説明

プランクトン濃縮装置及びプランクトン濃縮システム

【課題】効率よくプランクトンを回収することができるプランクトン濃縮装置及びプランクトン濃縮システムを提供すること。
【解決手段】プランクトンを含む水を導入するための水導入口と、導入された水を濾過し、プランクトンを採取するためのネットと、プランクトンを採取する採取側の裏側からネットに放水し、ネットに付着したプランクトンを洗い流すための噴水装置と、前記洗い流された前記プランクトンを集めて濃縮するための濃縮サンプル貯槽と、前記濃縮された前記プランクトンを排出するプランクトン排出口と、プランクトンが濾過された水や噴水装置から噴水されネットを洗浄した水を排出する水排出口と、を備えた濃縮槽を備え、濃縮槽内の空間がネットで分割され、ネットの採取側の濃縮槽に水導入口及びプランクトン排出口が設けられ、ネットの裏側の濃縮槽に水排出口が設けられているプランクトン濃縮装置とする。また、その装置を自動制御するようにコンピュータを設け、プランクトン濃縮システムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランクトン濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
調査目的で海水中又は湖水中のプランクトンを採取する場合、目的とする水深の水を、プランクトンネットを用いて採取することが多い。しかし、採取に専門的な知識を有する作業員が必要であり、目的にあったプランクトンの採取は容易ではない。また、人手を必要とするので、多数のサンプル採取は困難である。
【0003】
そこで、目的の水を採取して、そこからプランクトンを濃縮、分離することにより、プランクトンを採取することができる。その際、例えば、ネットを用いて目的の水を濾過することにより、プランクトンを濃縮できる。遠心力を利用すれば、より効率よく濃縮することもできる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−172717
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ネットを用いた濾過の場合、ネットにプランクトンが残存するため、プランクトンが効率よく回収できなかった。
そこで、本発明は、効率よくプランクトンを回収することができるプランクトン濃縮装置及びプランクトン濃縮システムを提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかるプランクトン濃縮装置は、プランクトンを含む水を導入するための水導入口と、導入された前記水を濾過し、プランクトンを採取するためのネットと、前記プランクトンを採取する採取側の裏側からネットに放水し、前記ネットに付着した前記プランクトンを洗い流すための噴水装置と、前記プランクトンを濾過した前記水と、前記噴水装置から放出された前記水を排出するための水排出口と、洗い流された前記プランクトンを集めて濃縮するための濃縮サンプル貯槽と、前記濃縮サンプル貯槽に集めた前記プランクトンを排出するプランクトン排出口と、を備えた濃縮槽を備え、前記濃縮槽内の空間が前記ネットで分割され、前記ネットの採取側の前記濃縮槽に前記水導入口及び前記プランクトン排出口が設けられ、前記ネットの裏側の前記濃縮槽に前記水排出口が設けられていることを特徴とする。この装置は、前記ネットの採取側の前記濃縮槽に、ネット洗浄水を排出するための洗浄水排出口を備えていてもよい。また、前記水導入口、前記プランクトン排出口、水排出口、前記洗浄水排出口及び噴水装置の開閉を制御する電磁弁を備えていてもよい。さらに、温度計、pHメーター、電気伝導度測定装置、または溶存酸素量測定装置を備えていてもよい。
【0006】
さらに、本発明のプランクトン濃縮システムは、上記何れかのプランクトン濃縮装置と、前記水導入口、前記水排出口、前記プランクトン排出口、噴水装置の少なくとも一つを調節する制御装置と、を備える。
【0007】
さらに、本発明の上記プランクトン濃縮装置を使用する使用方法は、前記水導入口からプランクトンを含む水を導入する工程と、前記ネットで、導入された前記水を濾過し、プランクトンを採取する工程と、前記噴水装置で前記プランクトンを採取する採取側の裏側からネットに放水し、前記ネットに付着した前記プランクトンを洗い流す工程と、前記水排出口より、前記プランクトンを濾過した前記水と、前記噴水装置から放出された前記水を排出する工程と、洗い流された前記プランクトンを、前記濃縮サンプル貯槽で集めて濃縮する工程と、前記濃縮サンプル貯槽に集めた前記プランクトンを、前記プランクトン排出口から排出する工程と、を含む。
