説明

プラテン保持機構および記録ユニット

【課題】プラテンが筐体の外部に露出されない構成と、露出される構成のいずれの記録装置にも共通に用いることができる、汎用的なプラテン保持機構を提供する。
【解決手段】プラテンローラ2の軸部2aが、プラテンフレーム5の長穴状の凹部5a内に移動可能に挿入されている。この軸部2aに対する係合部9bを有するリリースアーム9が揺動可能に設けられ、ばね部材10に付勢されている。スイッチ11が、リリースアーム9に接離可能な切片11aを有している。サーマルヘッド1がばね部材4のばね力に抗して移動させられると、ばね部材10がリリースアーム9をサーマルヘッド1に追随して揺動させ、軸部2aを凹部5a内で移動させる。リリースアーム9の移動をスイッチ11が検知すると、サーマルヘッド1とプラテンローラ2が離れているとして記録不可と判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドに接する位置で用いられるプラテンの保持機構と、それを含む記録ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筐体内部に、記録ヘッドとそれに接するローラ状のプラテン(プラテンローラ)とを有し、プラテンローラによって搬送される記録媒体(シート材)に対して記録ヘッドが記録を行う記録装置がある。一般に、記録ヘッドとプラテンローラは互いに接触する状態で固定され、記録時には、この記録ヘッドとプラテンローラの間に記録媒体を挿通して、プラテンローラの回転によって記録媒体を搬送しつつ記録ヘッドにより記録する。このような記録装置において、記録ヘッドとプラテンローラとの間に記録媒体を挿入してセットする作業や、記録ヘッドとプラテンローラの間で記録媒体のジャム(いわゆる紙詰まり)が生じた際に、それを解消するための作業や、記録ヘッドおよび/またはプラテンローラの交換やメンテナンスの作業を行う場合に、筐体内部で記録ヘッドとプラテンローラが当接したままの状態では操作が非常に困難である。そこで、プラテンローラと記録ヘッドを引き離すこととともに、いずれかを筐体外部に露出させる構成が存在する。
【0003】
特許文献1に記載の構成では、筐体内に配置されている記録ヘッドが揺動してプラテンローラから離れることが可能である。プラテンローラは筐体内でほとんど移動しない。
【0004】
これに対し、記録ヘッドは複数の記録素子(例えば発熱素子)を有しており、各記録素子を選択的に駆動するための記録信号が入力される電気接続の信頼性を損なわないように、筐体内にほぼ固定されているのが好ましいと考えられる。従って、記録ヘッドを筐体内にほぼ固定したままで、プラテンローラを記録ヘッドから引き離して外部に引き出す構成も存在する。例えば、フレームに、外部に向けてスリット状に切り欠いた切り欠き部を設け、その切り欠き部内にプラテンローラの軸部(被保持部)を保持することによって位置決めを行う構成がある。この場合、切り欠き部の外部への開口部分がプラテンローラの出入口になる。この構成は、プラテンローラが着脱可能であるという利点を有する一方、意図しないときにプラテンローラが切り欠き部から脱出しないように、かつ、記録時にはプラテンローラが記録ヘッドに対して所定の圧力で当接するように所定の保持位置にしっかりと保持するための機構が必要になる。
【0005】
意図しないときにプラテンローラが切り欠き部から脱出しないようにする機構としては、プラテンローラの軸部を、周囲から取り囲む部材によって切り欠き部内に保持する構成、すなわち、切り欠き部の開口部分(プラテンローラの出入口部分)の少なくとも一部を塞いで、プラテンローラの軸部が切り欠き部内から脱出するのを妨げる構成がある。切り欠き部の開口部分を塞ぐ部材が記録ヘッドのみである場合(特許文献2)や、記録ヘッドに加えて、プラテンローラの軸部を保持するための専用のロックアームが用いられる場合(特許文献3)がある。このような構成では、プラテンローラの軸部を取り囲む部材(記録ヘッドやロックアーム)を移動させることによって、切り欠き部の開口部分が開放されて、プラテンローラの着脱が可能になる。
【特許文献1】特開平10−119326号公報
【特許文献2】特表平8−505576号公報
