説明

プラズマ処理装置

【課題】被処理物の対象領域をプラズマ処理するプラズマ処理装置において、狭い空間の区画面であってもプラズマ処理可能なプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】放電プラズマPを生じさせるための電力を供給する電力供給部12と、電力供給部12によって電力が与えられると両者の間に放電プラズマPが生成される一対の電極16、16とを備え、一対の電極16、16は、放電プラズマPが対象領域2を横断して対象領域2に接触するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物の対象領域をプラズマ処理するプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被処理物の対象領域をプラズマ処理するプラズマ処理装置が知られている。特許文献1には、この種のプラズマ処理装置として、対向する複数の平板電極により不活性ガスを励起してプラズマを発生させて被処理物をプラズマ処理するプラズマ処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−70301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来のプラズマ処理装置では、例えば、細径の短いチューブの内面など狭い空間の区画面をプラズマ処理しようとしても、その狭い空間にプラズマがほとんど侵入しないので、プラズマ処理することが難しかった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被処理物の対象領域をプラズマ処理するプラズマ処理装置において、狭い空間の区画面であってもプラズマ処理可能なプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、被処理物の対象領域をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、放電プラズマを生じさせるための電力を供給する電力供給部と、前記電力供給部によって電力が与えられると両者の間に放電プラズマが生成される一対の電極とを備え、前記一対の電極は、放電プラズマが前記対象領域を横断して前記対象領域に接触するように設けられている。
【0007】
第1の発明では、一対の電極の間に生成される放電プラズマが対象領域を横断して対象領域に接触する。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記一対の電極の間に設けられ、前記対象領域の近傍以外で放電プラズマが生成されることを阻止する電気絶縁性の遮蔽部材を備えている。
【0009】
第2の発明では、電気絶縁性の遮蔽部材が、対象領域の近傍以外で放電プラズマが生成されることを阻止する。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、前記対象領域は、電気絶縁性のカバー部材で間隙を隔てて覆われており、前記一対の電極は、前記カバー部材と前記対象領域の間で放電プラズマが生成されるように対象領域の近傍にカバー部材を挟んで設けられている。
【0011】
第4の発明は、第3の発明において、前記遮蔽部材は、放電プラズマが生成した状態において、前記カバー部材の外面に当接した状態にある。
【0012】
第4の発明では、遮蔽部材が、カバー部材の外面に当接した状態にあるので、カバー部材の外側における一対の電極間の空間距離がより長くなる。
【0013】
第5の発明は、第4の発明において、前記一対の電極の先端は、前記カバー部材の外面の位置よりも、前記対象領域から離れた位置にある。
【0014】
第5の発明では、一対の電極の先端が、カバー部材の外面の位置よりも、対象領域から離れた位置にあるので、被処理物を取り扱う際に、カバー部材と一対の電極とが干渉しないようにすることが容易になる。
【0015】
第6の発明は、第2乃至第5の何れか1つの発明において、前記一対の電極と前記対象領域とを相対移動させて、前記対象領域の一端側から他端側に亘って放電プラズマを接触させる相対移動手段を備えている。
【0016】
第6の発明では、相対移動手段が、一対の電極と対象領域とを相対移動させて、対象領域の一端側から他端側に亘って放電プラズマを接触させるので、より広い対象領域に放電プラズマが到達する。
【0017】
第7の発明は、第6の発明において、前記相対移動手段が、前記被処理物と共に前記カバー部材を移動させる状態で、前記遮蔽部材が前記カバー部材の同じ位置に当接するように前記遮蔽部材を移動させる当接位置維持手段を備えている。
