説明

プラントデータ表示装置、プラントデータ表示方法及びプログラム

【課題】プラントの監視対象から収集した多くのパラメータを効率的に検索し、プラントに発生したイベントに関する情報を得やすくする。
【解決手段】トレンドデータ検索部12は、プラントの監視対象の処理で用いられるパラメータの値を示すデータ、及びイベントの発生が検出されたパラメータと同じ系統に含まれ、関連する他のパラメータの値を示すデータを、所定期間内の時間経過に伴う値の変化の傾向を示すトレンドデータとしてプラントテーブルから読み出す。さらに、イベントと同じイベントが過去に発生していた場合には、過去に発生していたイベントに関する情報をパラメータ毎に読み出し、表示部にトレンドデータをトレンド表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、産業プラント(以下、「プラント」と呼ぶ。)の動作を監視し、又は制御する際にプラントが出力するデータを表示するプラントデータ表示装置、プラントデータ表示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電所、火力発電所等のプラントを運転する際は、プラントの監視対象となる機器の処理で用いられるパラメータの値を示すデータをプラントデータ表示装置が収集し、液晶表示器等によって構成される表示部にデータ等を表示する運用がなされていた。プラントデータ表示装置は、コンピュータ等の計算機によって構成されており、プラントデータ表示装置の表示部にデータ等が表示されると、運転員は必要な情報を得ることが可能であった。プラントデータ表示装置に提供されるパラメータは、プラントの圧力や温度等を表すアナログデータ、プラントが備えるポンプの起動又は停止、弁の開閉等のイベントの発生を表すデジタルデータ等によって値が表されていた。以下の説明では、アナログデータ又はデジタルデータを、「データ」と略称する。
【0003】
このプラントデータ表示装置は、受け取ったデータに含まれる所定の信号パターンを解析することにより、受け取ったデータがどのパラメータを示すかを把握できる。そして、プラントデータ表示装置は、プラントの状態を示す情報(以下、「イベント」と呼ぶ。)を監視するために、収集したデータから様々な種類のパラメータの変化を検出していた。ここで、プラントの処理は、複数の系統(例えば、給水系統、制御棒の挿入系統)毎に管理され、系統毎に複数の監視対象(例えば、配管のバルブ、給水ポンプ)における処理で用いられるパラメータが用いられていた。
【0004】
また、プラントデータ表示装置は、デジタルデータが変化したり、監視対象から警報が発生したりすることによってイベントが発生したことを検出すると、イベントが発生した時間を含めてイベントデータとして記録していた。アナログデータとデジタルデータの種類は共に数千点に及んでおり、イベントが発生する度に大量のデータを取込み、様々な方法で運転員にデータを提供していた。
【0005】
特許文献1には、プロセスイベントの発生履歴を表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−11169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年は、計算機の技術が進歩したことにより、短いサンプル周期で取り込んだ大量のデータを長期間保存することが可能となってきた。従来、プラントに異常が発生した際に、異常の原因を調査する方法がいくつかあった。例えば、過去に発生した同じ種類の異常を調べ、同一の系統内で関連するパラメータがどのような挙動を示したかを調べる方法や、異常の発生時刻に運転員がどのように対応したか等を調べる方法があり、これらの方法は異常の原因を究明し、対策を検討するために有効であった。
【0008】
ところで、数千点に及ぶパラメータから過去に遡って適切なパラメータを抽出し、データを時系列の折れ線グラフを用いたトレンド表示を行うために、運転員は、以下の手順を踏む必要があった。
(1)過去に記録された大量のイベントデータに、同様な異常が発生していないかを調査する。
(2)異常が発生したイベントに関連する同一系統のパラメータは何かを図書で調べる。
(3)そのパラメータをトレンド表示項目として登録する。
(4)異常が発生している時点の前後の区間を指定して表示させる。
