説明

プラズマ表示装置

【課題】可視光の外部取り出し率を向上させたプラズマ表示装置を提供すること。
【解決手段】相互に対向配置された前面基板110及び背面基板120と、所定の幅aを有し、前面基板側に形成された複数の第1隔壁114と、第1隔壁114よりも大きな幅b(b>a)を有し、背面基板側に形成された複数の第2隔壁128と、により構成され、前面基板110と背面基板120との間に複数の放電空間を区画する隔壁と、各第1隔壁114内に形成された第1電極112と、各第2隔壁128内に形成され、第1電極112との間に放電経路を形成する第2電極126と、放電空間に露出した隔壁の表面上に形成された蛍光体層130と、を備え、第2隔壁128は、第1隔壁114に近い部分から背面基板120に近い部分に向かって幅bが大きくなることを特徴とする、プラズマ表示装置100が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマ表示装置(PDP;Plasma Display Panel)の構造として、効率的な発光が可能な三電極面放電型の放電機構を備えるパネル構造が主流を占めていた。しかし、PDPの更なる高輝度化を図るためには、電極構造や隔壁形状等を改良し、プラズマ放電による発光効率、及び放電空間の開口率等を増加させる必要があった。もちろん、放電空間に封入される放電ガスの種類やその混合比率等に関する種々の技術的改良もなされている。しかし、それにも増して、発光効率等に直接的な影響を及ぼす電極構造、及び放電空間を形成する隔壁構造等には特別な関心が寄せられており、多くの研究成果が開示されている。例えば、下記の特許文献1には、リング状の電極構造を備えたPDPに関する技術が開示されている。
【0003】
これによれば、PDPの発光効率を向上させるための技術的改良として、放電空間を区画する隔壁に一対の電極を内包し、さらに、この放電空間を取り囲むようにリング状の電極ループを形成する電極構造が開示されている。このような電極構造を採用することにより、画素領域の微細化が進んだとしても、前面基板又は背面基板に対して略垂直な方向に十分な長さの放電経路を形成することができる。また、放電範囲が広がるため、発光効率の向上が期待される。
【0004】
【特許文献1】特開2005−276810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のリング状の電極構造は、その構造自体が大変複雑であるために開口率を向上させるのが難しいという問題がある。そのため、高い開口率を達成しつつ、前面基板を通じて観測される可視光の輝度及び発光効率を向上させるためには、何らかの新たな技術的改良を施し、放電空間内における可視光の発光面積を増加させる等の工夫をする必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、開口率を低下させることなく輝度及び発光効率を向上させることが可能な、新規かつ改良されたプラズマ表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、相互に対向配置された前面基板及び背面基板と、所定の幅aを有し、前記前面基板側に形成された複数の第1隔壁と、前記第1隔壁よりも大きな幅b(b>a)を有し、前記背面基板側に形成された複数の第2隔壁と、により構成され、前記前面基板と前記背面基板との間に複数の放電空間を区画する隔壁と、各前記第1隔壁内に形成された第1電極と、各前記第2隔壁内に形成され、前記第1電極との間に放電経路を形成する第2電極と、前記放電空間に露出した前記隔壁の表面上に形成された蛍光体層と、を備えることを特徴とするプラズマ表示装置が提供される。そして、当該プラズマ表示装置が備える前記第2隔壁は、前記第1隔壁に近い部分から前記背面基板に近い部分に向かって幅bが大きくなることを特徴とする。
【0008】
上記のプラズマ表示装置が備える隔壁は、上記の第1隔壁よりも上記の第2隔壁の方が幅が広い(b>a)ため、上記の第1隔壁と第2隔壁との接合部分において当該第2隔壁上面の一部分が放電空間に露出する。そして、放電空間に露出した上記の第2隔壁上面の一部分にも蛍光体層が形成されており、上記の前面基板に対して略並行な当該蛍光体層から放射される可視光は、前面基板を通じて外部に取り出される割合が高いため、当該可視光の外部取り出し率が増加することで輝度が向上する。さらに、上記の第2隔壁の上面部分から底面部分に向かって幅が広くなっていることから、当該第2隔壁の側面は、上記の前面基板に対して90度よりも小さい角度を成す。そのため、上記の第2隔壁の側面上に形成された蛍光体層から放射された可視光は、上記の前面基板を通じて外部に放出される割合が増加するため、当該可視光の外部取り出し率を向上させることができる。