【0008】
さらに、本発明の制御プログラムは、プランクトン濃縮装置を自動運転させる制御プログラムであって、コンピュータに、前記水導入口からプランクトンを含む水を導入するステップと、前記ネットで、導入された前記水を濾過し、プランクトンを採取するステップと、前記噴水装置で前記プランクトンを採取する採取側の裏側からネットに放水し、前記ネットに付着した前記プランクトンを洗い流すステップと、前記水排出口より、前記プランクトンを濾過した前記水と、前記噴水装置から放出された前記水を排出するステップと、洗い流された前記プランクトンを、前記濃縮サンプル貯槽で集めて濃縮するステップと、前記濃縮サンプル貯槽に集めた前記プランクトンを、前記プランクトン排出口から排出するステップと、を実行させる。このプログラムを、コンピュータによって読み取り可能に格納した記憶媒体も、本発明の技術的範囲に属する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、効率よくプランクトンを回収することができるプランクトン濃縮装置及びプランクトン濃縮システムを提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本発明にかかるプランクトン濃縮装置及びプランクトン濃縮システムを詳細に説明する。なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0011】
==プランクトン濃縮装置の基本構成==
本発明にかかるプランクトン濃縮装置として、図1に示した装置を例として説明する。 このプランクトン濃縮装置は、プランクトンを濃縮するための濃縮槽10を備え、その濃縮槽10は、水導入口12、ネット14、噴水装置16、濃縮サンプル貯槽17、プランクトン排出口18、水排出口20、サンプル採取装置24、洗浄水排出口26を備えている。この濃縮槽内の空間は、ネット14で分割され、ネット14の採取側30の濃縮槽10に水導入口12、濃縮サンプル貯槽17、プランクトン排出口18、及び洗浄水排出口26が設けられ、ネット14の裏側32の濃縮槽10に水排出口20が設けられている。以下、各構成要素を説明する。
【0012】
水導入口12は、プランクトンを含む水を導入するために設けられている。導入される水は、淡水、海水、湖水など、特に限定されないが、ゴミ等を除去するために、あらかじめ、プランクトンをかろうじて通すくらいのフィルター(図示せず)で濾過しておくのが好ましく、このようなフィルターを、水導入口12に設けてもよい。また、水を容易に導入できるよう、ポンプを設けるのが好ましい。この水導入口12は、複数設けても構わない。
【0013】
ネット14は、水導入口12から導入された水を濾過し、プランクトンを採取するために設けられ、濃縮槽10内の空間を、プランクトンを採取する採取側30と、その裏側32の二つに分ける。ネット14でプランクトンを濾過することにより、採取側30で、プランクトンを採取し、裏側32で、プランクトンが濾過された水を排出するためである。このネット14は、水導入口12から導入される、プランクトンを含む水を、全部通過させられるような構成にしておくのが好ましい。それにより、効率よく、プランクトンを採取することができる。
【0014】
噴水装置16は、ネット14の裏側32の濃縮槽に設けられ、ネット14の裏側32からネット14に放水し、ネット14に付着したプランクトンを洗い流すことができれば、どのような装置でもよい。例えば、効率よく洗浄するために、水を噴霧するヘッドが回転できるようになっているような装置が好ましいが、特に限定されることはない。噴水装置16を複数設けてもかまわない。
【0015】
濃縮サンプル貯槽17は、ネット14の洗浄側30の濃縮槽10に設けられ、噴水装置16から放水される水によって洗い流されたプランクトンを、集めて濃縮するための貯槽であるが、その形態は特に限定されない。例えば、濃縮サンプル貯槽17の上部に、外部から取り外し可能な網を設け、その網を回収したり、網を洗浄したりすることにより、プランクトンを回収してもよい。
【0016】
プランクトン排出口18は、ネット14の洗浄側30の濃縮槽10に設けられ、濃縮サンプル貯槽17に貯まったプランクトンが濃縮された水を、効率よく排出できれば、構成は特に限定されない。
【0017】
水排出口20は、ネット14の裏側32の濃縮槽に設けられ、そこから、プランクトンが濾過された水や噴水装置16から放出され水が排出される。水排出口20も、複数設けても構わない。
