体ペーストをダイコート法などにより塗布して誘電体ペースト層(誘電体ガラス層)を形成する。誘電体ペーストを塗布した後、所定の時間放置することによって塗布された誘電体ペースト表面がレベリングされて平坦な表面になる。その後、誘電体ペースト層を焼成固化することにより、走査電極22、維持電極23および遮光層25を覆う誘電体層26が形成される。なお、誘電体ペーストは粉末の誘電体ガラス、バインダおよび溶剤を含む塗料である。次に、誘電体層26上に酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層27を真空蒸着法により形成する。以上の工程により、前面ガラス基板21上に所定の構成部材が形成されて前面板20が完成する。
【0030】
一方、背面板30は次のようにして形成される。まず、背面ガラス基板31上に、銀(Ag)材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や、金属膜を全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする方法などによりアドレス電極32用の構成物となる材料層を形成し、それを所望の温度で焼成することによりアドレス電極32を形成する。次に、アドレス電極32が形成された背面ガラス基板31上にダイコート法などによりアドレス電極32を覆うように誘電体ペーストを塗布して誘電体ペースト層を形成する。その後、誘電体ペースト層を焼成することにより下地誘電体層33を形成する。なお、誘電体ペーストは粉末の誘電体ガラスとバインダおよび溶剤を含んだ塗料である。
【0031】
次に、下地誘電体層33上に隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストを塗布して所定の形状にパターニングして隔壁材料層を形成し、その後、焼成することにより隔壁34を形成する。ここで、下地誘電体層33上に塗布した隔壁用ペーストをパターニングする方法としては、フォトリソグラフィ法やサンドブラスト法を用いることができる。次に、隣接する隔壁34間の下地誘電体層33上および隔壁34の側面に蛍光体材料を含む蛍光体ペーストを塗布して焼成することにより蛍光体層35が形成される。以上の工程により、背面ガラス基板31上に所定の構成部材が形成されて背面板30が完成する。
【0032】
このようにして所定の構成部材を備えた前面板20と背面板30とを走査電極22とアドレス電極32とが直交するように対向配置して、その周囲をガラスフリットで封着し、放電空間40にNe、Xeなどを含む放電ガスを封入することによりPDPが完成する。
【0033】
ここから、本発明の実施形態1における特徴部について詳細に説明する。図3は、本発明の実施形態におけるPDPの前面板20の表示電極24に垂直な方向の部分断面図である。そして、図4は前面板20のみの部分断面図である。また、図5は従来技術における前面板120の部分断面図を示す。この図では本発明のPDPと同様である部位に関しては、同じ図番で示してある。
【0034】
図3、図4に示すように、前面板20に設けられた表示電極24を構成する走査電極22および維持電極23は、それぞれ透明電極22a、23aとバス電極22b、23bとにより構成されている。透明電極22a、23aは薄膜のITOなどで形成されて放電ギャップ50を形成するとともに放電セルから発生する光を透過させている。また、上述したようにバス電極22b、23bは相対的に表示面側からの黒を引き締めるためのL値の低い黒色層と電流を流すための抵抗の低い導電層との二種類の層から形成されている。
【0035】
ところで、本発明の実施形態および従来技術においては、バス電極22b、23bは導電性を確保するために銀材料の厚膜形成法によって形成されているため、表示電極24を覆って形成された誘電体層26は、バス電極22b、23bに対応する位置で盛り上がり部55を形成する。誘電体層26上に形成された保護層27が薄膜形成法で形成されるために、保護層27の表面が盛り上がり部55を有することになる。
【0036】
したがって、従来技術では、前面板120と背面板とを対向配置して、背面板の縦隔壁と前面板120の保護層127とを接触させると、前面板120のバス電極122b、123bの位置に対応する保護層127の盛り上がり部55と縦隔壁とが他の領域に比べて強い接触圧力で接触し、隔壁に対して応力の強く発生する領域となる。フルハイビジョン対応などの微細放電セルの場合には、隔壁の隔壁幅が小さく、衝撃や振動などのわずかな応力印加によって隔壁の欠損を誘発し、特にバス電極122b、123b上の領域では欠損が生じやすくなる。また、微細化に伴い、わずかな縦隔壁の欠損によって、放電セル内の蛍光体層の飛散やその保護層への付着が発生し、放電電圧の上昇や不灯などの表示画像品質の劣化を生じる。
【0037】