【0009】
なお、上記の効果は、上記の第1電極と第2電極とにより当該第1及び第2隔壁の側壁近傍に放電経路が形成される放電機構と組み合わせたときに更に顕著になる。その上、この電極構造を採用することにより、PDPの画素領域を高度に微細化した際にも十分な放電距離を確保することが可能になるため、微細化に伴う放電効率の低下を抑制することができる。
【0010】
また、前記蛍光体層は、前記隔壁の表面上に加えて、前記放電空間に面する前記前面基板の表面上及び前記背面基板上に形成される誘電体層の表面上に形成されてもよい。かかる構成により、可視光の発光面積を増加させることで輝度を向上させることができる。
【0011】
また、前記各第1隔壁内には、一対の前記第1電極が並置されていてもよく、前記一対の第1電極間の距離eは、前記第1電極と当該第1電極を含む前記第1隔壁の表面との間の最近接距離dよりも大きく(e>d)形成されていてもよい。かかる構成により、上記の一対の第1電極間に発生する誤放電を防止することができる。
【0012】
また、前記各第2隔壁内には、一対の前記第2電極が並置されてていてもよく、前記一対の第2電極間の距離gは、前記第2電極と当該第2電極を含む前記第2隔壁の表面との間の最近接距離fよりも大きく(g>f)形成されていてもよい。かかる構成により、上記の一対の第2電極間に発生する誤放電を防止することができる。
【0013】
また、前記第1電極は、少なくとも前記前面基板に面する表面が黒色であってもよい。かかる構成により、上記の第1電極による外光反射を抑制することができる。
【0014】
また、前記第1電極は、黒色の電極材料により形成されていてもよい。かかる構成により、上記の第1電極による外光反射を抑制することができる。
【0015】
また、前記第1電極及び前記第2電極は、一方向に延設された一対の電極と、当該一対の電極を架橋するように形成された複数の架橋電極と、により構成される梯子型の形状を有し、前記一対の電極と一対の前記架橋電極とにより一つの前記放電空間を囲むように形成されていてもよい。かかる構成により、各放電空間内で発生するプラズマ放電による発光効率が増加し、上記の前面基板を通じて観測される可視光の輝度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、開口率を低下させることなく輝度及び発光効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
<本発明の実施形態>
まず、本発明の一実施形態に係るプラズマ表示装置(PDP)について詳細に説明する。以下では、はじめに本実施形態の特徴について簡単に説明した後、図面を参照しながら、本発明の技術的特徴を適用可能なPDPの構成について詳細に説明する。
【0019】
[本実施形態の特徴]
まず、本実施形態に係るPDPの主要な特徴について簡単に説明する。本実施形態の主要な特徴はその隔壁構造にある。より詳細に述べると、本実施形態に係る隔壁は、前面基板側に形成された第1隔壁と、背面基板側に形成された第2隔壁と、により構成され、第2隔壁の幅が第1隔壁の幅よりも大きく形成されている点に第1の特徴がある。第2の特徴は、第2隔壁の幅が、背面基板側から第1隔壁側に向かって小さくなる点にある。例えば、第2隔壁の横断面が略台形を成すような隔壁構造を有していてもよい。
【0020】
かかる構成により、前面基板に対し垂直な方向に背面基板側を観測した際、前面基板を通して垂直な方向から観測可能な隔壁の表面積が増大しており、当該隔壁の表面に形成された蛍光体層から前方方向に放出される可視光の強度を大きく向上させる効果が期待される。また、第1隔壁の幅を小さく形成すれば、上記構成を採用した場合でも開口率を大きくすることができる。
【0021】
以上、本実施形態に係るPDPの主要な特徴について簡単に説明した。なお、本実施形態は、上記の隔壁構造の他、蛍光体層の構成及び電極構造にも特徴を有する。これらについても以下で詳細に説明する。
【0022】
[本実施形態に係るPDP100の全体構成]