【0018】
サンプル採取装置24は、プランクトン排出口18から排出されるプランクトンの濃縮液をサンプル瓶26にサンプリングする。例えば、フラクション・コレクターのように、一定時間ごとに、自動で新しい試料採取濃縮槽を供給する装置でもよい。サンプルを固定する必要があるとき等、サンプル瓶26には、あらかじめホルマリン等の固定液を入れておいてもよい。
【0019】
==プランクトン濃縮装置の他の構成==
濃縮槽10の一部をガラスやアクリル等で作製してもよく、そこで光の透過度を測定することにより、プランクトン濃度の目安が得られるようになる。その数値により、水導入口12から、プランクトンを含む水を導入するかどうかを決めてもよい。
【0020】
洗浄水排出口26は、ネット14の採取側30の濃縮槽10に、プランクトンを回収した後にネットを洗浄したネット洗浄水を、濃縮サンプル貯槽17から排出するために設けられる。しかし、洗浄水排出口26を設けず、プランクトン排出口18を、洗浄液排出に用いてもよい。その場合は、洗浄液を排出するための大容量の洗浄液受濃縮槽(図示せず)を設け、サンプル瓶26のかわりに洗浄液を受けるようにする。
【0021】
プランクトン排出口18、水排出口20、及び洗浄水排出口26には、電磁弁を設け、その水の出入りが調節できるように構成されているのが好ましい。
【0022】
これらの装置以外にも、例えば、時計、温度計、pHメーター、電気伝導度測定装置、溶存酸素量測定装置、クロロフィルa濃度測定装置等、各所の水の水質などを測定できる装置を設けてもよい。
【0023】
==プランクトン濃縮方法==
以上のように構成されている濃縮装置を用いた濃縮方法の一例を以下に説明する。
【0024】
まず、プランクトン排出口18、水排出口20、及び洗浄水排出口26の弁を閉じ、水導入口12に設けたポンプを用いて、プランクトンが含まれた水を濃縮槽に導入する。濃縮槽10が、導入した水で満たされたとき、水排出口20を開け、濃縮槽10内の水を排出すると、水量が減りつつ、水がネットで濾過され、プランクトンがネット14に補集される。所定量の水が導入された時点で、水導入口12からの水の導入を止める。
【0025】
濃縮槽10内の水をほとんど排出した時、噴水装置16から水をネットに向かって噴霧し、ネットに捕集されたプランクトンを洗い流す。プランクトンはネットに沿って落ちて行き、濃縮サンプル貯槽17に貯まるが、一方、噴霧された水は、網を通り抜け、ネット14の裏側32に落ちてきて、水排出口20から排出される。こうして、濃縮サンプル貯槽17の中に、プランクトンが濃縮されて溜まる。このネット14の洗浄工程は、ネット14の目詰まりを防ぐことができ、さらなる水を濃縮槽10に流すことができるので、プランクトンの濃縮率も高くすることができるという利点がある。
【0026】
その後、プランクトン排出口18の弁を開け、プランクトンが濃縮された水を、サンプル採取装置24のサンプル瓶26に採取する。
【0027】
プランクトンの採取が終わったら、プランクトン排出口18の弁を閉じ、洗浄水排出口26の弁を開ける。噴水装置16から水をネットに向かって噴霧し、ネットに残存するプランクトンやゴミ等を洗い流す。この逆洗により、ネット14の目詰まりを防止することができる。濃縮槽10内がきれいになったところで噴霧を止め、水が出切ると全ての弁を閉じ、サンプル瓶26を新しい瓶に置き換え、次のサンプルに対して準備する。
【0028】
==自動プランクトン濃縮システム==
以上のプランクトン濃縮装置、特に水導入口12、噴水装置16、プランクトン排出口18、水排出口20などが、制御装置であるコンピュータによって制御されていれば、プランクトンを採取する海水や湖水の採取から、プランクトンが濃縮された水のサンプリングや、その水質の検査まで自動化できるという点で好ましい。そこで、プランクトン濃縮装置とその装置を制御するコンピュータとで、自動プランクトン濃縮システムとする。
【0029】
また、このコンピュータは、サンプル採取装置24を制御してサンプリングを調節する等、このプランクトン濃縮システムの他の装置を調節しても構わない。
【0030】
なお、コンピュータに、自動でプランクトン濃縮方法を行なわせるプログラム、及びそのプログラムを格納した記憶媒体も、本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による一実施の形態のプランクトン濃縮装置の全体像を示す模式図である。
【符号の説明】
【0032】
10 濃縮槽
