説明

プラットフォーム・ウェル構造を有する光学キュベット

流体試料の光学分析のためのフォーマットは、流体試料を接触させ、試薬を流体試料と接触させるためのプラットフォーム及びウェルを備える。フォーマットは、プラットフォーム・ウェルの対向構造で製造することができ、プラットフォームが一方のフォーマット部材から突出して対向するフォーマット部材内に含まれるウェルに入ることを許す。試料充填ノーズが試料収集孔から試料流体を受け、その試料流体をフォーマットに通して輸送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般に、電気化学的分析に関し、より具体的には、流体分析のための光学フォーマットに関する。
【0002】
発明の背景
近年、試料の光学試験は、光学試験を通じて試験結果を得ることができる速度、精度及び効率のおかげで、ますます一般的になった。これらの利点のため、光学試験は一般に、医療用途、たとえば試料流体が血液である場合のグルコース試験で使用される。一般に、医療用途における光学試験は、光を試料と相互作用させることを含む。用途によっては、試料を試験用の試薬と化合させてもよい。光学試験は、試料の回収、試料と試薬との化合及び試料の光学試験を考慮した「フォーマット」を使用して達成することができる。
【0003】
光学試験用途ではいくつかの問題が生じる。試料試験に伴う一つの一般的な問題は、試薬との反応を可能にし、正確な試験を可能にするのに必要な試料のサイズである。多くの光学フォーマットは300nl以上の試料サイズを要する。さらには、光学フォーマットは、フォーマットの不十分な機械的許容差のせいで性能誤差を生じさせることが多い。試薬が光学フォーマットとともに使用される場合、試薬は、一貫性を欠いてフォーマット内に配置されるおそれがある。たとえば、誤った量の試薬又は誤った場所に配置された試薬が試験精度に影響することがある。試料の量の誤った制御―たとえば、試験区域内への不十分な量の試料の付着―を生じさせるフォーマットは、多くの従来技術の光学試験システムの精度を低下させる。さらには、光学フォーマットの製造費が高額となり、得られるフォーマットはしばしば望むよりも大きくなる。
【0004】
光学試料試験の効率及び精度を高めるために、改良された光学フォーマットを提供することが望ましい。
【0005】
発明の概要
本発明の一つの実施態様によると、光学フォーマットは、非常に少量の試料が正確な光学試験を生じさせることを可能にする。
【0006】
本発明のいくつかの実施態様によると、試料の量が約50nl量である正確な光学試験を可能にする光学フォーマットが提供される。
【0007】
本発明のいくつかの実施態様によると、光学フォーマットは、少量の正確な光学試験を可能にする1個のフォーマットへと接合するように設計された2個の部品からなる。
【0008】
本発明のいくつかの実施態様によると、光学フォーマットは、光学フォーマット内への試薬の一貫性のある配置を可能にする。
【0009】
本発明のいくつかの実施態様によると、試薬の配置は、フォーマット製造中に試薬が上に配置されるメサの使用によって容易になる。
【0010】
本発明のいくつかの実施態様によると、試料の量が光学フォーマット内で所要量まで計量されたのち、試料は光学フォーマット内の試薬と反応することを許される。
【0011】
本発明のいくつかの実施態様によると、光学フォーマットは、低コストで光学フォーマットの高速製造を可能にするための連続ウェブ加工を使用して製造される。
【0012】
本発明は、様々な改変及び代替形態を受け入れることができるが、具体的な実施態様を例として図面に示し、本明細書で詳細に説明する。しかし、本発明を開示される特定の形態に限定する意図はないということが理解されるべきである。それどころか、本発明は、請求の範囲によって定義される発明の本質及び範囲に入るすべての改変、等価及び代替を包含するものである。
【0013】
例示的な実施態様の詳細な説明
図1は、本発明の一つの実施態様の光学フォーマット10を示す。光学フォーマット10は、たとえば生物学的流体分析におけるグルコース試験又は他の分析対象物の試験のような医療試験用途における試料の収集及び光学試験で使用することができる。光学フォーマット10は、多様な製造技術、たとえばマイクロ成形、コイニング又はUV複製法を使用して製造することができ、ポリカーボネート、ポリスチレン及びポリエステルのような材料で構成することができる。本発明のフォーマットは、シート材料から個々に切り出すこともできるし、一次元又は二次元のアレイに切り分けることもできるし、円板状に切り分けることもできる。連続ウェブ加工を使用して本発明のフォーマット及びフォーマット部材を製造すると、加工費を下げることができる。
【0014】