しかし、上記の手順は運転員の手作業により行われるため、誤って入力する可能性があった。また、手順が多くなるとトレンドを表示するまでに要する処理時間が長くなってしまうこともあった。このため、トレンド表示するまでに要する手間と時間が余計にかかっており、プラントに異常が発生したことをリアルタイムで検出することが困難であり、また、適切な対応を取るために時間を要していた。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、プラントから収集した多くのパラメータを効率的に検索し、プラントに発生したイベントに関する情報を得やすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、プラントの監視対象の処理で用いられるパラメータの値を示すデータをプラントから所定の周期で収集し、特定の期間にわたってパラメータ毎にデータをプラントテーブルに保存する。
次に、データを解析して、パラメータが変化したことをイベントの発生として検出し、イベントの発生時刻を含むイベントに関する情報をイベントデータとしてパラメータ毎にイベントテーブルに保存する。
次に、イベントテーブルから検索したイベントデータをパラメータ毎にデータを表示する表示部に表示させる。
次に、プラントの処理が複数の系統毎に管理され、系統毎に複数のパラメータが関連する場合に、プラントの監視対象の処理で用いられるパラメータの値を示すデータ、及びイベントの発生が検出されたパラメータと同じ系統に含まれ、関連する他のパラメータの値を示すデータを、所定期間内の時間経過に伴う値の変化の傾向を示すトレンドデータとしてプラントテーブルから読み出す。
そして、イベントと同じイベントが過去に発生していた場合には、過去に発生していたイベントに関する情報をパラメータ毎に読み出し、表示部にトレンドデータをトレンド表示させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プラントにイベントが発生した際に、過去に発生していたイベントに関する情報をパラメータ毎に読み出し、表示部にトレンドデータをトレンド表示させる。このため、発生したイベントが異常であった場合には、運転員は、過去に同様な異常が発生したイベントがなかったかどうかを迅速に判断することができる。これにより、異常が発生した時の原因を特定し、異常への対策をとるための対応が大幅に改善することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態におけるプラントデータ表示装置の内部構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態におけるイベントテーブルの例を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態における短期プラントテーブル/長期プラントテーブルの例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態における系統−入力信号対応テーブルの例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態におけるトレンド表示選択テーブルの例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態における運転員が操作する画面の遷移例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「本例」という。)について、添付図面を参照して説明する。本実施の形態では、例えば、プラントの稼働状態を監視するプラントデータ表示装置1に適用した例について説明する。このプラントデータ表示装置1は、計算機等のコンピュータ装置によって構成され、プログラムを実行することにより、内部ブロックが連携して行うプラントデータ表示方法を実現することができる。
【0014】
プラントでは、多数の制御装置、検出器が互いに関連して動作しており、これらの制御装置、検出器は、運転員がイベントを監視する監視対象となっている。そして、多数の監視対象から多数のデータが出力されるため、個々の監視対象毎に得られるデータの関連が不明となりやすい。このため、プラントの処理が複数の系統毎に管理され、系統毎に複数のパラメータが関連する運用としている。例えば、プラントの「給水」という処理に関連する複数の監視対象が出力するパラメータを一まとめとした「系統」と呼ばれる単位でまとめて管理する。また、本例では、プラントが出力する各種の信号を「パラメータ」として適用している。そして、プラントデータ表示装置1は、系統毎にまとめたパラメータをトレンド表示することにより、データの関連を保ちながら運転員に必要な情報を提供する。
【0015】
[プラントデータ表示装置の構成例]
図1は、本例のプラントデータ表示装置1の内部構成例を示す。
始めに、プラントデータ表示装置1の処理ブロックを説明する。
