説明

プラネタリウムの恒星投影機

【課題】輝星を明るく、かつ実物の恒星と同じように非常に小さい視直径でリアルに投影しつつ、従来の投影機と比較しコストアップを招くことなく多数の恒星を投影して精細な星空の投影像を得ることができるプラネタリウムの恒星投影機を提供する。
【解決手段】投影ユニット21の恒星原板4に多数の恒星対応の透過孔の他、輝星用の透過孔を設けている。輝星用の透過孔にはレーザダイオードからの光を導入した下流ファイバ7の端部が接続されている。輝星についてはレーザダイオード11からの光で下流ファイバに導かれた光を投影することにより、また他の多数の恒星については共通光源である白熱球からの光を恒星原板4に照射して投影する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影ユニットで効率的に輝星およびその他の恒星を投影することを考慮したプラネタリウムの恒星投影機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプラネタリウムの恒星投影機では、実物の恒星に相当する透過パターンを用いた複数の投影ユニットを用いて恒星を投影することが行われていた。
この透過パターンの照明装置としては、在来の白熱ランプ、放電ランプなどが用いられ、最近では発光ダイオードを用いたものも出現しているが、いずれも恒星原板の全面を照明する原理には変わりがない。
この方法では、恒星像の全面積のうち透過パターンの透過部分の面積は極めて小さいため、光源から照明される光の大部分は恒星原板で遮断され、きわめて非効率な照明となっている。投影像を実物の恒星に近づけるためには透過孔を極力小さくする必要があるが、透過孔を通る光量は、透過孔の面積に比例するため、特に明るい星について直径を大きくすることなく明るさを確保するには、透過孔を小さくすればするほど、光源の光を強くしなければならず、光源の発熱や消費電力、投影機の冷却などに問題が生じていた。
【0003】
一方、公知のプラネタリウム投影機の恒星原板では、恒星原板を単なる透過孔の開いた板でなく、恒星に相当する部分それぞれに光ファイバを接続し、光ファイバの片端を束ねて光源で照明することにより、光源の光を効率的に利用することが行われており、このような構成により前述の問題を大幅に解決している。例えば上記タイプのプラネタリウム投影機として特許文献1などが挙げられる。しかしながらこの方式の場合、恒星の数だけ光ファイバが必要になり、恒星原板の製造や保守に非常な手間がかかっていた。
【0004】
また、本件発明者が提案した星空の分割投影方法(特許文献2)を用いれば、100万個を超える非常に膨大な恒星をも投影可能であり、飛躍的に高精細でリアルな星空が再現可能であるが、すべての恒星に個別の光ファイバを使用する方式では、膨大な光ファイバを装着することが非常に困難で、事実上、星の数を大幅に制限せざるを得なかった。
さらに、公知のプラネタリウム投影機では、輝星に相当する個別の輝星投影装置を複数設け、これにより一般の恒星と重ね合わせて投影することが伝統的に行われており、現在も改良されながら使用されているが、個別に投影する輝星の数だけ輝星の投影装置を設ければ、当然これらを製造するためのコストが上昇し、それぞれの投影装置間などの調整に手間がかかっていた。さらに各投影装置が占有するスペースにより投影機のサイズが大きくなりやすく、プラネタリウム投影機全体のデザイン上の制約も生じていた。
【特許文献1】米国特許第4,776,666号
【特許文献2】特開2001−134172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明、上記諸問題を解決するもので、その目的は、輝星を明るく、かつ実物の恒星と同じように非常に小さい視直径でリアルに投影しつつ、従来の投影機と比較しコストアップを招くことなく多数の恒星を投影して精細な星空の投影像を得ることができるプラネタリウムの恒星投影機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明の請求項1は複数の投影ユニット手段により恒星を投影するプラネタリウムの恒星投影機において、多数の透過孔パターンを有する恒星原板の全面を共通光源で照明し、前記恒星原板の特定の輝星に相当する透過孔に光ファイバを接続し、光ファイバの他方端に輝星光源の光を入射することを特徴とする。
本発明の請求項2は、請求項1記載の発明において前記恒星原板の特定の輝星に相当する透過孔に光ファイバを接続する角度は、光ファイバを出射した光が投影レンズに入射するように傾けることを特徴とする。
本発明の請求項3は、請求項1記載の発明において前記恒星原板と前記投影ユニット手段の投影レンズの間に、正の屈折力を持つレンズを設置し、光ファイバの出射光および共通光源によって照明される恒星原板の各透過孔による光が前記投影レンズに入射することを特徴とする。
本発明の請求項4は、請求項1,2または3記載の発明において前記恒星原板の共通光源は、白熱ランプ,放電ランプを使用するか、またはこれらの光を光ファイバ,光ファイバ束もしくは液体ライトガイドで導びき、出射端から出る光を用いることを特徴とする。