光学フォーマット10は、第一のフォーマット部材12及び第二のフォーマット部材14を含む。第一及び第二のフォーマット部材12及び14は、図1に示す上下方向に関して説明するが、これらの標識は説明のためのものであり、本発明の光学フォーマットの特徴は空間中で選択的に向きを変えられることが理解されよう。たとえば、本発明のいくつかの態様では、第一のフォーマット部材12と組み合わせて説明する特徴が下フォーマット部分に配置されていてもよい。
【0015】
図1に示す第二のフォーマット部材14は、試料充填ノーズ16を備えている。試料充填ノーズ16は、試料収集孔18からの試料流体の収集及び試料収集孔18からウェル20への試料流体の輸送を考慮している。ウェル20は、通気孔24を備えた通気路22に接続している。図1に示す実施態様では、試料収集孔18は光学フォーマットの前面26に設けられ、通気孔24は光学フォーマットの背面28に設けられている。本発明のいくつかの実施態様によると、光学フォーマットの具体的な用途による要求に応じて、試料収集孔及び通気孔は、光学フォーマットの他の面又は光学フォーマットの界面に設けられていてもよい。
【0016】
本発明のいくつかの実施態様によると、試料充填ノーズ16は、試料流体を毛管作用によって試料収集孔18からウェル20に輸送する。試料充填ノーズ16は、好ましくは、試料充填ノーズ16の開放容積がウェル20内で分析に必要な試料流体の体積にほぼ等しくなるような寸法に設けられている。
【0017】
試料充填ノーズ16が長方形断面を有する実施態様では、試料充填ノーズ16は、高さhn、幅wn及び長さlnを有している。本発明の一つの実施態様によると、ウェル20内での試験に好ましい試料の量は約50nlである。この実施態様では、約100μmの高さhn、約200μmの幅wn及び約2.4mmの長さlnを有する試料充填ノーズ16が、ウェル20を所望の量の試料流体で満たすのに適当である。このように、試料の量は、試料収集中に試料充填ノーズ16によって適切に計量される。本発明のいくつかの実施態様によると、多め又は少なめの量の流体で試験を実施することが望ましいこともあり、試料充填ノーズ16は、ウェル20への最適な流体輸送を可能にするサイズであってもよい。フォーマットの寸法は製造法に依存するが、一般に、1μlの最大好適試料量がフォーマットのサイズを制限する。
【0018】
本発明のいくつかの実施態様によると、光学フォーマット部材上にプラットフォーム28が設けられる。プラットフォーム28は、図2に示すように、光学プラットフォーム部材の一方の内面30から突出している。図1及び2は、第一のプラットフォーム部材12の内面30から下に延びるプラットフォーム28を示すが、本発明の光学フォーマットは、下プラットフォーム部材から上に延びるプラットフォームを用いてもよいことが理解されよう。図1及び2に示す実施態様では、プラットフォーム28は、第一の光学フォーマット部材12の内面30から下に延び、第二の光学フォーマット部材14の内面32に設けられたウェル20の中に入る。
【0019】
プラットフォーム28は、第一のフォーマット部材12の内面30から高さhp延びている。プラットフォーム28は、直径dpの円形プラットフォームであってもよい。本発明の一つの実施態様によると、プラットフォーム28の高さhpは約50μmであり、プラットフォーム28の直径dpは約1000μmであるが、本発明の具体的な用途では、大きめ又は小さめの高さ及び直径を使用してもよい。たとえば、本発明のいくつかの実施態様では、約25μm〜約250μmの範囲の高さ及び約500μm〜約2000μmの範囲の直径が好ましい。
【0020】
プラットフォーム28がウェル20に入るために、ウェル20は、プラットフォーム28の直径dpよりも大きい直径dwを備えている。本発明の一つの実施態様によると、ウェルの直径dwは約1050μmである。大きめ又は小さめのウェル直径が可能である。たとえば、本発明のいくつかの実施態様では、約550μm〜約2050μmの範囲のウェル直径が好ましい。さらには、ウェルは、プラットフォーム28の高さhpよりも大きい深さhwを備えて、それにより、図4でもっともわかりやすい試料試験領域34を形成している。本発明の一つの実施態様によると、試料試験領域34は、約50μmの高さhtを有している。大きめ又は小さめの試験領域高さが可能である。たとえば、本発明のいくつかの実施態様では、約25μm〜約100μmの範囲の試験領域高さが好ましい。
【0021】
通気路22は、試料試験領域34から光学フォーマット10の後面36に向かって延びている。本発明のいくつかの実施態様によると、通気路22は、試料収集孔18から試料試験領域34に向かう試料の毛管移動を保証するように働く。図1〜4に示す実施態様の通気路22は、高さhv、幅wv及び長さlvの長方形断面を有している。本発明の一つの実施態様によると、通気路の高さhvは約100μmであり、通気路の幅wvは約500μmであり、通気路の長さlvは約400μmである。本発明の他の実施態様では他の通気路寸法が考えられる。たとえば、本発明のいくつかの実施態様では、約50μm〜約200μmの範囲の通気路高さ、約50μm〜約200μmの範囲の通気路幅及び約50μm〜約500μmの範囲の通気路長さが好ましい。通気路22は、試料試験領域34の毛管ギャップ中の毛管力を増すことに加えて、試料過充填のための区域を提供することができる。