まず、図1を参照しながら、本実施形態に係るPDP100の全体構成について説明する。図1は、PDP100の構成例を示す斜視図である。なお、図1に示したPDP100は、本実施形態の特徴点を明示すべく模式的に描画した図面であり、各構成要素の幅、高さ、厚さ、又は深さ等のパラメータは、本稿の記載において明確に規定された場合を除き、実際の実施態様に応じて、適宜、変更可能な設計的事項である。したがって、以下で説明する本実施形態の技術的特徴を有する構成であれば、本実施形態の技術範囲に属するものと解釈される。なお、図中では、同一のハッチング処理が施された部位を同種の構成要素であるものとする。したがって、代表する構成要素にのみ符合を付して説明することにより、他の同種の構成要素についても同様に説明したものとみなす。
【0023】
図1を参照すると、PDP100は、主に、前面基板110と、第1電極112と、第1隔壁114と、背面基板120と、誘電体層124と、第2電極126と、第2隔壁128と、蛍光体層130と、により構成される。
【0024】
(前面基板110)
前面基板110は、PDP100の前面に配置され、放電空間内で発生した可視光を透過することが可能な材質により形成されている。例えば、前面基板110には、高歪点ガラスが用いられる。さらに、前面基板110上には、蛍光体層が形成されていてもよい。なお、前面基板110は、放電空間の内部に充填された放電ガスを封止するための上蓋としての役割も担う。通常、放電ガスとしては、Xe、Ne等の希ガス気体が用いられることが多く、これらの混合ガスが利用されることもある。しかし、本実施形態が奏する効果は、これらの放電ガスの種類に制限を受けるものではない。
【0025】
(背面基板120)
背面基板120は、前面基板110に対向して配置され、その上面に隔壁や電極等の放電機構が構築される基板である。なお、背面基板120の構成は、上記の前面基板110と同様であり、ここでは詳細な説明を省略する。なお、背面基板120は、上記の前面基板110と共に、PDP100の厚みを決定する主な要因となるため、可能な限り薄く形成されることが望ましいとされる。
【0026】
(アドレス電極122)
アドレス電極122は、背面基板120の上面に形成され、後述する誘電体層124により覆われるように配置される。また、アドレス電極122は、後述する第1電極112と第2電極126との間で発生する維持放電の開始電圧を低下させ、当該維持放電を誘起するためのアドレス放電を発生させる。つまり、維持放電のトリガーとなる。なお、本実施形態は、3電極型の放電機構を備えるPDP100を例に説明しているが、2電極型の放電機構を採用する場合、このアドレス電極122を設ける必要はない。
【0027】
(誘電体層124)
誘電体層124は、背面基板120上に形成された絶縁層である。周知の通り、PDP100は、少なくとも一対の電極間に生じた電位差により、放電空間内に封止された放電ガスを電離して気体放電を発生させる装置である。したがって、放電空間に導電性の部材が露出していることは望ましくない。もちろん、背面基板120は、絶縁性物質により形成されている場合も多いが、温度等の諸条件により、必ずしも絶縁性が確保されているわけではない。また、図1に示すように、背面基板120上に電極が配置される場合があるため、こうした電極を保護する目的もある。なお、誘電体層124は、例えば、PbO、B、又はSiO等を主な素材とする誘電体により形成されていてもよい。
【0028】
(第1隔壁114、第2隔壁128)
第1隔壁114及び第2隔壁128は、前面基板110と背面基板120との間に形成され、放電空間を区画するために設けられる。また、第1隔壁114及び第2隔壁128は、誘電体層124と同様の誘電体材料を用いて形成されていてもよい。ここでは、説明の便宜上、第1隔壁114と第2隔壁128とを別体として説明しているが、本実施形態は、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、第1隔壁114と第2隔壁128とが一体成形された階段状の隔壁であってもよい。但し、この場合にも階段状の隔壁構造の上段部分を第1隔壁114と呼び、下段部分を第2隔壁128と呼ぶことにする。
【0029】
本実施形態に係るPDP100は、一般的な三電極面放電型のPDPとは異なり、第1隔壁114内に形成された第1電極112と、第2隔壁128内に形成された第2電極126との間でプラズマ放電を発生させる。そのため、第1隔壁114及び第2隔壁128は、イオン粒子の衝突によるスパッタリングから電極を保護する必要がある。それと同時に、第1隔壁114及び第2隔壁128は、その表面に壁電荷を蓄積する実質的な電極面としての役割を担う。
【0030】
また、第1隔壁114及び第2隔壁128は、その表面に蛍光体が塗布され、発光面を構成する。従って、発光面の形状及び発光面の面積は、主に、第1隔壁114及び第2隔壁128の構造により決定される。通常、蛍光体は、白色であることが多く、プラズマ放電により発生した紫外線が直接到達した場合はもちろんのこと、紫外線が到達しない場合においても、可視光を反射することによって輝度の向上が期待できる。
