説明

プラテンローラの加圧制御システム

【課題】うねりにより平坦度が低下したり、湾曲により発熱体に位置ずれが生じた場合の、穿孔状態のばらつきによる印刷画像の画質低下を解消する。
【解決手段】列状に複数の発熱体72を有し、これらの発熱体72を画像信号に応じて発熱させて、孔版マスターに対して穿孔し、画像信号に応じた穿孔パターンを形成するサーマルヘッド70に圧接するプラテンローラ13の加圧制御システムであって、サーマルヘッド70の発熱体72に対して圧接されるプラテンローラ13と、プラテンローラ13をサーマルヘッド70側へ押圧する補助ローラ44と、補助ローラ44のプラテンローラ13に対する押圧力を、プラテンローラ13の軸方向に分割された領域A〜C毎に変化させる可変加圧機構71と、可変加圧機構71の動作を制御する押圧制御部311aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配列された各発熱体に電圧を印加して発熱させるサーマルヘッドに圧接されるプラテンローラの加圧制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、孔版印刷装置において、感熱孔版用マスターを用いたものとしては、主に輪転式孔版印刷装置及び簡易押圧式孔版印刷装置がある。これらの孔版印刷装置では、感熱孔版印刷用(感熱孔版用)マスターが用いられる。この孔版マスターは、熱溶融により穿孔される熱可塑性樹脂フィルムを、このフィルムの支持体である多孔性薄葉紙等に接着剤で貼り合わせて構成される。
【0003】
この孔版マスターの穿孔には長尺サーマルヘッドが使用される。一般的に、サーマルヘッドは、孔版マスターの搬送方向(副走査方向)と直交する主走査方向に対して直線的に複数の発熱体を配列し、発熱体を選択的に駆動することにより孔版マスターのフィルム上に所望の印刷画像の画線部を穿孔するように構成されている。
【0004】
この長尺サーマルヘッドによって孔版マスターのフィルムを加熱し、印刷画像の画線部に対応させて穿孔することで製版を行う。製版された孔版マスターは印刷用紙に合わせて押圧する。そして、孔版マスターの支持体側から押し出されたインクを、孔版マスターのフィルムに開けられた孔を通して印刷用紙に転移することで、印刷が行われる。
【0005】
ところで、サーマルヘッドには、複数分のヘッド基板となる素基板を用意し、発熱素子を配列した後にヘッド基板毎に分割し、複数同時に製造されたヘッド基板を採用しているものもある。このような多数個取りによるヘッド基板には、基板の長手方向と直交する幅方向の寸法が短くなることを原因とする断面剛性の低下が発生することがある。このような断面剛性の低下は、例えば、サーマルヘッドの長手方向の場所によって孔版マスターとの距離がばらつく「うねり」となって現れたり、孔版マスターの搬送方向(副走査方向)への湾曲となって現れたりする。
【0006】
サーマルヘッドに「うねり」が生じると、サーマルヘッドの平坦度が低下する。また、副走査方向にサーマルヘッドが湾曲すると、サーマルヘッドの中央部分の発熱体は、両端部分の発熱体を結ぶ直線上からずれて配置されることとなる。このようなサーマルヘッドの平坦度の低下や発熱体の位置ずれは、孔版マスターに穿孔する際に一部が十分に穿孔されない原因となる。このような不十分な穿孔が発生すると、その孔版マスターを使用して印刷した画像に、掠れ、つまり、所謂「ボソツキ」が生じる元となる。
【0007】
また、孔版印刷装置には、通常、サーマルヘッドの全長に亘り孔版マスターを必要圧以上でサーマルヘッドに押圧するためのプラテンローラが設けられている。しかし、サーマルヘッドにうねりや湾曲が生じた場合には、プラテンローラによる押圧力に偏りが生じ、これもボソツキや画像の歪みの原因となる。
【0008】
この問題を解決するために、例えば、特許文献1や特許文献2に開示された技術がある。特許文献1に開示された技術では、プラテンローラをサーマルヘッド側へ圧接するバックアップローラを設けるとともに、このバックアップローラを、プラテンローラの回転軸に対し平行で、且つ回転軸中心に対し紙送り方向へ位置ずれさせて配備している。一方、特許文献2に開示された技術では、サーマルヘッドに対して、バネ部材を押圧することで、サーマルヘッドをプラテンローラに押しつけるプラテンローラ押圧装置であって、特に、バネ部材がプラテンローラの中央部となる位置に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−000537号公報
【特許文献2】特開2007−216440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、例えばA2サイズの印刷用紙に対する印刷が可能な大型用紙対応の孔版印刷装置に設けられる長尺サーマルヘッドでは、「うねり」や湾曲の分布がサーマルヘッドの長手方向において大きくばらつく。このため、上述したプラテンローラの全体に対する画一的な加圧では、長尺サーマルヘッドの場合に印刷画像の「ボソツキ」を解消するのに適した加圧ができない。
【0011】
そこで、本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、列状に配置された発熱体を画像信号に応じて発熱させて穿孔パターンを形成するサーマルヘッドにおいて、うねりにより平坦度が低下したり、湾曲により発熱体に位置ずれが生じた場合の、穿孔状態のばらつきによる印刷画像の画質低下を解消することができる、プラテンローラの加圧制御システムを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した本発明のプラテンローラの加圧制御システムは、
列状に複数の発熱体を有し、これらの発熱体を画像信号に応じて発熱させて、前記画像信号に応じた穿孔パターンを形成するサーマルヘッドに圧接されるプラテンローラの加圧制御システムであって、
前記プラテンローラを前記サーマルヘッド側に、前記プラテンローラの軸方向に分割された領域毎に押圧力を変化可能に押圧する可変加圧機構と、
前記サーマルヘッドにより実際に形成された穿孔パターンを実穿孔パターンとして取得し、前記画像信号による理論上の穿孔パターンを理論穿孔パターンとして算出し、前記実穿孔パターンと前記理論穿孔パターンとで穿孔パターンを比較する形成結果確認手段と、
前記形成結果確認手段による比較結果に基づいて、前記可変加圧機構による押圧力を前記領域毎に制御する押圧制御部と
