説明

プラズマディスプレイ表示装置およびその製造方法

【課題】フィルムと導電部材との低インピーダンスでの確実な電気的接続およびそれらの摩擦の防止を安価に実現できるプラズマディスプレイ表示装置を提供する。
【解決手段】プラズマディスプレイ表示装置1は、透明基板4と、透明基板4の背面4aに貼着されたフィルム5と、バックカバー6と、フィルム5とバックカバー6とを電気的に接続するための導電部材7とを備えている。導電部材7におけるフィルム5の周縁部に対向する対向面73aには、所定間隔で凸部74が設けられる一方、透明基板4の背面4aには、凹部41が設けられていて、この凹部41に導電部材7の凸部74がフィルム5を挟んで嵌合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示デバイスとしてプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と略す。)を用いた平面型表示装置であるプラズマディスプレイ表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマディスプレイ表示装置では、PDPから輻射される不要な電磁波が装置外に漏洩しないように、PDPの周囲にシールド対策が施されている。例えば特許文献1には、図8に示すような構造のプラズマディスプレイ表示装置が開示されている。このプラズマディスプレイ表示装置は、枠体11と、枠体11の内側に配置される光学フィルタ13と、この光学フィルタ13の周縁部を枠体11に押し付けて当該光学フィルタ13を枠体11とで挟持する枠状の導電部材17と、導電部材17と共に枠体11に固定される導電性のバックカバー16とを備えている。そして、光学フィルタ13、導電部材17、およびバックカバー16で囲まれる空間内にPDP12が収容されている。
【0003】
光学フィルタ13は、PDP12からの映像光を透過させる一方、電磁波を阻止するものであり、樹脂やガラスなどからなる透明基板14と、透明基板14のPDP12側の面に貼着された、導電層(例えば金属メッシュなど)を含むフィルム15とを有している。そして、このフィルム15が導電部材17に電気的に接続されることにより、PDP12を包み込むシールド筐体が構成される。また、特許文献1に開示されたプラズマディスプレイ表示装置では、フィルム15と導電部材17とを低インピーダンスでかつ確実に電気的に接続させるために、フィルム15と導電部材17との間に導電性のガスケット18を介在させている。
【特許文献1】特開2001−141972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、導電性のガスケット18は高価なものであり、このガスケット18を用いると、プラズマディスプレイ表示装置の製造コストが増大するという問題がある。反対に、ガスケット18を用いないと、フィルム15と導電部材17とを全面に亘って面接触させることが困難であるためにインピーダンスが高くなるだけでなく、搬送時の振動などでフィルム15と導電部材17の接触部分同士が擦れてしまい、その摩擦により当該接触部分が荒れてそれらの接触不良を招くおそれがある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、フィルムと導電部材との低インピーダンスでの確実な電気的接続およびそれらの摩擦の防止を安価に実現することのできるプラズマディスプレイ表示装置およびこのプラズマディスプレイ表示装置を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、PDPと、前記PDPの前面側に配置された透明基板と、前記透明基板の一方面に貼着された、導電層を有するフィルムと、前記PDPの背面側に配置された導電性のバックカバーと、前記フィルムの周縁部と前記バックカバーの周縁部とを電気的に接続する導電部材とを備え、前記導電部材は、前記フィルムの周縁部に前記透明基板と反対側から対向する対向面を有しており、この対向面には、所定間隔で凸部が設けられており、前記透明基板の前記一方面には、凹部が設けられていて、この凹部に前記導電部材の凸部が前記フィルムを挟んで嵌合しているプラズマディスプレイ表示装置を提供する。
【0007】