【0031】
ここで、第1隔壁114及び第2隔壁128の構造について、より詳細に説明する。図1を参照すると、第1隔壁114の幅λは、第2隔壁128の上面の幅λよりも小さく(λ<λ)構成されている。そのため、第1隔壁114と第2隔壁128とが接合された際に、第2隔壁128の上面部分の一部は、第1隔壁114の底面に完全に被覆されることなく放電空間に露出される。つまり、図1に示すように、第1隔壁114により形成される開口部分の幅Aよりも、第2隔壁128が形成する開口部分の幅Bの方が小さくなる(A>B)。その結果、第2隔壁128の上面の一部が放電空間に露出することになり、当該上面の一部に蛍光体層130を形成することができる。そして、第2隔壁128の上面部分が前面基板110に対して略並行であることから、当該部分に形成された蛍光体層130から放射される可視光は、前面基板110に対して略垂直な方向(つまり、PDP100の前面方向)に射出される。
【0032】
また、第2隔壁128は、上面部分の幅よりも底面部分の幅の方が大きい構造を有している。つまり、放電空間に面した第2隔壁128の側面は、前面基板110又は背面基板120に対して垂直ではなく、やや傾斜した構造を有している。図1には、第2隔壁128の横断面(Y−Z面)が略台形になる構造が示されているが、本実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、第2隔壁128の傾斜面が放電空間側又は隔壁内部側に膨らんだ曲線を描くような形状であってもよい。さらに、第2隔壁128の上面により形成される開口部分の形状が、例えば、略円形又は略楕円形になるように、すり鉢状又は碗型の凹状構造(又はテーパ構造)を成す放電空間が形成されていてもよい。また、上記の通り、第2隔壁128の表面には、蛍光体層130が形成され、プラズマ放電により発生した紫外線を受けて可視光を放射する。このとき、第2隔壁128の側面上に形成された蛍光体層130は、傾斜している分だけ前面基板110に対して浅い角度で可視光を放射することができる。
【0033】
後述するように、本実施形態に係るPDP100は、第1隔壁114及び第2隔壁128の側面近傍に沿って放電経路が形成され、当該放電経路の近傍から強度の高い紫外線が放射される。そのため、放電経路に近い第1隔壁114及び第2隔壁128の表面に蛍光体層130を形成することによって輝度を向上させることができる。しかし、一般的なPDPの隔壁は前面基板に対して略垂直な側壁構造であるため、放電経路に近い隔壁上に蛍光体層を形成したとしても、当該蛍光体層から前面基板の方向に放射される可視光の割合はあまり大きくない。しかし、本実施形態に係る上記の構成を採用すると、前面基板に略垂直な方向に放射される可視光の輝度を向上させることができる。つまり、可視光の外部取り出し効率を向上させることができるのである。
【0034】
(蛍光体層130)
蛍光体層130は、紫外線を吸収して特定波長の光(特に可視光)を放出する紫外線励起蛍光体により形成されており、放電空間内で発生したプラズマ放電に起因して放射される紫外線を受けて蛍光を発する。一般に、蛍光体層130を形成する蛍光物質としては、赤色を発光する(Y,Gd)BO:Eu、又はY:Eu等、緑色を発光するZnSiO:Mn、又はBaAl1219:Mn等、青色を発光するBaMgAl1423:Eu等が用いられる。
【0035】
また、図1の例において、蛍光体層130は、誘電体層124の上面、第1隔壁114の側面、及び第2隔壁128の側面及び上面の一部に形成されている。特に、第1隔壁114及び第2隔壁128に形成される蛍光体層130は、放電空間に露出している表面領域に形成される。また、放電空間に露出した前面基板110の表面に蛍光体層130を形成することも可能である。ところで、PDP100に電流を流した際に、前面基板110側の構成と背面基板120側の構成とが振動して接触することでパネル騒音が発生することがあるが、第2隔壁128の上部に蛍光体層130を形成することにより当該蛍光体層130がクッション材の役割を果たして振動を吸収することができるという効果もある。
【0036】
(第1電極112、第2電極126)
