説明

プラットホームドア装置

【課題】非常脱出ドアの支軸が出っ張らないように配置されるとともに、非常脱出ドアを180度まで開放可能にする。
【解決手段】プラットホームドア装置10は、プラットホームに固定される戸袋体12と、乗降通路を開閉する引戸式のドアパネルと、戸袋体12の戸尻側の部位に設けられた第1軸受け部35a,36aと、基部33a及び第2軸受け部33b,33cを有する回動部材33と、回動部材33の第2軸受け部33b,33cに対して回動可能な軸元部30を有し、戸袋体12の戸尻側の非常脱出通路を開閉可能な非常脱出ドア16と、を備える。第1軸受け部35a,36a、回動部材33及び非常脱出ドア16は、非常脱出通路が非常脱出ドア16によって閉じられた状態のときに戸袋体12の厚み範囲内に位置するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラットホームドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、戸袋パネルに非常脱出ドアが設けられたプラットホームドア装置が知られている。この特許文献1に開示されたプラットホームドア装置では、戸袋パネルの戸尻側端部に支軸が設けられており、非常脱出ドアはこの支軸を中心としてホーム側に回動するようになっている。非常脱出ドアの支軸は、戸袋パネルの外面(ホーム側の外面)から突出しないように配置されていて、乗降客が引っ掛からないように配慮されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−7951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非常脱出ドアの支軸が戸袋パネルの外面から突出しないように配置されている場合において、非常脱出ドアを180度回動させようとすると、非常脱出ドアの軸元側の端部が戸袋パネルと干渉してしまい、完全には開放できないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、非常脱出ドアの支軸が出っ張らないように配置されるとともに、非常脱出ドアを180度まで開放可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、プラットホームに固定される戸袋体と、前記戸袋体に支持され、前記戸袋体に対して一側の乗降通路を開閉する引戸式のドアパネルと、前記戸袋体に設けられた第1軸受け部と、前記第1軸受け部に対して回動可能な基部と、この基部から側方にずれた位置にある第2軸受け部とを有する回動部材と、前記回動部材の前記第2軸受け部に対して回動可能な軸元部を有し、前記戸袋体に対して他側の非常脱出通路を開閉可能な非常脱出ドアと、を備え、前記第1軸受け部、前記回動部材及び前記非常脱出ドアは、前記非常脱出通路が前記非常脱出ドアによって閉じられた状態のときに前記戸袋体の厚み範囲内に位置するように配置されているプラットホームドア装置である。
【0007】
本発明では、非常脱出ドアが非常脱出通路を開閉する際に、非常脱出ドアの軸元部が回動部材の第2軸受け部に対して回動する。この回動部材は、戸袋体の第1軸受け部に対して回動可能となっているので、非常脱出ドアは、回動部材を介して第1軸受け部に対して回動しながら非常脱出通路を開閉する。このように非常脱出ドアの回動時には、非常脱出ドアの回動中心となる第2軸受け部が、第1軸受け部に対して側方にずれた位置に設定された回動部材が回動するため、回動部材の回動中心となる第1軸受け部が戸袋体の厚み範囲内に位置しているとしても、非常脱出ドアの軸元側の端部が戸袋体に干渉することなく、非常脱出ドアを180度回動させることができる。
【0008】
ここで、前記プラットホームドア装置は、前記回動部材と前記非常脱出ドアとの間の隙間を塞ぐように設けられる変形可能なカバー部を備えていてもよい。
【0009】
この態様では、回動部材と非常脱出ドアとの間の隙間が塞がれるので、指詰めを未然に防止することができる。また、回動時に非常脱出ドアと回動部材との間の隙間幅が変わることがあったとしても、カバー部が非常脱出ドアの回動の障害となることを防止することができる。