また、本発明は、周縁部に凹部が形成された一方面に、導電層を有するフィルムが貼着された透明基板を準備し、前記フィルムの周縁部に対向する対向面およびこの対向面に所定間隔で設けられた凸部を有する導電部材を前記フィルム側から前記透明基板に押し付け、前記フィルムを前記凸部で突き破りながら前記凹部内に押し込んで、前記凸部を前記凹部に前記フィルムを挟んだ状態で嵌合させる工程を含むプラズマディスプレイ表示装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により得られるプラズマディスプレイ表示装置では、フィルムの周縁部に対向する導電部材の対向面に所定間隔で凸部が設けられている、換言すればフィルムの輪郭に沿って凸部が点在しており、これらの凸部と透明基板の凹部とが嵌合しているので、透明基板に貼着されたフィルムと導電部材との相対的な位置ずれを防止することができ、フィルムと導電部材との摩擦を防ぐことができる。また、凸部はフィルムを挟んで凹部に嵌合しているので、導電部材とフィルムとを確実に面接触させるとともにその接触面積を大きく確保することができ、インピーダンスを低く抑えることができる。このように、本発明では、導電性ガスケットを用いることなく安価に導電部材とフィルムとの摩擦の防止およびそれらの低インピーダンスでの確実な電気的接続を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図を用いながら詳細に説明する。
【0010】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るプラズマディスプレイ表示装置1は、PDP12と、PDP12の前面側に配置された光学フィルタ3と、光学フィルタ3の周縁部を前面側から覆う枠体8と、枠体8とで光学フィルタ3の周縁部を挟持する導電部材7と、PDP12の背面側に配置されたバックカバー6とを備えている。
【0011】
枠体8は、例えば樹脂などで構成されていて、正面視で矩形枠状をなしており、断面略L字状の4辺を有している。具体的には、枠体8は、窓81aを形成する正面板81と、この正面板81の外周縁部から背面側に延びる周壁82とを有している。
【0012】
光学フィルタ3は、ガラスまたはアクリルなどの樹脂で構成された透明基板4と、この透明基板4のPDP2側の背面4aに略全面に亘って貼着されたフィルム5とを有している。フィルム5は、ポリエステルフィルムなどのベース層上に、金属メッシュおよびこの金属メッシュを縁取る金属枠を有する導電層が形成されたものであり、導電層がPDP12側に露出する状態で透明基板4に保持されている。
【0013】
導電部材7は、押え金具とも呼ばれるものであり、図5に示すように4つの辺部7a〜7dで構成されていて、枠体8の周壁82の端面に固定される矩形枠状の固定部71と、光学フィルム3の周縁部を押圧するための、固定部71よりも一回り小さな矩形枠状の押圧部73と、固定部71の内周縁部と押圧部73の外周縁部とを連結する矩形筒状の連結部72(図1参照)とを有している。すなわち、押圧部73の光学フィルタ3側の面は、フィルム5の周縁部に透明基板4と反対側から対向する対向面73aとされている。そして、固定部71が周壁82の端面に固定されると、押圧部73によって光学フィルタ3の周縁部が枠体8の正面板81に押し付けられるとともに、押圧部73とフィルム5の導電層とが電気的に接続される。なお、4つの辺部7a〜7dは、それぞれが個々にプレス成形されたものである。
【0014】
バックカバー6は、金属板をプレス成形することにより構成された導電性のものであり(図1では板状に簡略化して作図)、その周縁部が導電部材7の固定部71と共に枠体8の周壁82の端面にねじ止めによって固定されることにより、導電部材7と電気的に接続される。すなわち、バックカバー6の周縁部とフィルム5の周縁部は、導電部材7を介して電気的に接続される。
【0015】
さらに、本実施形態では、図5に示すように、導電部材7の対向面73aに、複数の凸部74が設けられている。これらの凸部74は、フィルム5の輪郭に沿って所定間隔Lを隔てて並んでいる。この所定間隔Lは、隣り合う凸部74の間から1GHz以下の電磁波が外部に漏れ出さないようにするために、その波長の1/4である7.5cm以下であることが好ましい。
【0016】
凸部74は、図2に示すような五角形の断面形状でフィルム5の輪郭に沿って延びる突条をなしており、先端が尖った形状となっている。この凸部74の長さも、後述する凹部41の大きさを小さくするという観点から7.5cm以下であることが好ましい。より詳しくは、凸部74は、図6に示すように、対向面73aに垂直でかつフィルム5の輪郭に沿う方向に横長長方形状の一対の垂直面74aと、垂直面74aの上辺から内向きに傾斜する一対の傾斜面74bと、対向面73aに垂直な五角形状の一対の側面74cとを有している。このような凸部74は、辺部7a〜7dをプレス成形する際に同時に形成することができる。あるいは、凸部74を別途作製しておいて、プレス成形した辺部7a〜7dに抵抗溶接や導電性接着剤などで取り付けてもよい。すなわち、凸部74は、中空であっても中実であってもよく、対向面73aと電気的に接続されていればよい。