第1電極112は、後述の第2電極126との間に電位差を発生させ、放電空間内に封止された放電ガスを電離させる。また、第1電極112は、第1隔壁114の内部に形成されているため、第1電極112が誘電体(第1隔壁114)に埋設された構造を有する。同様に、第2電極126は、第1電極112との間に電位差を発生させて放電空間内に封止された放電ガスを電離させる。また、第2電極126は、第2隔壁128の内部に形成されており、第2電極126の全面が誘電体(第2隔壁128)で覆われている。本実施形態における電極構造の特徴は、上記の第1隔壁114及び第2隔壁128の近傍に放電経路を形成することが可能な一対の電極を有していれば、多様な構成に適用が可能である。従って、本実施形態の適用範囲は、必ずしも図1に示した電極構造に限定されるものではない。しかし、説明の都合上、本実施形態を適用可能な一構成例として、図1及び図2に示す電極構造を例に挙げて説明することにする。
【0037】
以上、本発明の一実施形態に係るPDP100の全体構成について説明した。この中で、本実施形態に特有の隔壁構造及びその機能についても簡単に説明した。しかし、図1に示した斜視図のみでは、その詳細な構造を十分に理解するのは難しいものと思われる。そこで、以下では、図1に示したPDP100の斜視図に対応する電極構造及びY−Z断面構造を参照しながら、本実施形態に係るPDP100の特徴について、より詳細に説明する。
【0038】
[リング電極構造]
ここで、本実施形態に係る第1電極112、第2電極126、及びアドレス電極122の構成として適用可能なリング状の電極構造について、図2を参照しながら、簡単に説明する。図2は、本実施形態を適用可能なリング状の電極構造を示した説明図である。
【0039】
図2を参照すると、第1電極112、第2電極126、及びアドレス電極122の立体的な配置構成が示されている。図2は、図1に対応するように描画されており、丁度、図1に示したPDP100から、第1電極112、第2電極126、及びアドレス電極122だけを抜き出してきたものと考えることができる。
【0040】
図2に示すように、第1電極112及び第2電極126は、例えば、梯子状の電極構造であってもよい。この場合、梯子形状の開口部分にPDP100の放電空間が位置する。図2の例を見ると、複数の第1電極112がX−Y平面に平行な平面上に並置されており、その各々が対応する第2電極126に対してZ方向に離隔して配置されている。さらに、第1電極112及び第2電極126は、いずれもX方向に延伸するように配置されている。一方、アドレス電極122は、Y方向に延伸して配置されており、丁度、第1電極112及び第2電極126に対して立体的に交差する構造を有している。そして、アドレス電極122は、上記梯子形状の開口部分の直下を横切るように配置される。
【0041】
以上、本実施形態に係るPDP100に適用可能なリング状の電極構造について説明した。しかし、PDP100に適用可能な電極構造はこれに限定されるものではない。例えば、図2に示した梯子状の第1電極112及び第2電極126において、Y方向に延設された架橋部分を除去した棒状の電極構造(つまり、単純にX方向に延伸する棒状の電極構造)であっても同様に適用することができる。さらに、櫛形の電極構造又はその他の電極構造についても適用することが可能である。また、2電極型の放電機構を採用するならば、第1電極112と第2電極126とが略直交するように構成し、アドレス電極122を設けない構成も可能である。例えば、第1電極112をX方向に延設し、第2電極126をY方向に延設することで実現される。このように、電極構造については種々の変形が可能である。
【0042】
[Y−Z断面構造]
次に、図3〜図6を参照しながら、本実施形態に係るPDP100のY−Z断面構造について説明する。図3は、PDP100のY−Z断面構造及び放電機構を示す説明図である。図4は、PDP100のY−Z断面構造を示す説明図であり、特に、第1隔壁114及び第2隔壁128の構造を示す説明図である。図5は、PDP100のY−Z断面構造を示す説明図であり、特に、第1電極112の配置を示す説明図である。図6は、PDP100のY−Z断面構造を示す説明図であり、特に、第2電極126の配置を示す説明図である。
【0043】
(PDP100の放電機構)
図3を参照すると、上述したPDP100の構成に加え、第1電極112と第2電極126との間に形成される放電経路Pと、放電経路Pに沿ってプラズマ放電が発生した際に放射される紫外線Lと、紫外線Lを受けて蛍光体層130から放射される可視光Lとが模式的に描画されている。そこで、PDP100のY−Z断面構造の詳細について説明するに先立ち、簡単にPDP100の放電機構について説明する。
【0044】