を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載した本発明のプラテンローラの加圧制御システムは、請求項1に記載した本発明のプラテンローラの加圧制御システムにおいて、前記形成結果確認手段は、前記サーマルヘッドの発熱により感熱紙に印字した印字結果を画像データとして読み取る印字読取手段を有し、前記印字読取手段により読み取られた画像データを前記実穿孔パターンとして取得することを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載した本発明のプラテンローラの加圧制御システムは、請求項1又は2に記載した本発明のプラテンローラの加圧制御システムにおいて、前記形成結果確認手段は、前記穿孔パターンの比較に際し、印字の濃度差及び印字の変位量のうち少なくとも一方を比較することを特徴とする。
【0015】
なお、
列状に複数の発熱体を有し、これらの発熱体を画像信号に応じて発熱させて、前記画像信号に応じた穿孔パターンを形成するサーマルヘッドに圧接されるプラテンローラの加圧制御方法であって、
前記サーマルヘッドにより実際に形成された穿孔パターンを実穿孔パターンとして取得するとともに、前記画像信号による理論上の穿孔パターンを理論穿孔パターンとして算出する穿孔パターン取得ステップと、
前記実穿孔パターンと前記理論穿孔パターンとで穿孔パターンを比較する形成結果確認ステップと、
前記形成結果確認ステップによる比較結果に基づいて、前記プラテンローラの前記サーマルヘッド側への押圧力を、前記プラテンローラの軸方向に分割された領域毎に決定する領域別押圧力決定ステップと、
前記領域別押圧力決定ステップで決定した押圧力で、前記プラテンローラの対応する領域を前記サーマルヘッド側にそれぞれ押圧させる押圧ステップと
を備えることを特徴とするプラテンローラの加圧制御方法とすることもできる。
【0016】
また、上述したプラテンローラの加圧制御方法の変形例として、
前記形成結果確認ステップは、
前記サーマルヘッドの発熱により感熱紙に印字する印字ステップと、
前記印字手段による印字結果を画像データとして読み取る印字読取ステップと
を有し、
前記形成結果確認ステップでは、前記印字読取手段により読み取られた画像データを前記実穿孔パターンとして取得し、前記穿孔パターンの比較を行う
ことを特徴とするものとしてもよい。
【0017】
また、上述したプラテンローラの加圧制御方法やその変形例のさらなる変形例として、前記形成結果確認ステップでは、前記穿孔パターンの比較に際し、印字の濃度差及び印字の変位量のうち少なくとも一方を比較することを特徴とするものとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載した本発明のプラテンローラの加圧制御システムと、上述したプラテンローラの加圧制御方法によれば、プラテンローラをサーマルヘッド側へ押圧することにより、プラテンローラの撓みを解消できる。また、プラテンローラに対して、軸方向に分割された領域毎に押圧力を変化させることにより、サーマルヘッドの平坦度並びに副走査方向(孔版マスターの搬送方向)における湾曲量に応じて、プラテンローラのサーマルヘッド側への加圧量を可変とすることができる。したがって、サーマルヘッドの微細なうねり(平坦度低下)によるボソツキ、又はサーマルヘッドの副走査方向における湾曲による画像の歪みを低減した印字が可能となる。
【0019】
また、画像信号による理論上の穿孔パターンを理論穿孔パターンと、実際に形成された穿孔パターンとを比較することで、サーマルヘッドのうねりや湾曲によるボソツキや穿孔位置のずれ量を測定し、実際の印刷処理に際し、ボソツキや穿孔位置のずれ量に応じて、プラテンローラのサーマルヘッド側への押圧力を調整することができる。このため、印字のボソツキや歪みを解消し、画像信号に合致した正確な印刷物を取得することができる。
【0020】
また、請求項2に記載した本発明のプラテンローラの加圧制御システムと、変形例に係るプラテンローラの加圧制御方法によれば、サーマルヘッドによって実際に印字された感熱紙に基づいて、印字結果を画像データとして読み取るので、サーマルヘッドのうねりや湾曲による印字のボソツキや、穿孔の位置のずれ量をより正確に把握することができ、プラテンローラのサーマルヘッド側への押圧を精度よく制御することができる。
【0021】
また、請求項3に記載した本発明のプラテンローラの加圧制御システムと、さらなる変形例に係るプラテンローラの加圧制御方法によれば、印字の濃度差により画像のボソツキを測定することができるとともに、印字の変位量(ずれ量)によりサーマルヘッドの副走査方向における湾曲量を測定することができる。そして、サーマルヘッドの副走査方向における湾曲量とニップ幅(プラテンローラの孔版マスターに対する圧接幅)の変化量との相関から、ニップ幅の変化を推定し、ニップ幅の偏りとボソツキの発生率との相関から可変加圧機構の駆動量を調節することができる。これにより、上記サーマルヘッドの平坦度の低下を原因とするボソツキと併せて、ニップ幅の偏りを原因とするボソツキも解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る孔版印刷装置の内部構成を示す概略断面図である。
【図2】図1の孔版印刷装置における製版機構の内部構成を示す概略図である。
【図3】(a)は図2のサーマルヘッドユニットを示す側面図、(b)は(a)のサーマルヘッドを模式的に示す平面図である。
【図4】図2の補助ローラを用いたプラテンローラの可変加圧機構の構造を模式的に示す説明図である。
【図5】(a)は図4の可変加圧機構の減圧時における動作を示す説明図であり、(b)は加圧時における動作を示す説明図である。
【図6】図5(b)の可変加圧機構の駆動制御に係るモジュールを示す機能ブロック図である。
【図7】(a)は湾曲したサーマルヘッドに孔版マスターを圧接させるプラテンローラの孔版マスターに対するサーマルヘッド中央部分におけるニップ幅を示す説明図、(b)は同じく湾曲したサーマルヘッド両端部分におけるニップ幅を示す説明図、(c)は補助ローラでプラテンローラを加圧することにより補正されたサーマルヘッド中央部分におけるニップ幅を示す説明図、(d)はサーマルヘッドの湾曲方向とその湾曲による穿孔の位置ずれによって形成される画像の形状を示す説明図である。