プラントデータ表示装置1は、プラントの監視対象の処理で用いられるパラメータの値を示すデータをプラントから所定の周期で収集するデータ収集部2を備える。このデータは、様々な種類の入力信号によって構成される。データ収集部2が収集するデータには、例えば、プラントの監視対象で計測された圧力若しくは温度又は警報の発生を示すアナログデータ、及びポンプの起動又は停止を示すデジタルデータが含まれる。
【0016】
また、プラントデータ表示装置1は、データ収集部2が収集したデータを解析して、パラメータが変化したことをイベントの発生として検出し、イベントの発生時刻を含むイベントに関する情報をイベントデータとしてパラメータ毎にイベントテーブルに保存するイベント検出部3と、検出されたイベントが発生時刻と共にイベントデータとして書き込まれるイベントテーブル4を備える。また、プラントデータ表示装置1は、イベントテーブル4からイベントデータを検索し、イベントテーブル4から検索したイベントデータを表示部7に表示させるイベントデータ検索部5と、イベントデータ検索部5によって検索されたイベントデータをパラメータ毎に表示部7に表示させるイベントデータ表示部6を備える。
【0017】
また、プラントデータ表示装置1は、系統−入力信号対応テーブル9を備える。系統−入力信号対応テーブル9は、プラントの処理における複数の系統と、系統毎に管理する複数のパラメータを対応づけて管理する対応テーブルとして用いられる。
【0018】
また、プラントデータ表示装置1は、運転員が行う操作部8を用いた指示入力によりトレンド表示を行うために所定の期間が選択された選択データを編集するトレンド表示選択データ編集部10と、トレンド表示選択データ編集部10によって編集されたトレンド表示選択データを保存するトレンド表示選択テーブル11を備える。トレンド表示選択データ編集部10は、選択された系統に含まれるパラメータを系統−入力信号対応テーブル9から読み出し、系統、その系統に含まれるパラメータ、及びイベントの発生時刻を含む所定の期間を指定する選択データをトレンドデータ検索部12に渡す選択データ編集部として用いられる。
【0019】
また、プラントデータ表示装置1は、選択されたトレンド表示選択データをトレンド表示選択テーブル11から検索するトレンドデータ検索部12と、トレンドデータ検索部12が検索したトレンドデータを表示部7に表示させるトレンドデータ表示部13を備える。トレンド表示選択テーブル11は、抽出した過去のイベント発生時刻とデフォルトで設定した時間幅及び抽出したパラメータをトレンド表示情報として保存する。トレンドデータ検索部12は、プラントの監視対象の処理で用いられるパラメータの値を示すデータ、及びイベントの発生が検出されたパラメータと同じ系統に含まれ、関連する他のパラメータの値を示すデータを、所定期間内の時間経過に伴う値の変化の傾向を示すデータ(以下、「トレンドデータ」と呼ぶ。)として長期プラントテーブル17から読み出す。また、トレンドデータ検索部12は、発生したイベントと同じイベントが過去に発生していた場合には、過去に発生していたイベントに関する情報をパラメータ毎に読み出し、表示部7にトレンドデータをトレンド表示させることもできる。また、トレンドデータ検索部12は、トレンド表示選択データ編集部10から受け取った選択データに基づいて表示部7にトレンドデータをトレンド表示させることもできる。
【0020】
また、プラントデータ表示装置1は、データ収集部2が収集したデータを短期プラントテーブル15に保存する短期データ保存部14と、短期データ保存部14が出力する短期データ又は、短期プラントテーブル15から読み出した短期データを長期プラントテーブル17に保存する長期データ保存部16を備える。本例では、短期データ保存部14及び長期データ保存部16を、特定の期間にわたってパラメータ毎にデータをプラントテーブルに保存するデータ保存部として用いる。長期プラントテーブル17に保存された長期データは、トレンドデータ検索部12に読み出される。
【0021】
上述した各テーブルは、不図示の大容量の記録装置(例えば、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive))に構成されている。各テーブルは、互いに異なる複数のフィールドを備えている。例えば、プラント内の配管の位置を個別に識別するポイントIDを表すフィールドとして“PID.NO”と、“信号名称”をキーとするリレーショナルデータベースが構成される。そして、このリレーショナルデータベースによって、テーブル、フィールド等の関係が管理される。長期プラントテーブル17には多くのデータが保存されるため、HDDだけでなく、磁気テープ、光ディスク等の記録装置を用いてもよい。また、表示部7には、液晶表示装置、有機EL(Electro-Luminescence)表示装置等を用いてよく、操作部8には、マウス、キーボード等を用いてもよい。また、表示部7と操作部8は、映像の表示と操作入力を一画面で行うことが可能なタッチパネルディスプレイとして構成してもよく、スタイラスペンを用いて操作入力を可能としてもよい。