【0010】
前記第1軸受け部は、前記軸元部よりも上側の位置に配置された支持ブラケットに設けられた上側第1軸受け部を有し、前記支持ブラケットは、前記軸元部の上側領域よりも前記戸袋体の厚み方向内側の位置を、前記ドアパネルの移動方向に沿う方向に延びる延出部を有していてもよく、この場合には、前記非常脱出ドアは、前記軸元部の上側領域を利用して前記回動部材に対して着脱可能であってもよい。
【0011】
この態様では、軸元部よりも上側の位置に配置された支持ブラケットに上側第1軸受け部が設けられ、この上側第1軸受け部によって回動部材の基部の上端部が支持される。支持ブラケットは延出部を有しており、この延出部は軸元部の上側領域よりも戸袋体の厚み方向内側の位置に配置されている。そして、軸元部の上側には、支持ブラケットの厚み分だけ非常脱出ドアを上方に持ち上げることが可能なスペースが形成される。このため、非常脱出ドアを回動部材に対して着脱可能にすることができる。しかも、延出部が軸元部の上側領域よりも戸袋体の厚み方向内側の位置をドアパネルの移動方向に沿う方向に延びているので、延出部によって人の指が軸元部よりも内側に進入することを防止できる。
【0012】
この態様において、前記延出部は、前記非常脱出ドアが当接することによって、前記非常脱出ドアが前記非常脱出通路を閉じる位置としてもよい。この態様では、延出部を利用して非常脱出ドアの閉じ位置が決められる。
【0013】
この態様において、前記戸袋体の幅が前記ドアパネルの幅よりも短く形成されていて、前記ドアパネルは、開き位置において戸尻が前記戸袋体から突出してもよく、また前記非常脱出ドアは、前記ドアパネルの通過領域の上側をカバーする上側部位を含んでいてもよく、この場合には、前記延出部は、前記非常脱出ドアが前記非常脱出通路を閉じる位置にあるときに、前記上側部位に当接する構成であってもよい。
【0014】
この態様では、ドアパネルの移動方向において戸袋体の幅が短くなるため、乗降通路を広く取ることができる。そして、非常脱出ドアの上側部位がドアパネルの通過領域の上側の領域をカバーするため、ドアパネルの戸尻が開き位置において戸袋体から突出する場合にも、乗降客の安全を確保できる。
【0015】
前記プラットホームドア装置には、前記非常脱出ドアが閉じ位置を超えて回動するのを規制する規制手段が設けられていてもよい。
【0016】
この態様では、非常脱出ドアが閉じ位置を超えて回動することはないため、非常脱出ドアを閉じ位置にロックする際に非常脱出ドアを位置決めし易くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、非常脱出ドアの支軸が出っ張らないように配置しつつ、非常脱出ドアを180度まで開放可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るプラットホームドア装置の正面図である。
【図2】図1のII−II線における部分断面図である。
【図3】主として非常脱出ドアの部分を示す前記プラットホームドア装置の正面図である。
【図4】戸袋体を部分的に破断して示す前記プラットホームドア装置を上面図である。
【図5】図3のV−V線における部分断面図である。
【図6】非常脱出ドアを戸袋体側から見た図である。
【図7】回動部材及び非常脱出ドアの軸元部を主として示す断面図である。
【図8】(A)(B)上側支持ブラケットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の実施形態に係るプラットホームドア装置10の正面図である。このプラットホームドア装置10がプラットホームPの縁部に沿って多数並べられると、プラットホームP上は、多数のプラットホームドア装置10によって軌道側とその内側(ホーム内側)とに仕切られる。なお、隣接するプラットホームドア装置10どうしの間に固定仕切り壁(図示省略)を介装してもよい。
【0021】