【図8】(a)は図2のサーマルヘッドに生じたうねりを示すグラフ、(b)は(a)のうねりにより平坦度が低下した図2のサーマルヘッドで穿孔した孔版マスターを用いた印刷画像に生じるボソツキを示す説明図、(c)はボソツキの発生を検出する際のサーマルヘッドのブロックの分割領域を示す説明図である。
【図9】(a),(b)は図6の印字読取部で読み取った実穿孔パターンの説明図、(c)は理論穿孔パターンの説明図である。
【図10】図9の実穿孔パターンの色情報をA/D値で示すグラブである。
【図11】図2のサーマルヘッドの駆動制御の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る孔版印刷装置の実施形態について図面を参照しつつ、詳細に説明する。本実施形態では、本発明のプラテンローラの加圧制御システムを、孔版印刷装置の製版機構に適用した場合を例に説明する。なお、本実施形態では、本発明を孔版マスターの製版機構に適用した場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、この他、例えば、感熱式記録装置や熱転写記録装置など、配列した発熱抵抗体に電圧を印加して各発熱体を発熱させる全ての装置に適用することができる。
【0024】
(孔版印刷装置の全体構成)
図1は、本実施形態に係る孔版印刷装置の内部構成を示す概略断面図であり、図2は、図1の孔版印刷装置における製版機構の内部構成を示す概略図である。図1において、孔版印刷装置1は、原稿読取機構2と、製版機構3と、印刷機構4と、給紙機構5と、排紙機構6と、排版機構7と、これらの各機構を制御する演算処理部300とから概略構成されている。
【0025】
印刷機構4は、版胴16及びプレスローラ17を有し、この版胴16及びプレスローラ17は互いの外周面の一部を略近接させてそれぞれ回転自在に設けられている。版胴16の外周面には原紙クランプ部18が設けられ、この原紙クランプ部18で、感熱性孔版マスターの先端を把持する。また、版胴16の内周面には、プレスローラ17の対向する位置にアウタープレス機構のスキージローラ47が設けられている。また、版胴16の外周面には、無数の孔が形成された開口面(有効印面)が形成され、この開口面を通じて、版胴16の内部から、外部にインクが供給される。なお、版胴16の外周面には、孔版マスターロール10から繰り出された孔版マスター15が巻装され、外周面の開口部と孔版マスター15の間に供給されたインクのうち、孔版マスター15の穿孔面からのみ、インクが外部に供給されることになる。
【0026】
給紙機構5は、印刷媒体である印刷用紙22が複数枚積層される給紙台23と、この給紙台23から最上位置の印刷用紙22に圧接するスクレーパ24と、スクレーパ24の下流に配置され、かつ、スクレーパ24と互いに略近接状態で位置するピックアップローラ25とを有する。また、給紙機構5は、ピックアップローラ25の下流に配置され、かつ、互いに略近接状態で位置するガイドローラ27及びタイミングローラ28を有する。給紙台23より給紙される印刷用紙22はスクレーパ24によって引き出され、ピックアップローラ25に送り出される。
【0027】
排紙機構6は、印刷が完了した印刷用紙22を版胴16から剥ぎ取る用紙剥取爪32と、剥ぎ取られた印刷用紙22を搬送する用紙搬送機構33と、この用紙搬送機構33によって搬送されてきた印刷用紙22を積層状態で載置するスタッカ部34とを有する。
【0028】
排版機構7は、版胴16の原紙クランプ部18から解放された孔版マスター15の前端を導く排版誘導ベルト35と、この排版誘導ベルト35より導かれた孔版マスター15を版胴16から引き剥がしながら巻き取って回収する排版ローラ36と、孔版マスター15の着版時に、孔版マスター15が排版ローラ36に接触するのを防ぐ汚染防止ガイド38と、排版ローラ36によって回収される孔版マスター15を収納する排版ボックス37とを有する。
【0029】
原稿読取機構2は、スキャナーなど、原稿をレンズやCCD等によって光学的に読み取り、電気信号として出力する機構である。この読み取った情報は所定の指令(拡大、縮小等)に基づいて加工され、製版機構3に送出される。
【0030】
製版機構3は、原稿読取機構2で読み取った電気信号に基づいて長尺状の孔版マスター15に対して製版を行う製版手段である。製版機構3は、ロールに巻かれた孔版マスター15の搬送方向の下流に配置されたサーマルヘッドユニット12と、このサーマルヘッドユニット12と対向配置されたプラテンローラ13とを有する。また、製版機構3は、孔版マスター15の搬送方向の下流に配置された、孔版マスター15を所定の長さに切断するカッタ14と、溜込ローラ41と、孔版マスター15を所定位置まで搬送するロードローラ42と、着版ローラ43とを有する。
【0031】
特に、本実施形態では、プラテンローラ13をサーマルヘッド70側へ押圧する補助ローラ44を含み、この補助ローラ44のプラテンローラ13に対する押圧力を、プラテンローラの軸方向に分割された領域毎に変化させる可変加圧機構71が設けられている。
【0032】
本実施形態に係る製版機構3の下流箇所には、図2に示すように、印字読取部90が設けられている。この印字読取部90は、孔版マスター15に代えて供給された感熱紙に対し製版機構3によって印字された印字結果を、画像データとして読み取る装置である。本実施形態の印字読取部90は、印字された感熱紙の原稿に光をあて、その光の強弱をCMOS撮像素子などのイメージセンサを使って検出するCIS(Contact Image Sensor)方式を用いて、感熱紙から画像データを取得している。なお、印字読取部90は、画像情報を取得することができればよく、例えば、CCD(Charge Coupled Devices)方式を用いてもよい。
【0033】
演算処理部300は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、或いはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成された演算装置である。演算処理部300は、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、構築された各機能手段によって、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザー操作に対する種々の処理を行う。
【0034】
(サーマルヘッドユニットの構成)