【0022】
[プラントデータ表示装置の動作例]
次に、プラントデータ表示装置1の動作例を説明する。
プラントに発生する異常にはいくつかの原因があり、プラントに異常が発生する前には、プラントが備えるポンプや弁等の機器が動作不良を起こしたり、特定のパラメータが警報設定値を超えていたりすることが知られている。従って、プラントデータ表示装置1は、イベントの発生により異常を測定した時よりも過去に遡って、プラントに過去に発生した異常を検出するためには、以下の処理を行うことが有効である。
(1)現在発生しているイベントのイベントデータと同様なイベントデータを過去に蓄積されたイベントデータから抽出する。
(2)抽出した過去のイベントが発生した時刻の近傍における、発生したイベントに関連するパラメータの挙動を調査する。
(3)プラントが連続して出力するデータを解析して得た値を検証してイベントの発生を把握する。
これらの処理によって、プラントデータ表示装置1は、パラメータが変化した時点の近傍でプラントに何らかの状態変化が発生したことを認識し、運転員に異常の発生を知らせることができる。
【0023】
このため、データ収集部2は、プラントが出力するデータ(計測値、アラーム、パラメータ等が含まれる。)をリアルタイムで収集し、収集したデータをイベント検出部3と短期データ保存部14に出力する。
【0024】
次に、イベント検出部3は、データ収集部2から受け取ったデータを解析し、プラントにイベントが発生したか否かを検出する。イベント検出部3は、イベントが発生したことを検出すると、検出したイベント及びイベントの発生した時刻をイベントテーブル4に書き込む。イベントテーブル4は、イベントの発生時刻における入力信号、発生時刻及びデータをログ管理しており、イベント毎の原因及び対応策に関する情報が保存される。
【0025】
イベントデータ検索部5は、特定の日時におけるイベントデータや、特定のイベントが発生した日時をイベントテーブル4から速やかに検索できる。また、イベントデータ検索部5は、特定のイベントに関する情報として、イベントデータと併せて、原因及び対応策に関する情報を表示させることもできる。イベントデータ検索部5が行う検索処理は、表示部7に表示されたイベントデータを確認する運転員が操作部8を介して行う入力指示に基づき実行されるが、トレンドデータ検索部12の処理要求に従って自動的に行う場合もある。そして、イベントデータ検索部5は、イベントテーブル4から検索したイベントデータを、イベントデータ表示部6を介して表示部7に最新イベントデータ表示結果(後述する図6A参照)、又は同一イベントデータ表示結果として表示させる(後述する図6B参照)。このようにイベントデータ表示部6は、イベントデータ検索部5が検索したイベントデータを表示部7に表示するための画面を作る機能を有するインタフェースとして用いられる。
【0026】
運転員が操作部8を操作し、表示部7に表示されたイベントデータから1つのイベントデータを選択する指示を行うと、この指示がイベントデータ表示部6に送られる。イベントデータ検索部5は、イベントテーブル4から指示されたイベントデータを改めて検索し、表示部7に表示させる。このため、表示部7には、プラントに現在発生している異常に関連するイベントのイベントデータが表示され、運転員は、過去に発生したイベントの発生状況を検索することができる。
【0027】
短期データ保存部14は、データ収集部2から受け取るデータを短期プラントテーブル15に保存する。短期プラントテーブル15には、イベントの発生時刻、監視対象のPID.NO、入力信号の種別を示す信号名称、監視対象の状態値等を含むデータが数時間にわたって保存される。短期データ保存部14がデータを保存可能な容量は限られているため、古いデータは最新のデータに上書きされる。
【0028】
短期データ保存部14は、短期プラントテーブル15の容量が規定値を超えると、短期データ保存部14から短期プラントテーブル15に保存されたデータを長期プラントテーブル17に移し替える指示を長期データ保存部16に行う。長期データ保存部16は、この指示を受けると、短期プラントテーブル15からデータを読み出し、長期プラントテーブル17に保存する。長期プラントテーブル17の容量は、短期プラントテーブル15の容量よりも大きくとってあり、データを数日間にわたって保存することが可能である。また、長期プラントテーブル17のテーブル構成は、短期プラントテーブル15のテーブル構成と同様にしてあるため、データの移し替えに際して長期データ保存部16がコンバート等の処理を行う必要はない。
【0029】