【0018】
第7の発明では、固定された一対の電極に対して、相対移動手段が対象領域と共にカバー部材を移動させる。一方、当接位置維持手段が、遮蔽部材を移動させてカバー部材の同じ位置に遮蔽部材が当接するようにする。
【0019】
第8の発明は、第1乃至第7の何れか1つの発明において、前記一対の電極の間に発生した放電プラズマに電磁波を放射する電磁波放射手段を備えている。
【0020】
第8の発明では、一対の電極の間に発生した放電プラズマに電磁波を放射するので、放電プラズマのエネルギーに電磁波のエネルギーが加わる。
【0021】
第9の発明は、第8の発明において、前記被処理物は、板状に形成され、前記電磁波放射手段は、前記被処理物における前記対象領域の裏側から電磁波を放射する。
【0022】
第9の発明では、被処理物における対象領域の裏側から電磁波を放射するので、板状に形成された被処理物の厚みの近距離から、電磁波を放射することになる。
【0023】
第10の発明は、第1乃至第9の何れか1つの発明において、前記被処理物は、検査する尿が前記対象領域に滴下される検査用チップである。
【0024】
第11の発明は、第1又は第2の発明において、前記被処理物は、筒状に形成され、前記一対の電極は、筒状に形成された前記被処理物の内面を前記対象領域として、該内面に放電プラズマが接触するように設けられる。
【0025】
第12の発明は、第11の発明において、前記一対の電極の各々が針状に形成され、前記一対の電極の各々が前記被処理物内の空間に露出するように該被処理物に突き刺された状態で、前記電力供給部から前記一対の電極へ電力が与えられる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、放電プラズマが対象領域を横断して対象領域に接触するように、一対の電極が設けられている。これは、不活性ガスを励起して生成させたプラズマを供給して被処理物を処理する従来のプラズマ処理装置と異なり、放電プラズマが対象領域に接触するような位置に一対の電極を設けるものである。そのため、狭い空間の区画面であってもプラズマを到達させて、対象領域をプラズマ処理することができる。
【0027】
第2の発明では、遮蔽部材が、対象領域の近傍以外で放電プラズマが生成されることを阻止するので、確実に対象領域に放電プラズマを到達させることができる。そのため、効率良く対象領域をプラズマ処理することができる。
【0028】
第4の発明では、遮蔽部材が、カバー部材の外面に当接した状態にあるので、カバー部材の外側における一対の電極間の空間距離がより長くなる。そのため、対象領域とカバー部材との間の間隙以外で放電プラズマが生成されることを阻止することができる。
【0029】
第5の発明では、一対の電極の先端が、カバー部材の外面の位置よりも、対象領域から離れた位置にあるので、被処理物を取り扱う際に、カバー部材と一対の電極とが干渉しないようにすることが容易になる。
【0030】
第6の発明では、相対移動手段が、一対の電極と対象領域とを相対移動させて、対象領域の一端側から他端側に亘って放電プラズマを接触させるので、より広い対象領域をプラズマ処理できる。
【0031】
第7の発明では、固定された一対の電極に対して、相対移動手段が対象領域と共にカバー部材を移動させる。一方、当接位置維持手段が、遮蔽部材を移動させてカバー部材の同じ位置に遮蔽部材が当接するようにする。そのため、より広い対象領域をプラズマ処理しながら、対象領域とカバー部材との間の間隙以外で放電プラズマが生成されることを阻止することができる。
【0032】
第8の発明では、一対の電極の間に発生した放電プラズマに電磁波を放射するので、放電プラズマのエネルギーに電磁波のエネルギーが加わる。そのためより効率良く被処理物をプラズマ処理することができる。
【0033】
第9の発明では、被処理物における対象領域の裏側から電磁波を放射するので、板状に形成された被処理物の厚みの近距離から、電磁波のエネルギーを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態に係る検査用チップの概略構成図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。
【図2】実施形態に係るプラズマ処理装置の概略構成図である。
【図3】実施形態に係るプラズマ処理装置の要部構成図である。
【図4】実施形態に係るプラズマ処理装置の平面図である。
【図5】実施形態に係るプラズマ処理装置の側面図である。