図3(a)は、図2のサーマルヘッドユニット12を示す側面図であり、図3(b)は、図3(a)のサーマルヘッドを模式的に示す平面図である。
【0035】
図3(a)に示すように、上記製版機構3においてサーマルヘッドユニット12は、サーマルヘッド70を備え、このサーマルヘッド70の各発熱体を画像信号に応じて発熱させて、孔版マスター15に対して穿孔し、画像信号に応じた穿孔パターンを形成する。なお、本実施形態において、このサーマルヘッド70は、感熱紙を装填することで、サーマルヘッドの発熱により感熱紙に対して印字を行う印字手段としても機能する。
【0036】
また、サーマルヘッドユニット12は、基板20を備えている。基板20の下面側には、アルミ放熱板121及びコネクタ122が取り付けられている。基板20の上面側には、ICカバー123がナット124によって取り付けられている。基板20の上部には、サーマルヘッド70が形成されている。図3(b)に示すように、サーマルヘッド70は、アルミナセラミックスからなる絶縁性の基板本体66を基部として有しており、この基板本体上表面が、ガラス製のグレーズで被覆されている。
【0037】
また、これら多数の発熱体721〜72nによって、主走査方向に延設される列状の発熱体72が構成される。各発熱体721〜72nの副走査方向における両側には、アルミニウム等からなる導電層64a、64bが、それぞれ各発熱体721〜72nと電気的に接続するように、グレーズ上に成膜されている。更に、サーマルヘッド70では、発熱体721〜72nと、各導電層64a、64bとを、一括して覆うように保護層が形成されている。更に、発熱体72の両端には、コモン電極部65,65が配置されている。
【0038】
発熱体721〜72nは、図3(b)に示すように、サーマルヘッド70の長さ方向に、所定の間隔で配列され、選択的に電圧がかけられ、個々に発熱が制御される。導電層64a、64bは、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)などの金属、又はこれらを主成分とした合金或いはこれら金属や合金の積層体から成っている。最上層の保護層58は、コモン電極部65、65や導電層64a、64b、発熱体72を覆うように、成膜されている。
【0039】
(可変加圧機構)
上記可変加圧機構71について詳述する。図4に示すように、可変加圧機構71は、上述した補助ローラ44の他、駆動源であるパルスモータ711と、パルスモータ711からの駆動力を伝達する伝達部712と、伝達部712からの駆動力を回転板714の回転力に変換するギアボックス713とを備えている。また、可変加圧機構71は、回転板714の回転力により、一定の弾性力をもって上下動される加圧バネ715と、支点717を中心とした回転モーメントにより、加圧バネ715の上下動を上下動部718a〜718cに伝達する加圧レバー716と、上下動部718a〜718cにより上下され、スプリング46を介して補助ローラ44に押圧される押圧部45とを備えている。
【0040】
この可変加圧機構71は、図5(a)及び(b)に示すように、補助ローラ44のプラテンローラ13に対する押圧力を、プラテンローラ13の軸方向に分割された領域A〜C毎に変化させるように、それぞれの領域に対応して設けられている。すなわち、押圧部45は、それぞれ45a〜45cというように、3つの領域A〜Cに対応させて設けられており、各押圧部45a〜45cは、それぞれ独立して駆動制御される上下部718a〜718cにより、スプリング46a〜46cを介して、上下動され、補助ローラ44の各部位を押圧するようになっている。なお、本実施形態では、領域A〜Cの3つに区分し、それぞれに可変加圧機構71を設置したが、区分の数は3以上でも3以下でもよく、可変加圧機構71の数も、その区分数に応じて増減することができる。
【0041】
そして、可変加圧機構71では、駆動源であるパルスモータ711が駆動すると、その駆動力が伝達部712を介して、ギアボックス713により回転板714の回転力に変換される。この回転板714の回転駆動も、各領域に対応したそれぞれの可変加圧機構71で行われ、この各回転板714の回転力によって加圧レバー716が、支点717を中心として回転され、その回転モーメントにより上下動部718a〜cがそれぞれ上下され、その上昇力により、押圧部45a〜45cが、領域A〜Cのそれぞれにおいて、補助ローラ44の各部位に対して押圧される。
【0042】
(加圧制御機構)
上記可変加圧機構71によるプラテンローラ13の加圧制御は、上記演算処理部300によって実行される。図6は、上記可変加圧機構71の加圧制御に係るモジュールを示す機能ブロック図である。なお、説明中で用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組合せなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
【0043】
図6に示すように、演算処理部300は、可変加圧機構71によるプラテンローラ13の加圧制御に関するモジュールとして、駆動制御データ生成部320と、穿孔制御部310とを備えている。
【0044】
駆動制御データ生成部320は、可変加圧機構71の補助ローラ44がプラテンローラ13を加圧するように駆動制御するための駆動制御データを生成するモジュールであり、画像処理部322と、形成結果確認部321と、データ処理部323とを備えている。なお、本実施形態において、駆動制御データ生成部320による駆動制御データの生成処理は、印刷用紙22に印字処理を行う前処理として実行される。
【0045】
画像処理部322は、印字読取部90から取得した画像データの電気信号をデジタルデータに変換するモジュールである。具体的には、画像処理部322は、製版機構3によって感熱紙に対して印字された印字結果を電気信号として取得し、この電気信号をA/Dコンバータでデジタルデータ(8bit)へ変換する。さらに、画像処理部322は、このデジタルデータに対して、濃度(照明)ムラのある画像からムラを除く処理であるシェーディング補正を行う。その後、画像処理部322は、1bitの画像データに変換して、サーマルヘッド70により実際に形成された穿孔パターンを実穿孔パターンとして算出して、その穿孔パターンを形成結果確認部321に送信する。
【0046】