また、近年の環境負荷低減の観点から益々低消費電力化が必須であり、誘電体の誘電率をより低くして効率を上げる必要が生じており、誘電体の誘電率低下に伴って誘電体膜を薄くする必要が生じており、前述するバス電極上の盛り上がりが相対的に増大し、前述する不具合を拡大する虞がある。
【0038】
この様な課題に対して、本実施の形態においては、図4に示す様に前面板20の遮光層25が表示電極24のバス電極22b、23bと少なくともある範囲で同じ構成部を有している。具体的には、遮光層25の全域幅にバス電極22b、23bが有している黒色層を有し、遮光層25の黒色層の領域幅よりも細い領域幅に導電性を有している。
【0039】
さらにそれらの構造に伴い、バス電極22b、23bを形成した箇所における、前面板20の前面ガラス基板21上から前面板20の最表面までの厚さE1と、遮光層25を形成した箇所における同厚さE2と、放電ギャップにおける同厚さE3とが、E1>E2>E3であり、かつ透明電極22a、23aの膜厚D1が、E1−E2>D1であるかまたは、遮光層25の膜厚D2が、E1−E2>D2であることを特徴とする。
【0040】
また、図5に示す様に従来技術では遮光層125とバス電極122b、123b下のL値の低い層は別の材料を利用していたのに対して、本発明の実施形態において図3に示す様に同じ材料を用いている。
【0041】
さらに本発明の実施形態においては、図3に示すように、横隔壁34bは前面板20の遮光層25に対応する領域に位置し、縦隔壁34aと横隔壁34bとの交差部における高さH1と、表示電極24の放電ギャップに対応する位置での隔壁34の高さH2と、縦隔壁34aのうち最低高さとなる高さH3とが、H1≧H2>H3であることを特徴とする。なお、同図においてH1−H2をΔh1、H2−H3をΔh2としている。
【0042】
これによって隔壁34の縦隔壁34aと横隔壁34bの交点による盛り上がり部と接触させた場合に、前面板20の盛り上がり部55が、隔壁34の高さの低いH3部に入り込み、縦隔壁34aと前面板20のすきまを減少させることができると共に、H3よりもH2を高くすることにより確実に非放電領域で、前面板20および背面板30とが接触することができ、隔壁欠損の抑制とクロストークの抑制を同時に実現することができる。
【0043】
ここで、前面ガラス基板21から前面板20最表面までの厚さと、隔壁34の高さとの関係が、E1−E2<H1−H3となることが望ましい。これによって、本発明の実施形態では、H1−H3>膜厚D1又は/及び膜厚D2の関係を満たすこととなり、前述する前面板20と背面板30の間隙を本発明の効果を奏する最小限とすることが可能となる。
【0044】
特に透明電極22a、23aの膜厚D1は一般的に0.1から0.2μmと非常に薄いために、誘電体層26形成後ではバス電極22b、23b下の透明電極22a、23aの有無による差は、誘電体の収縮挙動にも依存するが、少なくとも0.05μm以下にまで減少し、測定限界に達するため、実質的にはバス電極22b、23b上と遮光層25の複数層を形成する箇所(バス電極22b、23bと同一の構造を有した箇所)での誘電体層26の盛り上がりは同じ高さになる。
【0045】
すなわち、従来技術において既に遮光層のみや、あるいは遮光層全体をバス電極構造と共用する技術が開示されているが、当該技術では本発明の実施形態による効果を奏することはできない。
【0046】
本発明の実施形態の特徴部についての製造方法について述べる。本発明の実施形態では、上述の縦隔壁34aの隔壁高さが制御された隔壁構造を、感光性隔壁材料を用いた隔壁形成法を用いて実現している。
【0047】
具体的には、まずアドレス電極32と下地誘電体層33が形成された背面ガラス基板31上に、隔壁材料と感光性樹脂材料などよりなる第1層目の隔壁形成材料層を所定厚みで塗布して乾燥させ、その後、横隔壁34bの形状パターンに対応させて露光する。さらに、その上に前述の同様組成の第2層目の隔壁形成材料層を所定厚みで塗布して乾燥させ、その後、縦隔壁34aの形状パターンに対応させて露光する。このように、露光が2回行われた隔壁形成材料層を現像することによって、井桁構造を形成することができ、焼成によって感光性樹脂材料を焼失させ、隔壁材料のみの2層井桁構造の隔壁を形成することができる。
【0048】
すなわち、第1層目の隔壁形成材料層の塗布は横隔壁34bの高さまでに対応する隔壁形成材料層であり、その後の第2層目の塗布は、縦隔壁34aと横隔壁34bとの段差に対応する隔壁形成材料層である。
【0049】
このように、第1層目の部分的に露光された隔壁形成材料層に、第2層目の隔壁形成材料層を塗布し乾燥させると、第1層目の既に露光された横隔壁34bに対応する領域に第2層目の隔壁形成材料層が隔壁形成材料層中の溶媒の濃度拡散によって集中することを利用している。
【0050】