図1は、プラットホームドア装置10をホーム側から軌道側に向かって見た図である。同図に示すように、プラットホームドア装置10は、プラットホームPに設置される戸袋体12と、戸袋体12の一端部(図1の右端部)から突出するように駆動されるドアパネル14と、戸袋体12の他端部側に配置される非常脱出ドア16と、を備えている。すなわち、プラットホームドア装置10は、引戸式のドアパネル14を備えた可動柵として構成され、戸袋体12に対して一側は、ドアパネル14によって開閉される乗降通路18となり、戸袋体12に対して他側は、非常脱出ドア16によって開閉される非常脱出通路20となる。
【0022】
ドアパネル14は、正面視で矩形状に形成されたパネル部を備えており、図略のリニアレール、歯付きベルト等の伝達部材を備えている。パネル部には、透明板14aが設けられている。
【0023】
戸袋体12は、ケーシング22を備えており、プラットホームPに固定されている。ケーシング22内には、ドアパネル14を開閉動作するための駆動装置(図示省略)、ドアパネル14を移動可能な状態で支持するドア支持部(図示省略)等が収納されている。
【0024】
ケーシング22は、パネル材を組み合わせることによって内部が空洞の外装体として構成されるものであり、縦長に形成されている。そして、軌道に沿う方向のケーシング22の幅(すなわち、戸袋体12の幅)は、ドアパネル14の幅よりも短くなっている。
【0025】
戸袋体12のケーシング22には、軌道に沿う方向の端部(側壁部)にそれぞれ開口が設けられており、ドアパネル14は、この開口を通してケーシング22を貫通している。なお、図2には、ケーシング22における非常脱出ドア16側の端部(戸尻側の端部)22aに形成された開口22bが示されている。
【0026】
そして、ドアパネル14が乗降通路18を閉じる位置(閉じ位置)にある場合には、ドアパネル14の戸尻がケーシング22内に位置する一方で戸先がケーシング22の外方(乗降通路側)に突出した位置となる。一方、ドアパネル14が乗降通路18を開放する位置(開き位置)にある場合には、ドアパネル14の戸尻がケーシング22の外方(非常脱出通路側)に突出した位置となる一方で戸先がケーシング22の端部の近傍に位置する。
【0027】
図2に示すように、戸袋体12のケーシング22には、上側支持板(支持部材)25及び下側支持板(支持部材)26が固定されている。これら支持板25,26は、水平に配置されるとともにケーシング22の非常脱出通路側の端部から側方に延出する形態でケーシング22の側壁部に固定されている。上側支持板25は、ドアパネル14の通過領域よりも上方に配置され、下側の支持板は、ドアパネル14の通過領域よりも下方に配置されている。したがって、ドアパネル14が戸袋体12から非常脱出ドア16側に突出したときでも、上側及び下側の支持板がドアパネル14と干渉することはない。
【0028】
上側支持板25は、平面視で略矩形状に形成されるとともに角部が丸みをもった平板形状に形成されている。上側支持板25の幅は、戸袋体12の厚み方向については、戸袋体12の幅に対応した幅であり、それと直交する方向(ドアパネル14の移動方向)については、戸袋体12と非常脱出ドア16との間の間隔に対応した幅となっている。
【0029】
下側支持板26は、平面視で略矩形状に形成された平板形状に形成されている。下側支持板26の幅は、戸袋体12の厚み方向については、戸袋体12の幅に対応した幅であり、それと直交する方向(ドアパネル14の移動方向)については、上側支持板25の幅よりも小さな幅となっている。したがって、図3に示すように、下側支持板26と非常脱出ドア16との間には、間隙が形成されている。
【0030】
非常脱出ドア16は、戸袋体12と同じ高さを有しており、ホーム側から見ると略矩形状となっている。非常脱出ドア16は、図4〜図6に示すように、上覆い部28aと側面覆い部28bとを有する本体部28を備えている。上覆い部28aは、ドアパネル14の通過領域(移動経路)を上から覆う部位であり、通過領域の上側に位置する上側部位である。上覆い部28aの上面は、傾斜状に形成されており、上覆い部28aの厚み(ドアパネル14の移動方向に直交する方向の幅)は、戸袋体12の幅と同じである(図4参照)。
【0031】