系統−入力信号対応テーブル9は、各系統における入力信号の対応関係を管理する。トレンド表示選択データ編集部10は、運転員の操作に基づく操作部8の指示に従って、トレンド表示画面に表示させるトレンドデータを編集する。この際、監視対象から入力する信号のデータを所定の期間だけ表示部7に折れ線グラフでトレンド表示させる表示期間が編集される。
【0030】
トレンド表示選択テーブル11は、トレンド表示選択データ編集部10によって編集された表示期間と、監視対象に関する情報を保存する。ここで、イベントに関連するパラメータは、イベントと同一系統の他のパラメータに関連するため、トレンドデータ検索部12は、長期プラントテーブル17から同一系統のパラメータを抽出する。このとき、トレンドデータ検索部12は、トレンド表示選択テーブル11から表示期間等を読み出し、この表示期間内における監視対象のデータを長期プラントテーブル17から検索し、検索結果をトレンドデータ表示部13に出力する。
【0031】
トレンドデータ表示部13は、様々な状態におけるトレンドデータ表示結果(後述する図6C参照)を形成するためのグラフ形式等を保存している。そして、トレンドデータ検索部12は、トレンドデータ表示部13を介して表示部7にトレンドデータ表示結果を表示させる。このトレンドデータ表示結果には、過去に同一のイベントが発生した時点におけるパラメータが、縦軸に量、横軸に日時としてトレンド表示される。このようにトレンドデータ表示結果を表示することにより、現在発生しているプラントの異常状態と同一な状態が過去に発生していないかを判断するための情報を運転員に迅速に提供する。このため、異常状態に関連するイベントと同一の系統のパラメータを自動選択する。そして、トレンドデータ表示部13に対して、表示部7がトレンド表示を描画するためのデータを出力する。
【0032】
[テーブル構成例]
次に、各テーブルの構成例を図2〜図5を参照して説明する。ここでは、各図に共通する項目として、“PID.NO”として「BA005」が割り振られ、“系統”として「B21」が割り振られた監視対象に注目して説明を行う。
【0033】
図2は、イベントテーブル4の構成例を示す。
イベントテーブル4は、監視対象にイベントが発生した“発生時刻”、 “PID.NO”、入力信号の“信号名称”、イベント発生時刻における監視対象の状態を示す“状態値”を、イベントが発生する度に保存する。本例では、イベントが発生する度に最新のイベントレコードが1レコード目となるように、“発生時刻”の降順でイベントテーブル4に保存される。このため、“PID.NO”における「BA005」では、「2011/02/24 12:59:13」に、「給水流量A」についてアラームというイベントが発生したことが示される。
【0034】
図3は、短期プラントテーブル15と長期プラントテーブル17の構成例を示す。
短期プラントテーブル15と長期プラントテーブル17のフィールド構成は共に、イベントテーブル4のフィールド構成と同じである。上述したように短期プラントテーブル15に保存されたデータは、一定期間を経過すると長期プラントテーブル17に移され、長期保存される。
【0035】
また、短期プラントテーブル15又は長期プラントテーブル17は、リアルタイムに収集したデータを「現在時」として保存し、1秒前に収集したデータを「現在時−1秒」として保存する。いつまでのデータを短期プラントテーブル15又は長期プラントテーブル17に保存するかは、各時間におけるレコードの量やパラメータの数によって増減する。また、本例では1秒ごとにデータを保存しているが、収集するタイミングは1秒より長くても短くてもよい。本例では、短期プラントテーブル15又は長期プラントテーブル17に、“PID.NO”における「BA005」のデータが1秒ごとに保存されることが示される。また、充分な容量を確保できるのであれば、短期プラントテーブル15と長期プラントテーブル17を1つのプラントテーブルとし、短期データ保存部14と長期データ保存部16を1つのデータ保存部としてプラントデータ表示装置1を構成してもよい。
【0036】
図4は、系統−入力信号対応テーブル9の構成例を示す。
系統−入力信号対応テーブル9は、“PID.NO”、“信号名称”、に加えて、系統を識別するために割り振られる“系統NO”によってフィールドが構成される。本例の系統−入力信号対応テーブル9に表示される複数のレコードのうち、上位の2レコードには、短期プラントテーブル15と長期プラントテーブル17におけるPID.NOに示す監視対象と、各監視対象の系統NOが対応づけられている。このため、1種類の系統NOに、複数種類のPID,NOや信号名称が対応することが分かる。ここで、“信号名称”に示される給水温度、給水流量、給水吐出圧力は、共に異常が発生したイベントに関連するパラメータを表しており、“系統NO”が共に「B21」である。本例では、系統−入力信号対応テーブル9の2番目のレコードに、“PID.NO”における「BA005」の「給水流量A」という情報が“系統NO”「B21」に対応して保存されることが示される。