【特許文献3】特開2000−318260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2,3に記載の構成は、記録ヘッドを筐体内でほぼ固定したままで、プラテンフレームを移動させてプラテンローラを筐体外部に露出させることができる。従って、記録媒体のセット、記録媒体のジャムの解消、記録ヘッドおよび/またはプラテンローラの交換やメンテナンス等の作業が容易に行えるという利点がある。しかし、構成の複雑化が避けられない。また、プラテンローラおよびプラテンフレームの一部を外部に露出させるためには、それらの外側に位置する筐体に、開閉可能な扉部を設け、扉部を開くとともにプラテンフレームを移動させて筐体外部に移動させる構成にする必要がある。すなわち、このようなプラテン保持機構を含む記録ユニットを収容する記録装置の筐体には、プラテンフレームに対応した扉部を設ける必要があり、それぞれのプラテン保持機構に対応して、筐体の設計をその都度行わなければならない。
【0007】
一方、記録装置の構成の簡略化を図るとともに、筐体の設計および製造を簡単にして低コスト化を図る場合、特許文献1と同様に、プラテンローラが筐体の外部に露出されない構成が採用されることも依然としてある。
【0008】
すなわち、現在では、構成の簡略化および低コスト化を優先して、プラテンローラが筐体の外部に露出されない構成の記録装置と、メンテナンス等の作業の容易化を優先して、プラテンローラおよびプラテンフレームの一部が筐体の外部に露出される構成の記録装置とが混在している。そして、前者の記録装置内に収容される記録ユニットと、後者の記録装置に収容される記録ユニットとは、全く別に設計されたものが用いられている。また、前者の記録装置に収容される記録ユニットにおいては、主に記録ヘッドの位置を検知することによって、記録可能な状態であるかどうかを検出しており、後者の記録装置に収容される記録ユニットにおいては、主にプラテンローラの位置を検知することによって、記録可能な状態であるかどうかを検出している。
【0009】
そこで本発明の目的は、プラテンが筐体の外部に露出されない構成の記録装置と、プラテンおよびプラテンフレームの一部が筐体の外部に露出される構成の記録装置のいずれにも共通に用いることができる、汎用的なプラテン保持機構とそれを含む記録ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のプラテン保持機構は、シート材に対して処理を行なうヘッドと、ヘッドによるシート材の処理時にシート材を挟んでヘッドと対向し、シート材を支持するプラテンと、プラテンの被保持部が挿入されて内部で移動可能に保持する長穴状の凹部を有するプラテンフレームと、プラテンに係合しプラテンと一緒に移動可能なリリースアームと、ヘッドの移動に伴ってリリースアームを移動させる駆動部材と、プラテンまたはリリースアームの移動を検知する位置検出用のスイッチとを有することを特徴とする。
【0011】
この構成によると、プラテンおよびプラテンフレームの一部が筐体の外部に露出する構成の記録装置において用いることができるとともに、プラテンおよびプラテンフレームが筐体の外部に露出しない構成の記録装置において用いることもできる。そして、いずれの場合にも、位置検出用のスイッチによってプラテンまたはリリースアームの移動を検知して、記録可能な状態であるか否かの判断材料にすることができる。なお、プラテンおよびプラテンフレームが筐体の外部に露出しない構成の記録装置の場合は、プラテンフレームがほとんど動かないが、プラテンの被保持部は長穴状の凹部内で移動可能である。従って、プラテンおよびリリースアームは、被保持部が凹部内に移動可能な範囲だけ移動可能であり、その移動を位置検出用のスイッチによって検知することができる。
【0012】