側面覆い部28bは、ドアパネル14の通過領域のホーム側の領域を覆う部位であり、上覆い部28aのホーム側の下端部につながっている。言い換えると、上覆い部28aが側面覆い部28bの上端部から軌道側に向かって張り出している。そして、非常脱出ドア16が非常脱出通路20を閉じた状態(閉じ状態)にある場合おいて、上覆い部28aの側面(戸袋体12の戸尻側端面に対向する側面)は、戸袋体12の上側支持板25と当接している。
【0032】
側面覆い部28bは、矩形平板状に形成されており、非常脱出ドア16が閉じ状態にある場合には、側面覆い部28bのホーム側の外面は、戸袋体12のホーム側の外面と面一となる。すなわち、非常脱出ドア16は、閉じ状態のときに戸袋体12の厚み範囲内に位置している。非常脱出ドア16は、手先側に配置された図外の壁体(例えば戸袋体、仕切り壁等)に設けられた例えば閂(図示省略)によってこの状態に維持される。この状態(図5に示す閉じ状態)で、ドアパネル14と平行でかつ戸袋体12のホーム側の外面と平行になっている。そして、非常脱出ドア16は、この閉じ状態からホーム側に向かって回動し、非常脱出通路20を開放する。
【0033】
上覆い部28aは、ドアパネル14の通過領域から上側に外れた位置となっており、また側面覆い部28bは、ドアパネル14の通過領域からホーム側に外れた位置となっている。すなわち、非常脱出ドア16は、ドアパネル14の通過領域から外れた位置に配置されている。
【0034】
非常脱出ドア16は、本体部28における側面覆い部28bに固定された軸元部30を備えている。軸元部30は、側面覆い部28bの側端部から張り出した状態で配置されるとともに、締結具によって側面覆い部28bに締結されている。
【0035】
軸元部30は、側面覆い部28bにおける上側の部位に配置された部位(上側軸元部30a)と、側面覆い部28bにおける下側の部位に配置された部位(下側軸元部30b)とを含み、上側軸元部30a及び下側軸元部30bは、それぞれ側面覆い部28bと同じ厚みを有している。
【0036】
非常脱出ドア16は、戸袋体12に設けられた上側支持板25と下側支持板26との間に配置された回動部材33に回動可能に支持されており、この回動部材33を介して回動する。以下、この点について説明する。
【0037】
上側支持板25及び下側支持板26には、図3及び図7(A)に示すように、それぞれ支持ブラケット35,36が固定されている。上側支持ブラケット35は、上側支持板25の下側に水平に配設されており、下側支持ブラケット36は、下側支持板26の上側に水平に配設されている。
【0038】
上側支持ブラケット35は、図8(A)(B)に示すように、平面視でL字状に形成されており、上側第1軸受け部35aと延出部35bとを有している。上側第1軸受け部35aは、支持ブラケット35のうち、戸袋体12の厚み方向に延びる部位のホーム側端部に形成されており、一方の側面(図の右側の側面)は戸袋体12のケーシング22に接触している。この戸袋体12の厚み方向に延びる部位は、図2及び図5に示すように、戸袋体12のホーム側の端面に一致するところから軌道側に向かって延びており、閉じ状態にある非常脱出ドア16の軸元部30(上側軸元部30a)の上側領域よりも奥側(軌道側)の位置まで延びている。非常脱出ドア16が閉じ位置にある場合には、上側第1軸受け部35aは、戸袋体12のホーム側の外面から突出していない。すなわち、上側第1軸受け部35aは、戸袋体12の厚み範囲内に収まっている。
【0039】
延出部35bは、軸元部30の上側領域よりも軌道側の位置で、ドアパネル14の移動方向に沿う方向に延びている。すなわち、延出部35bは、戸袋体12の厚み方向内側の位置を、ドアパネル14の移動方向に沿う方向に延びている。そして、戸袋体12のケーシング22の戸尻側端部22aからの延出部35bの延出幅が、ドアパネル14の移動方向における上側支持板25の幅と同じとなっている。したがって、非常脱出ドア16が閉じ状態にあるときには、非常脱出ドア16の上覆い部28aは延出部35bと当接する。
【0040】
下側の支持ブラケット36は、上側支持ブラケット35のうち戸袋体12の厚み方向に延びる部位と同じ幅を有する平板状に形成されている。下側支持ブラケット36は、ホーム側の端部に下側第1軸受け部36aを有している。この下側第1軸受け部36aと前記上側第1軸受け部35aとにより、戸袋体12の戸尻側の部位に設けられた第1軸受け部が構成されている。