【0037】
図5は、トレンド表示選択テーブル11の構成例を示す。
トレンド表示選択テーブル11は、所定期間におけるデータの傾向をトレンド表示する際に参照されるテーブルである。トレンド表示選択テーブル11は、“PID.NO”、“信号名称”に加えて、データをトレンド表示するための“表示期間”によってフィールドが構成される。本例では、表示期間が3レコードとも同じとしてあり、表示期間は任意に変えることができる。本例では、系統−入力信号対応テーブル9に、“PID.NO”における「BA005」の「給水流量A」が、「2009/02/13 13:56:00〜2009/02/13 15:56:00」の表示期間にわたって、長期プラントテーブル17からデータを読み出すことが示される。
【0038】
[画面の遷移例]
図6は、運転員がイベントの監視を行う画面の遷移例を示す。
図6Aは、最新イベントデータの表示結果の例を示す。
表示部7は、イベント検出部3がイベントを検出する度にイベントデータを更新して表示する。このとき、イベントデータ検索部5は、選択されたイベントデータによって特定されるイベントと同じイベントが含まれる過去のイベントデータをイベントテーブル4から検索して、イベントデータ表示部6を介して表示部7にイベントデータを一覧表示させる。このとき、イベントデータ表示部6は、イベントデータを最新のレコードから降順に表示部7に表示する画面を形成する。本例では、イベントテーブル4に示したイベントに関する情報が一覧表示される。運転員が表示途中のイベントデータにカーソルを合わせるなどして、イベントデータを選択すると、図6Bに示す同一イベントデータ表示結果に画面が遷移する。
【0039】
図6Bは、同一イベントデータの表示結果の例を示す。
あるイベントが発生した際には、同じイベントが過去のどの時点で発生したかを知る必要がある。イベントデータ表示部6は、イベントデータ検索部5を介してイベントテーブル4から同一のイベントを検索し、イベントの発生時刻と共に表示部7に表示する。本例では、図6Aに示す最新イベントデータの表示結果から、“PID.NO”における「BA005」が選択されると、同じ“PID.NO”である「BA005」、かつ、同一のイベントである「アラーム」が発生したイベントデータが一覧表示される。
【0040】
図6Cは、選択されたイベントに関連するトレンドデータの表示結果の例を示す。
トレンド表示選択テーブル11(図5参照)に選択された“PID.NO”及び“信号名称”によって関連づけられるトレンドデータが同じ表示期間で表示部7にトレンド表示される。本例では、図6Bに示した同一イベントデータの表示結果の3レコード目に相当する、2009年2月13日の14時56分の前後1時間におけるプラントの給水温度、給水流量、給水吐出圧力が、時間経過に従って折れ線グラフでトレンド表示される。トレンドデータ検索部12は、表示部7にトレンド表示させる折れ線グラフについて、イベントが発生した時刻、及びパラメータの表示期間を自動的に決定し、トレンドデータ表示部13にトレンド表示用のデータを出力する。
【0041】
以上説明した本実施の形態に係るプラントデータ表示装置1によれば、監視対象が発生したイベントを自動的に検出して、イベントテーブル4に保存し、最新のイベントを表示部7に表示することができる。このため、運転員は、リアルタイムで更新される最新のイベントデータの表示結果を確認して、イベントの発生有無を確認できる。最新のイベントデータの表示結果に表示されたイベントのレコードを選択することで、過去に発生した同じ種類のイベントを、発生時刻と共に一覧表示することができる。このため、運転員は、イベントの発生頻度やイベントに対応した時刻を容易に把握することができる。
【0042】
また、データ収集部2が収集したデータは、短期プラントテーブル15に保存された後、長期プラントテーブル17に長期間保存される。そして、トレンドデータ検索部12は、プラントが出力するデータに基づいて、所定の期間内におけるデータの推移をトレンドデータとして抽出し、このトレンドデータをトレンド表示に適した形に加工するものである。そして、過去に発生したイベントの発生時刻の近傍における値の推移を表示部7にトレンド表示できる。このため、運転員は、現在発生したイベントの状態変化を予測することが可能となり、適切な措置をとることができる。
【0043】
また、トレンドデータ表示結果には、発生したイベントの同一系統に含まれる関連するパラメータのイベント発生時刻における値の推移を同時に表示部7にトレンド表示できる。このため、運転員は、特定のパラメータのみならず、関連するパラメータについても時間経過に伴う値の変動を把握することができ、イベントの発生原因を特定しやすくなる。