従来は、プラテンフレームが移動不能な構成の場合、プラテンも移動不能であり、リリースアームのように移動可能な部材は存在しなかったので、このような位置検出は不可能であり、記録可能な状態であるか否かを判断するためには、ヘッド側に位置検出用のスイッチを設けざるを得なかった。その結果、スペース効率が悪くなるという欠点があった。また、仮に、このようにヘッド側に位置検出用のスイッチが設けられている記録ユニットを、プラテンフレームが移動する(筐体の外部に露出する)構成の記録装置に流用しようとすると、ヘッドはほとんど移動しないので、ヘッド側に設けられた位置検出用のスイッチはほとんど意味を持たない。そして、記録可能な状態であるか否かを判断するためには、プラテンフレーム側に位置検出用のスイッチを設けざるを得ない。すなわち、記録可能な状態であるか否かを判断する(プラテンとヘッドとが適切な位置にあるか否かを判断する)ためには、プラテンフレームが移動不能な(外部に露出しない)構成の記録装置では、ヘッド側に位置検出用のスイッチが必要で、プラテンフレームが移動する(筐体の外部に露出する)構成の記録装置では、プラテンフレーム側に位置検出用のスイッチが必要である。従って、スイッチを2つ以上設けない限り、両方の種類の記録装置に使用可能な汎用的な記録ユニットを作製することはできなかった。
【0013】
これに対し、本発明の構成では、プラテンフレーム側に、プラテンまたはリリースアームの移動を検知するスイッチを設けているため、当然、プラテンフレームが移動する(筐体の外部に露出する)構成の記録装置に用いることができる。しかも、プラテンフレームに設けられた長穴状の凹部内でプラテンの被保持部が移動可能であり、その移動可能な範囲だけプラテンおよびリリースアームも移動可能であるため、プラテンフレームが移動不能な(外部に露出しない)構成の記録装置でも、プラテンフレーム側のスイッチで、ヘッドとプラテンの相対位置関係を知ることができ、ヘッド側にスイッチを設ける必要がない。このように、本発明の記録ユニットは、両方の種類の記録装置に使用可能な汎用性を有している。
【0014】
なお、駆動部材は、ヘッドとリリースアームの間に配置されてリリースアームに付勢力を加え、ヘッドからプラテンを介してリリースアームに加えられる押圧力が解除されると、付勢力によってリリースアームとそれに係合するプラテンの被保持部とを移動させる付勢手段であってもよい。
【0015】
また、駆動部材は、ヘッドとリリースアームの間に配置され、ヘッドの移動に連動してリリースアームを移動させる連結部材であってもよい。
【0016】
本発明の、記録装置内に収容されて用いられる記録ユニットは、前記したいずれかの構成のプラテン保持機構を含み、ヘッドはシート材に記録を行う記録ヘッドであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、プラテンおよびプラテンフレームの一部が筐体の外部に露出する構成の記録装置にも、プラテンおよびプラテンフレームが筐体の外部に露出しない構成の記録装置にも用いることもできる汎用的な記録ユニットを実現することができる。このような記録ユニットでは、プラテンまたはリリースアームの移動を検知する位置検出用のスイッチのみによって、両方の種類の記録装置において、ヘッドとプラテンの相対位置関係を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1,2に本発明の一実施形態の記録ユニットが収容される記録装置の要部が示されている。この記録装置は、記録可能な状態において、図2に示す記録媒体(シート材)Sに対して記録を行う記録ヘッドの一例であるサーマルヘッド1と、記録媒体Sを搬送するローラ状のプラテン(プラテンローラ2)が、互いに接するように配置されている。図示しないが、サーマルヘッド1には、多数の発熱素子と、各発熱素子を選択的に駆動するために駆動信号を伝達する電気接続機構が設けられている。また、サーマルヘッド1とフレーム3の間には、サーマルヘッド1をプラテンローラ2に対して圧接させるように付勢する第1の付勢手段であるばね部材4が配置されている。プラテンローラ2は、軸部2aと、弾性体からなる外周部2bを有している。このサーマルヘッド1およびプラテンローラ2が記録部を構成している。
【0020】
サーマルヘッド1はフレーム3に、例えばばね部材4の弾性変形の範囲内で僅かな変位(例えば数mm)のみ移動可能に取り付けられている。プラテンローラ2はプラテンフレーム5に回転可能に取り付けられている。そして、プラテンフレーム5は、フレーム3に対して移動可能に(例えば揺動可能に)取り付けられている。フレーム3の側方には、モータ(駆動手段)12からの回転駆動力をプラテンローラ2に伝達するための歯車群6が配置されている。
【0021】