12 水導入口
14 ネット
16 噴水装置
17 濃縮サンプル貯槽
18 プランクトン排出口
20 水排出口
24 サンプル採取装置
26 洗浄水排出口
30 採取側(濃縮槽)
32 裏側(濃縮槽)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランクトンを含む水を導入するための水導入口と、
導入された前記水を濾過し、プランクトンを採取するためのネットと、
前記プランクトンを採取する採取側の裏側からネットに放水し、前記ネットに付着した前記プランクトンを洗い流すための噴水装置と、
前記プランクトンを濾過した前記水と、前記噴水装置から放出された前記水を排出するための水排出口と、
洗い流された前記プランクトンを集めて濃縮するための濃縮サンプル貯槽と、
前記濃縮サンプル貯槽に集めた前記プランクトンを排出するためのプランクトン排出口と、
を備えた濃縮槽を備え、
前記濃縮槽内の空間が前記ネットで分割され、前記ネットの採取側の前記濃縮槽に前記水導入口、前記濃縮サンプル貯槽及び前記プランクトン排出口が設けられ、前記ネットの裏側の前記濃縮槽に前記水排出口が設けられていることを特徴とするプランクトン濃縮装置。
【請求項2】
前記水導入口、前記プランクトン排出口、水排出口、及び噴水装置の開閉を制御する電磁弁を備えていることを特徴とする請求項1に記載のプランクトン濃縮装置。
【請求項3】
前記ネットの採取側の前記濃縮槽に、ネット洗浄水を排出するための洗浄水排出口を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のプランクトン濃縮装置。
【請求項4】
前記洗浄水排出口の開閉を制御する電磁弁を備えていることを特徴とする請求項3に記載のプランクトン濃縮装置。
【請求項5】
温度計、pHメーター、電気伝導度測定装置、または溶存酸素量測定装置を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプランクトン濃縮装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のプランクトン濃縮装置と、
前記水導入口、前記水排出口、前記プランクトン排出口、噴水装置の少なくとも一つを調節する制御装置と、
を備えるプランクトン濃縮システム。
【請求項7】
請求項1に記載のプランクトン濃縮装置を使用する使用方法であって、
前記水導入口からプランクトンを含む水を導入する工程と、
前記ネットで、導入された前記水を濾過し、プランクトンを採取する工程と、
前記噴水装置で前記プランクトンを採取する採取側の裏側からネットに放水し、前記ネットに付着した前記プランクトンを洗い流す工程と、
前記水排出口より、前記プランクトンを濾過した前記水と、前記噴水装置から放出された前記水を排出する工程と、
洗い流された前記プランクトンを、前記濃縮サンプル貯槽で集めて濃縮する工程と、
前記濃縮サンプル貯槽に集めた前記プランクトンを、前記プランクトン排出口から排出する工程と、
を含む使用方法。
【請求項8】
請求項1に記載のプランクトン濃縮装置を自動運転するための制御プログラムであって、コンピュータに、
前記水導入口からプランクトンを含む水を導入するステップと、
前記ネットで、導入された前記水を濾過し、プランクトンを採取するステップと、
前記噴水装置で前記プランクトンを採取する採取側の裏側からネットに放水し、前記ネットに付着した前記プランクトンを洗い流すステップと、
前記水排出口より、前記プランクトンを濾過した前記水と、前記噴水装置から放出された前記水を排出するステップと、
洗い流された前記プランクトンを、前記濃縮サンプル貯槽で集めて濃縮するステップと、
前記濃縮サンプル貯槽に集めた前記プランクトンを、前記プランクトン排出口から排出するステップと、
を実行させる制御プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムを、コンピュータによって読み取り可能に格納した記憶媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2009−240274(P2009−240274A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93461(P2008−93461)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(507030863)株式会社セシルリサーチ (11)
【Fターム(参考)】