本発明の請求項5は請求項1,2,3または4記載の発明において前記輝星光源は、メタルハライドランプ,白熱ランプ,放電ランプ,発光ダイオード,レーザダイオードを使用するか、またはこれらの光を光ファイバ,光ファイバ束もしくは液体ライトガイドで導びいてなる光源を使用することを特徴とする。
すなわち本発明は、恒星に相当する多数の透過孔を有する恒星原板の輝星に相当する部分に、光ファイバを装着し、共通光源により恒星原板全面を照明しつつ、光ファイバを個別の光源で効率的に照明することにより、一般の恒星を従来のプラネタリウム同様に再現しつつ、輝星をより明るく小さく、リアルに投影することができる。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、恒星投影機の複雑さや調整の煩雑さを招くことなく、低コストで多数の恒星を投影するプラネタリウム投影機を実現でき、輝星を高輝度で投影することでよりリアルな星空を再現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。
図1は、本発明によるプラネタリウムの恒星投影機の実施の形態を示す断面図である。 本図は恒星投影機に複数設けられた投影ユニットの一つを図解したものであり、恒星投影機を構成する恒星球構造殻1に、投影ユニット21のマウント2が取り付けられている。共通光源である白熱電球12からの光は、コンデンサレンズ6で集光され、透明ガラス製の支持基板5を通過した後、恒星原板4に多数設けられた透過孔15を通り、投影レンズ3によって図示しないドームスクリーンに投影される。
【0009】
一方、輝星光源であるレーザダイオード11からの光は、コンデンサレンズ10によって集光されて上流光ファイバ8の端面に入射しコネクタ14に導かれる。コネクタ14では単一または複数の下流ファイバ7に導かれ、下流ファイバ7は支持基板5に設けられた貫通孔5aを通って恒星原板4に設けられた輝星用の透過孔15に接するように設置されている。このためレーザダイオード11からの光は効率的に輝星のみを照明することになる。このとき光ファイバの端部は、輝星用の透過孔15の位置に応じて角度θだけ傾けられる。支持基板5の貫通孔5aはこの傾きになるように孔が形成されている。このような構成により、光ファイバで導かれた光は、透過孔15を通過後に投影レンズ3に効率的に入射する。
【0010】
図2は、恒星原板と輝星用の下流ファイバ端部の接続状態を説明するための図である。恒星原板4には多数の恒星を投影するための透過孔4aが形成されており、その中で輝星については輝星用透過孔15a〜15nが設けられている。この輝星用透過孔15a〜15nにそれぞれ対面して下流ファイバ端面7a〜7nが設置される。下流ファイバ端部は手前に設置されている透明の支持基板5に形成された所定角度(各輝星対応の角度)の貫通孔(輝星ファイバ導通孔)5aに嵌入することにより固定される。
【0011】
このように下流ファイバ端面を恒星原板4の透過孔4aまで導くことにより、下流光ファイバ7は、共通光源の照明光下を通るため、厳密には共通光源の照明に影を落とし、投影した恒星像にムラや欠損を起こすおそれがある。しかしながら、恒星原板4および支持基板5とコンデンサレンズ6の間に有る程度の空間を設け、コネクタ14からの下流ファイバ7の引き出し経路を極力恒星原板4から遠ざけ、かつ下流ファイバ7を細いファイバを用いることにより、下流ファイバ7の恒星原板4に落とす影はその濃度が薄くなるとともにぼやけ、実質的に問題なく使用可能となる。
【0012】
輝星光源にレーザダイオード11を用いた場合、レーザ特有の高輝度特性により、一層輝星の輝度を増してリアルな像を再現できる。かかる場合、単独のレーザダイオードでは単色光しか出せない。しかしながら図3のような構成によって赤色,緑色および青色の3原色のレーザダイオードを用いれば、高輝度の白色光を得ることができる。
図3は、赤色,緑色および青色のレーザダイオードによる白色レーザ光源装置の構成を説明するための図である。
青色レーザダイオードBからの青色光はコンデンサレンズ10Bで平行光にされた後、プリズム18で直角に曲げられ、ダイクロイックプリズム19GBに入射し、緑色レーザダイオードGから出た緑色光と合成され、さらにダイクロイックプリズム19RGBにより赤色レーザダイオードRからの赤色光と合成され白色レーザ光となる。この白色レーザ光は、コンデンサレンズ10Wによって上流ファイバ8の入射端に収束して入射する。
なお、レーザダイオードに青色のものを使用し、併せて上流光ファイバに波長変換機能を有するものを用いれば、ファイバによって白色レーザ光を得ることができ、高輝度の白色の光で照明することもできる。
【0013】
図1においてレーザダイオード11にはスイッチ回路16が接続され、該スイッチ回路16には電流制御回路17が接続されている。電流制御回路17は、外部の指令によりレーザダイオードの駆動電流を任意の値に制御可能であり、輝星の明るさを自在に変える機能を持っている。スイッチ回路16は外部の指令により、レーザダイオードの電流を任意にオンオフ可能であり、輝星に瞬きのような効果をもたらすものである。
このように輝星光源の電源電圧や駆動電流を制御することにより輝星像の明るさを自在に調節できるのみならず、これらに個別にランダムにオンオフまたは強弱の変調をかけることで実物の恒星に似たような瞬き効果も得ることができる。