図3(a)に示すように、フレーム3には、記録時にプラテンローラ2を保持すべき所定の保持位置から外部に向けて切り欠いた形状の切り欠き部7が形成されている。そして、この切り欠き部7の開口部分の近傍には、内側に向かって突出する爪部8が形成されている。この爪部8によって、切り欠き部7において保持位置から開口部分へ向かう脱出方向は、矢印A方向(正確には、矢印A方向を含む僅かな角度範囲内の方向であるが、ここでは便宜上「矢印A方向」と述べる)に限定される。当然、切り欠き部7内への進入方向は、矢印A方向の反対の方向に限定される。
【0022】
前記したとおり、プラテンローラ2はプラテンフレーム5に回転可能に保持されている。具体的には、プラテンフレーム5に設けられたスリット状の凹部5a内に、プラテンローラ2の軸部2aが挿入されて保持されている。軸部2aはスリット状(長穴状)の凹部5a内で移動可能、かつ、外部からの力を加えられない限り凹部5aの外部へは脱出不能に保持されている。このように、軸部2aはプラテンローラ2の被保持部として機能する。プラテンフレーム5は、フレーム3に対して移動可能に取り付けられている。
【0023】
フレーム3には、揺動軸9aを中心として揺動可能なリリースアーム9が取り付けられている。このリリースアーム9は、プラテンローラ2の軸部2aに係合する係合部9bを有している。また、リリースアーム9とサーマルヘッド1の間には、第2の付勢手段であるばね部材10が配置されている。このばね部材10が、本発明の駆動部材である。
【0024】
位置検出用のスイッチ11がフレーム3に固定されている。このスイッチ11は、切片11aがリリースアーム9に当接された時と、リリースアーム9に接触していない時とで、オンとオフの切り替えが行われる。
【0025】
以上のような構成であり、図1〜3に示す組立状態において、感熱性の記録媒体であるシート材Sが供給されると、モータ12から歯車群6を介して駆動されるプラテンローラ2の回転によって、シート材Sが搬送される。この時、ばね部材4によってサーマルヘッド1がプラテンローラ2に向けて付勢されるため、シート材Sはサーマルヘッド1とプラテンローラ2の間に挟みつけられる。そして、図示しない電気接続機構からサーマルヘッド1の発熱素子に駆動信号が伝達されて、サーマルヘッド1が駆動され、シート材Sに所望の記録が行われる。
【0026】
この記録装置において、プラテンローラ2の軸部2aは、プラテンフレーム5のスリット状の凹部5a内、かつフレーム3の切り欠き部7内に位置する。ばね部材4がサーマルヘッド1を介してプラテンローラ2に押圧力を加えることによって、軸部2aは、図3(a),(b)に示す保持位置に押しつけられて保持される。軸部2aが切り欠き部7内から脱出可能な方向は、爪部8によって概ね矢印A方向のみに規制されている。そして、ばね部材4がサーマルヘッド1を介してプラテンローラ2に加える押圧力(付勢力)の少なくとも一部は、矢印A方向の反対側から作用する。従って、ばね部材4の付勢力によって、プラテンローラ2およびその軸部2aは、図3(a),(b)に示す保持位置に押しつけられ、この保持位置から離れることはない。なお、この状態で、スイッチ11の切片11aはリリースアームに当接された状態であり、プラテンローラ2が保持位置にあることを検知できる。
【0027】
非記録時に、サーマルヘッド1とプラテンローラ2との間に記録媒体を挿入してセットする作業や、サーマルヘッド1とプラテンローラ2の間で記録媒体のジャム(いわゆる紙詰まり)が生じた際に、それを解消するための作業や、サーマルヘッド1および/またはプラテンローラ2の交換やメンテナンスの作業を行う場合には、プラテンローラ2をサーマルヘッド1から引き離して外部に露出させる。その場合、本実施形態では、まず、図示しないレバー等を操作して、ばね部材4の付勢力に抗してサーマルヘッド1をプラテンローラ2から引き離す(図4(a),(b)参照)。この時、実際にはサーマルヘッド1の移動と同時に、サーマルヘッド1にばね部材10を介して連結されているリリースアーム9が移動する。すなわち、実際には、図4(a),(b)に示す状態になることはなく、図5(a),(b)に示すように、サーマルヘッド1とばね部材10とリリースアーム9とが一体的に移動する。この時、リリースアーム9の係合部9bがプラテンローラ2の軸部2aに係合して一緒に移動させる。それによって、プラテンローラ2は、図1〜3に示す保持位置から離れ、軸部2aは切り欠き部7の開口部分近傍に移動する。この位置で、軸部2aの一部は爪部8の外側に位置し、爪部8による規制から逃れることができるようになる。そこで、プラテンフレーム5をフレーム3に対して移動させて、図6(a),(b)に示すようにプラテンローラ2の軸部2aをフレーム3の切り欠き部7から完全に脱出させる。図5〜6に示す状態では、スイッチ11の切片11aはリリースアームに接触しておらず、プラテンローラ2が保持位置にない、すなわち記録不可の状態にあることを検知できる。