【0041】
非常脱出ドア16が閉じ位置にある場合には、下側第1軸受け部36aは、戸袋体12のホーム側の外面から突出していない。すなわち、下側第1軸受け部36aは、戸袋体12の厚み範囲内に収まっている。
【0042】
上側第1軸受け部35aには、垂直方向に延びるように軸部(上側軸部)35cが設けられている。一方、下側第1軸受け部36aには、上側軸部35cと同軸状に配置された軸部(下側軸部)36bが設けられている。
【0043】
回動部材33は、上側第1軸受け部35a及び下側第1軸受け部36aによって回動可能に支持されており、回動部材33は、両第1軸受け部35a,36aに対して回動可能な基部33aと、この基部33aから側方にずれた位置にある第2軸受け部33b,33cとを有する。
【0044】
基部33aは、上下方向に延びる部位であり、その上端部が上側軸部35cによって支持され、下端部が下側軸部36bによって支持されている。基部33aは、両軸部35c,36bの中心と同心状の円柱状に形成されている。回動部材33は、上側軸部35c及び下側軸部36bを回動中心として回動する。すなわち、非常脱出ドア16と戸袋体12との間には回動部材33が配置されており、この回動部材33は、戸袋体12に対して回動可能なっている。回動部材33は、非常脱出ドア16が閉じ状態にあるときに、戸袋体12の厚み範囲内に位置している。
【0045】
第2軸受け部は、上側第2軸受け部33bと下側第2軸受け部33cとを有する。上側第2軸受け部33bは、基部33aにおける上下方向の中間部に配置されており、下側第2軸受け部33cは、基部33aの下端部に配置されている。上側第2軸受け部33b及び下側第2軸受け部33cは同じ形状であり、基部33aから同じ方向に張り出すように設けられている(図7(C),(G)参照)。上側第2軸受け部33b及び下側第2軸受け部33cの先端面は、基部33aの外周面と同じ曲率半径を有し、後述の第2軸部33d,33eを中心とする円弧状に形成されている。
【0046】
上側第2軸受け部33b及び下側第2軸受け部33cには、それぞれの上面に第2軸部33d,33eが設けられている。これらの第2軸部33d,33eは上下方向に延びる姿勢で同軸状に配置されている。非常脱出ドア16の軸元部30は、上側第2軸受け部33b及び下側第2軸受け部33cによって支持されており、第2軸部33d,33eは軸元部30(非常脱出ドア16)の回動中心となる。すなわち、非常脱出ドア16の回動中心は、回動部材33の回動中心から側方に位置ずれしたところに設定されている。
【0047】
軸元部30a,30bは、下面に第2軸部33d,33eを挿入可能な穴が形成されており、軸元部30a,30bを上から下ろすことによって第2軸部33d,33eを軸元部30a,30bの穴に挿入し、軸元部30a,30bを上側第2軸受け部33b及び下側第2軸受け部33c上にそれぞれ載置すれば、軸元部30a,30bは第2軸受け部33b,33cに対して回動可能となる。一方、軸元部30a,30bを上に持ち上げることにより、第2軸受け部33b,33cから取り外すことができる。このとき、上側軸元部30aの上側領域には、上側支持板25との間に間隙が形成されているので、非常脱出ドア16を持ち上げることによって回動部材33から取り外すことができる。すなわち、非常脱出ドア16は、軸元部30の上側領域を利用して回動部材33に対して着脱可能である。
【0048】
図7(B),(E),(F)に示すように、非常脱出ドア16の軸元部30a,30bは、先端の外周面が円弧状に形成されている。このため、軸元部30a,30bの先端の外周面は、非常脱出ドア16が第2軸部33d,33e回りに回動する際に、回動部材33の基部33aの外周面と干渉しない。
【0049】