【図6】実施形態に係るプラズマ処理装置の制御フローである。
【図7】変形例1に係るプラズマ処理装置の要部構成図である。
【図8】変形例2に係るプラズマ処理装置の要部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0036】
本実施形態のプラズマ処理装置10は、被処理物として、図1(a)〜(c)に示す検査用チップ1の対象領域2をプラズマ処理するための装置である。
【0037】
検査用チップ1は、検査対象の液体として例えば尿を検査するための矩形の板状部材である。検査用チップ1は、電気絶縁性の合成樹脂で形成されている。検査用チップ1の上面には、その上面の大部分を占める矩形の凹部4が設けられている。プラズマ処理装置10は、凹部4の底面のうち尿の液滴を保持する領域を対象領域2としてプラズマ処理を行い、その対象領域2の親水性を向上させる。
【0038】
凹部4の底面は、上側から電気絶縁性のカバー部材5で覆われている。凹部4の底面は、0.2mm以下の狭い隙間を隔てて、カバー部材5に覆われている。カバー部材5は、凹部4に嵌り込む大きさの略矩形の板状に形成されている。具体的に、カバー部材5は、その長手方向の長さが凹部4の長手方向の長さにほぼ等しく、その短手方向の長さが凹部4の短手方向の長さよりも短い。カバー部材5では、凹部4の底面との間に隙間を形成するための脚部6,6が、長手方向の両端に形成されている。カバー部材5を凹部4に嵌め込んだ状態では、凹部4の底面が、短手方向の両端部を残してカバー部材5に覆われる。凹部4の底面では、カバー部材5に覆われている領域が前記対象領域2となる。カバー部材5の短手方向の両側には、カバー部材5と対象領域2との間の空間を外部に連通される矩形の開口部25,25がそれぞれ形成される。
【0039】
図2〜図5に示すように、本実施形態のプラズマ処理装置10は、カバー部材5が取り付けられた状態の検査用チップ1の対象領域2をプラズマ処理するためのものである。プラズマ処理装置10は、本体11と、電力供給部12と、電磁波放射装置13(電磁波放射手段)と、制御装置14とを備えている。
【0040】
本体11は、本体ケーシング15と、一対の電極16、16と、遮蔽部材17と、ベルトコンベア18(相対移動手段)と、当接位置維持装置19(当接位置維持手段)とを備えている。一対の電極16、16と遮蔽部材17とベルトコンベア18は、本体ケーシング15の中に設けられている。当接位置維持装置19は、本体ケーシング15の上部に設けられている。
【0041】
ここで、本体ケーシング15は、筒状の金属製の部材である。検査用チップ1は、ベルトコンベア18により、本体ケーシング15の搬入口35を通って外部から搬入され、搬出口36を通って外部に搬出される。
【0042】
一対の電極16、16は、棒状の金属製部材である。一対の電極16、16は、対象領域2を挟むように形成された開口部25、25近傍に位置するように、本体ケーシング15に取り付けられている。一対の電極16、16は、本体ケーシング15からは絶縁体26、26により、電気的に絶縁された状態で本体ケーシング15に取り付けられる。一対の電極16、16は、一対のリード線37、38を介して、後述する電力供給部12にそれぞれ電気的に接続されている。一対のリード線37、38を介して電力供給部12から電力が与えられると、一対の電極16、16の間に大きな電位差が生じ、一対の電極16、16の放電ギャップにおいてスパーク放電が生じる。このスパーク放電に伴って、自由電子が放出される。
【0043】
スパーク放電により生成された放電プラズマPは、カバー部材5と対象領域2との間の狭い隙間で対象領域を横断する。
【0044】
遮蔽部材17は、一対の電極16、16の間に設けられた電気絶縁性の部材である。この遮蔽部材17は、後述する当接位置維持装置19の上下昇降装置28に支持された状態で、カバー部材5の上面に当接する。遮蔽部材17は、対象領域2の近傍以外で放電プラズマが生成されることを阻止する。そのため、対象領域2の近傍以外で放電プラズマが生成されて無駄にエネルギーが消費されることを阻止できる。
【0045】
ベルトコンベア18は、検査用チップ1を搬送することにより、一対の電極16、16と検査用チップ1の対象領域2とを相対移動させる。これにより対象領域2の一端側から他端側に亘って放電プラズマPを接触させることができる。また、ベルトコンベア18は、一対のプーリ34、34に2本のベルト27、27が間隔を隔てて巻き掛けられている。そのため、ベルト27、27間の空間を利用することで、後述する電磁波放射装置13のアンテナ23が検査用チップ1の近傍の位置から電磁波を放射することができる。