【0028】
なお、前記した通り、図4(a),(b)は、本実施形態では実際にはほとんどあり得ない状態を示しているが、サーマルヘッド1を移動させることを説明するために用いた参考図である。
【0029】
その後、記録媒体のセット、ジャムを解消する処理、サーマルヘッド1および/またはプラテンローラ2の交換やメンテナンス等の作業を行う。必要に応じて、プラテンローラ2をプラテンフレーム5のスリット状の凹部5aから脱出させてもよい。ただし、プラテンローラ2をプラテンフレーム5の凹部5aから脱出させる構成および方法は、本発明の特徴部分ではなく、従来から公知の様々な手段を採用できるので、説明を省略する。
【0030】
なお、プラテンローラ2が切り欠き部7の外部に出ている状態から、図1〜3に示すようにプラテンローラ2を切り欠き部7の保持位置に挿入する場合には、切り欠き部の開口部分に軸部2aを載置するようにしてプラテンローラ2を押し込めばよい。すなわち、プラテンローラ2を押し込むと、サーマルヘッド1がプラテンローラ2に押されて、ばね部材4の付勢力に抗してわずかに移動し、それによってプラテンローラ2が切り欠き部内部に挿入される。そうすると、ばね部材4の付勢力によってサーマルヘッド1が復帰してプラテンローラ2を押圧し、軸部2aを保持位置に押しつけて固定する。この固定は、ばね部材10の付勢力に抗して行われるため、少なくとも軸部2aの進入および脱出方向に関する分力に関しては、ばね部材4の付勢力がばね部材10の付勢力よりも大きくなければならない。
【0031】
以上説明した構成によると、図示しないレバー等の操作でサーマルヘッド1をプラテンローラ2から僅かに(数mm程度)引き離しさえすれば、ばね部材10の付勢力によってプラテンローラ2が移動して軸部2aが切り欠き部から脱出し、プラテンローラ2を外部に出すことが可能な状態になる。この際、操作者がプラテンローラ2を移動させるための力を直接加える必要はない。
【0032】
そして、本実施形態では、記録可能な状態であるか否かを検知するために、位置検出用のスイッチ11を用いている。このスイッチ11は、図3(b)に示すように、ばね部材4からサーマルヘッド1およびプラテンローラ2を介して加わる付勢力(押圧力)によってリリースアーム9がばね部材10の付勢力に抗して押しつけられている状態で、切片11aがリリースアーム9に接触している。この時、プラテンローラ2の外周部2bがサーマルヘッド1に当接して、記録可能な状態であることが判る。
【0033】
これに対して、図5,6に示すように、サーマルヘッド1が移動させられることによって、ばね部材4からプラテンローラ2に伝わる付勢力(押圧力)が解除されている状態では、ばね部材10の付勢力によってリリースアーム9が、係合部9bに係合するプラテンローラ2の軸部2aを切り欠き部7の開口部分側に搬送するように移動する。その移動によって、切片11aがリリースアーム9に接触しなくなる。この時、プラテンローラ2の外周部2bはサーマルヘッド1に当接しておらず、記録不可の状態であることが判る。
【0034】
このように、本実施形態では、リリースアーム9に当接する切片11aを有するスイッチ11によって、記録可能な状態(プラテンローラ2の外周部2bがサーマルヘッド1に当接しており、かつ、プラテンローラ2が搬送力を伝達可能な位置にある状態)であるか否かを検知することができる。このスイッチ11は、サーマルヘッド1側(図面右側)ではなくプラテンフレーム5側(図面左側)の、比較的自由な位置に配置することができる。従って、この記録ユニットのスペース効率が良好である。なお、切片11aがリリースアーム9に接離する構成に代えて、プラテンローラ2自体に接離する構成にすることも可能である。
【0035】
以上の説明は、図6に示すようにプラテンフレーム5の一部が記録装置の筐体の外部に露出可能な構成であり、図示しないが、筐体に、プラテンフレーム5の移動に対応して開閉可能な扉部が設けられている場合に関するものである。