形成結果確認部321は、実穿孔パターンを、印字読取部90から画像処理部322を通じて取得するとともに、画像信号による理論上の穿孔パターンを理論穿孔パターンとして算出し、実穿孔パターンと理論穿孔パターンとを比較するモジュールである。この理論穿孔パターンとしては、原稿読取機構2や外部インターフェース83から送信された画像信号に基づく画像データや、予め孔版印刷装置1内に記憶された画像データを用いることができる。そして、この領域毎の比較結果の情報は、データ処理部323に送信される。
【0047】
データ処理部323は、形成結果確認部321による比較結果に基づいて、駆動制御データを算出したり、これらのデータに対してデジタル化等の処理を施すモジュールである。この駆動制御データは、算出された領域毎の濃度差が低減するように、可変加圧機構71の駆動量やタイミングを制御するデータである。データ処理部323は、生成した駆動制御データを穿孔制御部310側に送出され、駆動制御データ記憶部313に記録される。
【0048】
特に、データ処理部323は、サーマルヘッド70の副走査方向(孔版マスター18の搬送方向)における湾曲量と、プラテンローラ13の孔版マスター18に対する圧接幅(ニップ幅)の変化量との相関を記録したテーブルデータを備えており、サーマルヘッド70の副走査方向における湾曲を測定することでニップ幅の変化を求めることができる。また、データ処理部323は、ニップ幅の偏り及びボソツキの発生率と可変加圧機構71の駆動量との相関を記録したテーブルデータも有している。
【0049】
以下、サーマルヘッド70が孔版マスター18の搬送方向(副走査方向)に湾曲している場合の、孔版マスター18に対するプラテンローラ13の圧接状態について、図7を参照して説明する。
【0050】
図7(a)は孔版マスター18の搬送方向の上流側に向けて凸に湾曲(サーマルヘッド70の副走査方向の上流側に湾曲)したサーマルヘッド70に孔版マスター18を圧接させるプラテンローラ13の、孔版マスター18に対するサーマルヘッド70の中央部分におけるニップ幅を示す説明図である。図7(b)は同じくサーマルヘッド70の両端部分におけるニップ幅を示す説明図である。図7(c)は補助ローラ44でプラテンローラ13を加圧することにより補正されたサーマルヘッド70の中央部分におけるニップ幅を示す説明図である。図7(d)はサーマルヘッド70の副走査方向における湾曲とその湾曲による穿孔の位置ずれによって形成される画像の形状を示す説明図である。
【0051】
例えば、図7(d)に示すように、サーマルヘッド70が副走査方向における湾曲によって、孔版マスター18の搬送方向の上流側に向けて凸に湾曲(サーマルヘッド70の副走査方向の上流側に湾曲)している場合は、プラテンローラ13とサーマルヘッド70との距離Dが、部位によって異なってくる。このため、プラテンローラ13による有効なニップ幅も部位によってずれたり、幅が拡縮したりする。
【0052】
具体的には、サーマルヘッド70の発熱体の位置を基準にしたプラテンローラ13の孔版マスター18に対する圧接範囲(図7中の「有効ニップ幅」)が、図7(b)に示すサーマルヘッド70の両端部分と比較すると、図7(a)に示すサーマルヘッド70の中央部分では、搬送方向の下流側(サーマルヘッド70の副走査方向の下流側)にシフトしている。このため、サーマルヘッド70の中央部分では、搬送方向の上流側(サーマルヘッド70の副走査方向の上流側)に十分な有効ニップ幅を確保できない。これにより、この部分の孔版マスター18に形成された穿孔によって印刷した画像にボソツキ(画像の掠れ)が生じてしまう。
【0053】
そこで、データ処理部323は、上記テーブルデータを参照することにより、形成結果確認部321による比較結果に基づいて、ボソツキの発生率や、サーマルヘッド70の副走査方向における湾曲量を算出するとともに、サーマルヘッド70の副走査方向における湾曲によるプラテンローラ13のニップ幅の偏りを推定し、ニップ幅の偏りとボソツキの発生率との相関から可変加圧機構71の駆動量を算出する。この駆動量は、領域A〜C毎に算出され、各領域の可変加圧機構71に対する駆動制御データに記述される。この駆動制御データにより、プラテンローラ13の孔版マスター18に対する圧接範囲(有効ニップ幅)が、図7(c)に示すように、搬送方向の上流側(サーマルヘッド70の副走査方向の上流側)にシフトした適正な範囲に補正される。
【0054】
ここで、画像処理部322における実穿孔パターンの取得について詳述する。なお、ここでは、サーマルヘッド幅が大きく、それにより、図8(a)に示すように平坦度が低く(凸度が高く)なって、図中に点線で示した箇所に微細うねりが発生しているものとする。このサーマルヘッド70の微細うねりにより、図8(b)に示すように、部分的にボソツキが生じている。本実施形態では、このボソツキを実穿孔パターンとして取得する。
【0055】
具体的には、画像処理部322は、図8(c)に示すように、ボソツキの検出に関し、孔版マスター18の搬送方向(サーマルヘッド70の副走査方向)と直交する主走査方向にサーマルヘッド70による穿孔領域を3分割して領域A〜Cとし、印字読取部90で読み取った画像データを、各領域毎に分割して実穿孔パターンとして取得する。そして、この実穿孔パターンを形成結果確認部321に送信する。
【0056】
本実施形態では、予め孔版印刷装置1内に記憶された画像信号を、理論穿孔パターンとして用いており、ここでは、約10ラインのベタ印字とする。このベタ印字によりボソツキと、サーマルヘッド70の副走査方向における湾曲を検出する。形成結果確認部321では、理論穿孔パターンと比較して、ボソツキを検出するために、実穿孔パターンにおける領域A〜C毎の濃度差を算出するとともに、サーマルヘッド70の副走査方向における湾曲を検出するために、実穿孔パターンの歪みを算出する。
【0057】
ここで、ボソツキの検出における印字濃度差については、実穿孔パターンの各画素における濃度と、理論穿孔パターンの各画素における濃度とを比較し、それぞれの濃度差を算出し、画像全体における濃度差の分布を測定し、ボソツキの発生率を領域A〜C毎に算出する。
【0058】
一方、サーマルヘッド70の副走査方向における湾曲の検出における実穿孔パターンの歪みの算出は、主走査方向に分割したブロック毎に、形成結果確認部321が実穿孔パターンと理論穿孔パターンとを比較して、搬送方向における画素位置のずれを測定することにより行う。
【0059】
ここで、形成結果確認部321における実穿孔パターンと理論穿孔パターンとの比較について詳述する。
【0060】