【0046】
当接位置維持装置19は、遮蔽部材17がカバー部材5の同じ位置に当接するように遮蔽部材17を移動させる搬送装置である。当接位置維持装置19は、上下昇降装置28と、往復搬送装置29とを備えている。上下昇降装置28は、遮蔽部材17を上下させる。往復搬送装置29は、この上下昇降装置28を水平に往復移動させる。当接位置維持装置19は、ベルトコンベア18が、検査用チップ1とカバー部材5を移動させている間に、上下昇降装置28と往復搬送装置29とを駆動してカバー部材5の同じ位置に遮蔽部材17を当接させる。
【0047】
電力供給部12は、放電プラズマPを生成するための電力を一対の電極16、16に供給する装置である。電力供給部12は、昇圧トランス(図示省略)により外部から供給を受けた低圧の交流を高圧の交流に昇圧する。また、電力供給部12は、リード線37、38を介して、昇圧した高圧の交流を一対の電極16、16に供給する。なお、電力供給部12は高圧の直流を一対の電極16、16に供給するように構成されていてもよい。
【0048】
電磁波放射装置13は、一対の電極16、16の間に生成された放電プラズマPに電磁波を放射するものである。電磁波放射装置13は、電磁波発生装置21と、アンテナ23とを備えている。電磁波発生装置21は、外部から電力の供給を受けて半導体発振器(図示省略)によりマイクロ波を生成する。電磁波発生装置21は、生成したマイクロ波をマイクロ波伝送路24を介してアンテナ23に送る。この電磁波発生装置21は、マイクロ波の生成に当って半導体発振器の代わりに、マグネトロンを使用してもよい。
【0049】
アンテナ23は、電磁波発生装置21から出力されたマイクロ波を、検査用チップ1の対象領域2に生成された放電プラズマPに放射するためのものである。アンテナ23は、検査用チップ1の上方に設けられる遮蔽部材17との干渉を避けるために、検査用チップ1の下方に設けられている。また、アンテナ23の近傍が強電界場になるので、できるだけ対象領域2にアンテナ23を近づける方が放電プラズマPを拡大させることができる。そのため、アンテナ23は、ベルトコンベア18の二つのベルト27、27の間に取り付けられている。また、アンテナ23の放射位置は、検査用チップ1における対象領域2の裏側近傍に位置している。
【0050】
アンテナ23からマイクロ波が放射されると、放電プラズマPの自由電子がマイクロ波のエネルギーを受けて加速される。自由電子は、周囲のガス分子に衝突し、そのガス分子を電離させる。電離により放出された自由電子も、マイクロ波のエネルギーを受けて加速され、周囲のガス分子を電離させる。そして、ガス分子が雪崩式に電離し、放電プラズマPが拡大する。拡大した放電プラズマPは、対象領域2に接触する。その結果、対象領域2の親水性が改善される。
【0051】
このように、一対の電極16、16で生成される放電プラズマPに、アンテナ23からマイクロ波を照射することにより、対象領域2における放電プラズマPが拡大する。
【0052】
制御装置14は、CPU、記憶装置、入出力装置を備えた電子制御装置14で構成されている。制御装置14は、次に述べるように、電力供給部12と、電磁波放射装置13と、ベルトコンベア18と、当接位置維持装置19とを制御して、検査用チップ1の対象領域2をプラズマ処理する。
−プラズマ処理装置の動作−
【0053】
制御装置14の制御によるプラズマ処理装置10の動作について説明する。
【0054】
図6に示すように、制御装置14は、開始指令が入力されると、まず、ベルトコンベア18を制御して、カバー部材5が取り付けられた検査用チップ1を位置A1(図6)にまで移動させる(ステップS1)。
【0055】
次に、検査用チップ1が、位置A1に到達したならば、一旦ベルトコンベア18を停止させる(ステップS2)。また、当接位置維持装置19を制御して、位置B4にある遮蔽部材17を位置B1まで下降させる。そして、遮蔽部材17をカバー部材5の上面に当接させる(ステップS3)。
【0056】
遮蔽部材17がカバー部材5の上面に当接したならば、再びベルトコンベア18を制御して、検査用チップ1の移動を開始させる。また、遮蔽部材17が、検査用チップ1と同じ速度で水平移動するように、当接位置維持装置19による遮蔽部材17の水平移動を開始させる(ステップS4)。これにより、遮蔽部材17が、カバー部材5の同じ位置に当接した状態で、検査用チップ1が、一対の電極16、16に対して相対移動する。
【0057】