上側軸元部30aと下側軸元部30bとの間の高さ位置では、回動部材33の基部33aと非常脱出ドア16の本体部28との間に間隙があり、この間隙を塞ぐようにカバー部38が設けられている。カバー部38は、上側第2軸受け部33bと下側軸元部30bとの間の全体に亘って配置される上下に長い部材である。カバー部38は、図7(D)に示すように、薄板状の部材で形成されていて、非常脱出ドア16の本体部28に固定される固定部38aと、この固定部38aから側方に延出される変形可能な変形部38bとを一体的に有する。
【0050】
固定部38aは、非常脱出ドア16の本体部28の外面に沿うように配置されて本体部28に固定されている。この固定部38aの固定は、ビス止めによる固定でも接着剤による固定でもよい。変形部38bは、軸元部30の先端面と同じ外周面を有する円弧状(湾曲状)に形成されていて、固定部38aとの間に所定の空間を形成している。そして、変形部38bの側端部は、固定部38aとの間に隙間が形成されており、これにより、変形部38bは変形し易くなっている。なお、カバー部38を本体部28から取り外すことにより、非常脱出ドア16を上に移動させることができる。
【0051】
本実施形態のプラットホームドア装置10には、図7に示すように、非常脱出ドア16が所定の閉じ位置を超えて回動するのを規制する規制手段40が設けられている。この規制手段40の存在により、非常脱出ドア16がドアパネル14の通過領域に進入することもなく、非常脱出ドア16がドアパネル14と干渉することはない。なお、所定の閉じ位置とは、非常脱出ドア16のホーム側の側面が戸袋体12のホーム側の側面と平行(すなわち面一の状態)となり、非常脱出通路20が閉じられる位置である。非常脱出ドア16は、この閉じ位置にある状態で、隣接する図外の壁体(例えば戸袋体、仕切り壁等)に設けられた閂等(図示省略)によってロック可能となる。
【0052】
規制手段40には、回動部材33に対する非常脱出ドア16の過度の回動を規制する第1規制部41と、戸袋体12に対する回動部材33の過度の回動を規制する第2規制部42とが含まれている。
【0053】
第1規制部41は、非常脱出ドア16が、回動部材33の基部33aからの第2軸受け部33b,33cの突出方向を超えて軌道側に回動することを防止するためのものであり、軸元部30の下端部における軌道側の部位に形成された突起41aと、頭部同士が当接可能な一対のピン41bとを備えている。
【0054】
突起41aは、基部33aからの第2軸受け部33b,33cの突出方向と非常脱出ドア16の向きとが平行になったときに、軌道側から回動部材33の第2軸受け部33b,33cに当接する位置及び大きさに形成されている。なお、突起41aは、軸元部30の下端部に設けられるのではなく、回動部材33の第2軸受け部33b,33cの上端部に設けられていてもよい。ただし、この場合には、突起41aはホーム側の部位に配置されることになる。
【0055】
頭部同士が当接可能な一対のピン41bは、回動部材33の基部33aに設けられたピンと、軸元部30に設けられたピンと、からなる。この一対のピン41bは、基部33aからの第2軸受け部33b,33cの突出方向と非常脱出ドア16の向きとが平行になったときに、端面が互いに当接し、これにより、非常脱出ドア16の回動を規制する。なお、突起41a及び一対のピン41bの一方は、省略可能である。
【0056】
第2規制部42は、回動部材33の基部33aからの第2軸受け部33b,33cの突出方向が、戸袋体12のホーム側の側面と平行な向きを超えて軌道側に回動することを防止するためのものであり、基部33aに設けられたピン42aによって構成されている。このピン42aは、基部33aからの第2軸受け部33b,33cの張り出し方向がドアパネル14の移動方向に平行な状態になると端面が戸袋体12に当接する位置及び姿勢で配置されている。
【0057】