【0022】
プラットフォーム28は、試料試験領域34中の試料と反応するように設計された試薬をその上に備えることができる。試薬は、ポンプ付着又はプリント、ピン付着もしくはインクジェット塗布のような方法によってプラットフォームに配置することができる。試薬は、光学フォーマット10の組み立ての前にオーブン乾燥させることによってプラットフォーム28上に保持することができる。本発明の一つの実施態様によると、試薬をプラットフォーム28に付着させたのち、光学フォーマット部材どうしを接合する。本発明のこの実施態様では、プラットフォーム28は、試薬がプラットフォーム28又は試料試験領域34を越えて延展することを許さない。さらに、試薬がプラットフォーム28上に均一に付着されると、均一な試薬厚さ及び均一な反応区域が達成される。本発明のいくつかの実施態様によると、試料試験領域34内で試薬が試料と化合して比色反応を生じさせる。得られる色は、拡散反射率又は試料中の透過を使用して分析することができる。
【0023】
本発明のいくつかの実施態様によると、第一のフォーマット部材12を第二のフォーマット部材14に接着するために、これらのフォーマット部材の間に接着剤が供給される。本発明の一つの実施態様では、フォーマット部材の接着のために、光学的に透明な加熱活性化接着剤がフォーマット部材の一方又は両方の内面に塗布される。
【0024】
本発明のいくつかの実施態様によると、上下の光学フォーマット部材はいずれも光学的に透明な材料を含む。これらの実施態様は、光学透過又は拡散反射率分析に使用することができる。あるいはまた、光学フォーマット部材の一方が光学的に反射性の材料を含むこともできる。光学的に反射性の材料を使用する実施態様は、試料からの拡散光又は反射光に基づく光学分析で使用することができる。
【0025】
本発明のフォーマット及び方法は、小さくて信頼性の高い光学フォーマットの効率的な構成を考慮している。図1に示すように、フォーマットは、フォーマット長さlf、フォーマット幅wf及びフォーマット高さhfを有している。本発明の一つの実施態様によると、フォーマット長さは約3.85mmであり、フォーマット幅は約3mmであり、フォーマット高さは約1mmである。本発明のいくつかの実施態様では、他の寸法を有するフォーマットが好ましい場合がある。たとえば、本発明のいくつかの実施態様では、約3.00mm〜約12.5mmの範囲のフォーマット長さ、約2.00mm〜約5.00mmの範囲のフォーマット幅及び約0.50mm〜約3.00mmの範囲のフォーマット高さが好ましい。本発明の光学フォーマットは、広い範囲の試料流体の量を扱うように設計することができる。たとえば、本発明のいくつかの実施態様では、約5nl〜約1000nlの試料の量が考えられる。一つ以上の特定の実施態様を参照しながら本発明を説明したが、当業者は、本発明の本質及び範囲を逸することなく多くの変更を本発明に加えうることを認めるであろう。
【0026】
たとえば、本発明は、医療用途に関するものとして一般に記載したが、他の光学的流体試験用途が本発明の原理を利用してもよいということが理解されよう。これらの実施態様及びその自明な改変それぞれが、請求の範囲に述べる発明の本質及び範囲に入るものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一つの実施態様の光学フォーマットの斜視図である。
【図2】本発明の一つの実施態様の光学フォーマットの分解斜視図である。
【図3】図1の光学フォーマットの3−3線から見た断面図である。
【図4】図1の光学フォーマットの4−4線から見た断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の光学試験のためのフォーマットであって、
第一の内面及び前記第一の内面から一定の距離だけ延びるプラットフォームを含む第一のフォーマット部材と、
第二の内面及び前記第二の内面内に設けられ、前記第一のフォーマット部材の前記プラットフォームを内に受けるための形状を有するウェルを含む第二のフォーマット部材と
を含むフォーマット。
【請求項2】
前記第二のフォーマット部材内に設けられ、第一端にある試料収集孔から前記第二の内面に沿って延びて第二端にある前記ウェルと交差する試料充填ノーズをさらに含む、請求項1記載のフォーマット。
【請求項3】
前記第二のフォーマット部材内に設けられ、第一端にある通気孔から前記第二の内面に沿って延びて第二端にある前記ウェルと交差する通気路をさらに含む、請求項2記載のフォーマット。
【請求項4】
前記通気路が、前記試料充填ノーズと前記ウェルとの交差部分にほぼ対向する区域で前記ウェルと交差する、請求項3記載のフォーマット。
【請求項5】