【0044】
[変形例]
なお、表示期間については任意に変更することが可能であり、運転員がトレンドの詳細な変化を確認する際には、表示期間を短くして表示すればよい。また、縦軸のスケールも任意に変更が可能であり、異なる単位系であっても、折れ線の色や線種を変えることにより視認性を高めることができる。この際、トレンドデータ検索部12は、長期プラントテーブル17から読み出した過去のイベントデータをイベントテーブル4から検索して、過去の複数の同一イベントを同じ時間幅で表示部7にトレンド表示させるようにしてもよい。
【0045】
また、上述した実施の形態例における一連の処理は、ハードウェアにより実行することができるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種の機能を実行するためのプログラムをインストールしたコンピュータにより、実行可能である。例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに所望のソフトウェアを構成するプログラムをインストールして実行させればよい。
【0046】
また、上述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体を、システムあるいは装置に供給してもよい。また、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPU等の制御装置)が記録媒体に保存されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、機能が実現されることは言うまでもない。
【0047】
この場合のプログラムコードを供給するための記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0048】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上述した実施の形態の機能が実現される。加えて、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部又は全部を行う。その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0049】
また、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
1…プラントデータ表示装置、2…データ収集部、3…イベント検出部、4…イベントテーブル、5…イベントデータ検索部、6…イベントデータ表示部、7…表示部、8…操作部、9…系統−入力信号対応テーブル、10…トレンド表示選択データ編集部、11…トレンド表示選択テーブル、12…トレンドデータ検索部、13…トレンドデータ表示部、14…短期データ保存部、15…短期プラントテーブル、16…長期データ保存部、17…長期プラントテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの監視対象の処理で用いられるパラメータの値を示すデータを前記プラントから所定の周期で収集するデータ収集部と、
前記パラメータ毎に前記データを表示する表示部と、
特定の期間にわたって前記パラメータ毎に前記データをプラントテーブルに保存するデータ保存部と、
前記データを解析して、前記パラメータが変化したことをイベントの発生として検出し、前記イベントの発生時刻を含む前記イベントに関する情報をイベントデータとして前記パラメータ毎にイベントテーブルに保存するイベント検出部と、
前記イベントテーブルから検索した前記イベントデータを前記表示部に表示させるイベントデータ検索部と、
前記プラントの処理が複数の系統毎に管理され、前記系統毎に複数の前記パラメータが関連する場合に、前記プラントの監視対象の処理で用いられるパラメータの値を示すデータ、及び前記イベントの発生が検出された前記パラメータと同じ系統に含まれ、関連する他の前記パラメータの値を示すデータを、所定期間内の時間経過に伴う値の変化の傾向を示すトレンドデータとして前記プラントテーブルから読み出し、前記イベントと同じイベントが過去に発生していた場合には、過去に発生していたイベントに関する情報を前記パラメータ毎に読み出し、前記表示部に前記トレンドデータをトレンド表示させるトレンドデータ検索部と、を備える
プラントデータ表示装置。
【請求項2】
さらに、前記プラントの処理における前記複数の系統と、前記系統毎に管理する複数の前記パラメータを対応づけて管理する対応テーブルと、