以上説明したように、本実施形態では、非常脱出ドア16が非常脱出通路20を開閉する際に、非常脱出ドア16の軸元部30が回動部材33の第2軸受け部33b,33cに対して回動する。この回動部材33は、戸袋体12の第1軸受け部35a,36aに対して回動可能となっているので、非常脱出ドア16は、回動部材33を介して第1軸受け部35a,36aに対して回動しながら非常脱出通路20を開閉する。このように非常脱出ドア16の回動時には、非常脱出ドア16の回動中心となる第2軸受け部33b,33cが第1軸受け部35a,36aに対して側方にずれた位置に設定された回動部材33が回動するため、回動部材33の回動中心となる第1軸受け部35a,36aが戸袋体12の厚み範囲内に位置しているとしても、非常脱出ドア16の軸元側の端部が戸袋体12に干渉することなく、非常脱出ドア16を180度回動させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、回動部材33と非常脱出ドア16との間に変形可能なカバー部38が設けられており、回動部材33と非常脱出ドア16との間の隙間が塞がれているので、指詰めを未然に防止することができる。また、回動時に非常脱出ドア16と回動部材33との間の隙間幅が変わることがあったとしても、カバー部38が非常脱出ドア16の回動の障害となることを防止することができる。
【0059】
また、本実施形態では、軸元部30よりも上側の位置に配置された支持ブラケット35に上側第1軸受け部35aが設けられ、この上側第1軸受け部35aによって回動部材33の基部33aの上端部が支持される。上側の支持ブラケット35は延出部35bを有しており、この延出部35bは軸元部30の上側領域よりも戸袋体12の厚み方向内側の位置に配置されている。そして、軸元部30の上側には、支持ブラケット35の厚み分だけ非常脱出ドア16を上方に持ち上げることが可能なスペースが形成される。このため、非常脱出ドア16を回動部材33に対して着脱可能にすることができる。しかも、延出部35bが軸元部30の上側領域よりも戸袋体12の厚み方向内側の位置をドアパネル14の移動方向に沿う方向に延びているので、延出部35bによって人の指が軸元部30よりも内側に進入することを防止できる。
【0060】
また、本実施形態では、非常脱出ドア16が延出部35bに当接することによって、非常脱出ドア16が閉じ状態になるため、延出部35bを利用して非常脱出ドア16の閉じ位置になるように設定することができる。
【0061】
また、本実施形態では、戸袋体12の幅がドアパネル14の幅よりも短く形成されているため、ドアパネル14の移動方向において戸袋体12の幅が短くなる。このため、乗降通路18を広く取ることができる。そして、非常脱出ドア16の上覆い部28aがドアパネル14の通過領域の上側の領域をカバーするため、ドアパネル14の戸尻が開き位置において戸袋体12から突出する場合にも、乗降客の安全を確保できる。
【0062】
また、本実施形態では、非常脱出ドア16が閉じ位置を超えて回動するのを規制する規制手段40が設けられているので、非常脱出ドア16を閉じ位置にロックする際に非常脱出ドア16を位置決めし易くすることができる。
【0063】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、1つのドアパネルを有するプラットホームドア装置10として構成された例を示したが、一対の戸袋体を備えるとともに各戸袋体にドアパネルが進退移動可能に支持されるプラットホームドア装置としてもよい。
【0064】
また、前記実施形態では、戸袋体12の幅がドアパネル14の幅よりも短く形成されたプラットホームドア装置10について説明したが、これに代え、戸袋体12の幅がドアパネル14の幅よりも長く形成されていて、ドアパネル14が乗降通路18を開放するときに戸袋体12に収納される構成としてもよい。
【0065】
また、前記実施形態では、カバー部38が設けられた構成としたが、カバー部38を省略した構成としてもよい。
【0066】
また、前記実施形態では、非常脱出ドア16が回動部材33に対して着脱可能な例を示したが、これに限られるものではない。例えば、上側支持ブラケット35の延出部35bが非常脱出ドア16の軸元部30の上側領域内に入り込むように形成される場合、カバー部38が非常脱出ドア16に着脱できないように固定されている場合には、非常脱出ドア16は着脱できない構成となる。
【0067】
また、前記実施形態では、延出部35bが非常脱出ドア16に当接する構成としたが、これに代え、非常脱出ドア16が上側支持板25のみに当接し、延出部35bとの間に隙間ができる構成としてもよい。