前記プラットフォームが、前記第一の内面からプラットフォーム高さまで延び、前記ウェルが、前記第二のフォーマット部材内で、前記プラットフォーム高さよりも大きいウェル深さまで延び、それによって前記試料を受けるための試料試験領域を形成する、請求項1記載のフォーマット。
【請求項6】
前記プラットフォームが、前記試料と反応するための試薬をその上に備える、請求項1記載のフォーマット。
【請求項7】
前記試料試験領域が試料試験領域容積を有し、さらに、前記第二のフォーマット部材内に設けられ、第一端にある試料収集孔から第二端にある前記試料試験領域まで延びる充填ノーズを含み、前記充填ノーズが、前記試料試験領域容積よりも大きい充填ノーズ容積を有し、それによって試料試験領域を満たすのに十分な試料の量が利用可能であることを保証する、請求項5記載のフォーマット。
【請求項8】
試料の光学試験のためのフォーマットであって、
第一の内面及び前記第一の内面からプラットフォーム高さまで延びるプラットフォームを含む第一のフォーマット部材と、
第二の内面及び前記第二の内面内に設けられ、前記第二の内面よりも下のウェル深さまで延び、前記第一のフォーマット部材の前記プラットフォームを内に受けるための形状を有し、それによって試料試験領域を形成するウェルを含む第二のフォーマット部材と、
第一端にある試料収集孔から第二端にある前記ウェルまで延びる試料充填ノーズと、
第一端にある通気孔から第二端にある前記ウェルまで延びる通気路と
を含むフォーマット。
【請求項9】
前記プラットフォームが円柱形であり、プラットフォーム直径を有し、前記ウェルが円柱形であり、前記プラットフォーム直径よりも大きいウェル直径を有する、請求項8記載のフォーマット。
【請求項10】
前記試料充填ノーズが、前記試料の量を毛管作用によって前記試料収集孔から前記試料試験領域まで輸送するように適合されている、請求項8記載のフォーマット。
【請求項11】
前記試料の前記量が約50nlである、請求項9記載のフォーマット。
【請求項12】
前記試料の前記量が約5nl〜約1000nlの範囲内である、請求項9記載のフォーマット。
【請求項13】
前記通気孔が、前記フォーマットの、前記試料収集孔から反対側に設けられている、請求項9記載のフォーマット。
【請求項14】
前記試料充填ノーズが試料充填ノーズ幅を有し、前記通気路が、前記試料充填ノーズ幅よりも大きい通気路幅を有する、請求項9記載のフォーマット。
【請求項15】
光学試験のためのフォーマットを製造する方法であって、
第一の内面及び前記第一の内面よりも上のプラットフォーム高さまで延びるプラットフォームを含む第一のフォーマット部材を用意することと、
a)第二の内面及び前記第二の内面内に設けられ、前記第二の内面よりも下の、前記プラットホーム高さより大きいウェル深さまで延びるウェル、
b)前記ウェルで終端する試料充填ノーズ切欠き、ならびに
c)前記ウェルで終端する通気路切欠き
を含む第二のフォーマット部材を用意することと、
前記第一のフォーマット部材の前記プラットフォームを前記第二のフォーマット部材の前記ウェルに挿入することによって前記第一のフォーマット部材を前記第二のフォーマット部材に接合し、それによって試料試験領域を形成することと
を含む方法。
【請求項16】
試験試薬を前記プラットフォームに塗布することをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記試料充填ノーズ切欠きが前記ウェルをはさんで前記通気路切欠きとほぼ対向する、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記第一及び第二のフォーマット部材の一方又は両方に接着剤を供給することをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記通気路切欠きが長方形の断面を有する、請求項15記載の方法。
【請求項20】
前記充填ノーズ切欠きが長方形の断面を有する、請求項15記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−510904(P2007−510904A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538412(P2006−538412)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/036330
【国際公開番号】WO2005/043134
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(503085274)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (7)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Healthcare,LLC
【Fターム(参考)】