【0036】
プラテンフレーム5の一部が記録装置の筐体の外部に露出しない、すなわち、筐体に扉部が設けられていない場合においても、本実施形態の記録ユニット自体は、前記したものと同一であるため、図3〜5に示す状態については全く同一である。そして、筐体に扉部が存在せず、プラテンフレーム5の移動が規制されているため、図6に示す状態は取り得ない。要するに、プラテンフレーム5の一部が記録装置の筐体の外部に露出しない、すなわち、筐体に扉部が設けられていない構成は、プラテンフレーム5の一部が記録装置の筐体の外部に露出する、すなわち、筐体に扉部が設けられている構成に比べて、図6に示す状態を取らないだけで、それ以外は全く同じである。言い換えると、本実施形態の記録ユニットは、いずれの構成の記録装置にも汎用的に用いることができる。
【0037】
特に、従来、プラテンフレーム5が移動しない構成では、記録可能な状態(プラテンローラ2の外周部2bがサーマルヘッド1に当接しているおり、かつ、プラテンローラ2が搬送力を伝達可能な位置にある状態)であるか否かを検知するスイッチ11は、サーマルヘッド1に接離するように配置してサーマルヘッド1の移動を検知せざるを得なかった。そのために、サーマルヘッド1側(図面右側)にスイッチ11用のスペースを確保しなければならず、スペース効率が悪かった。これに対して、本実施形態では、プラテンフレーム5が移動しない構成であっても、プラテンローラ2が長穴状の凹部5a内で移動可能であり、リリースアーム9がプラテンローラ2を連れて移動する構成になっている。従って、リリースアーム9またはプラテンローラ2の移動を検知することによって、記録可能な状態か否かを検知することができ、その結果、スイッチ11をプラテンフレーム5側(図面左側)の、比較的自由な位置に配置することができ、スペース効率を高めることができる。
【0038】
なお、プラテンローラ2が移動させられた場合または取り外された場合に、ばね部材4のばね力によってサーマルヘッド1が図3に示す位置に復帰することが考えられる。その場合、サーマルヘッド1は所定位置にあるが、プラテンローラ2とは接触しておらず、記録不可の状態である。このような場合にも、本実施形態のスイッチ11は、リリースアーム9またはプラテンローラ2の移動を検知する構成であるため、記録不可であると適確な判断をすることができる。もちろん、サーマルヘッド1が所定位置に復帰すると同時にプラテンローラ2も所定位置に戻る構成の場合には、このような記録不可の状態になることはない。
【0039】
以上説明した実施形態では、第1の付勢部材として、ばね部材4をサーマルヘッド1とフレーム3の間に配置している。このばね部材4は、その付勢方向が、サーマルヘッド1を介してプラテンローラ2に押圧力を加えて、プラテンローラ2の軸部2aを切り欠き部7内の保持位置に押しつけるような方向になるように配置されていることが好ましい。少なくとも、ばね部材4の付勢力は、このような方向に向いている分力を有している必要がある。
【0040】
また、第2の付勢部材として、ばね部材10をリリースアーム9とサーマルヘッド1の間に配置している。このばね部材10は、その付勢方向が、ばね部材4からサーマルヘッド1を介してプラテンローラ2に加わる付勢力が解除され、サーマルヘッド1がプラテンローラ2から引き離された時に、リリースアーム9を介してプラテンローラ2に押圧力を加えて、プラテンローラ2の軸部2aを切り欠き部7から脱出する方向に移動させるような方向になるように配置されていることが好ましい。少なくとも、ばね部材10の付勢力は、このような方向に向いている分力を有している必要がある。それによって、リリースアーム9は、サーマルヘッド1のばね部材4の付勢力に抗する移動に伴って、プラテンローラ2に対して、軸部2aが切り欠き部7から脱出する方向への押圧力を加えることができる。
【0041】
ただし、例えば、図7に示すように、ばね部材10をリリースアーム9とフレーム3の間に配置して、前記したのと同様な方向への付勢方向を有する構成にすることもできる。この場合、ばね部材10は圧縮ばねである。なお、図7では、フレーム3の、ばね部材10を固定する部分は図示省略している。
【0042】