図9(a)は、サーマルヘッド70が搬送方向の下流側に向けて凸に湾曲(サーマルヘッド70の副走査方向の下流側に湾曲)している場合の印字読取部90で読み取った実穿孔パターンの説明図であり、同(b)は、サーマルヘッド70が搬送方向の上流側に向けて凸に湾曲(サーマルヘッド70の副走査方向の上流側に湾曲)している場合の印字読取部90で読み取った実穿孔パターンの説明図であり、同(c)は、実穿孔パターンと穿孔パターンを比較する理論穿孔パターンの説明図である。また、図10は、図9の実穿孔パターンの色情報をA/D値(印字読取部90で取得したアナログ値からデジタル変換した値)で示すグラブである。
【0061】
なお、図9に示すラインL1は、発熱体721〜72nの両端部分721,72nの発熱体を結んだ仮想線であり、このラインL1上を1ライン目とし、このライン1目よりも搬送方向の下流側のラインを2ライン目、3ライン目…と表記し、ライン1よりも搬送方向の上流側のラインをマイナス1ライン目、マイナス2ライン目…と表記する。
【0062】
実穿孔パターンと理論穿孔パターンの比較において、画像処理部322は、先ず、印字読取部90で読み取った画像データを、孔版マスター15の搬送方向(サーマルヘッド70の副走査方向)と直交する主走査方向に8分割して1ブロック〜8ブロックとする。さらに、画像処理部322は、ブロック毎に分割された画像データについて、1ドット分の長さ(約42.3μm)を1ラインとして10ライン分割し、最小単位ブロックとする。これにより、画像データは、図9に示すように、主走査方向に8ブロックで、且つ副走査方向に10ラインの最小単位ブロックに分割される。
【0063】
なお、主走査方向に8ブロック、副走査方向に10ラインという最小単位ブロックの分割数は、あくまで一例である。即ち、サーマルヘッド70の主走査方向及び副走査方向のそれぞれにおける最小単位ブロックの分割数は任意である。
【0064】
そして、画像処理部322は、同一ライン上にある各ブロックの特定位置のドット部分について画像データのA/D値を算出して、最小単位ブロックの画像データが白データか黒データかを判断する。なお、本実施形態では、図9に示すように、各ブロックの左端に位置するドット部分についてA/D値を算出する。ここで、A/D値は、図10に示すように白色の画像データは200前後のA/D値を示し、黒色の画像データは、50前後のA/D値を示すようになっている。
【0065】
画像処理部322は、搬送方向の上流側からライン毎に画像データのA/D値を算出する。ここで、先ず、サーマルヘッド70が搬送方向の下流側に向けて凸に湾曲(サーマルヘッド70の副走査方向の下側に湾曲)している場合について説明する。
【0066】
この場合、図9(a)に示すように、1ライン目については、1ブロック目は印字されている箇所であるため、A/D値は50前後となり、黒データであると判断される。一方、2ブロック目〜8ブロック目については、印字されていない箇所であるため、A/D値は200前後となり白データであると判断される。
【0067】
また、2ライン目については、1ブロック目と8ブロック目は印字されている箇所であるため、A/D値は50前後となり、黒データであると判断される。一方、2乃至7ブロック目は、印字されていない箇所であるため、A/D値は200前後となり白データであると判断される。
【0068】
また、3及び4ライン目については、1、2、7及び8ブロック目については、印字されている箇所であるため、A/D値は50前後となり、黒データであると判断される。一方、3乃至6ブロック目は、印字されていない箇所であるため、A/D値は200前後となり白データであると判断される。
【0069】
また、5ライン目では、1〜3及び6〜8ブロック目については、印字されている箇所であるため、A/D値は50前後となり、黒データであると判断される。一方、4及び5ブロック目は、印字されていない箇所であるため、A/D値は200前後となり白データであると判断される。6ライン目以降では、1ブロック目から8ブロック目は全て印字されている箇所であるため、A/D値は50前後となり、全て黒データであると判断される。
【0070】
次に、サーマルヘッド70が搬送方向の上流側に向けて凸に湾曲(サーマルヘッド70の副走査方向の上流側に湾曲)している場合について説明する。
【0071】
この場合、図9(b)に示すように、1ライン目以降では、1ブロック目から8ブロック目は全て印字されている箇所であるため、A/D値は50前後となり、全て黒データであると判断される。
【0072】
また、マイナス1ライン目については、2乃至7ブロック目は印字されている箇所であるため、A/D値は50前後となり、黒データであると判断される。一方、1ブロック目と8ブロック目は、印字されていない箇所であるため、A/D値は200前後となり白データであると判断される。
【0073】
また、マイナス2及び3ライン目については、3乃至6ブロック目については、印字されている箇所であるため、A/D値は50前後となり、黒データであると判断される。一方、1、2、7及び8ブロック目は、印字されていない箇所であるため、A/D値は200前後となり白データであると判断される。
【0074】
また、マイナス4及び5ライン目では、4及び5ブロック目については、印字されている箇所であるため、A/D値は50前後となり、黒データであると判断される。一方、1〜3及び6〜8ブロック目は、印字されていない箇所であるため、A/D値は200前後となり白データであると判断される。
【0075】
このように、画像処理部322は、ボソツキに関しては、領域A〜C毎に実穿孔パターンとするとともに、サーマルヘッド70の副走査方向における湾曲の検出に関しては、1〜8ブロックを最小単位ブロックに分けて、白データか黒データかを判断し、実際に形成された穿孔パターンを実穿孔パターンとして取得する。そして、この実穿孔パターンを形成結果確認部321に送信する。
【0076】
形成結果確認部321は、実穿孔パターンと理論穿孔パターンとを、領域やブロック毎に比較し、その比較結果に基づき、データ処理部323において、駆動制御データが生成される。
【0077】
上記穿孔制御部310は、可変加圧機構71、サーマルヘッド70及びその他の駆動回路30等を制御し、製版機構3を駆動させるモジュールである。この穿孔制御部310には、外部インターフェース83や操作パネル84のユーザーインターフェースが接続され、外部インターフェース83に接続された外部機器からの信号や、操作パネル84からのユーザー操作に基づく操作信号が入力される。さらに、この穿孔制御部310には、製版機構3の駆動回路30やサーマルヘッド70など、製版のための駆動を制御する制御信号が送出される。