PDP100の放電機構は、一般的なAC型PDPの放電機構と実質的に同一である。つまり、PDP100は、第1電極112と第2電極126との間に電位差を発生させて放電空間内の放電ガスを電離し、第1隔壁114及び第2隔壁128の表面に壁電荷を生成する。そして、PDP100は、第1電極112と第2電極126との極性を反転させながら維持放電を発生させる。従って、PDP100は、第1隔壁114及び第2隔壁128の表面近傍に放電経路Pを形成する側壁放電型の放電機構を有する。
【0045】
上記の通り、第1隔壁114及び第2隔壁128の表面近傍に形成された放電経路Pの近傍から輝度の高い紫外線Lが放射されるため、当該紫外線Lを受けて第1隔壁114及び第2隔壁128上の蛍光体層130から放射される可視光Lを如何に低損失で取り出すかということがPDP100の輝度を向上させる上で重要になる。特に、PDP100の高精細化が進むと、誘電体層124上の蛍光体層130の発光面積が減少し、第1隔壁114及び第2隔壁128上の蛍光体層130から放射される可視光の発光効率又は外部取り出し効率がPDP100の輝度を向上させるための重要な要素になる。こうした課題に対して一つの解決手段を提供するのが本実施形態に係るPDP100である。以下、本実施形態に係るPDP100の構造的特徴について更に説明する。
【0046】
(PDP100の隔壁構造)
図4を参照すると、上述したPDP100の構成に加え、隣接する第1隔壁114間の幅Aと、隣接する第2隔壁128間の幅B及びCとが記載されている。但し、説明の都合上、蛍光体層130を省略して描画しているが、図3と同様に第1隔壁114及び第2隔壁128の表面上等に形成されているものとする。図5及び図6についても同様である。
【0047】
図4を参照すると、第1隔壁114間の幅Aが第2隔壁128間の幅B及びCよりも大きく形成されていることが分かる。さらに、第2隔壁128間の幅B及びCについてみると、第2隔壁128の上面部分の幅Bは、底面部分の幅Cに比べて大きく形成されていることが分かる。つまり、本実施形態に係る隔壁構造の特徴は、各部の幅についてA>B>Cの関係が成立することであると理解される。第1隔壁114間の幅Aは、放電空間の開口面積を決定するパラメータである。そして、第1隔壁114間の幅Aと第2隔壁128間の幅Bとの差分(A−B)は、放電空間に対して第2隔壁128の上面部分が露出する面積を決定するパラメータである。さらに、第2隔壁128の上面部分の幅Bと底面部分の幅Cとの差分(B−C)は、第2隔壁128の側面の傾斜角を決定するためのパラメータである。
【0048】
つまり、所定の幅Aを確保することによって所定の開口率を維持することが可能になり、差分(A−B)を大きく設定することによって前面基板110に対向する第2隔壁128上の蛍光体層130の面積を広く確保することが可能になる。さらに、差分(B−C)を大きく設定することにより、第2隔壁128の側面を前面基板110に対して浅い角度に調節することが可能になる。特に、第2隔壁128の側面が前面基板110に対して成す角度を小さくすることが重要である。なぜなら、PDP100の高精細化が進むにつれ、差分(A−B)を大きく形成することが困難になり、第2隔壁128の上面部分による発光面積が減少してしまうため、主要な発光面が第2隔壁128の側面になるからである。従って、第2隔壁128の側面を前面基板110に対して浅い角度に形成し、可視光の外部取り出し率を高めることが重要になるのである。
【0049】
(PDP100の電極配置)
次に、PDP100の電極配置について説明する。まず、図5を参照すると、ある第1隔壁114内に形成された一対の第1電極112の配置関係が示されている。一対の第1電極112の間の距離をE、第1電極112と第1隔壁114の側面との間の最短距離をDとすると、本実施形態に係るPDP100は、E>Dとなるように第1電極112が配置されている。かかる構成により、一対の第1電極112間に発生する誤放電を防止することができる。さらに、本実施形態に係る第1電極112は、少なくとも前面基板110に面する部分Sの色が黒色である。もちろん、第1電極112自体が黒色の電極材料により形成されていてもよい。かかる構成により、前面基板110を通して入射する外光が第1電極112によって反射されることを防止し、外光反射によるコントラストの低下を抑制することが可能になる。
【0050】
次に、図6を参照すると、ある第2隔壁128内に形成された一対の第2電極126の配置関係が示されている。一対の第2電極126の間の距離をG、第2電極126と第2隔壁128の側面との間の最短距離をFとすると、本実施形態に係るPDP100は、G>Fとなるように第2電極126が配置されている。かかる構成により、一対の第2電極126間に発生する誤放電を防止することができる。