したがって、塗布乾燥された第2層目の隔壁形成材料層の厚みは、図4に示す隔壁高さに対応して、既に露光された横隔壁34bに対応する交差部56で厚くなり、その周囲であるバス電極22b、23bに対応する領域で一番薄くなり、さらに放電ギャップ50部に対応する領域で若干盛り上がる厚みとなる。すなわち、放電ギャップ50部を中心として左右対称の厚み分布を形成することとなる。
【0051】
このような、厚み分布を有する第2層目の隔壁形成材料層を縦隔壁34aの形状パターンに対応させて露光したあと、現像、焼成をすることによって、図3に示す縦隔壁34aの高さ分布を有する井桁形状の隔壁34を実現することができる。
【0052】
以上のように、本発明の実施形態では、隔壁34を感光性隔壁材料を用い、2層塗布と2回露光の場合の隔壁形成材料層の物理的性質に着目して実現している。したがって、上記の縦隔壁34aの隔壁高さの数値を、隔壁形成材料層の材料成分の調整や、露光方法などによって任意に調整することが可能であり、縦隔壁34aの高さ分布を任意に調整することが可能となる。
【0053】
なお上記以外にも、本発明の実施形態の実現方法の一つとして、電極材料自体が透明電極上への形成時と素ガラス上への形成時で形状が異なる様な材料を選別する手法などもあげられるが、本発明の実施形態を満たす限りはこれらの方式に限るものではない。
【0054】
次に本発明の別の実施形態について、図6〜図9を用いて説明する。これらの図はその他の本発明の実施形態における前面板の部分断面図を示している。
【0055】
上記の実施形態では、遮光層25の一部にバス電極22b、23bと同じ構造を有していた。図6に示す本発明の実施形態では、遮光層25の最下層(前面ガラス基板21側)に透明電極22a、23aと同じ材料からなる層を有している。これにより遮光層25の成分拡散に起因した前面ガラス基板21の黄変現象を防止する効果が得られる。また図7に示す本発明の実施形態では、遮光層25の全域がバス電極22b、23bと同じ構造を有している。これにより、バス電極22b、23bの形成工程と、遮光層25の形成工程におけるフォトリソグラフィ工程を一括に処理することが可能となり、PDP製造プロセスを簡略することができる。なお、遮光層25が透明電極22a、23aと同じ材料からなる層を有している場合、画像表示時の黒色度が僅かではあるが低下することがある。このため、遮光層25の透明電極22a、23aと同じ材料からなる層を領域を限定して形成する手法もある。
【0056】
また、PDPの表示電極24の構成として、走査電極22−維持電極23−走査電極22−維持電極23−・・・と交互に配置する構成とは異なり、走査電極22−維持電極23−維持電極23−走査電極22−・・・と2本ずつ交互に配置する構成がある。これは主放電を生じない電極間(以下、IPGとする)が常に同じ電極同士になるため、画像表示時に同電位となる期間が長くなり、IPGでの誤放電を防止する効果がある。
【0057】
図8および図9はこの構成における本発明の実施形態を示している。すなわち走査電極22および維持電極23は、2本毎に配置され、走査電極22と維持電極23との間隙が放電ギャップ50となっており、走査電極22と走査電極22との間隙、または維持電極23と維持電極23との間隙の領域に遮光層25が形成されており、かつ維持電極23と維持電極23との間隙の領域に形成された遮光層25は、走査電極22と維持電極23とが有する導電層と同じ組成の材料によって形成されている層を有し、走査電極22と走査電極22との間隙の領域に形成された遮光層25は、導電層と同じ組成の材料によって形成されている層を有していないことを特徴とする。図8と図9との違いはさらにこれらの遮光層25が透明電極22a、23aと同じ材料からなる層を有しているか否かで異なる。
【0058】
これによって、維持電極23間には導電性材料を含有する層を有し、一方で走査電極22間には導電性材料を含有する層は有さないことになる。先に述べた2本毎の電極配列であっても、走査電極間ではIPGの誤放電を生じる可能性があり、画像表示時に悪影響を及ぼす。本発明の実施形態ではこれを排除することが可能である。
【0059】
また、維持電極間に盛り上がり部を形成することができ、前面板20と背面板30との接する箇所は維持電極間のIPGとなる。従来技術での課題であった隔壁の欠けによる破片は、維持電極上に付着した場合よりも走査電極上に付着した場合の方が、画像表示時の影響としては大きくなることが判明している。このため本発明の実施形態では維持電極上で背面板との接点を確保することができ、たとえ何らかの不確定要因によって隔壁が欠けたとしても、破片の付着による影響を最小限にとどめることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明のPDPによれば、PDPの落下や振動による隔壁欠けを抑制し、高品質で高歩留まりなPDPを実現することが可能となり、画像表示装置として有用である。
【符号の説明】
【0061】
20 前面板
21 前面ガラス基板
22 走査電極