【0078】
そして、特に、本実施形態において穿孔制御部310は、駆動制御データに基づいて可変加圧機構71によるプラテンローラ13に対する押圧を制御する機能を有しており、この押圧制御のためのモジュール群として、駆動制御データ記憶部313と、押圧制御部311aと、サーマルヘッド制御部312とを備えている。
【0079】
駆動制御データ記憶部313は、各種のデータを記憶するメモリ装置であり、画像データや、駆動制御データ生成部320によって生成された駆動制御データが記憶され、記憶された駆動制御データは、印刷時に読み出され、押圧制御部311aに入力される。
【0080】
押圧制御部311aは、形成結果確認部321による比較結果に基づいて、前記可変加圧機構71の動作を制御するモジュールであり、穿孔処理時に駆動制御データ記憶部313に記録された駆動制御データを呼び出し、これに基づいて、各領域A〜Cに対応する可変加圧機構71を駆動させる。
【0081】
サーマルヘッド制御部312は、入力された信号に基づいてサーマルヘッド70の穿孔処理タイミングを調整するモジュールであり、通電時間の制御の他、電圧や電流など通電量を制御する機能も備えている。
【0082】
(サーマルヘッドの駆動制御方法)
次に、以上の構成によるサーマルヘッド70の駆動制御方法について説明する。図11は、本実施形態に係るサーマルヘッド70の駆動制御の動作を示すフローチャートである。なお、ここでも、理論穿孔パターンのデータは、予め孔版印刷装置1内に記憶されており、そのデータは約10ラインのベタ印字とした場合を例に説明する。
【0083】
(1)駆動制御データ生成
先ず、駆動制御データの生成時における動作について説明する。この駆動制御データの生成は、例えば、製品の工場出荷時や、定期的なメンテナンス時に行ってもよく、孔版印刷装置1の起動時や、製版処理の実行前に自動的に行ってもよい。
【0084】
駆動制御データの生成が開始されると、孔版印刷装置1の演算処理部300は、理論穿孔パターンを読み出して、サーマルヘッド制御部312に対し、製版処理を実行させる(S101)。このとき、サーマルヘッド制御部312は、駆動回路30を駆動して感熱紙を搬送するとともに、理論穿孔パターンの画像信号に応じて、サーマルヘッド70を駆動し、感熱紙に印字する各発熱体721〜72nを発熱させ、感熱紙に対して印字する(S102)。
【0085】
サーマルヘッド70によって実際に印字された感熱紙は印字読取部90まで搬送され、印字読取部90は、感熱紙に印字された印字結果を画像データとして読み取り、その画像信号を画像処理部322に送信する。画像処理部322は、受け取った画像信号をデジタルデータへ変換するとともに、実穿孔パターンを算出する(S103)。この実穿孔パターンの情報は、形成結果確認部321に送信される。
【0086】
このようにして形成結果確認部321では、実穿孔パターンを取得する一方で、画像信号による理論上の穿孔パターンを理論穿孔パターンとして取得し、実穿孔パターンと理論穿孔パターンとを比較する(S104)。具体的には、形成結果確認部321は、領域A〜C毎に印字濃度の差を算出するとともに、1〜8ブロック毎に印字位置のずれを算出し、それらを比較結果としてデータ処理部323へ送信する。
【0087】
次いで、データ処理部323において、算出された領域毎の濃度差が低減するように、且つ、算出されたブロック毎のずれ量が所定の目標の位置となるように、可変加圧機構71の駆動量や、各押圧部45a〜45cによる補助ローラ44の押圧タイミングを算出し、その算出結果を駆動制御データとして生成する。この生成された駆動制御データは、駆動制御データ記憶部313に記憶される(S105)。
【0088】
(2)製版制御
次いで、製版制御時の動作について説明する。ここでは、駆動制御データ記憶部313に記憶された駆動制御データを用いて製版制御を行う場合を例に説明する。
【0089】
製版処理が実行されると、押圧制御部311aは駆動制御データ記憶部313から駆動制御データを呼び出すとともに(S201)、原稿読取機構2又は外部インターフェース83を通じて、入力された画像信号を取得する(S202)。そして、押圧制御部311aは、駆動制御データに基づいて可変加圧機構71の駆動を制御する(S203)。具体的には、各領域A〜C毎に、可変加圧機構71の駆動量やタイミングを制御し、補助ローラ44の各部位を押圧し、プラテンローラ13による印圧が一様になるようにする。
【0090】
これと併せて、サーマルヘッド制御部312は、サーマルヘッド70を駆動して、各発熱体721〜72nを画像信号に応じて発熱させて、孔版マスターに対して穿孔し、画像信号に応じた穿孔パターンを形成する(S204)。なお、本実施形態では、製版動作の終了後、可変加圧機構71による押圧力は減少させるが、補助ローラ44やプラテンローラ13の変形を防止するため、常圧状態とはしない。
【0091】
(作用・効果)
本実施形態によれば、プラテンローラ13をサーマルヘッド70側へ押圧する補助ローラ44に対して、軸方向に分割された領域A〜C毎に押圧力を変化させる可変加圧機構71を設けることにより、サーマルヘッド70の平坦度や、サーマルヘッド70の副走査方向における湾曲量に応じて、補助ローラ44に対する加圧量を可変とすることができる。これにより、プラテンローラ13によって孔版マスター18がサーマルヘッド70側に押圧される際の押圧力が孔版マスター18の幅方向においてばらつくのを解消することができる。よって、サーマルヘッド70の微細なうねりの発生(平坦度の低下)によるボソツキ、又はサーマルヘッド70の副走査方向における湾曲による孔版マスター18の不完全穿孔に起因するボソツキを低減した印字が可能となる。
【0092】
特に、本実施形態では、サーマルヘッド70の副走査方向における湾曲とニップ幅の変化量との相関を記録したテーブルデータを参照し、サーマルヘッド70のサーマルヘッド70の副走査方向における湾曲を測定することでニップ幅の変化を推定することができる。これにより、ニップ幅の偏りとボソツキの発生率との相関から可変加圧機構71の駆動量を調節することができ、ニップ幅の偏りを原因とするボソツキも解消することができる。
【0093】