また、ばね部材10に変えて、サーマルヘッド1とリリースアーム9を連結する連結部材を用いることもできる。その場合、付勢力は得られないものの、サーマルヘッド1がプラテンローラ2から離れる動作に追随してリリースアーム9を移動させることができ、係合部9bに係合した軸部2aを切り欠き部7の開口部分側に移動させることができる。この構成では、付勢力(ばね力)は特に必要とせず、図5(a),(b)に示す状態にすることができる。
【0043】
なお、プラテンローラ2に代えて、ローラ状ではないプラテンを用いることもできる。その場合、切り欠き部7内に収容される被保持部は、軸状のものに限らず、あらゆる形状の突起にすることができる。
【0044】
ヘッドはサーマルヘッド等の記録ヘッドに限られず、熱活性化用ヘッドであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】(a)は本発明のプラテン保持機構を含む記録装置の要部を示す平面図、(b)はその正面図、(c)はその側面図である。
【図2】図1に示す記録装置のII−II線断面図である。
【図3】(a)は図1に示す記録装置のプラテン保持機構の、記録可能な状態を示す側面図、(b)はそのフレームの一部を削除した側面図である。
【図4】(a)は図1に示す記録装置のプラテン保持機構の、ヘッドを移動させた状態を示す側面図、(b)はそのフレームの一部を削除した側面図である。
【図5】(a)は図1に示す記録装置のプラテン保持機構の、リリースアームが移動した状態を示す側面図、(b)はそのフレームの一部を削除した側面図である。
【図6】(a)は図1に示す記録装置のプラテン保持機構の、プラテン取り出し状態を示す側面図、(b)はそのフレームの一部を削除した側面図である。
【図7】(a)は図1に示す記録装置の変形例のプラテン保持機構の、記録可能な状態を示す側面図、(b)はそのフレームの一部を削除した側面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 サーマルヘッド(ヘッド)
2 プラテンローラ(プラテン)
2a 軸部(被保持部)
2b 外周部
3 フレーム
4 ばね部材(第1の付勢手段)
5 プラテンフレーム
5a 凹部
6 歯車群
7 切り欠き部
8 爪部
9 リリースアーム
9a 揺動軸
9b 係合部
10 ばね部材(第2の付勢手段)
11 スイッチ
11a 切片
12 モータ(駆動手段)
S 記録媒体(シート材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材に対して処理を行なうヘッドと、
前記ヘッドによる前記シート材の処理時に前記シート材を挟んで前記ヘッドと対向し、前記シート材を支持するプラテンと、
前記プラテンの被保持部が挿入されて内部で移動可能に保持する長穴状の凹部を有するプラテンフレームと、
前記プラテンに係合し該プラテンと一緒に移動可能なリリースアームと、
前記ヘッドの移動に伴って前記リリースアームを移動させる駆動部材と、
前記プラテンまたは前記リリースアームの移動を検知する位置検出用のスイッチと、
を有するプラテン保持機構。
【請求項2】
前記駆動部材は、前記ヘッドと前記リリースアームの間に配置されて前記リリースアームに付勢力を加え、前記ヘッドから前記プラテンを介して前記リリースアームに加えられる押圧力が解除されると、前記付勢力によって前記リリースアームとそれに係合する前記プラテンの被保持部とを移動させる付勢手段である、請求項1に記載のプラテン保持機構。
【請求項3】
前記駆動部材は、前記ヘッドと前記リリースアームの間に配置され、前記ヘッドの移動に連動して前記リリースアームを移動させる連結部材である、請求項1に記載のプラテン保持機構。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のプラテン保持機構を含み、前記ヘッドは前記シート材に記録を行う記録ヘッドである、記録装置内に収容されて用いられる記録ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−179087(P2008−179087A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15239(P2007−15239)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】