【0017】
また、透明基板4の背面4aには、図3に示すように、凸部74に対応する位置に凸部74と略同じ大きさを有する平面視で長方形状の凹部41が設けられている。そして、図2に示すように、各凹部41に対応する位置で各凸部74がフィルム5を貫通していて、各凹部41に各凸部74がフィルム5を挟んで嵌合している。透明基板4の凹部41は、透明基板4を作製する際に凹部41に対応する突起が形成された金型を用いることにより、あるいは透明基板4を作製後に機械加工により形成することができる。
【0018】
以上説明したプラズマディスプレイ表示装置1を製造するには、次のようにすればよい。
【0019】
まず、透明基板4の背面4aの周縁部に、導電部材7の凸部74に対応する位置に凹部41を形成する。ついで、透明基板4の背面4aに、フィルム5を貼着して、図3および図4に示すような光学フィルタ3を作製する。このとき、全ての凹部41はフィルム5によって塞がれた状態となる。
【0020】
その後、導電部材7を光学フィルタ3のフィルム5側に配置し、凸部74の位置と凹部41の位置とが合致するようにそれらを位置合わせした状態で、導電部材7をフィルム5側から透明基板4に押し付ける。そうすると、まず凸部74の先端によってフィルム5が凹部41の中央に対応する位置で破断する。凸部74は先端が尖った突条をなしているので、フィルム5を簡単に直線上で破断させることができる。さらに凸部74を押し込むと、今度はフィルム5が凸部74の傾斜面74bの側辺に沿って破断していくとともに、コ字状に破断された部分が傾斜面74bによって押し上げられていく。このようにして、フィルム5は、凸部74によって突き破られながら凹部41内に押し込まれる。これにより、凸部74の垂直面74aと凹部41の内周面41aとの間にフィルム5を挟み込んだ状態で凸部74と凹部41とを嵌合させることができる。なお、フィルム5が確実に凹部41の中央に対応する位置で破れるようにするためには、光学フィルタ3を作製した後に、図4の矢印Aで示す位置に凹部41の長手方向に延びる切り込みを入れておいてもよい。または、その切れ込みを凹部41の大きさに対応するI字状にしてもよい。
【0021】
本実施形態のプラズマディスプレイ表示装置1では、フィルム5の輪郭に沿って点在する凸部74と透明基板4の凹部41とが嵌合しているので、透明基板4に貼着されたフィルム5と導電部材7との相対的な位置ずれを防止することができ、フィルム5と導電部材7との摩擦を防ぐことができる。また、凸部74はフィルム5を挟んで凹部41に嵌合しているので、導電部材7とフィルム5とを確実に面接触させるとともにその接触面積を大きく確保することができ、インピーダンスを低く抑えることができる。このように、本実施形態では、導電性ガスケットを用いることなく安価に導電部材7とフィルム5との摩擦の防止およびそれらの低インピーダンスでの確実な電気的接続を実現することができる。また、導電性ガスケットを用いる場合に比べ、導電性ガスケットを貼り付けるという煩雑な作業を省略することができ、製造工程を簡略化することができる。
【0022】
なお、前記実施形態では、凹部41が凸部74に対応する位置に個々に設けられているが、凹部41は、4つの辺部7a〜7dごとに連続した直線状をなす溝状になっていてもよいし、全てが連続した正面視で矩形状をなす溝状になっていてもよい。ただし、前記実施形態のように凹部41が個々に設けられていれば、透明基板4の強度を確保することができる。
【0023】
また、図7に示すように、凹部41の内周面41aと透明基板4の背面4aとで形成されるコーナー部には、丸みが付けられていてもよい。このようにすれば、凸部74を凹部41内に押し込む際に、当該コーナー部でフィルム5が破れることを抑制することができる。
【0024】
さらに、透明基板4のPDP12側と反対側の前面に凹部41が設けられ、この前面にフィルム5が貼着されていてもよい。この場合、導電部材7が光学フィルタ3をPDP2に向って押し付けるような構成にすればよい。すなわち、本発明の一方面とは、透明基板4の前面または背面のどちらであってもよい。
【0025】