なお、輝星光源にはこの他に発光ダイオード,白熱電球なども用いることができ、この輝星光源でも同様に上記スイッチ回路,電流制御回路によって輝星の瞬きの効果および輝星の明るさ変えることができることが可能である。
【0014】
図4は、本発明によるプラネタリウムの恒星投影機の他の実施の形態を示す断面図である。
この実施の形態は、恒星原板4と投影レンズ3の間に正の屈折力を持つレンズ13を設け、下流ファイバを恒星原板4に垂直に接続し、下流ファイバ端面から恒星原板4の面に対し垂直に入射した光が投影レンズ3に入射するようにしたものである。
この実施の形態は下流ファイバの取り付けが恒星原板4に対し直角で良いので、図1の実施の形態に比較し下流ファイバ装着作業は簡易となる全体としてコストを抑えることができる。他の構成部分は図1と変わらない。
【0015】
図5は、本発明によるプラネタリウムの恒星投影機のさらに他の実施の形態を示す断面図である。
この実施の形態は、共通光源として液体ライトガイド20を用いた例である。他の構成部分は図1と同じである。光源は液体ライトガイド20の反対側端面に設けることが可能になるため、輝星光源と同様に共通光源の設置位置も任意に選ぶことができる。
【0016】
以上の実施の形態は、輝星光源の輝度変化および瞬きを実現するためスイッチ回路や電流制御回路を用いた例を説明したが、輝星光源をスイッチングする手段は電気的に制御する他に機械的、光学的にオンオフしてもよく、輝度を変化を行う手段として、電流値を変化させる他、レーザダイオードの出射側に光学フィルタ(NDフィルタなど)を挿入しても実現することもできる。
また、共通光源として放電ランプ,光ファイバ,光ファイバ束などを用いることもでき、輝星光源としてメタルハラライドランプ,放電ランプ,光ファイバ,光ファイバ束を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
イベント会場やプラネタリウム施設などに設置される、投影ユニットで効率的に輝星およびその他の恒星を投影することができるプラネタリウムの恒星投影機である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるプラネタリウムの恒星投影機の実施の形態を示す断面図である。
【図2】図1の恒星原板の正面図である。
【図3】赤色,緑色および青色のレーザダイオードによる白色レーザ光源装置の構成を説明するための図である。
【図4】本発明によるプラネタリウムの恒星投影機の他の実施の形態を示す断面図である。
【図5】本発明によるプラネタリウムの恒星投影機のさらに他の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 恒星球構造殻
2 マウント
3 投影レンズ
4 恒星原板
5 支持基板
6,10 コンデンサレンズ
7 下流ファイバ
8 上流ファイバ
9 光源装置
11 レーザダイオード
12 白熱球
13 凸レンズ
14 コネクタ
15,15a,15b・・・ 透過孔
16 スイッチ回路
17 電流制御回路
20 液体ライトガイド
21 投影ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の投影ユニット手段により恒星を投影するプラネタリウムの恒星投影機において、 多数の透過孔パターンを有する恒星原板の全面を共通光源で照明し、
前記恒星原板の特定の輝星に相当する透過孔に光ファイバを接続し、光ファイバの他方端に輝星光源の光を入射することを特徴とするプラネタリウムの恒星投影機。
【請求項2】
前記恒星原板の特定の輝星に相当する透過孔に光ファイバを接続する角度は、光ファイバを出射した光が投影レンズに入射するように傾けることを特徴とする請求項1のプラネタリウムの恒星投影機。
【請求項3】
前記恒星原板と前記投影ユニット手段の投影レンズの間に、正の屈折力を持つレンズを設置し、
光ファイバの出射光および共通光源によって照明される恒星原板の各透過孔による光が前記投影レンズに入射することを特徴とする請求項1記載のプラネタリウムの恒星投影機。
【請求項4】
前記恒星原板の共通光源は、白熱ランプ,放電ランプを使用するか、またはこれらの光を光ファイバ,光ファイバ束もしくは液体ライトガイドで導びき、出射端から出る光を用いることを特徴とする請求項1,2または3記載のプラネタリウムの恒星投影機。
【請求項5】
前記輝星光源は、メタルハライドランプ,白熱ランプ,放電ランプ,発光ダイオード,レーザダイオードを使用するか、またはこれらの光を光ファイバ,光ファイバ束もしくは液体ライトガイドで導びいてなる光源を使用することを特徴とする請求項1,2,3または4記載のプラネタリウムの恒星投影機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−322843(P2007−322843A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154155(P2006−154155)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(599154906)
【Fターム(参考)】