【0051】
以上、本実施形態に係るPDP100のY−Z断面構造について説明した。上述の通り、本実施形態は、その隔壁構造に特徴を有し、特に、可視光の外部取り出し率及び発光面積を増加させるための第2隔壁128の側壁構造に主要な特徴を有する。これに加え、本実施形態に係るPDP100は、輝度を向上させるための蛍光体層130の構成、誤放電を防止するための第1電極114及び第2電極126の構成、及び外光反射を防止するための第1電極114の構成を有する。これらの特徴を備えることにより、本実施形態に係るPDP100は、放電空間の開口率を維持しながら、前面基板110を通じて観測される可視光の輝度及び発光効率を向上させることが可能になる。
【0052】
[PDP100の製造方法]
ここで、上記のPDP100の製造方法について簡単に説明する。
【0053】
(対極放電構造の背面基板側について)
まず、対極放電構造を有するPDP100の背面基板上に形成される構成要素について、以下にその製造方法を簡単に説明する。なお、3電極構造の場合を例に挙げて説明するが、2電極構造の場合、一部の工程を省略することで同様に製造することができる。
【0054】
まず、(1)印刷法等の技術を用いてガラス基板上に電極材料を塗布し、電極材料が乾燥した後、電極材料を焼成してアドレス電極を形成する。このとき、例えば、520〜600℃程度の温度で電極材料を焼成する。この温度範囲は、丁度、ガラス基板が溶融せず、電極材料が焼結する温度範囲である。次いで、(2)上記のアドレス電極を覆うようにガラス基板上に反射用誘電体材料の溶剤を塗布する。このとき、隔壁を形成する面以外の場所に当該溶剤を塗布するようにしてもよい。その後、反射用誘電体材料の溶剤が蒸発する温度にて乾燥させる。そして、乾燥した誘電体材料を約520〜600℃の温度で焼成し、反射用誘電体層を形成する。なお、この温度範囲は、ガラス基板が溶融せず、誘電体材料が焼結する温度範囲である。次に、(3)印刷法等の技術を用いて上記の誘電体層上に電極材料を塗布した後、電極材料を含む溶剤が蒸発する温度で乾燥させて第2電極を形成する。
【0055】
次に、(4)コーティング(Coating)装置等を用いて誘電体材料を塗布し、誘電体材料の溶剤が蒸発する温度で乾燥させることにより、誘電体層を形成する。次に、(5)ラミネータ(Laminator)を利用して上記の誘電体層上にドライフィルムレジスト(DFR;Dry Film Resist)を貼付け、所定の開口部を有する隔壁パターンを残すように露光及び現像し、サンドブラスト装置等で掘削する際のマスクを形成する。次に、(6)サンドブラスト(Sandblast)装置等を用いて上記の開口部が位置する部分の誘電体層を除去して隔壁を作成する。このとき、隔壁がテーパ(Taper)型になるように成形するか、誘電体層の最下部まで貫通しないように掘削処理を行う。その後、(7)上記のY電極及び隔壁を約520〜600℃の温度で焼成する。この温度範囲は、ガラス基板が溶融せず、かつ、電極及び隔壁が焼結する温度である。
【0056】
次に、(8)印刷法等の技術を利用して掘削して生成された隔壁の表面等に蛍光体を塗布し、蛍光体の溶剤が蒸発する温度で乾燥させる。このとき、カラー表示を考慮して、赤(R)、緑(G)、青(B)の三色がストライプ(Stripe)状に並ぶような蛍光体の配色を行う。次に、(9)上記の蛍光体を400〜500℃程度の温度にて焼成する。
【0057】
以上、背面基板上に形成される電極及び隔壁等の製造方法について説明した。上記の説明は、主に、3電極構造を有するPDPに関するものであるが、2電極構造の場合には、例えば、上記の(1)及び(2)の工程を省略することにより同様の方法を適用することができる。
【0058】
(対極放電構造の前面基板側について)
次に、対極放電構造を有するPDP100の前面基板上に形成される構成要素について、以下にその製造方法を簡単に説明する。
【0059】
まず、(1)印刷法等を利用してガラス基板上に電極材料を塗布し、電極材料の溶剤が蒸発する温度にて乾燥させて第1電極を形成する。次いで、(2)コーティング装置等を用いて誘電体材料を塗布し、誘電体材料の溶剤が蒸発する温度で乾燥させることにより、誘電体層を形成する。次いで、(3)ラミネータを利用して上記の誘電体層上にDFRを貼付け、所定の開口部を有する隔壁パターンを残すように露光及び現像し、サンドブラスト装置等で掘削する際のマスクを形成する。次に、(4)上記のX電極及び隔壁を約520〜600℃の温度で焼成する。なお、この温度範囲は、ガラス基板が溶融せず、かつ、電極及び隔壁が焼結する温度である。次に、(5)印刷法等の技術を利用して掘削して生成された隔壁の表面等に蛍光体を塗布し、蛍光体の溶剤が蒸発する温度で乾燥させる。このとき、カラー表示を考慮して、赤(R)、緑(G)、青(B)の三色がストライプ状に並ぶような蛍光体の配色を行う。次に、(6)上記の蛍光体を400〜500℃程度の温度にて焼成する。