22a、23a 透明電極
22b、23b バス電極
23 維持電極
24 表示電極
25 遮光層
26 誘電体層
27 保護層
30、60 背面板
31、61 背面ガラス基板
32、62 アドレス電極
33、63 下地誘電体層
34、64 隔壁
34a、64a 縦隔壁
34b、64b 横隔壁
35 蛍光体層
40 放電空間
50 放電ギャップ
51 放電セル
52 非放電領域
55 盛り上がり部
56、65 交差部
66、67 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面ガラス基板上に放電ギャップを設けて、透明電極とバス電極とで構成する表示電極と、遮光層と、前記表示電極を覆うように誘電体層と、前記誘電体層上に保護層とを形成した前面板と、
前記前面板に放電空間を形成して対向配置され、かつ背面ガラス基板上に前記表示電極と直交する方向に配置したアドレス電極と、前記放電空間を区画するように配置した隔壁と、蛍光体層とを形成した背面板とを備え、
前記バス電極を形成した箇所における、前記前面板の前記前面ガラス基板上から前記前面板の最表面までの厚さE1と、
前記遮光層を形成した箇所における、前記前面板の前記前面ガラス基板上から前記前面板の最表面までの厚さE2と、
前記放電ギャップにおける、前記前面板の前記前面ガラス基板上から前記前面板の最表面までの厚さE3とが、E1>E2>E3であり、
かつ前記透明電極の膜厚D1が、E1−E2>D1であるかまたは、前記遮光層の膜厚D2が、E1−E2>D2であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記隔壁は、前記アドレス電極と平行に配置した縦隔壁と、前記縦隔壁に交差するように配置した横隔壁とにより構成し、
前記横隔壁は、前記前面板の前記遮光層に対応する領域に位置し、
前記縦隔壁と前記横隔壁との交差部における高さH1と、
前記表示電極の放電ギャップに対応する位置での前記隔壁の高さH2と、
前記放電空間を区画する前記縦隔壁のうち、最低高さとなる前記縦隔壁の高さH3とが、H1≧H2>H3であることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記前面ガラス基板から前記前面板最表面までの厚さと、前記隔壁の高さとの関係が、E1−E2<H1−H3となることを特徴とする請求項2記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記表示電極は黒色層を含む複数層で形成され、前記遮光層の少なくとも一部が前記黒色層と同じ組成の材料によって形成されていることを特徴とする請求項2−3に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前記遮光層は複数層で形成され、前記透明電極と同じ組成の材料によって形成されている層と、前記バス電極と同じ組成の材料によって形成されている層とを含んでいることを特徴とする請求項2−3に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
前記表示電極は黒色層と導電層を含む複数層で形成され、
前記遮光層は、前記黒色層と同じ組成の材料によって形成されている層と、前記導電層と同じ組成の材料によって形成されている層とを含む複数層で形成され、
前記導電層と同じ組成の材料によって形成されている層の幅が、前記黒色層と同じ組成の材料によって形成されている層の幅よりも細いことを特徴とする請求項4−5に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
前記表示電極のそれぞれは、走査電極または維持電極のいずれかであり、
前記走査電極および前記維持電極は、2本毎に配置され、
前記走査電極と前記維持電極との間隙が前記放電ギャップとなり、
前記走査電極と走査電極との間隙、または前記維持電極と維持電極との間隙の領域に前記遮光層が形成されることを特徴とする請求項2−6記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
前記維持電極と維持電極との間隙の領域に形成された前記遮光層は、前記導電層と同じ組成の材料によって形成されている層を有し、前記走査電極と走査電極との間隙の領域に形成された前記遮光層は、前記導電層と同じ組成の材料によって形成されている層を有していないことを特徴とする請求項7に記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−103223(P2011−103223A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257727(P2009−257727)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】