この時、検査用チップ1が、位置A1から位置A2にまで移動する間に、検査用チップ1の対象領域2が一対の電極16、16の近傍に接近したことを位置センサ(図示省略)が検知する(ステップS5)。この時、電力供給部12を制御して電力を供給させることにより、一対の電極16、16に放電プラズマPを生成させる。また、それと共に、電磁波発生装置を制御してアンテナ23から電磁波を放射させる(ステップS6)。
【0058】
この時、生成された放電プラズマPが、検査用チップ1とカバー部材5との間の間隙に到達して対象領域2に接触する。このようにして、放電プラズマPにより検査用チップ1の対象領域2の一端側から他端側に亘ってプラズマを接触させる(ステップS7)。
【0059】
検査用チップ1の対象領域2が一対の電極16、16から離間したことを別の位置センサ(図示省略)が検知したならば(ステップS8)、電力供給部12からの電力を停止すると共に、電磁波発生装置からの電磁波も停止させる(ステップS9)。
【0060】
また、検査用チップ1がA2の位置にまで移動したならば(ステップS10)、一旦ベルトコンベア18を停止させる。また、それとともに、当接位置維持装置19を制御して、遮蔽部材17を上方の位置B3にまで移動させる(ステップS11)。
【0061】
その後、再びベルトコンベア18を制御して、検査用チップ1を本体11の外部に移動させる(ステップS12)。
【0062】
また、当接位置維持装置19を制御して、遮蔽部材17を最初の位置B4にまで移動させる(ステップS13)。そして、次の検査用チップ1が来るまで待機させ(ステップS14)、ステップS1に戻る。
−実施形態の効果−
【0063】
本実施形態では、放電プラズマPが対象領域2を横断して対象領域2に接触するように、一対の電極16、16が設けられているので、狭い空間の区画面であってもプラズマ処理可能なプラズマ処理装置10を提供することができる。
【0064】
遮蔽部材17が、対象領域2の近傍以外で放電プラズマPが生成されることを阻止するので、確実に対象領域2に放電プラズマPを到達させることができる。そのため、効率良く対象領域2をプラズマ処理することができる。
【0065】
遮蔽部材17が、カバー部材5の外面に当接した状態にあるので、一対の電極16、16間の空間距離がより長くなる。そのため、対象領域2とカバー部材5との間の間隙以外で放電プラズマPが生成されることを阻止することができる。
【0066】
ベルトコンベア18が、一対の電極16、16と対象領域2とを相対移動させて、対象領域2の一端側から他端側に亘って放電プラズマPを接触させるので、より広い対象領域2をプラズマ処理できる。
【0067】
一対の電極16、16の先端が、カバー部材5の外面の位置よりも、対象領域2から離れた位置にあるので、検査用チップ1を取り扱う際に、カバー部材5と一対の電極16、16とが干渉しないようにすることが容易である。
【0068】
固定された一対の電極16、16に対して、ベルトコンベア18が対象領域2と共にカバー部材5を移動させる。一方、当接位置維持装置19が、遮蔽部材17を移動させてカバー部材5の同じ位置に遮蔽部材17が当接するようにする。そのため、より広い対象領域2をプラズマ処理しながら、対象領域2とカバー部材5との間の間隙以外で放電プラズマPが生成されることを阻止することができる。
【0069】
一対の電極16、16の間に発生した放電プラズマPに電磁波を放射するので、放電プラズマPのエネルギーに電磁波のエネルギーが加わる。そのためより効率良く検査用チップ1をプラズマ処理することができる。
【0070】
検査用チップ1における対象領域2の裏側から電磁波を放射するので、板状に形成された検査用チップ1の厚みの近距離から、電磁波のエネルギーを供給することができる。
−実施形態の変形例1−
【0071】
被処理物は、図1に示すような板状に形成された検査用チップに限定されない。また、カバー部材5も必須ではない。例えば、図7に示すような筒状に形成されたチューブ31(筒状部材)の内面32を対象領域2とするものであってもよい。この場合、一対の電極16、16は、図に示すように、チューブ31の内面32に放電プラズマPが接触するように筒状に形成されたチューブ31の開口33、33の近傍に設けられる。
【0072】
このように、変形例1のプラズマ処理装置10によれば、筒状部材の内面32をプラズマ処理することもできる。
−実施形態の変形例2−
【0073】
被処理物31は、図8に示すように、比較的長いチューブ31(筒状部材)である。チューブ31は、可撓性を有する柔軟なチューブである。チューブ31は、例えば樹脂チューブである。