選択された前記系統に含まれる前記パラメータを前記対応テーブルから読み出し、前記系統、前記系統に含まれる前記パラメータ、及び前記イベントの発生時刻を含む所定の期間を指定する選択データを前記トレンドデータ検索部に渡す選択データ編集部と、を備え、
前記トレンドデータ検索部は、前記選択データ編集部から受け取った前記選択データに基づいて前記表示部に前記トレンドデータをトレンド表示させる
請求項1記載のプラントデータ表示装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記イベント検出部が前記イベントを検出する度に前記イベントデータを更新して表示し、
前記イベントデータ検索部は、選択された前記イベントデータによって特定されるイベントと同じイベントが含まれる過去のイベントデータを前記イベントテーブルから検索して前記表示部に一覧表示させる
請求項2記載のプラントデータ表示装置。
【請求項4】
前記イベントテーブルには、前記イベント毎の原因及び対応策に関する情報が保存され、
前記イベントデータ検索部は、特定の前記イベントに関する情報として、前記イベントデータと併せて、前記原因及び対応策に関する情報を表示させる
請求項3記載のプラントデータ表示装置。
【請求項5】
前記トレンドデータ検索部は、前記プラントテーブルから読み出した過去のイベントデータを前記イベントテーブルから検索して、過去の複数の同一イベントを同じ時間幅で前記表示部にトレンド表示させる
請求項4記載のプラントデータ表示装置。
【請求項6】
前記データ収集部が収集するデータには、前記プラントの監視対象で計測された圧力若しくは温度又は警報の発生を示すアナログデータ、及びポンプの起動又は停止を示すデジタルデータが含まれる
請求項5記載のプラントデータ表示装置。
【請求項7】
プラントの監視対象の処理で用いられるパラメータの値を示すデータを前記プラントから所定の周期で収集するステップと、
特定の期間にわたって前記パラメータ毎に前記データをプラントテーブルに保存するステップと、
前記データを解析して、前記パラメータが変化したことをイベントの発生として検出し、前記イベントの発生時刻を含む前記イベントに関する情報をイベントデータとして前記パラメータ毎にイベントテーブルに保存するステップと、
前記イベントテーブルから検索した前記イベントデータを前記パラメータ毎に前記データを表示する表示部に表示させるステップと、
前記プラントの処理が複数の系統毎に管理され、前記系統毎に複数の前記パラメータが関連する場合に、前記プラントの監視対象の処理で用いられるパラメータの値を示すデータ、及び前記イベントの発生が検出された前記パラメータと同じ系統に含まれ、関連する他の前記パラメータの値を示すデータを、所定期間内の時間経過に伴う値の変化の傾向を示すトレンドデータとして前記プラントテーブルから読み出し、前記イベントと同じイベントが過去に発生していた場合には、過去に発生していたイベントに関する情報を前記パラメータ毎に読み出し、前記表示部に前記トレンドデータをトレンド表示させるステップと、を含む
プラントデータ表示方法。
【請求項8】
プラントの監視対象の処理で用いられるパラメータの値を示すデータを前記プラントから所定の周期で収集する手順と、
特定の期間にわたって前記パラメータ毎に前記データをプラントテーブルに保存する手順と、
前記データを解析して、前記パラメータが変化したことをイベントの発生として検出し、前記イベントの発生時刻を含む前記イベントに関する情報をイベントデータとして前記パラメータ毎にイベントテーブルに保存する手順と、
前記イベントテーブルから検索した前記イベントデータを前記パラメータ毎に前記データを表示する表示部に表示させる手順と、
前記プラントの処理が複数の系統毎に管理され、前記系統毎に複数の前記パラメータが関連する場合に、前記プラントの監視対象の処理で用いられるパラメータの値を示すデータ、及び前記イベントの発生が検出された前記パラメータと同じ系統に含まれ、関連する他の前記パラメータの値を示すデータを、所定期間内の時間経過に伴う値の変化の傾向を示すトレンドデータとして前記プラントテーブルから読み出し、前記イベントと同じイベントが過去に発生していた場合には、過去に発生していたイベントに関する情報を前記パラメータ毎に読み出し、前記表示部に前記トレンドデータをトレンド表示させる手順、を
コンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−54626(P2013−54626A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193639(P2011−193639)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】