また、本実施形態では、サーマルヘッド70により感熱紙に印字した印字結果を印字読取部90で読み取り、その印字結果を実穿孔パターンとして、理論穿孔パターンとの比較を行うので、インクを用いて印字処理して形成された画像データと比べて、サーマルヘッド70のうねりや湾曲による画像の劣化を正確に把握することができる。これにより、補助ローラによる押圧力を精度よく調整でき、印字のボソツキや歪みを解消し、画像信号に合致した正確な印刷物を取得することができる。
【0094】
なお、本実施形態では、サーマルヘッド70の微細なうねりの発生(平坦度の低下)によるボソツキと、サーマルヘッド70の副走査方向における湾曲による孔版マスター18の不完全穿孔に起因するボソツキとを、両方解消する構成とした。しかし、どちらか一方のみを解消する構成としてもよい。
【0095】
(変更例)
ちなみに、上述した実施形態では、駆動制御データの作成を、孔版印刷装置1の駆動制御データ生成部320が行ったが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば、孔版印刷装置1と接続された駆動制御データ生成装置が行ってもよい。
【0096】
駆動制御データ生成装置は、CPUやDSP等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、或いはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成された演算処理装置であり、孔版印刷装置1の製造時や工場出荷前、メンテナンス時などに一時的に孔版印刷装置1に対して接続される。この駆動制御データ生成装置は、駆動制御データ生成部320と同様の機能を有しており、サーマルヘッド70の発熱により感熱紙に印字した画像を印字読取部90で読み取り、読み取られた画像データを実穿孔パターンとして取得する。そして、実穿孔パターンと理論穿孔パターンを比較することで、各ブロックにおける穿孔位置のずれ量である駆動制御データを算出する。そして、生成した駆動制御データを、外部インターフェース83を介して駆動制御データ記憶部313に送信する。
【0097】
また、上述した実施形態では、サーマルヘッド70のうねりや副走査方向における湾曲の存在を反映した孔版マスター15の実穿孔パターンを取得するために、孔版マスター15に代えて供給した感熱紙に対しサーマルヘッド70によって印字した結果を、印字読取部90で読み取る構成とした。
【0098】
しかし、実穿孔パターンの取得方法は任意であり、印字読取部90を省略することもできる。また、実穿孔パターンを、印字読取部90等を用いて必要な都度取得する代わりに、予めデータ化して、サーマルヘッド70に固有のラベル値としてメモリ等に記憶させておき、必要に応じて読み出して使用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 孔版印刷装置
2 原稿読取機構
3 製版機構
4 印刷機構
5 給紙機構
6 排紙機構
7 排版機構
10 孔版マスターロール
12 サーマルヘッドユニット
13 プラテンローラ
14 カッタ
15 孔版マスター
16 版胴
17 プレスローラ
18 原紙クランプ部
20 基板
22 印刷用紙
23 給紙台
24 スクレーパ
25 ピックアップローラ
27 ガイドローラ
28 タイミングローラ
30 駆動回路
32 用紙剥取爪
33 用紙搬送機構
34 スタッカ部
35 排版誘導ベルト
36 排版ローラ
37 排版ボックス
38 汚染防止ガイド
41 溜込ローラ
42 ロードローラ
43 着版ローラ
44 補助ローラ
45a〜45c 押圧部
46a〜46c スプリング
47 スキージローラ
58 保護層
64a,64b 導電層
65 コモン電極部
66 基板本体
70 サーマルヘッド
71 可変加圧機構
72(721〜72n) 発熱体
83 外部インターフェース
84 操作パネル
90 印字読取部
110 ヘッドユニット
121 アルミ放熱板
122 コネクタ
123 ICカバー
124 ナット
160 搬送ベルト
300 演算処理部
310 穿孔制御部
311 補正制御部
311a 押圧制御部
311b 印字補正制御部
312 サーマルヘッド制御部
313 駆動制御データ記憶部
320 駆動制御データ生成部
321 形成結果確認部
322 画像処理部
323 データ処理部
711 パルスモータ
712 伝達部
713 ギアボックス
714 回転板
715 加圧バネ
716 加圧レバー
717 支点
718a〜718c 上下動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列状に複数の発熱体を有し、これらの発熱体を画像信号に応じて発熱させて、前記画像信号に応じた穿孔パターンを形成するサーマルヘッドに圧接されるプラテンローラの加圧制御システムであって、
前記プラテンローラを前記サーマルヘッド側に、前記プラテンローラの軸方向に分割された領域毎に押圧力を変化可能に押圧する可変加圧機構と、
前記サーマルヘッドにより実際に形成された穿孔パターンを実穿孔パターンとして取得し、前記画像信号による理論上の穿孔パターンを理論穿孔パターンとして算出し、前記実穿孔パターンと前記理論穿孔パターンとで穿孔パターンを比較する形成結果確認手段と、
前記形成結果確認手段による比較結果に基づいて、前記可変加圧機構による押圧力を前記領域毎に制御する押圧制御部と
を備えることを特徴とするプラテンローラの加圧制御システム。
【請求項2】
前記形成結果確認手段は、前記サーマルヘッドの発熱により感熱紙に印字した印字結果を画像データとして読み取る印字読取手段を有し、前記印字読取手段により読み取られた画像データを前記実穿孔パターンとして取得することを特徴とする請求項1に記載のプラテンローラの加圧制御システム。
【請求項3】
前記形成結果確認手段は、前記穿孔パターンの比較に際し、印字の濃度差及び印字の変位量のうち少なくとも一方を比較することを特徴とする請求項1又は2に記載のプラテンローラの加圧制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−14013(P2013−14013A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146347(P2011−146347)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】