【0074】
プラズマ処理装置10は、チューブ31の内面32を対象領域2としている。一対の電極16,16の各々は、真っ直ぐな針状に形成されている。各電極16の先端部は、先細に形成されている。
【0075】
プラズマ処理装置10は、一対の電極16を上下に動かす第1移動装置101と、チューブ31を長さ方向へ移動させる第2移動装置102とを備えている。プラズマ処理装置10は、一対の電極16間の距離だけチューブ31の内面をプラズマ処理するプラズマ処理動作を、チューブ31を長さ方向へ移動させながら繰り返し行う。
【0076】
プラズマ処理動作では、まず各電極16の先端がチューブ31内の空間に露出するように、第1移動装置101が、一対の電極16を下方へ移動させて一対の電極16の先端部をチューブ31に突き刺す。次に、プラズマ処理装置10は、一対の電極16の間で放電プラズマを生成する。放電プラズマの生成は、実施形態と同様の方法で行われる。次に、第1移動装置101が、一対の電極16を上方へ移動させて一対の電極16の先端部をチューブ31から引き抜く。以上の動作により、1回のプラズマ処理動作は終了する。
【0077】
プラズマ処理装置10は、プラズマ処理動作が終了すると、第2移動装置102が一対の電極16間の距離だけチューブ31を長さ方向へ移動させて、再度プラズマ処理動作を行う。プラズマ処理装置10はプラズマ処理動作を繰り返し行うことにより、チューブ31の内面を全長に亘ってプラズマ処理する。
【0078】
変形例2では、チューブ31が柔軟な材料により構成されているため、チューブ31から一対の電極16を引き抜いても、各電極16によりチューブ31に形成された穴は極めて小さくなる。従って、液体用のチューブ31であれば液体が穴から漏れることなく、長いチューブ31の内面を親水処理することができる。
【0079】
なお、1回のプラズマ処理動作によって長い区間をプラズマ処理できるように、プラズマ処理装置10が、チューブ31内へ不活性ガスを供給するガス供給装置を備えていてもよい。
−実施形態の変形例3−
【0080】
本実施形態では、検査用チップ1が水平移動するため、一対の電極16、16の先端は、先端と検査用チップ1とが干渉しないように、カバー部材5の外面の位置よりも、対象領域2から離れた位置になるように設けられている。しかし、一対の電極16、16の先端が、カバー部材5の外面の位置よりも、対象領域2に近い位置になるように、一対の電極16、16を上下に移動させる機構を設ければ、対象領域2とカバー部材5との間の間隙に放電プラズマPをより到達させることができるようになる。
《その他の実施形態》
【0081】
前記実施形態は、以下のように構成してもよい。
【0082】
被処理物は、図1に示すような尿検査用の検査用チップ1や、図7、図8に示すような筒状に形成されたチューブ31に限定されない。また、親水性の改善を目的としてプラズマ処理するためのものである必要もない。帯電性を防止するための処理など、プラズマ処理されるものであれば、種々の被処理物に適用可能である。また、形状も種々のものが採用可能である。
【0083】
また、対象領域2とカバー部材5との間隔も、0.2mm以下に限定されない。それ以上のものにも適用可能である。
【0084】
一対の電極16、16も棒状の金属製部材に限定されない。スパーク放電を生じさせることができるものであれば、材質、形状など種々の設計変更が可能である。
【0085】
相対移動手段は、ベルトコンベア18に限定されない。検査用チップ1を固定して一対の電極16、16の方を移動させても良いし、検査用チップ1と一対の電極16、16との両方を移動させても良い。一対の電極16、16と被処理物の対象領域2とを相対移動させて、対象領域2の一端側から他端側に亘って放電プラズマPを接触させるのであれば種々の相対移動手段が採用可能である。
【0086】
また、当接位置維持装置19についても、遮蔽部材17がカバー部材5の同じ位置に当接するように遮蔽部材17を移動させるものであれば、種々の機構が採用可能である。
【0087】
電磁波発生装置21も、一対の電極16、16の間に生成された放電プラズマPに電磁波を放射するものであれば、半導体発振器や、マグネトロンの代わりに、他の発振器を使用してもよい。また、アンテナ23も、形状や位置など、種々の設計変更が可能である。
【0088】
また、実施形態において、電磁波放射装置13は、必ずしも必須ではない。一対の電極16、16だけでプラズマを生成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本発明は、狭い空間の区画面に対してプラズマ処理するプラズマ処理装置について有用である。