【0060】
以上、前面基板上に形成される電極及び隔壁等の製造方法について具体的に説明した。もちろん、ここで示した製造方法は一例であり、他の公知技術を組み合わせて適用することも可能である。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係るPDPの全体構造を示す説明図である。
【図2】同実施形態に係るPDPの電極構造を示す説明図である。
【図3】同実施形態に係るPDPのY−Z断面構造を示す説明図である。
【図4】同実施形態に係るPDPのY−Z断面構造を示す説明図である。
【図5】同実施形態に係る前面基板側の電極構造を示す説明図である。
【図6】同実施形態に係る背面基板側の電極構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0063】
100 PDP
110 前面基板
112 第1電極
114 第1隔壁
120 背面基板
122 アドレス電極
124 誘電体層
126 第2電極
128 第2隔壁
130 蛍光体層
P 放電経路
L1 紫外線
L2 可視光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向配置された前面基板及び背面基板と、
所定の幅aを有し、かつ、前記前面基板側に形成された第1隔壁と、前記第1隔壁よりも大きな幅b(b>a)を有し、かつ、前記背面基板側に形成された第2隔壁と、により構成され、前記前面基板と前記背面基板との間に複数の放電空間を区画する隔壁と、
前記第1隔壁内に形成される第1電極と、
前記第2隔壁内に形成され、前記第1電極との間に放電経路を形成する第2電極と、
前記放電空間に露出した前記隔壁の表面上に形成される蛍光体層と、
を備え、
前記第2隔壁は、前記第1隔壁側に位置する上部から前記背面基板側に位置する底部に向かって幅bが大きくなることを特徴とする、プラズマ表示装置。
【請求項2】
前記蛍光体層は、
前記隔壁の表面上に加えて、前記放電空間に露出する前記前面基板の表面上と、前記背面基板上に形成される誘電体層の表面上と、に形成されることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ表示装置。
【請求項3】
前記第1隔壁内には、
一対の前記第1電極が並置されており、
前記一対の第1電極間の距離eは、
前記第1電極から、当該第1電極が含まれる前記第1隔壁の表面までの最短距離dよりも大きい(e>d)ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のプラズマ表示装置。
【請求項4】
前記第2隔壁内には、
一対の前記第2電極が並置されており、
前記一対の第2電極間の距離gは、
前記第2電極から、当該第2電極が含まれる前記第2隔壁の表面までの最短距離fよりも大きい(g>f)ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマ表示装置。
【請求項5】
前記第1電極は、
少なくとも前記前面基板に面する表面が黒色であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマ表示装置。
【請求項6】
前記第1電極は、
黒色の電極材料により形成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のプラズマ表示装置。
【請求項7】
前記第1電極及び前記第2電極は、
一方向に延設された一対の電極と、当該一対の電極を架橋するように形成された複数の架橋電極と、により構成される梯子型の形状を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマ表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−153129(P2008−153129A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341724(P2006−341724)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】