【0068】
また、前記実施形態では、非常脱出ドア16が上覆い部28a及び側面覆い部28bを備えた構成としたが、これに限られるものではない。例えば、上覆い部28aがなく側面覆い部28bのみの構成とし、非常脱出ドア16がドアパネル14の通過領域のホーム側に位置する構成としてもよい。また、上覆い部28a及び側面覆い部28bに加え、ドアパネル14の通過領域の軌道側に位置する軌道側部(図示省略)を備えていて、ドアパネル14が非常脱出ドア16の中に進入する構成としてもよい。
【0069】
また、前記実施形態では、規制手段40に第1規制部41及び第2規制部42が含まれる構成について説明したが、これに限られるものではなく、第1規制部41及び第2規制部42の一方を省略してもよく、あるいは、規制手段40自体を省略してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 プラットホームドア装置
12 戸袋体
14 ドアパネル
16 非常脱出ドア
18 乗降通路
20 非常脱出通路
30 軸元部
30a 上側軸元部
30b 下側軸元部
33 回動部材
33a 基部
33b 上側第2軸受け部
33c 下側第2軸受け部
33d 第2軸部
33e 第2軸部
35 上側支持ブラケット
35a 上側第1軸受け部
35b 延出部
35c 上側軸部
36 下側支持ブラケット
36a 下側第1軸受け部
36b 下側軸部
38 カバー部
40 規制手段
41 第1規制部
42 第2規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームに固定される戸袋体と、
前記戸袋体に支持され、前記戸袋体に対して一側の乗降通路を開閉する引戸式のドアパネルと、
前記戸袋体に設けられた第1軸受け部と、
前記第1軸受け部に対して回動可能な基部と、この基部から側方にずれた位置にある第2軸受け部とを有する回動部材と、
前記回動部材の前記第2軸受け部に対して回動可能な軸元部を有し、前記戸袋体に対して他側の非常脱出通路を開閉可能な非常脱出ドアと、を備え、
前記第1軸受け部、前記回動部材及び前記非常脱出ドアは、前記非常脱出通路が前記非常脱出ドアによって閉じられた状態のときに前記戸袋体の厚み範囲内に位置するように配置されているプラットホームドア装置。
【請求項2】
前記回動部材と前記非常脱出ドアとの間の隙間を塞ぐように設けられる変形可能なカバー部を備えている請求項1に記載のプラットホームドア装置。
【請求項3】
前記第1軸受け部は、前記軸元部よりも上側の位置に配置された支持ブラケットに設けられた上側第1軸受け部を有しており、
前記支持ブラケットは、前記軸元部の上側領域よりも前記戸袋体の厚み方向内側の位置を、前記ドアパネルの移動方向に沿う方向に延びる延出部を有し、
前記非常脱出ドアは、前記軸元部の上側領域を利用して前記回動部材に対して着脱可能である請求項1又は2に記載のプラットホームドア装置。
【請求項4】
前記延出部は、前記非常脱出ドアが当接することによって、前記非常脱出ドアが前記非常脱出通路を閉じる位置とする請求項3に記載のプラットホームドア装置。
【請求項5】
前記戸袋体の幅が前記ドアパネルの幅よりも短く形成されていて、前記ドアパネルは、開き位置において戸尻が前記戸袋体から突出し、
前記非常脱出ドアは、前記ドアパネルの通過領域の上側をカバーする上側部位を含み、
前記延出部は、前記非常脱出ドアが前記非常脱出通路を閉じる位置にあるときに、前記上側部位に当接する請求項4に記載のプラットホームドア装置。
【請求項6】
前記非常脱出ドアが閉じ位置を超えて回動するのを規制する規制手段が設けられている請求項5に記載のプラットホームドア装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−71615(P2013−71615A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212577(P2011−212577)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)