【符号の説明】
【0090】
P 放電プラズマ
1 検査用チップ(被処理物)
2、32 対象領域
5 カバー部材
10 プラズマ処理装置
12 電力供給部
13 電磁波放射装置(電磁波放射手段)
16、16 一対の電極
17 遮蔽部材
18 ベルトコンベア(相対移動手段)
19 当接位置維持装置(当接位置維持手段)
31 チューブ(被処理物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物の対象領域をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、
放電プラズマを生じさせるための電力を供給する電力供給部と、
前記電力供給部によって電力が与えられると両者の間に放電プラズマが生成される一対の電極とを備え、
前記一対の電極は、放電プラズマが前記対象領域を横断して前記対象領域に接触するように設けられていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記一対の電極の間に設けられ、前記対象領域の近傍以外で放電プラズマが生成されることを阻止する電気絶縁性の遮蔽部材を備えていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記対象領域は、電気絶縁性のカバー部材で間隙を隔てて覆われており、
前記一対の電極は、前記カバー部材と前記対象領域の間で放電プラズマが生成されるように、対象領域の近傍にカバー部材を挟んで設けられていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記遮蔽部材は、放電プラズマが生成した状態において、前記カバー部材の外面に当接した状態にあることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記一対の電極の先端は、前記カバー部材の外面の位置よりも、前記対象領域から離れた位置にあることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項2乃至5において、
前記一対の電極と前記対象領域とを相対移動させて、前記対象領域の一端側から他端側に亘って放電プラズマを接触させる相対移動手段を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記相対移動手段が、前記被処理物と共に前記カバー部材を移動させる状態で、前記遮蔽部材が前記カバー部材の同じ位置に当接するように前記遮蔽部材を移動させる当接位置維持手段を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7において、
前記一対の電極の間に発生した放電プラズマに電磁波を放射する電磁波放射手段を備えていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記被処理物は、板状に形成され、
前記電磁波放射手段は、前記被処理物における前記対象領域の裏側から電磁波を放射することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項10】
請求項1乃至9において、
前記被処理物は、検査する尿が前記対象領域に滴下される検査用チップであることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項11】
請求項1または2において、
前記被処理物は、筒状に形成され、
前記一対の電極は、筒状に形成された前記被処理物の内面を前記対象領域として、該内面に放電プラズマが接触するように設けられることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記一対の電極の各々は、針状に形成され、
前記一対の電極の各々が前記被処理物内の空間に露出するように該被処理物に突き刺された状態で、前記電力供給部から前記一対の電極へ電力が与えられることを特徴とするプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−48017(P2013−48017A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185397(P2011−185397)
【出願日】平成23年8月28日(2011.8.28)
【出願人】(504293528)イマジニアリング株式会社 (51)