また、凸部74は、先端面が円錐面とされた円柱状であってもよい。ただし、凸部74が存する部分では電磁波が外部に漏れ出すことが確実に阻止されるため、前記実施形態のように凸部74がフィルム5の輪郭に沿って延びる突条となっていれば、電磁波を確実に阻止する部分を大きく確保することができる。
【0026】
さらには、枠体8を省略して導電部材7のみで光学フィルタ3を支持することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、透明基板およびフィルムと導電部材が相対移動不能に固定されるため、それらの間に導電性ガスケットを挟むことなく、摩擦防止および低インピーダンスでの電気的接続が確保できる。そのため、プラズマディスプレイ表示装置において、低コスト、低工数で装置全体のシールド効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係るプラズマディスプレイ表示装置の断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】光学フィルタの背面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】導電部材の正面図である。
【図6】図5の導電部材の拡大斜視図である。
【図7】変形例の光学フィルタの断面図である。
【図8】従来のプラズマディスプレイ表示装置の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 プラズマディスプレイ表示装置
2 プラズマディスプレイパネル(PDP)
3 光学フィルタ
4 透明基板
4a 背面
41 凹部
5 フィルム
6 バックカバー
7 導電部材(押え金具)
73a 対向面
74 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマディスプレイパネルと、
前記プラズマディスプレイパネルの前面側に配置された透明基板と、
前記透明基板の一方面に貼着された、導電層を有するフィルムと、
前記プラズマディスプレイパネルの背面側に配置された導電性のバックカバーと、
前記フィルムの周縁部と前記バックカバーの周縁部とを電気的に接続する導電部材とを備え、
前記導電部材は、前記フィルムの周縁部に前記透明基板と反対側から対向する対向面を有しており、この対向面には、所定間隔で凸部が設けられており、
前記透明基板の前記一方面には、凹部が設けられていて、この凹部に前記導電部材の凸部が前記フィルムを挟んで嵌合しているプラズマディスプレイ表示装置。
【請求項2】
前記凸部は、前記フィルムを貫通している請求項1に記載のプラズマディスプレイ表示装置。
【請求項3】
前記凸部は、先端が尖った形状を有している請求項1または2に記載のプラズマディスプレイ表示装置。
【請求項4】
前記凸部は、前記フィルムの輪郭に沿って延びる突条をなしている請求項3に記載のプラズマディスプレイ表示装置。
【請求項5】
前記所定間隔は、7.5cm以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイ表示装置。
【請求項6】
前記凹部は、前記凸部に対応する位置に個々に設けられている請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイ表示装置。
【請求項7】
前記凹部の内周面と前記透明基板の前記一方面とで形成されるコーナー部には、丸みが付けられている請求項1〜6のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイ表示装置。
【請求項8】
周縁部に凹部が形成された一方面に、導電層を有するフィルムが貼着された透明基板を準備し、前記フィルムの周縁部に対向する対向面およびこの対向面に所定間隔で設けられた凸部を有する導電部材を前記フィルム側から前記透明基板に押し付け、前記フィルムを前記凸部で突き破りながら前記凹部内に押し込んで、前記凸部を前記凹部に前記フィルムを挟んだ状態で嵌合させる工程を含むプラズマディスプレイ表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−109899(P2009−109899A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284131(P2007−284131)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】